説明

シールド掘進機の回収方法及びその方法を用いるシールド掘進機

【課題】カッタの主要部を安全に、短い工期でかつ低コストで回収できるシールド掘進機の回収方法及びその方法を用いるシールド掘進機を提供する。
【解決手段】到達位置あるいは接合位置等の所定位置に到達して使用済みとなったシールド掘進機1の回収方法において、シールド掘進機1が所定位置に到達したのち、カッタ2の切羽側とカッタ室19とに充填材37を充填し、充填材37で止水しつつ土圧を支承しながらカッタ2を掘進方向後方に充填層42中を通して引き抜いて回収し、その後、充填材37をモルタルなどの土留材39に置換して硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、到達位置あるいは接合位置等の所定位置に到達して使用済みとなったシールド掘進機の回収方法及びその方法を用いるシールド掘進機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所定の到達位置あるいは接合位置に到達して使用済みとなったシールド掘進機を回収する技術としては、特許文献1記載のものが知られている。
【0003】
この技術は、シールドフレーム(外胴)内に内胴を掘進方向後方に移動自在に設けておき、シールド掘進機が所定位置に到達して使用済みとなったとき、掘削面及びその周辺に薬液或いはセメントミルク等を注入して地盤改良を施し、カッタの掘削面側に作業員が入り、人力でカッタを径方向に分割してカッタの径を内胴より小さくし、内胴を後方に引き抜くものである。これによれば、カッタの大部分を回収することができ、再利用によるコスト低減を図れる。
【0004】
【特許文献1】特開2001−317285号公報
【特許文献2】特許第3471350号公報
【特許文献3】特許第3471264号公報
【特許文献4】特開2003−155892号公報
【特許文献5】特公平7−6346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の技術のように、地盤改良によって止水と地山保持とを行う場合、地盤の種類や地下水圧条件によっては地盤改良の効果が十分得られないケースもあり、また、地盤改良には工期/コストが多大にかかるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、カッタの主要部を安全に、短い工期でかつ低コストで回収できるシールド掘進機の回収方法及びその方法を用いるシールド掘進機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、到達位置あるいは接合位置等の所定位置に到達して使用済みとなったシールド掘進機の回収方法において、上記シールド掘進機が所定位置に到達したのち、カッタの切羽側とカッタ室とに充填材を充填し、該充填材で止水しつつ土圧を支承しながら上記カッタを掘進方向後方に充填層中を通して引き抜いて回収し、その後、充填材をモルタルなどの土留材に置換して硬化させるものである。
【0008】
また、到達位置あるいは接合位置等の所定位置に到達して使用済みとなったシールド掘進機の回収方法において、カッタを、地中に残すべきカッタ面板等の残置部と回収すべき回収部とに予め軸方向に分割可能に形成しておき、上記シールド掘進機が所定位置に到達したのち、カッタの切羽側とカッタ室とに充填材を充填して止水したのち、上記残置部を利用して土留壁を形成し、しかる後カッタの切羽側に充填した充填材をモルタルなどの土留材に置換すると共に硬化させ、上記残置部から上記回収部を分離すると共にその回収部を掘進方向後方に充填層中を通して引き抜いて回収するものである。
【0009】
残置部を利用して土留壁を形成する際に、そのカッタを軸方向後方に引き寄せて、その残置部をシールドフレーム前端に保持させ、しかる後、回収部を掘進方向後方に引き抜いて回収するとよい。
【0010】
回収部は、径方向で分割された内側スポークからなり、残置部は、カッタ面板と内側スポークに着脱自在に設けられると共にカッタ面板に取り付けられた外側スポークとからなり、上記内側スポークにカッタ駆動部が連結されると共に、そのカッタ駆動部がシールドフレーム内に移動可能に保持され、回収部を掘進方向後方に移動する際にカッタ駆動部ごと後方に移動されるとよい。
【0011】
また、カッタが、地中に残すべきカッタ面板等の残置部と、回収すべき回収部とに軸方向分割可能に形成され、到達位置あるいは接合位置等の所定位置に到達したとき、上記残置部と上記回収部とを分離し、回収部を軸方向後方に引いて回収するように構成したものである。
【0012】
回収部は、径方向で分割された内側スポークからなり、残置部は、カッタ面板と内側スポークに着脱自在に設けられると共にカッタ面板に取り付けられた外側スポークとからなり、内側スポークにカッタ駆動部が連結されると共にカッタ駆動部が軸駆動筒に収容され、その軸駆動筒が、シールドフレーム内に設けたガイド筒に摺動自在に設けられるとよい。
【0013】
カッタ面板には、掘削土砂をカッタ室に取り込むスリット部が形成され、そのスリット部に、予めスリット部を塞ぐ遮蔽装置が設けられ、掘進時はそのスリット部を通して掘削土をカッタ室に取り込み、土留壁形成時には、上記遮蔽装置にて上記スリット部を塞いで土留壁を形成するようにするとよい。
【0014】
内側スポークの前面には、上記カッタ面板の裏面に位置して裏当て中蓋が設けられ、その中蓋にカッタ面板に形成される表側スリット部に合わせて裏側スリット部が形成され、上記中蓋は、上記ガイド筒の前面を塞ぐよう、内側スポークに対して分離可能に設けられるとよい。
【0015】
カッタ駆動部は、内側スポークの軸部を回転自在に支持する軸受部材と、駆動モータと、駆動モータの回転を、上記軸部に伝達する伝動装置とからなり、これらが軸駆動筒に収容されると共に、軸駆動筒の前面に、軸部と一体に回転してカッタ室を区画する内周カッタ隔壁が設けられ、上記シールドフレームとガイド筒に外周カッタ隔壁が設けられるとよい。
【0016】
ガイド筒内周には、内側スポークをカッタ駆動部と共に後方移動する際に、軸駆動筒との間をシールするためのシール手段が設けられるとよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カッタの主要部を安全に、短い工期でかつ低コストで回収できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の好適実施の形態を添付図面を用いて説明する。
【0019】
図1に示すように、シールド掘進機1のカッタ2は、地中に残すべきカッタ面板3等の残置部4と、回収すべき回収部5とに軸方向分割可能に形成されており、シールド掘進機1が到達位置あるいは接合位置等の所定位置に到達したとき、残置部4と回収部5とを分離し、回収部5を軸方向後方に引いて回収できるように構成されている。
【0020】
回収部5は、カッタスポーク6を径方向で分割された内側スポーク7からなる。図3(a)に示すように、内側スポーク7は、複数放射状に組み付けられている。これら内側スポーク7のいずれかには、コピーカッタ8が径方向外方に出没自在に設けられている。図1に示すように、コピーカッタ8は、内側スポーク7に油圧シリンダ9を介して径方向出没自在に設けられており、油圧シリンダ9を縮退することで内側スポーク7内に収容されるようになっている。また、内側スポーク7は、軸部10を介してカッタ駆動部11に連結されている。
【0021】
カッタ駆動部11は、軸部10を回転自在に支持する軸受部材12と、駆動モータ13と、駆動モータ13の回転を軸部10に伝達する伝動装置14とからなる。カッタ駆動部11は、後述する軸駆動筒15内に収容されて設けられている。軸駆動筒15は、カッタ駆動部11をユニット化するものであり、シールドフレーム16内に設けられたガイド筒17に摺動自在に設けられている。ガイド筒17は、軸駆動筒15を収容するように軸駆動筒15より大径に形成されており、掘進方向前後に延びてシールドフレーム16の前部に配置されている。そしてこれにより、軸駆動筒15は、ガイド17筒に対して後方に移動可能となっている。ガイド筒17の内周には、内側スポーク7をカッタ駆動部11と共に後方に移動する際に、軸駆動筒15との間をシールするためのシール手段18が設けられている。また、軸駆動筒15の前面には、軸部10と一体に回転してカッタ室19を区画する内周カッタ隔壁20が設けられると共に、内周カッタ隔壁20の外周側を塞ぐ中間カッタ隔壁21が設けられており、シールドフレーム16とガイド筒17には、ガイド筒17の外周側にてカッタ室19を区画する外周カッタ隔壁22が設けられている。軸駆動筒15の後端には、シールドフレーム16の内周面23に当接されるリングガーダ24が設けられている。リングガーダ24は、リブ25を介してシールドフレーム16に固定されており、リブ25を切除することでシールドフレーム16に沿って摺動可能となっている。リングガーダ24にはシールドジャッキ(推進ジャッキ)26が装着されている。
【0022】
内側スポーク7の前面には、カッタ面板3の裏面に位置して裏当て中蓋27が設けられている。裏当て中蓋27は、内側スポーク7を回収する際にガイド筒17の前面を塞ぐためのものであり、ガイド筒17より大径に形成されると共に、内側スポーク7に対して分離可能に設けられている。図3(b)に示すように、裏当て中蓋27には、カッタ面板3に形成される表側スリット部28に合わせて裏側スリット部29が形成されており、シールド掘進機1が掘進するとき、カッタ面板3の表側スリット部28からカッタ室19に掘削土を取り込むのを阻害しないようになっている。
【0023】
図1に示すように、残置部4は、カッタ面板3と、内側スポーク7に着脱自在に設けられると共にカッタ面板3に取り付けられた外側スポーク30とからなる。カッタ面板3は、カッタスポーク6の前側に位置されてカッタスポーク6間に板状の掘削面を形成する面板部31と、面板部31の外周に設けられ軸方向後方に延びるリング部32とを備える。図3(b)に示すように、面板部31には、後方に位置されるカッタスポーク6の両側に沿うように開口する表側スリット部28が形成されている。また、表側スリット部28の後側には、カッタスポーク6と、カッタスポーク6と対向するスリット区画壁33とで表側スリット部28を延長する延長スリット部33aが形成されており、表側スリット部28と延長スリット部33aとでスリット部34を形成している。図3(a)、(b)に示すように、スリット部34には、スリット部34を塞ぐための遮蔽装置35が設けられている。遮蔽装置35は、掘進時にはスリット部34を開いて掘削土をカッタ室19に取り込み、土留壁形成時には、スリット部34を塞いで土留壁を形成するようになっている。具体的には、遮蔽装置35は、内側スポーク7の両側と外側スポーク30の外側とにそれぞれ設けられた拡縮自在なチューブ36からなる。チューブ36には、空気や水等の流体を供給する流体供給装置(図示せず)が接続されている。チューブ36は、流体供給装置から流体を供給されることでそれぞれ膨らんでスリット部34を塞ぐようになっている。外側スポーク30は内側スポーク7と同径の筒状に形成されている。
【0024】
次に、シールド掘進機1の回収方法と作用とについて述べる。
【0025】
図1に示すように、シールド掘進機1が到達位置あるいは接合位置等の所定位置に到達して使用済みとなったら、カッタ2の前面に予め設けられた注入孔(図示せず)からジェル充填材(以下、充填材という)37を吐出させてカッタ2の切羽側とカッタ室19とに充填材37を充填して止水すると共に、シールドフレーム16内に設けられたエレクタ38、作業台(図示せず)及び排土装置(図示せず)等の装置を取り外して回収する。充填材37は、高分子吸収体からなり、地山からの水を吸収して膨張することでカッタ2の周辺の空間を止水しつつ埋める。充填材37は、プリン状であり、外力を受けると動く程度の流動性を有する。なお、本実施の形態において充填材とは少なくとも数時間乃至数日(回収作業に要する時間)は固化せず、外力を受けて動く程度の流動性を有する非圧縮性のジェル充填材を意味し、これらの条件に合致しない液剤や固化剤を含まない。
【0026】
この後、カッタ2の残置部4を利用して土留壁を形成し、図4に示すようにカッタ2の切羽側に充填した充填材37をモルタルなど短時間で固化し、かつ、固化したときに土圧及び水圧に耐えうる強度を有する土留材39に置換して土留材を硬化させる。具体的には、残置部4で土留壁を形成する際には、図2に示すように、リブ25を切除してリングガーダ24をシールドフレーム16に対して後方に移動可能にし、シールドジャッキ26と既設セグメント40とを固定すると共に、シールドフレーム16と既設セグメント40とを固定し、しかる後、カッタ2の切羽側に充填材37を追加充填しながらシールドジャッキ26を縮退させて軸駆動筒15をカッタ2ごと軸方向後方に引き寄せ、カッタ2の残置部4をシールドフレーム16の前端に接触させて保持させる。これにより、残置部4のリング部32が全周に渡ってシールドフレーム16の前端に当接されることとなり、シールドフレーム16と残置部4との間の隙間は略完全に塞がれる。また、カッタ2の切羽側に充填材37を追加充填するため、カッタ2後退時に切羽側に充填した充填材37の圧が下がることはなく、地山を安定して保持しつつカッタ2を後退させることができる。
【0027】
カッタ2の切羽側に充填した充填材37を土留材39に置換する際には、図3(a)、(b)に示すように、遮蔽装置35のチューブ36に流体を供給してチューブ36を膨らませてスリット部34を閉じ、図4に示すように、機内側からカッタ2の切羽側の下部に土留材注入管41を挿入し、この土留材注入管41の先端から土留材39を吐出させてカッタ2の切羽側の下部に土留材39を供給すると共に、カッタ上部に設けられた注入孔から充填材37をカッタ切羽側の圧を一定に保つように抜き取り、充填材37を下側から徐々に土留材39に置換する。充填材37は、土留材39よりも軽いため、混ざることなく効率よく置換できる。またこのとき、カッタ面板3と遮蔽装置35とが土留壁となってカッタ2の切羽側とカッタ室19とを仕切ると共に、カッタ室19内の充填材37がその粘性で切羽側からの土留材39の流入を阻止するため、土留材39がカッタ室19内に流入することはない。
【0028】
この後、図5に示すように、コピーカッタ8を縮退させて内側スポーク7内に収容し、カッタ2の残置部4から回収部5を分離させる。残置部4から回収部5を分離させる作業は、残置部4と回収部5を連結するボルト等を機内側から外すことで行う。
【0029】
回収部5が残置部4から分離されたら、回収部5を掘進方向後方にジェル充填層42中を通して引く。具体的には、回収部5を掘進方向後方に引く作業は、シールドジャッキ26を更に縮退させて回収部5を軸駆動筒15ごと後退させることで行う。このとき、図6に示すように、予め機内側から残置部4と外周カッタ隔壁22との間に形成されるカッタ室19の上部にジェル注入管43を挿入しておき、回収部5の後退に応じてジェル注入管43からカッタ室19内に充填材37を追加充填し、カッタ室19内の充填材37の圧を一定に保つようにする。ただし、ジェル注入管43をカッタ室19の上部に挿入するのは、後でカッタ室19内の充填材37を土留材39に置換するときの便宜のためであり、上記のジェル追加充填時にはカッタ室19のいずれの位置に挿入しても構わない。
【0030】
回収部5たる内側スポーク7がガイド筒17内に入り、内側スポーク7の前面に設けられた裏当て中蓋27がガイド筒17の前端に当接したら、内側スポーク7から裏当て中蓋27を分離させてガイド筒17の前方に残し、軸駆動筒15を更に後方に引き、回収部5をガイド筒17から引き抜いて回収する。裏当て中蓋27をガイド筒17の前端に当接させて残すことでカッタ回収時の止水性を更に高めることができ、作業の安全性を更に高めることができる。またこのとき、シールドジャッキ26が完全に縮退されたら、シールドジャッキ26及びリングガーダ24を軸駆動筒15から取り外して回収し、図7に示す軸駆動筒15を図示しない牽引装置を用いて更に後方に引く。
【0031】
この後、カッタ室19内に充填された充填材37を土留材39に置換して硬化させ、ガイド筒17前方の土留を完全なものとする。具体的には、図8に示すように機内側からカッタ室19の下部に土留材注入管41を挿入し、この土留材注入管41の先端から土留材39を吐出させてカッタ室19の下部に土留材39を供給すると共に、ジェル注入管43から充填材37をカッタ室19内の圧を一定に保つように抜き取り、カッタ室19内に充填された充填材37を下側から徐々に土留材39に置換する。
【0032】
このように、シールド掘進機1が所定位置に到達したのち、カッタ2の切羽側とカッタ室19とに充填材37を充填し、充填材37で止水しつつ土圧を支承しながらカッタ2を掘進方向後方にジェル充填層42中を通して引き抜いて回収し、その後、カッタ室19内の充填材37をモルタルなどの土留材39に置換して硬化させるものとしたため、カッタ2の主要部を安全に、短い工期でかつ低コストで回収できる。
【0033】
カッタ2を、地中に残すべきカッタ面板3等の残置部4と回収すべき回収部5とに予め軸方向に分割可能に形成しておき、シールド掘進機1が所定位置に到達したのち、カッタ2の切羽側とカッタ室19とに充填材37を充填して止水したのち、残置部4を利用して土留壁を形成し、しかる後カッタ2の切羽側に充填した充填材37をモルタルなどの土留材39に置換すると共に硬化させ、残置部4から回収部5を分離すると共にその回収部5を掘進方向後方にジェル充填層42中を通して引き抜いて回収し、その後、カッタ室19内の充填材37を土留材39に置換して硬化させるため、カッタ2の主要部を安全に、短い工期でかつ低コストで回収できる。
【0034】
残置部4を利用して土留壁を形成する際に、そのカッタ2を軸方向後方に引き寄せて、その残置部4をシールドフレーム16前端に保持させ、しかる後、回収部5を掘進方向後方に引き抜いて回収するため、回収部5を回収する際に残置部4が動くのを更に確実に防ぐことができ、作業の安全性を高めることができる。
【0035】
回収部5は、径方向で分割された内側スポーク7からなり、残置部4は、カッタ面板3と内側スポーク7に着脱自在に設けられると共にカッタ面板3に取り付けられた外側スポーク30とからなり、内側スポーク7にカッタ駆動部11が連結されると共に、そのカッタ駆動部11がシールドフレーム16内に移動可能に保持され、回収部5を掘進方向後方に移動する際にカッタ駆動部11ごと後方に移動されるようにしたため、回収部5とカッタ駆動部11とを一括して回収することができ、複数の回収物を短時間で効率よく回収できる。
【0036】
カッタ2が、地中に残すべきカッタ面板3等の残置部4と、回収すべき回収部5とに軸方向分割可能に形成され、到達位置あるいは接合位置等の所定位置に到達したとき、残置部4と回収部5とを分離し、回収部5を軸方向後方に引いて回収するようにシールド掘進機1を構成したため、簡易な構造でカッタ2の主要部を安全に、短い工期でかつ低コストで回収できる。
【0037】
回収部5は、径方向で分割された内側スポーク7からなり、残置部4は、カッタ面板3と内側スポーク7に着脱自在に設けられると共にカッタ面板3に取り付けられた外側スポーク30とからなり、内側スポーク7にカッタ駆動部11が連結されると共にカッタ駆動部11が軸駆動筒15に収容され、その軸駆動筒15が、シールドフレーム16内に設けたガイド筒17に摺動自在に設けられるものとしたため、軸駆動筒15を掘進方向後方に引き抜くことで回収部5とカッタ駆動部11とを一括して回収することができ、複数の回収物を短時間で効率よく回収できる。
【0038】
カッタ面板3には、掘削土砂をカッタ室19に取り込むスリット部34が形成され、そのスリット部34に、予めスリット部34を塞ぐ遮蔽装置35が設けられ、掘進時はそのスリット部34を通して掘削土をカッタ室19に取り込み、土留壁形成時には、遮蔽装置35にてスリット部34を塞いで土留壁を形成するようにしたため、充填材37や土留材39がスリット部34を通じて流通するのを防ぐことができ、土留を確実なものにできる。
【0039】
内側スポーク7の前面には、カッタ面板3の裏面に位置して裏当て中蓋27が設けられ、その裏当て中蓋27にカッタ面板3に形成される表側スリット部28に合わせて裏側スリット部29が形成され、裏当て中蓋27は、ガイド筒17の前面を塞ぐよう、内側スポーク7に対して分離可能に設けられるものとしたため、内側スポーク7をガイド筒17内に引き入れて回収するとき、裏当て中蓋27で容易にガイド筒17を塞ぐことができ、土留を更に確実なものにできる。
【0040】
カッタ駆動部11は、内側スポーク7の軸部10を回転自在に支持する軸受部材12と、駆動モータ13と、駆動モータ13の回転を、軸部10に伝達する伝動装置14とからなり、これらが軸駆動筒15に収容されると共に、軸駆動筒15の前面に、軸部10と一体に回転してカッタ室19を区画する内周カッタ隔壁20が設けられ、シールドフレーム16とガイド筒17に外周カッタ隔壁22が設けられるものとしたため、軸受部材12、駆動モータ13及び伝動装置14を簡単な構造でユニット化できると共に、隔壁の内周側と外周側とを簡単な構造で分離可能にできる。
【0041】
ガイド筒17内周には、内側スポーク7をカッタ駆動部11と共に後方移動する際に、軸駆動筒15との間をシールするためのシール手段18が設けられるものとしたため、ガイド筒17内で軸駆動筒15を後方に移動させるときガイド筒17と軸駆動筒15との間から機内に水が浸入するのを確実に防ぐことができる。
【0042】
なお、遮蔽装置35は、チューブ36を膨らませてスリット部34を閉じるものとしたが、これに限るものではない。カッタ面板3やカッタスポーク6に遮蔽板(図示せず)をスライド自在に設けてスリット部34を開閉するものとしてもよい。
【0043】
また、内側スポーク7を回収する際にガイド筒17の前面を裏当て中蓋27で塞ぐものとしたが、カッタ2の切羽側に充填した土留材39がしっかりと自立し、カッタ室19に浸水したり土砂が流入するおそれがない場合、ガイド筒17の前面を塞がないものとしてもよい。この場合、必ずしもカッタ室19内の充填材37を土留材39に置換して硬化させる必要はなく、適宜残置部4とその周囲に止水施工を施すものとしてもよい。また、回収部5をジェル充填層42中を通して引くとき、カッタ室19内に充填材37を追加充填する代わりにカッタ室19内に空気を送ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の好適実施の形態を示す所定位置に到達したシールド掘進機の側断面図である。
【図2】図1の次の工程を示すシールド掘進機の側断面図である。
【図3】(a)は図2の次の工程を示すシールド掘進機の正面図であり、(b)は(a)のA−A線矢視断面図である。
【図4】図3の次の工程を示すシールド掘進機の側断面図である。
【図5】図4の次の工程を示すシールド掘進機の側断面図である。
【図6】図5の次の工程を示すシールド掘進機の側断面図である。
【図7】図6の次の工程を示すシールド掘進機の側断面図である。
【図8】図7の次の工程を示すシールド掘進機の側断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 シールド掘進機
2 カッタ
3 カッタ面板
4 残置部
5 回収部
7 内側スポーク
10 軸部
11 カッタ駆動部
12 軸受部材
13 駆動モータ
14 伝動装置
15 軸駆動筒
16 シールドフレーム
17 ガイド筒
18 シール手段
19 カッタ室
20 内周カッタ隔壁
22 外周カッタ隔壁
27 裏当て中蓋
28 表側スリット部
29 裏側スリット部
30 外側スポーク
34 スリット部
35 遮蔽装置
37 ジェル充填材(充填材)
39 土留材
42 ジェル充填層(充填層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
到達位置あるいは接合位置等の所定位置に到達して使用済みとなったシールド掘進機の回収方法において、上記シールド掘進機が所定位置に到達したのち、カッタの切羽側とカッタ室とに充填材を充填し、該充填材で止水しつつ土圧を支承しながら上記カッタを掘進方向後方に充填層中を通して引き抜いて回収し、その後、充填材をモルタルなどの土留材に置換して硬化させることを特徴とするシールド掘進機の回収方法。
【請求項2】
到達位置あるいは接合位置等の所定位置に到達して使用済みとなったシールド掘進機の回収方法において、カッタを、地中に残すべきカッタ面板等の残置部と回収すべき回収部とに予め軸方向に分割可能に形成しておき、上記シールド掘進機が所定位置に到達したのち、カッタの切羽側とカッタ室とに充填材を充填して止水したのち、上記残置部を利用して土留壁を形成し、しかる後カッタの切羽側に充填した充填材をモルタルなどの土留材に置換すると共に硬化させ、上記残置部から上記回収部を分離すると共にその回収部を掘進方向後方に充填層中を通して引き抜いて回収することを特徴とするシールド掘進機の回収方法。
【請求項3】
残置部を利用して土留壁を形成する際に、そのカッタを軸方向後方に引き寄せて、その残置部をシールドフレーム前端に保持させ、しかる後、回収部を掘進方向後方に引き抜いて回収する請求項2記載のシールド掘進機の回収方法。
【請求項4】
回収部は、径方向で分割された内側スポークからなり、残置部は、カッタ面板と内側スポークに着脱自在に設けられると共にカッタ面板に取り付けられた外側スポークとからなり、上記内側スポークにカッタ駆動部が連結されると共に、そのカッタ駆動部がシールドフレーム内に移動可能に保持され、回収部を掘進方向後方に移動する際にカッタ駆動部ごと後方に移動される請求項2又は3記載のシールド掘進機の回収方法。
【請求項5】
請求項2〜4記載のシールド掘進機の回収方法を用いるシールド掘進機において、カッタが、地中に残すべきカッタ面板等の残置部と、回収すべき回収部とに軸方向分割可能に形成され、到達位置あるいは接合位置等の所定位置に到達したとき、上記残置部と上記回収部とを分離し、回収部を軸方向後方に引いて回収するように構成したことを特徴とするシールド掘進機。
【請求項6】
回収部は、径方向で分割された内側スポークからなり、残置部は、カッタ面板と内側スポークに着脱自在に設けられると共にカッタ面板に取り付けられた外側スポークとからなり、内側スポークにカッタ駆動部が連結されると共にカッタ駆動部が軸駆動筒に収容され、その軸駆動筒が、シールドフレーム内に設けたガイド筒に摺動自在に設けられる請求項5記載のシールド掘進機。
【請求項7】
カッタ面板には、掘削土砂をカッタ室に取り込むスリット部が形成され、そのスリット部に、予めスリット部を塞ぐ遮蔽装置が設けられ、掘進時はそのスリット部を通して掘削土をカッタ室に取り込み、土留壁形成時には、上記遮蔽装置にて上記スリット部を塞いで土留壁を形成するようにした請求項6記載のシールド掘進機。
【請求項8】
内側スポークの前面には、上記カッタ面板の裏面に位置して裏当て中蓋が設けられ、その中蓋にカッタ面板に形成される表側スリット部に合わせて裏側スリット部が形成され、上記中蓋は、上記ガイド筒の前面を塞ぐよう、内側スポークに対して分離可能に設けられる請求項6又は7記載のシールド掘進機。
【請求項9】
カッタ駆動部は、内側スポークの軸部を回転自在に支持する軸受部材と、駆動モータと、駆動モータの回転を、上記軸部に伝達する伝動装置とからなり、これらが軸駆動筒に収容されると共に、軸駆動筒の前面に、軸部と一体に回転してカッタ室を区画する内周カッタ隔壁が設けられ、上記シールドフレームとガイド筒に外周カッタ隔壁が設けられる請求項6〜8いずれかに記載のシールド掘進機。
【請求項10】
ガイド筒内周には、内側スポークをカッタ駆動部と共に後方移動する際に、軸駆動筒との間をシールするためのシール手段が設けられる請求項6〜9いずれかに記載のシールド掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−92412(P2007−92412A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284050(P2005−284050)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】