説明

シールド掘進機

【課題】回転隔壁への土砂の付着を防止する。
【解決手段】筒状のシールドフレーム2の前端に回転カッターフレーム3を設け、前記シールドフレーム2内にこれを前後に仕切る隔壁4を設け、該隔壁4と前記回転カッターフレーム3との間に掘削土砂を取り込んでから後方へ搬出するようにしたシールド掘進機において、前記隔壁4は、前記シールドフレーム2の内周に設けられた環状の固定隔壁12と、前記回転カッターフレーム3と一緒に回転する回転隔壁13とを有し、該回転隔壁13に土砂の付着を抑制するための加振装置14を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機に係り、特にシールドフレーム内の隔壁を回転カッターフレームと一緒に回転する回転隔壁を有する構造とすると共にその回転隔壁における土砂の付着や共回りを抑制したシールド掘進機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機としては、図5に示すように、筒状のシールドフレーム2の前端に回転カッターフレーム3を設け、前記シールドフレーム2内にこれを前後に仕切る隔壁(バルクヘッドともいう。)4を設け、回転カッターフレーム3により掘削した掘削土砂を前記隔壁4と前記回転カッターフレーム3との間の土砂取り込み室(チャンバーともいう。)9に取り込んでからスクリューコンベヤ等の搬出手段により後方へ搬出するようにしたものが知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
前記隔壁4には前記回転カッターフレーム3の回転中心5回りに環状に形成された回転リング15が回転自在に設けられ、前記回転カッターフレーム3は、その回転中心部から後方へ延出して設けられた内部が中空のセンターシャフト24と、回転カッターフレーム3の中間部から後方に延出されて前記回転リング15に接続された中間ビーム25とを備えている。
【0004】
前記隔壁4は、シールドフレーム2の内周に固定された第1の固定隔壁12と、該第1の固定隔壁4aと前記センターシャフト24との間に設けられた第2の固定隔壁4bとを有している。前記回転リング15にはリング状の従動歯車16が取付けられ、前記第1の固定隔壁4aには前記従動歯車16に噛合する駆動歯車18を有する回転駆動手段であるモータ19が取付けられている。前記回転カッターフレーム3には油圧により回転カッターフレーム3の周縁部から径方向外方に突出されて地山を掘削するオーバーカッター(図示省略)が取付けられており、その作動用の油圧を供給するための油圧配管(図示省略)は前記センターシャフトの後端部に設けられたロータリージョイント35を介して前記センターシャフト24の内部を通り、前記オーバーカッターに接続されている。このように回転カッターフレーム3のオーバーカッターへの油圧の供給をセンターシャフト24を利用して行う構造上、回転カッターフレーム3の回転駆動方式は、センターシャフト駆動方式ではなく、中間ビーム駆動方式が採用されている。
【0005】
そして、前記第1の固定隔壁4aと第2の固定隔壁4bには、回転部である回転リング15との間をシールする第1シール機構23及び第2シール機構41が設けられ、第2固定隔壁4bにはセンターシャフト24との間をシールする第3シール機構42が設けられている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−149088号公報
【特許文献2】実開昭60−27197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記シールド掘進機においては、隔壁4全体を固定隔壁とする構造上、回転部である回転リング15やセンターシャフト24との間にシール機構23,41,42を複数設ける必要があるため、構造の複雑化やコストの上昇を余儀なくされるという問題がある。このような問題を解消する方法としては、前記第2固定隔壁4bに代えて回転カッターフレーム3と一緒に回転する回転隔壁を採用することが考えられるが、回転隔壁を採用すると、該回転隔壁と回転カッターフレーム3との間に取り込まれた土砂が回転隔壁に付着して共回りを起し易く、その土砂の搬出が困難になるという問題がある。このため、第2固定隔壁4bを回転隔壁にしたシールド掘進機は実現されていない。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、回転隔壁への土砂の付着及び共回りを防止することができるシールド掘進機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、筒状のシールドフレームの前端に回転カッターフレームを設け、前記シールドフレーム内にこれを前後に仕切る隔壁を設け、該隔壁と前記回転カッターフレームとの間に掘削土砂を取り込んでから後方へ搬出するようにしたシールド掘進機において、前記隔壁は、前記シールドフレームの内周に設けられた環状の固定隔壁と、前記回転カッターフレームと一緒に回転する回転隔壁とを有し、該回転隔壁に土砂の付着を抑制するための加振装置を設けたことを特徴とする。
【0010】
前記加振装置としては、超音波発振装置であることが好ましい。前記固定隔壁には前記回転カッターフレームの回転中心回りに環状に形成された回転リングが回転自在に設けられ、前記回転カッターフレームは、その回転中心部から後方へ延出して設けられた内部が中空のセンターシャフトと、回転カッターフレームの中間部から後方に延出されて前記回転リングに接続された中間ビームとを有し、前記センターシャフトと前記回転リングとの間に前記回転隔壁が設けられていることが好ましい。
【0011】
前記回転隔壁は、前記センターシャフト及び前記回転リングに振動吸収部材を介して取付けられていることが好ましい。前記センターシャフトには、土砂の付着を抑制すべく加圧水を噴射するための噴射ノズルが設けられていることが好ましい。前記センターシャフトには、マンホールと、該マンホールを開閉可能に閉塞する蓋とが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転隔壁への土砂の付着を防止することができる。また、回転隔壁を採用することによりシール機構の削減及びコストの低減が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基いて詳述する。図1は本発明の実施の形態を示すシールド掘進機の要部縦断面図、図2は図1のシールド掘進機を進行方向前方から見た概略的正面図、図3は回転隔壁の正面図、図4は回転隔壁を固定する部分の拡大断面図である。
【0014】
図1ないし図2において、1はシールド掘進機であり、このシールド掘進機1は、筒状例えば円筒状のシールドフレーム2と、該シールドフレーム2の掘進方向前端部に回転可能に設けられた回転カッターフレーム3と、前記シールドフレーム2内を前後に仕切る隔壁(バルクヘッド)4とを備えている。隔壁4は、シールドフレーム2の前端寄りすなわち回転カッターフレーム3に近付けて設けられている。
【0015】
回転カッターフレーム3は、回転中心(軸心)5より放射状に設けられた複数のカッタースポーク6と、これらカッタースポーク6,6間に設けられたカッター面板7とを有している。カッタースポーク6には切羽地山を掘削する複数のカッタービット8が取付けられ、前記カッター面板7にはカッタービット8により掘削された土砂を回転カッターフレーム3と隔壁4の間に形成した土砂取り込み室(チャンバー)9に取り込むための取り込み口であるカッタースリット10が設けられている。前記回転カッターフレーム3には油圧により回転カッターフレーム3の周縁部から径方向外方に突出して地山を掘削するオーバーカッター11が伸縮自在に設けられている。前記隔壁4を構成する後述の固定隔壁12の下側には土砂取り込み室9から土砂を後方に搬出するための土砂搬出手段例えばスクリューコンベヤ(図示省略)が設けられている。
【0016】
前記隔壁4は、前記シールドフレーム2の内周に設けられた環状の固定隔壁12と、前記回転カッターフレーム3と一緒に回転する回転隔壁13とを有し、この回転隔壁13には該回転隔壁13への土砂の付着を抑制する加振装置14が取付けられている。前記加振装置14としては、回転隔壁13の内面に高い周波数の振動を発生させて回転隔壁13の内面に付着する土砂を回転隔壁13の壁面から剥離させたり、粉砕することが可能な例えば超音波発振装置が好適である。
【0017】
前記回転カッターフレーム3の回転駆動方式として中間ビーム駆動方式を採用するために、前記固定隔壁12には、前記回転カッターフレーム3の回転中心5回りに環状に形成された回転リング15が回転自在に設けられている。この回転リング15の後端部にはリング状の従動歯車16がボルト17で取付けられ、前記固定隔壁12には前記従動歯車16に噛合する駆動歯車18を有する回転駆動手段であるモータ(例えば油圧モータ)19が取付けブラケット20を介して取付けられている。前記取付けブラケット20には、前記従動歯車16を回転自在に支持するボールベアリング又はローラベアリングからなる軸受21がボルト22で取付けられている。また、前記固定隔壁12には、前記回転リング15との間をシールするためのシール機構(従来の第1シール機構に相当)23が取付けブラケット20を介して取付けられている。
【0018】
前記回転カッターフレーム3は、その回転中心部から後方へ延出して設けられた内部が中空のセンターシャフト24と、回転カッターフレーム3の中間部から後方に延出されて前記回転リング15に接続された中間ビーム25とを有し、前記センターシャフト24と前記回転リング15との間に前記回転隔壁13が設けられている。この回転隔壁13は、図3にも示すように環状に形成されており、前記センターシャフト24と前記回転リング15とに対して振動吸収部材26を介して取付けられていることが他部材への振動の影響(例えばボルトの緩み)を防止する上で好ましい。
【0019】
前記回転隔壁13を取付けるために、回転リング15の内周とセンターシャフト24の外周とには、内周鍔部27と外周鍔部28とがそれぞれ設けられ、これら内周鍔部27と外周鍔部28に対して回転隔壁13の外周部と内周部とが複数のボルト29で取付けられている。この場合、図4にも示すように前記回転隔壁13の内周縁部と外周縁部とには周方向に適宜間隔でボルト29を螺合するためのネジ孔30が設けられ、前記内周鍔部27及び外周鍔部28には前記ボルト29を挿入する孔部31がネジ孔30に対応して設けられている。前記振動吸収部材26としては、弾性を有するゴム製又は合成樹脂製であり、回転隔壁13と内周鍔部27又は外周鍔部28の間に介在される第1吸収部材26aと、ボルト29の頭部29aと内周鍔部28又は外周鍔部28間に介在される第2吸収部材26bと、前記ボルト挿入孔31とボルト29の間に介在される円筒状の第3吸収部材26cとからなることが好ましい。
【0020】
前記センターシャフト24は、回転カッターフレーム3と回転隔壁13との間に位置される筒状例えば円筒状の胴部24aと、該胴部24aの後端(開口端)に設けられた裁頭円錐状又は裁頭角錐状又はドーム状の後端部24bと有している。前記センターシャフト(具体的には土砂取り込み室9の一部を形成する胴部24a)24には、胴部24aへの土砂の付着を抑制すべく加圧水を噴射するための噴射ノズル(例えばジェットノズル)32が設けられていることが好ましい。
【0021】
前記オーバーカッター11を作動する油圧シリンダ11aに油圧を供給するための油圧配管(図示省略)や、前記加振装置14の給電ケーブル33、及び前記噴射ノズル32の加圧水供給管34は、前記センターシャフト24の後端部に設けられたロータリージョイント35を介して前記センターシャフト24の内部を通って前記オーバーカッター11の油圧シリンダ11a、加振装置14及び噴射ノズル32にそれぞれ接続されている。前記加振装置14の給電ケーブル33は、センターシャフト24の内部から胴部24aを貫通して加振装置14まで導かれている。前記回転カッターフレーム3におけるカッタービット8の交換やオーバーカッター11のメンテナンスを行うために、前記センターシャフト24には、マンホール36と、該マンホール36を開閉可能に閉塞する蓋37とが設けられていることが好ましい。この場合、センターシャフト24の後端部の傾斜した壁面に開口部であるマンホール36を形成すると共に該マンホール36を閉塞する蓋37をヒンジ38を介して開閉自在に取付ければ良い。この蓋37の閉位置の固定は、例えばボルト又は施錠機構によって行われる。なお、図1に示すように回転カッターフレーム3の背面部には、該回転カッターフレーム3と一体に回転して土砂取り込み室内の土砂を混練したり、固定隔壁12への土砂の付着を抑制するための攪拌棒39が突設されていることが好ましい。また、回転部である前記回転リング15や回転隔壁13への巻き込みを防止するため、固定隔壁12又は取付けブラケット20には回転リング15や回転隔壁13を覆うように防護ネット40が設けられていることが好ましい。以上の構成からなるシールド掘進機1によれば、筒状のシールドフレーム2の前端に回転カッターフレーム3を設け、前記シールドフレーム2内にこれを前後に仕切る隔壁4を設け、該隔壁4と前記回転カッターフレーム3との間に掘削土砂を取り込んでから後方へ搬出するようにしたシールド掘進機において、前記隔壁4は、前記シールドフレーム2の内周に設けられた環状の固定隔壁12と、前記回転カッターフレーム3と一緒に回転する回転隔壁13とを有し、該回転隔壁13に土砂の付着を抑制するための加振装置14を設けているため、回転隔壁13への土砂の付着を防止することができる。特に、回転隔壁13を採用することにより固定隔壁12で多数個の使用を余儀なくされていたシール機構を削減でき、コストの低減が図れる。
【0022】
前記加振装置14として超音波発振装置を用いることにより、回転隔壁13の内面に高い周波数の振動を発生させて回転隔壁13の内面に付着する土砂を回転隔壁13の壁面から剥離させたり、粉砕することができる。前記固定隔壁12には前記回転カッターフレーム3の回転中心5回りに環状に形成された回転リング15が回転自在に設けられ、前記回転カッターフレーム3は、その回転中心部から後方へ延出して設けられた内部が中空のセンターシャフト24と、回転カッターフレーム3の中間部から後方に延出されて前記回転リング15に接続された中間ビーム25とを有し、前記センターシャフト24と前記回転リング15との間に前記回転隔壁14が設けられているため、回転カッターフレーム3の中間ビーム回転駆動方式でありながら回転隔壁13を容易に採用することができる。前記回転隔壁13は、前記センターシャフト24及び前記回転リング15に振動吸収部材26を介して取付けられているため、他部材への振動の影響を抑制ないし防止することができる。前記センターシャフト24には、土砂の付着を抑制すべく加圧水を噴射するための噴射ノズル32が設けられているため、センターシャフト24に土砂が付着するのを容易に抑制することができる。前記センターシャフト24には、マンホール36と、該マンホール36を開閉可能に閉塞する蓋37とが設けられているため、センターシャフト24内を通ってカッタービット8の交換やオーバーカッター11のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の設計変更が可能である。例えば、センターシャフト24の胴部24aには、噴射ノズル32に代えて加振装置を設けても良く、或いは噴射ノズル32と共に加振装置を設けても良い。また、回転隔壁13には、加振装置14と共に噴射ノズルを設けても良い。なお、加振装置14としては、超音波発振装置が好ましいが、バイブレーターであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態を示すシールド掘進機の要部縦断面図である。
【図2】図1のシールド掘進機を進行方向前方から見た概略的正面図である。
【図3】回転隔壁の正面図である。
【図4】回転隔壁を固定する部分の拡大断面図である。
【図5】従来のシールド掘進機の要部構造を概略的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 シールド掘進機
2 シールドフレーム
3 回転カッターフレーム
4 隔壁
5 回転中心
12 固定隔壁
13 回転隔壁
14 加振装置
24 センターシャフト
25 中間ビーム
26 振動吸収部材
32 噴射ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のシールドフレームの前端に回転カッターフレームを設け、前記シールドフレーム内にこれを前後に仕切る隔壁を設け、該隔壁と前記回転カッターフレームとの間に掘削土砂を取り込んでから後方へ搬出するようにしたシールド掘進機において、前記隔壁は、前記シールドフレームの内周に設けられた環状の固定隔壁と、前記回転カッターフレームと一緒に回転する回転隔壁とを有し、該回転隔壁に土砂の付着を抑制するための加振装置を設けたことを特徴とするシールド掘進機。
【請求項2】
前記加振装置は、超音波発振装置であることを特徴とする請求項1記載のシールド掘進機。
【請求項3】
前記固定隔壁には前記回転カッターフレームの回転中心回りに環状に形成された回転リングが回転自在に設けられ、前記回転カッターフレームは、その回転中心部から後方へ延出して設けられた内部が中空のセンターシャフトと、回転カッターフレームの中間部から後方に延出されて前記回転リングに接続された中間ビームとを有し、前記センターシャフトと前記回転リングとの間に前記回転隔壁が設けられていることを特徴とする請求項1記載のシールド掘進機。
【請求項4】
前記回転隔壁は、前記センターシャフト及び前記回転リングに振動吸収部材を介して取付けられていることを特徴とする請求項3記載のシールド掘進機。
【請求項5】
前記センターシャフトには、土砂の付着を抑制すべく加圧水を噴射するための噴射ノズルが設けられていることを特徴とする請求項3記載のシールド掘進機。
【請求項6】
前記センターシャフトには、マンホールと、該マンホールを開閉可能に閉塞する蓋とが設けられていることを特徴とする請求項3記載のシールド掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−228261(P2009−228261A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73473(P2008−73473)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】