説明

シールプレートおよびこれに用いられるシール材

【課題】所定以上の圧縮力がシール材に作用した場合であっても、パーティクルの発生や、シール材が破損したりすることがないとともに、シール部がエッチングされ難いシールプレートおよびこれに用いられるシール材を提供すること。
【解決手段】シール材の断面形状が、シール溝の底面に接合される底辺部と、シール溝の内側面に接合される内側辺部と、弁座面32に向かって突設する頂部17と、頂部の外側に形成される外側傾斜辺部18と、頂部の内側に形成される内側傾斜辺部16と、を少なくとも有しており、さらに、外側傾斜辺部または内側傾斜辺部の少なくともいずれか一方には、少なくともシール溝の天端面よりも高い位置に、前記外側傾斜辺部および/または内側傾斜辺部に対して腹付けされたような形状をなした余剰部16bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空用ゲート弁用のシールプレートおよびこれに用いられるシール材に関し、より詳しくは、半導体製造装置の処理室などに組み込まれる真空用ゲート弁のシールプレートと、このようなシールプレートに用いられるシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シリコンウェハなどの半導体の製造工程においては、真空環境下にある処理室内で、プラズマエッチングなどのワーク加工や処理が行われており、このようなワークの出し入れ部となるゲート開口部には、例えばシール溝にシール材が接着されたシールプレートを有する真空用ゲート弁などが用いられている。
【0003】
例えば、図12に示した半導体製造装置においては、プロセスチャンバー140とトランスファーチャンバー142との間にあるワーク出し入れ用のゲート開口部134をシールするのに、真空用ゲート弁100が用いられている。
【0004】
このような真空用ゲート弁100は、図12に示したように、シール材110とプレート本体120とから構成されるシールプレート130を備えている。プレート本体120は平板状に形成されており、そのプレート前面124の外周縁には、外側が開放された断面略L字状のシール溝122が形成されている。また、シール材110は周環状に形成されており、このシール溝122に装着されている。
【0005】
そして、シールプレート130がゲート開口部134に向かって移動し、シール材110がゲート開口部134の外周の弁座面132に弾力的に圧接されることで、ゲート開口部134がシールされるようになっている。なお、シールプレート130のプレート本体120は、例えばアルミニウムなどの金属により形成され、シール材110は、例えばフッ素ゴムなどの弾性部材から形成されている。
【0006】
このような真空用ゲート弁100に用いられる従来のシール材110としては、例えば図13〜図14に示したようなシール材110が、特許文献1に開示されている。
ここで、図13は、従来のシール材がシール溝に装着されている状態を示した断面図であり、図14は、従来のシール材が弁座面に圧接されて圧縮変形した状態を示した断面図である。
【0007】
この特許文献1に開示されているシール材110は、図13に示したように、その断面形状が、シール溝122の底面122aに接合される底辺部112aと、シール溝122の内側面122bに接合される内側辺部112bと、弁座面132に向かって突設する弧状の頂部117と、頂部117の外側に形成される外側傾斜辺部118と、頂部117の内側に形成される内側傾斜辺部116と、を有している。
【0008】
そして、シールプレート130が弁座面132に向かって移動することで、シール材110の頂部117が弁座面132に当接するとともに、内側傾斜辺部116および外側傾斜辺部118が、図14に示した如く圧縮変形する。そして、圧縮変形した頂部117、および内側傾斜辺部116と外側傾斜辺部118の一部は、その弾性復元力によって弁座面132に押し付けられ、シール部119となって弁座面132とシール幅Lpにわたって当接し、ゲート開口部134をシールする。このように、シール材110によってゲート開口部134がシールされることで、プロセスチャンバー140が密閉状態になるとともに、ゲート開口部134内の処理ガスGのトランスファーチャンバー142への流入が防止されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2008/001683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述した処理ガスGは、例えばプラズマエッチングなどに用いられる反応性ガスである。シール材110は、この反応性ガスに曝されると、例えば、図14の符号Epで示した如くエッチングされる。そして、ゲート開口部134をシールするシール部119のシール幅がLpからLp´と短くなって、シール性能が低下する。そして、さらにエッチングが進行すると、最終的にはシール性を維持できなくなってしまう。
【0011】
したがって、この従来のシール材110にあっては、高いシール性を維持するために頻繁にシール材を交換する必要があった。このため、この従来のシール材110よりも長寿命なシール材の開発が望まれていた。
【0012】
また、上述したシール材110は、図13に示したように、内側傾斜辺部116および外側傾斜辺部118が一様に直線状に傾斜しており、シール溝122の天端面122cよりも高い位置にある部分が、断面略山形に形成されている。
【0013】
したがって、この従来のシール材110に所定以上の圧縮力が作用した場合には、図14に示した状態よりもシール材110がさらに圧縮変形し、プレート本体120と弁座面132とが直接接触してパーティクルが発生することがあった。また、シール材110が繰り返し過剰に圧縮変形した場合には、シール材110に亀裂などが生じ、シール材110が破損する場合があった。
【0014】
また、この従来のシール材110を、高温環境下(例えば200℃以上)で使用した場合には、シール材110が大きく熱膨張し、特に図14に示したB´部において、熱膨張に起因する大きい内部応力が発生する。そして、この部分がシール溝122から剥がれてしまったり、亀裂が生じて破損したりする場合があった。
【0015】
本発明は、上述したような従来の課題に鑑みなされたものであって、ゲート開口部をシールするシール材のシール部がエッチングされ難く、したがって、従来のシールプレートと比べて長寿命とすることができるシールプレートおよびこれに用いられるシール材を提供することを目的とする。
【0016】
また、所定以上の圧縮力がシール材に作用した場合であっても、プレート本体と弁座面とが直接接触してパーティクルが発生したり、シール材が破損したりすることがないシールプレートおよびこれに用いられるシール材を提供することを目的とする。
【0017】
また高温環境下で使用した場合にも、熱膨張によってシール材が剥がれたり、破損したりすることがないシールプレートおよびこれに用いられるシール材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するために発明されたものであって、
本発明のシールプレートは、
ゲート開口部の外周に形成されている弁座面に当接することで、ゲート開口部をシールする真空用ゲート弁に用いられるシールプレートであって、
前記シールプレートは、
全体が略平板状をなし、その前面の外周縁に外側が開放されたシール溝が形成されたプレート本体と、
前記シール溝に装着される周環状のシール材と、を備えており、
前記シール材は、その断面形状が、前記シール溝の底面に接合される底辺部と、前記シール溝の内側面に接合される内側辺部と、前記弁座面に向かって突設する頂部と、前記頂部の外側に形成される外側傾斜辺部と、前記頂部の内側に形成される内側傾斜辺部と、を少なくとも有しており、さらに、前記外側傾斜辺部または内側傾斜辺部の少なくともいずれか一方には、少なくとも前記シール溝の天端面よりも高い位置に、前記外側傾斜辺部および/または内側傾斜辺部に対して腹付けされたような形状をなした余剰部が形成されていることを特徴とする。
【0019】
このように構成することにより、外側傾斜辺部または内側傾斜辺部の少なくともいずれか一方には余剰部が形成されているため、ゲート開口部をシールするシール材のシール部がエッチングされ難く、したがって、従来のシールプレートと比べて長寿命とすることができる。
【0020】
また、このように構成することにより、余剰部の上端部より低い位置にある内側傾斜辺部16および外側傾斜辺部18が圧縮変形し難くなっているため、このシール材10に所定以上の圧縮力が作用した場合でも、シール材10の全体が過剰に圧縮変形することがなく、プレート本体20と弁座面32とが直接接触してパーティクルが発生したり、シール材10に亀裂などが生じて、シール材10が破損してしまうことがない。
【0021】
また、上記発明において、
前記余剰部の上端部には水平部が形成されていることが望ましい。
このように構成することにより、余剰部の上端部に水平部が形成されているため、余剰部と弁座面との当接長を長く確保することができ、シール部が処理ガスに曝されることを確実、かつ長期に亘って防ぐことができる。
【0022】
また、このように構成することにより、余剰部の上端部には水平部が形成されているため、所定以上の圧縮力がシール材に作用した場合であっても、プレート本体と弁座面とが直接接触してパーティクルが発生したり、シール材が破損したりすることを確実に防止することができる。
【0023】
上記発明において、
前記ゲート開口部がシールされた際に、ゲート開口部内の処理ガスが前記シール材の内側傾斜辺部に接する場合において、
少なくとも前記内側傾斜辺部には余剰部が形成されていることが望ましい。
【0024】
このように構成することにより、ゲート開口部内の処理ガスが接する内側傾斜辺部に余剰部が形成されているため、ゲート開口部をシールするシール材のシール部がエッチングされ難く、したがって、従来のシールプレートと比べて長寿命とすることができる。
【0025】
また、上記発明において、
前記シール材の内側辺部と内側傾斜辺部との間に、前記シール溝の天端面よりも低く凹んだ凹部が形成されていることが望ましい。
【0026】
このような凹部が形成されていれば、余剰部が形成されたことによって従来のシール材よりもボリュームが大きくなる本発明のシール材を、従来のシール材とほぼ同じ程度に圧縮変形し易いものにすることができる。
【0027】
また、上記発明において、
前記シール溝の内側面が、
前記シール溝の天端面から底面に向かって外側方向に延伸するように形成されていることが望ましく、
この場合、
前記シール溝の内側面にRまたはC面が形成されていることが望ましい。
【0028】
このように構成することで、本発明のシール材を高温環境下で使用した場合において、熱膨張によってシール材に生じ得る大きい内部応力を軽減することができる。また、シール材自体のボリュームを少なくすることができるため、経済的である。さらに、シール溝の内側面にRまたはC面を形成することで、上述したような形状の内側面を容易に形成することができる。
【0029】
また、上記発明において、
前記シール材のシール高さをH、
前記水平部から前記シール材の頂点までの高さをh、としたときに、
hがHの10〜30%の範囲にあることが望ましい。
【0030】
このように構成することで、十分なシール面圧を得ることができるとともに、シール材が過剰に圧縮変形することがないため、プレート本体と弁座面とが直接接触してパーティクルが発生したり、シール材が破損したりすることがない。
【0031】
また、本発明のシールプレートは、
ゲート開口部の外周に形成されている弁座面に当接することで、ゲート開口部をシールする真空用ゲート弁に用いられるシールプレートであって、
前記シールプレートは、
全体が略平板状をなし、その前面の外周縁に外側が開放されたシール溝が形成されたプレート本体と、
前記シール溝に装着される周環状のシール材と、を備えており、
前記シール材は、その断面形状が、前記シール溝の底面に接合される底辺部と、前記シール溝の内側面に接合される内側辺部と、前記弁座面に向かって突設する頂部と、前記頂部の外側に形成される外側傾斜辺部と、前記頂部の内側に形成される内側傾斜辺部と、を少なくとも有するとともに、
前記シール溝の内側面が、
前記シール溝の天端面から底面に向かって外側方向に延伸するように形成されていることを特徴とする。
【0032】
また、この場合、
前記シール溝の内側面にRまたはC面が形成されていることが望ましい。
このように構成することで、本発明のシール材を高温環境下で使用した場合において、シール材の熱膨張によって生じ得る大きい内部応力を軽減することができる。また、シール材自体のボリュームを少なくすることができるため、経済的である。さらに、シール溝の内側面の底面との接続部をRまたはC面とすることで、上述したような内側面の形状を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、例え所定以上の圧縮力がシール材に作用した場合であっても、プレート本体と弁座面とが直接接触してパーティクルが発生したり、シール材が破損したりすることがないシールプレートおよびこれに用いられるシール材を提供することができる。
【0034】
また、ゲート開口部をシールするシール材のシール部がエッチングされ難く、したがって、従来のシールプレートと比べて長寿命とすることができるシールプレートおよびこれに用いられるシール材を提供することができる。
【0035】
また、高温環境下で使用した場合にも、熱膨張により生じる内部応力によってシール材が剥がれたり、破損したりすることがないシールプレートおよびこれに用いられるシール材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明のシールプレートを備えた真空用ゲート弁が、半導体製造装置に組み込まれた例を示した断面図である。
【図2】図2の(a)は、本発明のシールプレートを示した平面図、図2の(b)は、本発明のシール材を示した平面図である。
【図3】図3は、図2の(b)のA−A線における断面図であって、本発明のシール材の断面形状を示した図である。
【図4】図4は、本発明のシール材がシール溝に装着された状態を示した断面図である。
【図5】図5は、本発明のシール材が弁座面に圧接されて圧縮変形した状態を示した断面図である。
【図6】図6は、本発明のシールプレートのシール溝の変形例を示した断面図である。
【図7】図7は、本発明のシールプレートのシール溝の他の変形例を示した断面図である。
【図8】図8は、本発明の別の実施形態のシール材がシール溝に装着された状態を示した断面図である。
【図9】図9は、本発明の別の実施形態のシール材がシール溝に装着された状態を示した断面図である。
【図10】図10は、本発明の別の実施形態のシール材がシール溝に装着された状態を示した断面図である。
【図11】図11は、本発明の別の実施形態のシール材がシール溝に装着された状態を示した断面図である。
【図12】図12は、従来のシールプレートを備えた真空用ゲート弁が、半導体製造装置に組み込まれた例を示した断面図である。
【図13】図13は、従来のシール材がシール溝に装着された状態を示した断面図である。
【図14】図14は、従来のシール材が弁座面に圧接されて圧縮変形した状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のシールプレートを備えた真空用ゲート弁が、半導体製造装置に組み込まれた例を示した断面図である。また、図2の(a)は、本発明のシールプレートを示した平面図であり、図2の(b)は、本発明のシール材を示した平面図である。
【0038】
図1に示した半導体製造装置においては、プロセスチャンバー40とトランスファーチャンバー42との間にあるワーク出し入れ用のゲート開口部34をシールするのに、真空用ゲート弁1が用いられている。この真空用ゲート弁1は、図1に示したように、本発明のシールプレート30を備えている。
【0039】
シールプレート30は、ゲート開口部34からワークを出し入れする場合には下方に待機しているが、ゲート開口部34をシールする場合には、先ず、図中の矢印X方向に移動する。そして、シールプレート30の前面が、ゲート開口部34の外周に形成された弁座面32と対向する位置に来たら、今度は図中の矢印Yの方向に移動するようになっている。そして、シールプレート30の前面が弁座面32と当接することで、ゲート開口部34をシールするように構成されている。
【0040】
シールプレート30は、図1に示したように、プレート本体20と、シール材10とを備えている。プレート本体20は、図1および図2の(a)に示したように略平板状に形成されており、そのプレート前面24の外周縁に外側が開放されたシール溝22が形成されている。なお、このようなプレート本体20は、アルミニウム、ステンレス鋼、アルミ合金、ニッケル合金などの金属材料から形成されている。
【0041】
シール材10は、図2の(b)に示したように、周環状に形成されており、上述したプレート本体20のシール溝22に、接着剤などによって接合されて装着されている。なお、このようなシール材10は、耐腐食性、耐プラズマ性に優れたフッ素系ゴムなどのゴム弾性体から形成されている。
【0042】
シール材10は、通常、以下の方法によってシール溝22に装着される。すなわち、シール材10となる未加硫ゴム材料にシリコン系やシアノアクリル系などの接着剤を塗布し、プレート本体20に加硫接着する。そして、プレート本体20と未加硫ゴムとを一体的に熱プレス成形することで、未加硫ゴムを加硫成形する。また、これとは別の方法として、ゴム材料を加硫成形してシール材10の成形品を得た後、その成形品をプレート本体20に接着剤を用いて加熱接着することもできる。
【0043】
図3は、図2の(b)のA−A線における断面図であって、本発明のシール材の断面形状を示した図である。また、図4は本発明のシール材がシール溝に装着された状態を示した断面図であり、図5は、本発明のシール材が弁座面に圧接されて圧縮変形した状態を示した断面図である。なお、図4および図5は、図1に示したA部における拡大断面図に相当する。
【0044】
シール材10の断面形状は、図3および図4に示したとおりである。すなわち、シール材10は、シール溝22の底面22aに接合される底辺部12aと、シール溝22の内側面22bに接合される内側辺部12bと、シールプレート30の前面が弁座面32と対向位置にある状態において弁座面32に向かって突設する弧状の頂部17と、頂部17の外側に形成される外側傾斜辺部18と、頂部17の内側に形成される内側傾斜辺部16と、を少なくとも有している。
【0045】
シール溝22の断面形状は、図4に示したように、底面22aと、内側面22bと、天端面22cと、から構成されている。底面22aおよび天端面22cは、互いに略平行に延伸しており、断面視で直線状に形成されている。また、底面22aおよび天端面22cは、シールプレート30の前面が弁座面32と対向位置にある状態において、弁座面32に対して略平行となるように配置されている。これに対して、内側面22bは、シール溝22の天端面22cから底面22aに向かって外側方向に向かって延伸し、天端面22cの外側端部aと底面22aの内側端部bとを接続する、断面視で円弧状をなしたRに形成されている。
【0046】
また、シール材10の内側傾斜辺部16には、一様に直線状に傾斜した内側傾斜辺部16に対して腹付けされたような形状をなした余剰部16bが形成されている。そして、この余剰部16bの上端部には、図4に示したように、弁座面32に対して略平行に延伸する水平部16aが形成されている。この水平部16aは、図3に示したように、シール材10の頂点から高さhだけ低い位置に形成されるとともに、図4に示したように、シール材10がシール溝22に装着された場合に、シール溝22の天端面22cよりも高い位置となるように形成される。
【0047】
なお、本明細書において、「腹付けされたような形状」とは、具体的には、略一様な直線状あるいは円弧状等をなした傾斜辺部の表面に対して、その傾斜辺部の途中から下方側にかけて、シール材の断面を拡幅するために付加されたような形状を意味する。図4を例に説明すれば、図4に示したシール材10の余剰部16bは、略一様な直線状をなした内側傾斜辺部16(および16´)の表面に対して、その内側傾斜辺部の途中から下方側にかけて、シール材の断面を拡幅するために付加されたような略菱形状をなしている。なお、ここでは説明の便宜上、「付加されたような」との言葉を用いているが、この余剰部16bはシール材10と一体的に形成されている。
【0048】
また、外側傾斜辺部18における底辺部12aとの接続個所付近には、外側傾斜辺部18の他の部分よりも急傾斜をなしている裾部18cが形成されている。なお、この裾部18cは、シール材10が圧縮変形した際に、外側傾斜辺部18がシール溝22からはみ出し難くなるようにするために形成されるものである。
【0049】
また、内側傾斜辺部16と内側辺部12bとの間には凹部14が形成されている。この凹部14は、図4に示したように、シール材10がシール溝22に装着された場合に、シール溝22の天端面22cよりも低く凹んだ形状となっている。
【0050】
また、凹部14と内側辺部12bとの間には、平坦部13が形成されている。この平坦部13は、図4に示したように、シール材10がシール溝22に装着された場合に、シール溝22の天端面22cと略同一の高さとなるように形成される。なお、この平坦部13は、シール材10の成形製造時におけるバリ取り加工を容易にするために形成されるものであるが、本発明のシール材10では、このような平坦部13は形成されていなくともよい。
【0051】
このようにして構成されるシール材10は、シールプレート30が弁座面32に向かって移動することで、図5に示した如く圧縮変形する。すなわち、弁座面32と当接した頂部17と、水平部16aよりも高い位置にある内側傾斜辺部16および外側傾斜辺部18とが圧縮変形し、その弾性復元力によって弁座面32に強く押し付けられるとともに、シール材10の全体としても図5の矢印Dに示したように左右に膨出するように変形する。また、水平部16aも、変形量は小さいものの圧縮変形して、弁座面32に押し付けられる。そして、弁座面32に強く押し付けられた頂部17と、水平部16aよりも高い位置にある内側傾斜辺部16および外側傾斜辺部18とがシール部19となって、弁座面32とシール幅Lで当接し、ゲート開口部34をシールする。
【0052】
このような本発明のシールプレート30では、図5に示したように、ゲート開口部34がシールされた状態において、シール部19の内側に弁座面32と当接する余剰部16bが位置している。このため、余剰部16bは、処理ガスGに曝されて図5の符号Eに示した如くエッチングされるものの、この余剰部16bがあることによりシール部19は直接処理ガスGに曝されないため、シール部19のシール幅Lは減少しない。したがって、従来のシールプレート130のように、シール部がエッチングされることによってシール性能が低下するとの問題は生じず、前述した従来のシールプレート130と比べて長寿命とすることができるようになっている。
【0053】
また、シール材10の内側傾斜辺部16には、上述した余剰部16bが形成されているため、この余剰部16bの上端部より低い位置にある内側傾斜辺部16および外側傾斜辺部18は、この余剰部16bの上端部よりも高い位置にある内側傾斜辺部16および外側傾斜辺部18よりも圧縮変形し難くなっている。このため、このシール材10に所定以上の圧縮力が作用した場合でも、シール材10の全体が過剰に圧縮変形することがなく、プレート本体20と弁座面32とが直接接触してパーティクルが発生したり、シール材10に亀裂などが生じて、シール材10が破損してしまうことがないようになっている。
【0054】
また、特に本実施形態のシール材10では、余剰部16bの上端部に水平部16aが形成されている。このような水平部16aが形成されていれば、余剰部16bと弁座面32との当接長を長く確保することができるため、シール部19が処理ガスGに曝されることを確実、かつ長期に亘って防ぐことができる。
【0055】
また、このような水平部16aが形成されていれば、仮にシール材10の圧縮不足によって、余剰部16bと弁座面32との間に隙間があるような状態であっても、水平部16aが形成されていない場合と比べて、シール部19がエッチングされ難くなる。すなわち、このような水平部16aが形成されていれば、シール材10の圧縮不足によって形成される隙間も細長い形状となるため、処理ガスGがシール部19に到達し難くなり、シール部19がエッチングされるのを最小限に防ぐことができる。
【0056】
また、このような水平部16aが形成されていれば、この水平部16aより低い位置にある内側傾斜辺部16および外側傾斜辺部18は、水平部16aよりも高い位置にある内側傾斜辺部16および外側傾斜辺部18よりも、特に圧縮変形し難くなる。よって、このシール材10に所定以上の圧縮力が作用した場合でも、シール材10の全体が過剰に圧縮変形することを確実に防止することができ、プレート本体20と弁座面32とが直接接触してパーティクルが発生したり、シール材10に亀裂などが生じて、シール材10が破損してしまうことを確実に防ぐことができる。
【0057】
このような水平部16aの好適な形成位置は、図3に示したように、シール材10のシール高さをH、水平部16aからシール材10の頂点までの高さをhとしたときに、hがHの10〜30%の範囲となる位置である。なぜなら、上述したように、シール材10は、ゲート開口部34をシールした状態において、ほぼ水平部16aまで圧縮されるため、シール材10の圧縮率はh/Hで表わすことができる。そして、h/Hが10〜30%の範囲にあれば、シールに十分な面圧を得ることができるとともに、シール材10が過剰に圧縮されて破損する恐れもないからである。これに対して、h/Hが10%以下の場合は、十分なシール面圧が得られず、十分なシール性が発揮できない。また、h/Hが30%を超える場合は、過剰圧縮となってシール材10に大きな内部応力が発生し、シール材10が破損する恐れがある。
【0058】
また、水平部16aは、シール材10の形状寸法やゴム材料の硬度によっても異なるが、シール溝22の天端面22cよりも少なくとも0.1mm以上高い位置に形成されるのが好ましい。なぜなら、上述したように、ゲート開口部34をシールした状態において、変形量は小さいものの水平部16aも圧縮変形している。このため、水平部16aとシール溝22の天端面22cとの高さの差が0.1mm未満の場合は、プレート本体20と弁座面32とが直接接触してパーティクルが発生する恐れがあるからである。
【0059】
また、本発明のシールプレート30では、上述したように、シール材10の内側傾斜辺部16と内側辺部12bとの間に凹部14が形成されている。シール材10は、従来のシール材110と比べて余剰部16bが形成されているためボリュームが大きくなっており、その分だけ圧縮変形し難い。しかしながら、このような凹部14が形成されることにより、シール材10が左右方向へ膨出するように変形し易くなるため、シール材10を従来のシール材110と同じ程度に圧縮変形し易いものに構成することができる。
【0060】
また、本発明のシールプレート30では、上述したように、シール溝22の内側面22bが、シール溝22の天端面22cから底面22aに向かって外側方向に延伸する、断面視で円弧状をなしたRに形成されている。
【0061】
このように、シール溝22の内側面22bにRが形成されていれば、断面略L字状のシール溝に装着される場合と比べて、シール材10のボリュームを小さくすることができる。このため、シール材10を高温環境下(例えば200℃以上)で使用した場合に生じるシール材10の熱膨張の絶対量を小さくすることができる。
【0062】
特に、図5に示したシール材10内部のB部では、熱膨張に起因して大きい内部応力が発生するが、シール溝22の内側面22bがRに形成されていれば、シール材10のB部において発生する熱膨張に起因する内部応力を軽減することができる。よって、前述した従来のシール材110のように、熱膨張によってシール材が剥がれたり、破損したりすることがない。
【0063】
また、シール材10自体のボリュームを少なくすることができるため、経済的である。
このようなシール溝22の内側面22bの形状は、上述したRに限定されない。例えば、図6に示したように、内側面22bにC面を形成してもよく、また、図7に示したように、内側面22bの一部分だけをRに形成してもよい。また、図示しないが、内側面22bをテーパー面に形成してもよい。要するに、本発明のシールプレート30にあっては、シール材10の内側面22bを、シール溝22の天端面22cから底面22aに向かって外側方向に延伸するように形成することで、断面略L字状のシール溝に装着される場合と比べて、シール材10のボリュームを小さくすることができるような形状であればよい。
【0064】
また、上述したような形状の内側面22bを有するシール溝22は、例えば図8に示したようなシール材10´に対しても適用可能である。
図8は、本発明の別の実施形態のシール材がシール溝に装着された状態を示した断面図である。
【0065】
この図8に示したシール材10´は、前述した、図13に示した従来のシール材110と基本的に同一の構成となっている。すなわち、その断面形状が、シール溝22の底面22aに接合される底辺部12aと、シール溝22の内側面22bに接合される内側辺部12bと、シールプレート30の前面が弁座面32と対向位置にある状態において弁座面32に向かって突設する弧状の頂部17と、頂部17の外側に形成される外側傾斜辺部18と、頂部17の内側に形成される内側傾斜辺部116と、を有している。
【0066】
しかしながら、この図8に示したシール材10´では、内側辺部12bが接合されるシール溝22の内側面22bがRに形成されているため、図13に示した従来のシール材110に対して、内側辺部12bの形状が大きく異なっている。
【0067】
このように構成されたシール材10´では、特に図8に示したB部において、熱膨張に起因する大きい内部応力が発生する。しかしながら、上述したように、シール溝22の内側面22bがRに形成されており、シール材10´を高温環境下で使用した場合に生じる熱膨張の絶対量を小さくすることができるため、シール材10´のB部において発生する熱膨張に起因する内部応力を軽減することができる。よって、前述した従来のシール材110のように、熱膨張によってシール材が剥がれたり、破損したりすることがない。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、余剰部16bはシール材10の内側傾斜辺部16のみに形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図9に示したように、外側傾斜辺部18に余剰部16bを形成してもよい。
【0069】
また、図10に示したように、内側傾斜辺部16および外側傾斜辺部18の両方に、夫々余剰部16bおよび余剰部18bを形成することも可能である。
また、上述した実施形態では、余剰部16bの上端部に水平部16aが形成されているシール材10を例に説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば図11に示したように、上端部に水平部16aが形成されていない余剰部16bとすることも可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 真空用ゲート弁
10 シール材
10 プレート本体
12a 底辺部
12b 内側辺部
13 平坦部
14 凹部
16 内側傾斜辺部
16a 水平部
16b 余剰部
17 頂部
18 外側傾斜辺部
18a 水平部
18b 余剰部
18c 裾部
19 シール部
20 プレート本体
22 シール溝
22a 底面
22b 内側面
22c 天端面
24 プレート前面
30 シールプレート
32 弁座面
34 ゲート開口部
40 プロセスチャンバー
42 トランスファーチャンバー
100 真空用ゲート弁
110 シール材
112a 底辺部
112b 内側辺部
116 内側傾斜辺部
117 頂部
118 外側傾斜辺部
119 シール部
120 プレート本体
122 シール溝
122a 底面
122b 内側面
122c 天端面
124 プレート前面
130 シールプレート
132 弁座面
134 ゲート開口部
140 プロセスチャンバー
142 トランスファーチャンバー
D 矢印
G 処理ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート開口部の外周に形成されている弁座面に当接することで、ゲート開口部をシールする真空用ゲート弁に用いられるシールプレートであって、
前記シールプレートは、
全体が略平板状をなし、その前面の外周縁に外側が開放されたシール溝が形成されたプレート本体と、
前記シール溝に装着される周環状のシール材と、を備えており、
前記シール材は、その断面形状が、前記シール溝の底面に接合される底辺部と、前記シール溝の内側面に接合される内側辺部と、前記弁座面に向かって突設する頂部と、前記頂部の外側に形成される外側傾斜辺部と、前記頂部の内側に形成される内側傾斜辺部と、を少なくとも有しており、さらに、前記外側傾斜辺部または内側傾斜辺部の少なくともいずれか一方には、少なくとも前記シール溝の天端面よりも高い位置に、前記外側傾斜辺部および/または内側傾斜辺部に対して腹付けされたような形状をなした余剰部が形成されていることを特徴とするシールプレート。
【請求項2】
前記余剰部の上端部には水平部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシールプレート。
【請求項3】
前記ゲート開口部がシールされた際に、ゲート開口部内の処理ガスが前記シール材の内側傾斜辺部に接する場合において、
少なくとも前記内側傾斜辺部には余剰部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のシールプレート。
【請求項4】
前記シール材の内側辺部と内側傾斜辺部との間に、前記シール溝の天端面よりも低く凹んだ凹部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のシールプレート。
【請求項5】
前記シール溝の内側面が、
前記シール溝の天端面から底面に向かって外側方向に延伸するように形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のシールプレート。
【請求項6】
前記シール溝の内側面にRまたはC面が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のシールプレート。
【請求項7】
前記シール材のシール高さをH、
前記水平部から前記シール材の頂点までの高さをh、としたときに、
hがHの10〜30%の範囲にあることを特徴とする請求項2に記載のシールプレート。
【請求項8】
ゲート開口部の外周に形成されている弁座面に当接することで、ゲート開口部をシールする真空用ゲート弁に用いられるシールプレートであって、
前記シールプレートは、
全体が略平板状をなし、その前面の外周縁に外側が開放されたシール溝が形成されたプレート本体と、
前記シール溝に装着される周環状のシール材と、を備えており、
前記シール材は、その断面形状が、前記シール溝の底面に接合される底辺部と、前記シール溝の内側面に接合される内側辺部と、前記弁座面に向かって突設する頂部と、前記頂部の外側に形成される外側傾斜辺部と、前記頂部の内側に形成される内側傾斜辺部と、を少なくとも有するとともに、
前記シール溝の内側面が、
前記シール溝の天端面から底面に向かって外側方向に延伸するように形成されていることを特徴とするシールプレート。
【請求項9】
前記シール溝の内側面にRまたはC面が形成されていることを特徴とする請求項8に記載のシールプレート。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のシールプレートに用いられることを特徴とするシール材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−36948(P2012−36948A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176596(P2010−176596)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】