説明

シール構造

【課題】被シール体同士を接触させないかまたは接触させられないシール構造においてもシール面間寸法を設定し得るシール構造を提供する。
【解決手段】シール面(4a、12a)間にシール材(21)を挟むことによって密閉空間(15)を形成する被シール体(3、11)同士のシール構造であって被シール体(3、11)同士を接触させないかまたは接触させられないシール構造において、シール面(4a、12a)間寸法を被シール体(3、11)同士を締結する段付きボルト(25)と密閉空間(15)に供給する大気圧を超えるガスの圧力によって設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はシール構造、特に電池パック外装体のシール構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
電池パックの外装体を構成する2つの各箱体を、中央の凹部、この凹部の外周を囲うフランジ部、フランジ部に設けたボルト孔から構成し、フランジ部の一方に他方のフランジ部と接触する接触部を設けたものがある(特許文献1参照)。このものでは、2つのフランジ部間に成型ガスケットを介在させ、各フランジ部に設けたボルト孔にボルトを挿通しフランジ部の一方に設けた接触部が他方のフランジ部と接触するように締結することにより凹部に密閉空間を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−188669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術は、被シール体同士を接触させないかまたは接触させられないシール構造には適用することができない。
【0005】
そこで本発明は、被シール体同士を接触させないかまたは接触させられないシール構造においてもシール面間寸法を設定し得るシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシール構造は、シール面間にシール材を挟むことによって密閉空間を形成する被シール体同士のシール構造であって被シール体同士を接触させないかまたは接触させられないシール構造を前提とする。そして、本発明のシール構造では、シール面間寸法を、被シール体同士を締結する段付きボルトと前記密閉空間に供給する大気圧を超えるガスの圧力によって設定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、段付きボルトの大径部の軸方向長さと、密閉空間に供給する大気圧を超えるガスの圧力で被シール体同士のシール面間寸法が定まるので、被シール体同士を接触させないかまたは接触させられないシール構造においてもシール面間寸法を任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態のシール構造が適用される電池パック外装体の分解斜視図である。
【図2】2つの箱体を合わせた状態の電池パック外装体の斜視図である。
【図3】電池パック外装体の平面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】電池パック外装体のシール構造を説明するための図3のA−A線断面図である。
【図6】電池パック外装体のシール構造を説明するための図3のA−A線断面図である。
【図7】ラミネート型電池を収納した状態での電池パック外装体の縦断面図である。
【図8】参照例のシール構造との差異を説明するための電池パック外装体の一部縦断面図である。
【図9】参照例のシール構造との差異を説明するための電池パック外装体の一部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態の電池パック外装体2の分解斜視図、図2は電池パック外装体2を構成する2つの箱体を合わせた状態の電池パック外装体2の斜視図を示している。また、図3は電池パック外装体2の平面図、図4は図3のA−A線断面図である。なお、図3には段付きボルトを挿通する前の状態を示している。図3のA−A線断面図は左右対称の図形となるのであるが、簡略化のため図4では左側部分しか示していない。図1、図2において上方を鉛直上方、下方を鉛直下方とする。
【0010】
図1、図2に示したように、電池パック外装体2は、鉛直下方に開口する上部箱体3(第1の被シール体)と、鉛直上方に開口する下部箱体11(第2の被シール体)とから構成されている。2つの各箱体3、11は、アルミニウム等の金属で構成され、2つの各箱体3、11の外周を囲う、全体として額状でかつ平板状のフランジ部4、12、各フランジ部4、12に設けた6個(複数)のボルト孔5、13を有している。かつ、各箱体3、11の中央にラミネート型電池41(図7参照)を収納するための凹部6、14(図4参照)を有している。以下、上部箱体3のフランジ部4を「上部フランジ部」、下部箱体11のフランジ部12を「下部フランジ部」ともいう。また、上部フランジ部4のボルト孔5を「上部ボルト孔」、下部フランジ部12のボルト孔13を「下部ボルト孔」ともいう。
【0011】
フランジ部4、12は箱体3、11の一部を構成しているため、フランジ部4、12も被シール体であり、2つのフランジ部4、12の互いに対向する平面がシール面となる。言い換えると、2つのフランジ部4、12の互いに対向する側、つまり上部フランジ部4の下面4aと下部フランジ部12の上面12aとがシール面である。このシール面(4a、12a)の間にシール材21を挟み、各フランジ部4、12のボルト孔5、13の位置を段付きボルト25が挿通し得るように合わせる(図3参照)。
【0012】
シール面(4a、12a)にシール材21を設ける方法は問わない。例えばシール材の入っているチューブから押し出すようにしてシール材を絞り出しつつ下部フランジ部12の周方向に沿って切れ目なく介在させればよい(図1参照)。シール材21の具体例としては、天然ゴム、合成ゴム、樹脂、植物繊維などであって弾性を有するものであればよい。
【0013】
そして、孔の中心を合わせた2つのボルト孔5、13に段付きボルト25を、雄ねじ部を形成してある軸27の側から挿通して締結することにより、凹部6、14に密閉空間15を形成し(図4参照)、全体としては箱状の電池パック外装体2が形成される。2つのボルト孔5、13に挿通するのは段付きボルト25であるため、上部ボルト孔5と下部ボルト孔13の各孔径は相違するものとなっている。なお、ボルト孔5、13とシール材21と位置関については、シール材21の水平方向外側に位置するように各ボルト孔5、13を各フランジ部3、12に設けている(図1参照)。
【0014】
一般的なボルト31は、図8左側にも示したように頭部32と軸部33とから構成され、軸部33に雄ねじ部34を有するものである。一方、第1実施形態で用いる段付きボルト25も、基本的な構成は一般的なボルト31と変わらない。つまり、段付きボルト25も、頭部26と軸部27とから構成され、軸部27に雄ねじ部28を有している。
【0015】
さらに、段付きボルト25は、一般的なボルト31と相違して図4に示したように、頭部26と、鉛直下方の軸端27aとの間に軸部27よりも外径が大きくかつ頭部26の外周よりも外径が小さな円柱状の大径部29を有している。このため、段付きボルト25は、軸方向(図4で鉛直方向)に全体として2段の段付き状に形成されている。すなわち、下方の段付きは、雄ねじ部28と大径部29の下面29aとの間に、上方の段付きは、頭部26の下面26aと大径部29との間に形成されている。
【0016】
段付きボルト25で上下2つのフランジ部4、12を締結するには、大径部29の外径より余裕を持って上部ボルト孔5の孔径を定め(上部ボルト孔5に雌ねじを切ることは不要)、また下部ボルト孔13には、雄ねじ部28ときつく螺合する雌ねじを切っておく。下部ボルト孔13にきつい雌ねじを切らず、雄ねじ部28が下部ボルト孔13を押し広げることによって段付きボルト25を締結させることもできる。雄ねじ部28の長さは、下部フランジ12の上面12aと下面12bの間の上下方向厚さに合わせたものとする。
【0017】
段付きボルト25の形状や各部の寸法比は図4に示したものに限られない。図4には頭部26が六角柱状である場合を示したが、頭部自体を円柱状やドーム状に形成し頭部の中央に六角柱状の孔や十字孔を形成したものであってもかまわない。大径部29は円柱状でなくても多角柱状でもかまわない。
【0018】
次に、図5を用いて段付きボルト25による電池パック外装体2のシール構造を具体的に説明する。ここで、図5の左側が段付きボルト締結前の電池パック外装体2の状態を、図5の右側が段付きボルト締結後の電池パック外装体2の状態を示している。左右の各図は基本的に図4と同様に図3のA−A線断面図であるので、図4と同一部分には同一番号を付している。ここでも簡略化のため図4と同様に図3のA−A線断面図のうち左側部分のみを示している。
【0019】
前提として、シール材21は図5左側に示したように規定のシール面間寸法より鉛直方向上方に盛り上げておく。ここで、「シール面間寸法」とは2つのフランジ部4、12の対向する平面の間の最短距離のことである。また、「規定のシール面間寸法」とはシール面間寸法の要求値(あるいは目標値)のことである。従って、段付きボルトの締結に際しては、実際のシール面間寸法をこの「規定のシール面間寸法」と一致させる必要がある。
【0020】
図5左側には段付きボルトの締結前に実際のシール面間寸法が規定のシール面間寸法以上に浮いている場合を示している。「浮いている」とは実際のシール面間寸法が規定のシール面間寸法より大きいことをいう。この場合には、図5左側に示したように 段付きボルト25の軸側を鉛直下方に向けて2つのボルト孔5、13に挿通する。そして、シール材21を押しつぶしながら雄ねじ部28を下部ボルト孔13に有する雌ねじにきつく螺合させることで締結し、凹部6、14に密閉空間15を形成する。「きつく 」とは、一定の振動耐久実験を行った後でも段付きボルト25が下部ボルト孔13から外れないことをいう。段付きボルト25を締結することにより段付きボルト25の頭部下面26aと上部フランジ部4の上面4bとが接触(当接)し、かつ段付きボルト25の大径部29の下面29aと下部フランジ部12の上面12aとが接触(当接)する。これによって段付きボルトの締結後には、図5右側に示したように、実際のシール面間寸法が規定のシール面間寸法と一致する。
【0021】
図5右側において、大径部29の軸方向長さをL、上部フランジ部4の鉛直方向厚さをDとしたとき、幾何学より「規定のシール面間寸法」はL−Dで定まることとなる。つまり、本実施形態のシール構造において規定のシール面間寸法を定める因子はLとDの2つである。このように2つの因子によって規定のシール面間寸法を定めることで、因子が一つだけの場合より本実施形態のシール構造を採用する自由度が広がる。
【0022】
さて、電池パックの外装体を構成する2つの各箱体を、中央の凹部、この凹部の外周を囲うフランジ部、フランジ部に設けたボルト孔から構成し、フランジ部の一方に他方のフランジ部と接触する接触部を設けた従来装置がある。このものでは、2つのフランジ部間に成型ガスケットを介在させ、各フランジ部に設けたボルト孔にボルトを挿通しフランジ部の一方に設けた接触部が他方のフランジ部と接触するように締結することにより凹部に密閉空間を形成している。しかしながら、成型ガスケットを用いたシール方法は、ガスケットの成型時に専用の型を必要とするため高価である。また、成型ガスケットを圧縮するため、(1)ボルト締結点数が多い、(2)ガスケットセットの作業工数がかかる、(3)成型ガスケットの追従性が悪いため比較的高い面精度が求められる、といった問題点もある。
【0023】
その解決方法として、互いに対面するシール面間(フランジ部間)に室温硬化性の液状ゴムを介在させてシール面間をシールする。その際、シール材の接着強度を確保するために一定のシール面間を確保する必要があることから、シール部近傍の被シール体同士(フランジ部同士)を接触させた構造を持たせるようにするものがある。しかしながら、このものでは、被シール体同士を接触させない構造あるいは被シール体同士を接触させられない構造の場合にシール面間を任意に設定できないという問題がある。
【0024】
一方、図5右側に示したように本実施形態のシール構造では、2つのフランジ部4、12の間が規定のシール面間寸法として規定され、従って2つのフランジ部4、12は直接接触していない。このように、フランジ部4、12同士(被シール体同士)を接触させない構造の場合においても、本実施形態のシール構造によれば、大径部29の軸方向長さL及び上部フランジ部4の厚さDによってシール面間寸法を任意に設定できるのである。
【0025】
図6は段付きボルトの締結後かつ加圧工程前に実際のシール面間寸法が規定のシール面間寸法未満に沈んでいる場合であっても、規定のシール面間寸法が得られることを説明するものである。「沈んでいる」とは実際のシール面間寸法が規定のシール面間寸法より小さいことをいう。ここで、図6の左側が段付きボルトの締結後かつ加圧工程前の電池パック外装体2の状態を、図6の右側が加圧工程後の電池パック外装体2の状態を示している。左右の各図は基本的に図4と同様に図3のA−A線断面図であるので、図4と同一部分には同一番号を付している。ここでも簡略化のため図4と同様に図3のA−A線断面図のうち左側部分のみを示している。
【0026】
段付きボルトの締結前に実際のシール面間寸法が規定のシール面間寸法未満に沈んでいる場合にも、図5左側に示したのと同様の作業を行う。すなわち、段付きボルト25の軸側を鉛直下方に向けて2つのボルト孔5、13に挿通する。そして、シール材21を押しつぶしながら雄ねじ部28を下部ボルト孔13に有する雌ねじにきつく螺合させることで締結し、凹部6、14に密閉空間15を形成する。しかしながら、段付きボルトの締結後に、図6左側に示したように段付きボルト25の頭部下面26aと上部フランジ部4の上面4bとが鉛直方向の上下に離れて接触しておらず、従って、段付きボルトの締結後に実際のシール面間寸法が規定のシール面間寸法となっていないことがあり得る。上部ボルト孔5の孔径を大径部29の外径より余裕をもって設定していれば、段付きボルトの締結後にほとんどの場合に図5右側に示したように規定のシール面間寸法が得られる。しかしながら、まれに大径部29の外周と上部ボルト孔5とが摩擦等で付着したり、大径部29の外周と上部ボルト孔5の隙間に異物が噛み込んだりすることがあり、この場合に、図6左側に示した状態が出現する。
【0027】
さて、本実施形態の電池パック外装体2には、各箱体3、11に設けた凹部6、14により形成される密閉空間15に複数のラミネート型電池41を図7に示したように鉛直方向に積層して収納することとなる。ここで、「ラミネート型電池」とは、実際に充放電反応が進行する略四角扁平状の発電要素を電池外装体である高分子−金属複合ラミネートフィルムで被覆し、発電要素の周辺部を熱融着によって接合することにより、発電要素を密封したものである。ラミネート型電池41の高分子−金属複合ラミネートフィルムは柔らかく、単1電池や単3電池のように堅い金属製外枠を持たない。この金属製外枠の働きを有するのが、アルミニウム等の金属で構成される電池パック外装体2である。このため、ラミネート型電池41を電池パック外装体2の密閉空間15に収納して、段付きボルト25で締結した後には、電池パック外装体2の一部に設けた加圧空気供給孔16に加圧空気供給通路51を接続し、エアポンプ52からの所定圧の空気を密閉空間15に供給した後に当該孔16を塞ぎ、ラミネート型電池41を加圧空気で加圧された状態に置く。これは、ラミネート型電池41を周囲から加圧することで、ラミネート型電池41の内部でのガスの発生を抑制して、ラミネート型電池41の電池性能を確保するためである。なお、ラミネート側電池41を電池パック外装体2の密閉空間15を加圧状態とするためのガスは、空気に限らず、不活性ガスであってよい。なお、図7の開閉弁53、圧力センサ54については説明しなかったが、これについては後述する。
【0028】
このように、電池パック外装体2にラミネート型電池41を収納した後には加圧工程があるので、この加圧工程における加圧空気による加圧を利用することで図6左側に示した状態を解消する。すなわち、段付きボルト25で締結した後に加圧工程において、加圧空気供給孔16から所定圧の加圧空気を密閉空間15に供給したとき、密閉空間15に供給された加圧空気が図6左側に上向き矢印で示したように、上部箱体3を鉛直上方に向けて押し上げる。言い換えると、2つの箱体3、11同士(被シール体同士)に離間させる方向に力が与えられる。上部箱体3を鉛直上方に向けて押し上げることで、大径部29の外周と上部ボルト孔5とが摩擦等で付着していたのが解消され、あるいは大径部29の外周と上部ボルト孔5の隙間に噛み込んでいた異物が取り去られる。これによって、上部フランジ部4の上面4bが段付きボルト25の頭部下面26aに当接するまで上部フランジ部4が鉛直上方に移動し、図6右側に示す状態となる。すなわち、図6右側に示したように、段付きボルト25の頭部下面26aと上部フランジ部4の上面4bとが接触(当接)し、実際のシール面間寸法が規定のシール面間寸法と一致する。言い換えると、段付きボルトの締結後に実際のシール面間寸法が規定のシール面間寸法未満に沈んでいる場合にも、図6右側の状態となって規定のシール面間寸法が得られるように、大径部29の外径と上部ボルト孔4の内径とを適合により最適に設定しておくのである。
【0029】
なお、実際のシール面間寸法が加圧工程中に規定のシール面間寸法へと広がることに合わせてシール材21が鉛直方向に膨らむことが、つまりシール材21によって空間15を密閉状態に保たせるためには、シール材21に弾性を有することが必要である。
【0030】
図6では電池パック外装体2の密閉空間15にラミネート型電池41を収納するものにおいて、加圧工程における加圧空気による加圧を利用して規定のシール面間寸法を得る場合を説明したが、これに限られない。例えば、電池パック外装体2の密閉空間15にラミネート型電池41を収納するものにおいて、電池パック外装体2のリークテストを行うものがある。これについても図7により説明する。このものでは、図7に示したように、加圧空気供給孔16から大気圧を超える所定圧(リークテスト圧)の空気を供給すると共に、加圧空気の供給開始から一定時間の経過後には加圧空気供給通路51に設けた開閉弁53を閉じて空間15を密閉状態とする。そして、電池パック外装体2の密閉空間15の圧力を圧力センサ54により検出し、電池パック外装体2に漏れがあるか否かをテストする。
【0031】
このようにしてリークテストを行なうものでも、加圧空気供給孔16から大気圧を超える所定圧(リークテスト圧)の加圧空気を密閉空間15に供給したとき、密閉空間15に供給された加圧空気が図6左側に上向き矢印で示したように、上部箱体3を鉛直上方に押し上げる。言い換えると、2つの箱体3、11同士(被シール体同士)に離間させる方向に力が与えられる。上部箱体3を鉛直上方に押し上げることで、大径部29の外周と上部ボルト孔5とが摩擦等で付着していたのが解消され、あるいは大径部29の外周と上部ボルト孔5の隙間に噛み込んでいた異物が取り去られる。これによって、上部フランジ部4の上面4bが段付きボルト25の頭部下面26aに当接するまで上部フランジ部4が鉛直上方に移動し、図6右側に示す状態となる。すなわち、段付きボルト25の頭部下面26aとフランジ部4の上面4bとが接触(当接)し、実際のシール面間寸法が規定のシール面間寸法と一致する。このように、電池パック外装体2の有する密閉空間15に対してリークテストを行うものでは、このリークテスト時における加圧空気による加圧を利用して、規定のシール面間寸法を得ることができる。
【0032】
(参照例との比較)
次に、図8、図9は参照例のシール構造との差異を説明するための電池パック外装体2の一部縦断面図である。比較のため、図8、図9の右側に第1実施形態の電池パック外装体2の一部縦断面図を、図8、図9の左側に参照例の電池パック外装体2の一部縦断面図を示している。図4と同一部分には同一番号を付している。
【0033】
参照例を先に説明する。参照例は、図8左側に示したように、上部フランジ部4の水平方向の内側(図8で右側)から鉛直下方に延びる壁状部位を、下部箱体11との接触部7として追加し、この接触部7の水平方向外側にシール材21を介在させるものである。以下、下部箱体11との接触部7を単に「接触部7」という。そして、参照例では接触部7の下面7aと下部フランジ部12の上面12aとが接触するように一般的なボルト31で締結している。
【0034】
一般的なボルト31は、頭部32と軸部33とから構成され、軸部33に雄ねじ部34を有するものである。2つのボルト孔5、13はボルト31の雄ねじ部34に合わせてある。
【0035】
まず図8は、参照例のシール構造と第1実施形態のシール構造とのコストの違いを検討したものである。図8左側に示す参照例のシール構造では、接触部7の鉛直方向長さでシール面間寸法を設定することになる。一方、図8右側に示す第1実施形態のシール構造では、接触部7は不要である。すなわち、第1実施形態のシール構造では、2つのフランジ部4、12のシール面(4a、12a)を直接接触させることなく規定のシール面間寸法を得ている。このため、一般的なボルト31から段付きボルト25に変更することによってアップする費用と、接触部7を追加する工賃と比較し、段付きボルト25に変更することによってアップする費用が接触部7を追加する工賃より低ければ、コストを参照例のシール構造より低減することができる。
【0036】
次に、図9は参照例のシール構造と第1実施形態のシール構造との分解作業性の違いを検討したものである。参照例のシール構造では上部箱体3と下部箱体11とに分解するに際して、図9左側に示したように、一般的なボルト31をボルト孔5、13から取り外した後に、シール材21に対して、接触部7にまで届く切り込み61を入れ、その後に工具等によりこじ開ける必要がある。一方、第1実施形態のシール構造では、段付きボルト25をボルト孔5、13から取り外した後には、図9右側に示したように2つのフランジ部4、12の間(シール面間)にシール材21以外のものがない。このため、シール材21を上下2つの部位21a、21bに直接切断するだけで上部箱体3と下部箱体11とに簡単に分解することができ、上部箱体3と下部箱体11とに分解する作業が参照例のシール構造より容易である。
【0037】
ここで、第1実施形態の作用効果を説明する。
【0038】
第1実施形態によれば、シール面(4a、12a)間にシール材21を挟むことによって密閉空間15を形成する箱体3、11同士(被シール体同士)のシール構造であって箱体3、11同士を接触させないシール構造において、シール面間寸法を、段付きボルト25と密閉空間15に供給する大気圧を超える空気(ガス)の圧力によって設定するので、段付きボルト15の大径部29の軸方向長さLで箱体3、11同士のシール面間寸法が定まる。これによって、箱体3、11同士を直接接触させないシール構造においても、規定のシール面間寸法を任意に設定することができる。
【0039】
さらに第1実施形態によれば、次の効果を得ることができる。箱体3、11に参照例のシール構造で示した接触部7(図8左側参照)が不要になるので、箱体3、11に接触部7を追加する工賃が不要になる。また、シール面間にシール材21以外のものがいないので、シール材21を直接切断するだけで2つの箱体3、11に簡単に分解することができる。
【0040】
第1実施形態によれば、箱体(被シール体)は2つであり、各箱体3、11は、各箱体3、11の外周を囲うフランジ部4、12、各フランジ部4、12に設けた複数(少なくとも2つ)のボルト孔5、13を有し、段付きボルト25は、頭部26、軸部27、軸部27に形成される雄ねじ部28、軸部先端27aと頭部26との間に形成され、外径が頭部26の外径より小さくかつ雄ねじ部28の外径より大きい大径部29を有し、2つのフランジ部4、12の間にシール材21を挟むと共に、上部フランジ部4(頭部側にある第1の被シール体の有するフランジ部)と、下部フランジ部12(頭部と反対側にある第2の被シール体の有するフランジ部)との同じ位置に設けたボルト孔5、13に段付きボルト25を挿通して2つの箱体3、11を締結することにより凹部6、14に密閉空間15を形成する場合に、頭部26の下面26a(軸側の面)に上部フランジ部4の上面4b(頭部側の面)が接触していないとき、大気圧を超える圧力(またはリークテスト圧)の空気(ガス)を密閉空間15に供給することにより2つの箱体3、11同士に離間させる方向に力を与え、頭部26の下面26a(軸側の面)に上部フランジ部4の上面4bを接触させるので、凹部6、14に密閉空間15を形成する場合に、段付きボルト25の締結を完了した段階で頭部26の下面26aに上部フランジ部4の上面4bが接触していないときであっても、規定のシール面間寸法を得ることができる。
【0041】
第1実施形態によれば、シール面間寸法は、大径部29の軸方向長さLから上部フランジ部4(第1の被シール体)の厚さDを除くことで決定されるので、大径部29の軸方向長さL及び上部フランジ部4の厚さDによってシール面間寸法を任意に設定できる。
【0042】
第1実施形態によれば、2つの被シール体は電池パック外装体2を構成する2つの箱体3、11であり、2つの各箱体3、11は、各箱体3、11の外周を囲うフランジ部4、12、各フランジ部4、12に設けた複数(少なくとも2つ)のボルト孔5、13を有し、かつ2つの箱体3、11(の少なくとも一方)の中央に凹部6、14を有し、2つのフランジ部3、12間にフランジ部3、12の周方向に沿ってシール材21を切れ目なく介在させ、各フランジ部4、12にかつシール材21の外側に設けたボルト孔5、13に段付きボルト25を挿通して2つの箱体3、11を、凹部6、14を内側にして締結することにより凹部6、14に形成される密閉空間15にラミネート側電池41を収納するので、箱体3、11同士を直接接触させないシール構造においても、ラミネート型電池41を収納しつつ、規定のシール面間寸法を任意に設定することができる。
【0043】
実施形態では、被シール体同士を接触させないシール構造について説明したが、被シール体同士を接触させられないシール構造に対しても本発明の適用がある。また、被シール体が2つの場合で説明したが、2つの場合に限定されるものでない。
【0044】
実施形態では、2つの箱体3、11の両方に凹部6、14を有する場合で説明したが、2つの箱体3、11の少なくとも一方の中央に凹部を有する場合であってもかまわない。
【0045】
図7にはラミネート側電池41を5つ積層した場合を示したが、積層するラミネート側電池41の数はこれに限定されるものでない。
【符号の説明】
【0046】
2 電池パック外装体
3 上部箱体(被シール体、第1の被シール体)
4 上部フランジ部(被シール体、第1の被シール体)
4a 下面
4b 上面
5 上部ボルト孔
6 凹部
11 下部箱体(被シール体、第2の被シール体)
12 下部フランジ部被シール体、第2の被シール体)
12a 上面
13 下部ボルト孔
14 凹部
15 密閉空間
16 加圧空気供給孔
21 シール材
25 段付きボルト
26 頭部
26a 下面
27 軸部
28 雄ねじ部
29 大径部
29a 下面
31 一般的なボルト
41 ラミネート型電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール面間にシール材を挟むことによって密閉空間を形成する被シール体同士のシール構造であって被シール体同士を接触させないかまたは接触させられないシール構造において、
シール面間寸法を、被シール体同士を締結する段付きボルトと前記密閉空間に供給する大気圧を超えるガスの圧力によって設定することを特徴とするシール構造。
【請求項2】
前記被シール体は2つであり、各被シール体は、被シール体の外周を囲うフランジ部、フランジ部に設けた少なくとも2つのボルト孔を有し、かつ2つの被シール体の少なくとも一方の中央に凹部を有し、
前記段付きボルトは、頭部、軸部、軸部に形成される雄ねじ部、軸部先端と頭部との間に形成され、外径が頭部の外径より小さくかつ雄ねじ部の外径より大きい大径部を有し、
前記2つのフランジ部の間に前記シール材を挟むと共に、前記頭部側にある第1の被シール体の有するフランジ部と、前記頭部と反対側にある第2の被シール体の有するフランジ部との同じ位置に設けたボルト孔に前記段付きボルトを挿通して2つの被シール体を締結することにより前記凹部に前記密閉空間を形成する場合に、前記頭部の軸側の面に前記第1の被シール体の有するフランジ部の前記頭部側の面が接触していないとき、前記大気圧を超える圧力のガスを前記密閉空間に供給することにより2つの被シール体同士に離間させる方向に力を与え、前記頭部の軸側の面に前記第1の被シール体の有するフランジ部の前記頭部側の面を接触させることを特徴とする請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
前記シール面間寸法は、前記大径部の軸方向長さから前記第1の被シール体の厚さを除くことで決定されることを特徴とする請求項2に記載のシール構造。
【請求項4】
前記2つの被シール体は電池パック外装体を構成する2つの箱体であり、
2つの各箱体は、各箱体の外周を囲うフランジ部、各フランジ部に設けた少なくとも2つのボルト孔を有し、かつ2つの箱体の少なくとも一方の中央に凹部を有し、
前記2つのフランジ部間にフランジ部の周方向に沿って前記シール材を切れ目なく介在させ、各フランジ部にかつ前記シール材の外側に設けたボルト孔に前記段付きボルトを挿通して前記2つの箱体を、前記凹部を内側にして締結することにより前記凹部に形成される密閉空間にラミネート側電池を収納することを特徴とする請求項2に記載のシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−68300(P2013−68300A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208416(P2011−208416)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】