説明

シール部材

【課題】部品点数や組付工数を増大させることなく、簡易な構造でシール部材をヘッドカバーに確実に固定することができ、シール部材とヘッドカバーとを確実にシールすることができるシール部材を提供する。
【解決手段】シール部材は、点火プラグ取付孔の軸線方向に延びると共に外周面に螺旋状のねじ溝が形成された筒部と、前記ヘッドカバーに対向する対向面を有すると共に前記筒部の前記軸線方向の一端に形成された取付作用部とを備え、前記点火プラグ取付孔は、内周面に前記ねじ溝と螺合する被ねじ溝が形成されると共に、前記筒部の軸線方向の他端と対向するように内周方向に突出した段部が形成され、前記筒部の前記軸線方向の他端及び前記対向面のいずれか一方または両方に前記ヘッドカバーに対して前記軸線方向に圧接される面シール手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材に関し、特に内燃機関のヘッドカバーに形成された点火プラグ取付孔と点火プラグが挿通された取付部材との間に介装されるシール部材の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関の上部には、軽量化や意匠性の向上を目的として合成樹脂製のヘッドカバーが取り付けられている。内燃機関の上部には、点火プラグが取り付けられており、この点火プラグは筒状のプラグチューブなどの取付部材に挿通され、さらにヘッドカバーに形成された点火プラグ取付孔にプラグチューブが挿通されて取り付けられている。
【0003】
プラグチューブと点火プラグ取付孔との間には、点火プラグ取付孔とプラグチューブの間の隙間を液密にシールすることを目的としてシール部材が介装されており、その取付方法は、種々の構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−87253号公報
【特許文献2】特開2004−52705号公報
【特許文献3】特開2007−321605号公報
【0005】
特許文献1に記載されたシール部材は、天井壁にプラグチューブ挿入用の開口を設け、開口の周囲に弾性材料でなるシール部材を設けた、内燃機関の合成樹脂製ロッカーカバーにおいて、シール部材は、前記開口の周囲に垂下する筒状壁の内側とシール部材の外側面とにねじを設けて螺合することで取り付けられている。
【0006】
このように特許文献1に記載されたシール部材は、筒状壁とシール部材とを螺合するという取付方法を採用しているので、シール部材の保持は、ねじ面の接触、即ち上下方向あるいは斜方向のねじ山の圧縮と摩擦により行われる。従って、シール部材を緊密に保持する力のうち筒状壁を拡大する方向の力は圧入方式のものよりも小さくできるようになっている。
【0007】
特許文献2に記載されたシール部材は、プラグチューブの外周の全周に弾発的に密接するようにして弾性材料により形成されるシール部材が、剛性材料により形成されるとともにヘッドカバーに着脱可能に締結される支持部材に一体的に支持され、支持部材のヘッドカバーへの締結時に点火プラグ取付孔の周囲でヘッドカバーの内面に弾発的に密接するリング状の保持シール部がシール部材に一体に形成されている。
【0008】
このように特許文献2に記載されたシール部材は、支持部材をヘッドカバーに締結することで、シール部材をヘッドカバーに確実に固定することができ、ヘッドカバーに変形が生じてもシール部材によるシール機能を確実に維持することができるようになっている。
【0009】
特許文献3に記載されたシール部材は、シール部材を合成樹脂製のヘッドカバーの取付孔の孔周壁部へ差し込むことによって組み付けられ、孔周壁部の内周とこれに密接するシール部材の外周に、互いに嵌合する凹凸として、孔周壁部側に筒部とフランジ部を、シール部材側に大径部、小径部及び突部が形成されている。
【0010】
このように特許文献3に記載されたシール部材は、シール部材を孔周壁部に差し込むことによって、凹凸が形成された孔周壁部の内周とシール部材の外周とが密接してシール部材を孔周壁部へ軸方向や径方向にぐらつくことなく強固に組み付けることができ、内燃機関からの振動等による不用意な脱落や位置ずれが生じないようになっている。また、シール部材を孔周壁部に取り付けるための留め金やブラケット等の部品を必要としないので、部品点数が少なく、軽量・小型化が図れると共に組立作業も容易に行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載されたシール部材の取付方法によると、ねじ部をゴムなどの弾性材料で形成し、ねじ部がシール部材の保持とシール機能といった二つの機能を有しているので、シール機能を発揮させるためにねじ面の接触力を大きくするとシール部材を螺合する際に、組付け抵抗が大きくなり組付が困難になるといった問題があった。
【0012】
また、特許文献2に記載されたシール部材の取付方法によると、シール部材の支持部材をボルトなどで締結固定しているので、部品点数が増大し、重量や取付工数が大きくなると共にシール部材の着脱が非常に困難になるといった問題があった。
【0013】
さらに、特許文献3に記載されたシール部材の取付方法によると、シール部材とヘッドカバーとを凹凸係合で組み付けているので、熱変形や振動及び磨耗などによりずれが生じる可能性があり、シール機能を損なうという問題があった。
【0014】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、部品点数や組付工数を増大させることなく、簡易な構造でシール部材をヘッドカバーに確実に固定することができ、シール部材とヘッドカバーとを確実にシールすることができるシール部材を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るシール部材は、内燃機関に取り付けられるヘッドカバーに点火プラグ取付孔が形成され、前記点火プラグ取付孔と前記点火プラグ取付孔に挿通される取付部材との間に介装されるシール部材であって、前記シール部材は、点火プラグ取付孔の軸線方向に延びると共に外周面に螺旋状のねじ溝が形成された筒部と、前記ヘッドカバーに対向する対向面を有すると共に前記筒部の前記軸線方向の一端に形成された取付作用部とを備え、前記点火プラグ取付孔は、内周面に前記ねじ溝と螺合する被ねじ溝が形成されると共に、前記筒部の軸線方向の他端と対向するように内周方向に突出した段部が形成され、前記筒部の前記軸線方向の他端及び前記対向面のいずれか一方または両方に前記ヘッドカバーに対して前記軸線方向に圧接される面シール手段を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るシール部材において、前記筒部の前記軸線方向の他端及び前記対向面のいずれか一方には、前記ヘッドカバーに対して前記点火プラグ取付孔の径方向に圧接される径シール手段を備えると好適である。
【0017】
また、本発明に係るシール部材において、前記筒部はゴムからなると好適である。
【0018】
また、本発明に係るシール部材において、前記筒部は、軸線方向に延在する補強部を備えており、前記取付作用部は前記補強部と一体に形成されると好適である。
【0019】
また、本発明に係るシール部材において、前記筒部は合成樹脂からなると好適である。
【0020】
また、本発明に係るシール部材において、前記取付作用部は前記筒部と一体に形成されると好適である。
【0021】
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るシール部材は、筒部の軸線方向の他端及び対向面のいずれか一方または両方にヘッドカバーに対して軸線方向に圧接される面シール手段を備えるので、シール部材を螺合によって簡単に組付けることができ、面シール手段が軸線方向に圧接されるので、その反発力によってシール部材の螺合の接触力が増大し、ボルトなどの締結部品を用いずに簡単な構成でシール部材の保持とシール機能を確保することができる。
【0023】
また、本発明に係るシール部材は、筒部の軸線方向の他端及び対向面のいずれか一方には、ヘッドカバーに対して点火プラグ取付孔の径方向に圧接される径シール手段を備えているので、より確実にヘッドカバーと取付部材とをより確実にシールすることができると共に、面シール手段の反発力の大きさを調整することができるので、組付性とシール機能とのバランスを調整することができる。
【0024】
また、本発明に係るシール部材は、筒部がゴムによって形成されているので、ねじ部と面シール手段とを一体に形成することができ、部品点数を削減することができ、製造コストを抑制することができる。
【0025】
また、本発明に係るシール部材は、筒部は軸線方向に延在する補強部を備えているので、筒部がゴムによって形成された場合であってもその形状を維持することができ、組付けによって変形することによる組付不良の発生を防止することができる。
【0026】
また、本発明に係るシール部材は、筒部が合成樹脂によって形成されているので、容易かつ安価にシール部材を提供することができる。
【0027】
また、本発明に係るシール部材は、取付作用部が筒部と一体に形成されているので、樹脂成型において一括に製造することができ、製造コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施形態に係るシール部材の概要を説明するための斜視図。
【図2】第1の実施形態に係るシール部材の縦断面図。
【図3】第1の実施形態に係るシール部材の取付状態を説明するための縦断面図。
【図4】第1の実施形態に係るシール部材の変形例を説明するための縦断面図。
【図5】第1の実施形態に係るシール部材の他の変形例を説明するための縦断面図。
【図6】第2の実施形態に係るシール部材の縦断面図。
【図7】第2の実施形態に係るシール部材の変形例を説明するための縦断面図。
【図8】第2の実施形態に係るシール部材の他の変形例を説明するための縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0030】
なお、図3における挿入方向Fは取付部材30,点火プラグ取付孔21及びシール部材10の筒部11の軸方向に沿うものであり、以下の実施形態の説明において「上下」とは図3における下向きの挿入方向Fを下方向とし、この挿入方向に沿う方向を上下方向として定義する。
【0031】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るシール部材の概要を説明するための斜視図であり、図2は、第1の実施形態に係るシール部材の縦断面図であり、図3は、第1の実施形態に係るシール部材の取付状態を説明するための縦断面図であり、図4は、第1の実施形態に係るシール部材の変形例を説明するための縦断面図であり、図5は、第1の実施形態に係るシール部材の他の変形例を説明するための縦断面図である。
【0032】
図1に示すように、本実施形態に係るシール部材10は、中空円柱状に形成されると共に外周面に螺旋状のねじ溝12が形成された筒部11と、筒部11の軸方向の一端から筒部11の径方向に延設される取付作用部14とを備えている。取付作用部14の外形形状は、本実施形態に係るシール部材10をヘッドカバー20に螺合する際に工具と係合できるように、例えば12面角形状に形成されている。
【0033】
次に、図2を参照して本実施形態に係るシール部材10の構造について説明を行う。図2に示すように、本実施形態に係るシール部材10は、筒部11の内部に筒部11の軸線方向に延在する補強部17と付勢部材18とを内包した状態で弾性材料によって一体的に形成されている。なお、取付作用部14は、補強部17の軸線方向下端から立設されて形成されており、補強部17と取付作用部14とは一体に形成されている。さらに、補強部17と取付作用部14は一般炭素鋼(SP材)等の鉄材やステンレス鋼、アルミニウム合金などによって形成されている。
【0034】
また、筒部11の外周面に形成される螺旋状のねじ溝12は、後述するヘッドカバー20の点火プラグ取付孔21の内周面に形成された被ねじ溝23のピッチと略等しく形成され、且つ筒部11の軸方向断面におけるねじ溝12の形状は、シール部材10が点火プラグ取付孔21に螺着された状態において、被ねじ溝23と隙間を介して組付けられるように、ねじ溝12と被ねじ溝23とが接触する面の高さであるひっかかりの高さが小さくなるように、筒部11の径が点火プラグ取付孔21の径よりも小径に形成されている。このように、ねじ溝12を形成すれば、シール部材10を点火プラグ取付孔21に螺着する際のねじ溝12と被ねじ溝23との接触力を小さくすることができ、シール部材10を容易にヘッドカバー20へ組み付けることができる。また、筒部11を構成する弾性材料はアクリルゴム,シリコンゴム,ニトリルゴム(NBR),エチレンプロピレンゴム(EPDM)などを用いることができる。
【0035】
また、筒部11の内周側には、後述する取付部材30の外周に密接する保持部19が形成されており、筒部11の下端に連絡部19aを介して一体的に形成されている。なお、保持部19は上述した付勢部材18を備えている。付勢部材18はたとえばコイルスプリングを円環状に成しており、当該コイルスプリングの弾性力によって保持部19が取付部材30の外周面に強く密接される。
【0036】
さらに、取付作用部14の上面はヘッドカバー20と対向する対向面13が形成されており、対向面13には、ヘッドカバー20に対して筒部11の軸線方向に圧接される面シール手段15が形成されている。この面シール手段15は、筒部11と同一の材料で形成されており、筒部11と一体的に形成されている。
【0037】
以上説明したように、筒部11,面シール手段15,保持部19及び連絡部19aは、弾性材料で一体的に形成されており、補強部17や付勢部材18を内包している。このように補強部17や付勢部材18を内包するために、本実施形態に係るシール部材10は、補強部17や付勢部材18をインサート成型することによって製造することができる。
【0038】
次に、図3を参照して本実施形態に係るシール部材10の取付方法について説明を行う。図3に示すように、ヘッドカバー20は、図示しない点火プラグを有する筒状の取付部材30の挿入方向Fに沿って点火プラグ取付孔21が穿孔されている。本実施形態に係るシール部材10は、点火プラグ取付孔21と取付部材30との間に介装される部材であり、点火プラグ取付孔21の内周面に形成された被ねじ溝23と筒部11のねじ溝12とが螺合することで取り付けられている。
【0039】
点火プラグ取付孔21の内周面に形成された被ねじ溝23の上部には、筒部11の軸線方向の上端と対向するように内周方向に向けて突出した段部22が形成されている。また、上述したように、ねじ溝12のピッチは被ねじ溝のピッチと略等しく形成され、且ねじ溝12と被ねじ溝23とのひっかかりの高さが小さくなるように、筒部11の径が点火プラグ取付孔21の径よりも小径に形成されているので、ねじ溝12と被ねじ溝23との接触力を小さくすることができ、シール部材10の取付作業が容易に行えるようになっている。
【0040】
また、本実施形態に係るシール部材10は、点火プラグ取付孔21に取り付けられた状態では、面シール手段15がヘッドカバー20と対向面13とによって押し潰され、ヘッドカバー20に対して筒部11の軸線方向に圧接されている。面シール手段15が圧接されることにより、ヘッドカバー20の下方と上方とをシールしている。
【0041】
さらに、面シール手段15が押し潰された状態では、面シール手段15は弾性材料で形成されているので、復元力を有しており、この復元力が上下方向に反発力として作用する。この反発力は、対向面13の下方向に作用することで補強部17と共にシール部材10を下方向に付勢するように作用し、シール部材10が下方向に付勢されることで、ねじ溝12と被ねじ溝23との接触力を増大させることができる。このように、ねじ溝12と被ねじ溝23の接触力が増大することで、内燃機関の熱や振動などにより緩んだり外れたりすることなく、確実にシール部材10をヘッドカバー20に取り付けることができる。なお、面シール手段15の潰し代は、求められる接触力やシール性に応じて適宜調整することができる。
【0042】
このように、本実施形態に係るシール部材10は、ねじ溝12と被ねじ溝23との接触力を小さくしてシール部材10の組付性を向上させていると共に、シール部材10が組み付けられた状態では、ねじ溝12と被ねじ溝23との接触力に軸線方向に圧接される面シール手段15の反発力を作用させることで確実にシール部材10をヘッドカバー20に取り付けることができる。また、本実施形態に係るシール部材10は、ボルト等を用いて組み付ける必要がなく、部品点数も少ないためシール部材10の製造やヘッドカバー20への組付作業に伴う製造コストの抑制を図ることができる。
【0043】
上述した本実施形態に係るシール部材は、面シール手段15を対向面13に形成した場合について説明したが、種々の変形例を適用することができる。本実施形態に係るシール部材の一つの変形例としては、図4に示すように面シール手段15を対向面13のみならず、筒部11の軸線方向の上端に形成したシール部材10aとすることもできる。筒部11の上端に形成された面シール手段15aは、シール部材10aがヘッドカバー20に組み付けられた状態において、点火プラグ取付孔21に形成された段部22に押し付けられることにより、筒部11の軸線方向に押し潰されて筒部11の軸線方向に反発力を生じる。
【0044】
このように、面シール手段15,15aを対向面13及び筒部11の軸線方向の上端に形成しているので、面シール手段15,15aの発揮する反発力をより大きくすることができ、シール部材10aをヘッドカバー20に組み付けた状態において、ねじ溝12と被ねじ溝23との接触力をより大きくすることができ、より確実にシール部材10aをヘッドカバー20に組み付けることができる。また、シール部材10aとヘッドカバー20とを2箇所の面シール手段15,15aによってシールしているので、より確実にシールを行うことができる。
【0045】
また、本実施形態に係るシール部材の他の変形例としては、図5に示すように面シール手段15aを筒部11の軸線方向の上端に形成し、ねじ溝12の下部に径シール手段16を形成したシール部材10bとすることもできる。
【0046】
このように、筒部11の上端に面シール手段15aを形成し、ねじ溝12の下部に径シール手段16を形成すると、径シール手段16は筒部11の軸線方向に反発力を生じないので、面シール手段15aの反発力を必要以上に大きくすることなく2箇所でシールして確実にシールを行うことができる。
【0047】
以上、説明したように、本実施形態に係るシール部材10,10a,10bは、面シール手段15,15aを適用する位置の選択や、一方に径シール手段16を適用することでねじ溝12と被ねじ溝23との接触力やシール性を調整することができる。
【0048】
以上説明した第1の実施形態に係るシール部材10,10a,10bは、筒部11をゴムなどの弾性材料で形成した場合について説明したが、本発明に係るシール部材は、第1の実施形態で示したように筒部11を弾性材料で形成した場合に限られない。そこで、次に第2の実施形態に係るシール部材について説明を行う。
【0049】
[第2の実施形態]
図6は、第2の実施形態に係るシール部材の縦断面図であり、図7は、第2の実施形態に係るシール部材の変形例を説明するための縦断面図であり、図8は、第2の実施形態に係るシール部材の他の変形例を説明するための縦断面図である。なお、上述した第1の実施形態と同一または類似の部材については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0050】
図6に示すように、本実施形態に係るシール部材10cは、中空円柱状に形成されると共に外周面に螺旋状のねじ溝12aが形成された筒部としての樹脂ねじ部41と、樹脂ねじ部41の軸方向の一端から樹脂ねじ部41の径方向に延設される取付作用部14とを備えている。さらに、取付作用部14の対向面13には、面シール手段15が形成されている。樹脂ねじ部41は、ポリプロピレンやポリエチレン等の種々の合成樹脂によって形成することができる。
【0051】
本実施形態に係るシール部材10cは、樹脂ねじ部41の内周側に樹脂ねじ部41の軸線方向に延在するゴム筒部11aが形成されており、ゴム筒部11aには付勢手段18を備える保持部19が連絡部19aを介して一体的に形成されている。なお、ゴム筒部11a,保持部19,連絡部19a及び面シール手段15は上述した第1の実施形態に係るシール部材と同様に弾性材料で形成されている。
【0052】
このように本実施形態に係るシール部材10cは、筒部に樹脂ねじ部41を有しているので、鉄材の板金などを行うことなく、樹脂成型で樹脂ねじ部41を形成することができるので、製造コストの抑制を図ることができる。
【0053】
さらに、本実施形態に係るシール部材も、図7に示すように、上述した第1の実施形態の変形例に係るシール部材10aと同様に筒部としての樹脂ねじ部41の軸線方向の上端に面シール手段15aを適用したシール部材10dとすることができる。
【0054】
このように、面シール手段15,15aを対向面13及び樹脂ねじ部41の軸線方向の上端にゴム筒部11aと一体に形成しているので、面シール手段15,15aの発揮する反発力をより大きくすることができ、シール部材10dをヘッドカバー20に組み付けた状態において、ねじ溝12と被ねじ溝23との接触力をより大きくすることができ、より確実にシール部材10dをヘッドカバー20に組み付けることができる。また、シール部材10dとヘッドカバー20とを2箇所の面シール手段15,15aによってシールしているので、より確実にシールを行うことができる。
【0055】
また、本実施形態に係るシール部材は、図8に示すように、上述した第1の実施形態に係る他の変形例に係るシール部材10bと同様に樹脂ねじ部41の軸線方向の上端にゴム筒部11aと一体に面シール手段15aを形成し、ねじ溝12aの下部に径シール手段16を適用したシール部材10eとすることができる。
【0056】
このように、樹脂ねじ部41の上端に面シール手段15aを形成し、ねじ溝12aの下部に径シール手段16を形成すると、径シール手段16は樹脂ねじ部41の軸線方向に反発力を生じないので、面シール手段15aの反発力を必要以上に大きくすることなく2箇所でシールして確実にシールを行うことができる。
【0057】
以上、説明したように、本実施形態に係るシール部材10c,10d,10eは、面シール手段15,15aを適用する位置の選択や、一方に径シール手段16を適用することでねじ溝12aと被ねじ溝23との接触力やシール性を調整することができる。
【0058】
また、上述した本実施形態に係るシール部材10,10a,10b,10c,10d,10eは、取付作用部14を12面角形状に形成した場合について説明したが、取付作用部14の形状はこのような形態に限られない。例えば、用いる工具に応じて六面角形状に形成することもできるし、周方向に沿って滑り止めを形成して手動によって取り付けるように形成することもできる。
【0059】
さらに、上述した本実施形態に係るシール部材10,10a,10b,10c,10d,10eは、付勢部材18としてコイルスプリングを用いた場合について説明したが、保持部19が取付部材30と密接できればコイルスプリングに限られず、ゴムなどの弾性部材を用いても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0060】
10,10a,10b,10c,10d,10e シール部材, 11 筒部, 11a ゴム筒部, 12,12a ねじ溝, 13 対向面, 14 取付作用部, 15,15a 面シール手段, 16 径シール手段, 17 補強部, 18 付勢部材, 19 保持部, 19a 連絡部, 20 ヘッドカバー, 21 点火プラグ取付孔, 22 段部, 23 被ねじ溝, 30 取付部材, 41 樹脂ねじ部, F 挿入方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に取り付けられるヘッドカバーに点火プラグ取付孔が形成され、前記点火プラグ取付孔と前記点火プラグ取付孔に挿通される取付部材との間に介装されるシール部材であって、
前記シール部材は、点火プラグ取付孔の軸線方向に延びると共に外周面に螺旋状のねじ溝が形成された筒部と、前記ヘッドカバーに対向する対向面を有すると共に前記筒部の前記軸線方向の一端に形成された取付作用部とを備え、
前記点火プラグ取付孔は、内周面に前記ねじ溝と螺合する被ねじ溝が形成されると共に、前記筒部の軸線方向の他端と対向するように内周方向に突出した段部が形成され、
前記筒部の前記軸線方向の他端及び前記対向面のいずれか一方または両方に前記ヘッドカバーに対して前記軸線方向に圧接される面シール手段を備えることを特徴とするシール部材。
【請求項2】
請求項1に記載のシール部材において、
前記筒部の前記軸線方向の他端及び前記対向面のいずれか一方には、前記ヘッドカバーに対して前記点火プラグ取付孔の径方向に圧接される径シール手段を備えることを特徴とするシール部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシール部材において、
前記筒部はゴムからなることを特徴とするシール部材。
【請求項4】
請求項3に記載のシール部材において、
前記筒部は、軸線方向に延在する補強部を備えており、
前記取付作用部は前記補強部と一体に形成されることを特徴とするシール部材。
【請求項5】
請求項1または2に記載のシール部材において、
前記筒部は合成樹脂からなることを特徴とするシール部材。
【請求項6】
請求項5に記載のシール部材において、
前記取付作用部は前記筒部と一体に形成されることを特徴とするシール部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−21477(P2012−21477A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160595(P2010−160595)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000223034)株式会社ROKI (51)
【Fターム(参考)】