説明

ジアリールカーボネートの製造方法

【課題】生成物を高純度および優れた収率でもたらし、環境汚染および水処理作業における廃水問題の減少が、ジアリールカーボネート製造に起因する処理廃水溶液の再循環を最大限にすることによって達成され得る、ジアリールカーボネート製造方法を提供する。
【解決手段】ジアリールカーボネートを製造し、処理廃水の少なくとも一部を、浸透膜蒸留によって塩化ナトリウム含有廃水相の濃度を増加させることによって、電気分解に利用し、それと同時に、ジアリールカーボネート製造プロセス(ジフェニルカーボネートプロセス)のために、電気分解から得られる水酸化ナトリウム溶液を希釈する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2009年4月17日に提出された独国特許出願第10 2009 017 862.7号に対する利益を主張し、前記出願は、全ての有益な目的のために、その全体を引用することによって本願書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ジアリールカーボネートを製造して、浸透蒸留によって塩化ナトリウム含有廃水を濃縮し、それと同時に、電気分解から得られる水酸化ナトリウム溶液を、ジフェニルカーボネート製造プロセスのために希釈する複合的方法に関する。
【0003】
ジアリールカーボネート(ジフェニルカーボネート)の製造は通常、ホスゲンを製造し、次いで、界面において、アルカリおよび窒素触媒の存在下でモノフェノールと不活性溶媒中のホスゲンとを反応させることによる連続的方法によって行われる。
【化1】

【0004】
例えば相界面プロセスによるジアリールカーボネートの製造は、原則として文献、例えば『Chemistry and Physics of Polycarbonates(ポリカーボネートの化学および物理)』(Polymer Reviews、H.Schnell、第9巻、John Wiley and Sons,Inc.、1964年、第50/51頁)に記載されている。
【0005】
米国特許第4016190号には、65℃より高い温度で操作されるジアリールカーボネートの製造方法が記載されている。この方法において、pHはまず低い値(pH8〜9)に設定され、次いで、高い値(10〜11)に設定される。
【0006】
混合の改良、並びに狭い温度およびpHプロファイルの堅持、並びに生成物の単離による方法の最適化が、欧州特許第1219589号、欧州特許第1216981号、欧州特許第1216982号および欧州特許第784048号に記載されている。
【0007】
しかし、これらの公知の方法からの廃水中の高残存フェノール値は、環境を汚染し得、水処理作業に関して廃水問題の増加をもたらし得、複雑な精製工程を必要とする。従って、国際公開第03/070639号A1には、塩化メチレンで抽出することによる廃水中の有機不純物の除去が記載されている。
【0008】
塩化ナトリウム含有溶液は通常、溶媒および有機残余を含まず、その後廃棄される。
【0009】
欧州特許第1200359号(国際公開第2000078682号A1)または米国特許第6340736号によれば、塩化ナトリウム含有廃水は、オゾン分解によって精製することができ、その後、塩化ナトリウムの電気分解に使用することができる。この方法の不都合な点は、オゾン分解に非常に費用がかかることである。
【0010】
欧州特許第541114号によれば、塩化ナトリウム含有廃水ストリームを蒸発させて水を完全に除去し、有機不純物と一緒に残存する塩を熱処理にかけ、その結果、有機成分が分解される。この方法では、赤外放射線を用いることが特に好ましい。この方法の不都合な点は、水を完全に蒸発させなければならず、その結果、この方法を経済的に実施できないことである。
【0011】
国際公開第03/70639号A1によれば、DPC製造からの廃水は抽出によって精製され、その後、塩化ナトリウムの電気分解に供給される。しかし、NaCl含有廃水の量が多い場合、NaCl含有廃水と共に電気分解に導入される水が塩化ナトリウム電気分解の水の平衡を乱すので、DPC製造からの廃水中の塩化ナトリウムの最大で僅か26%が、NaCl電気分解においてリサイクルされ得る。
【0012】
DPC製造において得られる塩化ナトリウム含有溶液は通常、塩化ナトリウム含有量が13〜17重量%である。従って、溶液中に存在する全ての塩化ナトリウムをNaCl電気分解にリサイクルして塩素および水酸化ナトリウムを生成することはできない。市販のイオン交換膜を用いる標準的な塩化ナトリウム電気分解において塩化ナトリウム濃度が17%である場合、ナトリウム1モル当たり水が3.5molである水の輸送を示し、塩化ナトリウム含有溶液から塩化ナトリウムの僅か約23%が用いられ得る。飽和塩化ナトリウム溶液の約25重量%に濃度が増加すると、塩化ナトリウム含有溶液中に存在する塩化ナトリウムの38%をリサイクルすることが可能となる。塩化ナトリウム含有溶液全体のリサイクルは現在のところ知られていない。
【0013】
一方、アルカリ金属塩化物含有廃水から水を抜き出す濃縮方法が公知である。
【0014】
国際公開第01/38419号によれば、塩化ナトリウム含有溶液を熱処理によって蒸発させ、それによって、高濃縮された塩化ナトリウム溶液を電解セルに供給することが可能である。しかし、蒸発はエネルギーを大量に消費し、費用がかかる。
【0015】
例えば、逆浸透または特に好ましくは膜蒸留もしくは膜接触器を用いることも可能である(Melin、Rautenbach、『Membran−verfahren(膜プロセス)』、SPRINGER、ベルリン、2003年を参照のこと)。この方法の不都合な点は、高浸透圧に打ち勝つためのエネルギー消費が大きく、その結果、この方法がもはや経済的でないことである。
【0016】
上述の統合された方法は全て、ジアリールカーボネート製造と組み合わせると、濃縮NaCl溶液(10〜20重量%)を限られた程度のみ電気分解に供給し得、その結果、NaClが一部のみ再使用され得、または濃度を増加させるとエネルギーを大量に消費し、費用がかかるという不都合な点を有する。
【発明の概要】
【0017】
上述の従来技術を考慮して、本発明は、生成物を高純度および優れた収率でもたらし、環境汚染および水処理作業における廃水問題の減少が、ジアリールカーボネート製造に起因する処理廃水溶液の再循環を最大限にすることによって達成され得る、ジアリールカーボネート製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
更に、電気分解によって塩化ナトリウムを塩素および水酸化ナトリウムおよび適切であれば水素へ転化することは、最小限のエネルギー消費で、従ってリサイクル工程において資源を節約する方法で行われるべきである。
【0019】
本発明の目的は、電気分解のために、ジアリールカーボネート製造からのNaCl溶液の濃度を浸透膜蒸留によって事前に増加させ、それにより、塩化ナトリウム含有廃水相をプロセスにおいて利用することによって達成される。
【0020】
相界面においてアルカリおよび窒素触媒の存在下でモノフェノールと不活性溶媒中のホスゲンとを反応させることによるアリールカーボネートの連続的製造において得られる塩化ナトリウム含有廃水溶液は、複雑な精製をすることなく、pHを8より小さい値または8に等しい値に調節し、活性炭で簡単に処理した後に、浸透膜蒸留において直接濃縮することが可能であり、存在する塩化ナトリウムの塩素、水酸化ナトリウムおよび適切であれば水素への電気化学的酸化に供給することが可能であり、塩素は少なくとも部分的にホスゲン製造にリサイクルされ得ることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、Naフェノキシドの相界面ホスゲン化によってDPCを製造し、塩化ナトリウム含有廃水相を、浸透膜蒸留を用いて濃度を増加させることによって電気分解に利用し、それと同時に、電気分解から得られる水酸化ナトリウム溶液を、ジフェニルカーボネート製造プロセスのために希釈する、本発明の方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一の態様は、ジアリールカーボネート製造方法であり、この方法は以下の工程を含む:
a) 塩素を一酸化炭素と反応させることによってホスゲンを製造する工程;
b) 工程a)において生成するホスゲンを、水性アルカリ金属含有塩基および場合により窒素触媒の存在下で、少なくとも1種類のモノフェノールと反応させて、ジアリールカーボネートおよびアルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液を生成する工程;
c) 工程b)において生成するジアリールカーボネートを分離および処理(または精製もしくは単離、working−up)する工程;
e) 工程c)の後に残存する前記アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液の少なくとも一部の濃度を浸透膜蒸留によって増加させる工程;
f) 工程e)からの前記アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液の少なくとも一部を電気化学的に酸化して、塩素、アルカリ金属水酸化物および場合により水素を生成する工程。
【0023】
本発明のもう一つの態様は、前記水性アルカリ金属含有塩基がナトリウム含有塩基であり、前記アルカリ金属塩化物が塩化ナトリウムである、上述の方法である。
【0024】
本発明のもう一つの態様は、工程d)において、工程c)の後に残存する溶媒残余および場合により触媒残余を前記アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液から分離し、その後、工程e)において溶液を浸透膜蒸留に供給する、上述の方法である。
【0025】
本発明のもう一つの態様は、前記分離を、抽出もしくは蒸気による溶液のストリッピング、および/または吸着剤による処理によって行う、上述の方法である。
【0026】
本発明のもう一つの態様は、前記吸着剤が活性炭である、上述の方法である。
【0027】
本発明のもう一つの態様は、工程e)において、工程d)からの前記アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液の濃度を、水酸化ナトリウム溶液を水の受容体として使用して浸透蒸留によって増加させる、上述の方法である。
【0028】
本発明のもう一つの態様は、工程e)における浸透膜蒸留を、20〜50℃の範囲の温度で行う、上述の方法である。
【0029】
本発明のもう一つの態様は、工程e)における浸透膜蒸留を、1.1〜1.2barの範囲の絶対圧力で行う、上述の方法である。
【0030】
本発明のもう一つの態様は、工程e)における浸透膜蒸留を、30〜100barの範囲の差圧で行う、上述の方法である。
【0031】
本発明のもう一つの態様は、工程d)からの前記アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液の少なくとも一部の浸透膜蒸留を、Accurel PP膜を用いて行う、上述の方法である。
【0032】
本発明のもう一つの態様は、工程e)からの前記アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液の少なくとも一部の、塩素および水酸化ナトリウムへの電気化学的酸化を、カソードとしてガス拡散電極を用いて行う、上述の方法である。
【0033】
本発明のもう一つの態様は、工程e)からの精製されたアルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液の少なくとも一部を、塩素および水酸化ナトリウムを製造するための膜電気分解のブライン回路に導入する、上述の方法である。
【0034】
本発明のもう一つの態様は、電気分解f)において、追加のアルカリ金属塩化物を前記アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液に加えてアルカリ金属塩化物濃度を増加させる、上述の方法である。
【0035】
本発明のもう一つの態様は、工程c)における分離または工程d)における精製において、前記アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液のpHを8より小さくする、上述の方法である。
【0036】
本発明のもう一つの態様は、工程c)における分離または工程d)における精製において、前記アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液のpHを、塩酸または塩化水素を用いることによって調節する、上述の方法である。
【0037】
本発明のもう一つの態様は、工程f)における電気分解に供給される前記アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液のアルカリ金属塩化物濃度が100〜280g/lの範囲であり、かつ/または工程f)における電気分解から得られるアルカリ金属塩化物溶液の濃度が13〜50重量%の範囲である、上述の方法である。
【0038】
本発明のもう一つの態様は、工程f)における電気分解に供給される前記アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液のアルカリ金属塩化物濃度が110〜220g/lの範囲であり、かつ/または工程f)における電気分解から得られるアルカリ金属塩化物溶液の濃度が14〜32重量%の範囲である、上述の方法である。
【0039】
本発明のもう一つの態様は、工程b)における前記少なくとも1種類のモノフェノールが式(I)のモノフェノールであり、
【化2】

ここで、Rは水素、ハロゲン、または分枝もしくは非分枝のC〜Cアルキルラジカル、またはアルコキシカルボニルラジカルである、上述の方法である。
【0040】
本発明のもう一つの態様は、工程b)における前記少なくとも1種類のモノフェノールが、フェノール、アルキルフェノールおよびハロフェノールからなる群から選択される、上述の方法である。
【0041】
本発明のもう一つの態様は、前記アルキルフェノールが、クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、p−n−オクチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−n−ノニルフェノールおよびp−イソノニルフェノールからなる群から選択され、前記ハロフェノールが、p−クロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、p−ブロモフェノールおよび2,4,6−トリブロモフェノールからなる群から選択される、上述の方法である。
【0042】
本発明のもう一つの態様は、工程b)における前記少なくとも1種類のモノフェノールがフェノールである、上述の方法である。
【0043】
従って、本発明は、ジアリールカーボネートを製造し、廃水相を利用する方法を提供する。特に、この方法は、その後のアルカリ金属塩化物電気分解で処理するために、浸透膜蒸留によって、ジフェニルカーボネート製造工程(DPC工程)からの塩化ナトリウム含有廃水相の濃度を増加させることを含む。同時に、電気分解によって生成する水酸化ナトリウム溶液を希釈して、その結果、その後、その水酸化ナトリウム水溶液をDPC工程における出発材料として直接用いることができる。
【0044】
ジアリールカーボネート製造方法は以下の工程を含む:
a) 塩素の一酸化炭素との反応によってホスゲンを製造する工程、
b) 工程a)において生成するホスゲンを、水性アルカリ金属含有塩基、特にナトリウム含有塩基、場合により窒素触媒および場合により有機溶媒の存在下で、少なくとも1種類のモノフェノールと反応させて、ジアリールカーボネートおよびアルカリ金属塩化物、特に塩化ナトリウムを含有する反応廃水溶液を生成する工程、
c) 工程b)において生成するジアリールカーボネートを分離および処理(または精製、workup)する工程、
d) 特に抽出もしくは蒸気による溶液のストリッピング、および/または吸着剤、特に活性炭による処理によって、工程c)の後に残存するアルカリ金属塩化物含有溶液から、溶媒残余および場合により触媒残余を、場合により分離する工程、
e) 工程c)またはd)の後に残存するアルカリ金属塩化物含有溶液の少なくとも一部を浸透膜蒸留する工程、
f) 工程e)からのアルカリ金属塩化物含有溶液の少なくとも一部を電気化学的に酸化して、塩素、アルカリ金属水酸化物および適切であれば水素を生成する工程。
【0045】
特に好ましい態様において、本発明の方法は、吸着剤で処理する前に、工程c)またはd)において、溶液のpHを8より小さく又は8と等しくする、好ましくはpH6〜8にすることを特徴とする。
【0046】
更なる特定の態様において、工程f)において生成する塩素の少なくとも一部を、工程a)のホスゲン製造にリサイクルする。
【0047】
更なる好ましい態様において、工程f)において生成するアルカリ金属水酸化物の少なくとも一部を、工程e)の浸透膜蒸留において水の受容体として用いる。
【0048】
更なる特に好ましい態様において、得られる希アルカリ金属水酸化物溶液の少なくとも一部を、工程b)においてジアリールカーボネート製造に用いる。
【0049】
工程c)における分離の後に得られるアルカリ金属塩化物含有溶液(反応廃水)は、工程d)において溶媒残余および場合により触媒残余を除去した後に、浸透膜蒸留において、単独で又は処理からの洗浄相と組み合わせて(総処理廃水)、好ましくは単独で用いることができる。
【0050】
本発明の方法で用いるのに特に適しているモノフェノールは、式(I)のフェノールであり、
【化3】

ここで、Rは水素、ハロゲン、または分枝もしくは非分枝のC〜Cアルキルラジカルまたはアルコキシカルボニルラジカルである。
【0051】
クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、p−n−オクチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−n−ノニルフェノールおよびp−イソノニルフェノール等のアルキルフェノール並びにフェノールが好ましい。p−クロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、p−ブロモフェノールおよび2,4,6−トリブロモフェノール等のハロフェノールまたはサリチル酸メチル。フェノールが特に好ましい。
【0052】
工程b)におけるフェノキシドの生成に用いられるアルカリは、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムからなる群の水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムを含有するアルカリ溶液であり得、本発明の方法において、好ましくは濃度10〜55重量%の溶液として用いられる。アルカリ溶液は、特に好ましくは、フェノールを基準として1.0〜1.1モル等量の量で用いられる。
【0053】
工程b)における反応は、三級アミン、N−アルキルピペリジンまたはオニウム塩等の窒素触媒によって促進され得る。
【0054】
使用されるアミン触媒は、開鎖または環状であり得、好ましくはトリブチルアミン、トリエチルアミンおよびN−エチルピペリジンである。本発明の方法において、触媒は、好ましくは濃度1〜55重量%の溶液として用いられる。
【0055】
触媒の濃度は、好ましくは、使用されるモノフェノールを基準として0.0001mol〜0.1molである。
【0056】
本発明の目的のために、オニウム塩はNRX等の化合物であり、ここでRはアルキルおよび/もしくはアリールラジカル並びに/またはHであり得、Xはアニオンである。
【0057】
処理工程b)において、ホスゲンを、液体、ガス、または不活性溶媒の溶液として使用し得る。
【0058】
本発明の方法の工程b)において好ましく使用され得る不活性有機溶媒は、例えば、ジクロロメタン、トルエン、種々のジクロロエタンおよびクロロプロパン化合物、クロロベンゼン並びにクロロトルエンである。ジクロロメタンを用いることが好ましい。
【0059】
工程b)における反応を、好ましくは連続的に、特に好ましくは大きな逆混合のない栓流で行う。従って、この反応は例えば管式反応器において起こり得る。2相(水相および有機相)の混合を、設置されたオリフィス板、静的混合器および/または例えばポンプによって実施し得る。工程b)における反応は、1段階または2段階、特に好ましくは2段階で行うことができる。
【0060】
工程b)におけるプロセスが2段階で行われる場合、反応は、本発明の方法の第1段階において、出発物質であるホスゲン、好ましくは最初はホスゲンの溶媒としてはたらく不活性溶媒、および好ましくは事前にアルカリ金属水酸化物溶液に溶解しているモノフェノールを混合することによって開始させることが好ましい。第1段階における滞留時間は通常、2秒〜300秒の範囲、特に好ましくは4秒〜200秒の範囲である。第1段階におけるpHは、好ましくはアルカリ金属水酸化物溶液/モノフェノール/ホスゲンの比率によって設定され、それにより、pHは11.0〜12,0、好ましくは11.2〜11.8、特に好ましくは11.4〜11.6の範囲である。第1段階における反応温度は、冷却によって好ましくは40度より低く、特に好ましくは35度より低く保持する。
【0061】
本発明の方法の第2段階において、ジアリールカーボネートを生成する反応は、その後、好ましくは完了する。好ましい方法における滞留時間は、1分〜2時間、好ましくは2分から1時間、極めて特に好ましくは3分〜30分である。好ましい方法の第2段階において、pHを常に監視し(好ましくは、連続的方法において、原則として公知の方法によってオンラインで測定し)、アルカリ金属水酸化物を加えることによってpHを適切に調節する。導入されるアルカリ金属水酸化物の量は、特に、第2処理段階における反応混合物のpHが7.5〜10.5、好ましくは8〜9.5、極めて特に好ましくは8.2〜9.3の範囲であるように調節する。第2段階における反応温度は、冷却によって好ましくは50℃より低く、特に好ましくは40℃より低く、極めて特に好ましくは35℃より低く保持する。
【0062】
しかし、本明細書における一般的条件または好ましい範囲において言及したパラメータまたは詳細は、いずれかの方法で互いに、即ち各々の範囲および好ましい範囲の間で組み合わせることも可能である。
【0063】
好ましい方法において、工程b)におけるモノフェノールに対するホスゲンのモル比は1:2〜1:2.2である。溶媒は、反応後にジアリールカーボネートが濃度5〜60%の溶液、好ましくは濃度20〜45%の溶液中に存在するような量を加える。
【0064】
反応b)の後、ジアリールカーボネート含有有機相を、好ましくは工程c)において水性液体で洗浄し、各洗浄操作の後、できるだけ完全に水相から分離する。使用する洗浄液は、触媒を分離するための水性液体、例えば、HClまたはHPO等の希鉱酸、好ましくはHCl、および更なる精製のための脱イオン水である。ジアリールカーボネート溶液は通常、洗浄および洗浄液の除去の後に濁っている。洗浄液中のHClまたはHPOの濃度は、例えば0.5〜1.0重量%であり得る。有機相を、例として及び好ましくは2回洗浄する。
【0065】
有機相から洗浄液を分離する相分離装置として、当業者に公知の分離容器、相分離器、遠心分離器もしくはコアレッサー、またはこれらの装置の組み合わせを用いることが基本的に可能である。
【0066】
未だ分離すべき溶媒を無視して99.85%より高い高純度のジアリールカーボネートを、本発明の方法によって得ることができる。
【0067】
好ましい態様において、ジアリールカーボネート合成の後、ジアリールカーボネートを、合成において用いられる有機溶媒(例えば塩化メチレン)中のジアリールカーボネート溶液の形態で分離する。
【0068】
その後、高純度ジアリールカーボネートを得るために溶媒を蒸発させる。蒸発は、複数の蒸発器段階で行うことができる。例えば、蒸発は、直列接続した1個またはそれより多くの蒸留塔によって行われ、その蒸留塔において溶媒がジアリールカーボネートから分離される。
【0069】
精製工程c)は、1段階またはそれより多くの段階で行うことができる。それらの段階は、例えば、蒸留における底部温度が150℃〜310℃、好ましくは160℃〜230℃であるように、連続的に行うことができる。この蒸留を行うために用いられる圧力は、特に、1〜1000mbar、好ましくは5〜100mbarである。
【0070】
このように精製されたジアリールカーボネートは、特に高い純度(GC>99.95%)および非常に良好なエステル交換挙動を有し、その結果、優れた品質のポリカーボネートをその後、そのジアリールカーボネートから製造することができる。
【0071】
溶融エステル交換法による芳香族オリゴカーボネート/ポリカーボネート製造にジアリールカーボネートを使用することが文献において公知であり、例えば、『Encyclopedia of Polymer Science(ポリマー科学百科事典)』第10巻(1969年)、『Chemistry and Physics of Polycarbonates(ポリカーボネートの化学および物理)』(Polymer Reviews、H.Schnell、第9巻、John Wiley and Sons,Inc.、1964年)または米国特許第5340905号に記載されている。
【0072】
工程c)において残存する水溶液から、好ましくは、例えば蒸留または蒸気ストリッピングによって、揮発性有機不純物、例えば合成で使用した有機溶媒の残余および場合により残存触媒を除く。溶解した塩化ナトリウム(10〜20重量%)および溶解した炭酸ナトリウム(0.3〜1.5重量%)を含有する廃水がその後に残る。カーボネートは、例えば、ジアリールカーボネート合成における二次反応としてのホスゲンの加水分解によって生成する。廃水は有機化合物、例えばフェノール(例えば非置換フェノール、アルキルフェノール)で更に汚染される。
【0073】
特に好ましい態様において、予め精製された廃水を吸着剤、好ましくは活性炭で処理する。
【0074】
好ましい方法によれば、塩酸またはガス状塩化水素を用いることによって、処理工程c)またはd)におけるpHの低下を行う。
【0075】
好ましい方法の変形において、濃縮工程によってアルキル金属塩化物含有廃水から水を抜き出す。
【0076】
特にNaCl電気分解に由来するNaOH溶液を水の受容体として用いる場合、浸透蒸留によるNaCl溶液の濃縮によってエネルギーを節約する。このことは、希水酸化ナトリウム溶液をDPC製造に用いる場合に特に好都合であり、この場合、水酸化ナトリウムを希釈するための水を更に節約することができる。
【0077】
従って、工程d)からのアルカリ金属塩化物含有溶液の濃度を、電気分解f)の前に、水酸化ナトリウム溶液を水の受容体として使用して浸透蒸留によって増加させる(工程e)ことを特徴とする方法が特に好ましい。
【0078】
本発明の電解セルの操作と濃度増加工程とを組み合わせると、理論的には100%までの塩化ナトリウムを廃水から回収することが可能となる。
【0079】
浸透蒸留は、膜を通る水蒸気の分子拡散および場合によりクヌーセン拡散によって行う。拡散速度は、膜の両側における水蒸気圧の間の差に依存し、膜の多孔性、厚さ、および巻き取られる程度にも依存する。
【0080】
有効な濃度増加を可能にするために、アルカリ金属水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、特に好ましくは水酸化ナトリウムの濃縮溶液を水の受容体として用いるべきである。
【0081】
本発明の方法の目的のために、ポリプロピレン等の化学的に安定な材料を膜材料として用いるべきである。使用される膜は、好ましくは、キャピラリー長が30〜6000μmで直径が0.01〜0.7μmであるキャピラリー膜であるべきである。
【0082】
特に適している膜は、Membrana製のAccurel PP 50/200、Accurel PP 50/280、Accurel PP 150/330、Accurel PP Q3/2またはAccurel S 6/2等の脂溶性膜である。
【0083】
この方法は好ましくは、浸透蒸留が10〜100℃、好ましくは20〜50℃の温度で行われるように操作される。使用する水酸化ナトリウム溶液の温度は、NaCl含有廃水の温度よりも高温であり得る。
【0084】
浸透蒸留は、1〜1.4barの絶対圧力、好ましくは1.1〜1.2barの圧力で行う。
【0085】
アルカリ金属塩化物溶液とアルカリ金属水酸化物溶液との間の圧力比は、特に、アルカリ金属塩化物溶液の浸透圧がアルカリ金属水酸化物溶液の圧力より高くなるように選択される。
【0086】
特に好ましい方法において、アルカリ金属塩化物溶液とアルカリ金属水酸化物溶液との間の差圧は、20〜150bar、好ましくは30〜100barであるべきである。
【0087】
アルカリ金属塩化物の電気分解法を以下により詳細に説明する。いずれのアルカリ金属塩化物(特にLiCl、NaCl、KCl)も、上述のように、基本的に本方法に使用することができるが、実施される段階において塩化ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを用いることが本発明の方法の好ましい態様であるので、以下の説明は、塩化ナトリウムの電気分解に関する実例であると考えるべきである。
【0088】
例えば塩化ナトリウム含有溶液を電気分解するために、膜電気分解法が一般に用いられる(この問題に関しては、Peter Schmittingerの『CHLORINE(塩素)』(Wiley−VCH Verlag、2000年)を参照のこと)。ここでは、二つに分割され、アノードを有するアノード空間およびカソードを有するカソード空間を有する電解セルが用いられる。アノード空間とカソード空間とはイオン交換膜で隔てられる。塩化ナトリウムを含有し、塩化ナトリウム濃度が通常300g/lより大きい溶液をアノード空間に導入する。アノードにおいて、塩素イオンが塩素へと酸化され、その塩素は、減損した塩化ナトリウム溶液(約200g/l)と共にセルから排出される。ナトリウムイオンは、電場の作用の下でイオン交換膜を通ってカソード空間へと移動する。この移動の間に、各モルのナトリウムが、それと共に、膜に応じて3.5〜4.5molの水を運ぶ。これにより、アノード液における水の減損がもたらされる。アノード液とは対照的に、カソード側では、水が電気分解されて水酸化物イオンおよび水素が生成することによって水が消費される。ナトリウムイオンと共にカソード液に運ばれる水は、出口における水酸化ナトリウム濃度を31〜32重量%に、入口濃度を30%に、および電流密度を4kA/mに保持するのに十分である。カソード空間において、水は電気化学的に還元されて水酸化物イオンおよび水素が生成する。
【0089】
別法として、ガス拡散電極をカソードとして用いることができ、このガス拡散電極において、酸素が電子と反応して水酸化物イオンが生成し、水素は生成しない。水酸化物イオンは、イオン交換膜を通ってカソード空間に移動してきたナトリウムイオンと一緒に水酸化ナトリウムを形成する。濃度が30重量%である水酸化ナトリウム溶液が通常、カソード室に供給され、濃度が31〜32重量%である水酸化ナトリウム溶液が排出される。水酸化ナトリウムは通常、濃度50%の溶液として保管または輸送されるので、水酸化ナトリウムの非常に高い濃度を達成することが目的である。しかし、市販の膜は現在のところ、濃度が32重量%より高いアルカリ溶液に対して耐久性がないので、水酸化ナトリウム溶液を熱蒸発によって濃縮しなければならない。
【0090】
塩化ナトリウムを電気分解する場合、この塩化ナトリウム含有溶液によって追加の水をアノード液に導入するが、水は膜を通ってカソード液へと排出されるのみである。カソード液に輸送され得るより多くの水が塩化ナトリウム含有溶液によって導入される場合、アノード液において塩化ナトリウムが減損し、電気分解を連続的に実施することができない。塩化ナトリウム濃度が非常に低い場合、酸素を生成する二次反応が起こるだろう。
【0091】
塩化ナトリウム含有溶液の最大量を塩化ナトリウムの電気分解へ経済的に供給するために、膜を通る水の輸送を増加させることが有用であり得る。これは、米国特許第4025405号に記載されているように、適切な膜を選択することによって実施し得る。水の輸送の増加の効果は、他の方法では慣例的な、アルカリ濃度を保持するための水の追加を省き得ることである。
【0092】
米国特許第3773634号によれば、膜を通る水の輸送が増加すると、アルカリ濃度が31〜43重量%で塩化ナトリウム濃度が120〜250g/lである場合に電気分解を行うことができる。
【0093】
好ましい方法において、相分離の後の塩化ナトリウム含有反応廃水の分離d)、並びに溶媒および場合により使用した触媒の除去を、抽出または蒸気によるストリッピング、およびpH調節後の活性炭による処理によって行う。
【0094】
アルカリ金属塩化物含有廃水を、その後、浸透蒸留e)に直接供給し得る。
【0095】
DPC製造からの廃水中に存在する塩化ナトリウムの最大で26%をNaCl電気分解に使用し得る従来技術(国際公開第03/70639号)と比較して、本発明の方法では、26%より多くの塩化ナトリウムを廃水から回収することができる。
【0096】
本発明の方法は、カソードで水素が発生せず、代わりに、カソードが、酸素を水酸化物イオンに還元するガス拡散電極によって置き換えられる、アルカリ金属塩化物電気分解を用いて行うこともできる。
【0097】
例えば、統合された製造サイトにおける化学反応に水素が必要とされない場合、必要な副生成物としての水素の生成を無くすことができる。利点は、ガス拡散電極を用いる際の電解電圧がより小さいことに起因して、電気分解におけるエネルギーが節約されることである。
【0098】
DPC製造から来る塩化ナトリウム含有溶液は通常、その溶液が反応廃水である場合、18重量%までの塩化ナトリウム含有量である。反応廃水が洗浄水で汚染されている場合、NaCl濃度は、例えば約13重量%である。電気分解によって専らDPC製造のための塩素および水酸化ナトリウムが供給される場合、塩化ナトリウム含有廃水のごく一部のみが電気分解に用いられ得る。従って、塩化ナトリウムの電気分解に関して常套的なイオン交換膜および標準的な操作パラメータの場合、濃度17重量%の塩化ナトリウム含有DPC廃水の塩化ナトリウムの最大で僅か26%が用いられ得る。NaCl電気分解の標準的な操作パラメータは、200〜240g/lの流出物におけるブライン濃度、および31〜32重量%のNaOH濃度である。従って、得られる塩化ナトリウムの全てをリサイクルすることは、これまでは不可能であった。水の熱蒸発による濃縮は、塩化ナトリウムが非常に安価な製品として市販されているので、現在のところ経済的でない。
【0099】
塩化ナトリウムの電気分解によってDPC製造のための塩素および水酸化ナトリウムが専ら供給される限りにおいては、濃度が17重量%である得られた廃水中の塩化ナトリウムの26%よりかなり多くを、本発明の方法によってリサイクルすることができる。統合された化学サイトにおいて、塩化ナトリウムの電気分解は通常、複数の塩素消費物(consumer)と共に操作され、その結果、塩化ナトリウム含有溶液を全ての消費物からリサイクルに利用できない。廃水から再使用可能な塩化ナトリウムの割合は、塩化ナトリウムの電気分解がジアリールカーボネート製造のためだけに水酸化ナトリウムおよび塩素を提供しなくてよい場合に増加する。
【0100】
本発明の方法の更なる好ましい態様において、ジアリールカーボネート製造からの廃水を、固体アルカリ金属塩化物によって濃縮し、アルカリ金属塩化物の電気分解に供給する。このようにして、DPC廃水中のアルカリ金属塩化物の50%より多くを再使用することができる。
【0101】
しかし、このことに対する必須条件は、塩素およびアルカリ金属水酸化物をジアリールカーボネート製造のみに使用しないことである。
【0102】
電気分解f)において、pHが7より小さいアルカリ金属塩化物含有廃水を用いることまたは送り込むことが特に好ましい。pHの調節は、好ましくは塩酸を用いて行われるが、ガス状塩化水素を用いて行うこともできる。
【0103】
更なる好ましい方法において、NaCl電気分解は、セルを出るNaCl溶液が200g/lより小さいNaCl濃度であるように操作する。それと並行して、セルから流出するアルカリ濃度は30重量%より小さくなり得る。
【0104】
イオン交換膜を通る水の輸送は、操作パラメータだけでなく使用する膜の種類にも依存する。本発明の方法において、本発明の塩化ナトリウムおよびアルカリ濃度の条件の下で、ナトリウム1モル当たり4.5molより多くの水の膜を通る輸送を許容するイオン交換膜を用いることが好ましい。
【0105】
電流密度は膜面積に基づいて計算され、具体的には2〜6kA/mである。比較的大きい表面積を有するアノードを用いることが特に好ましい。本発明の目的のために、比較的大きい表面積を有するアノードは、物理的表面積が投影表面積よりかなり大きいアノードである。比較的大きい表面積を有するアノードは、例えば、発泡体状またはフェルト状電極である。このようにして、非常に大きい電極表面積がアノード側に提供され、局所電流密度が著しく減少する。アノードの表面積は、好ましくは電極の物理的表面積に基づく局所電流密度が3kA/mより小さくなるように選択される。表面積が大きくな留に従って、また、局所電流密度が小さくなるに従って、ブラインにおける塩化ナトリウム濃度は小さくなり得、廃水からのリサイクルされ得る塩化ナトリウムの割合が大きくなる。
【0106】
電気分解f)の前に、アルカリ金属塩化物含有廃水のpHは、好ましくは7より小さく、特に好ましくは0.5〜6であるべきである。
【0107】
アルカリ金属塩化物の電気分解は、セルを出るアルカリ金属塩化物溶液のアルカリ金属塩化物濃度が塩化ナトリウム100〜280g/lであり、かつ/またはセルを出るアルカリ溶液の濃度が13〜33重量%であるように操作するべきである。
【0108】
比較的小さい電圧でのセルの操作を可能にする濃度が特に好ましい。これを達成するために、セルを出るアルカリ金属塩化物溶液の濃度は、好ましくはアルカリ金属塩化物110〜220g/lであるべきであり、かつ/またはセルを出るアルカリ溶液の濃度は、20〜30重量%であるべきである。
【0109】
電気分解に用いられるイオン交換膜は、好ましくは、ナトリウム1モル当たりの水の輸送が4.0mol(HO)/mol(ナトリウム)より大きくあるべきであり、特に好ましくは4.5〜6.5mol(HO)/mol(ナトリウム)であるべきである。
【0110】
この方法は、好ましくは、電気分解f)を70〜100℃、好ましくは80〜95℃の温度で行うように操作する。
【0111】
電気分解は、1〜1.4barの絶対圧力、好ましくは1.1〜1.2barの圧力で行う。
【0112】
アノード空間とカソード空間との間の圧力比は、特に、カソード空間における圧力がアノード空間における圧力より大きくなるように選択される。
【0113】
特に好ましい方法において、カソード空間とアノード空間との間の差圧は、20〜150mbar、好ましくは30〜100mbarであるべきである。
【0114】
アルカリ金属塩化物濃度が比較的小さい場合、特有のアノードコーティングを用いることもできる。特に、アノードのコーティングは、酸化ルテニウムを、元素周期表の遷移第7族および第8族の更なる貴金属成分と一緒に含み得る。例えば、アノードコーティングをパラジウム化合物でドープし得る。同様に、ダイアモンドをベースとするコーティングを使用し得る。
【0115】
図1:Naフェノキシドの相界面ホスゲン化によってDPCを製造し、浸透膜蒸留を用いて濃度を増加させることによって塩化ナトリウム含有廃水相を電気分解に利用し、それと同時に、電気分解から得られる水酸化ナトリウム溶液を、ジフェニルカーボネート製造プロセスのために希釈する、本発明の方法の概略図。
【0116】
以下の実施例は、本発明を、限定することなく説明する。
【0117】
上述の全ての参考文献は、全ての有用な目的のために、引用することによってその全体が組み込まれる。
【0118】
本発明を具体化するある特定の構造が示され且つ説明されるが、基本的な発明概念の精神および範囲から逸脱することなく一部を様々に変更および再構成してよく、本発明が、本明細書において示され且つ説明された特定の形態に限定されないことは、当業者に明らかであろう。
【実施例】
【0119】
実施例は、浸透膜蒸留および得られる塩化ナトリウム含有溶液の電気分解によって、ジフェニルカーボネート製造において得られる塩化ナトリウム含有廃水相を濃縮し、それと同時に、電気分解から得られる水酸化ナトリウム溶液を、ジフェニルカーボネート製造プロセス(DPCプロセス)のために希釈することによる、本発明の方法を説明することを意図する。
【0120】
[実施例1]
a)ジフェニルカーボネートの製造および処理
冷却された垂直管式反応器において、濃度32.0%の水酸化ナトリウム溶液65.8kg/hを79.4kg/hの脱イオン水(DI水)で希釈することによって製造される濃度14.5%の水酸化ナトリウム溶液145.2kg/hと、48.3kg/hのフェノールとの混合物を、86.2kg/hの塩化メチレンおよび27.5kg/hのホスゲン(フェノールを基準として8mol%過剰)の溶液と連続的に混合した。この反応混合物を33℃の温度に冷却し、15秒の平均滞留時間の後に、pH11.5を測定した。次に、プロセスの第2段階において、濃度50.0%のNaOH5.4kg/hをこの反応混合物中に計量供給し、その結果、5分の更なる滞留時間の後、第2反応段階のpHは8.5であった。プロセスの第2段階において、くびれを有する管を通過させることによって反応混合物を連続的に混合した。NaOHを新たに添加した後に、反応温度を冷却によって30℃に設定した。有機相を水相(反応廃水)から分離した後に、DPC溶液を濃度0.6%の塩酸および水で洗浄した。溶媒を除去することによって、濃度99.9%のジフェニルカーボネートが得られた。反応廃水は、洗浄相と組み合わせずに、蒸気によるストリッピングによって溶媒残余および触媒を除いた。塩酸による中和(pH7)および活性炭による処理の後、反応廃水は17.0%のNaClおよび2ppm未満のフェノールを含有した。
【0121】
廃水を、更に精製することなく浸透蒸留に供給することができた。
【0122】
b)浸透膜蒸留による塩化ナトリウム溶液の濃度増加
a)からの反応廃水を浸透膜蒸留に供給した。
【0123】
浸透蒸留を、膜面積が1.1mであるモジュールにおいて行った。Membrana製のAccurel PP 150/330膜を使用した。室温において、塩化ナトリウムを17.0%含有するa)からの反応廃水溶液1.7lをモジュールにポンプで送り込み、同時に、濃度32.0%の水酸化ナトリウム溶液0.6lを水の受容体相として並流で供給した。セルを出るNaCl含有溶液の濃度は21.9重量%NaClであり、一方、取り出されるNaOH溶液は16.4重量%の濃度を示した。
【0124】
c)浸透蒸留からの塩化ナトリウム溶液の電気化学的酸化
電気分解は、アノード面積が0.01mである実験用電解セルにおいて行った。電流密度は4kA/mであり、カソード側からの出口における温度は88℃であり、アノード側からの出口における温度は89℃であった。DENORA(独国)製の標準的なアノードおよびカソードコーティングを有する電解セルを使用した。DuPont製のNafion 982 WXイオン交換膜を使用した。電解電圧は3.02Vであった。塩化ナトリウム含有溶液を0.8kg/hの質量流量でアノード室にポンプで通した。アノード室に供給される溶液の濃度は25.0重量%NaClであった。濃度18.8重量%のNaCl溶液をアノード室から取り出すことができた。b)の下でのジフェニルカーボネート製造からの濃度21.9重量%の反応廃水0.152kg/hおよび0.054kg/hの固体塩化ナトリウムを、アノード室から取り出されるNaCl溶液に加えた。その後、溶液をアノード室にフィードバックした。膜を通る水の輸送はナトリウム1モル当たり水が3.8molであった。
【0125】
水酸化ナトリウム溶液を、0.653kg/hの質量流量でカソード側にポンプで通した。カソード側に供給される水酸化ナトリウム溶液の濃度は30.0重量%NaOHであり、カソード側から取り出される水酸化ナトリウム溶液はNaOH濃度が32.7%であった。濃度32.7%のアルカリ0.182kg/hを体積ストリームから取り出し、残りを0.0539kg/hの水で補ってカソード成分に再循環させた。
【0126】
反応した塩化ナトリウムの37.8%が、DPC製造からの反応廃水に由来した。
【0127】
d)DPC製造のための、浸透蒸留からの希水酸化ナトリウム溶液のリサイクル
b)からの希水酸化ナトリウム溶液を、ジフェニルカーボネート製造に供給した。b)からの濃度16.4%の水酸化ナトリウム溶液128.4kg/hを16.8kg/hの脱イオン水(DI水)で希釈することによって製造される濃度14.5%の水酸化ナトリウム溶液145.2kg/hと、48.3kg/hのフェノールとの混合物を、86.2kg/hの塩化メチレンおよび27.5kg/hのホスゲン(フェノールを基準として8mol%過剰)の溶液と組み合わせ、1a)で説明したように処理した。
【0128】
通常の濃度32.0%の水酸化ナトリウム溶液の代わりに濃度16.4%の水酸化ナトリウム溶液を用いると、62.7kg/h(78.9%)のDI水を節約することができる。
【0129】
[実施例2]
a)ジフェニルカーボネートの製造および処理
実施例1a)の手順を繰り返したが、反応廃水を洗浄相と組み合わせて総処理廃水を供給し、蒸気によるストリッピングによって後者から溶媒残余および触媒を除いた。塩酸による中和および活性炭による処理の後、総処理廃水は13.0%のNaClおよび2ppm未満のフェノールを含有した。
【0130】
廃水を、更に精製することなく浸透膜蒸留に供給することができた。
【0131】
b)浸透膜蒸留による塩化ナトリウム溶液の濃度増加
浸透蒸留は、室温にて、Membrana製のAccurel PP 150/330膜を備えた1.1mの膜モジュールを有するモジュールにおいて行った。a)からの、塩化ナトリウムを13.0%含有する処理廃水を流速21.0l/hで実験用セルにポンプで送り込み、それと同時に、濃度32.0%の水酸化ナトリウム溶液12.1l/hを水の受容体として並流で計量供給した。セルを出る処理廃水溶液の濃度は24.1重量%NaClであり、一方、取り出されるNaOH溶液は16.1重量%に減損した。
【0132】
セルを出る濃縮された総処理廃水溶液を、更に精製することなく電気分解に供給することができる。
【0133】
c)浸透蒸留からの塩化ナトリウム溶液の電気化学的酸化
電気分解は、アノード面積が0.01mである実験用電解セルにおいて行った。電流密度は4kA/mであり、カソード側からの出口における温度は88℃であり、アノード側からの出口における温度は89℃であった。DENORA(独国)製の標準的なアノードおよびカソードコーティングを有する電解セルを使用した。DuPont製のNafion 982 WXイオン交換膜を使用した。電解電圧は3.02Vであった。塩化ナトリウム含有溶液を、0.8kg/hの質量流量でアノード室にポンプで通した。アノード室に供給される溶液の濃度は25.0重量%NaClであった。濃度18.8重量%のNaCl溶液をアノード室から取り出すことができた。b)の下での浸透蒸留からの濃度24.1重量%の濃縮された総処理廃水0.157kg/hおよび0.505kg/hの固体塩化ナトリウムを、アノード室から取り出されるNaCl溶液に加えた。その後、溶液をアノード室にフィードバックした。膜を通る水の輸送はナトリウム1モル当たり水が3.8molであった。
【0134】
水酸化ナトリウム溶液を、0.653kg/hの質量流量でカソード側にポンプで通した。カソード側に供給される水酸化ナトリウム溶液の濃度は30.0重量%NaOHであり、カソード側から取り出される水酸化ナトリウム溶液はNaOH濃度が32.7%であった。濃度32.7%のアルカリ0.182kg/hを体積ストリームから取り出し、残りを0.0539kg/hの水で補ってカソード成分に再循環させた。反応した塩化ナトリウムの42.8%が、DPCの総処理廃水に由来した。
【0135】
d)DPC製造のための、浸透蒸留からの希水酸化ナトリウム溶液のリサイクル
b)からの希水酸化ナトリウム溶液を、ジフェニルカーボネート製造に供給した。b)からの濃度16.1%の水酸化ナトリウム溶液130.8kg/hを14.4kg/hの脱イオン水(DI水)で希釈することによって製造される濃度14.5%の水酸化ナトリウム溶液145.2kg/hと、48.3kg/hのフェノールとの混合物を、86.2kg/hの塩化メチレンおよび27.5kg/hのホスゲン(フェノールを基準として8mol%過剰)の溶液と組み合わせ、1a)で説明したように処理した。
【0136】
通常の濃度32.0%の水酸化ナトリウム溶液の代わりに濃度16.1%の水酸化ナトリウム溶液を用いると、65.0kg/h(81.8%)のDI水を節約することができた。
【0137】
[実施例3]
a)ジフェニルカーボネートの製造および処理
実施例2a)の手順を繰り返し、反応廃水を洗浄相と組み合わせて総処理廃水を供給し、蒸気によるストリッピングによって後者から溶媒残余および触媒を除いた。塩酸による中和および活性炭による処理の後、総処理廃水は13.0%のNaClおよび2ppm未満のフェノールを含有した。
【0138】
廃水を、更に精製することなく浸透膜蒸留に供給することができた。
【0139】
b)浸透膜蒸留による塩化ナトリウム溶液の濃度増加
浸透膜蒸留は、室温にて、Membrana製のAccurel PP 150/330膜を備えた2mの膜モジュールを有する実験用セルにおいて行った。a)からの、塩化ナトリウムを13.0%含有する処理廃水を、3.0l/hの流速で実験用セルにポンプで送り込み、それと同時に、濃度31.4%の水酸化ナトリウム溶液3.0l/hを水の受容体として並流で計量供給した。セルを出る処理廃水溶液の濃度は19.5重量%NaClであり、一方、取り出されるNaOH溶液は20.0重量%に減損した。
【0140】
セルを出る濃縮された処理廃水溶液を、更に精製することなく電気分解に供給することができた。
【0141】
c)浸透蒸留からの塩化ナトリウム溶液の電気化学的酸化
電気分解は、アノード面積が0.01mである実験用電解セルにおいて行った。電流密度は4kA/mであり、カソード側からの出口における温度は88℃であり、アノード側からの出口における温度は89℃であった。DENORA(独国)製の標準的なアノードおよびカソードコーティングを有する電解セルを使用した。DuPont製のNafion 982 WXイオン交換膜を使用した。電解電圧は3.02Vであった。塩化ナトリウム含有溶液を、0.8kg/hの質量流量でアノード室に通した。アノード室に供給される溶液の濃度は25.0重量%NaClであった。濃度18.8重量%のNaCl溶液をアノード室から取り出すことができた。b)の下での浸透膜蒸留からの濃度19.5重量%の濃縮された総処理廃水0.147kg/hおよび0.0594kg/hの固体塩化ナトリウムを、アノード室から取り出されるNaCl溶液に加えた。その後、溶液をアノード室にフィードバックした。膜を通る水の輸送はナトリウム1モル当たり水が3.8molであった。
【0142】
水酸化ナトリウム溶液を、0.653kg/hの質量流量でカソード側に通した。カソード側に供給される水酸化ナトリウム溶液の濃度は30.0重量%NaOHであり、カソード側から取り出される水酸化ナトリウム溶液はNaOH濃度が32.7%であった。濃度32.7%のアルカリ0.182kg/hを体積ストリームから取り出し、残りを0.0539kg/hの水で補ってカソード成分に再循環させた。
【0143】
反応した塩化ナトリウムの32.7%が、DPCの総処理廃水に由来した。
【0144】
d)DPC製造のための、浸透蒸留からの希水酸化ナトリウム溶液のリサイクル
b)からの希水酸化ナトリウム溶液を、ジフェニルカーボネート製造に供給した。b)からの濃度20.0%の水酸化ナトリウム溶液105.0kg/hを40.0kg/hの脱イオン水(DI水)で希釈することによって製造される濃度14.5%の水酸化ナトリウム溶液145.2kg/hと、48.3kg/hのフェノールとの混合物を、86.2kg/hの塩化メチレンおよび27.5kg/hのホスゲンの溶液と組み合わせ、1a)で説明したように処理した。
【0145】
通常の濃度32.0%の水酸化ナトリウム溶液の代わりに濃度20.0%の水酸化ナトリウム溶液を用いると、39.4kg/h(49.6%)のDI水を節約することができる。
【0146】
[比較例4(独国特許第102006041465号A1の実施例1の改変)]
a)DPC製造からの反応廃水の分離
廃水は、実施例1a)における性質と一致した。反応廃水は、洗浄相と組み合わせずに、蒸気によるストリッピングによって溶媒残余および触媒を除いた。塩酸による中和および活性炭による処理の後、反応廃水は17.0重量%のNaClおよび2ppm未満のフェノールを含有した。
【0147】
廃水を、更に精製することなく塩化ナトリウム電解セルに供給することができた。
【0148】
b)a)からの反応廃水の電気化学的酸化
電気分解は、アノード面積が0.01mである実験用電解セルにおいて行った。電流密度は4kA/mであり、カソード側からの出口における温度は88℃であり、アノード側からの出口における温度は89℃であった。DENORA(独国)製の標準的なアノードおよびカソードコーティングを有する電解セルを使用した。DuPont製のNafion 982 WXイオン交換膜を使用した。電解電圧は3.02Vであった。塩化ナトリウム含有溶液を、0.8kg/hの質量流量でアノード室にポンプで通した。アノード室に供給される溶液の濃度は25.0重量%NaClであった。濃度18.6重量%のNaCl溶液をアノード室から取り出すことができた。実施例1a)におけるジフェニルカーボネート製造からの濃度17.0重量%の反応廃水0.133kg/hおよび0.0655kg/hの固体塩化ナトリウムを、アノード室から取り出されるNaCl溶液に加えた。その後、溶液をアノード室にフィードバックした。膜を通る水の輸送はナトリウム1モル当たり水が3.5molであった。
【0149】
水酸化ナトリウム溶液を0.653kg/hの質量流量でカソード側にポンプで通した。カソード側に供給される水酸化ナトリウム溶液の濃度は30.0重量%NaOHであり、カソード側から取り出される水酸化ナトリウム溶液はNaOH濃度が33.0%であった。濃度33.0%のアルカリ0.180kg/hを体積ストリームから取り出し、残りを0.060kg/hの水で補ってカソード成分に再循環させた。
【0150】
反応した塩化ナトリウムの25.8%のみが、DPC反応廃水に由来した。
【0151】
[比較例5]
a)DPC製造からの反応廃水の分離
廃水は、実施例2a)における性質と一致した。反応廃水を洗浄相と組み合わせ、蒸気によるストリッピングによって溶媒残余および触媒を除いた。塩酸による中和および活性炭による処理の後、総処理廃水は13.0重量%のNaClおよび2ppm未満のフェノールを含有した。
【0152】
廃水を、更に精製することなく塩化ナトリウム電解セルに供給することができた。
【0153】
b)総処理廃水の電気化学的酸化
電気分解は、アノード面積が0.01mである実験用電解セルにおいて行った。電流密度は4kA/mであり、カソード側からの出口における温度は88℃であり、アノード側からの出口における温度は89℃であった。DENORA(独国)製の標準的なアノードおよびカソードコーティングを有する電解セルを使用した。DuPont製のNafion 982 WXイオン交換膜を使用した。電解電圧は3.02Vであった。塩化ナトリウム含有溶液を0.8kg/hの質量流量でアノード室にポンプで通した。アノード室に供給される溶液の濃度は25.0重量%NaClであった。濃度18.6重量%のNaCl溶液をアノード室から取り出すことができた。実施例1a)におけるジフェニルカーボネート製造からの濃度13.0重量%の反応廃水0.127kg/hおよび0.0717kg/hの固体塩化ナトリウムを、アノード室から取り出されるNaCl溶液に加えた。その後、溶液をアノード室にフィードバックした。膜を通る水の輸送はナトリウム1モル当たり水が3.5molであった。
【0154】
水酸化ナトリウム溶液を、0.653kg/hの質量流量でカソード側にポンプで通した。カソード側に供給される水酸化ナトリウム溶液の濃度は30.0重量%NaOHであり、カソード側から取り出される水酸化ナトリウム溶液はNaOH濃度が33.0%であった。濃度33.0%のアルカリ0.180kg/hを体積ストリームから取り出し、残りを0.060kg/hの水で補ってカソード成分に再循環させた。
【0155】
反応した塩化ナトリウムの僅か18.8%が、DPCの総処理廃水に由来した。
【0156】
[比較例6(独国特許第102006041465号A1の実施例2の改変)]
a)DPC製造からの反応廃水の分離
廃水は、実施例1a)における性質と一致した。
【0157】
b)ガス拡散電極を用いた反応廃水の電気化学的酸化
水素はDPC製造に必要とされないので、電気分解における水素の生成は省かれ得る。従って、電気分解はガス拡散電極を用いて操作された。電流密度は4kA/mであり、カソード側からの出口における温度は88℃であり、アノード側からの出口における温度は89℃であった。DENORA(独国)製の標準的なアノードコーティングを有する電解セルを使用した。DuPont製のNafion 982 WXイオン交換膜を使用した。電解電圧は2.11Vであった。アノード室から取り出される溶液の塩化ナトリウム濃度は17.0重量%NaClであった。濃度17.0重量%の反応廃水0.178kg/hおよび0.0579kg/hの固体塩化ナトリウムを、アノード室から取り出されるNaCl溶液に加えた。その後、溶液をアノード室にフィードバックした。膜を通る水の輸送はナトリウム1モル当たり水が4.9molであった。
【0158】
水酸化ナトリウム溶液を、0.653kg/hの質量流量でカソード側にポンプで通した。カソード側に供給される水酸化ナトリウム溶液の濃度は30.0重量%NaOHであり、カソード側から取り出される水酸化ナトリウム溶液はNaOH濃度が31.5重量%であった。濃度31.5%のアルカリ0.189kg/hを体積ストリームから取り出し、残りを0.0312kg/hの水で補ってカソード成分に再循環させた。
【0159】
DPC反応廃水からの反応した塩化ナトリウムの割合は34.4%であった。
【0160】
実施例によって、DPC製造プロセスからの廃水溶液中の塩化ナトリウムを電気分解へかなり高度にリサイクルすることが、浸透膜蒸留による濃度増加の後に達成され、それと共に、アルカリ溶液によって取り出される水が、DPC製造工程におけるアルカリ金属水酸化物溶液の製造において節約され得ることが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアリールカーボネートを製造する方法であって:
a) 塩素を一酸化炭素と反応させることによってホスゲンを製造する工程;
b) 工程a)において生成するホスゲンを、水性アルカリ金属含有塩基および場合により窒素触媒の存在下で、少なくとも1種類のモノフェノールと反応させて、ジアリールカーボネートおよびアルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液を生成する工程;
c) 工程b)において生成するジアリールカーボネートを分離および処理する工程;
e) 工程c)の後に残存する前記アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液の少なくとも一部の濃度を浸透膜蒸留によって増加させる工程;
f) 工程e)からの前記アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液の少なくとも一部を電気化学的に酸化して、塩素、アルカリ金属水酸化物および場合により水素を生成する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記水性アルカリ金属含有塩基がナトリウム含有塩基であり、前記アルカリ金属塩化物が塩化ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d)において、工程c)の後に残存する前記アルキル金属塩化物含有反応廃水溶液から溶媒残余および場合により触媒残余を分離し、その後、工程e)における浸透膜蒸留に溶液を供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記分離を、抽出もしくは蒸気による溶液のストリッピング、および/または吸着剤による処理によって行う、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記吸着剤が活性炭である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程e)において、工程d)からの前記アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液の濃度を、水酸化ナトリウム溶液を水の受容体として使用して浸透蒸留によって増加させる、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
工程e)における浸透膜蒸留を20〜50℃の範囲の温度で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程e)における浸透膜蒸留を1.1〜1.2barの範囲の絶対圧力で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程e)における浸透膜蒸留を30〜100barの範囲の差圧で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程d)からの前記アルキル金属塩化物含有反応廃水溶液の少なくとも一部の浸透膜蒸留をAccurel PP膜を用いて行う、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程e)からの前記アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液の少なくとも一部の、塩素および水酸化ナトリウムへの電気化学的酸化を、カソードとしてガス拡散電極を用いて行う、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程e)からの精製されたアルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液の少なくとも一部を、塩素および水酸化ナトリウムを製造するための膜電気分解のブライン回路に導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
電気分解f)において、追加のアルカリ金属塩化物を前記アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液に加えてアルカリ金属塩化物濃度を増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程c)における分離または工程d)における精製において、前記アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液のpHを8より小さくする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
工程c)における分離または工程d)における精製において、前記アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液のpHを、塩酸またはガス状塩化水素を用いることによって調節する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程f)における電気分解に供給される前記アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液のアルカリ金属塩化物濃度が100〜280g/lの範囲であり、かつ/または工程f)における電気分解から得られるアルカリ水酸化物溶液の濃度が13〜50重量%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
工程f)における電気分解に供給される前記アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液のアルカリ金属塩化物濃度が110〜220g/lの範囲であり、かつ/または工程f)における電気分解から得られるアルカリ水酸化物溶液の濃度が14〜32重量%の範囲である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程b)における前記少なくとも1種類のモノフェノールが、式(I)のモノフェノールであり、Rが水素、ハロゲン、または分枝もしくは非分枝のC〜Cアルキルラジカル、またはアルコキシカルボニルラジカルである、請求項1に記載の方法。
【化1】

【請求項19】
工程b)における前記少なくとも1種類のモノフェノールが、フェノール、アルキルフェノールおよびハロフェノールからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記アルキルフェノールが、クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、p−n−オクチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−n−ノニルフェノールおよびp−イソノニルフェノールからなる群から選択され、前記ハロフェノールが、p−クロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、p−ブロモフェノールおよび2,4,6−トリブロモフェノールからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
工程b)における前記少なくとも1種類のモノフェノールがフェノールである、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−248193(P2010−248193A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−95077(P2010−95077)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】