説明

ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの低温安定化方法及び皮膚外用剤

【課題】ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルは各種の油剤に対する溶解性が悪く、パラメトキシケイ皮酸オクチルに溶解させて用いることが好ましいが、低温ではジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルが析出してくる問題があった。
【解決手段】ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルとパラメトキシケイ皮酸オクチルを配合した製剤における低温でのジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの析出を抑制するために4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタンを添加することを特長とするジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの低温安定化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの低温安定化方法及び低温安定性に優れた皮膚外用剤に関する。
さらに詳しくは、有機系紫外線吸収剤の一種であるジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの溶媒として、パラメトキシケイ皮酸オクチルを用いた場合に、15℃以下での低温環境下でジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルとパラメトキシケイ皮酸オクチルの混合溶液からジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルが析出してくる問題があり、これを抑制するために4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタンを用いるとジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルが−10℃の環境でも析出しにくくなることを利用したジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの低温安定化方法及びこの方法を利用した皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルは長波長紫外線を吸収する特性を有する有機系紫外線吸収剤の1種である。しかしながら、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルは各種の油剤、溶媒に対する溶解性が悪く、溶媒としてパラメトキシケイ皮酸オクチルやエタノールを用いることが行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エタノールを用いた場合、製剤中に水を含む水溶性成分が含まれている場合、エタノールが水溶性相に移行し、結果としてジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの結晶化を発生させる場合がある。これは化粧料においてパラベン類が針状結晶を製剤中に発生させるのと類似した現象である。一方、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルをパラメトキシケイ皮酸オクチルに溶解して用いた場合では、安定性はより高まるものの、低温でのジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの析出現象を止めることはできていない。実際、7℃から15℃の室温環境でガラス製容器に入れたジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルのパラメトキシケイ皮酸オクチル溶液(混合質量比率36:64)からジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルが析出することから、本現象は核生成を元にした結晶成長により生じている可能性が示唆される。このような析出現象が発生すると、例えば皮膚外用剤などの場合、結晶が異物感を与えたり、クレームの原因となるため大きな問題となる。また、冬場に製品を製造したり、冬場に製品を使用する際にも大きな問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明人は鋭意検討した結果、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルのパラメトキシケイ皮酸オクチル溶液にさらに4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタンを配合すると、低温での安定性がさらに高まり、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの析出を効果的に抑制できることを見いだした。そして、より品質安定性に優れた皮膚外用剤を得ることに成功した。
【0005】
すなわち、第1の本発明は、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルとパラメトキシケイ皮酸オクチルを配合した製剤における低温でのジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの析出を抑制するために4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタンを添加することを特長とするジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの低温安定化方法にある。
【0006】
第2の本発明は、製剤中のジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタンの配合質量比率が0.4〜10:1〜20:0.01〜10の範囲にあることを特長とする前記のジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの低温安定化方法にある。
【0007】
第3の本発明は、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルとパラメトキシケイ皮酸オクチルを配合した製剤における低温でのジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの析出を抑制するために4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタンを添加したことを特長とする皮膚外用剤にある。
【0008】
第4の本発明は、製剤中のジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタンの配合質量比率が0.4〜10:1〜20:0.01〜10の範囲にあることを特長とする前記の皮膚外用剤にある。
【発明の効果】
【0009】
【0010】
以上説明するように、本発明は、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルとパラメトキシケイ皮酸オクチルを配合した製剤において、4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタンを添加することにより、低温でのジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの析出を抑制し、さらに上記各成分を配合した皮膚外用剤の安定性を向上させることは明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、上記本発明を詳細に説明する。
本発明は、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルとパラメトキシケイ皮酸オクチルを配合した製剤における低温でのジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの析出を抑制するために4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタンを添加することを特長とするジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの低温安定化方法にある。ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルはBASF社よりユビナールAの名称で発売されており、パラメトキシケイ皮酸オクチルはBASF社よりMC80、DSM社よりパラソルMCX等の名称で発売されている。4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタンはDSM社よりパラソル1789の名称で発売されている。これらはいずれもビタミンC等の抗酸化剤を配合していてもいなくても構わない。本発明で言う低温としては、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルが7℃から15℃を往復する室温環境で析出してくることが判っており、さらに−12℃の環境下でも析出することが判っているので、ここでは析出が確認される領域として15〜−12℃の範囲と定義する。
【0012】
この温度領域は、例えば日本国においては、夏用のサンスクリーン剤を冬場に製造することが多いが、その製造、保管環境の温度に重なるため、経時でジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの析出が発生すると多大な問題を引き起こすこととなる。
【0013】
また、本発明のジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの低温安定化方法及び皮膚外用剤では、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの析出抑制に紫外線吸収剤の1種である4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタンを用いたが、従来、4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタンがジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの析出を抑制できることは全く知られていなかったため、たまたま製剤中に両方の成分が配合されていたとしても、それは紫外線吸収剤の単なる組み合わせで用いられただけにすぎず、本発明のような析出抑制効果を狙ったものではない。
【0014】
本発明のジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの低温安定化方法及び皮膚外用剤において用いるジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタンの配合質量比率は、0.4〜10:1〜20:0.01〜10の範囲にあることが効果的である。この範囲であれば効果的にジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの析出を抑制できる。また、さらにジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタンの配合質量比率が、2〜10:7〜20:1〜10の範囲にあることがより効果的である。この範囲であると、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの析出が効果的に抑制できる上に、同時に中波長から長波長の紫外線の防御効果も高いメリットがある。
【0015】
本発明のジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの低温安定化方法及び皮膚外用剤では、上記に加えて、さらにエタノール、オクトクリレンなどの製剤の安定化に寄与する成分を加えても構わない。ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの製造メーカーの資料によれば、アジピン酸ジブチル、C12−13乳酸アルキル、C12−15アルキルベンゾエート、オクトクリレンなどはジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの溶解性が比較的良いことを示しており、安定性向上成分として併用することは好ましいと考えられる。
【0016】
本発明の皮膚外用剤は、通常皮膚外用剤に用いられる油剤、樹脂、粉体(顔料、色素、樹脂)、フッ素化合物、防腐剤、香料、界面活性剤、紫外線吸収剤、保湿剤、生理活性成分、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、増粘剤等の成分を使用することができる。例えば、シリコーン油としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、フルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性オルガノポリシロキサン、ジメチコノール、末端変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン、アモジメチコーン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、シリコーンゲル、アクリルシリコーン、揮発性シリコーン(環状シリコーン、メチルトリメチコン)等のシリコーン化合物が挙げられる。
【0017】
本発明の皮膚外用剤で用いる多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、グルコース、ショ糖、果糖、キシリトール、ラフィノース、ラクトース、マルトース、マルチトール、トレハロース、アルキル化トレハロース、混合異性化糖、硫酸化トレハロース、プルラン等が挙げられる。またこれらの化学修飾体なども使用可能である。
【0018】
本発明の皮膚外用剤で用いる油剤としては、通常皮膚外用剤に用いられる揮発性および不揮発性の油剤および溶剤および樹脂が挙げられる。油剤の例としては、例えばアボガド油、アマニ油、アーモンド油、イボタロウ、エノ油、オリーブ油、カカオ脂、カポックロウ、カヤ油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、キョウニン油、硬化油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サトウキビロウ、サザンカ油、サフラワー油、シアバター、シナギリ油、シナモン油、ジョジョバロウ、セラックロウ、大豆油、茶実油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、豚脂、ナタネ油、日本キリ油、ヌカロウ、胚芽油、馬脂、パーシック油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、ヒマワリ油、ブドウ油、ベイベリーロウ、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミツロウ、ミンク油、綿実油、綿ロウ、モクロウ、モクロウ核油、モンタンロウ、ヤシ油、硬化ヤシ油、トリヤシ油脂肪酸グリセライド、落花生油、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリンアルコール、硬質ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、卵黄油等;炭化水素油として、オゾケライト、スクワラン、スクワレン、セレシン、パラフィン、パラフィンワックス、流動パラフィン、プリスタン、ポリイソブチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等;高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等;高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、2−デシルテトラデシノール、コレステロール、フィトステロール、POEコレステロールエーテル、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、モノオレイルグリセリルエーテル(セラキルアルコール)等;エステル油としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オクチルドデシルガムエステル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、イソノナン酸イソノニル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、クエン酸トリエチル、コハク酸2−エチルヘキシル、酢酸アミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等;グリセライド油としては、アセトグリセリル、トリイソオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸イソステアリン酸ジグリセリル、エチレン・α−オレフィン・コオリゴマー、パーフルオロポリエーテル、フッ化ピッチ、フルオロカーボン、フルオロアルコール等のフッ素化合物などが挙げられる。
【0019】
本発明の皮膚外用剤で用いる粉体の例としては、例えば無機粉体、有機粉体、界面活性剤金属塩粉体、有色顔料、パール顔料、金属粉末顔料、タール色素、天然色素などがあげられ、具体的には、無機粉体としては、酸化チクン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン又はシリカなどがある。有機粉体としては、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロースパウダー、シルクパウダー、12ナイロンや6ナイロンなどのナイロンパウダー、ポリアクリルパウダー、ポリアクリルエラストマー、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト樹脂、微結晶繊維粉体、デンプン末又はラウロイルリジンなどがある。界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウムなどがある。有色顔料としては、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料、−酸化鉄などの無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土などの無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラックなどの無機黒色顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレットなどの無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルトなどの無機緑色顔料、紺青、群青などの無機青色系顔料、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した合成樹脂粉体などある。パール顔料としては、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母、酸化チタン・酸化鉄被覆マイカなど;金属粉末顔料としては、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー、ステンレスパウダーなど;タール色素としては、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号など;天然色素としては、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン又はクロシンなどから選ばれる粉体が挙げられる。表面処理は撥水性処理がされていても親水性処理がされていても構わない。粉体表面処理の例としては、シリカ処理、アルミナ処理、珪酸亜鉛処理、シリコーン処理、フッ素化合物処理、アクリルシリコーン処理、アシル化アミノ酸処理、寒天処理、アルギン酸処理、アクリル酸処理、金属石鹸処理、油剤処理、ワックス処理、シラン処理、有機チタネート処理、有機アルミネート処理、シリコーン樹脂処理、シリコーンエラストマー処理、ホスホリルコリン誘導体処理など従来知られている表面処理の1種または2種以上を用いることができる。
【0020】
本発明の皮膚外用剤で用いる紫外線吸収剤としては、上記の他に、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸オクチル、サリチル酸トリエタノールアミン等のサリチル酸系;パラアミノ安息香酸、エチルジヒドロキシプロピルパラアミノ安息香酸、グリセリルパラアミノ安息香酸、オクチルジメチルパラアミノ安息香酸、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル等のPABA系;4−(2−β−グルコピラノシロキシ)プロポキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸及びその三水塩、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2、2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−N−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、2,5−ジイソプロピルケイ皮酸メチル、2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]−1,3,5−トリアジン、ビスエチルへキシロキシフェノールメチキシフェニルトリアジン、メチレンビスベンゾトリアゾルイルテトラメチルブチルフェノール、トリメトキシケイ皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、p−メトキシハイドロケイ皮酸ジエタノールアミン塩等のケイ皮酸系;2−フェニル−ベンズイミダゾール−5−硫酸、4−イソプロピルジベンゾイルメタン等のベンゾイルメタン系;2−シアノ−3,3−ジフェニルプロパ−2−エン酸2−エチルヘキシルエステル(別名;オクトクリレン)、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,4−ジメチル−1,3−ペンタンジオン、シノキサート、メチル−O−アミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、3−(4−メチルベンジリデン)カンフル、オクチルトリアゾン、4−(3,4−ジメトキシフェニルメチレン)−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、これらの高分子誘導体、及びシラン誘導体等が例示される。
【0021】
本発明の皮膚外用剤としては、上記の成分の他にさらにシリコーンエラストマーを配合していることが好ましい。シリコーンエラストマーは電子顕微鏡で観察した場合に粉体形状を有していてもいなくても構わない。シリコーンエラストマーを配合することにより、より肌感触に優れ、安全性に優れた製剤を得ることができる。
【0022】
本発明の皮膚外用剤としては、サンスクリーン剤、化粧下地など紫外線防御効果を有する皮膚外用剤が該当し、その剤型としては、多層分離型、ローション、クリーム、乳液状、シート状、固型状、粉末状、泡状、スプレー、ジェル状の剤型などが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に実施例を挙げ本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
皮膚外用剤の実施例、比較例に対する有用性評価方法
皮膚外用剤の官能特性評価は、パネラー10名を用い、実際に製品を顔、手につけてもらい、使用感について優れていると回答した人数を以って評価結果とした。従って、点数が高い方が使用感が優れていることを示す。
【0025】
皮膚外用剤の実施例、比較例に対する紫外線防御効果
皮膚外用剤の実施例、比較例について、Labsphere社製SPFアナライザーを用いて紫外線防御効果を評価した。
【0026】
低温環境下でのジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの析出の解析
7℃から15℃の温度範囲にある室温環境でガラス製容器に入れたジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルのパラメトキシケイ皮酸オクチル溶液(混合質量比率36:64、BASF社製 製品名ユビナールA plus B)からジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルが析出した際の例を図1〜2に示す。図1は析出したものをシャーレに移し、デジタルカメラで外観を撮影したものである。図2はマイクロスコープ(スカラ社製USBショット 倍率:40倍)を用いて析出物を拡大した像である。図1から析出物は固体であることが判る。図2からこの析出物にはこの倍率では明確な結晶構造が観察できていないことがわかる。また、析出物は硬度を有する固体状でゲル状ではなかった。析出した際の容器外観所見から、析出は容器壁面を中心に発生し、経時で成長していることが確認された。また、内容物を入れ替え、さらに80℃にて加熱して一度均一な溶液に戻した後、放冷して同条件に静置したものにも結晶の析出が確認されたことから、このような条件下で析出が起こりやすいことが分かる。また、−12℃の環境下に放置すると、比較的短時間で析出が発生した。
【0027】
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタン混合物からの析出物の有無確認試験
表1に示す組成物について低温保管時の析出物の有無について調べた結果を表1に併せて示す。尚、試験時の容器はポリプロピレン製密閉型ボトルを用いた。
【0028】
【表1】

【0029】
表1の結果より、4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタンを配合していない試験No.1は5℃10日間保管条件では析出物は見られなかったものの、−12℃〜−3℃往復条件(およそ20分に1回の割合で−12℃と−3℃の間を往復させる条件)で1日間保管した後では多量の析出物が観察された。これに対して、4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタンを配合した試験No.2〜7はいずれの条件においても析出が認められず、低温でのジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの安定性が向上していることが確認された。
【0030】
皮膚外用剤の実施例および比較例
表2、表3の処方と製造方法によって皮膚外用剤(サンスクリーン剤)を作製した。
但し、単位は質量%である。表2中のオクチルシリル化微粒子酸化亜鉛分散液及びオクチルシリル化微粒子酸化チタン分散液は、オクチルトリエトキシシランを用いて微粒子酸化亜鉛(平均一次粒子径15nm)、微粒子酸化チタン(平均一次粒子径15nm)にそれぞれ顔料の質量の8質量%に相当する量を表面処理し、加熱反応させたものを、環状シリコーンの1種であるデカメチルシクロペンタシロキサンと1:1の質量比で混合した後、ディスパーを用いて5200回転/分の回転速度にて10分間粉砕したものを用いた。シリコーン処理微粒子酸化亜鉛分散液及びシリコーン処理微粒子酸化チタン分散液は、メチルハイドロジェンポリシロキサンを用いて微粒子酸化亜鉛(平均一次粒子径15nm)、微粒子酸化チタン(平均一次粒子径15nm)にそれぞれ顔料の質量の3質量%に相当する量を表面処理し、加熱反応させたものを、デカメチルシクロペンタシロキサンと1:1の質量比で混合した後、ディスパーを用いて5200回転/分の回転速度にて10分間粉砕したものを用いた。有機系紫外線吸収剤は、それぞれ事前に80℃にて加熱溶解したものを用いた。また、シリコーンエラストマーとしては、東レ・ダウコーニング社製DC9045TMを用いた。
【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
製造方法
油性成分と微粒子顔料分散液を60℃にて良く混合する。水相は60℃に加熱して全体を均一にする。油相を攪拌しながら水相を加え、さらに良く混合した後、容器に充填して製品とした。
【0034】
表4に皮膚外用剤の実施例および比較例の低温安定性試験の結果を、表5に皮膚外用剤の実施例および比較例の評価結果(官能特性)と紫外線防御効果について示す。尚、低温試験はおよそ20分に1回の割合で−12℃と−3℃の間を往復させる条件にて実施した。
【0035】
【表4】

【0036】
【表5】

【0037】
表4の結果より、本発明の実施例がいずれも異常がないのに対して比較例では肌に塗布した際に異物感がでたことから、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの析出が発生した可能性がある。−12℃〜−3℃を往復する条件はやや特殊な条件であるが、冬場スキーなどを実施するような環境下では発生する可能性のある条件であるため、この条件で製品の品質に問題が発生するような製剤は、品質上の問題点を抱えていると言える。
【0038】
表5の結果より、本発明の実施例は比較例と比べて使用感的に劣っていないことが分かる。このことから、本発明の低温安定化方法を用いた場合でも、感触面について特に大きな問題とはならないことが判る。一方、SPFアナライザーを用いて実施例及び比較例を測定したところ、本発明の実施例はいずれも中波長紫外線(UV−B)領域、長波長紫外線(UV−A)領域共に優れた紫外線防御効果を持っていることが判った。これに対して比較例はUV−B領域の防御効果には優れていたが、UV−A領域の防御効果はやや劣っていた。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】 ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの析出の様子の例
【図2】 析出したジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの拡大図の例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルとパラメトキシケイ皮酸オクチルを配合した製剤における低温でのジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの析出を抑制するために4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタンを添加することを特長とするジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの低温安定化方法。
【請求項2】
製剤中のジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタンの配合質量比率が0.4〜10:1〜20:0.01〜10の範囲にあることを特長とする請求項1に記載のジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの低温安定化方法。
【請求項3】
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルとパラメトキシケイ皮酸オクチルを配合した製剤における低温でのジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの析出を抑制するために4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタンを添加したことを特長とする皮膚外用剤。
【請求項4】
製剤中のジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、4−tert一ブチルー4’一メトキシジベンゾイルメタンの配合質量比率が0.4〜10:1〜20:0.01〜10の範囲にあることを特長とする請求項3に記載の皮膚外用剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−162988(P2008−162988A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−357574(P2006−357574)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(500034941)株式会社コスメテクノ (16)
【Fターム(参考)】