説明

ジカルボン酸イミドの製造方法

【課題】溶液中でジカルボン酸イミドを合成する方法を提供する。
【解決手段】一般式(II)
1−(CO)−O−(CO)−R2 (II)
で表されるジカルボン酸無水物を、(R3HN)−(CO)−(NR3H)で表される尿素または尿素誘導体と、溶媒中で反応させる、
一般式(I)
1−(CO)−(NR3)−(CO)−R2 (I)
で表されるジカルボン酸イミドの製造方法とする。当該方法は、特にサリドマイドの製造に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対応するジカルボン酸無水物より、尿素または尿素誘導体を用いてジカルボン酸イミドを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジカルボン酸イミドは、医薬分野において使用されている多くの物質の構成要素となっている。ジカルボン酸イミドの機能を有する活性薬として最も知られている化合物の一つは、サリドマイドである。サリドマイドに関して最初に記述されたのは、1954年のことである。当初、サリドマイドは、鎮静剤として使用されていた。しかし、近年になって、サリドマイドおよびその誘導体は、ハンセン病、関節リウマチ、AIDS、クローン病、癌などの様々な病気の治療に使用できることが判明している。サリドマイドは、免疫抑制効果および免疫修飾効果を有する。
【0003】
文献より、サリドマイドの合成ルートがいくつか知られている。例としては、特許文献1があり、また概説として、非特許文献1が参照される。最も広く採用されているタイプのルートでは、無水フタル酸を出発物質として用い、無水フタル酸をグルタミン酸と反応させて、N−フタロイルグルタミン酸を得る。次いで、このN−フタロイルグルタミン酸を無水酢酸と反応させて、N−フタロイルグルタミン酸無水物を得る。そして、このN−フタロイルグルタミン酸無水物を、尿素の作用下、メルト中でサリドマイドに変換する。しかしこの反応においては、メルト中でガスが発生する反応において典型的な問題、例えば、過剰の泡立ち、生成混合物の溶解性の低さ、およびそれによる製品加工の困難さ、が起こってしまう。
【特許文献1】米国特許第3819648号明細書
【非特許文献1】アクセル クレーマン(Axel Kleemann),ユルゲン エンゲル(Jurgen Engel)著、「ファーマシューティカルサブスタンシズ(Pharmaceutical Substances)」、第4版、ティーメ出版(Thieme Verlag)、シュトゥットガルト、2005−2007頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、溶液中で反応を行うことができ、それにより反応をより容易に制御することができるルートによって、ジカルボン酸イミド、特にサリドマイドおよびその誘導体を合成することができる方法があれば有用である。そこで本発明は、溶液中でジカルボン酸イミドを合成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成した本発明は、以下の通りである。
〔1〕一般式(II)
1−(CO)−O−(CO)−R2 (II)
で表されるジカルボン酸無水物を、(R3HN)−(CO)−(NR3H)で表される尿素または尿素誘導体と、溶媒中で反応させる、
一般式(I)
1−(CO)−(NR3)−(CO)−R2 (I)
で表されるジカルボン酸イミドの製造方法。
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、C1−C10アルキル、C2−C10アルケニル、C2−C10アルキニル、C4−C10アリール、もしくはC4−C10ヘテロアリールであり、またはR1およびR2は、互いに結合して環を形成し、ならびに/またはR3は、Hである。)
次に、本発明の好ましい態様としては、以下の通りである。
〔2〕一般式(III)
【0006】
【化1】

【0007】
で表されるジカルボン酸を製造するものである上記〔1〕に記載の製造方法。
(式中、R3は上記〔1〕と同義であり、R4は、置換もしくは無置換の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、C1−C10アルカンジイル、C2−C10アルケニレン、C2−C10アルキニレン、C4−C10アリーレン、またはC4−C10ヘテロアリーレンである。)
〔3〕R4が置換または無置換の1,3−プロパンジイルであり、置換または無置換のピペリジン−2,6−ジオンを製造するものである上記〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕R4が置換または無置換の1−フタルイミド−1,3−プロパンジイルであり、置換または無置換の3−フタルイミドピペリジン−2,6−ジオンを製造するものである上記〔3〕に記載の製造方法。
〔5〕前記溶媒が、150℃を超える沸点を有する高沸点溶媒である上記〔1〕に記載の製造方法。
〔6〕前記溶媒が、170℃を超える沸点を有する高沸点溶媒である上記〔1〕に記載の製造方法。
〔7〕前記溶媒が、190℃を超える沸点を有する高沸点溶媒である上記〔1〕に記載の製造方法。
〔8〕前記溶媒が、非プロトン性スルホン類、飽和ラクタム類、カルボン酸アミド類、エーテル類、尿素類、ポリエチレングリコール類、1以上のアルキル基で置換された芳香族類、イオン性液体類、シロキサン類、飽和または一部飽和された炭素環式化合物類、炭酸エステル類、芳香族アミン類、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる上記〔1〕に記載の製造方法。
〔9〕前記非プロトン性スルホン類がテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド(スルホラン)であり、前記飽和ラクタム類がN−メチルピロリドン(NMP)、前記カルボン酸アミド類がN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)またはホルムアミドであり、前記エーテル類がジフェニルエーテルであり、前記尿素類が1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)であり、前記ポリエチレングリコール類がジエチレングリコールジエチルエーテルであり、前記1以上のアルキル基で置換された芳香族類が、ジエチルベンゼン、プソイドクメン、クメン、およびメシチレンから選ばれるものであり、前記イオン性液体類が1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートであり、前記シロキサン類がデカメチルシクロペンタシロキサンであり、前記飽和または一部飽和された炭素環式化合物類が、テトラリンまたはデカリンであり、前記炭酸エステル類が炭酸プロピレンであり、および/または前記芳香族アミン類がN,N−ジエチルアニリンである上記〔8〕に記載の製造方法。
〔10〕前記溶媒がテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドである上記〔8〕に記載の製造方法。
〔11〕反応時の温度が、140〜220℃の範囲にある上記〔1〕に記載の製造方法。
〔12〕反応時の温度が、150〜210℃の範囲にある上記〔1〕に記載の製造方法。
〔13〕反応時の温度が、160〜200℃の範囲にある上記〔1〕に記載の製造方法。
〔14〕反応が大気圧下で行われる上記〔1〕に記載の製造方法。
〔15〕さらに発泡防止剤を用いる上記〔1〕に記載の製造方法。
〔16〕前記発泡防止剤が、デカリンおよびテトラリンからなる群より選ばれる上記〔15〕に記載の製造方法。
〔17〕反応後に、前記式(I)で表されるジカルボン酸イミドが、再結晶またはクロマトグラフィーによる精製操作による工程で精製される上記〔1〕に記載の製造方法。
〔18〕前記式(I)で表されるジカルボン酸イミドの再結晶に、適切な溶媒または溶媒混合物を使用する上記〔17〕に記載の製造方法
〔19〕前記再結晶の溶媒または溶媒混合物が、メタノール、エタノール、DMFと水の混合物、エチルエーテルとメタノールの混合物、およびエチルエーテルとエタノールの混合物からなる群より選ばれる上記〔18〕に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
反応が溶液中で行われるので、メルト中の反応で知られた問題は起こらない。副生成物、残余の反応物などの不純物から、生成物を容易に分離することができる。固化したメルトを溶解させることは、しばしば困難であるが、それを行わずに本発明を実施することが可能である。反応条件は、溶液中で反応を行うためによく行われている操作によって、容易に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
驚くべきことに、本発明者らは、高沸点溶媒中、酸無水物と尿素とを反応させれば、ジカルボン酸イミドを合成できることを見出した。よって当該反応ルートによれば、例えば、N−フタロイルグルタミン酸無水物から、サリドマイドを合成することが可能である。
【0010】
スルホラン(テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド)を溶媒に用い、N−フタロイルグルタミン酸無水物を出発物質とするサリドマイドの合成は、例えば、下記スキーム1のように示される。
【0011】
【化2】

【0012】
スキーム1:スルホラン中のサリドマイドの合成
【0013】
本発明は、一般式(I):R1−(CO)−(NR3)−(CO)−R2で表されるジカルボン酸イミド{ジカルボン酸イミド(I)}の製造方法を提供するものであり、本発明においては、一般式(II):R1−(CO)−O−(CO)−R2で表されるジカルボン酸無水物を、一般式:(R3HN)−(CO)−(NR3H)で表される尿素または尿素誘導体と、溶媒中で反応させて、ジカルボン酸イミド(I)を得る(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、C1−C10アルキル、C2−C10アルケニル、C2−C10アルキニル、C4−C10アリール、もしくはC4−C10ヘテロアリールであってよく、またはR1およびR2は、互いに結合して環を形成してもよく、ならびに/またはR3は、Hであってもよい)。R1およびR2が、互いに結合して環を形成する場合は、R1およびR2は一緒になって2価の基R4を形成する。R1〜R4の基のそれぞれは、無置換であっても、1または複数の置換基により置換されていてもよい。本発明の本質的な特徴は、ジカルボン酸無水物と尿素または尿素誘導体を反応させて対応するジカルボン酸イミドを得ることにある。
【0014】
本発明の好ましい実施態様は、一般式(III)で表されるジカルボン酸イミドの製造方法を提供する。
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、R3は、前記と同義であり、R4は、R1およびR2として定義された2価の基である。つまり、R4は、置換もしくは無置換の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、C1−C10アルカンジイル、C2−C10アルケニレン、C2−C10アルキニレン、C4−C10アリーレン、またはC4−C10ヘテロアリーレンである。)好ましくは、本発明の方法は、置換または無置換のピペリジン−2,6−ジオンの製造に用いられ、R4は、置換または無置換の1,3−プロパンジイル、特に好ましくは、置換または無置換の1−フタルイミド−1,3−プロパンジイルであり、とりわけ、サリドマイドの合成では、1−フタルイミド−1,3−プロパンジイルである。
【0017】
1、R2、R3および/またはR4が置換基により置換されている基である場合、当業者は当該置換基を、公知の置換基より選択することができる。当業者は、当該置換基として可能なものをその知識に基づき選択するものであり、当業者は、上記化合物に存在する他の置換基を阻害するものではなく、また反応、特に本明細書中で説明する反応を、阻害も妨害もしない置換基を選択することができる。当該置換基としては、例えば、以下のもの(化合物で挙げられたものはその残基を意味する)を挙げることができ、当該置換基は、これらの例に限定されない。
−ハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子;
−脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式炭化水素、特にアルカン、アルキレン、アリーレン、アルキリデン、アリーリデン、ヘテロアリーレンおよびヘテロアリーリデン;
−カルボン酸、およびその塩;
−カルボン酸ハライド;
−脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式カルボン酸エステル;
−アルデヒド;
−脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式ケトン;
−水酸基、アルコールおよびアルコラート;
−フェノールおよびフェノラート;
−脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式エーテル;
−脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式ペルオキシド;
−ヒドロペルオキシド;
−脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式アミドまたはアミジン;
−ニトリル;
−脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式アミン;
−脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式イミン;
−チオール基、または脂肪族、脂環式、芳香族もしくは複素環式スルフィド;
−スルホン酸およびその塩;
−チオールおよびチオラート;
−ホスホン酸およびその塩;
−次亜リン酸およびその塩;
−亜リン酸およびその塩;
−亜ホスフィン酸およびその塩。
当該置換基は、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはリン原子を介してR1、R2、R3および/またはR4と結合してよい。ヘテロアリーレン、複素環式のようにヘテロ原子を含む上記構造において、ヘテロ原子は、好ましくはN、O、SおよびPである。
【0018】
本発明の方法では、高沸点の、溶媒または溶媒混合物を使用し、好ましくは、大気圧で沸点が150℃を超える、より好ましくは170℃を超える、最も好ましくは190℃を超えるものを使用する。これに関し、溶媒を、例えば、テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド(スルホラン)などの非プロトン性スルホン類、N−メチルピロリドン(NMP)などの飽和ラクタム類、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、ホルムアミドなどのカルボン酸アミド類、ジフェニルエーテルなどのエーテル類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)などの尿素類、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのポリエチレングリコール類、ジエチルベンゼン、プソイドクメン、クメン、メシチレンなどの、1以上のアルキル基で置換された芳香族類、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートなどのイオン性液体類、デカメチルシクロペンタシロキサンなどのシロキサン類、テトラリン、デカリンなどの、飽和または一部飽和された炭素環式化合物類、炭酸プロピレンなどの炭酸エステル類、N,N−ジエチルアニリンなどの芳香族アミン類、およびこれらの混合物、から選んでよい。これに関し、特に好ましくは、テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド(スルホラン)である。
【0019】
【表1】

【0020】
本発明の方法は、好ましくは、大気圧下で実施されるが、大気圧よりも高いまたは低い圧力下で当該方法を実施してもよい。また、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で反応を行うこともできる。
【0021】
反応時の温度は、140〜220℃、好ましくは150〜210℃、さらに好ましくは160〜200℃である。
【0022】
上記反応物に加え、当業者に知られている、デカリン、テトラリン等の発泡防止剤を、反応に悪影響を与えない範囲内で使用することができる。
【0023】
反応に続いて、当業者に一般的に知られた方法により、生成物を精製してもよい。当該方法の例としては、例えば、再結晶、クロマトグラフィーによる分離などが挙げられる。好ましくは、ジカルボン酸イミド(I)は、適当な溶媒または溶媒混合物より再結晶して精製する。再結晶の溶媒としては、とりわけ、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、水、およびエチルエーテルを用いることができる。溶媒混合物としては、DMFおよび水の混合物、エチルエーテルおよびメタノールの混合物、ならびにエチルエーテルおよびエタノールの混合物を用いることができる。
【0024】
反応が溶液中で行われるので、メルト中の反応で知られた問題は起こらない。副生成物、残余の反応物などの不純物から、生成物を容易に分離することができる。固化したメルトを溶解させることは、しばしば困難であるが、それを行わずに本発明を実施することが可能である。反応条件は、溶液中で反応を行うためによく行われている操作によって、容易に調整することができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を、実施例を参照しながらより詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限られるものではない。
【0026】
ジカルボン酸イミドを得るための異なる溶媒中でのジカルボン酸無水物および尿素の反応
無水フタル酸と尿素の反応
実施例1
無水フタル酸50g(0.34モル)をジフェニルエーテル75gに懸濁させ、窒素気流下、175℃まで加熱した。温度が反応温度(175℃)に達した後、尿素29.2g(0.49モル)を、散らすように添加した(発熱)。窒素を絶えず供給しながら、反応混合物を、内温170℃で30分間攪拌した。その後、内温約90℃まで冷却した。90℃に達した後、エタノール300gを素早く添加した。得られた懸濁液を濾過し、濾物をエタノール/水(70/30 w/w)で洗浄した。無色結晶固体として、理論収量の68%の収率でフタルイミドを得た。
【0027】
実施例2
スルホランを溶媒として用い、実施例1と同様の方法で反応を行った。反応温度は180〜185℃とした。収率は、理論収量の66%であった。
【0028】
実施例3
N,N−ジメチルアセトアミドを溶媒として用い、実施例1と同様の方法で反応を行った。反応温度は160℃に限定した。収率は、理論収量の69%であった。
【0029】
フタロイルグルタミン酸無水物と尿素の反応
実施例4
フタロイルグルタミン酸無水物50g(0.193モル)を、ジエチレングリコールジエチルエーテル75g中180℃まで加熱した。温度が反応温度に達した後、窒素の連続気流下で尿素16.5g(0.275モル)を散らすように添加した(発熱)。その後さらに、窒素の連続気流下で、反応温度にて1時間攪拌した。反応時間の終了時に、ジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈し、冷却した後、エタノールを加えた。濾過、洗浄および乾燥を行って、サリドマイド24.9g(理論収量の49%)を得た。
【0030】
実施例5
プソイドクメンを溶媒として用い、実施例4と同様の方法で反応を行った。反応温度は160℃とした。サリドマイドを25%の収率で単離した。
【0031】
実施例6
クメンを溶媒として用い、実施例4と同様の方法で反応を行った。反応温度は150℃とした。サリドマイドを11%の収率で単離した。
【0032】
実施例7
メシチレンを溶媒として用い、実施例4と同様の方法で反応を行った。反応温度は160℃とした。サリドマイドを23%の収率で単離した。
【0033】
実施例8
ジエチルベンゼンを溶媒として用い、実施例4と同様の方法で反応を行った。反応温度は170℃とした。サリドマイドを39%の収率で単離した。
【0034】
実施例9
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートを溶媒として用い、実施例4と同様の方法で反応を行った。反応温度は185℃とした。サリドマイドを34%の収率で単離した。
【0035】
実施例10
デカメチルシクロペンタシロキサンを溶媒として用い、実施例4と同様の方法で反応を行った。反応温度は180℃とした。サリドマイドを20%の収率で単離した。
【0036】
実施例11
ジフェニルエーテルを溶媒として用い、実施例4と同様の方法で反応を行った。反応温度は185℃とした。サリドマイドを38%の収率で単離した。
【0037】
実施例12
テトラリンを溶媒として用い、実施例4と同様の方法で反応を行った。反応温度は180℃とした。サリドマイドを50%の収率で単離した。
【0038】
実施例13
デカリンを溶媒として用い、実施例4と同様の方法で反応を行った。反応温度は180℃とした。サリドマイドを48%の収率で単離した。
【0039】
実施例14
フタロイルグルタミン酸無水物50g(0.193モル)を、NMP75g中180℃まで加熱した。温度が反応温度に達した後、窒素の連続気流下で尿素16.5g(0.275モル)を散らすように添加した(発熱)。その後、窒素の連続気流下で、反応温度にて1時間攪拌を続けた。反応時間終了時に冷却を行い、エタノールを加えた。濾過、洗浄および乾燥を行って、サリドマイド19.3g(理論収量の38%)を得た。
【0040】
実施例15
実施例14と同様の方法で、ポリエチレングリコール400を溶媒として185℃で用いた。サリドマイドを46%の収率で単離した。
【0041】
実施例16
実施例14と同様の方法で、炭酸プロピレンを溶媒として180℃で用いた。サリドマイドを30%の収率で単離した。
【0042】
実施例17
実施例14と同様の方法で、スルホランを溶媒として180℃で用いた。サリドマイドを48%の収率で単離した。
【0043】
実施例18
実施例14と同様の方法で、N,N−ジエチルアニリンを溶媒として180℃で用いた。サリドマイドを49%の収率で単離した。
【0044】
実施例19
実施例14と同様の方法で、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)を溶媒として185℃で用いた。サリドマイドを40%の収率で単離した。
【0045】
実施例20
実施例14と同様の方法で、ホルムアミドを溶媒として185℃で用いた。サリドマイドを35%の収率で単離した。
【0046】
実施例21
スルホラン75gを175℃まで加熱した。この温度にて、窒素の連続気流下、フタロイルグルタミン酸無水物50g(0.193モル)および尿素16.5g(0.275モル)の混合物を散らすように添加した。その後、窒素の連続気流下、約180℃で約2時間攪拌を続けた。反応時間終了時に冷却を行い、次いでエタノール285gを加えた。濾過、洗浄および乾燥を行って、サリドマイド24.3g(理論収量の48%)を得た。
【0047】
無水アジピン酸と尿素の反応
実施例22
無水アジピン酸20g(0.156モル)を、スルホラン30g中、反応温度である180℃まで加熱した。温度が反応温度に達した後、窒素気流下で尿素13.5g(0.24モル)を散らすように添加し、反応温度にて1時間攪拌を続けた。冷却後、反応混合物にまず2−プロパノールを加え、次いでメチル−tert−ブチルエーテル(MTBE)を加えた。アジピン酸イミドを、76%の収率で単離した。
【0048】
実施例23
実施例22と同様の方法で、ジエチレングリコールジエチルエーテルを溶媒として180℃で用いた。アジピン酸イミドを56%の収率で単離した。
【0049】
2−メチルコハク酸無水物と尿素の反応
実施例24
2−メチルコハク酸無水物25g(0.219モル)を、スルホラン37.5g中、反応温度である180℃まで加熱した。温度が反応温度に達した後、窒素気流下で尿素18.95g(0.32モル)を散らすように添加し、反応温度にて1時間攪拌を続けた。冷却後、反応混合物にまず2−プロパノールを加え、次いでMTBEを加えた。2−メチルコハク酸イミド6.5g(理論収量の32%)を得た。
【0050】
実施例25
実施例24と同様の方法で、ジエチレングリコールジエチルエーテルを溶媒として180℃で用いた。冷却後は、MTBEを最初に加えた。オイル状の反応混合物より、エタノールで再結晶して2−メチルコハク酸イミドを20%の収率で得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(II)
1−(CO)−O−(CO)−R2 (II)
で表されるジカルボン酸無水物を、(R3HN)−(CO)−(NR3H)で表される尿素または尿素誘導体と、溶媒中で反応させる、
一般式(I)
1−(CO)−(NR3)−(CO)−R2 (I)
で表されるジカルボン酸イミドの製造方法。
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、C1−C10アルキル、C2−C10アルケニル、C2−C10アルキニル、C4−C10アリール、もしくはC4−C10ヘテロアリールであり、またはR1およびR2は、互いに結合して環を形成し、ならびに/またはR3は、Hである。)
【請求項2】
一般式(III)
【化1】

で表されるジカルボン酸を製造するものである請求項1に記載の製造方法。
(式中、R3は請求項1と同義であり、R4は、置換もしくは無置換の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、C1−C10アルカンジイル、C2−C10アルケニレン、C2−C10アルキニレン、C4−C10アリーレン、またはC4−C10ヘテロアリーレンである。)
【請求項3】
4が置換または無置換の1,3−プロパンジイルであり、置換または無置換のピペリジン−2,6−ジオンを製造するものである請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
4が置換または無置換の1−フタルイミド−1,3−プロパンジイルであり、置換または無置換の3−フタルイミドピペリジン−2,6−ジオンを製造するものである請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記溶媒が、150℃を超える沸点を有する高沸点溶媒である請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記溶媒が、170℃を超える沸点を有する高沸点溶媒である請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記溶媒が、190℃を超える沸点を有する高沸点溶媒である請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記溶媒が、非プロトン性スルホン類、飽和ラクタム類、カルボン酸アミド類、エーテル類、尿素類、ポリエチレングリコール類、1以上のアルキル基で置換された芳香族類、イオン性液体類、シロキサン類、飽和または一部飽和された炭素環式化合物類、炭酸エステル類、芳香族アミン類、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記非プロトン性スルホン類がテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド(スルホラン)であり、前記飽和ラクタム類がN−メチルピロリドン(NMP)、前記カルボン酸アミド類がN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)またはホルムアミドであり、前記エーテル類がジフェニルエーテルであり、前記尿素類が1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)であり、前記ポリエチレングリコール類がジエチレングリコールジエチルエーテルであり、前記1以上のアルキル基で置換された芳香族類が、ジエチルベンゼン、プソイドクメン、クメン、およびメシチレンから選ばれるものであり、前記イオン性液体類が1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートであり、前記シロキサン類がデカメチルシクロペンタシロキサンであり、前記飽和または一部飽和された炭素環式化合物類が、テトラリンまたはデカリンであり、前記炭酸エステル類が炭酸プロピレンであり、および/または前記芳香族アミン類がN,N−ジエチルアニリンである請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記溶媒がテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドである請求項8に記載の製造方法。
【請求項11】
反応時の温度が、140〜220℃の範囲にある請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
反応時の温度が、150〜210℃の範囲にある請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
反応時の温度が、160〜200℃の範囲にある請求項1に記載の製造方法。
【請求項14】
反応が大気圧下で行われる請求項1に記載の製造方法。
【請求項15】
さらに発泡防止剤を用いる請求項1に記載の製造方法。
【請求項16】
前記発泡防止剤が、デカリンおよびテトラリンからなる群より選ばれる請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
反応後に、前記式(I)で表されるジカルボン酸イミドが、再結晶またはクロマトグラフィーによる精製操作による工程で精製される請求項1に記載の製造方法。
【請求項18】
前記式(I)で表されるジカルボン酸イミドの再結晶に、適切な溶媒または溶媒混合物を使用する請求項17に記載の製造方法
【請求項19】
前記再結晶の溶媒または溶媒混合物が、メタノール、エタノール、DMFと水の混合物、エチルエーテルとメタノールの混合物、およびエチルエーテルとエタノールの混合物からなる群より選ばれる請求項18に記載の製造方法。

【公開番号】特開2007−197442(P2007−197442A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11777(P2007−11777)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(507022156)
【氏名又は名称原語表記】SIEGFRIED Ltd.
【Fターム(参考)】