説明

ジフェニル尿素誘導体及び塩化物チャネル遮断薬又はBKCaチャネル調節薬としてのその使用

本発明は、塩化物チャネル遮断薬又はBKCaチャネル調節薬として有用な、式(I)の新規なジフェニル尿素誘導体に関する。その他の態様では、本発明は、治療のための方法におけるこれらの化合物の使用と、本発明の化合物を含む医薬品組成物とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化物チャネル遮断薬又はBKCaチャネル調節薬として有用な、新規なジフェニル尿素誘導体に関する。
【0002】
その他の態様では、本発明は、治療法におけるこれらの化合物の使用、及び本発明の化合物を含む医薬品組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
塩化物チャネルは、広く様々な特定の細胞機能を果たし、とりわけ骨格及び平滑筋細胞の正常機能に寄与する。塩化物チャネルは、おそらく、細菌から哺乳動物までの全ての細胞に見出される。それらの生理学的な仕事は、細胞容積の調節から、膜電位の安定化、経上皮又は経細胞輸送、及び細胞内顆粒の酸性化にまで及ぶ。
【0004】
同様にCa2+活性化BKチャネルが、ほとんどの中枢及び末梢神経細胞、横紋筋細胞、心臓細胞、気道、脈管構造、胃腸管、及び膀胱の平滑筋細胞を含めた多くの細胞内に、また膵臓B細胞を含めた内分泌及び外分泌腺に、また尿細管に存在する。
【0005】
塩化物チャネル遮断薬又はBKCaチャネル調節薬として活性であり、且つ最適化された薬理学的プロファイルを有する化合物を提供することが、引き続き強く求められている。さらに、より以前の化合物に関連した望ましくない副作用のない、効果的な化合物を見出すことが、強く求められている。
【0006】
WO 2005/023237及びWO 2005/023238(Poseidon Pharmaceuticals A/S)は、過興奮性関連の神経疾患及び心不整脈を治療するための、ERGチャネル開口薬の使用について記載する。開示された化合物の中には、1−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−3−[2−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)−4−(4’−N,N−ジメチル−カルバモイル)−ビフェニル]−尿素がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、塩化物チャネル遮断薬又はBKCaチャネル調節薬として働く新規な化合物を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、より良好な選択性を有する化合物を提供することである。さらに別の目的は、より良好な効力を有する化合物を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、細胞又は組織特異的塩化物チャネル又はBKCaチャネルに作用する化合物を、提供することである。さらに別の目的は、塩化物チャネルの特定の基又はサブタイプに作用する化合物を、提供することである。
【0010】
さらに別の目的は、速度論的挙動、バイオアベイラビリティ、溶解性、及び有効性などの、より最適な薬力学的特性を有する化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
その第1の態様において、本発明は、一般式Iの化合物、その異性体のいずれか若しくはその異性体の任意の混合物、又は医薬品として許容されるその塩を提供する
【化1】


(式中、R、R、R、R、R、R、R、及びRは、以下に定義される通りである)。
【0012】
その第2の態様において、本発明は、治療有効量の本発明の化合物、その異性体のいずれか若しくはその異性体の任意の混合物、又は医薬品として許容されるその塩を、少なくとも1種の医薬品として許容される担体、賦形剤、又は希釈剤と共に含む、医薬品組成物を提供する。
【0013】
別の態様において、本発明は、塩化物チャネルの遮断又はBKCaチャネルの調節に応答する、ヒトを含めた哺乳動物の疾患又は障害又は状態を、治療し、予防し、又は緩和させる医薬品組成物を製造するための、或いは、血液脳関門の透過性を増大させるのに有用な薬剤を製造するための、本発明の化合物、その異性体のいずれか若しくはその異性体の任意の混合物、又は医薬品として許容されるその塩の使用を提供する。
【0014】
さらに別の態様では、本発明は、塩化物チャネルの遮断又はBKCaチャネルの調節に応答する、ヒトを含めた動物の生体の疾患又は障害又は状態を治療し、予防し、又は緩和させるための方法であって、そのような必要のある動物の生体に、治療有効量の本発明の化合物、その異性体のいずれか若しくはその異性体の任意の混合物、又は医薬品として許容されるその塩を投与するステップを含む方法に関する。
【0015】
本発明の別の目的は、下記の詳細な記述及び実施例から、当業者に明らかにされよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
ジフェニル尿素誘導体
その第1の態様において、本発明は、式Iの化合物、その異性体のいずれか若しくはその異性体の任意の混合物、又は医薬品として許容されるその塩を提供する
【化2】


(式中、R、R、R、R、R、R、R、及びRは、互いに独立に、水素、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキル、又はアルコキシを表す)。
【0017】
式Iの化合物の一実施形態において、Rは水素を表し;Rは水素を表し;Rはハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキル、又はアルコキシを表す。別の実施形態では、Rは水素を表し;Rは水素を表し;Rはハロ又はトリフルオロメチルを表す。特別な実施形態では、Rはトリフルオロメチルを表す。
【0018】
さらに別の実施形態において、R、R、R、及びRは水素を表し;Rはハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキル、又はアルコキシを表す。特別な実施形態では、Rは、クロロなどのハロを表す。
【0019】
別の実施形態において、R、R、R、及びRは水素を表し;Rはハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキル、又はアルコキシを表す。特別な実施形態では、Rは、ブロモなどのハロを表す。
【0020】
さらに別の実施形態において、R、R、及びRは水素を表し;R及びRは、互いに独立に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキル、又はアルコキシを表す。さらに別の実施形態では、R及びRは、互いに独立に、ハロ又はトリフルオロメチルを表す。特別な実施形態では、R及びRの一方がクロロなどのハロを表し、R及びRの他方がトリフルオロメチルを表す。別の実施形態では、Rがトリフルオロメチルを表し、Rがクロロなどのハロを表す。
【0021】
別の実施形態において、R、R、及びRは水素を表し;R及びRは、互いに独立に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキル、又はアルコキシを表す。特別な実施形態では、R及びRが互いに独立にハロを表す。別の実施形態では、Rがフルオロを表し、Rがフルオロを表す。
【0022】
特別な実施形態において、本発明の化合物は、
N−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−N’−[3−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル]尿素;
N−(4−クロロ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−N’−{3−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]−オキサジアゾール−3−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル}尿素;
N−(3−ブロモ−フェニル)−N’−{3−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]−オキサジアゾール−3−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル}尿素;
N−(2−クロロ−フェニル)−N’−{3−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]−オキサジアゾール−3−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル}尿素;
又は医薬品として許容されるその塩である。
【0023】
置換基の定義
本発明の文脈において、ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを表す。
【0024】
アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、及びヘキシルを含むがこれらに限定されない1から6個の炭素原子の直鎖又は分岐鎖を意味し;メチル、エチル、プロピル、及びイソプロピルが、好ましい基である。
【0025】
アルコキシはO−アルキルであり、但しアルキルは、上記にて定義した通りである。
【0026】
医薬品として許容される塩
本発明の化合物は、意図された投与に適切な任意の形で提供することができる。適切な形には、本発明の化合物の、医薬品として(即ち生理学的に)許容される塩及びプレ又はプロドラッグの形が含まれる。
【0027】
医薬品として許容される付加塩の例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、アコニチン酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、エンボン酸塩、エナント酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、フタル酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、及びトルエン−p−スルホン酸塩など、無毒性の無機及び有機酸付加塩が含まれるが、これらに限定するものはない。そのような塩は、周知であり当技術分野で記述されている手順によって形成することができる。
【0028】
医薬品として許容されるとは見なすことのできないシュウ酸などのその他の酸は、本発明の化合物及び医薬品として許容されるその酸付加塩を得る際に、中間体として有用な塩の調製に役立てることができる。
【0029】
医薬品として許容される、本発明の化合物の陽イオン塩の例には、陰イオン基を含有する本発明の化合物のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、リチウム、コリン、リシニウム、及びアンモニウム塩が含まれるが、これに限定するものではない。そのような陽イオン塩は、周知であり当技術分野で記述される手順によって形成することができる。
【0030】
本発明の文脈において、N含有化合物の「オニウム塩」は、医薬品として許容される塩と考えることもできる。好ましい「オニウム塩」には、アルキルオニウム塩、シクロアルキルオニウム塩、及びシクロアルキルアルキルオニウム塩が含まれる。
【0031】
本発明の化合物のプレ又はプロドラッグ形態の例には、親化合物の1個又は複数の反応性又は誘導体化可能な基に変更が加えられた化合物を含む、本発明による物質の適切なプロドラッグの例が含まれる。カルボキシル基、ヒドロキシ基、又はアミノ基で変更が加えられた化合物が、特に興味深い。適切な誘導体の例は、エステル又はアミドである。
【0032】
本発明の化合物は、水やエタノールなどの医薬品として許容される溶媒と共に、溶解性又は不溶性の形で提供することができる。溶解性の形には、一水和物、二水和物、半水和物、三水和物、及び四水和物などの、水和した形も含めてよい。一般に溶解性の形は、本発明の目的においては不溶性の形と同等と見なす。
【0033】
異性体
当業者なら、本発明の化合物は、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びシス−トランス異性体を含めた種々の立体異性的形態で存在できることが理解されよう。
【0034】
本発明は、そのような異性体と、ラセミ混合物を含めたこれらの任意の混合物とを含む。
【0035】
当業者に知られている光学異性体を分解するための方法を使用することができ、この方法は、平均的当業者に明らかにされよう。そのような方法には、J.Jaques、A.Collet、及びS.Wilenによって「Enantiomers,Racemates,and Resolutions」、John Wiley and Sons、New York(1981)で論じられたものが含まれる。
【0036】
光学活性化合物は、光学活性出発材料又は中間体から調製することもできる。
【0037】
標識化合物
本発明の化合物は、それらが標識され又は標識されていない形で使用してもよい。本発明の文脈において、標識化合物は、天然で通常見られる原子質量又は質量数とは異なった原子質量又は質量数を有する原子によって置換される、1個又は複数の原子を有する。標識によって、前記化合物の容易な定量的検出が可能になる。
【0038】
本発明の標識化合物は、様々な診断方法での診断ツール、放射性トレーサ、又は監視剤として、またin vivo受容体撮像に役立てることができる。
【0039】
本発明の標識異性体は、標識として、少なくとも1種の放射性核種を含有することが好ましい。陽電子放出核種は全て、使用の候補である。本発明の文脈では、放射性核種が、H(重水素)、H(三重水素)、13C、14C、131I、125I、123I、及び18Fから選択されることが好ましい。
【0040】
本発明の標識異性体を検出するための物理的方法は、陽電子放出断層撮影法(PET)、単光子撮像コンピュータ断層撮影法(SPEC)、磁気共鳴分光法(MRS)、磁気共鳴撮像法(MRI)、及びコンピュータX線体軸断層撮影法(CAT)、又はこれらの組合せから選択することができる。
【0041】
調製方法
本発明の化合物は、化学合成のための従来の方法によって、例えば実施例に記載されている方法によって調製することができる。本出願に記載されているプロセスのための出発材料は、知られており、又は市販の化学薬品から、従来の方法によって容易に調製することができる。
【0042】
また本発明の1種の化合物は、従来の方法を使用して、本発明の別の化合物に変換することもできる。
【0043】
本明細書に記載される反応の最終生成物は、従来の技法によって、例えば抽出、結晶化、蒸留、クロマトグラフィなどによって、単離することができる。
【0044】
生物活性
本発明の化合物は、塩化物チャネルの遮断薬又はBKCaチャネルの調節薬として有用である。
【0045】
本発明の好ましい化合物は、サブマイクロモルからマイクロモルの範囲、即ち1を下回る値から約100μMの範囲で生物活性を示す。
【0046】
塩化物チャネルのタイプの例は、破骨細胞又は赤血球の、体積調節がなされた陰イオンチャネル(VRAC)又は塩化物チャネルである。化合物の活性の測定では、当技術分野で知られている様々な塩化物チャネル遮断アッセイを使用することができる。
【0047】
したがって別の態様において、本発明の化合物は、塩化物チャネルの遮断に応答する疾患、障害、又は状態の治療、予防、又は緩和に有用と見なされる。
【0048】
特別な実施形態において、本発明の化合物は、
・骨粗しょう症、閉経後骨粗しょう症、続発性骨粗しょう症、溶骨性乳癌骨転移、溶骨性癌侵襲、又は骨のページェット病など、破骨細胞関連の骨疾患などの骨代謝疾患;
・癌、転移性癌、前立腺癌、肺癌、乳癌、膀胱癌、腎癌、結腸癌、胃癌、膵癌、卵巣癌、メラノーマ、ヘパトーマ、サルコーマ、リンパ腫など、腫瘍細胞の増殖が行われる疾患などの、血管新生の阻害に応答する疾患;
・滲出性黄斑変性症、加齢黄斑変性症(AMD)、網膜症、糖尿病性網膜症、増殖性糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、虚血性網膜症(例えば、網膜静脈又は動脈閉塞)、未熟児網膜症、血管新生緑内障、及び角膜血管新生などの、眼の血管新生に関する疾患;
・高眼圧症、開放隅角緑内障、慢性開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、及び閉塞隅角緑内障によって引き起こされた毛様体充血などの、眼圧の低下に応答する疾患、障害、又は状態、
・リウマチ様関節炎、乾癬、及び
・鎌状赤血球性貧血
の治療、予防、又は緩和に有用と見なされる。
【0049】
別の態様において、本発明の化合物は、BKCaチャネルの調節に応答する疾患、障害、又は状態の治療、予防、又は緩和に有用と見なされる。
【0050】
特別な実施形態において、本発明の化合物は、
・アテローム性動脈硬化症、虚血、再灌流傷害、高血圧症、再狭窄、動脈炎症、心筋虚血症、又は虚血性心疾患などの、心血管疾患;
・気道反応亢進、塵肺症、アルミニウム沈着症、炭粉症、石綿肺症、石粉症、睫毛脱落症、鉄沈着症、ケイ肺症、タバコ症、綿肺症、サルコイドーシス、ベリリウム症、肺気腫、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、急性肺障害(ALI)、急性又は慢性感染性肺疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、慢性気管支炎、喘息様気管支炎、気道過敏症又は嚢胞性線維症の憎悪、又は慢性の咳を含めた咳、気道反応亢進の憎悪、肺線維症、肺高血圧症、炎症性肺疾患、又は急性若しくは慢性呼吸器感染性疾患などの、閉塞性又は炎症性気道疾患、
・尿失禁、精神病、てんかん、又は疼痛
の治療、予防、又は緩和に有用と見なされる。
【0051】
さらに、本発明の化合物は、血液脳関門を渡った治療物質の輸送を促進させ、特に、腫瘍細胞及びその他の異常な脳組織への化学療法薬及びウイルス粒子の経血管送達を促進させるのにも、十分適していると考えられる。
【0052】
したがって別の態様では、本発明は、血液脳関門透過性を増大させるのに有用であり、そのため脳腫瘍に見られる血腫関門を含めた血液脳関門を渡った治療物質の輸送を促進させることが可能な促進剤としての、本発明の化合物の使用に関する。
【0053】
この態様の一実施形態において、本発明の化合物は、損傷、外傷、感染、脳卒中、又は虚血によって生理学的な影響を受ける脳組織の異常な脳領域に薬剤を促進させるのに使用される。この異常な脳領域は、良性若しくは悪性腫瘍組織又はその他の新生物疾患若しくは状態の領域である。悪性腫瘍は、特に、グリオーマ、グリア芽細胞腫、乏突起細胞腫、星細胞腫、上衣細胞腫、原始神経外胚葉性腫瘍、異型髄膜腫、悪性髄膜腫、神経芽細胞腫、肉腫、メラノーマ、リンパ腫、又は癌腫でもよい。
【0054】
促進剤として使用する場合、本発明の化合物は、任意の都合良い方法で、任意の適切な経路により、治療薬と共に同時投与することができる。好ましくは、促進剤は、治療薬と同時に(即ち、同時間に又は一斉に)、又は実質的に同時に(即ち、約1時間以内に、好ましくは30分以内に、さらにより好ましくは15分以内に)投与される。
【0055】
本発明により使用される薬剤、即ち促進剤及び治療薬の両方は、薬剤が血流に送達される任意の適切な経路によって、投与してもよい。これは、静脈内、筋肉内、又は動脈内注射又は輸液によって行われることが好ましい。
【0056】
本発明により使用される治療薬は、任意の薬剤又は薬物でよい。しかし、本発明による使用に好ましい治療薬又は薬物は、抗悪性腫瘍薬、化学療法薬、細胞毒性薬、DNA発現ベクター、タンパク質、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、抗菌薬、インターフェロン、サイトカイン、サイトカイン作動薬、サイトカイン拮抗薬、免疫毒素、免疫抑制剤、ホウ素化合物、モノクローナル抗体、アドレナリン作動薬、抗痙攣薬、虚血予防剤、抗外傷薬、抗癌化学療法薬、及び診断薬である。
【0057】
本発明により使用される好ましい化学療法薬には、
・窒素マスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、イフォサミド、メルファラン、及びクロラムブシル)、エチレンイミン及びメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミン及びチオテパ)、アルキルスルホネート(例えばブスルファン)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル−CCNU)、及びステロプトゾシン)、トリアゼン(例えば、ダカルバジン(DTIC))のようなアルキル化剤;
・葉酸類似体(例えば、メトトレキセート)、ピリミジン類似体(例えば、フルオロウラシル、フロクスウリジン、及びシタラビン)のような抗代謝薬、プリン類似体及び関連する阻害剤(例えば、メルカプトプリン、チオグアニン、及びペントスタチン);及び
・ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン及びビンクリスチン)、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド及びテニポシド)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、及びミトマイシン)、酵素(例えば、L−アスパラギナーゼ)、白金配位錯体(例えば、シスプラチン及びカルボプラチン)のような天然の抗有糸分裂生成物、及びインターフェロン(例えば、インターフェロン−α)のような生物学的応答調節剤
が含まれる。
【0058】
別の好ましい実施形態において、DNA発現ベクターはウイルスベクターであり、好ましくは、アデノウイルス由来ベクター又は単純ヘルペスウイルス由来ベクターである。
【0059】
さらに別の好ましい実施形態では、本発明により使用される診断薬は、特に画像形成又は造影剤でよく、特に、放射標識された物質、ガリウム標識物質、又は、磁性第一鉄、蛍光、発光、及びヨウ素化造影剤からなる群から選択された造影剤でよい。
【0060】
促進剤として使用する場合、本発明の化合物は、物理的又は生化学的損傷、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、パーキンソン症、外傷、感染、脳卒中、脳虚血によって直接生理学的な影響を受けた脳組織の標的領域に向けて、或いは良性や悪性の脳腫瘍組織など、脳内の新生物増殖領域に向けて、治療薬と共に同時投与できることが好ましい。
【0061】
治療方法
別の態様では、本発明は、塩化物チャネルの遮断又はBKCaチャネルの調節に応答する、ヒトを含めた動物の生体の疾患又は障害又は状態を、治療し、予防し、又は緩和させる方法であって、そのような必要のある、ヒトを含めたそのような動物の生体に、本発明の化合物の有効量を投与するステップを含む方法を提供する。
【0062】
本発明により企図される好ましい医学的適応は、上述の通りである。
【0063】
現在のところ、適切な投薬範囲は、通常通り正確な投与形態、投与の形、投与が対象とする徴候、関与する被験体、及び関与する被験体の体重、さらに、担当する医師又は獣医師の選択及び経験に応じて、1日当たり0.1から1000mg、1日当たり10〜500mg、特に1日当たり30〜100mgであることが企図される。疾患の治療のために当技術分野で知られている化合物と組み合わせて投与する場合、用量レジメンは、低下させることができる。
【0064】
併用療法
本発明の化合物の使用は、塩化物チャネルの遮断に応答する疾患、障害、又は状態を治療し、予防し、又は緩和するのに有用なその他の化合物の使用と組み合わせることができる。
【0065】
一例として、化合物は、抗代謝治療に有用な化合物など、血管新生の阻害に応答する疾患を治療し、予防し、又は緩和するのに有用な1種又は複数の追加の薬物と組み合わせて使用することができる。そのような追加の薬物には、細胞毒性化合物、抗有糸分裂化合物、及び抗代謝薬が含まれる。
【0066】
細胞毒性化合物(細胞毒性アルキル化剤を含む)の例には、カルムスチン(BCNU)、フォテムスチン、テモゾロミド(テモダール)、イフォスファミド、及びシクロホスファミドが含まれる。
【0067】
抗有糸分裂化合物の例には、パクリタキセル(タキソール)及びドセタキセルが含まれる。
【0068】
抗代謝薬の例には、メトトレキサートが含まれる。
【0069】
さらに、本発明により使用される医薬品組成物は、その他の治療又は療法と組み合わせて使用し又は投与することができる。その他の治療又は療法の例には、放射線治療及び外科手術が含まれる。
【0070】
また、本発明の化合物の使用は、骨代謝疾患を治療するために、その他の骨代謝薬制御化合物の使用と組み合わせることもできる。そのような、知られている骨代謝制御化合物には、カルシウムと任意選択で組み合わされるエチドロネート、パミドロネート、又はクロドロネートなどのビスホスフォネート;エストロゲンなどのエストロゲン受容体活性化合物、即ちエストラジオール及びエチルエストラジオール、カルシトニン、1,25−ジヒドロキシビタミンD、及びその代謝産物、フッ化物、成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、トリヨードチロシン、プロテアーゼ阻害剤などのコラーゲン分解酵素、又は癌治療薬が含まれる。
【0071】
また、本発明の化合物の使用は、眼圧の低下に応答する疾患、障害、又は状態を治療し、予防し、緩和するのに有用な1種又は複数の追加の薬物の使用と組み合わせることもできる。そのような追加の薬物には、β−遮断薬、副交感神経作動性縮瞳薬、交感神経作動薬、及び炭酸脱水酵素阻害薬が含まれる。
【0072】
さらに、本発明の化合物の使用は、その他の治療又は療法と組み合わせることができる。
【0073】
疾患及び障害の治療は、慢性的又は長期にわたる治療、並びに疾患及び障害における突発的なクリーゼの治療にすることができる。
【0074】
医薬品組成物
別の態様では、本発明は、本発明の化合物の治療有効量を含む、新規な医薬品組成物を提供する。
【0075】
治療に使用される化合物は、未処理の化合物の形で投与してもよいが、活性成分は、任意選択で生物学的に許容される塩の形で医薬品組成物中に含めた状態で、1種又は複数の補助剤、賦形剤、担体、緩衝液、希釈液、及び/又はその他の通常の医薬品助剤と共に導入することが好ましい。
【0076】
好ましい実施形態では、本発明は、本発明の化合物、又は医薬品として許容されるその塩若しくはその誘導体を、当技術分野で知られており使用されている1種又は複数の医薬品として許容される担体、及び任意選択でその他の治療及び/又は予防成分と共に含む、医薬品組成物を提供する。担体は、製剤のその他の成分と適合し且つそのレシピエントに有害ではないという意味で、「許容され」なければならない。
【0077】
本発明の医薬品組成物は、経口、直腸、気管支、鼻、肺、局所(頬側及び舌下を含む)、経皮、膣、若しくは非経口(皮膚、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、動脈内、脳内、眼内注射若しくは輸液を含む)投与に適したもの、又は、粉末及び液体エアロゾル投与を含めた吸入若しくは吹送による投与、又は持続放出システムに適した形をとるものでよい。持続放出システムに適した例には、成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形をとることができる、本発明の化合物を含有する固体疎水性ポリマーの、半透性マトリックスが含まれる。
【0078】
したがって本発明の化合物は、従来の補助剤、担体、又は希釈液と共に、医薬品組成物の形及びその単位剤形で含ませることができる。そのような形には、全て経口使用のための固体、特に錠剤、充填カプセル、粉末、及びペレットの形、及び液体、特に水性又は非水性溶液、懸濁液、エマルジョン、エリキシル、及びこれらが充填されたカプセル、直腸投与のための坐薬、及び非経口使用のための滅菌注射液が含まれる。そのような医薬品組成物及びその単位剤形は、従来の成分を従来の割合で、追加の活性化合物又は成分と共に又は無しで含んでよく、そのような単位剤形は、用いられることになる意図される1日投薬量範囲に応じて、活性成分を任意の適切な有効量で含有してよい。
【0079】
本発明の化合物は、広く様々な経口及び非経口剤形で投与することができる。下記の剤形は、活性成分として、本発明の化合物又は医薬品として許容される本発明の化合物の塩を含んでよいことが、当業者に明らかにされよう。
【0080】
本発明の化合物から医薬品組成物を調製する場合、医薬品として許容される担体は、固体又は液体にすることができる。固体形態の調製物には、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、カシェ剤、坐薬、及び分散性顆粒が含まれる。固体担体は、希釈液、着香料、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、又は封入材として働くこともできる、1種又は複数の物質にすることができる。
【0081】
粉末では、担体が、微粉化した活性成分の混合物中にある微粉化した固体である。
【0082】
錠剤では、活性成分が、必要な結合能力を有する担体と適切な割合で混合され、所望の形状及びサイズに圧縮される。
【0083】
粉末及び錠剤は、活性化合物を5又は10から約70%含有することが好ましい。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、及びココアバターなどである。「調製物」という用語は、活性化合物と、カプセルを提供する担体としての封入材との製剤を含むものとし、このカプセルでは、担体を含み又は含まない活性成分が担体によって取り囲まれ、したがって担体と結合している。同様に、カシェ剤及びロゼンジが含まれる。錠剤、粉末、カプセル、丸薬、カシェ剤、及びロゼンジは、経口投与に適した固体形態として使用することができる。
【0084】
坐薬を調製する場合、脂肪酸グリセリド又はココアバターの混合物などの低融点ワックスを、最初に融解し、その中に、撹拌によって活性成分を均質に分散させる。次いで融解した均質混合物を、従来のサイズの型に注ぎ、冷却させ、それによって凝固させる。
【0085】
膣投与に適した組成物は、適切であると当技術分野で知られている担体などを、活性成分に加えて含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、又はスプレーとして存在させてもよい。
【0086】
液体製剤には、溶液、懸濁液、及びエマルジョン、例えば水又は水−プロピレングリコール溶液が含まれる。例えば非経口注射液調製物は、水性ポリエチレングリコール溶液に溶かした溶液として配合することができる。
【0087】
したがって本発明による化合物は、非経口投与のために配合してもよく(例えば注射によって、例えばボーラス注入又は連続輸液によって)、アンプル、充填済み注射器、小体積輸液、又は多回用量容器中の単位剤形として、追加の保存剤と共に存在させてもよい。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又はエマルジョンなどの形をとってもよく、懸濁剤、安定剤、及び/又は分散剤などの配合剤を含有してもよい。或いは活性成分は、使用前に、適切なビヒクル、例えば滅菌した発熱物質を含まない水に溶かして元に戻すために、滅菌固体の無菌単離によって、又は溶液からの凍結乾燥によって得られた粉末形態でもよい。
【0088】
経口使用に適した水溶液は、活性成分を水中に溶解し、望み通りに適切な着色剤、香料、安定剤、及び増粘剤をすることによって、調製することができる。
【0089】
経口使用に適した水性懸濁液は、天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又はその他の周知の懸濁剤などの粘性材料と共に、水中に微粉化した活性成分を分散させることによって、作製することができる。
【0090】
また、経口投与に向けた、使用直前での液体形態の調製物への変換が意図される、固体形態の調製物も含まれる。そのような液体形態には、溶液、懸濁液、及びエマルジョンが含まれる。活性成分の他に、そのような調製物は、着色剤、香料、安定剤、緩衝液、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、及び可溶化剤を含んでよい。
【0091】
表皮への局所投与では、本発明の化合物は、軟膏、クリーム、若しくはローションとして配合することができ、又は経皮パッチとして配合することができる。軟膏及びクリームは、例えば、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を添加した状態で、水性又は油性基剤と配合することができる。ローションは、水性又は油性基剤と配合することができ、一般に、1種又は複数の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、又は着色剤も含有することになる。
【0092】
口内への局所投与に適した組成物には、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカントである着香基剤中に活性成分を含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシアなどの不活性基剤中に活性成分を含む香錠;及び適切な液体担体中に活性成分を含むマウスウォッシュが含まれる。
【0093】
溶液又は懸濁液は、従来の手段によって、例えばドロッパー、ピペット、又はスプレーを用いて、鼻腔に直接施用される。組成物は、単回又は多回剤形で提供してもよい。
【0094】
呼吸器官への投与は、活性成分が、クロロフルオロカーボン(CFC)など、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、又はジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又はその他の適切なガスなどの適切な噴射剤と共に、加圧パックで提供されるエアロゾル製剤を用いて実現してもよい。エアロゾルは、レシチンなどの界面活性剤も含有できることが都合良い。薬物の用量は、計量弁を設けることによって制御してもよい。
【0095】
或いは活性成分は、乾燥粉末の形、例えば、ラクトース、デンプン、デンプン誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドン(PVP)などの、適切な粉末ベース中に含ませた、化合物の粉末ミックスの形で提供することができる。粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成することが都合良い。粉末組成物は、例えばゼラチンなどのカプセル若しくはカートリッジに入れた単位剤形で、又は吸入器を用いて粉末を投与することができるブリスターパック形態で、存在させることができる。
【0096】
鼻内組成物を含めた呼吸器官への投与を目的とした組成物では、化合物は一般に、小さい粒度を有することになり、例えば5ミクロン程度又はそれ以下である。そのような粒度は、当技術分野で知られている手段によって、例えば微粒子化によって得ることができる。
【0097】
望みに応じて、活性成分の持続放出をもたらすようになされた組成物を用いることができる。
【0098】
医薬品調製物は、単位剤形であることが好ましい。そのような形態では、調製物は、適切な量の活性成分を含有する単位用量に細分される。単位剤形は、包装された調製物、別々に切り離された量の調製物を含有するパッケージ、例えば包装された錠剤、カプセル、及びバイアル又はアンプルに入った粉末にすることができる。また、単位剤形は、カプセル、錠剤、カシェ剤、若しくはロゼンジそのものにすることができ、又はこれらのいずれかが適切な数で包装形態に収容されたものにすることができる。
【0099】
経口投与用の錠剤又はカプセルと、静脈内投与及び連続輸液用の液体は、好ましい組成物である。
【0100】
配合及び投与に関する技法のさらなる詳細は、Remington‘s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co.、Easton、PA)の最新版に見出すことができる。
【0101】
治療上有効な用量は、症状又は状態を回復させる活性成分の量を指す。治療効力及び毒性、例えばED50及びLD50は、細胞培養物又は実験動物での標準的な薬理学的手順によって決定することができる。治療効果と毒性効果との間の用量比は、治療指数であり、比LD50/ED50によって表すことができる。高い治療指数を示す医薬品組成物が好ましい。
【0102】
投与される用量は、当然ながら、治療がなされる個人の年齢、体重、及び状態、並びに投与経路、剤形、及び投与計画に合わせて慎重に調節しなければならず、所望の結果及び正確な投薬量は、当然ながら、施術者によって決定されるべきである。
【0103】
実際の投薬量は、治療がなされる疾患の性質及び重症度に依存し、医師の裁量の範囲内であり、所望の治療効果をもたらすために本発明の特定の状況に対する投薬量の用量設定によって、変えることができる。しかし現在のところ、個々の用量当たり活性成分を約0.1から約500mg、好ましくは約1から約100mg、最も好ましくは約1から約10mg含有する医薬品組成物が、治療上の処置に適していると考えられる。
【0104】
活性成分は、1日当たり1回又は数回の用量で投与してもよい。満足のいく結果は、場合によっては、0.1μg/kg i.v.及び1μg/kg p.o.程度に低い投薬量で得ることができる。投薬量範囲の上限は、現在のところ、約10mg/kg i.v.及び100mg/kg p.o.であると見なされる。好ましい範囲は、約0.1μg/kgから約10mg/kg/日 i.v.及び約1μg/kgから約100mg/kg/日 p.o.である。
【実施例】
【0105】
本発明について、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲をいかなる方法によっても限定するものではない下記の実施例を参照しながら、さらに説明する。
【0106】
(実施例1)
4−アミノ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−カルボニトリル
【化3】


水250ml及び1,2−ジメトキシエタン500ml中に、4−(トリフルオロメチル)ベンゼンボロン酸26.5g、2−アミノ−5−ブロモ−ベンゾニトリル25g、及び炭酸カリウム57.9gを混合した。混合物を、窒素で10分間バブリングし、次いで塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II) 1gを添加し、その反応混合物を一晩、加熱還流した。反応混合物を室温に冷却し、水700mlを添加し、酢酸エチル800mlで抽出した。有機相を、まず飽和塩化ナトリウム300mlで洗浄し、次いで2M塩化カルシウム300mlで、最後に水300mlで洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発させて油にし、エーテルで磨砕した。収量30.5g(92%)。
【0107】
(実施例2)
4−アミノ−N−ヒドロキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−カルボキサミド
【化4】


4−アミノ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−カルボニトリル(10g)を、メタノール250ml中に溶解し、塩酸ヒドロキシルアミン5.6g及びトリエチルアミン8.1gを添加した。反応混合物を50℃で一晩撹拌し、水100ml及び酢酸エチル100mlを添加した。水相を酢酸エチル100mlで抽出した。有機相を水100mlで洗浄し、その後、飽和塩化ナトリウム100mlで洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発させて油にした。収量10.8g(96%)。
【0108】
(実施例3)
3−(4−アミノ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−4H−[1,2,4]−オキサジアゾール−5−オン
【化5】


ナトリウム(1.6g)を、乾燥エタノール200ml中で溶解するまで撹拌し、その溶液に、4−アミノ−N−ヒドロキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−カルボキサミド10.8g及び炭酸ジエチル16gを添加し、この反応混合物を85℃で一晩撹拌し、蒸発させて油にし、残留物を酢酸エチルに溶解し、有機相を4NのNaOH水溶液で抽出した。水相を、濃塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させて油にした。残留物を沸騰したエタノール150ml中に溶解した。溶液を室温に冷却し、結晶化した生成物を濾過によって単離し、乾燥した。収量5.1g(45%)。
【0109】
(実施例4)
N−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−N’−[3−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル]尿素
【化6】


乾燥トルエン100ml中に、3−(4−アミノ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−4H−[1,2,4]オキサジアゾール−5−オン5gを懸濁し、イソシアン酸3,5−ジフルオロフェニル2.5gを添加し、この反応混合物を室温で一晩撹拌し、イソシアン酸3,5−ジフルオロフェニル1.3gを添加し、撹拌を一晩継続した。イソシアン酸3,5−ジフルオロフェニル(1.3g)及びアセトニトリル100mlを添加し、この反応混合物を室温で90分間撹拌し、蒸発乾固させた。残留物を、沸騰したアセトン100ml中に溶解し、次いで0℃に冷却し、濾過した。沈殿物を、エタノール200mlから再結晶し、濾過後、温かい間に、溶液を水400mlに添加した。生成物を濾過によって単離した。収量4g(54%) 融点>150℃分解。
【0110】
同様に、実施した:
N−(4−クロロ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−N’−{3−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]−オキサジアゾール−3−イル−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル)}尿素:融点>139℃分解。
N−(3−ブロモ−フェニル)−N’−{3−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]−オキサジアゾール−3−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェン−4−イル}尿素 融点>200℃分解。
N−(2−クロロ−フェニル)−N’−{3−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]−オキサジアゾール−3−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル]尿素 融点220〜222℃。
【0111】
(実施例5)
in vitroヒト赤血球塩化物コンダクタンス
塩化物コンダクタンスを、WO 00/24707の明細書の「生物学」のパラフラフに記載されている手法により測定した。これらの研究から計算されたパラメータは、IC50値、即ち塩化物チャネルの50%が遮断される濃度である。
【0112】
実施例4の第1の化合物、N−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−N’−[3−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル]尿素は、IC50値 0.28μMを示す。
【0113】
(実施例6)
容積感受性陰イオンチャネル(VRAC)の効果
容積感受性陰イオンチャネル(VRAC)の活性を、Helix他、J Membr Biol.2003 196(2):83〜94も記載されている、ヒト胚性腎細胞(HEK293)を使用した全細胞パッチクランプ技法によって試験した。要するにVRACは、低張性(75%張度)細胞外塩溶液中で細胞を膨潤させることによって活性化され、電圧上昇によって誘導された陰イオン電流を、時間に対して測定した。電流が安定した後、試験がなされる化合物を細胞外溶液に添加し、時間依存性遮断を行って、K値を計算した。実施例4の第1の化合物、N−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−N’−[3−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル]尿素は、K値 0.23μMを示す。
【0114】
(実施例7)
ヒトBKチャネルのスクリーニング
膜電流に対する化合物の影響を、ヒトBKチャネルを発現することが可能なアフリカツメガエル卵母細胞(Xenopus Oosytes)で電気生理学的に決定し、このチャネルを流れる電流を、古典的な双電極電位固定技法を使用して記録した。
【0115】
実施例4の第1の化合物、N−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−N’−[3−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル]尿素を、試験化合物0.3μMの濃度でこの決定に用い、その結果、基礎電流に対して200%超のBK電流の増加が生じた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、その異性体のいずれか若しくはその異性体の任意の混合物、又は医薬品として許容されるその塩
【化1】


(式中、R、R、R、R、R、R、R、及びRは、互いに独立に、水素、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキル、又はアルコキシを表す)。
【請求項2】
が水素を表し;
が水素を表し;且つ
がハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキル、又はアルコキシを表す、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が水素を表し;
が水素を表し;且つ
がハロ又はトリフルオロメチルを表す、
請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
、R、R、及びRが水素を表し;且つ
がハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキル、又はアルコキシを表す、
請求項1から3までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
、R、R、及びRが水素を表し;且つ
がハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキル、又はアルコキシを表す、
請求項1から3までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
、R、及びRが水素を表し;且つ
及びRが、それぞれ独立に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキル、又はアルコキシを表す、
請求項1から3までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
、R、及びRが水素を表し;且つ
及びRが、それぞれ独立に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキル、又はアルコキシを表す、
請求項1から3までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
N−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−N’−[3−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル]尿素;
N−(4−クロロ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−N’−{3−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]−オキサジアゾール−3−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル}尿素;
N−(3−ブロモ−フェニル)−N’−{3−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]−オキサジアゾール−3−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェン−4−イル}尿素;
N−(2−クロロ−フェニル)−N’−{3−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2,4]−オキサジアゾール−3−イル)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル}尿素;
又は医薬品として許容されるその塩
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の化合物、その異性体のいずれか若しくはその異性体の任意の混合物、又は医薬品として許容されるその塩の、治療有効量を、少なくとも1種の医薬品として許容される担体、賦形剤、又は希釈剤と共に含む、医薬品組成物。
【請求項11】
塩化物チャネルの遮断又はBKCaチャネルの調節に応答する、ヒトを含めた哺乳動物の疾患、又は障害、又は状態を治療し、予防し、又は緩和させる医薬品組成物を製造するための、請求項1から9までのいずれか一項に記載の化合物、その異性体のいずれか若しくはその異性体の任意の混合物、又は医薬品として許容されるその塩の使用。
【請求項12】
塩化物チャネルの遮断又はBKCaチャネルの調節に応答する疾患、障害、又は状態が、破骨細胞関連の骨疾患、骨粗しょう症、閉経後骨粗しょう症、続発性骨粗しょう症、溶骨性乳癌骨転移、溶骨性癌侵襲、骨のページェット病、癌、転移性癌、前立腺癌、肺癌、乳癌、膀胱癌、腎癌、結腸癌、胃癌、膵癌、卵巣癌、メラノーマ、ヘパトーマ、サルコーマ、リンパ腫、滲出性黄斑変性症、加齢黄斑変性症(AMD)、網膜症、糖尿病性網膜症、増殖性糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、虚血性網膜症、網膜静脈又は動脈閉塞、未熟児網膜症、血管新生緑内障、角膜血管新生、高眼圧症、開放隅角緑内障、慢性開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、閉塞隅角緑内障によって引き起こされた毛様体充血、リウマチ様関節炎、乾癬、鎌状赤血球性貧血、アテローム性動脈硬化症、虚血、再灌流傷害、高血圧症、再狭窄、動脈炎症、心筋虚血症、虚血性心疾患、気道反応亢進、塵肺症、アルミニウム沈着症、炭粉症、石綿肺症、石粉症、睫毛脱落症、鉄沈着症、ケイ肺症、タバコ症、綿肺症、サルコイドーシス、ベリリウム症、肺気腫、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、急性肺障害(ALI)、急性又は慢性感染性肺疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、慢性気管支炎、喘息様気管支炎、気道過敏症又は嚢胞性線維症の憎悪、慢性の咳を含めた咳、気道反応亢進の憎悪、肺線維症、肺高血圧症、炎症性肺疾患、又は急性若しくは慢性呼吸器感染性疾患、尿失禁、精神病、てんかん、又は疼痛である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
血液脳関門透過性を増大させるのに有用な薬剤を製造するための、請求項1から9までのいずれか一項に記載の化合物、その異性体のいずれか若しくはその異性体の任意の混合物、又は医薬品として許容されるその塩の使用。
【請求項14】
塩化物チャネルの遮断又はBKCaチャネルの調節に応答する、ヒトを含めた動物の生体の疾患又は障害又は状態を、治療し、予防し、又は緩和するための方法であって、そのような必要のある、そのような動物の生体に、請求項1から9までのいずれか一項に記載の化合物、その異性体のいずれか若しくはその異性体の任意の混合物、又は医薬品として許容されるその塩の、治療有効量を投与するステップを含む上記方法。


【公表番号】特表2009−530238(P2009−530238A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558794(P2008−558794)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052243
【国際公開番号】WO2007/104719
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(505377201)ノイロサーチ アクティーゼルスカブ (135)
【Fターム(参考)】