説明

ジョイントブーツの製造方法

【課題】パリソンの加熱工程における温度ムラを低減して、蛇腹部の肉厚制御を容易にする。
【解決手段】大径側取付部3に対応する第1パリソン部分61と、小径側取付部4に対応する第2パリソン部分62と、両者を連結する非蛇腹状をなす第3パリソン部分63とを備えるパリソン6を射出成形した後、第3パリソン部分のみを径方向外方側からヒータ87で加熱し、その後、ブロー工程において蛇腹部5を成形するジョイントブーツの製造方法において、加熱工程で用いるヒータ87は、複数の発熱体89をパリソンの軸方向Xに並べて設けたものであって、ヒータ87と第3パリソン部分63との間の空間を軸方向Xで複数に区画する遮蔽板90を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジョイントブーツを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドライブシャフト等に設けられる等速ジョイントとして、図10,11に示すように、入力側と出力側の一方のシャフト1においてローラ11を持つ3本のトラニオン12を軸直角方向に突設して構成したトリポート13と、他方のシャフト20の端部に設けたアウターケース2とからなるものがある。アウターケース2は、その内周にローラ11が転動する3本の溝21を周方向に分散配設して構成してあり、外周部には複数の凹部22が周方向に分散させて設けられている。
【0003】
上記等速ジョイントに装着されるジョイントブーツは、アウターケース2に取り付けられる大径側取付部3と、シャフト1に取り付けられる小径側取付部4と、これらを連結する蛇腹部5とで構成されており、大径側取付部3は、内周部において複数の凸部30が周方向に分散させて設けられる一方、外周面はバンド10による締め付けのため断面円形状に形成されている。
【0004】
このようなジョイントブーツの製造方法として、下記特許文献1〜4には、大径側取付部の製品形状をなす第1パリソン部分と、小径側取付部の製品形状をなす第2パリソン部分と、両者を連結する筒状の第3パリソン部分とを備えたパリソンを射出成形し、該パリソンの冷却後に第3パリソン部分を加熱し、該第3パリソン部分の周囲をブロー外型で覆って内側に気体を噴射することで蛇腹部をブロー成形する、いわゆるコールドパリソン法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−015728号公報
【特許文献2】特開2006−015729号公報
【特許文献3】特開2006−015731号公報
【特許文献4】国際公開第2005/118256号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図12は、上記コールドパリソン法におけるパリソン100の加熱工程を示した図である。パリソン100は、第1パリソン部分102と第2パリソン部分104がカバー部材106,108により遮蔽された上で、第3パリソン部分110のみが、ヒータ112により、径方向外方側から加熱される。該ヒータ112は、管状発熱体114を、パリソン100の軸方向、即ち上下方向に複数本並べて構成されている。
【0007】
このようなヒータ112を用いて、第3パリソン部分110の全体をそのまま加熱する場合、次のような問題が生じることが判明した。すなわち、第3パリソン部分110には、その軸方向で温度が上昇しにくい部位がある。具体的には、第3パリソン部分110の軸方向両端部110A,110Bであり、これらの部位では、隣接する第1パリソン部分102や第2パリソン部分104に熱が逃げるため、軸方向中央部に比べて温度が上昇しにくい。また、上記のような発熱体114を複数段に並べたヒータ112では、図12に示すように、加熱対象となる第3パリソン部分110の軸方向中央部ほど、複数の発熱体114から放射される熱線同士の重なり度が大きくなり、そのため、軸方向中央部が加熱されすぎる傾向となり、軸方向両端部110A,110Bとの温度差が増幅される。
【0008】
このように第3パリソン部分に温度ムラがあると、温度が低い部位ではその後のブロー工程において膨らみにくいので、蛇腹部の肉厚制御が難しく、精度良くブロー成形することが困難となる。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、パリソンの加熱工程における温度ムラを低減して、蛇腹部の肉厚制御を容易にすることができるジョイントブーツの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る方法は、アウターケースに取付けられる筒状の大径側取付部と、シャフトに取付けられる筒状の小径側取付部と、両者を一体に連結するものであって複数の山部及び谷部を有する蛇腹部と、を備えたジョイントブーツを製造する方法であって、
前記大径側取付部に対応する第1パリソン部分と、前記小径側取付部に対応する第2パリソン部分と、前記第1パリソン部分と第2パリソン部分を連結する非蛇腹の筒状をなす第3パリソン部分と、を備えるパリソンを成形材料で射出成形するパリソン成形工程と、
前記第1パリソン部分と第2パリソン部分と第3パリソン部分のうち前記第3パリソン部分を径方向外方側からヒータで加熱する工程であって、前記ヒータには、複数の発熱体が前記パリソンの軸方向に並べて設けられるとともに、前記ヒータと第3パリソン部分との間の空間を前記軸方向で複数に区画する遮蔽板が設けられ、該ヒータにより前記第3パリソン部分を加熱する加熱工程と、
加熱状態にある前記第3パリソン部分の周囲を外型で覆い、前記第3パリソン部分の内側に気体を噴射することで前記外型に前記第3パリソン部分を押し付けて前記蛇腹部を成形するブロー工程と、を含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パリソンの加熱工程において、ヒータと第3パリソン部分との間の空間を遮蔽板により軸方向で複数に区画するようにしたので、発熱体から放射される熱線の軸方向における拡がりが遮蔽板によって制限される。そのため、軸方向中央部が加熱されすぎる傾向となることを抑制して、軸方向での温度ムラを低減することができ、蛇腹部の肉厚制御を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係るパリソン成形工程を示す断面図
【図2】同実施形態に係る加熱工程を示す断面図
【図3】同加熱工程を示す側面図
【図4】同加熱工程を示す平面図
【図5】同実施形態に係るブロー工程を示す断面図
【図6】ジョイントブーツを示す一部切欠き断面図
【図7】第2実施形態に係る加熱工程を示す断面図
【図8】第3実施形態に係る加熱工程を示す断面図
【図9】第6実施形態に係る加熱工程を示す断面図
【図10】等速ジョイント及びジョイントブーツを示す縦断面図
【図11】等速ジョイントを示す側面図
【図12】比較例に係る加熱工程を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図6に、実施形態におけるジョイントブーツを示している。このジョイントブーツは、上述した図10,11に示す自動車用のトリポートタイプの等速ジョイントに装着される熱可塑性樹脂製ブーツであり、軸方向一端側の筒状の大径側取付部3と、該大径側取付部3と離間して同軸的に配置された他端側の筒状の小径側取付部4と、これらを一体に連結する中空状の蛇腹部5とからなる。そして、大径側取付部3が上記アウターケース2に外嵌して取付けられ、小径側取付部4が上記シャフト1に外嵌して取付けられる。大径側取付部3は、その外周面3Aが断面円形状に形成され、内周部3Bには、径方向内方側に向けて突出する3個の凸部30を、周方向に120度ごとに均等に分散させて設け、アウターケース2の外周部に形成した3個の凹部22に3個の凸部30を各別に外嵌可能に構成してある。
【0015】
大径側取付部3の外周面3Aには、締付部材であるリング状のバンド10(図10参照)を受け入れるための周方向に延びる固定用凹部31が設けられている。また、大径側取付部3の内周面には、周方向に延びる2本のシール用リブ32が設けられている。同様に、小径側取付部4においても、その外周面には、締付部材であるリング状のバンド10を受け入れるための周方向に延びる固定用凹部40が設けられ、また、その内周面には、周方向に延びる2本のシール用リブ41が設けられている。また、大径側取付部3の各凸部30には、成形後の樹脂のヒケを防止するために肉抜き穴33が設けられている。
【0016】
蛇腹部5は、複数の山部及び谷部が交互に連続してなり、山部及び谷部の径が大径側取付部3から小径側取付部4へと順次に小さくなるように形成されている。この例では、大径側取付部3側から順に、第1谷部50A、第1山部51A、第2谷部50B、第2山部51B、第3谷部50C、第3山部51C、第4谷部50D、第4山部51D、第5谷部50E、および第5山部51Eを有する5山5谷構造をなしている。
【0017】
これら複数の山部のうち、第3山部51Cは、山高さが他の山部よりも大きく設定されている。ここで、山高さとは、山部の両側に位置する谷部の谷底に対する、当該山部の頂点までの高さである(図6におけるh)。
【0018】
このジョイントブーツは下記のパリソン成形工程と加熱工程とブロー工程とを経て製造される。
【0019】
[パリソン成形工程]
図1に示すように、成形材料としての熱可塑性樹脂(例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマー樹脂)を、パリソン成形装置7のノズル70から射出成形型71内に吐出して、大径側取付部3に対応する第1パリソン部分61と、小径側取付部4に対応する第2パリソン部分62と、蛇腹部5に対応する第3パリソン部分63とから成る筒状のパリソン6を射出成形する。
【0020】
射出成形型71は、パリソン6の外周側を成形する周方向に複数に分割可能な射出用外型72と、その内部に装着されてパリソン6の内周側を成形する中子型73とを備えてなり、外型72と中子型73との間にキャビティ74が形成されている。中子型73は、その頂部73Aで第2部分62を成形するように設けられており、この頂部73Aの上方を覆う外型72の上面部に上記ノズル70に通じるゲート孔75が設けられている。
【0021】
第1パリソン部分61は、上記キャビティ74内で、大径側取付部3として成形され、即ち、大径側取付部3の最終的な製品形状に射出成形される。従って、第1パリソン部分61は、外周面が断面円形状をなし、かつ内周部に上記肉抜き穴33を持つ複数の凸部30を備える形状に成形される。また、外周面には上記固定用凹部31が成形され、内周面には2本のリブ32が成形される。
【0022】
第2パリソン部分62は、上記キャビティ74内で、小径側取付部4として成形され、即ち、小径側取付部4の最終的な製品形状に射出成形される。その際、第2パリソン部分62は、第1パリソン部分61よりも小径の筒状に成形され、その外周面には上記固定用凹部40が、内周面には2本のリブ41がそれぞれ成形される。また、第2パリソン部分62の上端の開口面は射出成形後には閉塞部64により閉塞されており、即ち、パリソン6は有天筒状に成形される。
【0023】
一方、第3パリソン部分63は、最終的な製品形状に相当する蛇腹状ではなく、第1パリソン部分61と第2パリソン部分62との間に介設されたパリソン部分であって、両者を連結する非蛇腹状のテーパー筒状に射出成形される。すなわち、第3パリソン部分63は、大径の取付部3から小径の取付部4に向かって直径が次第に小さくなるテーパー状に成形される。
【0024】
このようにして射出成形されたパリソン6は、射出成形型71から取り出され、従って中子型73からも外されて、室温で冷却(自然放冷)される。
【0025】
[加熱工程]
次いで、冷却されたパリソン6は、図2に示すように、第1パリソン部分61と第2パリソン部分62と第3パリソン部分63のうち第3パリソン部分63だけを加熱装置8で設定温度(例えば160℃〜200℃)に加熱される。
【0026】
加熱装置8は、複数のパリソン6を連続して加熱できるように次のように構成されている。図2〜4に示すように、パリソン6を支持する支持体80をコンベア81に複数個、搬送方向に一定間隔をあけて縦姿勢に配設するとともに、各支持体80とコンベア81との間に、支持体80をその軸芯O周りに回転させる回転駆動機構82を設ける。支持体80は、パリソン6の内周側を支持する柱状部材であり、第1パリソン部分61が同芯状に外嵌する下側嵌合部83と、第2パリソン部分62が同芯状に外嵌する上側嵌合部84と、第3パリソン部分63により囲まれる中間支持部85と、下端部側の支持台部86とを備えてなる。
【0027】
支持体80の横外方側には、コンベア81の走行方向に沿って延びる長尺の遠赤外線ヒータ87が設けられている。ヒータ87と支持体80との間には、ヒータ87からの熱線(即ち、遠赤外線)が照射される箇所を制限するカバー部材88が設けられている。カバー部材88は、第1パリソン部分61と第2パリソン部分62に対してヒータ87からの熱線が当たらないように遮断する部材であり、第1パリソン部分61と第2パリソン部分62の側方をそれぞれ覆うように上下一対にて設けられ、コンベア81の走行方向に延びる帯板状に形成されている。
【0028】
ヒータ87は、熱線を放射する管状の発熱体89を、上下方向、即ちパリソン6の軸方向Xに複数個並べて構成されている。発熱体89はコンベア81の走行方向に沿って水平に延びる細長い管状発熱体であり、複数個の発熱体89が互いに平行に配設されている。この例では、発熱体89は、蛇腹部5の各山部51A〜Eに対応する領域毎に設けられており、従って5本の発熱体89が配設されている。なお、複数の発熱体を軸方向に並べて設ける場合、このように複数本の管状発熱体89を並べる代わりに、1本の管状発熱体を、複数回折り返すようにして配設してもよい。
【0029】
ヒータ87には、第3パリソン部分63との間の空間を軸方向X(即ち、上下方向)で複数の小空間91に区画する遮蔽板90が設けられている。遮蔽板90は、各発熱体89から放射される熱線を軸方向Xで遮蔽するために水平に設けられた平板部材であり、複数枚(ここでは4枚)が互いに平行に配設されている。遮蔽板90としては、反射等により熱線を遮ることで発熱体89間での熱線の干渉を防ぐことができるものを使用することができ、例えばステンレス板等が用いられる。
【0030】
遮蔽板90は、図2に示すように、各発熱体89同士を上下に仕切るように一端部が隣接する2つの発熱体89,89の間に介設されるとともに、他端部がパリソン6の近傍まで延びている。詳細には、テーパ筒状をなす第3パリソン部分63の表面に対して一定の間隔をおくように、上側の遮蔽板90ほどヒータ87からの突出長が大きく設定されている。
【0031】
遮蔽板90は、蛇腹部5との関係において次のように配設されている。すなわち、遮蔽板90は、蛇腹部5の各谷部50B〜Eに対応する軸方向位置65B〜E(上下方向Xにおける高さ)に配設されている。なお、第1谷部50Aについては、その軸方向X外側に加熱すべき山部がないため、第1谷部50Aに対向する軸方向位置には遮蔽板90は設けていない。従って、遮蔽板90は、その他の各谷部、即ち第2〜第5谷部50B〜Eに対応する位置に設けられ、この例では4枚が配設されている。これにより、遮蔽板90は、ヒータ87と第3パリソン部分63との間の空間を、蛇腹部5の各山部51A〜Eに相当する領域66A〜E毎に区画しており、従って5つの小空間91に区画している。また、上記のように発熱体89は各山部51A〜Eに対応する領域66A〜E毎に設けられているので、上記5つの小空間91のそれぞれに発熱体89が配されて、各発熱体89から放射される熱線はそれぞれ対応する小空間91を通って第3パリソン部分63に照射されるように構成されている。
【0032】
以上の構造を持つ加熱装置8を用いて、パリソン6を支持体80を支持させた状態で、コンベア81を搬送駆動させ、支持体80をその軸芯O周りに回転させながら、第3パリソン部分63をその径方向外方側からヒータ87で加熱する。このようにして、複数の支持体80に複数のパリソン6を順次支持させ、各パリソン6の第3パリソン部分63を加熱することにより、複数のパリソン6の連続した加熱が行われる。
【0033】
[ブロー工程]
第3パリソン部分63の加熱が完了した後、図5に示すように、パリソン6を支持体80に支持させたまま、型面が蛇腹形状のブロー外型95で覆い、支持体80に設けた噴射口92から加熱状態にある第3パリソン部分63の内側に気体を噴射することで、ブロー外型95に第3パリソン部分63を押し付けて製品形状をなす蛇腹部5を成形する。
【0034】
ブロー外型95は、周方向に複数に分割可能に形成されており、また、成形する蛇腹部5の各山部51A〜51Eの頂点毎に型合わせ面96がくるように、板状型97を上下方向に複数層に積層してなる。これにより、ブロー成形時に型内の空気が型合わせ面96から排気されるようになっている。
【0035】
このようにして蛇腹部5をブロー成形した後、第2パリソン部分62の上端開口面の閉塞部64を切断することによりジョイントブーツが得られる。
【0036】
以上よりなる本実施形態によれば、パリソン6の加熱工程において、ヒータ87に遮蔽板90を設けて、発熱体89から放射される熱線の軸方向Xにおける拡がりを制限するようにしたので、第3パリソン部分63の軸方向中央部が加熱されすぎる傾向となることを抑制することができ、軸方向Xでの温度ムラを低減することができる。
【0037】
また、遮蔽板90を蛇腹部5の各谷部50B〜Eに対応した位置65B〜Eに設けて、蛇腹部5の各山部51A〜Eに相当する領域66A〜E毎に区画した小空間91を設け、各小空間91に発熱体89を設けたので、山部51A〜Eに相当する各領域66A〜Eがそれぞれ専用の発熱体89が加熱されることになり、よって、第3パリソン部分63の軸方向Xでの温度ムラをより低減することができる。
【0038】
また、このようなコールドパリソン法では、一般に、第1パリソン部分61と第2パリソン部分62は加熱せずに第3パリソン部分63のみを加熱してブロー成形するため、第3パリソン部分63の軸方向中央部に対して軸方向両端部の温度が低くなる傾向がある。これに対し、本実施形態であると、軸方向両端の山部51A,51Eに相当する領域66A,66Eを加熱するための発熱体89A,89Eが設けられ、かつ、該領域66A,66Eとその軸方向中央側の領域との境界に対応する軸方向位置65B,65Eに遮蔽板90B,90Eが設けられているので、温度が低くなりやすい当該領域66A,66Eを局部的に加熱することが可能となり、軸方向Xでの温度ムラを低減することができる。
【0039】
以上のように、本実施形態にかかる加熱方法であると、第3パリソン部分63の軸方向Xでの温度ムラを低減することができるので、蛇腹部の肉厚制御を容易に行うことができ、成形精度を向上することができる。
【0040】
(第2実施形態)
図7は第2実施形態に係る加熱工程を示したものである。
【0041】
この例では、ヒータ87の発熱体89として、大径側取付部3と小径側取付部4にそれぞれ隣接する軸方向両端の第1山部51A及び第5山部51Eに相当する領域66A,66Eを加熱するための第1発熱体89A及び第2発熱体89Eと、これら第1発熱体89Aと第2発熱体89Eの間に設けられた第3発熱体89Fとの3本が設けられている。また、遮蔽板90としては、第1山部51Aと第5山部51Eに相当する領域66A,66Eとその軸方向中央側の領域との境界(即ち、第2谷部50Bと第5谷部50E)に相当する軸方向位置65B,65Eに配設された第1遮蔽板90Aと第2遮蔽板90Eとの2枚が設けられている。
【0042】
そのため、第3パリソン部分63は、第1山部51Aに相当する領域66Aと第5山部51Eに相当する領域66Eについては、それぞれ専用の第1発熱体89A及び第2発熱体89Eにより加熱され、その間の第2、第3及び第4山部51B,51C,51Dに相当する領域66B,66C,66Dについては、1本の第3発熱体89Fにより加熱される。
【0043】
上記のようにコールドパリソン法では、第1山部51Aに相当する領域66Aと第5山部51Eに相当する領域66Eは温度が上昇しにくいので、第1及び第2発熱体89A,89Eにより、これらの領域66A,66Eを局部的に加熱することにより、軸方向Xでの温度ムラを低減することができる。第2実施形態について、その他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0044】
(第3実施形態)
図8は第3実施形態に係る加熱工程を示したものである。
【0045】
この例では、ヒータ87の発熱体89として、第1発熱体89Aと第2発熱体89Eの間に2本の第3発熱体89Fを設けた点で上記第2実施形態と異なる。この場合、第2、第3及び第4山部51B,51C,51Dに相当する領域66B,66C,66Dについては、上下に並べて設けられた2本の第3発熱体89Fにより加熱される。このように本発明では、全ての発熱体間に遮蔽板90を設ける必要はなく、発熱体と遮蔽板との位置関係については種々の変更が可能である。
【0046】
(第4実施形態)
第4実施形態は、上記第1実施形態において、各発熱体89の出力を変更する例である。この例では、各発熱体89の出力を制御可能に構成した上で、発熱体89とこれに対向する第3パリソン部分63の各領域66A〜Eとの距離に応じて、該距離が大きいほど発熱体89の出力を高く設定して、第3パリソン部分63を加熱する。
【0047】
詳細には、第3パリソン部分63がテーパ筒状をなすため、発熱体89とこれに対向する第3パリソン部分63との距離は、上側、即ち第2パリソン部分62に近くなるほど大きくなる。そのため、上側に設けられた発熱体89ほど出力を高く設定する。
【0048】
このように加熱対象となる第3パリソン部分63との距離が遠くなるほど、発熱体89の出力を上げるので、軸方向Xでの温度ムラをより一層低減することができる。ここで、仮に遮蔽板90が設けられていないと、複数の発熱体から放射される熱線同士の重なり度が大きいことから、各発熱体89の出力を変更したとしても、それによる効果は得られない。遮蔽板90を設けることによってはじめて、上記出力変更による温度ムラの低減効果が奏される。
【0049】
(第5実施形態)
第5実施形態は、上記第1実施形態において、各発熱体89の出力を変更する更に他の例である。この例では、各発熱体89の出力を制御可能に構成した上で、蛇腹部5の複数の山部51A〜Eのうち山高さの大きい山部51Cに相当する領域66Cを加熱する発熱体89C(図1参照)の出力を、山高さの小さい他の山部51A,51B,51D,51Eに相当する領域66A,66B,66D,66Eを加熱する発熱体89の出力よりも高く設定して、第3パリソン部分63を加熱する。
【0050】
一般に、ブロー工程において、加熱状態にある第3パリソン部分63は、ブロー外型95の内面に対して、まず谷部50A〜Eに相当する部分が当接し、更に外側に膨らんで山部51A〜Eが形成される。この過程において、第3パリソン部分63はブロー外型95に当接した瞬間から冷却されていくので、山高さの大きい山部は小さい山部よりも最終形状まで膨らみにくい。そのため、山高さの大きい山部51Cに相当する領域66Cを加熱する発熱体89Cの出力を上げることにより、該領域66Cの温度を他の領域よりも上げることができ、そのため、山高さの大きい山部におけるブロー成形性を向上することができる。かかる作用効果についても、第4実施形態と同様、遮蔽板90を設けて、各発熱体89からの熱線同士の重なりを抑制したことに伴うものである。
【0051】
(第6実施形態)
図9は第6実施形態に係る加熱工程を示したものである。この例では、テーパ筒状をなす第3パリソン部分63の形状に応じて各発熱体89の位置を変更した点で、上記第1実施形態と異なる。すなわち、第1実施形態では、各発熱体89を垂直方向に並べたため、第3パリソン部分63との距離が、上側ほど大きくなっている。これに対し、第6実施形態では、第3パリソン部分63の外表面の傾斜に合わせて、上側、即ち第2パリソン部分62側の発熱体89ほど支持体80の軸芯Oに近づくように、各発熱体89が水平方向にずらして配設されている。
【0052】
このように、第3パリソン部分63の外表面との距離が一定になるように各発熱体89の位置を設定したので、各発熱体89の出力が一定であっても、軸方向Xでの温度ムラを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、自動車の等速ジョイントなどに用いられるジョイントブーツを製造するために好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…シャフト 2…アウターケース
3…大径側取付部 4…小径側取付部、
5…蛇腹部 50A〜50E…第1〜第5谷部
51A〜51E…第1〜第5山部 6…パリソン
61…第1パリソン部分 62…第2パリソン部分
63…第3パリソン部分 65B〜E…谷部に相当する軸方向位置
66A〜E…山部に相当する領域 87…ヒータ
89…発熱体 90…遮蔽板
95…ブロー外型 X…軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターケースに取付けられる筒状の大径側取付部と、シャフトに取付けられる筒状の小径側取付部と、両者を一体に連結するものであって複数の山部及び谷部を有する蛇腹部と、を備えたジョイントブーツを製造する方法であって、
前記大径側取付部に対応する第1パリソン部分と、前記小径側取付部に対応する第2パリソン部分と、前記第1パリソン部分と第2パリソン部分を連結する非蛇腹の筒状をなす第3パリソン部分と、を備えるパリソンを成形材料で射出成形するパリソン成形工程と、
前記第1パリソン部分と第2パリソン部分と第3パリソン部分のうち前記第3パリソン部分を径方向外方側からヒータで加熱する工程であって、前記ヒータには、複数の発熱体が前記パリソンの軸方向に並べて設けられるとともに、前記ヒータと第3パリソン部分との間の空間を前記軸方向で複数に区画する遮蔽板が設けられ、該ヒータにより前記第3パリソン部分を加熱する加熱工程と、
加熱状態にある前記第3パリソン部分の周囲を外型で覆い、前記第3パリソン部分の内側に気体を噴射することで前記外型に前記第3パリソン部分を押し付けて前記蛇腹部を成形するブロー工程と、
を含むジョイントブーツの製造方法。
【請求項2】
前記ヒータは、前記発熱体として、前記大径側取付部と小径側取付部にそれぞれ隣接する軸方向両端の山部に相当する領域を加熱するための第1発熱体及び第2発熱体と、これら第1発熱体と第2発熱体の間に設けられた少なくとも1つの第3発熱体と、を備え、前記遮蔽板が、前記軸方向両端の山部に相当する領域とその軸方向中央側の領域との境界に相当する軸方向位置に配設された第1遮蔽板及び第2遮蔽板を含むことを特徴とする請求項1記載のジョイントブーツの製造方法。
【請求項3】
前記遮蔽板は、前記蛇腹部の谷部に相当する軸方向位置に配設されて、前記ヒータと前記第3パリソン部分との間の空間を前記蛇腹部の各山部に相当する領域毎に区画しており、前記発熱体が、前記各領域に対してそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1記載のジョイントブーツの製造方法。
【請求項4】
前記発熱体と当該発熱体に対向する前記第3パリソン部分の各領域との距離に応じて、該距離が大きいほど前記発熱体の出力を高く設定して、前記第3パリソン部分を加熱することを特徴とする請求項3記載のジョイントブーツの製造方法。
【請求項5】
前記蛇腹部の複数の山部のうち山高さの大きい山部に相当する領域を加熱する前記発熱体の出力を、山高さの小さい山部に相当する領域を加熱する前記発熱体の出力よりも高く設定して、前記第3パリソン部分を加熱することを特徴とする請求項3記載のジョイントブーツの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−255507(P2011−255507A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129106(P2010−129106)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】