説明

スキンケアのためのカラヤゴムをベースとする親水性ゲル系

本発明は、化粧品および/またはスキンケア用途のための親水性ゲル系に関する。前記ゲル系は、脱着可能な担体膜と、少なくとも15重量%のカラヤゴムを含み、水濃度が5重量%未満のヒドロゲルとを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
化粧品の分野において用いられるスキンケアクリームは、しばしばヒドロゲルを含む。これらのクリームは、これらが心地よい冷却効果を有するため、消費者に極めて人気がある。しかし、ヒドロゲル含有スキンケアクリームは、これらの半固体製剤が常に、皮膚上に、布地に付着するかまたは気づかないうちに汚れ得る膜を残すという欠点を有すると思われる。
【発明の開示】
【0002】
したがって、本発明の目的は、皮膚上に湿潤膜を残さないヒドロゲルを含む、化粧品分野における局所適用のための製品を提供することにあった。
【0003】
ヒドロゲル自体の他の欠点は、「不感蒸泄」(当該用語は皮膚を介しての水のわずかな蒸発を意味する)によって皮膚から吸収する水分により、ヒドロゲルが次第に膨潤し、これによりその凝集力が失われ、流動を開始することである。
【0004】
したがって、本発明の他の目的は、局所適用した場合に、製品を長期間にわたり適用しても凝集力の許容できない低下をもたらさないヒドロゲルを含む製品を提供することにあった。
【0005】
この目的は、脱着可能な担体膜とヒドロゲルとを含む親水性ゲル系であって、前記ヒドロゲルが、少なくとも15重量%のカラヤゴムを含み、含水量が5重量%未満、好ましくは1重量%未満である、前記ゲル系により達成される。
【0006】
原則的に、ヒドロゲルを形成するのに必要なポリマーは、水性媒体中で、約1〜5重量%の比較的低い濃度でのみ処理することができる。対応するポリマーの一層大きい量は、もはや塗布性を有しない塊状物をもたらし、したがって、担体膜を、マトリックスとしてヒドロゲルを形成するのに必要なポリマーを5重量%より多く含む塊状物で被覆することは、このような塊状物が、十分な流動性を有しないため可能ではない。
【0007】
驚異的なことに、含水量が低く保たれた配合物を用いる場合に、顕著に一層大きい量のカラヤゴムを含む塊状物を処理できることが明らかになった。これにより、カラヤゴムの膨潤を防止することができる。こうして、40重量%までのカラヤゴム含量を有するヒドロゲルマトリックスを、5重量%未満の水、好ましくは1重量%未満の水の存在下で製造できることが見出された。
【0008】
Sterculiaゴムとも呼ばれる用語「カラヤゴム」は、アフリカおよびインド原産のSterculiaceae科の樹木の乾燥浸出液を意味する。これは、ガラクトース、ラムノース、ガラクツロン酸およびグルクロン酸をベースとしており、冷水中でその容積の60〜100倍に膨潤するが冷水に不溶である多糖類である。カラヤゴムは、良好な膜形成剤であり、良好な湿潤接着強度(wet-adhesive strength)を有する。これは、水との均一な分散体を形成するようであり、>3重量%の濃度でもはや流動しない。
【0009】
≧15重量%のカラヤゴム含量を有するヒドロゲルを用いることの利点は、極めて大量の水を吸収した後にも、これらがそのコンシステンシーを維持し、流動を開始しないことである。このため、ヒドロゲルの凝集力は、本発明のゲル系の適用期間全体にわたり維持され、ゲル系を、数日間適用した後でも、皮膚上に残留物を残さずに除去することができる。
【0010】
好ましい態様において、本発明のゲル系は、カラヤゴムをベースとする粘着性ヒドロゲルマトリックスを有し、ここでヒドロゲルは、カラヤゴムに加えて、ゲル系の自動接着(self-adhesive)特性を改善するための少なくとも1種の粘着性ポリマーを含む。
【0011】
粘着性ポリマーは、好ましくは、ポリアクリレート類、ポリジメチルシロキサン類、ポリイソブテン類、ポリイソブチレン類、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー類、樹脂およびこれらのポリマーの組み合わせを含む群から選択される。
【0012】
ヒドロゲル中の粘着性ポリマーの比率は、0.5〜80重量%、好ましくは5〜60重量%、一層好ましくは15〜50重量%、そして特に好ましくは30〜40重量%である。
ヒドロゲルマトリックスは、当該系を皮膚に適用する前に剥離・除去される好適な担体膜上に配置する。
【0013】
最も単純な態様において、マトリックスを、適切に「乾燥して」おり、わずかに接着性であるように調整する場合、およびヒドロゲルが切断可能なコンシステンシーである場合には、脱着可能な担体膜とは反対側のヒドロゲル面上の追加の被覆膜を省略することができる。「乾燥した」マトリックスの用語は、この文脈において、カラヤゴムの比率が少なくとも20重量%であり、水の比率が5重量%未満であるヒドロゲルを意味する。
【0014】
他方、ヒドロゲルマトリックスを、担体膜とは反対の側において、追加の膜で覆うことが可能である。この場合において、追加の被覆膜は、水蒸気透過性であっても、または水蒸気不透過性であってもよい。
【0015】
驚異的なことに、スキンケア物質もまた、カラヤゴムをベースとするヒドロゲル中に導入できることが見出された。スキンケア物質の導入は、皮膚が水分の損失の結果として乾燥するのを防止するために、化粧品および/またはスキンケア用途のためのヒドロゲルにおいて有利である。しかし、スキンケアが意図される一般的に親油性の物質が親水性カラヤゴムと適合性ではないため、相分離が起こる危険がある。
【0016】
驚異的なことに、少なくとも1種の水分吸収物質または少なくとも1種の乳化物質を、少なくとも15重量%のカラヤゴムを含むヒドロゲル中に導入することにより、スキンケア物質、特に親油性物質をヒドロゲル中に、不所望な相分離の発生を伴わずに導入することが可能になる。スキンケア物質を本発明のカラヤゴムをベースとするヒドロゲル中に導入することを可能にする吸収または乳化物質は、シクロデキストリン類およびその誘導体;ケイ酸およびその誘導体、薬用炭、乳化剤および複合乳化剤を含む群から選択される。
【0017】
好ましいシクロデキストリン誘導体は、β−ヒドロキシプロピル−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンおよびヒドロキシプロピル−α−シクロデキストリンを含む群から選択される。
ケイ酸の好ましい誘導体は、高分散二酸化ケイ素および他のケイ酸塩を含む群から選択される。
【0018】
好ましい乳化剤は、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、セチルスルホン酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、アラビアゴム、臭化アルコニウム、臭化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、セチルアルコール、ステアリルアルコール、好ましくは脂肪および脂肪酸の還元により得られる6〜22個の炭素原子を有する高級直鎖状脂肪族アルコール類、多価アルコール類の部分的脂肪酸類、ソルビタンの部分的脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンの部分的脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンの脂肪族アルコールエーテル類、サッカロースの脂肪酸エステル類、ポリグリセロール類の脂肪酸エステル類およびレシチンを含む群から選択される。
【0019】
好ましい複合乳化剤として、セチルステアリルアルコールを用いる。
好ましくは、ヒドロゲルマトリックス中の吸収および/または乳化物質の比率は、0.5〜25重量%である。
【0020】
ヒドロゲルマトリックス中に含有させることができるスキンケア物質は、好ましくは、アロエ、ビタミンE、ビタミンC、デクスパンテノール、グリセロール、プロピレングリコール、ユーカリプトール、メントール、樟脳、松葉油、シネオール、ボルネオールおよびビサボロールを含む群から選択される。
ヒドロゲル中のスキンケア物質(1種または2種以上)の比率は、好ましくは、合計1〜50重量%である。
【0021】
カラヤゴムの膨潤を防止するための本発明のヒドロゲルマトリックスを製造するために、成分を溶解または乳化するための剤として、水を用いず、代わりに有機溶媒を用いる。好適な有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、n−ヘキサン、ヘプタンおよびシクロヘキサンを含む群から選択することができる。
【0022】
本発明のヒドロゲルの好ましい配合は、以下のとおりである:
例1
Durotak 387-2054 36.2%
Al−アセチルアセトネート 0.5%
カラヤゴム 36.7%
Tween 80 6.9%
Atmos 300 6.9%
樟脳 6.2%
メントール 2.9%
松葉油 3.7%
【0023】
例2:
カラヤゴム 19.00%
グリセロール(無水) 29.00%
プロピレングリコール 19.50%
ケイ酸 7.00%
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン 6.50%
メントール 3.45%
松葉油 3.80%
樟脳 4.75%
Durotak 387-2287 7.00%
すべての百分率は、重量%である。
【0024】
例3:
例2による配合のゲル系を調製するために、Durotak 387-2287を提供した。グリセロール、プロピレングリコールおよび松葉油を計量し、中程度の攪拌速度で均質化した。その後、樟脳およびメントールを続けて計量し、両者とも攪拌しながら加え、溶解した。メントールの添加の結果、不透明な溶液が得られ、これに、続けてヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンおよびケイ酸(Sident 22 S)を計量し、攪拌しながら加え、塊状物が均質になるまで攪拌した。攪拌は、塊状物の粘度がもはや変化しなくなるまで継続した。塊状物を、氷浴中で冷却し、攪拌を、最低の攪拌レベルで継続した。次に、カラヤゴムを攪拌しながら加え、均質化し、攪拌器を最低の攪拌レベルのまま放置し、塊状物の冷却を、中断せずに継続した。
【0025】
得られた塊状物を、不織布(Vilmed M1585 x/Hy)上に塗布し、乾燥した。最後に、片面シリコン処理紙を、ヒドロゲルマトリックス上に担体膜として積層した。
本発明のゲル系は、特に、化粧品および/またはスキンケアの分野における局所適用物に適する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱着可能な担体膜とヒドロゲルとを含む化粧品および/またはスキンケア用途のための親水性ゲル系であって、前記ヒドロゲルが、少なくとも15重量%のカラヤゴムを含み、含水量が5重量%未満であることを特徴とする、前記ゲル系。
【請求項2】
ヒドロゲルが、1重量%未満の含水量を有することを特徴とする、請求項1に記載のゲル系。
【請求項3】
ヒドロゲルが、ポリアクリレート類、ポリジメチルシロキサン類、ポリイソブテン類、ポリイソブチレン類、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー類、樹脂およびこれらのポリマーの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種の粘着性ポリマーを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のゲル系。
【請求項4】
ヒドロゲル中の粘着性ポリマーの比率が、0.5〜80重量%、好ましくは5〜60重量%、一層好ましくは15〜50重量%、そして特に好ましくは30〜40重量%であることを特徴とする、請求項3に記載のゲル系。
【請求項5】
ヒドロゲルマトリックスが、担体膜とは反対の側において、水蒸気透過性または水蒸気不透過性の膜で覆われていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のゲル系。
【請求項6】
ヒドロゲルが、シクロデキストリン類およびその誘導体;ケイ酸およびその誘導体、薬用炭、乳化剤および複合乳化剤を含む群から選択される少なくとも1種の水分吸収または乳化物質を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のゲル系。
【請求項7】
シクロデキストリン誘導体が、β−ヒドロキシプロピル−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンおよびヒドロキシプロピル−α−シクロデキストリンを含む群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載のゲル系。
【請求項8】
ケイ酸誘導体が、高分散二酸化ケイ素であることを特徴とする、請求項6または7に記載のゲル系。
【請求項9】
乳化剤が、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、セチルスルホン酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、アラビアゴム、臭化アルコニウム、臭化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、セチルアルコール、ステアリルアルコール、6〜22個の炭素原子を有する高級直鎖状脂肪族アルコール類、多価アルコール類の部分的脂肪酸類、ソルビタンの部分的脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンの部分的脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンの脂肪族アルコールエーテル類、サッカロースの脂肪酸エステル類、ポリグリセロール類の脂肪酸エステル類およびレシチンを含む群から選択されることを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載のゲル系。
【請求項10】
複合乳化剤がセチルステアリルアルコールであることを特徴とする、請求項6〜9のいずれかに記載のゲル系。
【請求項11】
ヒドロゲル中の吸収および/または乳化物質の比率が、0.5〜25重量%であることを特徴とする、請求項6〜10のいずれかに記載のゲル系。
【請求項12】
ヒドロゲルが、少なくとも1種のスキンケア物質を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載のゲル系。
【請求項13】
スキンケア物質が、アロエ、ビタミンE、ビタミンC、デクスパンテノール、グリセロール、プロピレングリコール、ユーカリプトール、メントール、樟脳、松葉油、シネオール、ボルネオールおよびビサボロールを含む群から選択されることを特徴とする、請求項12に記載のゲル系。
【請求項14】
ヒドロゲル中のスキンケア物質の比率が、合計1〜50重量%であることを特徴とする、請求項12または13に記載のゲル系。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載のゲル系の、化粧品および/またはスキンケア分野における局所適用物のための使用。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれかに記載のゲル系の製造方法であって、成分を溶解および/または乳化させるための剤として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパンジオール、酢酸エチル、n−ヘキサン、ヘプタンおよびシクロヘキサンを含む群から好ましくは選択される有機溶媒を用いることを特徴とする、前記方法。

【公表番号】特表2008−529981(P2008−529981A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553516(P2007−553516)
【出願日】平成18年1月28日(2006.1.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000748
【国際公開番号】WO2006/081996
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】