説明

スクリュー炭化炉

スクリュー炭化炉のスクリューコンベヤを接続する接続シュートを加熱槽内部に設けにあたり、スクリューコンベヤの熱膨張を許容でき、且つ分解や点検が容易な構造を提供する。すなわち、本発明のスクリュー炭化炉は加熱槽A内に略水平に設けた複数のスクリューコンベヤ4と、隣接した上段及び下段のスクリューコンベヤを前記加熱槽の内部で接続する接続シュート5とを有し、前記スクリューコンベヤ4により被炭化物を順次搬送しながら加熱して炭化する炭化炉において、前記接続シュート5は、上段と下段のスクリューコンベヤ(4aと4b;4bと4c;又は4cと4d)の外套の一端部をそれぞれ差し込んで摺動可能とする該コンベヤの外套よりやや大きめの差込口11、14を有すると共に、被炭化物を前記上段のスクリューコンベヤから前記下段のスクリューコンベヤ(4aから4b、4bから4c、4cから4d)へ落下させる通路を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、下水処理工程等から排出される汚泥、畜糞などの畜産廃棄物、その他の有機系廃棄物を炭化処理して土壌改良剤、肥料、活性炭代替物として有効利用するための炭化物製造装置に関する。
【背景技術】
従来、下水処理工程等から排出される汚泥は、多くの場合、焼却された後、埋め立て処分されている。近年、処分地の不足や資源の有効利用に対する意識の高まりから、汚泥や畜産廃棄物をコンポスト化して有効利用することも行われているが、季節によっては製造したコンポストが十分さばききれないと言う問題が生じている。そこで、最近では減容に優れ、木炭と同様な性状を持つ炭化汚泥を生成する炭化処理が注目されている。
炭化炉には汚泥等の被炭化物を直接加熱するキルン炉と低酸素雰囲気下に保った容器を間接加熱するキルン式やスクリュー式の炭化炉があり、炭化物の品質制御性や排気ガス性状は、間接加熱炉が優れている。
スクリュー式炭化炉は、加熱槽を貫通するスクリューコンベヤに供給した被炭化物を搬送しながら、被炭化物を低酸素雰囲気下で熱分解し、乾留ガスを発生させその残渣を炭化物とする。
スクリュー式炭化炉は、加熱槽内部に上下に複数のスクリューコンベヤを配列し、被炭化物を最上部のスクリューコンベヤから順次下部のスクリューコンベヤに落下させるが、上下のスクリューコンベヤを接続して密閉下で落下させるシュートを加熱槽外部に設ける(例えば、実用新案登録第3009966号、特許第2973085号)場合と、加熱槽内部に設ける(例えば、特許第3077802号、特許第3359307号)場合がある。
スクリュー式炭化炉の接続シュートを加熱槽外部に設ける場合、密閉構造、メンテナンスを考慮した接続が、比較的容易に設計できるが、シュートの温度が加熱槽内部より低くなるから、乾留ガス中のタール分がシュート表面に析出するトラブルが起き易い。
一方、接続シュートを加熱槽内部に設ける場合、温度低下によるタールの析出は避けられるが、高熱下で密閉するシュートの設計は難しい問題があった。
【発明が解決しようとする課題】
スクリュー式炭化炉の接続シュートを加熱槽内部に設ける場合、スクリューコンベヤ外套および接続シュートは500〜800℃に加熱され、熱膨張によって延びるから、上下のスクリューを密閉シュートで連結する機構には工夫が必要となる。また、日常および補修時のメンテナンスを考えると、スクリューコンベヤやシュートは取り外しやすい接続機構とすることが望ましい。
本発明の目的は、加熱槽内部に設けた接続シュートとコンベヤの熱膨張を考慮し且つ分解や点検が容易な接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
本発明のスクリュー炭化炉は、加熱槽内に設けた上段のスクリューコンベヤと下段のスクリューコンベヤを加熱槽内部で接続する手段において、上段と下段のスクリューコンベヤの外套を差し込んで摺動可能とする接続シュートを設け、加熱槽に固定して被炭化物を上段から下段へ落下させることを特徴とする。
すなわち、本発明は加熱槽内に略水平に設けた複数のスクリューコンベヤ内を被炭化物を搬送しながら加熱して炭化する炉であって、上段のスクリューコンベヤと下段のスクリューコンベヤを加熱槽内部で接続する手段において、上段と下段のスクリューコンベヤの外套を差し込んで摺動可能とする該コンベヤの外套よりやや大きめの接続口を有し、加熱槽に固定して被炭化物を上段から下段へ落下させるシュートを設けたことを特徴とするスクリュー炭化炉を提供する。
好ましくは、シュートに差し込むスクリューコンベヤ外套の一端を加熱槽に固定する。
以下、図面を参照して本発明の好ましいスクリュー炭化炉の実施の形態を詳細に説明するが、例示であって発明を限定するものではない。
(好ましい実施例の説明)
図1は本発明の実施例によるスクリュー炭化炉の概要を示し、炭化炉1は、耐熱絶縁性の炉壁7により囲まれた加熱槽Aに互いに平行に離間してほぼ水平に延びた複数のスクリューコンベヤ4(この例では上から順に4本のスクリューコンベヤ4a、4b、4c、4d。一般に2〜6本)を有し、スクリューコンベヤ4の両端は炉壁に固定した軸受け8により支持されている。各スクリューコンベヤ4はシャフト9と、シャフトに一体のスクリュー20と、円筒形の外套21とから構成されている。スクリューコンベヤ4は伝動装置を介して駆動電動機2により駆動されるようになっている。各スクリューコンベヤ4は被炭化物を矢印の方向に送るように構成されている。上下に隣接したスクリューコンベヤ4の一端部は接続シュート5(この例では上から順に接続シュート5a、5b、5c)により互いに接続されている。さらに、加熱槽Aの下端部には燃焼室Bが形成され、燃焼用ファン3から燃焼ガスが吹き込まれる。さらにスクリューコンベヤ4の外套21の上端面には加熱槽Aに向けて開口する複数のノズル6がそれぞれ形成されている。
乾燥汚泥等の被炭化物は、炭化炉1の最上部に設けたスクリューコンベヤ4aの供給口に定流量で供給される。最上段のスクリューコンベヤ4aに定流量で供給された被炭化物は、接続シュート5a、スクリューコンベヤ4b、接続シュート5b、スクリューコンベヤ4c、接続シュート5c、及び最下段のスクリューコンベヤ4dへと上方から下方へ順次移送され、その製品出口から炭化汚泥として回収される。炭化炉1の下部の加熱ファン3から吹き込んだ燃焼ガスにより、及びノズル6からの乾留ガスの燃焼により、スクリューコンベヤの外套21を650〜850℃で加熱すると、乾燥汚泥は低酸素状態で熱分解、即ち乾留、炭化される。
各段のスクリューコンベヤ5で発生した乾留ガスは、スクリューコンベヤ5の外套上部に設けた複数のノズル6から吐出させ、加熱槽Aで燃焼させて、乾留および乾燥の熱源とする。
図2は接続シュート5の単体図である。各接続シュート5の構造は実質的に同一であるので、炭化炉1の中間部に使用される接続シュート5bについてその詳細を説明する。
接続シュート5bは耐熱材料から製作され、両端が開放している上部水平管部10と、垂直管部12と、両端が開放している下部水平管部13とよりなり、これらの部分は互いに結合されている。上部水平管部10及び下部水平管部13にはそれぞれスクリューコンベヤ4b、4cの外套21の端部を差し込むための差込口11、14を有し、それらの直径は、スクリューコンベヤ4b及び4cの外套21の直径よりも数mm大きくして、差込みによる分解と組み立てを容易とし、またスクリューコンベヤの熱膨張を逃がす働きをする。
スクリューコンベヤ4bの一端において、外套21は軸線方向に移動しないように炉壁7に固定されるので、スクリューコンベヤ4の軸方向の熱膨張は、その他端(外套21がシュート差込口11に挿入される部分)をフリーにして逃がすことができる。スクリューコンベヤ4の内部は発生する乾留ガスで加熱槽Aよりもプラス圧になっているから、スクリューコンベヤ4a、4bの外套21と接続シュート5b間の数mmの間隙から酸素が入り込み、炭化に影響を及ぼすことはない。
なお、各接続シュート5は、上下垂直に取り付けるほか、スクリューコンベヤの上下方向の位置をずらす目的で、角度をつけて取り付けても良い。
接続シュート5はその基板16に形成したボルト孔15を利用して炉壁7に固定することができる。
図3は、炭化炉の中間部分(スクリューコンベヤ4bと4cを含む部分)の拡大図である。スクリューコンベヤ間を繋ぐ接続シュート5は3箇所(最上段のスクリューコンベヤ4aと中段のスクリューコンベヤ4bを接続する第1接続シュート5a、中段のスクリューコンベヤ4bと4cを接続する第2接続シュート5b、及び中段のスクリューコンベヤ4cと最下段のスクリューコンベヤ4dを接続する第3接続シュート5c)あり、左上に接続シュート5aの一部、左下に接続シュート5cの一部、右に接続シュート5bの全体断面を示している。
接続シュート5bはその基板16を炉壁7にボルト18等によって締着することにより加熱槽Aの内部に固定される。基板16は上下の軸受け8、8の基板17を支持する。また、接続シュート5bの外壁側(上下の水平管部の外壁側開口及び垂直管部の外側部分)は炉壁7と同様な断熱材19で塞がれる。
図3の例ではスクリューコンベヤ4bの外套21は左端で接続シュート5aに差し込まれた状態で炉壁7に固定されており、右端で接続シュート5bの差込口11に挿入された状態でフリーとなっている。一方スクリューコンベヤ4cの外套21は右端で接続シュート5bの差込口14に差し込まれた状態で炉壁7に固定されており、左端で接続シュート5cの差込口に挿入された状態でフリーとなっている。構造によっては外套を同じ側で固定し、他側でフリーにすることも可能である。
なお、図3では、接続シュートの有効厚さを炉壁厚みと同じとして描いているが、被炭化物の落下量を勘案した通路が確保できれば、炉壁厚みより厚くても薄くても良い。
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明のスクリュー炭化炉によれば、接続シュートを炉内部に設置することで、温度の低下によって乾留ガス中のタール分がシュートの内面に析出することを防ぎ、且つ、炭化に十分な気密性を保ち、分解組み立ても容易な構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明のスクリュー炭化炉の実施の形態を示す概略的な断面図である。
図2は本発明のシュートの好ましい実施例を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)はスクリューコンベヤの外套側から見た立面図である。
図3は図1の部分拡大断面図であり、スクリューコンベヤとシュートの組み立て状態を示す。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱槽内に略水平に設けた複数のスクリューコンベヤと、隣接した上段及び下段のスクリューコンベヤを前記加熱槽の内部で接続する接続シュートとを有し、前記スクリューコンベヤにより被炭化物を順次搬送しながら加熱して炭化する炭化炉において、前記接続シュートは、上段と下段のスクリューコンベヤの外套の一端部をそれぞれ差し込んで摺動可能とする該コンベヤの外套よりやや大きめの差込口を有すると共に、被炭化物を前記上段のスクリューコンベヤから前記下段のスクリューコンベヤへ落下させる通路を有することを特徴とするスクリュー炭化炉。
【請求項2】
前記接続シュートに差し込むスクリューコンベヤ外套の他端部を加熱槽に固定したことを特徴とする請求項1記載のシュートを設けたスクリュー炭化炉。
【請求項3】
前記接続シュートは外壁側を断熱材で断熱されている請求項1又は2のスクリュー炭化炉。
【請求項4】
前記接続シュートは、両端が開放している上部水平管部と、両端が開放している下部水平管部と、これらの水平管部を互いに結合する管部とから構成され、上部水平管部及び下部水平管部にはそれぞれ前記スクリューコンベヤの外套21の一端部を差し込むための差込口を有し、前記水平管差し込み口の反対側の開口には断熱材壁が設けられ、前記断熱材壁を前記上段及び下段のスクリューコンベヤのシャフトが貫通している請求項1〜3のいずれかのスクリュー炭化炉。
【請求項5】
前記接続シュートは炉壁に締着されている請求項1〜4のいずれかのスクリュー炭化炉。
【請求項6】
前記接続シュートは前記上段及び下段のスクリューコンベヤの軸受けを支持している請求項4のスクリュー炭化炉。

【国際公開番号】WO2004/092303
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−570861(P2004−570861)
【国際出願番号】PCT/JP2003/004703
【国際出願日】平成15年4月14日(2003.4.14)
【出願人】(591162022)巴工業株式会社 (32)
【出願人】(000149310)株式会社大川原製作所 (64)
【Fターム(参考)】