説明

スクロールハウジング及び過給機

【課題】2つの過給機を備えるエンジンシステムにおいて、エンジンへの空気供給モードの切替をスムーズに行うことが可能なタービン用スクロールハウジングを提供する。
【解決手段】タービンインペラを収容する収容空間に流体を供給する第1流路12と、第1流路12に併設されると共に収容空間に接続される第2流路13とを備え、第1流路12の流路端開口12aと第2流路13の流路端開口13aとが同一方向に向けて隣接配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロールハウジング及び過給機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示すように、エンジンと、当該エンジンに接続される2つ過給機とを備えるエンジンシステムが提案されている。
このようなエンジンシステムでは、エンジンが多くの空気を必要とするモードでは2つの過給機を稼働させ、エンジンが多くの空気を必要としないモードでは1つの過給機のみを稼働させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2743609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように2つの過給機を備えるエンジンシステムでは、過給機の稼働状態を変化させるため上述のモードの切替をスムーズに行うことが困難であった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、2つの過給機を備えるエンジンシステムにおいて、エンジンへの空気供給モードの切替をスムーズに行うことが可能なスクロールハウジング提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、過給機に設置されると共に上記過給機が備えるインペラを収容するスクロールハウジングであって、上記インペラを収容する収容空間に接続する第1流路と、上記第1流路に併設されると共に上記収容空間に接続される第2流路とを備え、上記第1流路の流路端開口と上記第2流路の流路端開口とが同一方向に向けて隣接配置されているという構成を採用する。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記第1流路の流路断面積が上記第2流路の流路断面積よりも広いことを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記第1流路の流路端開口と上記第2流路の流路端開口とが同一のフランジに形成されているという構成を採用する。
【0010】
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記第1流路と上記第2流路との合流領域にて、上記第1流路の内壁面と上記第2流路の内壁面とがR面を介して接続されているという構成を採用する。
【0011】
第5の発明は、上記第1〜第4いずれかの発明において、上記第1流路と上記第2流路とが鋭角に接続されて合流しているという構成を採用する。
【0012】
第6の発明は、上記第1〜第5いずれかの発明において、舌部を有するスクロール流路を備え、上記第1流路と上記第2流路との合流領域が上記舌部よりも、上記第1流路の流路端開口及び上記第2流路の流路端開口寄りに設けられているという構成を採用する。
【0013】
第7の発明は、上記第1〜第6いずれかの発明において、上記インペラとしてタービンインペラを収容するタービン用スクロールハウジングであるという構成を採用する。
【0014】
第8の発明は、上記第1〜第6いずれかの発明において、上記インペラとしてコンプレッサインペラを収容するコンプレッサ用スクロールハウジングであるという構成を採用する。
【0015】
第9の発明は、インペラを囲うスクロールハウジングを備える過給機であって、上記スクロールハウジングとして上記第1〜第8いずれかの発明であるスクロールハウジングを備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、インペラを収容する収容空間に対して、第1流路と、当該第1流路と併設される第2流路とが接続されている。
このため、本発明のスクロールハウジングをタービン用スクロールハウジングとして用いる場合には、2経路からタービンに対してスムーズに流体を供給することができる。
例えば、本発明のタービン用スクロールハウジングを有する過給機よりも上流側に配置されたタービンを通過する流路と、当該タービンをバイパスするバイパス流路とが存在する場合には、バイパス流路に第1流路を接続し、タービンを通過する流路に第2流路を接続することで、タービンを通過する流路とバイパス流路との2経路から排出される流体を同時に受け取ることができる。このため、上流側のタービンに僅かに流体を供給しながらバイパス流路に流体を流すことが可能となる。
したがって、本発明によれば、1つの過給機を主として稼働している場合であっても、もう一方の過給機を僅かに稼働させておくことができ、エンジンへの空気供給モードの切替をスムーズに行うことが可能となる。
【0017】
また、本発明のスクロールハウジングをコンプレッサ用スクロールハウジングとして用いる場合には、併設される2経路から圧縮流体を排出することができるため、コンプレッサからスムーズに流体を排出することができる。
【0018】
また、本発明によれば、第1流路の流路端開口と第2流路の流路端開口とが同一方向に向けて隣接配置されている。このため、第1流路に接続する外部流路と、第2流路に接続する外部流路とを複雑に引き回すことなく、2経路から排出される流体を同時に受け取ることができる。
したがって、流体の流れがスムーズとなり、圧力損失が少なくなるため、これによってもエンジンへの空気供給モードの切替をスムーズに行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態におけるタービン用スクロールハウジングを備えるエンジンシステムの概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるタービン用スクロールハウジングを含む斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるタービン用スクロールハウジングの斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるタービン用スクロールハウジングの内部構造を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態におけるタービン用スクロールハウジングの内部構造を示す拡大図である。
【図6】本発明の一実施形態におけるタービン用スクロールハウジングにおける排気ガスの流れを説明する説明図である。
【図7】本発明の一実施形態におけるタービン用スクロールハウジングの設計方法を説明するフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態におけるタービン用スクロールハウジングの変形例を示す内部構造図である。
【図9】本発明の一実施形態におけるコンプレッサ用スクロールハウジングの内部構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係るスクロールハウジングの一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。また、以下の説明において、本発明のスクロールハウジングをタービン用スクロールハウジングに適用した例について説明する。
【0021】
まず、図1を参照して、本実施形態のタービン用スクロールハウジングを用いる過給機を備えるエンジンシステムについて説明する。
図1は、エンジンシステムS1の概略構成を示す模式図である。この図に示すように、エンジンシステムS1は、エンジン1と、低圧段過給機2と、高圧段過給機3と、逆止弁4と、インタークーラ5と、制御弁6と、ECU7とを備えている。
【0022】
エンジン1は、車両や船舶に搭載される内燃機関であり、例えば、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等である。
【0023】
低圧段過給機2は、エンジン1から排出された排気ガスY2(流体)に含まれるエネルギを回転動力として回収するタービン2aと、タービン2aで回収した回転動力によって空気Y1を圧縮するコンプレッサ2bと、タービン2aからコンプレッサ2bに回転動力を伝達するシャフト2cとを備えている。
この低圧段過給機2は、エンジン1が多くの空気Y1を必要とする場合であっても、エンジン1が多くの空気Y1を必要としない場合であっても稼働される。
【0024】
高圧段過給機3は、低圧段過給機2と同様に、エンジン1から排出された排気ガスY2に含まれるエネルギを回転動力として回収するタービン3aと、タービン3aで回収した回転動力によって空気Y1を圧縮するコンプレッサ3bと、タービン3aからコンプレッサ3bに回転動力を伝達するシャフト3cとを備えている。
なお、高圧段過給機3のタービン3aは、低圧段過給機2のタービン2aとエンジン1との間に配置されている。また、高圧段過給機3のコンプレッサ3bは、低圧段過給機2のコンプレッサ2bとエンジン1との間に配置されている。
この高圧段過給機3は、低圧段過給機2よりも容量の大きなものであり、原則的にエンジン1が多くの空気Y1を必要とする場合に稼働される。
【0025】
逆止弁4は、高圧段過給機3のコンプレッサ3bをバイパスするバイパス流路の途中に設けられており、低圧段過給機2のコンプレッサ2b側から供給された空気Y1のみを通過させ、高圧段過給機3のコンプレッサ3b側から供給された空気Y1を堰き止める。
【0026】
インタークーラ5は、低圧段過給機2のコンプレッサ2bあるいは当該低圧段過給機2のコンプレッサ2b及び高圧段過給機3のコンプレッサ3bによって圧縮された空気Y1をエンジン1に供給する前に冷却するものである。
【0027】
制御弁6は、高圧段過給機3のタービン3aをバイパスするバイパス流路の途中に設けられており、当該バイパス流路の開閉を制御するものである。
【0028】
ECU(Engine Control Unit)7は、エンジンシステムS1の全体を制御するものであり、エンジン1の回転数等に応じて、エンジン1が空気Y1を多く必要としているか否かを判断して制御弁6を制御する。
【0029】
このようなエンジンシステムS1では、ECU7は、エンジン1が空気Y1を多く必要としているモードであると判断した場合には、図1(a)に示すように、制御弁6にバイパス流路を閉鎖させる。
制御弁6によってバイパス流路が閉鎖されると、エンジン1から排出された排気ガスY2が、高圧段過給機3のタービン3aに供給され、その後低圧段過給機2のタービン2aに供給される。これによって高圧段過給機3のコンプレッサ3b及び低圧段過給機2のコンプレッサ2bが両方とも回転駆動されて両方にて空気Y1が圧縮される。この結果、より多くの空気Y1がエンジン1に供給される。
【0030】
一方、ECU7は、エンジン1が空気Y1を多く必要としていないモードであると判断した場合には、図1(b)に示すように、制御弁6にバイパス流路を開放させる。
制御弁6がバイパス流路を開放すると、エンジン1から排出された排気ガスY2の殆どがバイパス流路によって高圧段過給機3のタービン3aをバイパスする。これによって、低圧段過給機2のコンプレッサ2bのみが回転駆動されてコンプレッサ2bのみで空気Y1が圧縮される。そして、低圧段過給機2のコンプレッサ2bで圧縮された空気Y1は、逆止弁4を通過してエンジン1に供給される。
【0031】
そして、エンジンシステムS1は、本実施形態のタービン用スクロールハウジング10を低圧段過給機2のタービン2aに備えている。
以下、図2〜図6を参照して本実施形態のタービン用スクロールハウジング10について説明する。
【0032】
図2は、本実施形態のタービン用スクロールハウジング10と、高圧段過給機3のタービン3aが備えるタービン用スクロールハウジング20と、バイパス流路30と、接続流路40とを示した斜視図である。また、図3は、本実施形態のタービン用スクロールハウジング10のみを示す斜視図である。また、図4は、本実施形態のタービン用スクロールハウジング10の内部構造を示す図である。
【0033】
本実施形態のタービン用スクロールハウジング10は、制御弁6が設けられたバイパス流路30と、高圧段過給機3のタービン3aから排出された排気ガスY2を低圧段過給機2のタービン2aに供給するための接続流路40とを間に挟んで高圧段過給機3のタービン3aが備えるタービン用スクロールハウジング20と接続されている。なお、図2においては、制御弁6を簡略化して図示している。
【0034】
図3及び図4に示すように、本実施形態のタービン用スクロールハウジング10は、タービンインペラを収容する収容空間Rと、吐出開口11aを有すると共にタービンインペラの軸方向から見て収容空間Rの周りに配設されるスクロール流路11と、スクロール流路11を介して収容空間Rに排気ガスY2を供給する第1流路12と、第1流路12に併設されると共にスクロール流路11を介して収容空間に接続される第2流路13とを備えている。
なお、より詳細には、スクロール流路11と収容空間Rとの間には、排気ガスY2の流速を速めるためのノズル流路が設けられている。
【0035】
第1流路12は、制御弁6が設置されたバイパス流路30と接続されており、制御弁6がバイパス流路30を開放した際には排気ガスY2が供給される。
【0036】
第2流路13は、接続流路40と接続されており、高圧段過給機3のタービン3aから排出された排気ガスY2が供給される。
なお、図4(b)に示すように、スクロール流路11は、排気ガスYの流れを案内する舌部11bを備えている。そして、第1流路12と第2流路13との合流領域が舌部11bよりも、第1流路12の流路端開口12a及び第2流路13の流路端開口13a寄りに設けられている。つまり、第1流路12と第2流路13とは、排気ガスYの流れ方向において舌部11bよりも上流側で接続されている。
このような第2流路13に排気ガスY2が供給されると、排気ガスY2は、第2流路13、スクロール流路11、ノズル流路、収容空間Rの順に流れる。
【0037】
なお、舌部11bの位置における流れを安定させるため、スクロール流路11と第2流路13との合流位置は、出来る限り舌部11bよりも上流となるように配置することが望ましい。
【0038】
また、第2流路13は、図5に示すように、タービン用スクロールハウジング10の大型化を防ぎ、かつ、排気ガスY2の流れをスムーズなものとするために、第1流路12に対して斜め方向から接続されている。つまり、第1流路12と第2流路13とが鋭角に接続されて合流している。
このように第1流路12と第2流路13とが鋭角に接続されて合流されることによって、第2流路13の突出を抑えると共に圧力損失の最小限に抑えることが可能となる。
【0039】
なお、図5に示すように、スクロール流路11と第2流路13との合流角度α及びスクロール流路11と第1流路12との合流角度βは、合流による圧力損失低減のため、60°以下であることが望ましい。さらに合流角度αと合流角度βとは等しいことがより好ましい。つまり、第1流路12から合流領域への流入角度と第2流路13から合流領域への流入角度の差は出来るだけ小さいことが望ましい。
【0040】
また、第1流路12と第2流路13との合流領域にて、第1流路12の内壁面と第2流路13の内壁面とがR面15を介して接続されている。
このR面の曲率半径は、5mm以上に設定されていることが好ましい。この理由は、流体力学的には、合流領域における圧力損失を低下させ、構造力学的には応力集中係数が小さくなるため、熱応力を低下させる効果があるためである。
【0041】
さらに、図5に示すように、タービン用スクロールハウジング10は、第1流路12の壁部とスクロール流路11の壁部及び第2流路13の壁部とスクロール流路11の壁部とが、滑らかにつながるような形状であることが望ましい。これにより、合流領域での圧力損失を減らし、タービン効率を向上させる効果がある。
【0042】
また、第1流路12の断面積は、第2流路13の断面積よりも広く設定されている。つまり、高圧段過給機3のタービン3aを介さずに勢いよく供給される排気ガスY2を容易にタービンインペラに供給できるように構成されている。
【0043】
また、第1流路12と第2流路13とは、スクロール流路11と接続する前に一部が重なり合う。ここで、図4(b)におけるD−D線断面である図4(c)と、図4(b)のF−F線断面である図4(d)に示すように、第1流路12と第2流路13とは、流路断面形状において、互いに重なり合う領域以外はその形状を維持している。
このように第1流路12と第2流路13とが互いに重なり合う領域以外で断面形状を維持することによって、図4(c)及び図4(d)にて仮想線で示すような楕円形状の流路とするよりも、排気ガスY2の流れがスムーズとなり、流体性能上の効率を向上させることができる。
【0044】
そして、本実施形態のタービン用スクロールハウジング10においては、図3(b)に示すように、第1流路12の流路端開口12aと第2流路13の流路端開口13aとが同一のフランジ14に形成されており、同一方向に向けて隣接配置されている。
【0045】
このような構成を採用する本実施形態のタービン用スクロールハウジング10においては、図1に示す制御弁6が閉鎖している場合には図6(a)に示すように第2流路13に排気ガスY2が流れ、図1に示す制御弁6が開放している場合には図6(b)に示すように第1流路12に排気ガスY2が流れる。
【0046】
そして、本実施形態のタービン用スクロールハウジング10によれば、タービンインペラを収容する収容空間に対して、排気ガスY2の供給を行う第1流路12と、当該第1流路12と併設されると共にタービンインペラの収容空間に接続される第2流路13とを備えている。
このため、本実施形態のタービン用スクロールハウジング10によれば、バイパス流路30と接続流路40との両方から同時に排気ガスY2を供給することができる。
【0047】
よって、図1(b)に示すように、エンジンシステムS1において、制御弁6がバイパス流路を開放した際に、僅かに排気ガスY2を高圧段過給機3のタービン3aに供給することができる。
したがって、本実施形態のタービン用スクロールハウジング10によれば、低圧段過給機2を主として稼働している場合であっても、もう高圧段過給機3の稼働を維持しておくことができモードの切替をスムーズに行うことが可能となる。
【0048】
また、本実施形態のタービン用スクロールハウジング10によれば、第1流路12の流路端開口12aと第2流路13の流路端開口13aとが同一方向に向けて隣接配置されている。このため、第1流路12に接続するバイパス流路30と、第2流路13に接続する接続流路40とを複雑に引き回すことなく、バイパス流路30及び接続流路40から排出される排気ガスY2を同時に受け取ることができる。
したがって、排気ガスY2の流れがスムーズとなり、圧力損失が少なくなるため、これによってもモードの切替をスムーズに行うことが可能となる。
【0049】
また、本実施形態のタービン用スクロールハウジング10においては、第1流路12の流路断面積が第2流路13の流路断面積よりも広い。このため、高圧段過給機3のタービン3aを介さずに勢いよく供給される排気ガスY2を容易にタービンインペラに供給でき、第1流路12において圧力損失が高くなることを抑止することができる。
【0050】
また、本実施形態のタービン用スクロールハウジング10においては、第1流路12の流路端開口12aと第2流路13の流路端開口13aとが同一のフランジ14に形成されている。このため、バイパス流路30及び接続流路40を接続する作業の際に、第1流路12の流路端開口12aと第2流路13の流路端開口13aとの位置関係がずれることを防止し、接続作業の作業性を向上させることができる。
【0051】
なお、以上のような構成を有するタービン用スクロールハウジング10の設計は、例えば、図7に示すように、まずスクロール流路11の形状(スクロール領域から舌部11bまでの形状)を設定する(ステップS1)。
続いて、第1流路12の流路端開口12aと第2流路13の流路端開口13aとの形状及び位置を設定する(ステップS2)。
続いて、第1流路12と第2流路13との合流領域の位置を舌部11bよりも上流側において設定する(ステップS3)。
続いて、スクロール流路11と第1流路12と第2流路13とが滑らかに接続されるように、スクロール流路11と第1流路12と第2流路13との接続部位形状設定を行う(ステップS4)。
そして、スクロール流路11と第2流路13との合流角度α及びスクロール流路11と第1流路12との合流角度βとが60°以下であるかを判定し(ステップS5)、合流角度α及び合流角度βが60°以下となるまでステップS3〜ステップS5を繰り返す。
最後に、第1流路12の内壁面と第2流路13の内壁面とを接続するR面15の形状設定を行う(ステップS6)。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0053】
例えば、図8に示すように、上記実施形態のタービン用スクロールハウジング10は、第2流路13を、第1流路12を介して供給される過剰な排気ガスY2をタービンインペラに供給することなくバイパスさせるウエストゲート機構のバイパス流路として用いることもできる。
この場合には、第2流路13を流れる排気ガスY2の方向が、図8に示すように、上記実施形態と反対方向に変化し、第2流路13の流路端開口13aの外側に配置されるウエストゲートバルブWによって排気ガスY2をバイパスするか否かが決定される。
【0054】
一般的には、ウエストゲート機構のバイパス流路の出口開口は、タービン用スクロールハウジングの出口開口の近傍に配置されることが多いが、タービン用スクロールハウジングの出口開口の近傍に配管を引き回すスペースがない場合には、ウエストゲート機構を配置することが困難となる。
これに対して、上記実施形態のタービン用スクロールハウジング10によれば、バイパス流路の出口開口となる第2流路13の流路端開口13aが、タービン用スクロールハウジングの入口開口となる第1流路12の流路端開口12aの近傍に配置されることになる。
このため、タービン用スクロールハウジングの出口開口の近傍に配管を引き回すスペースがない場合であってもウエストゲート機構を採用することが可能となる。
【0055】
また、例えば、図9のように、本発明のスクロールハウジングを、インペラとしてコンプレッサインペラを収容するコンプレッサ用スクロールハウジング50として用いることも可能である。この場合は、図9に示すように、上記タービン用スクロールハウジング10で説明した排気ガスY2の流れとは逆に空気Y1が流れることとなる。
このようにスクロールハウジングをコンプレッサ用スクロールハウジング50として用いる場合には、併設される2経路から圧縮された空気Y1(流体)を排出することができるため、コンプレッサからスムーズに空気Y1を排出することができる。
【符号の説明】
【0056】
1……エンジンシステム、2……低圧段過給機(過給機)、10……タービン用スクロールハウジング(スクロールハウジング)、11a……舌部、12……第1流路、12a……流路端開口、13……第2流路、13a……流路端開口、15……R面、50……コンプレッサ用スクロールハウジング(スクロールハウジング)、Y1……空気(流体)、Y2……排気ガス(流体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機に設置されると共に前記過給機が備えるインペラを収容するスクロールハウジングであって、
前記インペラを収容する収容空間に接続する第1流路と、前記第1流路に併設されると共に前記収容空間に接続される第2流路とを備え、前記第1流路の流路端開口と前記第2流路の流路端開口とが同一方向に向けて隣接配置されていることを特徴とするスクロールハウジング。
【請求項2】
前記第1流路の流路断面積が前記第2流路の流路断面積よりも広いことを特徴とする請求項1記載のスクロールハウジング。
【請求項3】
前記第1流路の流路端開口と前記第2流路の流路端開口とが同一のフランジに形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のスクロールハウジング。
【請求項4】
前記第1流路と前記第2流路との合流領域にて、前記第1流路の内壁面と前記第2流路の内壁面とがR面を介して接続されていることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のスクロールハウジング。
【請求項5】
前記第1流路と前記第2流路とが鋭角に接続されて合流していることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のスクロールハウジング。
【請求項6】
舌部を有するスクロール流路を備え、
前記第1流路と前記第2流路との合流領域が前記舌部よりも、前記第1流路の流路端開口及び前記第2流路の流路端開口寄りに設けられている
ことを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載のスクロールハウジング。
【請求項7】
前記インペラとしてタービンインペラを収容するタービン用スクロールハウジングであることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載のスクロールハウジング。
【請求項8】
前記インペラとしてコンプレッサインペラを収容するコンプレッサ用スクロールハウジングであることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載のスクロールハウジング。
【請求項9】
インペラを囲うスクロールハウジングを備える過給機であって、
前記スクロールハウジングとして請求項1〜8いずれかに記載のスクロールハウジングを備えることを特徴とする過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−255418(P2012−255418A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130111(P2011−130111)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】