説明

スクロール圧縮機を備えた超低温冷凍装置

【課題】スクロール圧縮機を含む超低温冷凍装置において、スクロール圧縮機から吐出される冷媒ガス中に混入したオイルを有効に分離回収し、蒸発温度が所定の冷凍温度以下であることを検知することにより、その分離回収したオイルを圧力差によってスクロール圧縮要素へ吸引することにより、潤滑不良を解消する。
【解決手段】スクロール圧縮機で圧縮した冷媒ガスはオイルセパレータ、凝縮器、レシーバタンク、膨張弁、蒸発器に流入し、再びスクロール圧縮機で圧縮される冷媒循環回路を構成し、レシーバタンクの液冷媒またはレシーバタンクを出た液冷媒の一部をスクロール圧縮要素部へ供給し、オイルセパレータで分離されたオイルは、蒸発温度が所定の冷凍温度以下になれば、スクロール圧縮要素部の低圧部または中間圧部へ吸引させることにより、スクロール圧縮要素部の温度上昇の抑制と潤滑不良を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超低温冷凍装置におけるスクロール圧縮機の良好な潤滑を得る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
スクロール圧縮機は、密閉容器内に電動機構成の電動要素とこの電動要素によって駆動されるスクロール圧縮要素とを収容し、スクロール圧縮要素は、鏡板の表面に渦巻き状のラップが立設された固定スクロールと、固定スクロールに対向配置され鏡板の表面に渦巻き状のラップが立設され電動要素の回転軸の回転に伴って旋回運動する揺動スクロールとを備えている。固定スクロールのラップと揺動スクロールのラップとが互いに偏心して、この偏心方向の線上で相互接触による噛み合わせにて閉じ込められた圧縮空間が形成され、この圧縮空間は、電動要素の回転軸の回転に伴う揺動スクロールの旋回運動により、外側から内側に向かって次第に縮小される。これにより低圧室、中間圧室、及び高圧室を形成し、圧縮空間の外周部に連通した吸入管から低圧室への冷媒ガスの吸込口に吸い込んだ冷媒ガスを順次、低圧室、中間圧室、及び高圧室にて圧縮しつつ、高圧室と連通するように中心部に形成した吐出ポートから吐出する構成である。
【0003】
このように、スクロール圧縮機によって圧縮され吐出ポートから吐出された冷媒が、凝縮器で凝縮され、膨張弁で減圧膨張された液体冷媒が蒸発器で蒸発し、再びスクロール圧縮機へ帰還する冷媒循環回路を構成した冷凍装置において、内部低圧型スクロール圧縮機を採用して、スクロール圧縮要素の圧縮空間のうち、凝縮器を出た液冷媒の一部を中間圧室へインジェクションすることにより、スクロール圧縮機の吐出ガス温度を制御するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−047383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、スクロール圧縮機で冷媒を圧縮する場合、スクロール圧縮機中の潤滑用オイルの一部がガス冷媒に混入した状態で吐出され、冷凍装置を構成する冷媒循環回路中に入る。特に、スクロール圧縮機を含む冷凍装置において、膨張弁で減圧膨張された冷媒が導入される蒸発器での冷媒蒸発温度を超低温帯である−40℃以下の温度帯、例えば、−40℃〜−60℃程度の超低温の冷凍装置を構成する場合、膨張弁による絞り効果によって、冷凍装置を構成する冷媒循環回路中の冷媒循環量が少なくなる。このため、スクロール圧縮要素の圧縮空間の入り口へ吸入される冷媒ガス量が減少し、これに伴って冷媒ガスと共に圧縮空間の入り口へ吸入される潤滑用オイルの量も減少するため、スクロール圧縮要素部の潤滑不良となる。
【0006】
また、上記のように、スクロール圧縮要素へ吸入される冷媒ガス量の減少に伴うオイル量の減少によって、スクロール圧縮要素への潤滑用オイルの供給が不足した場合には、圧縮空間を形成する固定スクロールのラップと揺動スクロールのラップとの相互の摺接による噛み合わせ部のシールに必要なオイルの供給量が不足し、この部分のシールに必要な油膜の形成が困難となり、この部分からの圧縮ガス漏れが増加して冷凍能力の低下を招く。
【0007】
更に、スクロール圧縮要素部の温度上昇を抑制するために、特許文献1のように、液冷媒の一部をスクロール圧縮要素の中間圧部分へ供給するリキッドインジェクション回路を備えた場合、このリキッドインジェクションされる液冷媒によって、圧縮空間のうちの中間圧室のオイルも流され、このスクロール圧縮要素のオイル潤滑が不足することが懸念される。
【0008】
上記のように、−40℃〜−60℃程度の超低温の冷凍装置を構成する場合、スクロール圧縮要素の圧縮空間の入り口へ吸入される冷媒ガス量の減少に伴うオイル吸入量の減少と、更に、リキッドインジェクションされる液冷媒によって生じる中間圧室のオイル不足により、スクロール圧縮要素のオイル潤滑不足が懸念される。
【0009】
本発明はこのような点に鑑み、内部低圧型スクロール圧縮機を採用して超低温冷凍装置を構成する場合、スクロール圧縮要素の温度上昇を抑制するために、液冷媒の一部をスクロール圧縮要素の中間圧部分へ供給するリキッドインジェクション回路を備えた場合において、蒸発器での冷媒蒸発温度に対応してスクロール圧縮要素へオイルを補給するシステムを採用することにより、スクロール圧縮要素の潤滑不足を解決する技術を提供するものである。
【0010】
そのために、本発明は、スクロール圧縮機を含む超低温冷凍装置において、スクロール圧縮機から吐出される冷媒ガス中に混入したオイルを有効に分離回収し、蒸発温度が所定の冷凍温度以下であることを検知することにより、その分離回収したオイルを圧力差によってスクロール圧縮要素へ吸引することにより、上記のような潤滑不良を解消するものである。
【0011】
この一つの手段として、本発明の超低温冷凍装置は、スクロール圧縮機で圧縮した冷媒ガスはその中に含まれたオイルがオイルセパレータにて分離され、オイルが分離された冷媒ガスは凝縮器で凝縮された後、レシーバタンクへ入り、このレシーバタンクを出た液冷媒は膨張弁を通って被冷凍室を超低温に冷凍するための蒸発器に流入して蒸発し、この蒸発器を出た冷媒は再びスクロール圧縮機で圧縮される冷媒循環回路を構成している。この構成において、レシーバタンクに溜まった液冷媒の一部、またはレシーバタンクを出て膨張弁に入るまでの液冷媒の一部をスクロール圧縮要素部へ供給して、このスクロール圧縮要素部の温度上昇を抑制し、一方、オイルセパレータで分離されたオイルは、蒸発温度が所定の冷凍温度以下になれば、スクロール圧縮要素部の低圧部または中間圧部へ吸引させることにより、スクロール圧縮要素部の潤滑不良を防止するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明は、縦型の密閉容器内に、電動要素と、前記電動要素によって駆動されるスクロール圧縮要素が収容され、前記密閉容器内底部にオイル溜めを設け、前記電動要素の回転軸の下部に前記回転軸の回転によって前記オイル溜めのオイルを前記スクロール圧縮要素へ供給するオイルポンプを設け、前記スクロール圧縮要素に連通した吸入管から吸い込んだ冷媒ガスを前記スクロール圧縮要素にて圧縮し、前記密閉容器外に吐出するスクロール圧縮機を備え、前記吐出される冷媒ガスが、オイルセパレータ、凝縮器、液冷媒を溜めるレシーバタンクを経て膨張弁にて減圧膨張された液冷媒を蒸発器で蒸発した後、再び前記吸入管から前記スクロール圧縮要素へ帰還する冷媒循環回路を形成した超低温冷凍装置において、前記オイルセパレータで冷媒から分離されたオイルを前記オイル溜めへ供給するオイルリターン回路と、前記レシーバタンクに溜まった液冷媒の一部または前記レシーバタンクを出た冷媒を過冷却器で過冷却した液冷媒の一部を前記スクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部分へ供給するリキッドインジェクション回路と、前記蒸発器の冷媒蒸発温度が所定の冷凍温度以下において前記オイルセパレータで冷媒から分離されたオイルを前記スクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部分へ供給するオイルインジェクション回路を備えたことを特徴とするスクロール圧縮機を備えた超低温冷凍装置。
【0013】
第2発明は、第1発明において、前記オイルリターン回路は前記オイル溜めのオイルレベル検知部の検知に基づき前記オイルリターン回路を開閉するオイル用電磁弁を備え、前記リキッドインジェクション回路は前記スクロール圧縮要素にて圧縮された吐出冷媒ガスの温度を検出する温度検知部の検知に基づき前記リキッドインジェクション回路を開閉する冷媒用電磁弁を備え、前記オイルインジェクション回路は、前記蒸発器の冷媒蒸発温度が所定の冷凍温度以下において前記オイルインジェクション回路を開いて前記スクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部分へのオイル供給を可能とするオイルインジェクション用電磁弁を備えたことを特徴とするスクロール圧縮機を備えた超低温冷凍装置。
【0014】
第3発明は、第1発明または第2発明において、前記リキッドインジェクション回路と前記オイルインジェクション回路が並列回路構成であることを特徴とするスクロール圧縮機を備えた超低温冷凍装置。
【0015】
第4発明は、第1発明または第2発明において、前記リキッドインジェクション回路と前記オイルインジェクション回路が並列回路構成であり、前記リキッドインジェクション回路を流れる液冷媒と前記オイルインジェクション回路を流れるオイルが合流して、前記スクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部分へ供給されることを特徴とするスクロール圧縮機を備えた超低温冷凍装置。
【0016】
第5発明は、第2発明において、前記冷媒用電磁弁を備えた前記リキッドインジェクション回路と、前記オイルインジェクション用電磁弁を備えた前記オイルインジェクション回路が並列回路構成であり、且つ前記冷媒用電磁弁を通過した液冷媒と前記オイルインジェクション用電磁弁を通過したオイルとが合流して、前記スクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部分へ供給されることを特徴とするスクロール圧縮機を備えた超低温冷凍装置。
【0017】
第6発明は、第1発明乃至第5発明のいずれかにおいて、前記オイルインジェクション回路は、その一部または全部がオイル流量を所定の流量に制限するキャピラリチューブ構成であることを特徴とするスクロール圧縮機を備えた超低温冷凍装置。
【0018】
第7発明は、第1発明乃至第6発明のいずれかにおいて、前記蒸発器の冷媒蒸発温度が所定の冷凍温度以下になったことの検知は、前記冷媒蒸発温度を検知する温度検知部、または前記蒸発器の出口から前記スクロール圧縮要素の吸い込み部までの低圧を検知する低圧センサの検知に基づくことを特徴とするスクロール圧縮機を備えた超低温冷凍装置。
【発明の効果】
【0019】
第1発明では、蒸発器での冷媒蒸発温度を超低温とする場合のスクロール圧縮要素の温度上昇は、リキッドインジェクション回路から供給される液冷媒によって抑制されるが、供給される液冷媒によってスクロール圧縮要素のオイルが洗い流される場合でも、オイルインジェクション回路によって、オイルセパレータのオイルがスクロール圧縮要素へ供給されることにより、スクロール圧縮要素のオイル不足による潤滑不良を解消することができる。また、オイル溜めのオイル不足は、オイルリターン回路からオイルセパレータのオイルが供給されることにより解消する。この場合の液冷媒及びオイルの供給は、冷凍装置の圧力差によって行なわれるため、この供給が円滑に行なえるものとなる。
【0020】
第2発明では、オイル用電磁弁、冷媒用電磁弁、オイルインジェクション用電磁弁のそれぞれによる動作によって、蒸発器での冷媒蒸発温度を超低温とする場合のスクロール圧縮要素の温度上昇は、リキッドインジェクション回路から供給される液冷媒によって抑制され、液冷媒によってスクロール圧縮要素のオイルが洗い流される場合でも、オイルインジェクション回路によって、オイルセパレータのオイルがスクロール圧縮要素へ供給されることにより、スクロール圧縮要素のオイル不足による潤滑不良が解消され、また、オイル溜めのオイル不足は、オイルリターン回路により解消される。この場合の液冷媒及びオイルの供給は、冷凍装置の圧力差によって行なわれるため、この供給が円滑に行なえるものとなる。
【0021】
第3発明では、リキッドインジェクション回路とオイルインジェクション回路が並列回路構成であることにより、スクロール圧縮要素の温度上昇を抑制するリキッドインジェクション回路の作用と、スクロール圧縮要素のオイル不足を解消するオイルインジェクション回路の作用が、相互に干渉しない状態で行えるため、動作が安定したスクロール圧縮機となる。
【0022】
第4発明では、リキッドインジェクション回路から供給される液冷媒とオイルインジェクション回路から供給されるオイルが合流して、スクロール圧縮要素へ供給されるため、スクロール圧縮要素部における液冷媒とオイルの供給場所が共通化され、構造が簡素化されると共に、液冷媒とオイルが同時に同じ場所へ供給されるため、スクロール圧縮要素部における温度上昇の抑制とオイル不足を同時に行えるものとなる。
【0023】
第5発明では、オイル用電磁弁、冷媒用電磁弁、オイルインジェクション用電磁弁のそれぞれによる動作によって、スクロール圧縮要素の温度上昇の抑制、スクロール圧縮要素のオイル不足による潤滑不良の解消、及びオイル溜めのオイル不足解消が得られ、且つ、リキッドインジェクション回路から供給される液冷媒とオイルインジェクション回路から供給されるオイルが合流して、スクロール圧縮要素へ供給されるため、スクロール圧縮要素部における液冷媒とオイルの供給場所が共通化され、構造が簡素化されると共に、液冷媒とオイルが同時に同じ場所へ供給されるため、スクロール圧縮要素部における温度上昇の抑制とオイル不足を同時に行えるものとなる。
【0024】
第6発明では、オイルインジェクション回路から供給されるオイル流量を所定の流量に制限することができるため、オイル流量調整弁を設けなくても所定量のオイル供給ができるものとなり、効果的に上記第1発明乃至第5発明と同様の効果を奏することができるものとなる。
【0025】
第7発明では、温度検知部または低圧センサの検知に基づき、所定の冷凍温度以下になったとき、オイルインジェクション回路の電磁弁が開くため、−40℃以下のような超低温動作におけるスクロール圧縮要素のオイル不足状況の検知とそれに基づく動作を的確に行うことができ、上記第1発明乃至第6発明と同様の効果を奏することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る超低温冷凍装置を示す冷媒配管図である。
【図2】本発明に係る内部低圧型のスクロール圧縮機の縦断側面図である。
【図3】本発明に係るスクロール圧縮機を構成する固定スクロールの下面図である。
【図4】本発明に係るスクロール圧縮機の運転時に公転する揺動スクロールと、固定スクロールに形成したインジェクション孔との位置関係を示す図である。
【図5】本発明に係るスクロール圧縮機の運転時に公転する揺動スクロールと、固定スクロールに形成したインジェクション孔との位置関係を示す図である。
【図6】本発明に係るスクロール圧縮機の運転時に公転する揺動スクロールと、固定スクロールに形成したインジェクション孔との位置関係を示す図である。
【図7】本発明に係る超低温冷凍装置の制御装置を示す図である。
【図8】本発明に係る超低温冷凍装置の第2実施例を示す冷媒配管図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の超低温冷凍装置は、縦型の密閉容器内に、電動要素と前記電動要素によって駆動されるスクロール圧縮要素が収容され、前記密閉容器内底部にオイル溜めを設け、前記電動要素の回転軸の下部に前記回転軸の回転によって前記オイル溜めのオイルを前記スクロール圧縮要素へ供給するオイルポンプを設け、前記スクロール圧縮要素に連通した吸入管から吸い込んだ冷媒ガスを前記スクロール圧縮要素にて圧縮し、前記密閉容器外に吐出するスクロール圧縮機を備え、前記吐出される冷媒ガスが、オイルセパレータ、凝縮器、液冷媒を溜めるレシーバタンクを経て膨張弁にて減圧膨張された液冷媒を蒸発器で蒸発した後、再び前記吸入管から前記スクロール圧縮要素へ帰還する冷媒循環回路を形成した超低温冷凍装置において、前記オイルセパレータで冷媒から分離されたオイルを前記オイル溜めへ供給するオイルリターン回路と、前記レシーバタンクに溜まった液冷媒の一部または前記レシーバタンクを出た冷媒を過冷却器で過冷却した液冷媒の一部を前記スクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部分へ供給するリキッドインジェクション回路と、前記蒸発器の冷媒蒸発温度が所定の冷凍温度以下において前記オイルセパレータで冷媒から分離されたオイルを前記スクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部分へ供給するオイルインジェクション回路を備えたことを特徴とするスクロール圧縮機を備えた構成であり、以下にその実施例を図に基づき説明する。
【実施例1】
【0028】
本発明に係るスクロール圧縮機100は、図2に示すように、縦型の密閉容器101内が低圧となるように、スクロール圧縮要素102から密閉容器101内上側に限られた空間として形成された吐出圧力空間111(マフラー室)に高圧冷媒ガスが吐出される内部低圧型のスクロール圧縮機である。
【0029】
密閉容器101は鋼板製であり、上下方向に沿って延びる縦長円筒状の容器本体101Aと、この容器本体101Aの上下両端にそれぞれ溶接固定された椀状のエンドキャップ101B及びボトムキャップ101Cとから構成されている。この密閉容器101内には、下側に駆動手段としての電動要素103が収納され、上側に電動要素103の回転軸105によって駆動されるスクロール圧縮要素102がそれぞれ収納されている。密閉容器101内のスクロール圧縮要素102と電動要素103の間には、上部支持フレーム104(メインフレームという)が収納されており、この上部支持フレーム104には中央に軸受部106とボス収容部122とが形成されている。この軸受部106は回転軸105の先端(上端)側を回転可能に軸支するためのものであり、上部支持フレーム104の一方の面(下側の面)の中央から下方に突出して形成されている。また、ボス収容部122は後述する揺動スクロール115のボス124を収容するためのものであり、上部支持フレーム104の他方の面(上側の面)の中央を下方に凹陥することにより形成されている。
【0030】
電動要素103下部の密閉容器101内には、下部支持フレーム107(ベアリングプレートという)が収納されており、この下部支持フレーム107の中央には軸受け108が形成されている。この軸受け108は、回転軸105の末端(下端)側を軸支するためのものであり、下部支持フレーム107の一方の面(下側の面)の中央から下方に突出して形成されている。そして、下部支持フレーム107の下側の空間、即ち、密閉容器101内の底部は、スクロール圧縮要素102などを潤滑する潤滑油が貯留されるオイル溜め162とされている。
【0031】
回転軸105の先端(上端)には、偏心軸123が形成されている。この偏心軸123は、中心が回転軸105の軸心と偏心して設けられると共に、図示しないスライドブッシュ及び旋回軸受けを介して揺動スクロール115のボス124に、揺動スクロール115を旋回駆動可能に挿入されている。
【0032】
スクロール圧縮要素102は、固定スクロール114と揺動スクロール115とで構成されている。固定スクロール114は、円形状の鏡板116と、この鏡板116の一方の面(下側の表面)に立設されたインボリュート状、又は、これに近似した曲線からなる渦巻き状のラップ117と、このラップ117の周囲を取り囲むように立設された周壁118と、この周壁118の周囲(周壁118の他方の面側(上側))に突出して設けられ、外周縁が全周囲で密閉容器101の容器本体101Aの内面に焼き嵌めされたフランジ119とから一体に構成されている。そして、固定スクロール114は、フランジ119が全周囲で容器本体101Aの内面に焼き嵌め固定されると共に、鏡板116の中央部(固定スクロール114の中心)には、スクロール圧縮要素102にて圧縮された冷媒ガスを密閉容器101内上側に形成された吐出圧力空間111(マフラー室)に連通する吐出孔113が形成されている。係る固定スクロール114は、ラップ117の突出方向を下方としている。固定スクロール114のフランジ119が全周囲で容器本体101Aの内面に焼き嵌め固定されることにより、固定スクロール114によって密閉容器101内が、上部の吐出圧力空間111と下部の空間112に区分される。
【0033】
電動要素103は、密閉容器101に固定された固定子150と、この固定子150の内側に配置され、固定子150内で回転する回転子152とから構成されており、この回転子152の中心に回転軸105が嵌合されている。固定子150は、複数枚の電磁鋼板を積層した積層体から成り、この積層体の歯部に巻装された固定子巻線151を有している。また、回転子152も固定子150と同様に電磁鋼板の積層体で形成されている。
【0034】
また、回転軸105の内部には回転軸105の軸方向に沿って油路105Aが形成されており、この油路105Aは、回転軸105の下端に位置する吸込口161を備え、吸込口161がオイル溜め162に貯留された潤滑油に浸漬されて、潤滑油中に開口している。また、油路105Aには各軸受け106、108に対応する位置に潤滑を給油する給油口(図示せず)が形成されており、係る構成により、回転軸105が回転すると、オイル溜め162に貯留された潤滑油が回転軸105の吸込口161から油路105Aに入り、上方に汲み上げられる。そして、汲み上げられた潤滑油は各給油口等を介して各軸受け106、108やスクロール圧縮要素102の摺動部に供給されることとなる。
【0035】
密閉容器101には、密閉容器101内の下側の空間112内に冷媒を導入するための冷媒導入管145と、スクロール圧縮要素102にて圧縮され、前記吐出孔113から後述する吐出マフラー室128を介して密閉容器101内の上側の吐出圧力空間111に吐出された冷媒を外部に吐出するための冷媒吐出管146とが設けられている。尚、本実施例では、冷媒導入管145は密閉容器101の容器本体101Aの側面に溶接固定され、冷媒吐出管146はエンドキャップ101Bの側面に溶接固定されている。
【0036】
上記のように、密閉容器101内の上側の吐出圧力空間111には、スクロール圧縮機100の外へ冷媒ガスを吐出する冷媒吐出管146が接続され、密閉容器101内の下側の空間112内には、冷媒を導入するための冷媒導入管145が接続されている。これによって、密閉容器101内の上部に高圧の吐出圧力空間111が形成されるが、スクロール圧縮要素102に吸い込まれる低圧冷媒ガスは、密閉容器101内の下側の空間112に流入した状態からスクロール圧縮要素102の吸入部へ吸い込まれる構成であるため、密閉容器101内の下側の空間112は低圧であり、これを以ってスクロール圧縮機100は、密閉容器101内の下側の空間112が低圧となる内部低圧型のスクロール圧縮機を構成する。
【0037】
一方、本実施例の構成では、固定スクロール114の鏡板116の上面130(ラップ117の反対側の面)が密閉容器101内の上側に形成された吐出圧力空間111に臨むように構成されている。固定スクロール114の鏡板116の上面130には、吐出孔113に連なる吐出弁と、この吐出弁に隣接して複数のリリース弁とが設けられている(吐出弁及びリリース弁は共に図示しない)。このリリース弁は、冷媒の過圧縮を防止するために設けられたものであり、図示しないリリースポートを介してスクロール圧縮要素102における圧縮過程の圧縮空間125に連通されている。
【0038】
密閉容器101内上側の吐出圧力空間111内には固定スクロール114にネジ止めされたカバー127が設けられている。このカバー127の下面中央には、固定スクロール114側から吐出圧力空間111方向に凹陥形成され、吐出圧力空間111と共にマフラー室を形成する吐出マフラー室128が形成されている。この吐出マフラー室128が吐出孔113に連通すると共に、図示しないがカバー127と固定スクロール114間に設けられた隙間を介して吐出マフラー室128と密閉容器101内上側の吐出圧力空間111内とが連通している。
【0039】
具体的には、スクロール圧縮要素102における圧縮過程の冷媒圧力が吐出孔113に至る以前に吐出圧力に達すると、前記リリース弁が開放されて、圧縮空間125内の冷媒が前記リリースポートを介して外部に吐出されることとなる。
【0040】
揺動スクロール115は、上述した如き容器本体101Aの内面に焼き嵌め固定された固定スクロール114に対して旋回するスクロールであり、円板状の鏡板120と、この鏡板120の一方の面(上側の表面)に立設されたインボリュート状、又は、これに近似した曲線からなる渦巻き状のラップ121と、鏡板120の他方の面(下側の面)の中央に突出形成された前述したボス124とで構成されている。そして、揺動スクロール115はラップ121の突出方向を上方として、このラップ121が固定スクロール114のラップ117に180度回し、向かい合って噛み合うように配置され、内部のラップ117、121間に圧縮空間125が形成される。
【0041】
即ち、揺動スクロール115のラップ121は、固定スクロール114のラップ117と対向し、両ラップ121、117の先端面が相手の底面(鏡板116面、及び、鏡板120面)に接するように噛み合い、且つ、揺動スクロール115は回転軸105の軸心から偏心して設けられた偏心軸123が回転可能に嵌合されている。このため、圧縮空間125は、2つの渦巻き状のラップ121、117が互いに偏心して、その偏心方向の線上で接して閉じこめられた複数の空間を作り、この空間の各々が圧縮室(低圧室や中間圧室、及び、高圧室などの複数の圧縮室)となる。
【0042】
固定スクロール114は、その周壁118の周囲に設けられたフランジ119が複数のボルト(図示せず)を介して上部支持フレーム104に固定されている。また、揺動スクロール115はオルダムリング148、及び、オルダムキーよりなるオルダム機構149によって上部支持フレーム104に支承されている。これにより、揺動スクロール115は、固定スクロール114に対して、自転せずに旋回運動を行うように構成されている。
【0043】
この揺動スクロール115は、固定スクロール114に対して偏心して公転するため、2つの渦巻き状のラップ117、121の偏心方向と接触位置は回転しながら移動し、前記圧縮室は外側から内側の圧縮空間125に向かって移りながら次第に縮小していく。最初に外側の圧縮空間125から入り込んで低圧室に閉じこめられた低圧の冷媒ガスは、断熱圧縮されながら次第に内側に移動して中間圧(中間圧室)を経て、最後に中央部(高圧室)に到達するときには、高温高圧の冷媒ガスとなる。この冷媒ガスは、固定スクロール114の中心に形成された吐出孔113、及び、吐出マフラー室128を介して吐出圧力空間111に送り出される。
【0044】
また、前記カバー127内(カバー127の板厚内部)には、後述のようにレシーバタンク(受液器)42内の液冷媒を、冷媒回路を構成する後述のリキッドインジェクション回路50Aを介してスクロール圧縮要素102の中間圧部に戻し、蒸発させることによって圧縮ガスの冷却を行うためのリキッドインジェクション通路144(後述のリキッドインジェクション回路50Aの一部)が形成されている(図2に図示)。このリキッドインジェクション通路144は、カバー127内で分岐して後述するインジェクション孔141、142に接続される。また、リキッドインジェクション通路144には、内部が中空のチューブにて構成された配管140が接続されており、この配管140の一端はカバー127のリキッドインジェクション通路144内に圧入され、他端はスリーブ139を介してエンドキャップ101Bに溶接固定されている。
【0045】
また、固定スクロール114の鏡板116には、リキッドインジェクション通路144に連通するインジェクション孔141、142が上下方向に貫通形成されている。両インジェクション孔141、142の下側(揺動スクロール115側)は、ラップ117、121側に開口すると共に、スクロール圧縮要素102の中間圧部分(固定スクロール114の中心に形成された吐出孔113と同一の圧縮室になる直前、若しくは、その近傍の中間圧の位置)に連通している。係る、エンドキャップ101Bとカバー127間に渡って配管140が取り付けられると共に、配管140に接続された接続管147に、後述のように、レシーバタンク(受液器)42からのリキッドインジェクション回路50Aを構成する配管が接続されて、リキッドインジェクション通路144が形成されている。
【0046】
一方のインジェクション孔141は、図3に示すように固定スクロール114の中心を基準にして、他方のインジェクション孔142と180度ずれた位置に形成されている。そして、一方のインジェクション孔141は、固定スクロール114に立設されたラップ117の外側(揺動スクロール115のラップ121の内側に形成される高圧縮室側)に形成され、他方のインジェクション孔142は、固定スクロール114に立設されたラップ117の内側(揺動スクロール115のラップ121の外側に形成される高圧縮室側)に形成されている。
【0047】
両インジェクション孔141、142は、後述のリキッドインジェクション回路50Aを介してスクロール圧縮要素102の中間圧部に連通するように形成される。図4に示すように、吐出孔113から高圧ガスの吐出が開始される以前に揺動スクロール115に立設されたラップ121にて閉塞される位置(中間圧縮室の高圧縮室近傍(圧縮室))に形成されており、スクロール圧縮要素102が冷媒を圧縮する工程において、後述のリキッドインジェクション回路50Aに連通した両インジェクション孔141、142が中間圧縮室に連通する。
【0048】
なお、リキッドインジェクション回路50Aを介してスクロール圧縮要素102の圧縮空間125の低圧室へ液冷媒を供給するように、両インジェクション孔141、142をスクロール圧縮要素102の圧縮空間125の低圧室に連通するように形成することもできるが、以下の説明では、両インジェクション孔141、142をスクロール圧縮要素102の圧縮空間125の中間圧部である中間圧縮室に連通するように形成した構成において説明する。
【0049】
次に、図4〜図6を参照して、圧縮ガスの冷却説明を行う。この冷却は、後述のように、レシーバタンク42内の液冷媒の一部、またはレシーバタンク42を出て後述の膨張弁43に入るまでの液冷媒の一部が、後述のリキッドインジェクション回路50Aを介してスクロール圧縮要素102の中間圧部に戻り蒸発して圧縮ガスの冷却が行われ、揺動スクロール115は最終圧縮行程近傍に位置しているものとする。
【0050】
図4に示す状態から揺動スクロール115が公転していくにしたがって、図5に示すように揺動スクロール115のラップ121にて閉塞されていた両インジェクション孔141、142は、中間圧縮部(圧縮空間125)へ開口する直前に位置する。このときは、高圧室(圧縮空間125)から吐出孔113への高温高圧の冷媒ガスの吐出が終了、若しくは、終了直前状態である。
【0051】
更に揺動スクロール115が公転していくと、図6に示すように、両インジェクション孔141、142から揺動スクロール115のラップ121が離間し、両インジェクション孔141、142は、中間圧室(圧縮空間125)に開口する。このときは、後述のレシーバタンク42内の液冷媒が後述のリキッドインジェクション回路50Aを介してスクロール圧縮要素102の中間圧部に戻り蒸発して圧縮ガスの冷却が行われる状態である。そして、更に揺動スクロール115が公転していくと、上記同様の動作を繰り返す。これによって、スクロール圧縮機100の圧縮ガスの冷却が行われる。
【0052】
本発明に係る超低温冷凍回路1を示す冷媒配管図の一つの実施例を図1に示している。図1のものは内部低圧型スクロール圧縮機を2台並列接続した構成であり、スクロール圧縮機100とスクロール圧縮機100Aの2台のスクロール圧縮機を並列接続した構成の超低温冷凍装置の構成を示している。スクロール圧縮機100Aはスクロール圧縮機100と同じ構成のものであり、冷媒吐出管146に対応するものが冷媒吐出管146Aであり、冷媒導入管145に対応するものが冷媒導入管145Aであり、スクロール圧縮機100及び100Aの内部構成は同じであるため、同じ部分は同じ符号で示すこととする。
【0053】
本発明に係る超低温冷凍装置は、所定の超低温が得られれば、スクロール圧縮機100又は100Aのいずれか1台で構成される場合でもよいが、以下に示す実施例は、図1に基づいてスクロール圧縮機100及び100Aの2台構成の場合について説明する。実施例における冷媒は、フロン404Aの使用にて超低温を得ている。
【0054】
図1において、スクロール圧縮機100及び100Aにて圧縮され、それぞれの吐出孔113から吐出マフラー室128及び吐出圧力空間111を経て冷媒吐出管146、146Aから吐出された高温高圧の冷媒ガス中にはオイルが混合されている。図1に示すように、この冷媒ガス中のオイルは、オイルセパレータ40で冷媒ガスとオイルに分離され、そのオイルが分離された冷媒ガスは、凝縮器41で凝縮され、凝縮された液冷媒(一部にガス冷媒が混入している場合も含む)がレシーバタンク42へその上部から入り、レシーバタンク42の底部から出た液冷媒が膨張弁43にて減圧膨張された後、蒸発器44で蒸発することによってスーパーショーケースや冷凍庫等の所定の超低温冷凍領域を超低温に冷却した後、蒸発した冷媒ガスは、アキュムレータ45を経由して、再び冷媒導入管145、145Aより密閉容器101内の下側の空間112に流入し、この下側の空間112から密閉容器101と上部支持フレーム104との間の通路を通って、スクロール圧縮要素102の吸入部へ吸い込まれ、スクロール圧縮機100及び100Aのスクロール圧縮要素102にて圧縮され、再び冷媒吐出管146から吐出されて上記循環を繰り返すように動作する。
【0055】
アキュムレータ45は、スクロール圧縮機100及び100Aへ吸い込まれる冷媒中に液冷媒が含まれれば、その液冷媒を溜めて液冷媒が帰還しないようにしてスクロール圧縮機100及び100Aへはガス冷媒が帰還するように気液を分離するものである。蒸発器44は一つで示しているが、スーパーショーケースや冷凍庫等の食品貯蔵領域である所定の超低温冷凍領域が複数の場合は、それに応じて蒸発器44が複数並列接続され、蒸発器44ごとに膨張弁43が接続される構成となる。凝縮器41は、空冷式または水冷式があり、空冷式の場合は凝縮用電動ファン41Aによって放熱される。また蒸発器44で冷却された空気は、冷却用電動ファン44Aによってスーパーショーケースや冷凍庫等の所定の超低温冷凍領域を超低温に冷却する空気循環が行われる。なお、46は逆止弁、47は循環する冷媒中のごみを取り除くフィルタと水分を吸着する乾燥剤を含むフィルタドライヤ、48はストレーナ、49は冷媒の流れを外部から目視するためのサイトグラスである。
【0056】
本発明の実施例では、スクロール圧縮機100とスクロール圧縮機100Aのそれぞれに対して、スクロール圧縮要素102の温度上昇を抑制するために、レシーバタンク42の底部に溜まった液冷媒の一部をスクロール圧縮要素102の中間圧部(または低圧部)へ導入するリキッドインジェクション回路50Aと50Bをそれぞれ備えると共に、オイルセパレータ40の底部に溜まったオイルの一部をスクロール圧縮要素102の中間圧部(または低圧部)へ供給するオイルインジェクション回路51Aと51Bをそれぞれ備える。図1には、リキッドインジェクション回路50Aから供給される液冷媒と、オイルインジェクション回路51Aから供給されるオイルが合流してスクロール圧縮機100の共通の配管140を流れるように、リキッドインジェクション回路50Aとオイルインジェクション回路51Aが並列回路となるように接続管147に接続される。また、リキッドインジェクション回路50Bから供給される液冷媒と、オイルインジェクション回路51Bから供給されるオイルが合流してスクロール圧縮機100Aの共通の配管140を流れるように、リキッドインジェクション回路50Bとオイルインジェクション回路51Bが並列回路となるように接続管147に接続される。
【0057】
更に図1に示すように、スクロール圧縮機100とスクロール圧縮機100Aのそれぞれに対して、オイルセパレータ40の底部に溜まったオイルをスクロール圧縮機100とスクロール圧縮機100Aのそれぞれの底部のオイル溜め162へ戻すためのオイルリターン回路52Aと52Bを備えている。
【0058】
オイルインジェクション回路51Aと51B、及びオイルリターン回路52Aと52Bは、オイルセパレータ40の底部に溜まったオイルを導出するオイル出口管53を流れるオイルが、オイル管53から分岐して流れる配管構成である。オイルインジェクション回路51Aと51Bの配管は、全体をキャピラリチューブ構成とする場合と、図1に示すように一部分をキャピラリチューブ68A、68Bとする構成である。
【0059】
リキッドインジェクション回路50Aは、そこを流れる液冷媒の流量を所定値に調整する電動式流量調整弁54Aと、スクロール圧縮機100の吐出冷媒ガスの温度を検出する温度検知部60が所定の高温を検知したことに基づき、リキッドインジェクション回路50Aを開く冷媒用電磁弁55Aが直列接続されている。また、リキッドインジェクション回路50Bは、そこを流れる液冷媒の流量を所定値に調整する電動式流量調整弁54Bと、スクロール圧縮機100Aの吐出冷媒ガスの温度を検出する温度検知部60の検知に基づき、リキッドインジェクション回路50Bを開く冷媒用電磁弁55Bが直列接続されている。
【0060】
オイルインジェクション回路51Aは、オイルインジェクション回路51Aを開閉するオイルインジェクション用電磁弁56Aを備える。また、オイルインジェクション回路51Bは、オイルインジェクション回路51Bを開閉するオイルインジェクション用電磁弁56Bを備える。
【0061】
オイルリターン回路52Aは、スクロール圧縮機100の底部のオイル溜め162のオイルレベルを検知するオイルレベル検知部61Aの検知に基づき、オイルリターン回路52Aを開閉するオイル用電磁弁57Aを備える。キャピラリチューブ58Aは、オイルリターン回路52Aを流れるオイルの流量を所定値に調整する流路抵抗を有する。また、オイルリターン回路52Bは、スクロール圧縮機100Aの底部のオイル溜め162のオイルレベルを検知するオイルレベル検知部61Bの検知に基づき、オイルリターン回路52Bを開閉するオイル用電磁弁57Bを備える。キャピラリチューブ58Bは、オイルリターン回路52Bを流れるオイルの流量を所定値に調整する流路抵抗を有する。59A、59B、59Cは、それぞれストレーナを示す。SV1及びSV2は、修理・点検・メンテナンス等のときに手動でリキッドインジェクション回路50A、50Bを閉じることができるサービス用バルブであり、通常はリキッドインジェクション回路50A、50Bを開いている。また、SV3は、修理・点検・メンテナンス等のときに手動でオイル管53を閉じることができるサービス用バルブであり、通常はリキッドインジェクション回路50A、50Bを開いている。
【0062】
スクロール圧縮機100の高温高圧の吐出冷媒ガスの温度を検出する温度検知部60は、吐出孔113から凝縮器41へ導入されるまでの冷媒ガス温度を検知すればよく、その間のいずれかの箇所での冷媒の温度を検知する取り付けであればよい。図2には、温度検知部60は、密閉容器101及びカバー127の上壁を貫通するパイプ136の先端部(下端部)に収容されており、吐出孔113から上方へ吐出される冷媒ガスの温度を検知する構成を示している。
【0063】
図7には、本発明に係る超低温冷凍装置の制御装置を示している。マイクロコンピュータ方式の制御部62を備え、制御部62の入力信号源として、温度検知部60、オイルレベル検知部61A及び61B、蒸発器44の出・入口温度をそれぞれ検出する二つの温度センサ63、スーパーショーケースや冷凍庫等の食品貯蔵領域である所定の超低温冷凍領域の温度または蒸発器44の温度を検出する温度センサ70、超低温冷凍装置の高圧部の圧力を検知するようにオイルセパレータ40から凝縮器41へ向かう冷媒路の圧力を検知する高圧センサ64、超低温冷凍装置の低圧部の圧力を検知するように蒸発器44の出口側の冷媒路の圧力を検知する低圧センサ65、スクロール圧縮機100の高圧部の圧力を検出するように吐出孔113、マフラー室128または吐出圧力空間111の吐出冷媒ガスの圧力を検知する高圧圧力スイッチ66A、及び、スクロール圧縮機100Aの高圧部の圧力を検出するように吐出孔113、マフラー室128または吐出圧力空間111の吐出冷媒ガスの圧力を検知する高圧圧力スイッチ66B等が接続されている。
【0064】
高圧センサ64は、スクロール圧縮機100及びスクロール圧縮機100Aの吐出圧力が異常高圧になったとき、スクロール圧縮機100及びスクロール圧縮機100Aの運転を停止するためのものであり、スクロール圧縮機100及びスクロール圧縮機100Aの吐出圧力の所定の高圧を検知したとき制御部62の動作によって、スクロール圧縮機100及びスクロール圧縮機100Aの運転を停止する。このため、高圧センサ64は、スクロール圧縮機100及びスクロール圧縮機100Aから吐出され凝縮器41へ導入されるまでの冷媒ガス圧力を検知すればよく、その間の配管のいずれの圧力を検知する取り付けであればよい。また、低圧センサ65は、蒸発器44の出口からスクロール圧縮機100及びスクロール圧縮機100Aのスクロール圧縮要素102の吸入部までの低圧冷媒ガス圧力を検知する取り付けであればよく、例えば、図1に点線Yで示すように、アキュムレータ45の出口側の配管の圧力を検知する接続でもよく、また、スクロール圧縮機100またはスクロール圧縮機100Aの密閉容器101内の下側の空間112の圧力を検知する取り付けでもよい。
【0065】
また、制御部62の出力側には、温度センサ70の検出に基づきスクロール圧縮機100及び100Aの回転数制御を行うインバータ回路67、電動式流量調整弁54A及び54B、冷媒用電磁弁55A及び55B、オイルインジェクション用電磁弁56A及び56B、オイル用電磁弁57A及び57B、 膨張弁43、凝縮用電動ファン41A、冷却用電動ファン44A等が接続されている。なお、スクロール圧縮機100及び100Aが定速度回転式であれば、スーパーショーケースや冷凍庫等の所定の超低温冷凍領域または蒸発器44の温度が下限設定温度に低下したことを温度センサ70が検出すれば、制御部62によってスクロール圧縮機100及び100Aの運転を停止し、超低温冷凍領域または蒸発器44の温度が上限設定温度に上昇したことを温度センサ70が検出すれば、制御部62によってスクロール圧縮機100及び100Aの運転を再開する制御となる。
【0066】
上記の構成において、スクロール圧縮機100及び100Aが運転されることによって、電動要素103の回転に伴って回転軸105が回転し、オイル溜め162にあるオイルがスクロール圧縮要素102へ供給され、このオイルによってスクロール圧縮要素102が潤滑される。また、回転軸105の回転によって揺動スクロール115が公転し、固定スクロール114のラップ117と揺動スクロール115のラップ121間に形成された圧縮空間125の外周部(吸入部)へ、空間112の冷媒ガスが吸い込まれ、吸い込まれた冷媒ガスは、圧縮空間125を外方から内方へ向かって次第に圧縮されて高温高圧ガスとなり、吐出孔113からマフラー室128を通って吐出圧力空間111に吐出される。吐出圧力空間111に吐出された高温高圧の冷媒ガスは、冷媒吐出管146及び146Aよりスクロール圧縮機100及び100Aの外(密閉容器1の外)へ吐出され、その中に含まれオイルも同時に吐出される。
【0067】
このように冷媒吐出管146及び146Aよりスクロール圧縮機100及び100Aの外(密閉容器101の外)へ吐出される冷媒ガスは、オイルセパレータ40へ導入される。オイルの質量は冷媒ガスの質量よりも大なるため、オイルセパレータ40に導入された冷媒ガスとそれに含まれるオイルが分離され、オイルはオイルセパレータ40の底部に溜まり、冷媒ガスはオイルセパレータ40の上部から逆止弁46を経て凝縮器41へ流入して凝縮される。凝縮器41で凝縮された液冷媒(一部にガス冷媒が混入している場合も含む)はレシーバタンク42へその上部から入り、レシーバタンク42の底部から出た液冷媒が膨張弁43にて減圧膨張された後、蒸発器44で蒸発することによってスーパーショーケースや冷凍庫等の所定の超低温冷凍領域を超低温に冷却する。蒸発器44で蒸発した冷媒は、アキュムレータ45を経由して、再び冷媒導入管145及び145Aより密閉容器101内の下側の空間112に流入し、この下側の空間112から密閉容器101と上部支持フレーム104との間の通路を通って、スクロール圧縮要素102の吸入部へ吸い込まれ、スクロール圧縮機100及び100Aのスクロール圧縮要素102にて圧縮され、再び冷媒吐出管146及び146Aから吐出されて上記循環を繰り返すように動作する。なお、膨張弁43は、蒸発器44の出・入口温度を検出する温度センサ63及び制御部62によって過熱度制御される。即ち、過熱度が大きいときは、膨張弁43の弁開度を大きくし、一方、過熱度が小さいときは、膨張弁43の弁開度を小さくするよう制御部62が制御する。
【0068】
本発明に係る超低温冷凍装置は、−40℃以下の超低温、例えば−50℃や−60℃等に設定した設定温度で運転されるものであり、このような冷媒循環によって蒸発器44の蒸発温度は低下し、冷却用電動ファン44Aの運転によって冷気循環が行なわれて、スーパーショーケースや冷凍庫等の所定の超低温冷凍領域の温度が低下し、−40℃以下の設定した所定の超低温に冷却される。この冷却によって超低温冷凍領域の温度または蒸発器44の温度が設定した所定の下限温度に低下すると、この温度を温度センサ70が検出することによって、制御部62の動作に基づき一定速度回転のスクロール圧縮機100及び100Aの場合は、その運転を停止し、且つ凝縮用電動ファン41A及び冷却用電動ファン44Aの運転を停止する。また、スクロール圧縮機100及び100Aがインバータ制御方式の場合は、超低温冷凍領域の温度または蒸発器44の温度が低下する従ってスクロール圧縮機100及び100Aの回転数が低下し、所定の下限温度に低下した状態で、この温度を維持するようにスクロール圧縮機100及び100Aは低速回転数で運転される。この動作と共に、膨張弁43の開度も制御部62によって制御されると共に、凝縮用電動ファン41A及び冷却用電動ファン44Aの運転が制御される。
【0069】
本発明に係る超低温冷凍装置は、上記のように、リキッドインジェクション回路50A、50Bを備えている。これによって、スクロール圧縮機100においては、温度検知部60が所定の高温度を検知することにより、制御部62の動作に基づいて冷媒用電磁弁55Aが開き、レシーバタンク42の底部の液冷媒の一部がリキッドインジェクション回路50Aによって、インジェクション孔141、142からスクロール圧縮要素102の低圧部または中間圧部分へ供給され、スクロール圧縮要素102の温度上昇を抑制する。この場合、温度検知部60の検知温度に応じた制御部62の動作に基づいて、設定温度を超える温度差が大きい場合は液冷媒の流量が多く、設定温度を超える温度差が小さい場合は液冷媒の流量が少なくなるように、電動式流量調整弁54Aによる液冷媒の流量が所定値に調整される。このようなスクロール圧縮要素102の低圧部または中間圧部分への液冷媒の供給は、スクロール圧縮要素102の低圧部または中間圧部分よりもレシーバタンク42内の圧力が高圧であることによる圧力差によって行なわれる。これによって、スクロール圧縮要素102の温度上昇が抑制される。
【0070】
また、スクロール圧縮機100Aにおいては、温度検知部60が所定の高温度に上昇したことを検知することにより、制御部62の動作に基づいて冷媒用電磁弁55Bが開き、レシーバタンク42の底部の液冷媒の一部がリキッドインジェクション回路50Bによって、インジェクション孔141、142からスクロール圧縮要素102の低圧部または中間圧部分へ供給され、スクロール圧縮要素102の温度上昇を抑制する。この場合、温度検知部60の検知温度に応じた制御部62の動作に基づいて、設定温度を超える温度差が大きい場合は液冷媒の流量が多く、設定温度を超える温度差が小さい場合は液冷媒の流量が少なくなるように、電動式流量調整弁54Bによる液冷媒の流量が所定値に調整される。このようなスクロール圧縮要素102の低圧部または中間圧部分への液冷媒の供給は、スクロール圧縮要素102の低圧部または中間圧部分よりもレシーバタンク42内の圧力が高圧であることによる圧力差によって行なわれる。これによって、スクロール圧縮要素102の温度上昇が抑制される。なお、温度検知部60は、吐出管30から吐出されるホットガス冷媒の温度を検知するように、吐出管30に取り付けた場合も、同様の制御動作を得ることができる。
【0071】
また、本発明に係る超低温冷凍装置は、上記のように、オイルリターン回路52A、52Bを備えている。これによって、スクロール圧縮機100においては、スクロール圧縮機100の底部のオイル溜め162のオイルレベルを検知するオイルレベル検知部61Aが下限レベルを検知したことにより、制御部62の動作に基づいてオイル用電磁弁57Aが開き、オイルセパレータ40の底部に溜まったオイルがオイル管53を通り、キャピラリチューブ58Aにより所定流量に制限された状態で、オイルリターン回路52Aから密閉容器1内底部のオイル溜め162に供給され、オイル溜め162のオイル不足を解消する。このようなオイル溜め162へのオイルの供給は、密閉容器101内底部のオイル溜め162の圧力よりもオイルセパレータ40内の圧力が高圧であることによる圧力差によって行なわれる。
【0072】
また、スクロール圧縮機100Aにおいては、スクロール圧縮機100Aの底部のオイル溜め162のオイルレベルを検知するオイルレベル検知部61Bが下限レベルを検知したことにより、制御部62の動作に基づいてオイル用電磁弁57Bが開き、オイルセパレータ40の底部に溜まったオイルがオイル管53を通り、キャピラリチューブ58Bにより所定流量に制限された状態で、オイルリターン回路52Bから密閉容器101内の底部のオイル溜め162に供給され、オイル溜め162のオイル不足を解消する。このようなオイル溜め162へのオイルの供給は、密閉容器101内底部のオイル溜め162の圧力よりもオイルセパレータ40内の圧力が高圧であることによる圧力差によって行なわれる。
【0073】
また、本発明に係る超低温冷凍装置は、−40℃以下の超低温、例えば−50℃や−60℃等に設定した設定温度で運転されるものであり、上記のように、オイルインジェクション回路51A、51Bを備えている。これによって、スクロール圧縮機100においては、蒸発器44の冷媒蒸発温度が所定の冷凍温度以下になったことを後述の蒸発温度検出部PPで検出することにより、オイルインジェクション用電磁弁56Aが開き、オイルセパレータ40の底部に溜まったオイルがオイル管53を通り、オイルインジェクション回路51Aから共通の配管140を流れ、インジェクション孔141、142を経てスクロール圧縮要素2の中間圧部分(中間圧室)へ供給され、スクロール圧縮要素2の潤滑を維持する。この場合、冷媒蒸発温度が所定の冷凍温度以下になる運転においては、吐出孔113からの吐出冷媒ガス温度は高温となるため、上記のように冷媒用電磁弁55Aが開くことにより、オイルインジェクション回路51Aからのオイルが、共通の配管140を流れ、リキッドインジェクション回路50Aからの液冷媒に合流し、インジェクション孔141、142を経てスクロール圧縮要素102の中間圧部(中間圧室)へ供給される。前記蒸発温度検出部PPで検出する所定の冷凍温度は、−40℃以下の所定の超低温であるが、実施例では−40℃または−45℃に設定している。これによって、超低温運転状態におけるスクロール圧縮要素2の温度上昇が抑制されると共に、スクロール圧縮要素2のオイル不足を解消して良好な潤滑を維持する。
【0074】
また、スクロール圧縮機100Aにおいては、スクロール圧縮機100における場合と同様の動作をさせるために、蒸発器44の冷媒蒸発温度が所定の冷凍温度以下になったことを後述の蒸発温度検出部PPで検出することにより、オイルインジェクション用電磁弁56Bが開き、オイルセパレータ40の底部に溜まったオイルがオイル管53を通り、オイルインジェクション回路51Bから共通の配管140を流れ、インジェクション孔141、142を経てスクロール圧縮要素102の中間圧部分(中間圧室)へ供給され、スクロール圧縮要素102の潤滑を維持する。この場合、冷媒蒸発温度が所定の冷凍温度以下になる運転においては、吐出孔113からの吐出冷媒ガス温度は高温となるため、上記のように冷媒用電磁弁55Bが開くことにより、オイルインジェクション回路51Bからのオイルが、共通の配管140を流れ、リキッドインジェクション回路50Bからの液冷媒に合流し、インジェクション孔141、142を経てスクロール圧縮要素102の中間圧部(中間圧室)へ供給される。前記蒸発温度検出部PPで検出する所定の冷凍温度は、−40℃以下の所定の超低温であるが、実施例では−40℃または−45℃に設定している。これによって、超低温運転状態におけるスクロール圧縮要素2の温度上昇が抑制されると共に、スクロール圧縮要素2のオイル不足を解消して良好な潤滑を維持する。
【0075】
オイルインジェクション回路51A、51Bに関する前記蒸発温度検出部PPは、蒸発器44の出口側(蒸発器44からスクロール圧縮機100又は100Aのスクロール圧縮要素102の吸入部までの冷媒路)の冷媒ガスの温度を検出する温度センサでもよいが、実施例では、低圧センサ65の検知に基づき制御部62で蒸発器44の冷媒蒸発温度が演算される構成であり、その場合の前記蒸発温度検出部PPは、低圧センサ65が相当する。
【実施例2】
【0076】
図8には、本発明に係る超低温冷凍装置の第2実施例の冷媒配管図である。この場合も実施例1と同様に、本発明に係る超低温冷凍装置は、所定の超低温が得られれば、スクロール圧縮機100又は100Aのいずれか1台で構成される場合でもよい。上記実施例1と同様部分には同一符号付しており、その構成及び作用は実施例1と同様である。この図8の構成が図1の構成と異なるところは、リキッドインジェクション回路50A及び50Bへの液冷媒の入り口が、過冷却器411の出口側配管に接続された構成である。このため、実施例1と同様に、オイルセパレータ40へ流入してオイルが分離された冷媒ガスは、オイルセパレータ40の上部から凝縮器41へ流入して放熱され凝縮される。この放熱によって温度低下した(例えば略50℃に低下)液冷媒(一部にガス冷媒が混入している場合も含む)は、レシーバタンク42へその上部から入り、レシーバタンク42の底部に溜まった液冷媒がレシーバタンク42の底部から出て過冷器411にて過冷却されて温度が低下し(例えば、略4〜5℃に低下)、その過冷却された液冷媒は、膨張弁43に流入して減圧膨張された後、蒸発器44へ流入して蒸発器44で蒸発することにより、スーパーショーケースや冷凍庫等の所定の超低温冷凍領域を−40℃以下の所定の超低温に冷却する。そして、蒸発器44を出た冷媒は、アキュムレータ45を経由して再び冷媒導入管145及び145Aよりスクロール圧縮要素102の吸込部へ吸い込まれて圧縮され、再び冷媒吐出管146及び146Aら吐出されて上記循環を繰り返すように動作する。
【0077】
実施例2では、レシーバタンク42の底部に溜まった液冷媒を導入して、この液冷媒を過冷却するための過冷却器411が凝縮器41に併設されて、凝縮用電動ファン41Aにて放熱される構成である。この過冷器411にて過冷却された液冷媒は、膨張弁43に流入して減圧膨張されて蒸発器44へ流入し、上記実施例1同様の動作をするものである。
【0078】
この実施例2の構成において、スクロール圧縮機100においては、温度検知部60が所定の高温度に上昇したことを検知することにより、制御部62の動作に基づいて冷媒用電磁弁55Aが開き、過冷器411にて過冷却された液冷媒の一部がリキッドインジェクション回路50Aによって、スクロール圧縮要素102の中間圧部分(中間圧室)へ供給され、スクロール圧縮要素102の温度上昇を抑制する。この場合、温度検知部60の検知温度に応じた制御部62の動作に基づいて、設定温度を超える温度差が大きい場合は液冷媒の流量が多く、設定温度を超える温度差が小さい場合は液冷媒の流量が少なくなるように、電動式流量調整弁54Aによる液冷媒の流量が所定値に調整される。このようなスクロール圧縮要素102の中間圧部分(中間圧室)への液冷媒の供給は、スクロール圧縮要素102の中間圧部分(中間圧室)よりもレシーバタンク42内の圧力が高圧であることによる圧力差によって行なわれる。これによって、スクロール圧縮要素102の温度上昇が抑制される。なお、温度検知部60は、冷媒吐出管146または146Aから吐出されるホットガス冷媒の温度を検知するように、冷媒吐出管146または146Aに取り付けた場合も、同様の制御動作を得ることができる。
【0079】
また、スクロール圧縮機100Aにおいては、温度検知部60が所定の高温度に上昇したことを検知することにより、制御部62の動作に基づいて冷媒用電磁弁55Bが開き、過冷器411にて過冷却された液冷媒の一部がリキッドインジェクション回路50Bによって、スクロール圧縮要素102の中間圧部分(中間圧室)へ供給され、スクロール圧縮要素102の温度上昇を抑制する。この場合、温度検知部60の検知温度に応じた制御部62の動作に基づいて、設定温度を超える温度差が大きい場合は液冷媒の流量が多く、設定温度を超える温度差が小さい場合は液冷媒の流量が少なくなるように、電動式流量調整弁54Bによる液冷媒の流量が所定値に調整される。このようなスクロール圧縮要素102の中間圧部分(中間圧室)への液冷媒の供給は、スクロール圧縮要素102の中間圧部分(中間圧室)よりもレシーバタンク42内の圧力が高圧であることによる圧力差によって行なわれる。これによって、スクロール圧縮要素102の温度上昇が抑制される。なお、温度検知部60は、冷媒吐出管146または146Aから吐出されるホットガス冷媒の温度を検知するように、冷媒吐出管146または146Aに取り付けた場合も、同様の制御動作を得ることができる。
【0080】
また、オイルリターン回路52A、52Bからそれぞれスクロール圧縮機100及び100Aのオイル溜め16へのオイル供給は、上記実施例1と同様に行なわれる。
【0081】
また、オイルインジェクション回路51A、51Bの動作についても、スクロール圧縮機100においては、蒸発器44の冷媒蒸発温度が所定の冷凍温度以下になったことを前記蒸発温度検出部PPで検出したことにより、オイルインジェクション用電磁弁56Aが開き、オイルセパレータ40の底部に溜まったオイルが、オイルインジェクション回路51Aからスクロール圧縮要素2の中間圧部分(中間圧室)へ供給され、スクロール圧縮要素2の潤滑を維持する。この場合、冷媒蒸発温度が所定の冷凍温度以下になる運転においては、吐出ポート10からの吐出冷媒ガス温度は高温となるため、上記のように冷媒用電磁弁55Aが開くことにより、オイルインジェクション回路51Aからのオイルが、共通の配管S1にてリキッドインジェクション回路50Aからの液冷媒に合流し、共通の配管140からスクロール圧縮要素2の中間圧部(中間圧室)へ供給される。前記蒸発温度検出部PPで検出する所定の冷凍温度は、−40℃以下の所定の超低温であるが、実施例では−40℃または−45℃に設定している。これによって、超低温運転状態におけるスクロール圧縮要素2の温度上昇が抑制されると共に、スクロール圧縮要素2のオイル不足を解消して良好な潤滑を維持する。
【0082】
また、スクロール圧縮機100Aにおいては、スクロール圧縮機100における場合と同様の動作をさせるために、蒸発器44の冷媒蒸発温度が所定の冷凍温度以下になったことを前記蒸発温度検出部PPで検出したことにより、オイルインジェクション用電磁弁56Bが開き、オイルセパレータ40の底部に溜まったオイルが、オイルインジェクション回路51Bからスクロール圧縮要素102の中間圧部分(中間圧室)へ供給され、スクロール圧縮要素102の潤滑を維持する。この場合、冷媒蒸発温度が所定の冷凍温度以下になる運転においては、吐出孔113からの吐出冷媒ガス温度は高温となるため、上記のように冷媒用電磁弁55Bが開くことにより、オイルインジェクション回路51Bからのオイルが、共通の配管S2にてリキッドインジェクション回路50Bからの液冷媒に合流し、共通の配管140からスクロール圧縮要素102の中間圧部(中間圧室)へ供給される。前記蒸発温度検出部PPで検出する所定の冷凍温度は、−40℃以下の所定の超低温であるが、実施例では−40℃または−45℃に設定している。これによって、超低温運転状態におけるスクロール圧縮要素2の温度上昇が抑制されると共に、スクロール圧縮要素2のオイル不足を解消して良好な潤滑を維持する。
【0083】
この実施例2の構成によって、レシーバタンク42を出た液冷媒は、過冷却器411に導かれて過冷却されることにより実施例1よりも液冷媒の温度が低下する。このため、乾き度ゼロの液冷媒を過冷却器411に導くことができ、過冷却器411における熱伝導率を向上でき、過冷却を取り難いR404A等のHFC系擬似共沸混合冷媒を採用した冷凍装置において十分な過冷却ができ、スクロール圧縮機100及び100Aの安定した運転、冷凍能力の増加、及びスクロール圧縮機100及び100Aの運転による消費電力の低減を図ることができるものとなり、実施例1の改良効果が期待できる。
【0084】
図1及び図8に示す超低温冷凍装置では、スクロール圧縮機100又は100Aの2台を備えているが、いずれか1台で構成される場合、例えば、スクロール圧縮機100にて構成される場合は、スクロール圧縮機100Aに関係するリキッドインジェクション回路50B、オイルインジェクション回路51B、及びオイルリターン回路52Bに係る電磁弁等を含む配管、及びそれに係る制御が省略された構成となる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明に係るスクロール圧縮機は、上記実施例に示した構成に限定されず、内部低圧型の種々の形態のものに適用できるものであり、本発明の技術範囲において種々の形態の超低温冷凍装置を包含するものである。
なお、内部高圧型のスクロール圧縮機を採用して、図1または図8と同様の超低温冷凍装置を構成することにより、上記同様の作用及び効果が達成できれば、それも本発明の技術範囲の一つの実施形態として含まれるものとなる。
【符号の説明】
【0086】
40・・・・オイルセパレータ
41・・・・凝縮器
411・・・過冷却器
41A・・・凝縮用電動ファン
42・・・・レシーバタンク
43・・・・膨張弁
44・・・・蒸発器
44A・・・冷却用電動ファン
50A・・・リキッドインジェクション回路
50B・・・リキッドインジェクション回路
51A・・・オイルインジェクション回路
51B・・・オイルインジェクション回路
52A・・・オイルリターン回路
52B・・・オイルリターン回路
54A・・・電動式流量調整弁
54B・・・電動式流量調整弁
55A・・・冷媒用電磁弁
55B・・・冷媒用電磁弁
56A・・・オイルインジェクション用電磁弁
56B・・・オイルインジェクション用電磁弁
57A・・・オイル用電磁弁
57B・・・オイル用電磁弁
58A・・・キャピラリチューブ
58B・・・キャピラリチューブ
60・・・・温度検知部
61A・・・オイルレベル検知部
61B・・・オイルレベル検知部
62・・・・制御部
63・・・・蒸発器44の出・入口温度を検出する温度センサ
64・・・・高圧センサ
65・・・・低圧センサ
66A・・・高圧圧力スイッチ
66B・・・高圧圧力スイッチ
67・・・・インバータ回路
70・・・・超低温冷凍領域または蒸発器44の温度を検出する温度センサ
100・・・スクロール圧縮機
100A・・スクロール圧縮機
101・・・密閉容器
102・・・スクロール圧縮要素
103・・・電動要素
105・・・回転軸
104・・・上支持フレーム(メインフレーム)
111・・・吐出圧力空間
113・・・吐出孔
114・・・固定スクロール
116・・・固定スクロールの鏡板
117・・・固定スクロールのラップ
115・・・揺動スクロール
120・・・揺動スクロールの鏡板
121・・・揺動スクロールのラップ
125・・・圧縮空間
127・・・カバー
128・・・吐出マフラー室
141・・・インジェクション孔
142・・・インジェクション孔
144・・・リキッドインジェクション通路
162・・・オイル溜め
PP・・・・蒸発温度検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦型の密閉容器内に、電動要素と、前記電動要素によって駆動されるスクロール圧縮要素が収容され、前記密閉容器内底部にオイル溜めを設け、前記電動要素の回転軸の下部に前記回転軸の回転によって前記オイル溜めのオイルを前記スクロール圧縮要素へ供給するオイルポンプを設け、前記スクロール圧縮要素に連通した吸入管から吸い込んだ冷媒ガスを前記スクロール圧縮要素にて圧縮し、前記密閉容器外に吐出するスクロール圧縮機を備え、前記吐出される冷媒ガスが、オイルセパレータ、凝縮器、液冷媒を溜めるレシーバタンクを経て膨張弁にて減圧膨張された液冷媒を蒸発器で蒸発した後、再び前記吸入管から前記スクロール圧縮要素へ帰還する冷媒循環回路を形成した超低温冷凍装置において、前記オイルセパレータで冷媒から分離されたオイルを前記オイル溜めへ供給するオイルリターン回路と、前記レシーバタンクに溜まった液冷媒の一部または前記レシーバタンクを出た冷媒を過冷却器で過冷却した液冷媒の一部を前記スクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部分へ供給するリキッドインジェクション回路と、前記蒸発器の冷媒蒸発温度が所定の冷凍温度以下において前記オイルセパレータで冷媒から分離されたオイルを前記スクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部分へ供給するオイルインジェクション回路を備えたことを特徴とするスクロール圧縮機を備えた超低温冷凍装置。
【請求項2】
前記オイルリターン回路は前記オイル溜めのオイルレベル検知部の検知に基づき前記オイルリターン回路を開閉するオイル用電磁弁を備え、前記リキッドインジェクション回路は前記スクロール圧縮要素にて圧縮された吐出冷媒ガスの温度を検出する温度検知部の検知に基づき前記リキッドインジェクション回路を開閉する冷媒用電磁弁を備え、前記オイルインジェクション回路は、前記蒸発器の冷媒蒸発温度が所定の冷凍温度以下において前記オイルインジェクション回路を開いて前記スクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部分へのオイル供給を可能とするオイルインジェクション用電磁弁を備えたことを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機を備えた超低温冷凍装置。
【請求項3】
前記リキッドインジェクション回路と前記オイルインジェクション回路が並列回路構成であることを特徴とする請求項1または2に記載のスクロール圧縮機を備えた超低温冷凍装置。
【請求項4】
前記リキッドインジェクション回路と前記オイルインジェクション回路が並列回路構成であり、前記リキッドインジェクション回路を流れる液冷媒と前記オイルインジェクション回路を流れるオイルが合流して、前記スクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部分へ供給されることを特徴とする請求項1または2に記載のスクロール圧縮機を備えた超低温冷凍装置。
【請求項5】
前記冷媒用電磁弁を備えた前記リキッドインジェクション回路と、前記オイルインジェクション用電磁弁を備えた前記オイルインジェクション回路が並列回路構成であり、且つ前記冷媒用電磁弁を通過した液冷媒と前記オイルインジェクション用電磁弁を通過したオイルとが合流して、前記スクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部分へ供給されることを特徴とする請求項2に記載のスクロール圧縮機を備えた超低温冷凍装置。
【請求項6】
前記オイルインジェクション回路は、その一部または全部がオイル流量を所定の流量に制限するキャピラリチューブ構成であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のスクロール圧縮機を備えた超低温冷凍装置。
【請求項7】
前記蒸発器の冷媒蒸発温度が所定の冷凍温度以下になったことの検知は、前記冷媒蒸発温度を検知する温度検知部、または前記蒸発器の出口から前記スクロール圧縮要素の吸い込み部までの低圧を検知する低圧センサの検知に基づくことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のスクロール圧縮機を備えた超低温冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−247105(P2012−247105A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118047(P2011−118047)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】