説明

スタンパ、インプリント装置及び処理製品並びに処理製品製造装置及び処理製品製造方法

【課題】
本発明は、ベース膜厚のバラツキを低減できるスタンパ又はインプリント装置、精度のよい微細パターンを有する処理製品、精度のよい微細パターンを形成できる処理製品製造装置又は処理製品製造方法を提供することにある。
【解決手段】
本発明は、スタンパ又は前記スタンパを用いてインプリントするインプリント装置、前記インプリントによって処理製品を製造する処理製品製造装置又は処理製品製造方法、及び製造された処理製品において、前記スタンパは前記処理製品基材から形成される処理製品の機能を果たすのに必要のないダミーパターンを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント技術によるスタンパ、インプリント装置及び処理製品並びに処理製品製造装置及び処理製品製造方法に係わり、特に精度よくパターン形状できるスタンパ、インプリント装置及び処理製品並びに処理製品製造装置及び処理製品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブや高周波デバイス等のLSI(Large Scale Integration)にパターンドメディアを用いて製造することが将来期待されている。例えば、ハードディスクドライブでは、サーバやコンピュータ向けの利用が増大するだけでなく、家庭用ハードディスクレコーダやカーナビゲーション、ポータブルAV再生機器等様々な用途への利用が拡大しており、またその容量も種々の用途のデジタル化に伴い増大する傾向にある。
【0003】
容量を増大することは、すなわちメディアディスクの記録密度を増大させることである。メディアディスクの記録密度を増大させる技術の一つがパターンドメディアである。パターンドメディアには、図2に示すように、ディスクリートトラックメディアとビットパターンドメディアの2つがある。ディスクリートトラックメディア(DTM)とはメディアディスク1上に同心円状のトラックパターン14を形成する方式で、ビットパターンドメディアとは同図右に示すように無数のビットパターン16を形成する方式である。
【0004】
パターンの形成には、ナノインプリント技術を用いる方法が有力視されている。図3にナノインプリント技術を示す。まず、光を透過する例えば石英製のスタンパ20Jを、磁性膜を形成したディスク基板などの処理製品基材12の表面に塗布したレジスト(樹脂)Pに押し当てインプリントし、エッチマスク15を形成する(ステップ1)。そして、プラズマガス17でエッチング処理し、余剰樹脂によってスタンパ20Jと処理製品基材の間にできるベース膜BMを除去し、最終的なエッチマスク15を形成する(ステップ2)。次にエッチマスク15をマスクとしてプラズマガス17によってエッチング(エッチ)加工し(Step3)、所定のパターンを完成させる(Step4)。特許文献1はこのようなナノインプリント技術を開示している。なお、ステップ2においてベース膜厚が薄い場合は実施する必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−12844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ナノインプリント技術においては、精度よく微細パターンを形成する必要がある。図4に示すLED製品の高輝度化を目的とするフォトニッククリスタルパターンのようにパターンが均一に配置され、形成する微細パターンに偏在や凹凸のデュティ比に相違がない場合には、レジスト(樹脂)を均一に塗布する技術で解決できる。
【0007】
しかしながら、図5に示すように、パターンが有ったり無かったりして微細パターンが偏在したり、デュティ比が相違し疎密ができると、エッチマスク15のパターンを成形するためのレジストの必要量が異なりベース膜BMの厚さBMtにバラつきができる(Step1)。この場合、パターンがある又はパターンが密の場合、パターンを成形するのに必要なレジスト量が多くなりベース膜BMの膜厚は薄くなり、パターンがない又はパターンが疎の場合、必要なレジスト量が少なくなりベース膜BMの膜厚BMtは厚くなる。
【0008】
ステップ2のベース膜除去プロセスでは、プラズマガス17でエッチ処理によって全てのベース膜BMを除去するために、最大ベース膜厚で除去する(Step2)。その結果、プロセス時間が長くなる。プロセス時間が長くなると、第1にスループットが低下する。第2に、オーバエッチになり、ステップ3に示すように各パターンの高さ及び幅が減少する。
【0009】
従って、本発明の第1の目的は、ベース膜厚のバラツキを低減できるスタンパ又はインプリント装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明の第2の目的は、精度のよい微細パターンを有する処理製品或いは精度のよい微細パターンを形成できる処理製品製造装置又は処理製品製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、少なくとも下記の特徴を有する。
本発明は、表面に凹凸形状のパターンを備え、塗布された成形材料を有する処理製品基材の表面に有する成形材料に前記凹凸形状のパターンを転写するスタンパ、前記スタンパを用いて最終的に処理製品となる処理製品基材の表面に塗布された成形材料に前記パターンを転写するインプリント装置、前記インプリント装置を用いてエッチング処理をして前記処理製品を製造する処理製品製造装置又は処理製品製造方法或いは処理製品において、前記スタンパは、前記処理製品基材から形成される処理製品の機能を果たすのに必要のないダミーパターンを有することを第1の特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記ダミーパターンは、前記処理製品として機能を果たす正規パターンの他に設けられたパターンであることを第2の特徴とする
さらに、本発明は、前記ダミーパターンは、前記処理製品として機能を果たす正規パターンを平面的に拡大するパターンであることを第3の特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記ダミーパターンは、前記処理製品として機能を果たす正規パターンが必要とする深さ以上の深さを有するパターンであることを第4の特徴とする。
【0014】
さらに、本発明は、前記処理製品はドーナツ状の円板に同心円状にサーボパターンやデータの正規パターン領域を有する磁気ディスクであって、前記転写は前記処理製品として機能を果たす正規パターンの他に設けられた前記ダミーパターンを前記ドーナツ状の円板の内側及び外側の領域、又は前記磁気ディスクの前記正規パターン領域に転写することを第5の特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記処理製品は高周波デバイスであるSAWデバイスであって、前記転写は前記処理製品として機能を果たす正規パターンの他に設けられた前記ダミーパターンを前記SAWデバイスの有するフィルタ部に転写することを第6の特徴とする。
【0016】
さらに、本発明は、前記処理製品は高周波デバイスであるSAWデバイスであって、前記転写は前記処理製品として機能を果たす正規パターンを平面的に拡大する前記ダミーパターンを前記SAWデバイスの有する電極パット部、アース部の少なくとも一方に転写することを第7の特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ベース膜厚のバラツキを低減できるスタンパ又はインプリント装置を提供できる。
【0018】
また、本発明によれば、精度のよい微細パターンを有する処理製品或いは処理製品製造装置又は処理製品製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態であるインプリント装置の構成を示す図である。
【図2】パターンドメディアの一例を示す概略図である。
【図3】ナノインプリントプロセスを示す工程図である。
【図4】微細パターンに偏在や凹凸のデュティ比に相違がないLED製品の高輝度化を目的とするフォトニッククリスタルパターンの一例を示す図である。
【図5】本発明の課題を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態1の基本的な考え方を示す図である。
【図7】従来の磁気ディスクを示す図である。
【図8】処理製品として磁気ディスクに本発明の実施形態1を適用した実施例1である。
【図9】本発明の実施形態1を適用した高周波デバイスである典型的なSAWを示す図である。
【図10】本発明の実施形態1をSAWに適用した実施例2であり、ダミーパターンとして、高周波信号が流れる方向に同一方向に平行な線状の凹凸パターンを設けた例である。
【図11】本発明の実施形態1をSAWに適用した実施例2であり、ダミーパターンとして、矢印で示す高周波信号が流れる方向と垂直な方向に平行な線状の凹凸パターンを、高周波信号の周波数に阻害しない周波数で設けた例である。
【図12】本発明の実施形態1をSAWに適用した実施例2であり、ダミーパターンとして、ドット又は短い線状の凹凸パターンを設けた例である。
【図13】本発明の実施形態2の基本的な考え方を示す図である。
【図14】処理製品としてSAWに本発明の実施形態2を適用した実施例4である。
【図15】本発明の実施形態3を示す図である。
【図16】本発明の実施形態である磁気ディスク製造装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。
まず、図1を用いて本発明の実施形態であるインプリント装置1の構成を説明する。インプリント装置1は、大別して、スタンパの成形材料であるレジストPより上部に構成要素を持つ転写機構上部60と、光源30と、レジストPより下部に構成要素を持つ転写機構下部70と、ステージ80とを有する。レジストPは、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂及び熱可塑性材料のいずれも使用することができる。
【0021】
転写機構上部60は、スタンパ20を平面に保持する。光源30は、光硬化性樹脂の樹脂を硬化させるエネルギー源となるUV光源である。また、熱硬化性樹脂用に、熱源となる光源30を利用すると、熱硬化性樹脂を硬化させることもできる。なお、本実施形態のインプリント装置1は光源30も備えているが、光源30を別装置としてもよい。
【0022】
一方、転写機構下部70は、表面にスタンパ20が有する凹凸が転写されるレジストPを有し、最終的には処理製品となる処理製品基材12を保持する。
【0023】
また、ステージ80は、処理製品基材12を載せるベースである。スタンパ20がレジストPに転写する際に、スタンパの押圧を受け止めるので、処理製品基材12にレジストPが意図した形状になる。なお、ステージ80の内部には、熱可塑性材料のレジストPに転写する際にレジストPを加熱して軟化するための熱源90を備えている。
【0024】
このようなインプリント装置1によってスタンパ20のパターンをレジストPに転写しエッチマスクを形成し、その後エッチング装置によりエッチング処理を行う。なお、インプリント装置1は露光装置を備えていても構わない。
【0025】
また、インプリント装置1は、上記の構造とは逆に、レジストPより上部に転写機構下部70を設け、レジストPより下部に転写機構上部60と光源30を設けてもよい。あるいは、上記の構造を90度右又は左に傾けて、レジストPの右(左)側に転写機構上部60と光源30を設け、レジストPの左(右)側に転写機構下部70を設けるようにしてもよい。さらに、スタンパ20がレジストPを転写することができれば、スタンパ20の押圧する方向は垂直方向または水平方向だけでなく、任意の角度に傾いた方向でも構わない。
レジスト材料は、塗布厚みが薄いため流動性が低下し、傾けて押圧しても、レジスト材料が流れ出たり、転写できない部分が発生することはない。
【0026】
本発明の特徴は、機能を果たすのに必要な正規パターンを成形する成形面内のレジスト必要量が、或いはベース膜厚が均一になるようにすることである。言い換えれば、レジスト必要量が均一になるようにするとは、塗布したレジスト量のうち正規パターンを成形するのに使用されるレジスト量とベース膜に使用されるレジスト量との比が同一になるようにすることである。
以下の説明では、正規パターンを成形するのにダミー部分を有しているパターンをダミーパターンという。また、スタンパ20に設けられたダミーパターンを20Pで示す、そのダミーパターン20PでレジストPに形成されたエッチマスク15上のダミーパターンをDPで示す。
【0027】
上記を達成する方法には、大別して次の3つの実施形態がある。
【0028】
(1)実施形態1:正規パターンの他にダミーパターンを設ける。この場合は、処理製品にもダミーパターンが残る。
【0029】
(2)実施形態2:正規パターンを平面的に拡大するダミーパターンを設ける。この場合も処理製品にもダミーパターンが残る。
【0030】
(3)実施形態3:スタンパの深さを正規パターンが必要とする以上に深さにするダミーパターンを設ける。この場合には、処理製品にはダミーパターンは残らない。
(実施形態1)
図6は、実施形態1の基本的な考え方を示す図である。図6の右側欄は、処理製品に必要な正規パターンのみを有するスタンパ20Jによる従来のインプリントプロセス(以下、単に従来プロセスという)を示す。図6の左側欄は、白で示す正規パターンの他に黒で示すダミーパターン20Pを有するスタンパ20による実施形態1のインプリントプロセス(以下、単に実施形態又実施例プロセスという)を示す。
【0031】
従来プロセスは、図5で説明したように、パターンが有ったり無かったりして微細パターンが偏在したり、デュティ比が相違し疎密ができると、ステップ2に示すようにレジストの必要量が異なりベース膜BMの厚さにバラつきができる。その結果、プロセス時間が長くなりスループットが低下すると共に、オーバエッチになり、ステップ3に示すように各パターンの高さ及び幅が減少する。
【0032】
一方、本実施形態プロセスでは、ステップ1に示すように、例えばパターン無し領域とデュティ比相違がある疎密領域に黒で示すダミーパターンDPを設けている。どのようなダミーパターンDPを設けるかは色々考えられる。
【0033】
例えば、図6では、パターン無し流域の両サイドにあるパターン同形状のパターンであるので、同形状のダミーパターンDPを同ピッチで設け、レジスト必要量が均一になるように、又はマスク使用比が同一になるようにしてベース膜厚が均一になるようにする。また、疎密領域では、それぞれの正規パターンの幅が異なるので、疎密領域としてレジスト必要量が均一になるように、又はマスク使用比が同一になるようにしてダミーパターンDPを設ける。さらに、面内の両領域のベース膜厚が可能な限り均一になるように、又はマスク使用比が同一になるようにして各ダミーパターンの幅を定める。
【0034】
図6は一次元で示しているが、実際には二次元的にインプリントする面内のレジスト必要量が同一になるようにダミーパターンDPの寸法を定める。勿論、ここの領域毎に定めるのではなく、シミュレーション等によってインプリントする面内のレジスト必要量が同一になるように一度に定めてもよい。
次に、ベース膜厚が可能な限り薄くなるようにレジスト量を決定する。
【0035】
このようにダミーパターンDPを設けることによって、ステップ2に示すようにベース膜が薄膜化され、ベース膜BMの除去時間が短縮し、スループットの向上を図ることができる。ベース膜BMを所定の厚さ以下に薄膜にできれば、ステップ2を省略すことができる。
【0036】
また、ベース膜BMの除去時間が短縮できれば、除去時間に起因するエッチマスクの
オーバエッチ量が少なくなり、エッチマスク15の高さ及び幅の減少を抑えることができ、精度のよい微細パターンを形成できる。
【0037】
以上説明した本実施形態1によれば、ベース膜厚のバラツキを低減できるスタンパ又はインプリント装置を提供できる。
【0038】
また、以上説明した本実施形態1によれば、精度のよい微細パターンを有する処理製品或いは精度のよい微細パターンを形成できる処理製品製造装置又は処理製品製造方法を提供できる。
(実施例1)
実施例1は処理製品として磁気ディスクに本実施形態1を適用した例であり、その実施例を図8に示す。図7は、従来の磁気ディスク30Jを示す図である。
従来の磁気ディスク30Jは、ドーナツ状の円板に同心円状にサーボパターンやデータを有する正規パターン31Pを有するパターン領域31と、パターン領域31の内側及び外側には引出し図に示すようにパターンの無いパターン無し領域32、33とを有する。従って、パターン領域31と同じレジスト量でインプリントすると、パターン無し領域32、33のレジスト必要量は少ないので、ベース膜厚が厚くなる。
【0039】
一方、図8に示す実施例1は、図7に示すパターン無し領域32、33にパターン領域31と同じレジスト必要量となる斜線で示すダミーパターン領域34、35を設ける。本例では、引き出し図に示すように、ギャップGを介して同心円状の正規パターン31pに対して放射状のダミーパターンDPを有する。ダミーパターンDPとしては、放射状でなく正規パターン31pと同様に円周状に設けてもよい。
【0040】
ギャップGは、データ処理に際して正規パターン31PとダミーパターンDPとを明確に区別するためのものである。しかし、データをパターンによって正規パターン31pとダミーパターンDPと区別してもよい。その場合はギャップGを設けなくてもよい。
【0041】
上記実施例1ではパターン無し領域32、33にダミーパターンを設けたが、サーボパターンやデータを有する正規パターン31Pの微細パターンが偏在したり、デュティ比が相違し疎密ができるところに実施形態1を適用してもよい。
(実施例2)
実施例2は処理製品として図9に示す高周波デバイスである典型的なSAW(Surface Acoustic Wave)デバイス40に本実施形態1を適用した例であり、その実施例を図10乃至12に示す。SAWデバイス40は、電極パット部41、フィルタ部42、アース部(図示なし)等を有する。実施例2は、このフィルタ部42に本実施形態1を適用した例である。図9に示すように、フィルタ部42には、フィルタ機能を有する正規パターンであるフィルタパターンFPと、パターンの無い領域42aがある。フィルタ部42は、フィルタパターンFPの凹凸の周波数に基づき高周波フィルタを構成する。図9に示すフィルタパターンFPの寸法Lは、例えば50μmである。そこで、パターンの無い領域42aにデバイス機能に悪影響がないパターン構造で、パターン有り領域42(FP)と同じレジスト必要量となるようにダミーパターDPを設ける。
【0042】
図10は、ダミーパターンDPとして、矢印で示す高周波信号が流れる方向に同一方向に平行な線状の凹凸パターンを設けた例である。図11は、ダミーパターンDPとして、矢印で示す高周波信号が流れる方向と垂直な方向に平行な線状の凹凸パターンを、高周波信号の周波数に阻害しない周波数で設けた例である。図12は、ダミーパターンDPとして、ドット又は短い線状の凹凸パターンを設けた例である。
(実施形態2)
次に、図13は実施形態2の基本的な考え方を示す図である。例えばSAWデバイスに40には、フィルタ部42に離間して電極パッド部41のように面積を変えても機能的に変わらない大面積を有する領域がある。
実施形態2は、このような大面積を有する部分を拡大してレジスト必要量が均一になるように、又はマスク使用比が同一になるようにしてスタンパにダミーパターン20Pを設け、エッチマスク15にダミーパターンDPが作成される。
【0043】
図13の右側欄は、フィルタ部42に離間して電極パット部41又はアース部(図示なし)の他のパターンと比較して大面積部の必要な正規パターンを有する処理製品のためのスタンパ20Jによる従来プロセスを示す。なお、図13では、フィルタ部42を強調して示している。
【0044】
図13の左側欄は、白で示す電極パット部41又はアース部(図示なし)の大面積部の正規パターンの他に黒枠で示す拡大ダミーパターン20Pを有するスタンパ20による実施形態2のインプリントプロセス(以下、単に実施形態2又実施例プロセスという)を示す。
【0045】
従来プロセスは、図13の左側欄に示したように、電極部41又はアース部(図示なし)の大面積があると、マスク形成に必要なレジスト量が少ないために、ステップ1に示すようベース膜BMが厚くなる。また、離間したフィルタ部42の周辺にもその影響がありベース膜厚が厚くなるところが存在する。その結果、プロセス時間が長くなりスループットが低下すると共に、オーバエッチになり、ステップ3に示すように各パターンの高さ及び幅が減少する。
【0046】
一方、実施形態2プロセスでは、図13のステップ1に示すように、大面積部を有する
電極部41等に、白で示す正規パターンに黒で示す拡大ダミー部分を付加され拡大したダミーパターンDPを形成する。その結果、エッチマスク15の形成に必要なレジスト量が均一化され、ステップ1に示すようにそれに伴いベース厚膜も均一化される。
【0047】
ベース厚膜BMも均一化されると、ベース膜BMの除去時間が短縮し、スループットの向上を図ることができる。ベース膜BMの厚さを所定の厚さ以下に薄膜にできれば、ステップ2を省略すことができる。また、ベース膜BMの除去時間が短縮できれば、ステップ3に示すように除去時間に起因するエッチマスクのオーバエッチ量が少なくなり、エッチマスク15の高さ及び幅の減少を抑えることができる。
【0048】
上記において、ダミーパターンDPをどれくらい拡大するかは、例えば、離間した回路のパターンを形成するために塗布したレジスト量のうちエッチマスク15に使用されるレジスト量の比であるレジストのマスク使用比が同じようになるようにダミーパターンを設けて拡大する。このとき、他の隣接する回路パターンのレジストのマスク使用比も考慮して定める。
【0049】
本実施形態2においても、正規パターンを拡大するダミーパターンを設けることで、ベース膜厚のバラツキを低減できるスタンパ又はインプリント装置を提供できる。
【0050】
また、本実施形態2においても、正規パターンを拡大するダミーパターンを設けることで、精度のよい微細パターンを有する処理製品或いは処理製品製造装置又は処理製品製造方法を提供できる。
(実施例4)
実施例4は処理製品として図9に示す高周波デバイスである典型的なSAWデバイス40に本実施形態2を適用した例であり、その実施例を図14に示す。図14は電極パッド部41を拡大するダミーパターンDPを有する例を示す。ダミーパターンDPの形状は、フィルタ部42にも基づいて必要なレジスト量が均一化になるように設けている。
(実施形態3)
図15は実施形態3を示す図である。実施形態1、2ではダミーパターンを設けることによってレジストの必要量の必要量を均一化し、ベース膜厚の均一化を図っていた。実施形態3では、正規パターンを成形するスタンパの深さ以上の深さを有するダミーパターン20Pを設け、スタンパ20のパターン深さで余剰レジストを吸収できるようにして、レジストの必要量の必要量を均一化してベース膜BMの厚さの均一化を図る。
【0051】
図15では、スタンパ20の太枠で示す部分が正規パターンに必要な深さ以上の深さをもたらす黒で示すダミー部分を有するダミーパターン20Pである。本図では白で示す正規パターンSPのみを有するのは1箇所のみである。
【0052】
処理製品基材12にレジストで形成されたエッチマスク15のダミーパターンDPは、格子状に示すダミー部分DPrと斜線で示す正規パターン部SPsとを有し、格子状に示すダミー部分が余剰レジストを吸収すると、ダミーパターンの高さはDPsとなる。
【0053】
そこで、ベース膜BMをエッチング処理した後、EH分だけさらにエッチング処理する。その後、残ったダミー部分DPrを洗浄除去する。
【0054】
なお、各パターンにおいて図15に示す高さ以上にあれば余剰レジストを吸収できるので、深さは丁度吸収する高さにする必要はない。
【0055】
本実施形態3においても、スタンパの各パターンの深さで余剰レジストを吸収できる高さとすることで、ベース膜厚のバラツキを低減できるスタンパ又はインプリント装置を提供できる。
【0056】
また、本実施形態3においても、正規パターン深さを深くするダミーパターンを設けることで、精度のよい微細パターンを有する処理製品或いは処理製品製造装置又は処理製品製造方法を提供できる。
【0057】
図16は、インプリントによる処理製品製造装置の一例として、磁気ディスクの例を示す図である。また、図16は、磁気ディスク製造ラインのうちパターンニングに関係するパターンニング関連の磁気ディスク製造装置100を示した図である。磁気ディスク製造ラインは、磁気ディスク製造装置の上流にはガラス基板に磁性層を形成するディスクを製造する工程の装置やディスクの表面を洗浄する工程の装置が、磁気ディスク製造装置の下流には潤滑膜を形成する装置がある。
【0058】
磁気ディスク製造装置100は、ディスク表面にレジストをスピンコートするレジスト塗布装置51、サーボ情報やデータトラックなどのパターンが形成されたスタンパを用いてレジスト塗布面にパターンをインプリントするスタンピング52と、スタンピング状態で露光する露光装置53とを備えるインプリント装置1、レジストパターンをマスクとしてドライエッチングしディスク表面に溝を形成するエッチング装置54、該溝に非磁性層を埋め込む非磁性層形成装置55、ディスク表面に保護膜を形成する及び保護膜形成装置56を有する。
【0059】
以上説明した磁気ディスク製造装置に本発明のインプリント装置1を用いることによって、磁気ディスク製造装置のスループットを向上できる。
【0060】
以上説明した本実施形態によれば、精度のよいパターンを有する磁気ディスク或いは磁気ディスク製造装置又は磁気ディスク製造方法を提供できる。
【0061】
以上では処理製品として磁気ディスクを例に説明したが、SAWやその他の処理製品にも同様に適用可能である。
【0062】
また、以上の実施形態では、ディスクリートトラックメディアを対象に説明したが、ビットで形成されたダミーパターンを設ける、或いは、ビットの高さを変えることで本発明をビットパターンドメディアにも適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1:インプリント装置 12:処理製品基材
14:トラックパターン 15:エッチマスク
16:ビットパターン 17:プラズマガス
20:スタンパ 20J:従来のスタンパ
20P:スタンパのダミーパターン 30:磁気ディスク
30J:従来の磁気ディスク 31:パターン領域
31P:正規パターン 32、33:パターン無し領域
34、35:ダミーパターン領域
40:SAW(Surface Acoustic Wave)デバイス
41:電極パット部 42:フィルタ部
42a:フィルタ部のパターン無し領域 45:回路パターン
51:レジスト塗布装置 52:スタンピング装置
53:露光装置 54:エッチング装置
55:非磁性層形成装置 56:保護膜形成装置
100:磁気ディスク製造装置 BM:ベース膜
DP:ダミーパターン FP:フィルタパターン
G:パターン領域とダミーパターン領域間のギャップ
P:レジスト SP:正規パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸形状のパターンを有するスタンパと、前記スタンパの前記パターンが転写された処理製品基材の表面に形成された成形材料を硬化するエネルギー源とを有するインプリント装置において、
前記スタンパは、前記処理製品基材から形成される処理製品の機能を果たすのに必要のないダミーパターンを有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記ダミーパターンは、前記処理製品として機能を果たす正規パターンの他に設けられたパターンであることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記ダミーパターンは、前記処理製品として機能を果たす正規パターンを平面的に拡大するパターンであることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記ダミーパターンは他のパターンと比べて面積が広い正規パターンを更に拡大するパターンであることを特徴とする請求項3に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記ダミーパターンは、前記処理製品として機能を果たす正規パターンが必要とする深さ以上の深さを有するパターンであることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記ダミーパターンは、前記成形材料に転写されたパターンが共通に有するベース膜の膜厚が均一になるように設けられことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項7】
最終的に処理製品となる処理製品基材の表面に成形材料を塗布する塗布装置と、前記塗布された成形材料にスタンパの有する凹凸形状のパターンを転写するインプリント装置と、前記転写されたパターンをマスクとして前記処理製品基材をエッチングするエッチング装置とを有する処理製品製造装置において、
前記スタンパは、前記処理製品基材から形成される処理製品の機能を果たすのに必要のないダミーパターンを有することを特徴とする処理製品製造装置。
【請求項8】
前記インプリント装置は、前記処理製品として機能を果たす正規パターンの他に前記ダミーパターンを具備する前記スタンパを有することを特徴とする請求項7に記載の処理製品製造装置。
【請求項9】
前記インプリント装置は、前記処理製品として機能を果たす正規パターンを平面的に拡大する前記ダミーパターンを具備する前記スタンパを有することを特徴とする請求項7に記載の処理製品製造装置。
【請求項10】
前記インプリント装置は、前記処理製品として機能を果たす正規パターンが必要とする深さ以上の深さを有する前記ダミーパターンを具備する前記スタンパを有することを特徴とする請求項7に記載の処理製品製造装置。
【請求項11】
前記処理製品はドーナツ状の円板に同心円状にサーボパターンやデータの正規パターン領域を有する磁気ディスクであって、前記インプリント装置は、前記ドーナツ状の円板の内側及び外側の領域、又は前記磁気ディスクの前記正規パターン領域に前記ダミーパターンを設けたことを特徴とする請求項8に記載の処理製品製造装置。
【請求項12】
前記処理製品は高周波デバイスであるSAWデバイスであって、前記インプリント装置は、前記SAWデバイスの有するフィルタ部に前記ダミーパターンを設けたことを特徴とする請求項8に記載の処理製品製造装置。
【請求項13】
前記処理製品は高周波デバイスであるSAWデバイスであって、前記インプリント装置は、前記SAWデバイスの有する電極パット部又はアース部の少なくとも一方に前記ダミーパターンを設けたことを有する特徴とする請求項9に記載の処理製品製造装置。
【請求項14】
最終的に処理製品となる処理製品基材の表面に成形材料を塗布し、前記塗布された成形材料にスタンパの有する凹凸形状のパターンを転写し、前記転写されたパターンをマスクとして前記処理製品基材をエッチングする処理製品製造方法において、
前記転写は、前記処理製品基材から形成される処理製品の機能を果たすのに必要のないダミーパターンを転写することを特徴とする処理製品製造方法。
【請求項15】
前記処理製品はドーナツ状の円板に同心円状にサーボパターンやデータの正規パターン領域を有する磁気ディスクであって、前記転写は前記処理製品として機能を果たす正規パターンの他に設けられた前記ダミーパターンを前記ドーナツ状の円板の内側及び外側の領域、又は前記磁気ディスクの前記正規パターン領域に転写することを特徴とする請求項14に記載の処理製品製造方法。
【請求項16】
前記処理製品は高周波デバイスであるSAWデバイスであって、前記転写は前記処理製品として機能を果たす正規パターンの他に設けられた前記ダミーパターンを前記SAWデバイスの有するフィルタ部に転写することを特徴とする請求項14に記載の処理製品製造方法。
【請求項17】
前記処理製品は高周波デバイスであるSAWデバイスであって、前記転写は前記処理製品として機能を果たす正規パターンを平面的に拡大する前記ダミーパターンを前記SAWデバイスの有する電極パット部又はアース部の少なくとも一方に転写することを特徴とする請求項14に記載の処理製品製造方法。
【請求項18】
処理製品基材の表面に成形材料を塗布し、前記塗布された成形材料にスタンパの有する凹凸形状のパターンを転写し、前記転写されたパターンをマスクとして前記処理製品基材をエッチングされ製造された処理製品において、
処理製品の機能を果たすのに必要のないダミーパターンを有することを特徴とする処理製品。
【請求項19】
前記ダミーパターンは、前記処理製品として機能を果たす正規パターンの他に設けられたパターンであることを特徴とする請求項18に記載の処理製品。
【請求項20】
前記ダミーパターンは、前記処理製品として機能を果たす正規パターンを平面的に拡大するパターンであることを特徴とする請求項18に記載の処理製品。
【請求項21】
表面に凹凸形状のパターンを備え、塗布された成形材料を有する処理製品基材の表面に有する成形材料に前記凹凸形状のパターンを転写するスタンパにおいて、
前記処理製品基材から形成される処理製品の機能を果たすのに必要のないダミーパターンを有することを特徴とするスタンパ。
【請求項22】
前記ダミーパターンは、前記処理製品として機能を果たす正規パターンの他に設けられたパターンであることを特徴とする請求項21に記載のスタンパ。
【請求項23】
前記ダミーパターンは、前記処理製品として機能を果たす正規パターンを平面的に拡大するパターンであることを特徴とする請求項21に記載のスタンパ。
【請求項24】
前記ダミーパターンは、前記処理製品として機能を果たす正規パターンが必要とする深さ以上の深さを有するパターンであることを特徴とする請求項21に記載のスタンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−77599(P2013−77599A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215000(P2011−215000)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】