ステアリングホイール用エアバッグ装置
【課題】操舵時の運転者に応じてエアバッグの膨張完了形状を規制可能なステアリングホイール用エアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】本発明のステアリングホイール用エアバッグ装置M1は、膨張完了時にステアリングホイールWのリング部R上で膨らむ袋状のエアバッグ29を備える。エアバッグ29が、中央付近を運転者を受け止める拘束面38aとする運転者側壁部38を備えるとともに、内部に配設される複数のテザー43により、膨張完了時の運転者側壁部38の収納部位からの離隔距離を規制される。少なくとも4箇所に配置されるテザー43が、それぞれ、制御装置によって作動を制御される長さ調整機構により、長さ寸法を調整可能とされて、膨張時のエアバッグ29が、各テザー43の長さ寸法の調整により、拘束面38aを、拘束時の運転者の上半身と略平行に位置させて膨張を完了させる構成とされている。
【解決手段】本発明のステアリングホイール用エアバッグ装置M1は、膨張完了時にステアリングホイールWのリング部R上で膨らむ袋状のエアバッグ29を備える。エアバッグ29が、中央付近を運転者を受け止める拘束面38aとする運転者側壁部38を備えるとともに、内部に配設される複数のテザー43により、膨張完了時の運転者側壁部38の収納部位からの離隔距離を規制される。少なくとも4箇所に配置されるテザー43が、それぞれ、制御装置によって作動を制御される長さ調整機構により、長さ寸法を調整可能とされて、膨張時のエアバッグ29が、各テザー43の長さ寸法の調整により、拘束面38aを、拘束時の運転者の上半身と略平行に位置させて膨張を完了させる構成とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納部位に折り畳まれて収納されるとともに、内部に膨張用ガスを流入させて、収納部位から突出して展開膨張する袋状のエアバッグを備える構成のステアリングホイール用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグ装置として、乗員の体格や着座位置、着座姿勢等に応じて、エアバッグの膨張完了形状を調整するものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このエアバッグ装置では、エアバッグの内部に配設されるテザーの長さ寸法を調整して、乗員側に配置される壁部の収納部位からの離隔距離を調整していた。
【0004】
また、従来、ステアリングホイール用エアバッグ装置として、エアバッグの内部に複数のテザーを配置させ、このテザーの長さ寸法を変更することにより、膨張完了時のエアバッグの厚さ寸法を部分的に変更可能に、膨張完了形状を調整するものがあった(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−240403号公報
【特許文献2】米国特許公報第6,254,130号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ステアリングホイール用エアバッグ装置では、エアバッグは、運転者が操舵時に把持するステアリングホイールのリング部表面を全域にわたって覆うように、膨張を完了させて、運転者がステアリングホイールと直接接触することを防止することとなる。このような構成のステアリングホイール用エアバッグ装置では、運転者の体格や着座位置、着座姿勢等によっては、膨張完了時に運転者側に配置される運転者側壁部を、拘束時の運転者の上半身と略平行に位置させることが好ましい。しかし、運転時には、ステアリングホイールの操舵角度は常に変化するものであり、エアバッグの展開膨張時にステアリングホイールが転回操舵されている場合も考慮される。そのため、ステアリングホイールの直進操舵時だけでなく、転回操舵時にも、運転者に応じてエアバッグの膨張完了形状を規制可能とする点に、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、操舵時の運転者に応じてエアバッグの膨張完了形状を規制可能なステアリングホイール用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るステアリングホイール用エアバッグ装置は、操舵時に把持するリング部と、リング部の中央付近に配置されてステアリングシャフトに締結されるボス部と、リング部とボス部とを連結するスポーク部と、を備える構成とされるとともに、リング部の上面側のリング面を、前下がりに傾斜して配置されるステアリングシャフトに対して、略直交させるように後下がりに傾斜させた状態で、ステアリングシャフトと締結されるステアリングホイール本体における前記ボス部の上部に配設される構成とされて、
ボス部の上部側に配置される収納部位に折り畳まれて収納されるとともに、内部に膨張用ガスを流入させて、収納部位から突出して展開膨張する構成とされ、膨張完了時にリング部上でリング部の外径寸法より大きく膨らむように配設される袋状のエアバッグを備え、
エアバッグが、膨張完了時に運転者側に配置されて中央付近を運転者を受け止める拘束面とする運転者側壁部と、収納部位側に配置されて収納部位に取り付けられる車体側壁部と、を備えるとともに、内部に配設されて収納部位側と拘束面のエリアの運転者側壁部とに結合される複数のテザーにより、膨張完了時における運転者側壁部の収納部位からの離隔距離を規制される構成のステアリングホイール用エアバッグ装置であって、
テザーが、車体側壁部の収納部位への取付部位を中心とした周囲において、相互に離れた少なくとも4箇所に配置されて、
各テザーが、それぞれ、着座した運転者を受け止めるエアバッグの好適膨張モードを判断する制御装置によって作動を制御される長さ調整機構により、長さ寸法を調整可能に構成されて、
膨張時のエアバッグが、長さ調整機構による各テザーの長さ寸法の調整により、拘束面を、拘束時の運転者の上半身と略平行に位置させて膨張を完了させるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のステアリングホイール用エアバッグ装置では、エアバッグの内部に配置されて収納部位側と運転者側壁部とに結合されるテザーが、車体側壁部の収納部位への取付部位を中心とした周囲において、相互に離れた少なくとも4箇所に配置されて、それぞれ、長さ調整機構によって、長さ寸法を変更可能に構成されていることから、例えば、ステアリングホイールの転回操舵時においてエアバッグが展開膨張する際に、ステアリングホイールの操舵角とともに、着座した運転者の体格や着座位置、着座姿勢等を検知した制御装置からの作動信号を受けて、各テザーの長さ調整機構を作動させれば、各テザーが、転回操舵時のステアリングホイールにおいて後方側に位置するテザーの長さ寸法を、前方側に位置するテザーの長さ寸法よりも短くするように、長さ寸法を調整されることとなる。本発明のステアリングホイール用エアバッグ装置では、テザーが、運転者側壁部における運転者を受け止める拘束面のエリアに結合される構成である。そのため、拘束面が、エアバッグの膨張完了時において、収納部位からの離隔距離を、前端側を大きくし、後端側を小さくするようにして、拘束時の運転者の上半身と略平行となるように、配置されることとなる。そのため、運転者の上半身に沿った広い平面状の拘束面を確保することができ、この拘束面により、運転者の上半身(胸部や腹部)を、反力を抑えて、クッション性よく、かつ、ソフトに受け止めることができる。
【0009】
また、本発明のステアリングホイール用エアバッグ装置では、テザーが、車体側壁部の収納部位への取付部位を中心とした周囲において、相互に離れた少なくとも4箇所に配置されていることから、ステアリングホイールの転回角度が90°程度異なっていても、エアバッグの膨張完了時において、拘束面を、バランスよく、拘束時の運転者の上半身と略平行となるように配置させることができる。
【0010】
したがって、本発明のステアリングホイール用エアバッグ装置では、操舵時の運転者に応じてエアバッグの膨張完了形状を規制することができる。
【0011】
そして、本発明のステアリングホイール用エアバッグ装置では、具体的には、テザーを、ステアリングホイールの直進操舵時を基準とする配置位置として、車体側壁部の収納部位への取付部位を中心として放射状となる4箇所であって、取付部位から前方となる2箇所と後方となる2箇所との相互に略90°ずつずれた位置に、配置させる構成とし、
作動時の各テザーを、長さ調整機構の調整により、前方に位置する2つのテザーの長さ寸法を後方に位置する2つのテザーの長さ寸法よりも長くするように調整して、拘束面を、拘束時の運転者の上半身に対応させて略鉛直面に沿って配置させるように、構成することが好ましい。
【0012】
また、上記構成のステアリングホイール用エアバッグ装置において、各テザーを、それぞれ、長さ寸法を3段階で変更可能に、構成すれば、拘束面の収納部位からの離隔距離を、ステアリングホイールの転回角度に応じて、的確に変更することが可能となって、好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜3に、本発明の一実施形態である実施形態のステアリングホイール用のエアバッグ装置M1を示す。なお、実施形態における前後・上下・左右方向は、特に断らない限り、直進時の車両の前後・上下・左右の方向に対応するものである。
【0014】
エアバッグ装置M1は、図2,3に示すように、ステアリングホイールWの中央のボス部Bにおける上部に配置される構成である。ステアリングホイールWは、構成部品上では、エアバッグ装置M1とステアリングホイール本体1とから構成されている。
【0015】
ステアリングホイール本体1は、操舵時に把持するリング部Rと、リング部Rの中央付近に配置されてステアリングシャフトSSに締結されるボス部Bと、リング部Rとボス部Bとを連結する4本のスポーク部Sと、を備えて構成されている。ステアリングシャフトSSは、図1,12に示すごとく、前下がりに傾斜して配置されている。そして、ステアリングホイール本体1は、リング部Rにおける上面側のリング面Rf(図12参照)を、ステアリングシャフトSSに対して略直交させるように、後下がりに傾斜させた状態で、ステアリングシャフトSSに締結される構成である。また、ステアリングホイール本体1は、リング部R,ボス部B,スポーク部Sの各部を連結するように配置されるアルミニウム合金等からなる芯金2と、リング部Rとリング部R側の各スポーク部Sとの芯金2を被覆する合成樹脂製の被覆層3と、ボス部Bの下部に配置される合成樹脂製のロアカバー4と、を備えて構成されている(図3参照)。実施形態の場合、ステアリングホイールWは、ステアリングシャフトSSを回動軸として、左右に2.5〜6回転程度、回動可能に、構成されている。
【0016】
エアバッグ装置M1は、図2,3に示すように、折り畳まれたエアバッグ29と、エアバッグ29に膨張用ガスを供給するインフレーター8と、エアバッグ29とインフレーター8とを収納して保持する収納部位としてのバッグホルダ11と、バッグホルダ11の開口を覆うように配設されるエアバッグカバーとしてのパッド25と、エアバッグ29内に配設される後述する4本のテザー43(43A,43B,43C,43D)の長さ寸法をそれぞれ調整する長さ調整機構としての4つの係止手段21(21A,21B,21C,21D)と、を備えて構成されている。インフレーター8と各係止手段21(21A,21B,21C,21D)との作動は、制御装置60により制御される。
【0017】
インフレーター8は、上部に膨張用ガスを吐出する複数のガス吐出口8bを備えた略円柱状の本体8aと、本体8aの外周面から突出して配置される略四角板状のフランジ部8cと、を備えて構成されている。
【0018】
リテーナ6は、略四角環状体の板金製として、四隅に、下方へ突出するボルト6aを備えて構成されている。このリテーナ6は、エアバッグ29の後述するガス流入口32の周縁33やバッグホルダ11を経て、インフレーター8のフランジ部8cから各ボルト6aを突出させ、各ボルト6aにナット7を締結することにより、エアバッグ29とインフレーター8とをバッグホルダ11に取り付ける構成である。
【0019】
バッグホルダ11は、図3に示すように、それぞれ板金製とされるホルダ本体12と、保持プレート16と、から構成されている。ホルダ本体12は、板金製とされて、略四角板状の底壁部13と、底壁部13の周縁から上方に延びるとともに上端側を開口させて構成される側壁部14と、を備えて構成されている、底壁部13における中央付近には、円形に開口してインフレーター8の本体8aを下方から上方へ挿入可能な挿通孔13aが、形成されている。底壁部13における挿通孔13aの周縁であって、挿通孔13aを中心として放射状となる4箇所には、エアバッグ29に配設される各テザー43(43A,43B,43C,43D)の中間部位に形成されるループ部45を挿通可能とする貫通孔13bが、形成されている(図4参照)。具体的には、貫通孔13bは、中心を挿通孔13aの中心と一致させて一辺を略左右方向に沿わせるように配置させた正方形の頂点付近となるように、90°ずつずれて、配置されている。
【0020】
そして、底壁部13の下部側であって、各貫通孔13bの近傍となる位置には、図4,5に示すように、各テザー43(43A,43B,43C,43D)の中間部位に形成されるループ部45を連結可能な4つの係止手段21(21A,21B,21C,21D)が、それぞれ、配設されている。各係止手段21(21A,21B,21C,21D)は、ループ部45に挿通される係止ピン22と、底壁部13の下面側に固着されて係止ピン22を引き込み可能に作動するアクチュエータ23と、から構成されている。アクチュエータ23が、係止ピン22を引き込ませるように作動すると、係止ピン22がループ部45を係止している状態から、係止を解除する状態に移行する。このアクチュエータ23は、制御装置60からの電気信号により係止ピン22を移動できれば、油圧・水圧・空気圧、あるいは、インフレーター等の膨張するガス圧を発生させる場合を含めた流体圧を利用するピストンシリンダ、それらの流体圧や電気を利用したモータ、電磁ソレノイド、復元時の付勢力を利用するばね等を、使用することができる。なお、底壁部13の下面における各貫通孔13bの周縁であって、アクチュエータ23と対向する縁部側には、図5に示すように、係止ピン22の先端を支持して、係止時における係止ピン22からのループ部45の抜けを防止する支持台13cが、配設されている。
【0021】
ホルダ本体12に固着された保持プレート16は、左右両側のスポーク部Sにおけるリング部R近傍の被覆層3の部位付近まで延びる保持部16aを備え、各保持部16aには、ホーンスイッチ17が取り付けられている。そして、実施形態の場合、エアバッグ装置M1は、ホーンスイッチ17の下面側において芯金2に固定される連結板19に、ホーンスイッチ17を介在させて支持されることにより、ステアリングホイール本体1のボス部Bの上部に取り付けられることとなる。
【0022】
エアバッグカバーとしてのパッド25は、オレフィン系熱可塑性エラストマー等の合成樹脂製とされて、図2,3に示すように、ボス部Bの上部側を覆う構成とされている。パッド25におけるバッグホルダ11の側壁部14で囲まれた開口11aを覆う部位には、エアバッグ29の膨張時に開く扉部26が、周囲に破断予定部27を設けて、配設されている。実施形態の場合、扉部26は、周囲に略H字形状の破断予定部27を配設させて、前後両側に開き可能な2枚として、構成されている。このパッド25は、図示しないリベット等を用いて、バッグホルダ11の側壁部14に固定される構成である。
【0023】
エアバッグ29は、図6〜8に示すように、膨張用ガスを流入させて膨張する袋状のバッグ本体30と、バッグ本体30の膨張完了形状を規制するテザー43(43A,43B,43C,43D)と、を備えて構成されている。
【0024】
バッグ本体30は、膨張完了時の形状を、リング部R全体を覆い可能な略円形状とされて、図12に示すごとく、膨張完了時の外径寸法を、リング部Rの外径寸法より大きくするように構成されており、膨張完了時の外周壁が、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。バッグ本体30の外周壁は、膨張完了時にステアリングホイールW側となる車体側壁部31と、膨張完了時に運転者MD側となる運転者側壁部38と、から構成されている。車体側壁部31の中央付近には、インフレーター8の本体8aを下方から挿入させて、インフレーター8から吐出される膨張用ガスを、バッグ本体30内に流入させるためのガス流入口32が、形成されている。ガス流入口32の周縁33には、リテーナ6に形成されたボルト6aを挿通させる取付孔34が、形成されており、エアバッグ29は、リテーナ6を利用して、ガス流入口32の周縁33を、バッグホルダ11に取り付ける構成である。また、ガス流入口32の周縁33であって、各テザー43(43A,43B,43C,43D)の車体側壁部31への連結部位近傍となる4箇所には、各テザー43(43A,43B,43C,43D)に形成されるループ部45を挿通可能とする貫通孔35が、それぞれ、形成されている。さらに、車体側壁部31の所定箇所には、余剰の膨張用ガスを排気するベントホール36が、形成されている。
【0025】
バッグ本体30は、図9に示すように、車体側壁部31を構成する円形の車体側基布40と、運転者側壁部38を構成する運転者側基布41と、から構成されている。ガス流入口32は、車体側基布40の中央に形成されており、取付孔34、貫通孔35、及び、ベントホール36は、それぞれ、車体側基布40の所定位置に、形成されている。
【0026】
バッグ本体30内に配置されるテザー43(43A,43B,43C,43D)は、それぞれ、長さ寸法を略同一とした帯状とされて、端部43a側を車体側壁部31におけるガス流入口32の周縁33となる部位に結合され、端部43b側を運転者側壁部38の中央付近となる部位に結合されている。実施形態の場合、テザー43(43A,43B,43C,43D)は、エアバッグ29を平らに展開した状態の平面視において、中心を、ガス流入口32の中心(運転者側壁部38の中心)と一致させて一辺を略左右方向に沿わせるように配置させた正方形の頂点付近に位置するように、配置されている。換言すれば、テザー43(43A,43B,43C,43D)は、エアバッグ29を平らに展開した状態の平面視において、ガス流入口32の周縁33において、ガス流入口32を中心とした放射状に、それぞれ、90°ずつずれて、配置されている。そして、各テザー43(43A,43B,43C,43D)における中間部位の内周側には、それぞれ、ループ部45が、形成されている。各ループ部45は、エアバッグ29の折り畳み収納時において、それぞれ、車体側壁部31に形成される貫通孔35を介して、バッグホルダ11の底壁部13に形成される貫通孔13bから突出され、係止ピン22を挿通されて、各係止手段21(21A,21B,21C,21D)に係止される構成である。そして、各係止手段21(21A,21B,21C,21D)は、制御装置60からの作動信号を受けてアクチュエータ23が作動すると、係止ピン22が引き込まれて、ループ部45との係止を解除されることとなる。
【0027】
実施形態の場合、テザー43(43A,43B,43C,43D)は、テザー用基布48から構成され、各ループ部45は、それぞれ、ループ部用布材57から構成されている。テザー用基布48は、図9に示すように、車体側壁部31側に配設される車体側部材49と、運転者側壁部38側に配置される運転者側部材53と、から構成されている。
【0028】
車体側部材49は、略円形とされて車体側壁部31に連結される連結布部50と、連結布部50の周縁から放射状に延びて長さ寸法を同一に設定された4つの帯状のテザー用部位51と、から構成されている。連結布部50には、ガス流入口32や取付孔34及び貫通孔35に対応して、開口(図符号省略)が形成されている。連結布部50は、ガス流入口32の周縁となる部位において、周縁を、車体側基布40(車体側壁部31)に縫着されている。運転者側部材53は、略円形とされて運転者側壁部38に連結される連結布部54と、連結布部54の周縁から放射状に延びて長さ寸法を同一に設定された4つの帯状のテザー用部位55と、から構成されている。連結布部54は、中央を運転者側基布41の中央と略一致させるようにして、周縁を、運転者側基布41に縫着されている。そして、各テザー43(43A,43B,43C,43D)は、車体側部材49及び運転者側部材53のテザー用部位51,55の先端51a,55a相互を縫着させて、構成されている。各ループ部用布材57は、テザー用部位51,55よりも狭幅の帯状とされるもので、中央付近で折り返した状態の両端を、テザー用部位51,55の先端51a,55a間に配置させ、先端51a,55aと共縫いして、ループ部45を構成することとなる。
【0029】
すなわち、各テザー43(43A,43B,43C,43D)は、連結布部50の車体側基布40(車体側壁部31)との縫合部位52により、端部43a側を、ガス流入口32の周縁33とともに収納部位としてのバッグホルダ11側に結合され、連結布部54の運転者側基布41(運転者側壁部38)との縫合部位56により、端部43b側を、運転者側壁部38側に結合されることとなる。そして、実施形態のエアバッグ29では、運転者側壁部38において、連結布部54と運転者側基布41(運転者側壁部38)との縫合部位(結合部位)56で囲まれる部位が、膨張完了時に、運転者MDを受け止める拘束面38aの中央付近を構成することとなる。
【0030】
実施形態では、各テザー43は、ループ部45が係止手段21に係止を維持された状態では、テザー用部位55の長さ分、長さ寸法を短くして、運転者側壁部38のバッグホルダ11側からの離隔距離を小さくした短距離モードDM1に設定されることとなる。そして、ループ部45が係止手段21との係止を解除された状態では、各テザー43は、長さ寸法を長くして、運転者側壁部38のバッグホルダ11側からの離隔距離を大きくした長距離モードDM2に設定されることとなる。すなわち、実施形態の場合、テザー43は、係止手段21により、短距離モードDM1と長距離モードDM2との2段階で長さ寸法を調整される構成である。そして、各テザー43における短距離モードDM1と長距離モードDM2との長さ寸法の差は、各テザー用部位51,55の長さ寸法の比率、すなわち、ループ部45の配置位置、を変更することによって、調整することができる。実施形態の場合、ループ部45の配置位置(各テザー用部位51,55の長さ寸法の比率)は、前方側に位置する2つのテザー43を長距離モードDM2とし、後方側に位置する2つのテザー43を短距離モードDM1として、エアバッグ29が展開膨張した際に、膨張完了時のエアバッグ29における運転者側壁部38の拘束面38aを略鉛直方向に沿って配置可能とするように、設定されている。
【0031】
制御装置60は、実施形態の場合、図1に示すように、ステアリングホイールWの操舵角を検知可能なステアリングシャフトSSの下端側に配置される舵角センサ61や、車両の加速度や加速の方向等を検知可能な衝突検知センサ62等と、電気的に接続されるもので、衝突検知センサ62からの電気信号を入力させてインフレーター8を作動させるとともに、舵角センサ61及び衝突検知センサ62からの電気信号を入力させて、各係止手段21(21A,21B,21C,21D)の作動を制御する。実施形態の場合、舵角センサ61は、ステアリングホイールWの直進操舵時の角度を基準として、ステアリングホイールWの転回角度を検知可能に、構成されている。そして、制御装置60は、衝突検知センサ62が車両の衝突を検知した際に、舵角センサ61からの電気信号によりステアリングホイールWの操舵角を検出し、衝突検知時のステアリングホイールWにおいて、前方側に位置する2つの係止手段21に、作動信号を出力可能に、構成されている。
【0032】
次に、実施形態のエアバッグ29の製造について述べる。車体側基布40には、予め、ガス流入口32を形成しておく。また、テザー用基布48における車体側部材49の連結布部50にも、ガス流入口32を構成する開口(図符号省略)を形成しておく。まず、運転者側基布41の内表面側に、テザー用基布48における運転者側部材53を配置させ、連結布部54を、縫合部位56の部位で縫着させる。同様に、車体側基布40の内表面側に、テザー用基布48における車体側部材49を配置させ、連結布部50を、縫合部位52の部位で縫着させる。その後、ベントホール36、取付孔34、及び、貫通孔35の孔明け加工を、車体側基布40と連結布部50とに施す。勿論、この孔明け加工時に、ガス流入口32を形成してもよい。
【0033】
その後、車体側基布40と運転者側基布41とを、それぞれ、外表面側が対向するように重ねて、外周縁相互を縫着させる。外周縁の縫合作業後、外周縁の縫合代がエアバッグ29の外表面に表れないように、バッグ本体30を、ガス流入口32を利用して反転させる。そして、反転後に、各テザー用部位51,55の先端51a,55a相互をガス流入口32から引き出し、中央付近で折り返したループ部用布材57を、それぞれ、先端51a,55aの間に挟んで、ループ部用布材57を共縫いするように先端51a,55a相互を縫着させ、各テザー43A,43B,43C,43Dを形成すれば、エアバッグ29を製造することができる。
【0034】
そして、上記のように製造したエアバッグ29を使用して、エアバッグ装置M1を組み立てる。まず、リテーナ6をガス流入口32からエアバッグ29内に挿入させ、各ボルト6aを取付孔34から突出させた状態で、エアバッグ29を、バッグホルダ11内に収納可能なように、折り畳む、このとき、各ループ部45は、それぞれ、貫通孔35から突出させておく。次いで、各ボルト6aを底壁部13から突出させ、各ループ部45を貫通孔13bから突出させるようにして、折り畳まれたエアバッグ29を、予め、係止手段21(21A,21B,21C,21D)、ホーンスイッチ17、及び、連結板19を取り付けておいたバッグホルダ11内に収納させる。そして、各係止手段21(21A,21B,21C,21D)の係止ピン22を各ループ部45に挿通させ、係止ピン22の先端側を支持台13cに支持させるようにして、各ループ部45を各係止手段21(21A,21B,21C,21D)に係止させる。その後、インフレーター8の本体8aを下方から底壁部13の挿通孔13a内に挿入させて、フランジ部8cから突出した各ボルト6aにナット7を締結させれば、バッグホルダ11に、エアバッグ29とインフレーター8とを保持させることができる。その後、エアバッグ29にパッド25を被せ、図示しないリベット等を用いて、バッグホルダ11の側壁部14にパッド25を連結させれば、エアバッグ装置M1を組み立てることができる。
【0035】
このようにして組み立てたエアバッグ装置M1は、車両に取付済みのステアリングホイール本体1の図示しない取付座に対し、所定のボルトを使用して、連結板19を連結させれば、ステアリングホイール本体1に組み付けることができ、このとき、ステアリングホイールWの組立と、車両へのステアリングホイールWの搭載と、が、完了することとなる。エアバッグ装置M1の車両への搭載時には、制御装置60から延びる作動信号入力用のリード線を、インフレーター8と各係止手段21(21A,21B,21C,21D)とに接続させておく。
【0036】
エアバッグ装置M1の車両への搭載後、走行中の車両が衝突すれば、制御装置60がインフレーター8に作動信号を出力することとなって、インフレーター8が、膨張用ガスをガス吐出口8bから吐出させ、エアバッグ29が膨張して、パッド25の扉部26を押し、ステアリングホイールWの上面側を覆うように展開膨張して、膨張を完了させることとなる。
【0037】
そして、実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ29の内部に配置されて収納部位としてのバッグホルダ11側と運転者側壁部38とに結合されるテザー43A,43B,43C,43Dが、車体側壁部31におけるバッグホルダ11への取付部位(ガス流入口32の周縁33)を中心とした周囲において、相互に離れた少なくとも4箇所に配置されて、それぞれ、長さ調整機構としての係止手段21A,21B,21C,21Dによって、長さ寸法を変更可能に構成されている。そのため、例えば、ステアリングホイールWの転回操舵時においてエアバッグ29が展開膨張する際に、制御装置60からの作動信号を受けて、各係止手段21A,21B,21C,21Dを作動させれば、各テザー43A,43B,43C,43Dの長さ寸法を調整することができる。
【0038】
例えば、実施形態のエアバッグ装置M1では、図2に示すごとく、ステアリングホイールWが操舵角度を直進操舵時と略同一として操舵されている場合には、前方側に位置する係止手段21A,21Bのみが、制御装置60からの作動信号を入力させることとなる。また、図10のAに示すごとく、ステアリングホイールWが右方へ略90°傾いた状態で操舵されている場合には、前方に位置する係止手段21A,21Cのみが、制御装置60からの作動信号を入力させることとなる。さらに、図10のBに示すごとく、ステアリングホイールWが前後で略反転した状態で操舵されている場合には、前方に位置する係止手段21C,21Dのみが、制御装置60からの作動信号を入力させることとなり、図10のCに示すごとく、ステアリングホイールWが左方へ略90°傾いた状態で操舵されている場合には、前方に位置する係止手段21B,21Dのみが、制御装置60からの作動信号を入力させることとなる。
【0039】
そして、制御装置60からの作動信号を入力させた各係止手段21では、アクチュエータ23が係止ピン22を引き込むように作動することとなって、エアバッグ29の展開膨張前に、予め、ループ部45の係止手段21への係止状態が解除されることとなり、テザー43が、長距離モードDM2に設定されることとなる。制御装置60からの作動信号を入力させない状態では、ループ部45の係止手段21への係止を維持された状態でエアバッグ29が膨張することとなり、テザー43は、短距離モードDM1に設定されることとなる。
【0040】
すなわち、実施形態のエアバッグ装置M1では、ステアリングホイールWが、直進操舵時と略同じ位置にある状態、直進操舵時に対して略90°右方へ傾いた状態、直進操舵時に対して略180°反転した状態、及び、直進操舵時に対して略90°左方へ傾いた状態、のいずれの状態にあっても、前方側に位置する2つのテザー43が長さ寸法を長距離モードDM2に設定され、後方側に位置する2つのテザー43が長さ寸法を短距離モードDM1に設定されることとなり、4つのテザー43(43A,43B,43C,43D)の端部43bを結合させて構成される結合部位(縫合部位)56で囲まれる面により構成される運転者側壁部38の拘束面38aの中央付近の部位が、バッグホルダ11からの離隔距離を、前端側を大きくし、後端側を小さくするようにして、図11に示すごとくエアバッグ29が膨張を完了させることとなる。具体的には、エアバッグ29は、図12に示すごとく、拘束面38aを、拘束時の運転者MDの上半身に対応させて略鉛直面に沿って配置させるように膨張を完了させることとなる。そのため、運転者MDの上半身に沿った広い平面状の拘束面38aを確保することができ、この拘束面38aにより、運転者MDの上半身(胸部や腹部)を、反力を抑えて、クッション性よく、かつ、ソフトに受け止めることができる。
【0041】
また、実施形態のエアバッグ装置M1では、テザー43A,43B,43C,4Dが、ガス流入口32を中心とした周囲において、相互に離れた少なくとも4箇所に配置されていることから、ステアリングホイールWの転回角度が90°程度異なっていても、エアバッグ29の膨張完了時において、拘束面38aを、バランスよく、拘束時の運転者MDの上半身と略平行となるように配置させることができる。
【0042】
したがって、実施形態のステアリングホイール用のエアバッグ装置M1では、操舵時の運転者MDに応じてエアバッグ29の膨張完了形状を規制することができる。
【0043】
特に、実施形態のエアバッグ装置M1では、テザー43A,43B,43C,43Dは、ステアリングホイールWの直進操舵時におけるエアバッグ29の膨張完了時において、ガス流入口32を中心として放射状となる4箇所であって、ガス流入口32から前方となる2箇所と、後方となる2箇所と、において、それぞれ、相互に略90°ずつずれた位置に配置されていることから、ステアリングホイールWが、例えば、直進操舵時と同じ位置にある状態、直進操舵時に対して略90°右方へ傾いた状態、直進操舵時に対して略180°反転した状態、及び、直進操舵時に対して略90°左方へ傾いた状態、のいずれの状態にあっても、エアバッグ29の膨張完了時において、2つのテザー43がガス流入口32の前方に位置し、2つのテザー43がガス流入口32の後方に位置することとなる。そのため、拘束面38aの角度を安定させることができて、好ましい。なお、実施形態のエアバッグ装置M1において、例えば、ステアリングホイールWが直進操舵時に対して略45°傾いた状態で車両の衝突を検知した場合には、テザー34A,43B,43C,43Dがガス流入口32を中心とした前後左右に配置されることとなるが、前方側に位置する1つのテザー43のみを長距離モードDM2とし、左右両側と後方側に位置する3つのテザー43を短距離モードDM1としてもよく、また、前方側と左右両側とに位置する3つのテザー43を長距離モードDM2とし、後方側に位置する1つのテザー43を短距離モードDM1としてもよい。
【0044】
また、実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ29内に配設されるテザー43の長さ寸法を2段階で調整可能であるが、図13に示すエアバッグ装置M2のごとく、エアバッグ29A内に配設されるテザー65の長さ寸法を3段階で調整可能とするように、構成してもよい。図13に示すエアバッグ装置M2は、エアバッグ29A内に配設されて運転者側壁部38Aのバッグホルダ11からの離隔距離を規制するように運転者側壁部38Aに結合される4つのテザー65以外は、前述のエアバッグ装置M1と同様の構成であり、同一の部材には同一の図符号を付して説明を省略する。
【0045】
テザー65は、前述のエアバッグ装置M1におけるテザー43と同様に、ステアリングホイールWの直進操舵時におけるエアバッグ29Aの膨張完了時において、ガス流入口32を中心として放射状となる4箇所であって、ガス流入口32から前方となる2箇所と、後方となる2箇所と、において、それぞれ、相互に略90°ずつずれた位置に配置されている(図14のA参照)。各テザー65は、先端65a側を、運転者側壁部38に結合され、元部65b側をバッグホルダ11側に配置される長さ調整手段としての牽引手段66により牽引されて、膨張完了時のエアバッグ29Aにおける運転者側壁部38のバッグホルダ11側からの離隔距離を規制可能に構成されている。
【0046】
各牽引手段66は、バッグホルダ11の底壁部13の下面側において、貫通孔13bから突出しているテザー65の元部65b側を、巻き取りあるいは繰り出し可能に連結させた牽引ローラ67から、構成されている。この牽引ローラ67は、制御装置からの作動信号を受けて、テザー65の元部65b側を巻き取りあるいは繰り出し可能に作動されるもので、実施形態のエアバッグ装置M2では、各テザー65は、牽引ローラ67により巻き取られた状態を短距離モードDM1とし、牽引ローラ67から繰り出された状態を長距離モードDM2として、牽引ローラ67を作動させない状態を中距離モードDM3とされることとなる。
【0047】
このような構成のエアバッグ装置M2では、例えば、ステアリングホイールWが、図14のBに示すごとく、転回角度を略45°としてエアバッグ29Aが展開膨張する場合、すなわち、各テザー65及び牽引手段66がガス流入口の前後左右に配置されるような場合にも、前方側に位置するテザー65を牽引ローラ67から繰り出して長距離モードDM2とし、後方側に位置するテザー65を牽引ローラ67により巻き取って短距離モードDM1として、前後の中間となる左右両側に位置するテザー65を牽引ローラ67を作動させない状態として中距離モードDM3とするように、制御装置により制御すれば、運転者側壁部38におけるテザー65を結合させた部位で囲まれる拘束面38aを、バランスよく、拘束時の運転者MDの上半身と略平行となるように配置させることができる。すなわち、上記構成のエアバッグ装置M2では、各テザー65の長さ寸法を、ステアリングホイールの転回角度に応じて、一層的確に変更することが可能となる。
【0048】
また、上記構成のエアバッグ装置M2では、各テザー65が、長さ寸法を3段階で調整可能であることから、図15において実線で示すごとく、前方側に位置するテザー65を長距離モードDM2とし、後方側に位置するテザー65を中距離モードDM3としてエアバッグ29Aを膨張させたり、図15において二点鎖線で示すごとく、前方側に位置するテザー65を中距離モードDM3とし、後方側に位置するテザー65を短距離モードDM1としてエアバッグ29Aを膨張させることもできる。すなわち、上記構成のエアバッグ装置M2では、エアバッグ29Aを、拘束面38aの角度を略一定に保ちつつ、例えば、制御装置がステアリングホイールWに接近して着座した運転者を検知した場合には、運転者側への突出量を抑えた状態とし、逆に、制御装置がステアリングホイールWから離れて着座した運転者を検知した場合には、運転者側へ大きく突出させるように、運転者側への突出量を変更させるように、膨張させることもできる。
【0049】
実施形態のエアバッグ装置M1,M2では、勿論、各テザー43,65の長さ寸法を一定とした状態で、エアバッグ29,29Aを膨張させることもできる。例えば、運転者MDがシートベルトを未装着の場合には、運転者側壁部38の拘束面38aを運転者MDの上半身と略平行とするように、係止手段21及び牽引手段66を作動させ、運転者MDがシートベルトを装着している場合には、係止手段21及び牽引手段66を作動させずに、拘束面38aをリング面Rfと略平行として、エアバッグ29,29Aを膨張させる構成としてもよい。車両に応じては、運転者がシートベルトを装着している場合、車両の前面衝突時、運転者の腰部が、シートに固定されて、上半身の頭部側だけが前方移動する傾斜状態となる場合があり、その場合には、リング面Rfと略平行とするように拘束面38aを配置させる方が、傾斜して移動してくる運転者の上半身を広い面で受けることができるためである。
【0050】
そして、実施形態のエアバッグ装置M1(M2)では、運転者がシートベルトを装着している場合において、拘束面38aをステアリングホイールWのリング面Rfと略平行とするように、エアバッグ29(29A)を膨張させる場合には、テザー43,65の長さ寸法を調整することにより、着座している運転者の体格や着座位置に応じて、膨張完了時のエアバッグ29(29A)の厚さ寸法(バッグホルダ11からの運転者側壁部38の離隔距離)を変更することも可能である。すなわち、例えば、小柄な運転者やステアリングホイールWに接近している運転者を検知した場合には、図16において二点鎖線で示すごとく、すべてのテザー43(65)を短距離モードDM1としてエアバッグ29,29Aを膨張させ、大柄な運転者やステアリングホイールWから離れている運転者を検知した場合には、図16において実線で示すごとく、すべてのテザー43(65)を長距離モードDM2としてエアバッグ29(29A)を膨張させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態であるステアリングホイール用のエアバッグ装置が搭載されているステアリングホイールと運転者との状態を示す側面図である。
【図2】実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示すステアリングホイールの部分平面図である。
【図3】実施形態のエアバッグ装置の概略断面図であり、図2のIII−III部位に対応する図である。
【図4】実施形態のエアバッグ装置において、係止手段の部位を示す部分拡大断面図である。
【図5】図4のV−V部位を示す概略断面図である。
【図6】実施形態のエアバッグ装置に使用されるエアバッグを平らに転回した状態の平面図である。
【図7】図6のエアバッグを平らに展開した状態の底面図である。
【図8】図6のエアバッグの概略断面図であり、ループ部を貫通孔から突出させた状態を示す。
【図9】図6のエアバッグの構成部材を示す分解斜視図である。
【図10】実施形態のエアバッグ装置を搭載させたステアリングホイールを転回させた状態を示す概略部分平面図である。
【図11】図6のエアバッグを単体で膨張させた状態を示す前後方向に沿った概略断面図である。
【図12】実施形態のエアバッグ装置をステアリングホイールに搭載させてエアバッグが膨張を完了した状態を示す概略側面図である。
【図13】本発明の他の実施形態を示すエアバッグ装置の概略断面図である。
【図14】図13のエアバッグ装置を搭載したステアリングホイールの概略部分平面図であり、直進操舵時と、45°転回させた状態と、を示す図である。
【図15】実施形態のエアバッグ装置をステアリングホイールに搭載させてエアバッグが膨張を完了した状態を示す概略側面図である。
【図16】実施形態のエアバッグ装置をステアリングホイールに搭載させてエアバッグが膨張を完了した状態を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0052】
1…ステアリングホイール本体、
8…インフレーター、
11…バッグホルダ(収納部位)、
21…係止手段(長さ調整機構)、
29・29A…エアバッグ、
30…バッグ本体、
31…車体側壁部、
32…ガス流入口、
38…運転者側壁部、
38a…拘束面、
43・65…テザー、
45…ループ部、
60…制御装置、
61…舵角センサ、
66…牽引手段(長さ調整機構)、
MD…運転者、
R…リング部、
SS…ステアリングシャフト、
W…ステアリングホイール、
M1・M2…エアバッグ装置(ステアリングホイール用エアバッグ装置)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納部位に折り畳まれて収納されるとともに、内部に膨張用ガスを流入させて、収納部位から突出して展開膨張する袋状のエアバッグを備える構成のステアリングホイール用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグ装置として、乗員の体格や着座位置、着座姿勢等に応じて、エアバッグの膨張完了形状を調整するものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このエアバッグ装置では、エアバッグの内部に配設されるテザーの長さ寸法を調整して、乗員側に配置される壁部の収納部位からの離隔距離を調整していた。
【0004】
また、従来、ステアリングホイール用エアバッグ装置として、エアバッグの内部に複数のテザーを配置させ、このテザーの長さ寸法を変更することにより、膨張完了時のエアバッグの厚さ寸法を部分的に変更可能に、膨張完了形状を調整するものがあった(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−240403号公報
【特許文献2】米国特許公報第6,254,130号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ステアリングホイール用エアバッグ装置では、エアバッグは、運転者が操舵時に把持するステアリングホイールのリング部表面を全域にわたって覆うように、膨張を完了させて、運転者がステアリングホイールと直接接触することを防止することとなる。このような構成のステアリングホイール用エアバッグ装置では、運転者の体格や着座位置、着座姿勢等によっては、膨張完了時に運転者側に配置される運転者側壁部を、拘束時の運転者の上半身と略平行に位置させることが好ましい。しかし、運転時には、ステアリングホイールの操舵角度は常に変化するものであり、エアバッグの展開膨張時にステアリングホイールが転回操舵されている場合も考慮される。そのため、ステアリングホイールの直進操舵時だけでなく、転回操舵時にも、運転者に応じてエアバッグの膨張完了形状を規制可能とする点に、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、操舵時の運転者に応じてエアバッグの膨張完了形状を規制可能なステアリングホイール用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るステアリングホイール用エアバッグ装置は、操舵時に把持するリング部と、リング部の中央付近に配置されてステアリングシャフトに締結されるボス部と、リング部とボス部とを連結するスポーク部と、を備える構成とされるとともに、リング部の上面側のリング面を、前下がりに傾斜して配置されるステアリングシャフトに対して、略直交させるように後下がりに傾斜させた状態で、ステアリングシャフトと締結されるステアリングホイール本体における前記ボス部の上部に配設される構成とされて、
ボス部の上部側に配置される収納部位に折り畳まれて収納されるとともに、内部に膨張用ガスを流入させて、収納部位から突出して展開膨張する構成とされ、膨張完了時にリング部上でリング部の外径寸法より大きく膨らむように配設される袋状のエアバッグを備え、
エアバッグが、膨張完了時に運転者側に配置されて中央付近を運転者を受け止める拘束面とする運転者側壁部と、収納部位側に配置されて収納部位に取り付けられる車体側壁部と、を備えるとともに、内部に配設されて収納部位側と拘束面のエリアの運転者側壁部とに結合される複数のテザーにより、膨張完了時における運転者側壁部の収納部位からの離隔距離を規制される構成のステアリングホイール用エアバッグ装置であって、
テザーが、車体側壁部の収納部位への取付部位を中心とした周囲において、相互に離れた少なくとも4箇所に配置されて、
各テザーが、それぞれ、着座した運転者を受け止めるエアバッグの好適膨張モードを判断する制御装置によって作動を制御される長さ調整機構により、長さ寸法を調整可能に構成されて、
膨張時のエアバッグが、長さ調整機構による各テザーの長さ寸法の調整により、拘束面を、拘束時の運転者の上半身と略平行に位置させて膨張を完了させるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のステアリングホイール用エアバッグ装置では、エアバッグの内部に配置されて収納部位側と運転者側壁部とに結合されるテザーが、車体側壁部の収納部位への取付部位を中心とした周囲において、相互に離れた少なくとも4箇所に配置されて、それぞれ、長さ調整機構によって、長さ寸法を変更可能に構成されていることから、例えば、ステアリングホイールの転回操舵時においてエアバッグが展開膨張する際に、ステアリングホイールの操舵角とともに、着座した運転者の体格や着座位置、着座姿勢等を検知した制御装置からの作動信号を受けて、各テザーの長さ調整機構を作動させれば、各テザーが、転回操舵時のステアリングホイールにおいて後方側に位置するテザーの長さ寸法を、前方側に位置するテザーの長さ寸法よりも短くするように、長さ寸法を調整されることとなる。本発明のステアリングホイール用エアバッグ装置では、テザーが、運転者側壁部における運転者を受け止める拘束面のエリアに結合される構成である。そのため、拘束面が、エアバッグの膨張完了時において、収納部位からの離隔距離を、前端側を大きくし、後端側を小さくするようにして、拘束時の運転者の上半身と略平行となるように、配置されることとなる。そのため、運転者の上半身に沿った広い平面状の拘束面を確保することができ、この拘束面により、運転者の上半身(胸部や腹部)を、反力を抑えて、クッション性よく、かつ、ソフトに受け止めることができる。
【0009】
また、本発明のステアリングホイール用エアバッグ装置では、テザーが、車体側壁部の収納部位への取付部位を中心とした周囲において、相互に離れた少なくとも4箇所に配置されていることから、ステアリングホイールの転回角度が90°程度異なっていても、エアバッグの膨張完了時において、拘束面を、バランスよく、拘束時の運転者の上半身と略平行となるように配置させることができる。
【0010】
したがって、本発明のステアリングホイール用エアバッグ装置では、操舵時の運転者に応じてエアバッグの膨張完了形状を規制することができる。
【0011】
そして、本発明のステアリングホイール用エアバッグ装置では、具体的には、テザーを、ステアリングホイールの直進操舵時を基準とする配置位置として、車体側壁部の収納部位への取付部位を中心として放射状となる4箇所であって、取付部位から前方となる2箇所と後方となる2箇所との相互に略90°ずつずれた位置に、配置させる構成とし、
作動時の各テザーを、長さ調整機構の調整により、前方に位置する2つのテザーの長さ寸法を後方に位置する2つのテザーの長さ寸法よりも長くするように調整して、拘束面を、拘束時の運転者の上半身に対応させて略鉛直面に沿って配置させるように、構成することが好ましい。
【0012】
また、上記構成のステアリングホイール用エアバッグ装置において、各テザーを、それぞれ、長さ寸法を3段階で変更可能に、構成すれば、拘束面の収納部位からの離隔距離を、ステアリングホイールの転回角度に応じて、的確に変更することが可能となって、好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜3に、本発明の一実施形態である実施形態のステアリングホイール用のエアバッグ装置M1を示す。なお、実施形態における前後・上下・左右方向は、特に断らない限り、直進時の車両の前後・上下・左右の方向に対応するものである。
【0014】
エアバッグ装置M1は、図2,3に示すように、ステアリングホイールWの中央のボス部Bにおける上部に配置される構成である。ステアリングホイールWは、構成部品上では、エアバッグ装置M1とステアリングホイール本体1とから構成されている。
【0015】
ステアリングホイール本体1は、操舵時に把持するリング部Rと、リング部Rの中央付近に配置されてステアリングシャフトSSに締結されるボス部Bと、リング部Rとボス部Bとを連結する4本のスポーク部Sと、を備えて構成されている。ステアリングシャフトSSは、図1,12に示すごとく、前下がりに傾斜して配置されている。そして、ステアリングホイール本体1は、リング部Rにおける上面側のリング面Rf(図12参照)を、ステアリングシャフトSSに対して略直交させるように、後下がりに傾斜させた状態で、ステアリングシャフトSSに締結される構成である。また、ステアリングホイール本体1は、リング部R,ボス部B,スポーク部Sの各部を連結するように配置されるアルミニウム合金等からなる芯金2と、リング部Rとリング部R側の各スポーク部Sとの芯金2を被覆する合成樹脂製の被覆層3と、ボス部Bの下部に配置される合成樹脂製のロアカバー4と、を備えて構成されている(図3参照)。実施形態の場合、ステアリングホイールWは、ステアリングシャフトSSを回動軸として、左右に2.5〜6回転程度、回動可能に、構成されている。
【0016】
エアバッグ装置M1は、図2,3に示すように、折り畳まれたエアバッグ29と、エアバッグ29に膨張用ガスを供給するインフレーター8と、エアバッグ29とインフレーター8とを収納して保持する収納部位としてのバッグホルダ11と、バッグホルダ11の開口を覆うように配設されるエアバッグカバーとしてのパッド25と、エアバッグ29内に配設される後述する4本のテザー43(43A,43B,43C,43D)の長さ寸法をそれぞれ調整する長さ調整機構としての4つの係止手段21(21A,21B,21C,21D)と、を備えて構成されている。インフレーター8と各係止手段21(21A,21B,21C,21D)との作動は、制御装置60により制御される。
【0017】
インフレーター8は、上部に膨張用ガスを吐出する複数のガス吐出口8bを備えた略円柱状の本体8aと、本体8aの外周面から突出して配置される略四角板状のフランジ部8cと、を備えて構成されている。
【0018】
リテーナ6は、略四角環状体の板金製として、四隅に、下方へ突出するボルト6aを備えて構成されている。このリテーナ6は、エアバッグ29の後述するガス流入口32の周縁33やバッグホルダ11を経て、インフレーター8のフランジ部8cから各ボルト6aを突出させ、各ボルト6aにナット7を締結することにより、エアバッグ29とインフレーター8とをバッグホルダ11に取り付ける構成である。
【0019】
バッグホルダ11は、図3に示すように、それぞれ板金製とされるホルダ本体12と、保持プレート16と、から構成されている。ホルダ本体12は、板金製とされて、略四角板状の底壁部13と、底壁部13の周縁から上方に延びるとともに上端側を開口させて構成される側壁部14と、を備えて構成されている、底壁部13における中央付近には、円形に開口してインフレーター8の本体8aを下方から上方へ挿入可能な挿通孔13aが、形成されている。底壁部13における挿通孔13aの周縁であって、挿通孔13aを中心として放射状となる4箇所には、エアバッグ29に配設される各テザー43(43A,43B,43C,43D)の中間部位に形成されるループ部45を挿通可能とする貫通孔13bが、形成されている(図4参照)。具体的には、貫通孔13bは、中心を挿通孔13aの中心と一致させて一辺を略左右方向に沿わせるように配置させた正方形の頂点付近となるように、90°ずつずれて、配置されている。
【0020】
そして、底壁部13の下部側であって、各貫通孔13bの近傍となる位置には、図4,5に示すように、各テザー43(43A,43B,43C,43D)の中間部位に形成されるループ部45を連結可能な4つの係止手段21(21A,21B,21C,21D)が、それぞれ、配設されている。各係止手段21(21A,21B,21C,21D)は、ループ部45に挿通される係止ピン22と、底壁部13の下面側に固着されて係止ピン22を引き込み可能に作動するアクチュエータ23と、から構成されている。アクチュエータ23が、係止ピン22を引き込ませるように作動すると、係止ピン22がループ部45を係止している状態から、係止を解除する状態に移行する。このアクチュエータ23は、制御装置60からの電気信号により係止ピン22を移動できれば、油圧・水圧・空気圧、あるいは、インフレーター等の膨張するガス圧を発生させる場合を含めた流体圧を利用するピストンシリンダ、それらの流体圧や電気を利用したモータ、電磁ソレノイド、復元時の付勢力を利用するばね等を、使用することができる。なお、底壁部13の下面における各貫通孔13bの周縁であって、アクチュエータ23と対向する縁部側には、図5に示すように、係止ピン22の先端を支持して、係止時における係止ピン22からのループ部45の抜けを防止する支持台13cが、配設されている。
【0021】
ホルダ本体12に固着された保持プレート16は、左右両側のスポーク部Sにおけるリング部R近傍の被覆層3の部位付近まで延びる保持部16aを備え、各保持部16aには、ホーンスイッチ17が取り付けられている。そして、実施形態の場合、エアバッグ装置M1は、ホーンスイッチ17の下面側において芯金2に固定される連結板19に、ホーンスイッチ17を介在させて支持されることにより、ステアリングホイール本体1のボス部Bの上部に取り付けられることとなる。
【0022】
エアバッグカバーとしてのパッド25は、オレフィン系熱可塑性エラストマー等の合成樹脂製とされて、図2,3に示すように、ボス部Bの上部側を覆う構成とされている。パッド25におけるバッグホルダ11の側壁部14で囲まれた開口11aを覆う部位には、エアバッグ29の膨張時に開く扉部26が、周囲に破断予定部27を設けて、配設されている。実施形態の場合、扉部26は、周囲に略H字形状の破断予定部27を配設させて、前後両側に開き可能な2枚として、構成されている。このパッド25は、図示しないリベット等を用いて、バッグホルダ11の側壁部14に固定される構成である。
【0023】
エアバッグ29は、図6〜8に示すように、膨張用ガスを流入させて膨張する袋状のバッグ本体30と、バッグ本体30の膨張完了形状を規制するテザー43(43A,43B,43C,43D)と、を備えて構成されている。
【0024】
バッグ本体30は、膨張完了時の形状を、リング部R全体を覆い可能な略円形状とされて、図12に示すごとく、膨張完了時の外径寸法を、リング部Rの外径寸法より大きくするように構成されており、膨張完了時の外周壁が、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。バッグ本体30の外周壁は、膨張完了時にステアリングホイールW側となる車体側壁部31と、膨張完了時に運転者MD側となる運転者側壁部38と、から構成されている。車体側壁部31の中央付近には、インフレーター8の本体8aを下方から挿入させて、インフレーター8から吐出される膨張用ガスを、バッグ本体30内に流入させるためのガス流入口32が、形成されている。ガス流入口32の周縁33には、リテーナ6に形成されたボルト6aを挿通させる取付孔34が、形成されており、エアバッグ29は、リテーナ6を利用して、ガス流入口32の周縁33を、バッグホルダ11に取り付ける構成である。また、ガス流入口32の周縁33であって、各テザー43(43A,43B,43C,43D)の車体側壁部31への連結部位近傍となる4箇所には、各テザー43(43A,43B,43C,43D)に形成されるループ部45を挿通可能とする貫通孔35が、それぞれ、形成されている。さらに、車体側壁部31の所定箇所には、余剰の膨張用ガスを排気するベントホール36が、形成されている。
【0025】
バッグ本体30は、図9に示すように、車体側壁部31を構成する円形の車体側基布40と、運転者側壁部38を構成する運転者側基布41と、から構成されている。ガス流入口32は、車体側基布40の中央に形成されており、取付孔34、貫通孔35、及び、ベントホール36は、それぞれ、車体側基布40の所定位置に、形成されている。
【0026】
バッグ本体30内に配置されるテザー43(43A,43B,43C,43D)は、それぞれ、長さ寸法を略同一とした帯状とされて、端部43a側を車体側壁部31におけるガス流入口32の周縁33となる部位に結合され、端部43b側を運転者側壁部38の中央付近となる部位に結合されている。実施形態の場合、テザー43(43A,43B,43C,43D)は、エアバッグ29を平らに展開した状態の平面視において、中心を、ガス流入口32の中心(運転者側壁部38の中心)と一致させて一辺を略左右方向に沿わせるように配置させた正方形の頂点付近に位置するように、配置されている。換言すれば、テザー43(43A,43B,43C,43D)は、エアバッグ29を平らに展開した状態の平面視において、ガス流入口32の周縁33において、ガス流入口32を中心とした放射状に、それぞれ、90°ずつずれて、配置されている。そして、各テザー43(43A,43B,43C,43D)における中間部位の内周側には、それぞれ、ループ部45が、形成されている。各ループ部45は、エアバッグ29の折り畳み収納時において、それぞれ、車体側壁部31に形成される貫通孔35を介して、バッグホルダ11の底壁部13に形成される貫通孔13bから突出され、係止ピン22を挿通されて、各係止手段21(21A,21B,21C,21D)に係止される構成である。そして、各係止手段21(21A,21B,21C,21D)は、制御装置60からの作動信号を受けてアクチュエータ23が作動すると、係止ピン22が引き込まれて、ループ部45との係止を解除されることとなる。
【0027】
実施形態の場合、テザー43(43A,43B,43C,43D)は、テザー用基布48から構成され、各ループ部45は、それぞれ、ループ部用布材57から構成されている。テザー用基布48は、図9に示すように、車体側壁部31側に配設される車体側部材49と、運転者側壁部38側に配置される運転者側部材53と、から構成されている。
【0028】
車体側部材49は、略円形とされて車体側壁部31に連結される連結布部50と、連結布部50の周縁から放射状に延びて長さ寸法を同一に設定された4つの帯状のテザー用部位51と、から構成されている。連結布部50には、ガス流入口32や取付孔34及び貫通孔35に対応して、開口(図符号省略)が形成されている。連結布部50は、ガス流入口32の周縁となる部位において、周縁を、車体側基布40(車体側壁部31)に縫着されている。運転者側部材53は、略円形とされて運転者側壁部38に連結される連結布部54と、連結布部54の周縁から放射状に延びて長さ寸法を同一に設定された4つの帯状のテザー用部位55と、から構成されている。連結布部54は、中央を運転者側基布41の中央と略一致させるようにして、周縁を、運転者側基布41に縫着されている。そして、各テザー43(43A,43B,43C,43D)は、車体側部材49及び運転者側部材53のテザー用部位51,55の先端51a,55a相互を縫着させて、構成されている。各ループ部用布材57は、テザー用部位51,55よりも狭幅の帯状とされるもので、中央付近で折り返した状態の両端を、テザー用部位51,55の先端51a,55a間に配置させ、先端51a,55aと共縫いして、ループ部45を構成することとなる。
【0029】
すなわち、各テザー43(43A,43B,43C,43D)は、連結布部50の車体側基布40(車体側壁部31)との縫合部位52により、端部43a側を、ガス流入口32の周縁33とともに収納部位としてのバッグホルダ11側に結合され、連結布部54の運転者側基布41(運転者側壁部38)との縫合部位56により、端部43b側を、運転者側壁部38側に結合されることとなる。そして、実施形態のエアバッグ29では、運転者側壁部38において、連結布部54と運転者側基布41(運転者側壁部38)との縫合部位(結合部位)56で囲まれる部位が、膨張完了時に、運転者MDを受け止める拘束面38aの中央付近を構成することとなる。
【0030】
実施形態では、各テザー43は、ループ部45が係止手段21に係止を維持された状態では、テザー用部位55の長さ分、長さ寸法を短くして、運転者側壁部38のバッグホルダ11側からの離隔距離を小さくした短距離モードDM1に設定されることとなる。そして、ループ部45が係止手段21との係止を解除された状態では、各テザー43は、長さ寸法を長くして、運転者側壁部38のバッグホルダ11側からの離隔距離を大きくした長距離モードDM2に設定されることとなる。すなわち、実施形態の場合、テザー43は、係止手段21により、短距離モードDM1と長距離モードDM2との2段階で長さ寸法を調整される構成である。そして、各テザー43における短距離モードDM1と長距離モードDM2との長さ寸法の差は、各テザー用部位51,55の長さ寸法の比率、すなわち、ループ部45の配置位置、を変更することによって、調整することができる。実施形態の場合、ループ部45の配置位置(各テザー用部位51,55の長さ寸法の比率)は、前方側に位置する2つのテザー43を長距離モードDM2とし、後方側に位置する2つのテザー43を短距離モードDM1として、エアバッグ29が展開膨張した際に、膨張完了時のエアバッグ29における運転者側壁部38の拘束面38aを略鉛直方向に沿って配置可能とするように、設定されている。
【0031】
制御装置60は、実施形態の場合、図1に示すように、ステアリングホイールWの操舵角を検知可能なステアリングシャフトSSの下端側に配置される舵角センサ61や、車両の加速度や加速の方向等を検知可能な衝突検知センサ62等と、電気的に接続されるもので、衝突検知センサ62からの電気信号を入力させてインフレーター8を作動させるとともに、舵角センサ61及び衝突検知センサ62からの電気信号を入力させて、各係止手段21(21A,21B,21C,21D)の作動を制御する。実施形態の場合、舵角センサ61は、ステアリングホイールWの直進操舵時の角度を基準として、ステアリングホイールWの転回角度を検知可能に、構成されている。そして、制御装置60は、衝突検知センサ62が車両の衝突を検知した際に、舵角センサ61からの電気信号によりステアリングホイールWの操舵角を検出し、衝突検知時のステアリングホイールWにおいて、前方側に位置する2つの係止手段21に、作動信号を出力可能に、構成されている。
【0032】
次に、実施形態のエアバッグ29の製造について述べる。車体側基布40には、予め、ガス流入口32を形成しておく。また、テザー用基布48における車体側部材49の連結布部50にも、ガス流入口32を構成する開口(図符号省略)を形成しておく。まず、運転者側基布41の内表面側に、テザー用基布48における運転者側部材53を配置させ、連結布部54を、縫合部位56の部位で縫着させる。同様に、車体側基布40の内表面側に、テザー用基布48における車体側部材49を配置させ、連結布部50を、縫合部位52の部位で縫着させる。その後、ベントホール36、取付孔34、及び、貫通孔35の孔明け加工を、車体側基布40と連結布部50とに施す。勿論、この孔明け加工時に、ガス流入口32を形成してもよい。
【0033】
その後、車体側基布40と運転者側基布41とを、それぞれ、外表面側が対向するように重ねて、外周縁相互を縫着させる。外周縁の縫合作業後、外周縁の縫合代がエアバッグ29の外表面に表れないように、バッグ本体30を、ガス流入口32を利用して反転させる。そして、反転後に、各テザー用部位51,55の先端51a,55a相互をガス流入口32から引き出し、中央付近で折り返したループ部用布材57を、それぞれ、先端51a,55aの間に挟んで、ループ部用布材57を共縫いするように先端51a,55a相互を縫着させ、各テザー43A,43B,43C,43Dを形成すれば、エアバッグ29を製造することができる。
【0034】
そして、上記のように製造したエアバッグ29を使用して、エアバッグ装置M1を組み立てる。まず、リテーナ6をガス流入口32からエアバッグ29内に挿入させ、各ボルト6aを取付孔34から突出させた状態で、エアバッグ29を、バッグホルダ11内に収納可能なように、折り畳む、このとき、各ループ部45は、それぞれ、貫通孔35から突出させておく。次いで、各ボルト6aを底壁部13から突出させ、各ループ部45を貫通孔13bから突出させるようにして、折り畳まれたエアバッグ29を、予め、係止手段21(21A,21B,21C,21D)、ホーンスイッチ17、及び、連結板19を取り付けておいたバッグホルダ11内に収納させる。そして、各係止手段21(21A,21B,21C,21D)の係止ピン22を各ループ部45に挿通させ、係止ピン22の先端側を支持台13cに支持させるようにして、各ループ部45を各係止手段21(21A,21B,21C,21D)に係止させる。その後、インフレーター8の本体8aを下方から底壁部13の挿通孔13a内に挿入させて、フランジ部8cから突出した各ボルト6aにナット7を締結させれば、バッグホルダ11に、エアバッグ29とインフレーター8とを保持させることができる。その後、エアバッグ29にパッド25を被せ、図示しないリベット等を用いて、バッグホルダ11の側壁部14にパッド25を連結させれば、エアバッグ装置M1を組み立てることができる。
【0035】
このようにして組み立てたエアバッグ装置M1は、車両に取付済みのステアリングホイール本体1の図示しない取付座に対し、所定のボルトを使用して、連結板19を連結させれば、ステアリングホイール本体1に組み付けることができ、このとき、ステアリングホイールWの組立と、車両へのステアリングホイールWの搭載と、が、完了することとなる。エアバッグ装置M1の車両への搭載時には、制御装置60から延びる作動信号入力用のリード線を、インフレーター8と各係止手段21(21A,21B,21C,21D)とに接続させておく。
【0036】
エアバッグ装置M1の車両への搭載後、走行中の車両が衝突すれば、制御装置60がインフレーター8に作動信号を出力することとなって、インフレーター8が、膨張用ガスをガス吐出口8bから吐出させ、エアバッグ29が膨張して、パッド25の扉部26を押し、ステアリングホイールWの上面側を覆うように展開膨張して、膨張を完了させることとなる。
【0037】
そして、実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ29の内部に配置されて収納部位としてのバッグホルダ11側と運転者側壁部38とに結合されるテザー43A,43B,43C,43Dが、車体側壁部31におけるバッグホルダ11への取付部位(ガス流入口32の周縁33)を中心とした周囲において、相互に離れた少なくとも4箇所に配置されて、それぞれ、長さ調整機構としての係止手段21A,21B,21C,21Dによって、長さ寸法を変更可能に構成されている。そのため、例えば、ステアリングホイールWの転回操舵時においてエアバッグ29が展開膨張する際に、制御装置60からの作動信号を受けて、各係止手段21A,21B,21C,21Dを作動させれば、各テザー43A,43B,43C,43Dの長さ寸法を調整することができる。
【0038】
例えば、実施形態のエアバッグ装置M1では、図2に示すごとく、ステアリングホイールWが操舵角度を直進操舵時と略同一として操舵されている場合には、前方側に位置する係止手段21A,21Bのみが、制御装置60からの作動信号を入力させることとなる。また、図10のAに示すごとく、ステアリングホイールWが右方へ略90°傾いた状態で操舵されている場合には、前方に位置する係止手段21A,21Cのみが、制御装置60からの作動信号を入力させることとなる。さらに、図10のBに示すごとく、ステアリングホイールWが前後で略反転した状態で操舵されている場合には、前方に位置する係止手段21C,21Dのみが、制御装置60からの作動信号を入力させることとなり、図10のCに示すごとく、ステアリングホイールWが左方へ略90°傾いた状態で操舵されている場合には、前方に位置する係止手段21B,21Dのみが、制御装置60からの作動信号を入力させることとなる。
【0039】
そして、制御装置60からの作動信号を入力させた各係止手段21では、アクチュエータ23が係止ピン22を引き込むように作動することとなって、エアバッグ29の展開膨張前に、予め、ループ部45の係止手段21への係止状態が解除されることとなり、テザー43が、長距離モードDM2に設定されることとなる。制御装置60からの作動信号を入力させない状態では、ループ部45の係止手段21への係止を維持された状態でエアバッグ29が膨張することとなり、テザー43は、短距離モードDM1に設定されることとなる。
【0040】
すなわち、実施形態のエアバッグ装置M1では、ステアリングホイールWが、直進操舵時と略同じ位置にある状態、直進操舵時に対して略90°右方へ傾いた状態、直進操舵時に対して略180°反転した状態、及び、直進操舵時に対して略90°左方へ傾いた状態、のいずれの状態にあっても、前方側に位置する2つのテザー43が長さ寸法を長距離モードDM2に設定され、後方側に位置する2つのテザー43が長さ寸法を短距離モードDM1に設定されることとなり、4つのテザー43(43A,43B,43C,43D)の端部43bを結合させて構成される結合部位(縫合部位)56で囲まれる面により構成される運転者側壁部38の拘束面38aの中央付近の部位が、バッグホルダ11からの離隔距離を、前端側を大きくし、後端側を小さくするようにして、図11に示すごとくエアバッグ29が膨張を完了させることとなる。具体的には、エアバッグ29は、図12に示すごとく、拘束面38aを、拘束時の運転者MDの上半身に対応させて略鉛直面に沿って配置させるように膨張を完了させることとなる。そのため、運転者MDの上半身に沿った広い平面状の拘束面38aを確保することができ、この拘束面38aにより、運転者MDの上半身(胸部や腹部)を、反力を抑えて、クッション性よく、かつ、ソフトに受け止めることができる。
【0041】
また、実施形態のエアバッグ装置M1では、テザー43A,43B,43C,4Dが、ガス流入口32を中心とした周囲において、相互に離れた少なくとも4箇所に配置されていることから、ステアリングホイールWの転回角度が90°程度異なっていても、エアバッグ29の膨張完了時において、拘束面38aを、バランスよく、拘束時の運転者MDの上半身と略平行となるように配置させることができる。
【0042】
したがって、実施形態のステアリングホイール用のエアバッグ装置M1では、操舵時の運転者MDに応じてエアバッグ29の膨張完了形状を規制することができる。
【0043】
特に、実施形態のエアバッグ装置M1では、テザー43A,43B,43C,43Dは、ステアリングホイールWの直進操舵時におけるエアバッグ29の膨張完了時において、ガス流入口32を中心として放射状となる4箇所であって、ガス流入口32から前方となる2箇所と、後方となる2箇所と、において、それぞれ、相互に略90°ずつずれた位置に配置されていることから、ステアリングホイールWが、例えば、直進操舵時と同じ位置にある状態、直進操舵時に対して略90°右方へ傾いた状態、直進操舵時に対して略180°反転した状態、及び、直進操舵時に対して略90°左方へ傾いた状態、のいずれの状態にあっても、エアバッグ29の膨張完了時において、2つのテザー43がガス流入口32の前方に位置し、2つのテザー43がガス流入口32の後方に位置することとなる。そのため、拘束面38aの角度を安定させることができて、好ましい。なお、実施形態のエアバッグ装置M1において、例えば、ステアリングホイールWが直進操舵時に対して略45°傾いた状態で車両の衝突を検知した場合には、テザー34A,43B,43C,43Dがガス流入口32を中心とした前後左右に配置されることとなるが、前方側に位置する1つのテザー43のみを長距離モードDM2とし、左右両側と後方側に位置する3つのテザー43を短距離モードDM1としてもよく、また、前方側と左右両側とに位置する3つのテザー43を長距離モードDM2とし、後方側に位置する1つのテザー43を短距離モードDM1としてもよい。
【0044】
また、実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ29内に配設されるテザー43の長さ寸法を2段階で調整可能であるが、図13に示すエアバッグ装置M2のごとく、エアバッグ29A内に配設されるテザー65の長さ寸法を3段階で調整可能とするように、構成してもよい。図13に示すエアバッグ装置M2は、エアバッグ29A内に配設されて運転者側壁部38Aのバッグホルダ11からの離隔距離を規制するように運転者側壁部38Aに結合される4つのテザー65以外は、前述のエアバッグ装置M1と同様の構成であり、同一の部材には同一の図符号を付して説明を省略する。
【0045】
テザー65は、前述のエアバッグ装置M1におけるテザー43と同様に、ステアリングホイールWの直進操舵時におけるエアバッグ29Aの膨張完了時において、ガス流入口32を中心として放射状となる4箇所であって、ガス流入口32から前方となる2箇所と、後方となる2箇所と、において、それぞれ、相互に略90°ずつずれた位置に配置されている(図14のA参照)。各テザー65は、先端65a側を、運転者側壁部38に結合され、元部65b側をバッグホルダ11側に配置される長さ調整手段としての牽引手段66により牽引されて、膨張完了時のエアバッグ29Aにおける運転者側壁部38のバッグホルダ11側からの離隔距離を規制可能に構成されている。
【0046】
各牽引手段66は、バッグホルダ11の底壁部13の下面側において、貫通孔13bから突出しているテザー65の元部65b側を、巻き取りあるいは繰り出し可能に連結させた牽引ローラ67から、構成されている。この牽引ローラ67は、制御装置からの作動信号を受けて、テザー65の元部65b側を巻き取りあるいは繰り出し可能に作動されるもので、実施形態のエアバッグ装置M2では、各テザー65は、牽引ローラ67により巻き取られた状態を短距離モードDM1とし、牽引ローラ67から繰り出された状態を長距離モードDM2として、牽引ローラ67を作動させない状態を中距離モードDM3とされることとなる。
【0047】
このような構成のエアバッグ装置M2では、例えば、ステアリングホイールWが、図14のBに示すごとく、転回角度を略45°としてエアバッグ29Aが展開膨張する場合、すなわち、各テザー65及び牽引手段66がガス流入口の前後左右に配置されるような場合にも、前方側に位置するテザー65を牽引ローラ67から繰り出して長距離モードDM2とし、後方側に位置するテザー65を牽引ローラ67により巻き取って短距離モードDM1として、前後の中間となる左右両側に位置するテザー65を牽引ローラ67を作動させない状態として中距離モードDM3とするように、制御装置により制御すれば、運転者側壁部38におけるテザー65を結合させた部位で囲まれる拘束面38aを、バランスよく、拘束時の運転者MDの上半身と略平行となるように配置させることができる。すなわち、上記構成のエアバッグ装置M2では、各テザー65の長さ寸法を、ステアリングホイールの転回角度に応じて、一層的確に変更することが可能となる。
【0048】
また、上記構成のエアバッグ装置M2では、各テザー65が、長さ寸法を3段階で調整可能であることから、図15において実線で示すごとく、前方側に位置するテザー65を長距離モードDM2とし、後方側に位置するテザー65を中距離モードDM3としてエアバッグ29Aを膨張させたり、図15において二点鎖線で示すごとく、前方側に位置するテザー65を中距離モードDM3とし、後方側に位置するテザー65を短距離モードDM1としてエアバッグ29Aを膨張させることもできる。すなわち、上記構成のエアバッグ装置M2では、エアバッグ29Aを、拘束面38aの角度を略一定に保ちつつ、例えば、制御装置がステアリングホイールWに接近して着座した運転者を検知した場合には、運転者側への突出量を抑えた状態とし、逆に、制御装置がステアリングホイールWから離れて着座した運転者を検知した場合には、運転者側へ大きく突出させるように、運転者側への突出量を変更させるように、膨張させることもできる。
【0049】
実施形態のエアバッグ装置M1,M2では、勿論、各テザー43,65の長さ寸法を一定とした状態で、エアバッグ29,29Aを膨張させることもできる。例えば、運転者MDがシートベルトを未装着の場合には、運転者側壁部38の拘束面38aを運転者MDの上半身と略平行とするように、係止手段21及び牽引手段66を作動させ、運転者MDがシートベルトを装着している場合には、係止手段21及び牽引手段66を作動させずに、拘束面38aをリング面Rfと略平行として、エアバッグ29,29Aを膨張させる構成としてもよい。車両に応じては、運転者がシートベルトを装着している場合、車両の前面衝突時、運転者の腰部が、シートに固定されて、上半身の頭部側だけが前方移動する傾斜状態となる場合があり、その場合には、リング面Rfと略平行とするように拘束面38aを配置させる方が、傾斜して移動してくる運転者の上半身を広い面で受けることができるためである。
【0050】
そして、実施形態のエアバッグ装置M1(M2)では、運転者がシートベルトを装着している場合において、拘束面38aをステアリングホイールWのリング面Rfと略平行とするように、エアバッグ29(29A)を膨張させる場合には、テザー43,65の長さ寸法を調整することにより、着座している運転者の体格や着座位置に応じて、膨張完了時のエアバッグ29(29A)の厚さ寸法(バッグホルダ11からの運転者側壁部38の離隔距離)を変更することも可能である。すなわち、例えば、小柄な運転者やステアリングホイールWに接近している運転者を検知した場合には、図16において二点鎖線で示すごとく、すべてのテザー43(65)を短距離モードDM1としてエアバッグ29,29Aを膨張させ、大柄な運転者やステアリングホイールWから離れている運転者を検知した場合には、図16において実線で示すごとく、すべてのテザー43(65)を長距離モードDM2としてエアバッグ29(29A)を膨張させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態であるステアリングホイール用のエアバッグ装置が搭載されているステアリングホイールと運転者との状態を示す側面図である。
【図2】実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示すステアリングホイールの部分平面図である。
【図3】実施形態のエアバッグ装置の概略断面図であり、図2のIII−III部位に対応する図である。
【図4】実施形態のエアバッグ装置において、係止手段の部位を示す部分拡大断面図である。
【図5】図4のV−V部位を示す概略断面図である。
【図6】実施形態のエアバッグ装置に使用されるエアバッグを平らに転回した状態の平面図である。
【図7】図6のエアバッグを平らに展開した状態の底面図である。
【図8】図6のエアバッグの概略断面図であり、ループ部を貫通孔から突出させた状態を示す。
【図9】図6のエアバッグの構成部材を示す分解斜視図である。
【図10】実施形態のエアバッグ装置を搭載させたステアリングホイールを転回させた状態を示す概略部分平面図である。
【図11】図6のエアバッグを単体で膨張させた状態を示す前後方向に沿った概略断面図である。
【図12】実施形態のエアバッグ装置をステアリングホイールに搭載させてエアバッグが膨張を完了した状態を示す概略側面図である。
【図13】本発明の他の実施形態を示すエアバッグ装置の概略断面図である。
【図14】図13のエアバッグ装置を搭載したステアリングホイールの概略部分平面図であり、直進操舵時と、45°転回させた状態と、を示す図である。
【図15】実施形態のエアバッグ装置をステアリングホイールに搭載させてエアバッグが膨張を完了した状態を示す概略側面図である。
【図16】実施形態のエアバッグ装置をステアリングホイールに搭載させてエアバッグが膨張を完了した状態を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0052】
1…ステアリングホイール本体、
8…インフレーター、
11…バッグホルダ(収納部位)、
21…係止手段(長さ調整機構)、
29・29A…エアバッグ、
30…バッグ本体、
31…車体側壁部、
32…ガス流入口、
38…運転者側壁部、
38a…拘束面、
43・65…テザー、
45…ループ部、
60…制御装置、
61…舵角センサ、
66…牽引手段(長さ調整機構)、
MD…運転者、
R…リング部、
SS…ステアリングシャフト、
W…ステアリングホイール、
M1・M2…エアバッグ装置(ステアリングホイール用エアバッグ装置)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵時に把持するリング部と、該リング部の中央付近に配置されてステアリングシャフトに締結されるボス部と、前記リング部と前記ボス部とを連結するスポーク部と、を備える構成とされるとともに、前記リング部の上面側のリング面を、前下がりに傾斜して配置される前記ステアリングシャフトに対して、略直交させるように後下がりに傾斜させた状態で、前記ステアリングシャフトと締結されるステアリングホイール本体における前記ボス部の上部に配設される構成とされて、
前記ボス部の上部側に配置される収納部位に折り畳まれて収納されるとともに、内部に膨張用ガスを流入させて、前記収納部位から突出して展開膨張する構成とされ、膨張完了時に前記リング部上で前記リング部の外径寸法より大きく膨らむように配設される袋状のエアバッグを備え、
該エアバッグが、膨張完了時に運転者側に配置されて中央付近を前記運転者を受け止める拘束面とする運転者側壁部と、前記収納部位側に配置されて前記収納部位に取り付けられる車体側壁部と、を備えるとともに、内部に配設されて前記収納部位側と前記拘束面のエリアの前記運転者側壁部とに結合される複数のテザーにより、膨張完了時における前記運転者側壁部の前記収納部位からの離隔距離を規制される構成のステアリングホイール用エアバッグ装置であって、
前記テザーが、前記車体側壁部の前記収納部位への取付部位を中心とした周囲において、相互に離れた少なくとも4箇所に配置されて、
前記各テザーが、それぞれ、着座した前記運転者を受け止める前記エアバッグの好適膨張モードを判断する制御装置によって作動を制御される長さ調整機構により、長さ寸法を調整可能に構成されて、
膨張時の前記エアバッグが、前記長さ調整機構による前記各テザーの長さ寸法の調整により、前記拘束面を、拘束時の前記運転者の上半身と略平行に位置させて膨張を完了させるように構成されていることを特徴とするステアリングホイール用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記テザーが、前記ステアリングホイールの直進操舵時を基準とする配置位置として、前記車体側壁部の前記収納部位への取付部位を中心として放射状となる4箇所であって、前記取付部位から前方となる2箇所と後方となる2箇所との相互に略90°ずつずれた位置に、配置される構成として、
作動時の前記各テザーが、前記長さ調整機構の調整により、前方に位置する2つのテザーの長さ寸法を、後方に位置する2つのテザーの長さ寸法よりも長くするように調整されて、前記拘束面を、拘束時の前記運転者の上半身に対応させて略鉛直面に沿って配置させるように、構成されていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイール用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記各テザーが、それぞれ、長さ寸法を3段階で変更可能に、構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のステアリングホイール用エアバッグ装置。
【請求項1】
操舵時に把持するリング部と、該リング部の中央付近に配置されてステアリングシャフトに締結されるボス部と、前記リング部と前記ボス部とを連結するスポーク部と、を備える構成とされるとともに、前記リング部の上面側のリング面を、前下がりに傾斜して配置される前記ステアリングシャフトに対して、略直交させるように後下がりに傾斜させた状態で、前記ステアリングシャフトと締結されるステアリングホイール本体における前記ボス部の上部に配設される構成とされて、
前記ボス部の上部側に配置される収納部位に折り畳まれて収納されるとともに、内部に膨張用ガスを流入させて、前記収納部位から突出して展開膨張する構成とされ、膨張完了時に前記リング部上で前記リング部の外径寸法より大きく膨らむように配設される袋状のエアバッグを備え、
該エアバッグが、膨張完了時に運転者側に配置されて中央付近を前記運転者を受け止める拘束面とする運転者側壁部と、前記収納部位側に配置されて前記収納部位に取り付けられる車体側壁部と、を備えるとともに、内部に配設されて前記収納部位側と前記拘束面のエリアの前記運転者側壁部とに結合される複数のテザーにより、膨張完了時における前記運転者側壁部の前記収納部位からの離隔距離を規制される構成のステアリングホイール用エアバッグ装置であって、
前記テザーが、前記車体側壁部の前記収納部位への取付部位を中心とした周囲において、相互に離れた少なくとも4箇所に配置されて、
前記各テザーが、それぞれ、着座した前記運転者を受け止める前記エアバッグの好適膨張モードを判断する制御装置によって作動を制御される長さ調整機構により、長さ寸法を調整可能に構成されて、
膨張時の前記エアバッグが、前記長さ調整機構による前記各テザーの長さ寸法の調整により、前記拘束面を、拘束時の前記運転者の上半身と略平行に位置させて膨張を完了させるように構成されていることを特徴とするステアリングホイール用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記テザーが、前記ステアリングホイールの直進操舵時を基準とする配置位置として、前記車体側壁部の前記収納部位への取付部位を中心として放射状となる4箇所であって、前記取付部位から前方となる2箇所と後方となる2箇所との相互に略90°ずつずれた位置に、配置される構成として、
作動時の前記各テザーが、前記長さ調整機構の調整により、前方に位置する2つのテザーの長さ寸法を、後方に位置する2つのテザーの長さ寸法よりも長くするように調整されて、前記拘束面を、拘束時の前記運転者の上半身に対応させて略鉛直面に沿って配置させるように、構成されていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイール用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記各テザーが、それぞれ、長さ寸法を3段階で変更可能に、構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のステアリングホイール用エアバッグ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−302192(P2007−302192A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135160(P2006−135160)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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