説明

ステアリングホイール

【課題】 農作業車のステアリングホイールにおいて、中央部に備えたホーンスイッチ装置に雨水などが浸水した場合、浸水した水を確実に排水できること、浸水した水がスイッチ接点部にかかり難い構造とすること。
【解決手段】 ステアリングホイールの中央本体部12にホーンスイッチ装置13を設置する凹形部14を形成し、ホーンスイッチ装置13は、容状のボタンシート15と、このボタンシート15の底面に設けた固定接点18と、可動接点19を固定接点18から離間させるコイルばね17と、押動操作で可動接点19を固定接点18に接触させるホーンボタン16とより構成し、さらに、ボタンシート15の底面には固定接点18を囲むようにした断水壁15cを形成すると共に、この断水壁15cの内側となるボタンシート15の底面と、ボタンシート15の外壁部所との各々に水抜き孔を設けた構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転席に屋根がなくステアリングホイールに雨水などがかかることがある農作業車等のステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタ等の農作業車は、運転席に屋根がなく開放されていることから、雨水などがステアリングホイールにかかることがあり、そのため、中央部にホーンスイッチ装置が設けられているステアリングホイールは、ホーンスイッチ装置内に雨水が浸水することがあり、この浸水によってホーンスイッチ装置が故障してしまうことがあった。
【0003】
従来のステアリングホイールには、上記のようにホーンスイッチ装置に浸水した場合、浸水を外部に排水する水抜き孔を設けたものがある。
しかし、ホーンスイッチ装置に浸水した水の水抜きが不十分であると、ホーンスイッチ装置内に水が残ったままとなり、スイッチ接点の腐食やスイッチング不良の原因となる。
【0004】
【特許文献1】実開昭59−120668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した実情にかんがみ、本発明は、中央部にホーンスイッチ装置を有するステアリングホイールにおいて、ホーンスイッチ装置内に水が浸水した場合でも、浸水の水を確実に排水することができること、浸水した水がスイッチ接点部にかかり難い構造とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は第1の発明として、ステアリングシャフトに取り付ける中央本体部にホーンスイッチ装置を有するステアリングホイールにおいて、ステアリングホイールの中央本体部には、ホーンスイッチ装置を設置する凹形部を形成し、前記ホーンスイッチ装置は、前記凹形部に内装する有底容状としたボタンシートと、このボタンシートの底面部に設けた固定接点と、ばね勢力でこの固定接点から離間させ、かつ、ホーンボタンの押動操作にしたがってその固定接点に接触させる可動接点とから形成し、さらに、前記ボタンシートの底面には、前記固定接点を囲むように断水壁を形成すると共に、この断水壁の内側となる前記ボタンシートの底面部所と、前記ボタンシートの外壁部所との各々に水抜き孔を設けたことを特徴とするステアリングホイールを提案する。
【0007】
第2の発明としては、第1の発明のステアリングホイールにおいて、ボタンシートの底面部には、隆起させて形成した台形部を設け、この台形部に固定接点を設けたことを特徴とするステアリングホイールを提案する。
【0008】
第3の発明としては、第1の発明のステアリングホイールにおいて、前記ボタンシートには、係止爪を設け、前記中央本体部には、その係止爪を係止させて前記ボタンシートを当該中央本体部に固定する係止孔を設け、さらに、前記係止孔は、中央本体部の凹形部底面から背面に貫通させ、前記水抜き孔から流れ出る水をこの係止孔を通して排水させることを特徴とするステアリングホイールを提案する。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明によれば、ホーンボタンとボタンシートとの間からホーンスイッチ装置内に浸水した水は、ボタンシートの外壁部所に設けた水抜き孔から排水される。
その上、固定接点と可動接点の接点部分が断水壁内にあるから、浸水した水が断水壁で断たれ、接点部分にはかからない。
また、浸水した水が断水壁を乗り越え、断水壁内に入った場合でも、断水壁の内面となるボタンシートの底面部所に水抜き孔が設けてあるから、この水抜き孔から排水される。
【0010】
第2の発明によれば、隆起させた台形部に固定接点を設けたので、浸水した水が断水壁やボタンシートの底面などを伝わって固定接点の近くに流れたとしても、水は台形部を上がることがないので、水が固定接点に触れることがない。
【0011】
第3の発明によれば、係止爪を中央本体部の係止孔に係止させてボタンシートを固定させる構成とすることによって、前記した水抜き孔から流れ出た水がその係止孔を通って中央本体部外に排出されるようになっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施形態を示すステアリングホイールの正面図、図2は図1上のA−A線拡大断面図、図3は図1上のB−B線拡大断面図である。
これらの図において、11はステアリングホイールのハンドル、12はステアリングホイールの中央本体部、13は中央本体部12に設けたホーンスイッチ装置である。
【0013】
ステアリングホイールの中央本体部12には、ハンドル11に対し垂直方向に掘り下げた円状の凹形部14を設け、この凹形部14内にホーンスイッチ装置13が設置してある。
ホーンスイッチ装置13は、ボタンシート15、ホーンボタン16、コイルばね17、固定接点18、可動接点19の各部材から構成してある。
【0014】
ボタンシート15は、図4及び図5にも示してある如く、合成樹脂材からなる有底の円筒容状体であり、その外壁15a下方の3等分位置には第1の水抜き孔20が形成してある。
なお、3つの第1の水抜き孔20の1つは、ステアリングホイールが通常の状態(中立位置)にあるときに、下側位置(図2において下側)となるように形成することが好ましい。
【0015】
また、このボタンシート15の底面には、隆起させて形成した台形部15bを設け、この台形部15bの上面に固定接点18を突出させてある。
なお、この固定接点18は台形部15bを貫通しており、台形部15bの裏側でコネクタ片21が固定してある。
【0016】
さらに、ボタンシート15の底面には、上記台形部15bの周囲を取り囲むようにした円筒状の断水壁15cが一体形成してあり、この断水壁15cが固定接点18側に流れる水を防止している。
また、この断水壁15cの内側となるボタンシート15の底面には第2の水抜き孔22が形成してある。
【0017】
他方、ボタンシート15の開口側には、外壁15aに続くフランジ15dを外向き形成し、そのフランジ15dを中央本体部12の前面に接合させ、ボタンシート15と中央本体部12の間から入る浸水を防止している。
【0018】
上記のように形成したボタンシート15は、その裏面の3等分位置から延設した3つの係止片15eを設け、これらの係止片15eを中央本体部12の各々の係止孔12aに係止させ、中央本体部12の凹形部14内に固定させる構成としてある。
【0019】
一方、上記の係止孔12aは、中央本体部12に設けた凹形部14の底面の3等分位置から中央本体部12の裏面に貫通するように形成した3つの貫通孔からなり、孔内に係止片15eを係止する係止部が設けてある。
このように形成した係止孔12aは、上記した第1の水抜き孔20及び/または第2の水抜き孔22から流れ出る水を中央本体部12の裏側に排水する。
【0020】
ホーンボタン16は、図6の斜視図から分かるように、周囲壁16aの3等分位置から延設した係合部16cをボタンシート15の外壁15aに設けた第1の水抜き孔20内に突入させてホーンボタン16の抜け止めをし、また、係合部16cが第1の水抜き孔20内を移動する範囲内でこのホーンボタン16が押動できるようにしてある。
【0021】
可動接点19は、図7の斜視図から分かるように、導電材を円錐形に形成したもので、頂部を固定接点18と接触自在とすると共に、その円形座部19aには、コネクタ片19bが一体に設けてある。
このコネクタ片19bには、一端部をねじ23よって中央本体部12の取付管24に固着したコード25の他端部を接続して可動接点19をアース接続するようになっている。
なお、コード25はボタンシート15の底面に設けた小孔15fを通し配線する。
【0022】
上記の取付管24は、金属などの導電性材からなり、これは図2に示すように、ステアリングシャフト26を取り付けるもので、当該シャフト26のキー26aを取付管24のキー溝24aに嵌合させるようにして当該シャフト26を取付管24に挿入した後、止めねじ26bを当該シャフト26の先端部のねじ孔にねじ込んでとりつける。
したがって、上記可動接点19が、コード25、取付管24、ステアリンッグシャフト26を介して車体にアース接続される。
【0023】
上記可動接点19は、ホーンボタン16の裏面に圧接するように、ボタンシート15の底面との間に設けたコイルばね17のばね勢力を受けている。
このように設けた円錐形の可動接点19は、ホーンボタン16のどの位置を押した場合でも固定接点18に接触するように構成されている。
したがって、図2、図3に示すように、常態では可動接点19が固定接点18から離れてスイッチオフの状態となっている。
なお、円筒状の断水壁15cの高さは、可動接点19が当接しない高さに設定し、その内周壁でコイルばね17を保持するように構成してある。
【0024】
また、可動接点19を介してコイルばね17によって押動されるホーンボタン16は、図2、図3に示すように後退移動(図2おいて左方向移動)し、その係合部16cが第1の水抜き孔20の孔縁に係止して抜け止めされる。
【0025】
一方、中央本体部12の後面には、円形枠状のバックカバー27が設けてある。
このバックカバー27については、図8に正面図、図9に背面図、図10に斜視図として示してある。
これらの図から分かるように、バックカバー27は、中段仕切り27aに円形凹部27bを形成した有底の円形枠状体で、中段仕切り27aの3等分位置から延設した3つの係止片27cを中央本体部12の各々の係止孔12bに挿入して係止させ、中央本体部12に取り付けてある。
なお、係止孔12bも中央本体部12に設けた凹形部14の底面から中央本体部12の裏面に貫通するように形成した3つの貫通孔とし、上記した第1の水抜き孔20及び/または第2の水抜き孔22から流れ出る水を係止孔12aと同様に排水するようになっている。
【0026】
また、バックカバー27の中段仕切り27aには、外壁寄りの3等分位置に3つの第3の水抜き孔28を設け、さらに、円形凹部27bの壁面と底面とに跨って3つの第4の水抜き孔29が3等分位置に設けてある。
このように設けた3つの第3の水抜き孔28は、ステアリングホイールが通常の位置(中立位置)にあるときに、それらの1つの水抜き孔28が下方位置(図2において下方位置)となるようにすることが好ましく、同様に、3つの第4の水抜き孔29についても、ステアリングホイールが通常の位置(中立位置)にあるときに、1つの水抜き孔29が下方位置となるように形成することが好ましい。
【0027】
さらに、バックカバー27の円形凹部27bには、その底面に上記した取付管24を通すための円形孔27dが形成してあり、また、円形凹部27bの裏面にはコンタクトリング30が固着してある。
このコンタクトリング30には、円形凹部27bの孔部27eより突出させた端子部30aが設けてあり、この端子部30aと固定接点18のコネクタ片21とをコード31によって接続してある。
なお、コード31は中央本体部12の通し孔12cを通して配線される。
【0028】
なお、コンタクトリング30には、方向指示器などのレバースイツチ装置に設けたブラシ接片が接触させてある。
すなわち、固定接点18と可動接点19の接触によるスイッチオン信号をコード31、コンタクトリング30、ブラシ接片を介してホーン回路に送り、このホーン回路がスイッチオン信号に応動してホーンを動作させる構成としてある。
【0029】
上記のように構成したステアリングホイールは、図2、図3に示す通常の状態で、ホーンボタン16を押動操作すると、可動接点19がコイルばね17のばね勢力に抗して固定接点18側に押され、可動接点19が固定接点18に接触し、スイッチオンとなり、ホーンが発音する。
また、ホーンボタン16の押動操作を解放すると、このホーンボタン16がコイルばね17のばね勢力で図2、図3に示す位置に復動し、可動接点19が固定接点18から離れスイッチオフとなり、ホーンが消音する。
【0030】
また、上記したステアリングホイールは、雨水などの水がホーンボタン16の周囲を通ってボタンシート15内に入った場合、その水がボタンシート15の底面を下方向に流れ、下方位置の第1の水抜き孔20から流れ出る。
言い換えれば、ステアリングホイールは、ハンドル11の上部に対し下部が手前となるように一定の角度をもって取り付けられるから、ボタンシート15が右傾斜に傾いた状態となるため、ボタンシート15内に入った水がその底面を下方向に流れ、下方位置となっている第1の水抜き孔20から流れ出るようになる。
【0031】
さらに、断水壁15c内に流れ込む水がある場合には、その水が台形部15bの周囲を下方向に流れ、下位置にある第2の水抜き孔22から流れ出る。
なお、ステアリングホイールを回転させていない通常の状態では、上記の如く、下方向に流れた水が下方位置にある第1の水抜き孔20、第2の水抜き孔22を通って流れ出るが、ステアリングホイールを回転させると、各々の水抜き孔20、22を通って放射状に放水される。
【0032】
ボタンシート15から流れ出た水は、係止孔12a、12bを通って中央本体部12の裏側に流れ出てバックカバー27内に入る。
この結果、係止孔12bから中段仕切り27aを下方に流れる水は下方位置の第3の水抜き孔28を通ってステアリングホイール外に放出され、また、係止孔12bから円形凹部27b内に入った水がある場合には下方位置の第4の水抜き孔29を通って放出される。
なお、ステアリングホイールを回転させると、上記同様に、各々の水抜き孔28、29を通って放射状に流水する。
【0033】
以上のように、ボタンシート15内に侵入した水は、必ず外部に排水されるように、それぞれの水抜き孔が配置されている。
また、中央本体部12の凹形部に形成された係止孔12a、12bを貫通孔として水抜き孔に利用しているので、水が係止片15e、27cをつたわって効率的に外部に排出される。
【0034】
以上、一実施形態について説明したが、第4の水抜き孔29を円形凹部27bの壁面と底面とに跨って形成すると、この円形凹部27bを流れ出る水がコンタクトリング30に触れることがある。
コンタクトリング30にはグリスを塗るので多少の水が触れても問題がないが、コンタクトリング30の水の接触を防ぐためには、図11に示したように、円形凹部27bの壁面のみに第4の水抜き孔29を形成するようにすることができる。
【0035】
このように、円形凹部27bの壁面に沿って第4の水抜き孔29を形成することにより、ステアリングハンドルを回転することで、回転の遠心力により水を排水することができる。
【0036】
また、実際には、図12に示した如く、非回転としたハウジング32の防水リブ32aをバックカバー27のリング凹溝27f内に突入させ、コンタクトリング30とブラシ接片33との水の付着を防ぐ防水構造とする。
なお、この図に示した参照符号34は、非回転としてあるレバースイッチである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
排水機能を有するホーンスイッチ装置を備えた車両用のステアリングホイールとして適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態を示すステアリングホイールの正面図である。
【図2】図1上のA−A線拡大断面図である。
【図3】図1上のB−B線拡大断面図である。
【図4】上記ステアリングホイールが備えるホーンスイッチ装置のボタンシートを示す斜視図である。
【図5】同ボタンシートの正面図である。
【図6】上記ホーンスイッチ装置のホーンボタンを示す斜視図である。
【図7】上記ホーンスイッチ装置の可動接点を示す斜視図である。
【図8】上記ホーンスイッチ装置に備えるバックカバーの正面図である。
【図9】同バックカバーの背面図である。
【図10】同バックカバーの斜視図である。
【図11】水抜き孔の改良例を示したバックカバーの部分的な斜視図である。
【図12】上記ホーンスイッチ装置が備えるコンタクトリングとブラシ接片との防水構造を備えた図3同様の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0039】
11 ハンドル
12 中央本体部
12a、12b 係止孔
13 ホーンスイッチ装置
14 凹形部
15 ボタンシート
15a 外壁
15b 台形部
15c 断水壁
15e 係止片
16 ホーンボタン
16b 係合片
16c 係合部
18 固定接点
19 可動接点
20 第1の水抜き孔
22 第2の水抜き孔
27 バックカバー
27c 係止片
28 第3の水抜き孔
29 第4の水抜き孔
30 コンタクトリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングシャフトに取り付ける中央本体部にホーンスイッチ装置を有するステアリングホイールにおいて、
ステアリングホイールの中央本体部には、ホーンスイッチ装置を設置する凹形部を形成し、
前記ホーンスイッチ装置は、前記凹形部に内装する有底容状としたボタンシートと、このボタンシートの底面部に設けた固定接点と、ばね勢力でこの固定接点から離間させ、かつ、ホーンボタンの押動操作にしたがってその固定接点に接触させる可動接点とから形成し、
さらに、前記ボタンシートの底面には、前記固定接点を囲むように断水壁を形成すると共に、この断水壁の内側となる前記ボタンシートの底面部所と、前記ボタンシートの外壁部所との各々に水抜き孔を設けたことを特徴とするステアリングホイール。
【請求項2】
請求項1に記載したステアリングホイールにおいて、
ボタンシートの底面部には、隆起させて形成した台形部を設け、この台形部に固定接点を設けたことを特徴とするステアリングホイール。
【請求項3】
請求項1に記載したステアリングホイールにおいて、
前記ボタンシートには、係止爪を設け、
前記中央本体部には、その係止爪を係止させて前記ボタンシートを当該中央本体部に固定する係止孔を設け、
さらに、前記係止孔は、中央本体部の凹形部底面から背面に貫通させ、前記水抜き孔から流れ出る水をこの係止孔を通して排水させることを特徴とするステアリングホイール。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−269905(P2008−269905A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110045(P2007−110045)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【出願人】(507130613)
【Fターム(参考)】