説明

ステアリングメンバの二分割構造

【課題】 ハーネスを配策するための作業が容易で且つハーネスのメンテナンス性の良いステアリングメンバの二分割構造を提供する。
【解決手段】 上側半割部材5a及び下側半割部材5bに内壁部11a、11bを形成したため、それらをステアリングメンバ1として一体化するだけで、内壁部11a、11b同士が突き当たって、ステアリングメンバ1の内部空間を空調エアー用の第1空間Aとハーネス13用の第2空間Bに区画することができ、作業性が大変に良い。また、金具14を外して、ステアリングメンバ1を、再度、上側半割部材5aと下側半割部材5bに分割すれば、ハーネス13を容易に取り出すことができ、メンテナンス性も良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングメンバの二分割構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネルの内部には、車幅方向に沿った状態でステアリングメンバが配されている。このステアリングメンバは中空筒形状で、本来的には、ステアリングコラムや空調ユニット等の支持のために使用されるが、中空筒形状のために空調ダクトとしても兼用され、内部空間が空調用のエアー通路として利用される。
【0003】
また、ステアリングメンバ周辺には、メータ、スイッチ、ランプ、オーディオ、空調ユニット、エアバッグ等の電装品に対して、信号や電源を供給するための複数のハーネスが配策される。そこで、ステアリングメンバ周辺のスペース対策のために、このハーネスもステアリングメンバの内部空間に配策する構造がある。
【0004】
ステアリングメンバの内部空間にハーネスを配策する場合は、まずステアリングメンバを前後又は上下で二分割し、分割した一方のステアリングメンバの内面に沿ってハーネスを密着させ、そのハーネス及びその周辺内面に対して、断熱材を吹き付けて固める。こうすることにより、ハーネスを固定できると共に、ハーネスが空調エアーと直接接することはなく、ステアリングメンバの内部空間を流れる空調エアーの温度の影響を受けなくなる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−161136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、ステアリングメンバの内面に密着させたハーネスに対して断熱材を吹き付けて固める構造のため、作業が面倒である。また、断熱材により一度固めてしまうとメンテナンス等のためにハーネスを交換することができなくなる。
【0006】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、ハーネスを配策するための作業が容易で且つハーネスのメンテナンス性の良いステアリングメンバの二分割構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、両端部が閉塞された中空筒形状で且つ車幅方向に沿って配されるステアリングメンバを断面方向で二つ割り構造にすると共に、各半割部材の一方又は両方に、ステアリングメンバの内部空間を断面方向で二分割する内壁部を車幅方向に沿って一体形成し、分割された第1空間を空調エアー用空間として利用し、第2空間をハーネス配策用空間として利用可能なことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、ステアリングメンバを二分割した半割部材の一方又は両方に内壁部を形成したため、その半割部材同士をステアリングメンバとして一体化する際に、内壁部が他方の内壁部或いは半割部材に突き当たって、ステアリングメンバの内部空間を第1空間と第2空間に二分割する。従って、第1空間を空調エアー用空間として利用でき、第2空間をハーネス配策用空間として利用することができる。2つの半割部材を一体化するだけで、ハーネスを空調エアーとは区画した状態で配策できるため、作業性が大変に良い。ステアリングメンバを再度に分割すれば、ハーネスを容易に取り出すことができ、メンテナンス性も良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、ハーネスを配策するための作業が容易で且つハーネスのメンテナンス性の良いステアリングメンバの二分割構造を提供するという目的を、両端部が閉塞された中空筒形状で且つ車幅方向に沿って配されるステアリングメンバを断面方向で二つ割り構造にすると共に、各半割部材の一方又は両方に、ステアリングメンバの内部空間を断面方向で二分割する内壁部を車幅方向に沿って一体形成し、分割された一方を空調エアー用空間として利用し、他方をハーネス配策用空間として利用可能にすることで実現した。以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0010】
図1〜図4は、本発明の一実施例を示す図である。車室内前方に設置されているインストルメントパネル(図示せぬ)の内部には、ステアリングメンバ1が車幅方向に沿って配されている。ステアリングメンバ1は、全体が基本的に円筒形状をしており、両端部は閉塞状態で、車体側壁に結合されている。
【0011】
ステアリングメンバ1の運転者側には、ステアリングコラムを支持するステアリングサポート2と、ダッシュパネルと結合するブラケット3が設けられている。ステアリングメンバ1の車室内中央側にはフロアと結合するインストステー4が設けられている。
【0012】
このステアリングメンバ1は、上下二つ割構造で、上側半割部材5aと下側半割部材5bとから構成されている。上側半割部材5aと下側半割部材5bは、それぞれ別個に高剛性樹脂で射出成形したものである。上側半割部材5aの上面部には、4つの吹出口6が形成されている。下側半割部材5bの車幅方向中央部には、空調ユニット(図示せず)からの空調エアーを取り入れる取入口7が形成されている。
【0013】
上側半割部材5aと下側半割部材5bの周囲には、それぞれフランジ8a、8bが形成されている。そのフランジ8a、8b部分には、後端部にそれぞれ車幅方向に沿って3カ所の切欠9が対応した状態で形成されている。更に、下側半割部材5bの左端位置には、大きめの導入口10がフランジ8a、8bから切欠形成されている。そして、上側半割部材5aと下側半割部材5bの後寄り位置(車室内寄り位置)には、それぞれ同じ形状の内壁部11a、11bが車幅方向に沿って形成されている。内壁部11a、11bの切欠9に対応する位置には、それぞれ所定の間隔で対峙するリブ12a、12bが形成されている。
【0014】
このような形状をした上側半割部材5aと下側半割部材5bを、内壁部11a、11bよりも後側にハーネス13を位置させた状態で、互いのフランジ8a、8b同士を複数の金具14(図4参照、図1では図示省略)により締結して一体化し、ステアリングメンバ1を形成する。上側半割部材5aと下側半割部材5bを一体化することにより、内壁部11a、11bの端部同士は突き合わせ状態となり、一枚の内壁部11a、11bとなる。この内壁部11a、11bにより、ステアリングメンバ1の内部空間を、前側の大きな第1空間Aと、後側の小さな第2空間Bに区画することができる。第1空間A及び第2空間Bとも車幅方向に連続している。
【0015】
ハーネス13は、導入口10から第2空間B内に導入され、内壁部11a、11bのリブ12a、12bにより上下で挟持された状態で保持されると共に、各サブハーネス15を対応した切欠9から外部に出した状態になっている。ハーネス13の基端のコネクタ16は図示せぬ基板に接続され、各サブハーネス15のコネクタ17は対応する機器(メータ、スイッチ、ランプ、オーディオ、空調ユニット、エアバッグ等)のコネクタに接続される。
【0016】
下側半割部材5bの取入口7は第1空間A側に位置する。従って、空調ユニットからの空調エアーは取入口7から第1空間Aをダクトとして流れ、上面部に形成された吹出口6から車室内へ向けて吹き出される。
【0017】
空調エアー用の第1空間Aと、ハーネス13用の第2空間Bとは、内壁部11a、11bにより完全に区画されているため、ハーネス13が空調エアーの温度の影響を受けることはない。
【0018】
この実施例によれば、以上説明したように、上側半割部材5a及び下側半割部材5bに内壁部11a、11bを形成したため、それらをステアリングメンバ1として一体化するだけで、内壁部11a、11b同士が突き当たって、ステアリングメンバ1の内部空間を空調エアー用の第1空間Aとハーネス13用の第2空間Bに区画することができ、作業性が大変に良い。また、金具14を外して、ステアリングメンバ1を、再度、上側半割部材5aと下側半割部材5bに分割すれば、ハーネス13を容易に取り出すことができ、メンテナンス性も良い。
【0019】
この実施例におけるその他の効果を列挙する。
【0020】
リブ12a、12bによりハーネス13を第2空間Bの中央位置に保持できるため、ハーネス13のそれ以外の部分が接触せず、ハーネス13の被覆を薄くすることができる。
【0021】
ハーネス13が樹脂で囲まれた第2空間B内に位置するため、ハーネス13へのノイズを遮断する効果が得られ、シールド材の使用箇所を短くして、低コスト化を実現することができる。
【0022】
内壁部11a、11bによりステアリングメンバ1のねじれ剛性が向上する。
【0023】
内壁部11a、11bにより、上側半割部材5a及び下側半割部材5bを射出成形した際の変形(膨張・収縮)を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上の実施例では、円筒状のステアリングメンバ1を例にしたが、その他の断面形状(例えば角筒状)でも良い。
【0025】
ステアリングメンバ1を上下で分割する例を示したが、前後で分割しても良い。
【0026】
内壁部11a、11bを両方の半割部材に形成して、それらを突き合わせる構造にしたが、どちらか一方にのみ他方を含む形状の内壁部を形成しておき、その内壁部を相手方と一体化する際に相手方の半割部材の内面に突き当てて、ステアリングメンバの内部空間を2つに区画するようにしても良い。
【0027】
ステアリングメンバ1は、樹脂に代えて、マグネシウム又はアルミニウム軽合金で形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例に係るステアリングメンバを示す斜視図。
【図2】一体化する前のステアリングメンバを示す斜視図。
【図3】ハーネスと内壁部だけを示す斜視図。
【図4】図1中矢示SA−SA線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0029】
1 ステアリングメンバ
5a 上側半割部材
5b 下側半割部材
11a、11b 内壁部
12a、12b リブ
13 ハーネス
14 金具
15 サブハーネス
A 第1空間
B 第2空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部が閉塞された中空筒形状で且つ車幅方向に沿って配されるステアリングメンバ(1)を断面方向で二つ割り構造にすると共に、
各半割部材(5a、5b)の一方又は両方に、ステアリングメンバ(1)の内部空間を断面方向で二分割する内壁部(11a、11b)を車幅方向に沿って一体形成し、分割された第1空間(A)を空調エアー用空間として利用し、第2空間(B)をハーネス配策用空間として利用可能なことを特徴とするステアリングメンバの二分割構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−22214(P2007−22214A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204574(P2005−204574)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】