説明

ステアリングメンバ取付構造

【課題】ステアリングメンバを利用してボディアースを行うにあたり、電気抵抗を抑制してアース性能の向上を図ることができるステアリングメンバ取付構造を提供すること。
【解決手段】車幅方向に延在されたステアリングメンバ3が、両端を車体1の車幅方向両側に設けられたサイドパネル2に固定され、ステアリングメンバ3の車幅方向の少なくとも一方に、サイドパネル2に固定される右側サイドブラケット33が設けられ、右側サイドブラケット33に、取付時にサイドパネル2に対して相対スライドさせることでサイドパネル2側の塗装を剥がす塗装剥がし部35と、サイドパネル2への固定時に、塗装剥がし部35によりサイドパネル2側の塗装が剥がされた部分に金属接触する位置決め溝33cと、が設けられたステアリングメンバ取付構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングメンバを利用してボディアースを行うステアリングメンバ取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネルの内部には、ステアリングメンバが、その両端部を車体左右のサイドメンバに固定されて車幅方向に沿って配されている(例えば、特許文献1参照)。このステアリングメンバは、ステアリングコラムを支持するのに加え、空調ユニットやエアバッグなどを支持するのに使用されている。
【0003】
また、インストルメントパネルの内部には、各種電送機器が設けられており、これら電送機器は、アース線を車体に接続してボディアースされる。
【特許文献1】実開平5−89163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなボディアースを行うにあたり、アース線の車体への接続を簡略化するために、ステアリングメンバを利用することが考えられる。
【0005】
すなわち、上記特許文献1に記載された技術では、ステアリングメンバの両端を車体の左右側壁に結合するにあたり、ステアリングメンバの一端を一方の車体側壁に固定し、その後、図7に示すように、ステアリングメンバのもう一方の端部に設けられたサイドブラケット01を、もう一方の車体側壁を構成するサイドパネル02に固定するようになっている。
【0006】
そして、このサイドパネル02への固定は、サイドブラケット01に形成されたガイド溝03をサイドパネル02に一体に突出して形成されたガイドピン04に係合させ、さらに、車幅方向の寸法のバラツキ(図中矢印BAで示す範囲の寸法バラツキ)を許容可能なように、サイドブラケット01にネジで結合されたアジャストナット05にサイドパネル02側からボルト06を締結させることで行われる。ここで、サイドブラケット01とアジャストナット05との結合は、逆ネジによる結合となっており、ボルト06を時計回りの締結方向に回動させて軸方向でサイドブラケット01に近づく方向に移動させると、アジャストナット05は、逆に軸方向でその頭部がサイドパネル02に近づく方向に移動する。そして、アジャストナット05の頭部がサイドパネル02に当接して軸方向の移動が規制されると、ボルト06がアジャストナット05に対して相対回転して締結されるようになっている。
【0007】
したがって、サイドブラケット01とサイドパネル02との間隔にバラツキがあってもサイドブラケット01をサイドパネル02に固定することができる。
【0008】
そこで、このようなステアリングメンバ取付構造を利用してボディアースを行うにあたっては、ボルト06の頭部07において、サイドパネル02に当接する部分に、サイドパネル02の表面に設けられた塗装08を剥がすためにサイドパネル02に向かって尖った形状のペイントリムーブ09を形成することが考えられる。
【0009】
このようにペイントリムーブ09を形成したことにより、ボルト06を締結する際にボルト06を回転させると、ペイントリムーブ09が塗装08を削り取り、このペイントリムーブ09とサイドパネル02とが金属接触する。
【0010】
したがって、ステアリングメンバと車体との間には、サイドブラケット01→アジャストナット05→ボルト06→ペイントリムーブ09→サイドパネル02という金属接触による電気的経路が形成される。そこで、ステアリングメンバに支持される電送機器のアース線をステアリングメンバに接続しておくことで、上記の電気的経路でボディアースが成される。
【0011】
このように、ステアリングメンバの取付構造を利用して金属接触を行うことで、ステアリングメンバとボディとの間でアース接続作業を行わなくても、ボディアースを行うことができ、作業性に優れる。
【0012】
しかしながら、上述のステアリングメンバとサイドパネルとの間のアース用の電気的経路では、サイドブラケット01とアジャストナット05との間(A)、アジャストナット05とボルト06との間(B)、ボルト06のペイントリムーブ09とサイドパネル02との間(C)、の3箇所において金属接触部分が存在する。これらの、金属接触部分は、電気的な抵抗が大きくなるおそれがあり、これらの金属接触部分が電気的に直列の関係で存在するため、電気抵抗が大きくなってアース性能が十分に得られないおそれがあった。
【0013】
そこで、本発明は、ステアリングメンバを利用してボディアースを行うにあたり、電気抵抗を抑制してアース性能の向上を図ることができるステアリングメンバ取付構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上述事情に鑑みなされたものであって、請求項1に記載の発明は、車幅方向に延在されたステアリングメンバが、両端を車体の車幅方向両側に設けられたサイドパネルに固定され、前記ステアリングメンバの車幅方向の少なくとも一方に、サイドパネルに固定されるサイドブラケットが設けられ、このサイドブラケットには、取付時に前記サイドパネルに対して相対スライドさせることでサイドパネル側の塗装を剥がす塗装剥がし部と、前記サイドパネルへの固定時に、前記塗装剥がし部により前記サイドパネル側の塗装が剥がされた部分に金属接触する金属接触部と、が設けられていることを特徴とするステアリングメンバ取付構造である。
【発明の効果】
【0015】
本願請求項1に記載の発明では、ステアリングメンバの取付時に、ステアリングメンバの一端のサイドブラケットをサイドパネルに対して所定の方向へ相対スライドさせると、サイドブラケットの塗装剥がし部が、サイドパネル側の所定部位の塗装を剥がす。そして、サイドブラケットをサイドパネルに固定させたときに、塗装剥がし部によりサイドパネル側の塗装が剥がされた部分と、サイドブラケットの金属接触部とが金属接触する。
【0016】
このように、ステアリングメンバと車体のサイドパネルとが金属接触を行うため、この金属接触部分によりボディアースを行うことができる。
【0017】
このように、本発明では、ステアリングメンバを車体に取り付けた際には、ボディアースを行うことができる金属接触が成され、ステアリングメンバ側のアース線を車体に接続させる接続作業が不要となり作業性に優れる。
【0018】
さらに、本発明では、ステアリングメンバのサイドブラケットの金属接触部が、車体のサイドパネル側に直接金属接触するため、ステアリングメンバと車体との間で電気的抵抗となる金属接触部分の存在を電気的な直列方向に1箇所のみとすることができ、電気的抵抗を抑えてアース性能を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
この実施の形態のステアリングメンバ取付構造は、車幅方向に延在されたステアリングメンバ(3)が、両端を車体(1)の車幅方向両側に設けられたサイドパネル(2)に固定され、前記ステアリングメンバ(3)の車幅方向の少なくとも一方に、サイドパネル(2)に固定されるサイドブラケット(33)が設けられ、このサイドブラケット(33)には、取付時に前記サイドパネル(2)に対して相対スライドさせることでサイドパネル(2)側の塗装(2a)を剥がす塗装剥がし部(35)と、前記サイドパネル(2)への固定時に、前記塗装剥がし部(35)により前記サイドパネル(2)側の塗装(2a)が剥がされた部分(21a)に金属接触する金属接触部(33c)と、が設けられていることを特徴とするステアリングメンバ取付構造である。
【実施例】
【0021】
以下に、図1〜図6に基づいて、この発明の最良の実施の形態の実施例のステアリングメンバ取付構造について説明する。
【0022】
本実施例のステアリングメンバ取付構造は、図1に示す車体1の前部の車幅方向両側すなわち左右両側(矢印Rが車両右方向、矢印Lが車両左方向を示す)に設けられたサイドパネル2にステアリングメンバ3を固定した構造である。
【0023】
ここで、車体1について簡単に説明すると、図示を省略した運転席の前方(矢印FR方向)に車室RMとエンジンルームERとを区画するダッシュパネル1aが設けられ、このダッシュパネル1aの上端部に閉断面形状のカウルトップ1bが結合されている。
【0024】
サイドパネル2は、車幅方向に離間して対向した状態で、ダッシュパネル1aおよびカウルトップ1bの左右端部に一体に結合されている。なお、サイドパネル2は、左右に設けられているが、図では車体1の右側に設けられているもののみを示し、車体1の左側のものについては図示を省略する。
【0025】
また、車室RMの下面を形成するフロアパネル1cの車幅方向中央には、フロアトンネル1dが車両上方へ突出して形成され、その前端部はダッシュパネル1aに結合されている。
【0026】
ステアリングメンバ3は、図3に示すように、車幅方向に延在されたパイプ状のメンバ本体31と、このメンバ本体31の左右両端部にそれぞれ結合された略板状の左側サイドブラケット32および右側サイドブラケット33とを備えている。
【0027】
なお、メンバ本体31は、図示を省略した運転席の前方である車両右側に配置されて図示を省略したステアリングコラムなどを支持する大径部31aと、この大径部31aよりも小径に形成されて大径部31aの車幅左側に同軸に一体に形成された小径部31bと、を備えている。
【0028】
また、左側サイドブラケット32が、図示を省略した車幅方向左側のサイドパネル2に固定され、右側サイドブラケット33が、車幅方向右側のサイドパネル2に固定され、さらに、メンバ本体31の略中央部に固着されたステイ部材34が、フロアトンネル1dに固定されて、車体1に取り付けられる。
【0029】
このように両サイドブラケット32,33を車幅方向両側のサイドパネル2,2に固定するにあたり、本実施例では、左側サイドブラケット32は、ボルト41,41を、この左側サイドブラケット32に対して車室RM側から室外方向へ向けて挿通させ、かつ、ボルトの図示を省略した雄ネジ部分を同じく図示を省略した車両左側のサイドパネル2に設けられたナットに締結することで固定される。
【0030】
一方、右側サイドブラケット33は、ガイド溝33aとガイドピン21(図1参照)との係合、ならびにボルト42,42の締結によりサイドパネル2に固定される。
【0031】
すなわち、右側サイドブラケット33の車両前方側の端縁部から車両後方に向けてガイド溝33aが形成されている。このガイド溝33aの開口端部側には、図4に拡大して示すように、車両前方に向かうにつれて車両上下方向に拡がる挿入ガイド部33bが形成され、一方、ガイド溝33aの最も奥側(車両後方側)には、車両上方に凸形状の位置決め溝(金属接触部)33cが形成されている。なお、位置決め溝33cの上端部内周には、下方に凸形状の複数のギザギザが形成されている。
【0032】
さらに、車両右側のサイドパネル2には、図1に示すように、ガイドピン21が車幅方向に突設されている。このガイドピン21は、位置決め溝33cに嵌る外径寸法に形成されている。
【0033】
したがって、右側サイドブラケット33は、ガイド溝33aにガイドピン21が差し込まれるようにして車両前方に向けてスライドさせ、ガイドピン21がガイド溝33aの最も奥側(車両後方側)に達したら位置決め溝33cに上下方向で係合させることで、サイドパネル2に対して、車両前後方向および車両上下方向の位置決めが成されるよう構成されている。
【0034】
さらに、この位置決め状態で、ボルト42,42(図3参照)を、図1に示す車幅方向右側のサイドパネル2の車外側から車室方向へ向けてサイドパネル2を貫通させ、右側サイドブラケット33に設けられた図示を省略したウエルドナットあるいは従来技術で説明したアジャストナット05に締結させることで、右側サイドブラケット33がサイドパネル2に固定される。
【0035】
次に、本実施例のステアリングメンバ取付構造におけるボディアースについて説明する。
【0036】
本実施例のステアリングメンバ取付構造では、ボディアースを行うために、図4に示すように、ガイド溝33aの上縁に、ガイドピン21の表面の塗装2a(図2参照)を剥がす塗装剥がし部35が形成されている。
【0037】
この塗装剥がし部35は、右側サイドブラケット33のガイド溝33aの上縁に沿って車両前後方向に並んで形成された6枚の削り歯35a,35b,35c,35d,35e,35fにより構成されている。これら削り歯35a〜35fは、右側サイドブラケット33のプレス成形加工時に、同時に成形されたものである。そして、これらの削り歯35a〜35fは、上述のように右側サイドブラケット33の取付作業に伴いガイド溝33aをガイドピン21に沿って相対移動させたときに、ガイドピン21の上端部に対してステアリングメンバ3の重量をかけながら擦れ合うことで、ガイドピン21の表面の塗装2aを剥がし取る。
【0038】
さらに、これらの削り歯35a〜35fは、上述のようにガイドピン21の塗装2aを剥がし取る際に、その剥がし取り範囲をガイドピン21の軸方向に拡げるために、それぞれの車幅方向への傾きを異ならせて形成されている。
【0039】
すなわち、図4の矢印Y5方向から見た[図において(X0,Y0,Z0)で示す、ガイド溝33aの車両前方(矢印Xが車両前後方向を示す)、かつ車外方向(矢印Yが車幅方向を示す)、かつ車両下方(矢印Zが車両上下方向を示す)の位置から見上げた]拡大斜視図である図5および削り歯35a〜35fの傾き状態を車両前方から見て模式的に示す模式図である図6に示すように、ガイド溝33aの開口端側から並ぶ3枚の削り歯35a〜35cは、車両中央方向(車両左方向)に傾いている。そして、その傾き角度は、ガイド溝33aの最も開口端側の削り歯35aが、最も車両中央方向に傾き、奥側(車両後方側)のものほど、傾きが緩やかに形成されている。
【0040】
一方、ガイド溝33aの奥側から並ぶ3枚の削り歯35d〜35fは、上記の開口側の削り歯35a〜35cとは逆に、車両右方向に傾いている。そして、その傾き角度は、最も奥側の削り歯35fが、最も車両右方向に傾き、開口側(車両前方側)のものほど傾きが緩やかに形成されている。
【0041】
さらに、これら削り歯35a〜35fは、塗装2aを剥がした際に剥がし残りが生じないように、各歯35a〜35fを車両前後方向で投影させたときに隣り合う歯と重なるような傾きとなっている。
【0042】
したがって、ガイドピン21に、ガイド溝33aの塗料剥がし部35を擦れ合わせながらスライドさせたときには、図2に示すように、ガイドピン21の上端の塗装2aが、各削り歯35a〜35fの車幅方向の幅寸法に対応した幅だけ剥がされる。そして、このガイドピン21の塗装2aが剥がされた部分である塗装剥がされ部21aに、右側サイドブラケット33の位置決め溝33cが、ステアリングメンバ3の重量がかかった状態で金属接触する。
【0043】
よって、図外のインストルメントパネル内に設けられた電送機器などは、ステアリングメンバ3にアース接続させておけば、ステアリングメンバ3の右側サイドブラケット33から、ガイドピン21を介してボディアースされる。
【0044】
次に、本実施例のステアリングコラム取付構造におけるステアリングメンバ3の取付手順について説明する。
【0045】
ステアリングメンバ3を、車室RMにおいて車幅方向に延在させて配置し、両サイドブラケット32,33が、車体左右のサイドパネル2,2の間に介在されるように車両前方へ移動させる。このとき、右側サイドブラケット33のガイド溝33aに、サイドパネル2から突設されたガイドピン21を挿入させ、さらに、ガイド溝33aの最も奥側の位置決め溝33cに係合させて車両上下方向および車両前後方向の位置決めが成される。
【0046】
そして、このようにガイド溝33aとガイドピン21とを相対スライドさせる過程において、ガイド溝33aの上縁に沿って設けられた塗料剥がし部35が、ステアリングメンバ3の重量がかかった状態で、ガイドピン21の上端部と擦れ合うことで、ガイドピン21の上端部の塗装2aが剥がし取られる。そして、図2に示すように、ガイドピン21の塗装2aが剥がされた部分である塗装剥がされ部21aが右側サイドブラケット33の位置決め溝33cとステアリングメンバ3の重量がかかった状態で金属接触する。
【0047】
次に、上記位置決め状態で、まず、ステアリングメンバ3の左側サイドブラケット32を、ボルト41,41により図示を省略した車体左側のサイドパネル2に固定する。
【0048】
次に、車体右側のサイドパネル2に対して、車外側からボルト42,42を挿通させ、右側サイドブラケット33に締結して、ステアリングメンバ3を車体1に固定する。ここで、ステアリングメンバ3は、車体1との寸法誤差を吸収可能に、その車幅方向寸法が、車体左右のサイドパネル2,2の車幅方向間隔よりも小さな寸法に設定されており、後から固定する右側サイドブラケット33は、サイドパネル2に対して車幅方向の位置のバラツキが生じる。
【0049】
そこで、ボルト42,42は、この車幅方向の位置のバラツキを吸収できるだけの長さを有している。さらに、この車幅方向の位置のバラツキにより、車体側のガイドピン21に対して、ステアリングメンバ3の取付作業時にガイド溝33aをスライドさせたときの位置と、車体1へ固定したときの位置と、が車幅方向で異なる場合がある。しかし、塗料剥がし部35は、各削り歯35a〜35fを傾けたことで、ガイドピン21の塗装2aを車幅方向に所定の幅を有して剥がすようにしているため、上述のような車幅方向のバラツキがあっても、右側サイドブラケット33の位置決め溝33cとガイドピン21の塗装剥がされ部21aとを確実に金属接触させることができる。
【0050】
すなわち、塗料剥がし部35は、上述したステアリングメンバ3と車体1との車幅方向の許容寸法誤差によるスライド作業時と固定時との車幅方向の寸法誤差よりも、ガイドピン21の車幅方向の塗料剥がし代が大きくなるように設定されている。
【0051】
以上説明したように本実施例のステアリングコラム取付構造では、ステアリングメンバ3の取付作業を行うだけで、ボディアースを行うことができ、作業性に優れる。
【0052】
しかも、ボディアースを行った状態では、ステアリングメンバ3と車体1との間で、電気的抵抗が生じる金属接触部分が、右側サイドブラケット33の位置決め溝33cとガイドピン21との1箇所のみであるため、電気抵抗を抑えてアース性能の向上を図ることができる。
【0053】
また、ガイドピン21と位置決め溝33cの金属接触部分では、ステアリングメンバ3の重量がかかった状態で接触されるため、金属接触状態すなわちボディアース状態を確実に保つことができる。加えて、位置決め溝33cの上端部内周は、下方に凸のギザギザ状に形成されているため、ステアリングメンバ3の重量が、ガイドピン21の塗装剥がされ部21aに対して、面ではなく線状に加えられるため、上記金属接触圧を高め、上記金属接触状態をより確実に保つことができる。
【0054】
さらに、本実施の形態では、ガイド溝33aに形成した塗装剥がし部35の削り歯35a〜35fに傾き角度に差を与えて、ガイドピン21における塗装剥がし範囲を車幅方向に広く確保したため、車体1とステアリングメンバ3との車幅方向の寸法誤差およびスライド作業時と固定時との位置に誤差が生じても、ガイドピン21と位置決め溝33cとを確実に金属接触させてボディアースを行うことができる。
【0055】
しかも、塗装剥がし部35は、右側サイドブラケット33の成形加工時に形成するようにしたため、新たな加工費用が生じることが無く、かつ、ボルト42,42として特殊加工したものを用いる必要が無く、コストダウンを図ることができる。
【0056】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態および実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態および実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0057】
すなわち、ガイドピン21とガイド溝33aとの関係を、車体1側とステアリングメンバ3側とで、逆にしてもよい。
【0058】
また、塗装剥がし部35とサイドパネル2の塗装2aが剥がされた部分とを、車両右側に設けた例を示したが、車両左側に設けてもよい。
【0059】
また、塗装剥がし部35として、車両前後方向に削り歯35a〜35fを並べた例を示したが、右側サイドブラケット33をサイドパネル2に対して車両前後方向に相対移動させたときに塗装2aを剥がすことができるものであれば、これに限定されない。例えば、擦り金のような突起を多数形成したものや、平歯状のものなどを用いることができる。
【0060】
また、実施例では、塗装剥がし部35として、ガイドピン21の塗装2aを剥がすものを示したが、サイドパネル2に直接擦れ合って、サイドパネル2の塗装2aを剥がすものを用いてもよい。この場合、右側サイドブラケット33の金属接触部は、サイドパネル2に対して車幅方向に金属接触するが、この金属接触部分には、右側サイドブラケット33を固定する際の締結力がかかるようにすることで、金属接触状態を確実に保つようにすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の最良の実施の形態の実施例のステアリングメンバ取付構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態の実施例のステアリングメンバ取付構造の主要部を示す断面図であって、図1のS2−S2線で切断した状態を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の実施例のステアリングメンバ取付構造に用いたステアリングメンバを示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態の実施例のステアリングメンバ取付構造に用いたステアリングメンバの要部を拡大して示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態の実施例のステアリングメンバ取付構造に用いたステアリングメンバの要部を拡大して示す図4の矢印Y5方向から見た拡大斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態の実施例のステアリングメンバ取付構造における削り歯の傾き状態を車両前方から見て模式的に示す模式図である。
【図7】ステアリングメンバを用いてボディアースを行うステアリングメンバ取付構造の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 車体
2 サイドパネル
2a 塗装
21a 塗装剥がされ部(塗装が剥がされた部分)
3 ステアリングメンバ
33 右側サイドブラケット
33a ガイド溝
33c 位置決め溝(金属接触部)
35 塗装剥がし部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延在されたステアリングメンバが、両端を車体の車幅方向両側に設けられたサイドパネルに固定され、
前記ステアリングメンバの車幅方向の少なくとも一方に、サイドパネルに固定されるサイドブラケットが設けられ、
このサイドブラケットには、取付時に前記サイドパネルに対して相対スライドさせることでサイドパネル側の塗装を剥がす塗装剥がし部と、前記サイドパネルへの固定時に、前記塗装剥がし部により前記サイドパネル側の塗装が剥がされた部分に金属接触する金属接触部と、が設けられていることを特徴とするステアリングメンバ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−126001(P2007−126001A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320351(P2005−320351)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】