説明

ステロイド複合体、その調製方法および使用

1つまたはそれ以上の哺乳動物タンパク質と結合した1つまたはそれ以上のステロイドを含む複合体を開示する。前記複合体は、固形ガンおよび血液悪性腫瘍(hematological malignancy)の診断または処置に有用である。さらに前記複合体は、細胞骨格作用薬、例えばタキソール(Taxol)(登録商標)と一緒に用いて相乗作用を示し、すなわち、他の方法ではタキソール(登録商標)に応答しないガンの処置を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は、固形ガン(solid cancer)および血液悪性腫瘍(hematological malignancy)の診断ならびに処置に有用な新規のステロイド複合体(conjugate)に関する。
さらに、本発明は、ガンの診断および処置にて相乗効果を示す、該ステロイド複合体と細胞毒性物質の組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
古典的なステロイドホルモン作用は、細胞内ステロイドホルモン受容体に仲介される。これらのタンパク質は、ステロイドが結合した後二量化し、核へ移行し、特定のステロイド感受性遺伝子に影響を及ぼす特異的な核転写因子として作用する[1]。しかしながら近年、ステロイドが上述のゲノム作用に加えて数分で仲介される非ゲノム的効果を示し、古典的なステロイド受容体作用とは異なる経路に関与していることを多くの研究が示している[2,3]。さらに、非ゲノム的なステロイド作用は、古典的なステロイド受容体を発現していない細胞においても発見されている。上述の非ゲノム的なステロイド受容体作用は、細胞の膜上に見られ、ステロイド受容体の他のクラスに起因しており、生化学的、免疫学的ならびに薬理学的に古典的なステロイド受容体とは異なる。現在までに、エストラジオール(estradiol)、コルチゾール(cortisol)およびテストステロン(testosterone)に関して、通常古典的な受容体を発現しない動物組織中における非ゲノム的なステロイド効果が発見されている[2-13]。細胞の膜上に見られるこれらの非古典的なステロイド部位の活性化は、細胞外カルシウムの細胞質への流入を増加し[8-10,12,14]、時には、細胞骨格の改変(modification)を起こす[7,15]。すべての場合において、上述の細胞外(膜)ステロイド部位を同定するために、BSA-結合ステロイド(BSA-conjugated steroid)をその部位のリガンドとして用いた。実際に、ステロイドと高分子量タンパク質(60kD)の共有結合は、これらの分子の脂溶性を減じ(故に、細胞膜を介した細胞への移行特性を減じ)、それらを水溶性にし、それらの結合可能性を特定のステロイド部位に限定している。これらの化合物を商業的に入手可能な供給源は、現在利用可能である(例えば、Sigma Chemical Co. St Louis, MO, USAから)。しかしながら、この膜ステロイド受容体活性化のヒトへの応用は、今までに報告されていない。
【0003】
GB2,068,973 Aには、ウシにて排卵を増加させるための組成物に用いる、ステロイドと免疫原性タンパク質、例えばヒト血清アルブミンの複合体が開示されている。
【0004】
EP1,104,677 A2には、タンパク質と低分子量化合物の複合体が開示されており、ここにステロイドがそのような低分子量化合物の例として記載されている。そのような複合体に用いることのできるタンパク質の例として、ウシ血清アルブミンが記載されている。少なくとも一部の低分子量化合物が細胞増殖抑制性(cytostaticum)であり、タンパク質が腫瘍特異的抗体、酵素またはレクチンである場合、前記複合体をガン処置に用いることができる。
【0005】
US6,372,712 B1には、薬物部分とプレゼンタータンパク質リガンド(presenter protein ligand)を含む合成二機能性分子が開示されている。薬物部分の例としてステロイドが記載され、好ましいプレゼンタータンパク質の例としてアルブミンが記載されている。前記複合体を、物質とその標的の結合親和性および/または特異性を増大するために用いることができる。前記複合体は、用いた薬物部分のタイプに依存して異なる疾患の処置に用いることができることが記載されているが、どの疾患をどの薬物部分で処置することが可能なのかについての明確な教示はない。
【0006】
WO 01/82910 A2には、プロゲステロン(progesterone)およびRU486(ミフェプリストン;Mifepristone)またはそれらの誘導体を含む組成物、ならびに子宮頸ガンあるいは特定の前ガン性子宮頚部損傷(pre-cancerous cervical lesion)の処置のためのHPV E2タンパク質の一部を用いたガンの治療が開示されている。HPV E2タンパク質は、子宮頚部組織に致死的であることが知られており、ステロイドと一緒に用いることがこの効果を増大するようである。前記ステロイドを、ステロイド運搬タンパク質、例えばヒト血清アルブミンと結合することができる。
【0007】
US 4,215,102 Alには、プロゲステロンまたはエストロゲン(estrogen)、タンパク質および蛍光色素からなる複合体が開示されている。前記複合体を、切除したヒト組織切片におけるステロイドホルモン受容体の検出に用いることができる。
【0008】
WO 99/13914 Alには、治療用活性物質の溶解量を増大し、よってその利用可能性を増すために、制御された凝集状態にて血漿タンパク質画分と結合した低い水溶解度を有する前記活性物質を含む医薬組成物が開示されている。
【0009】
WO 93/02691 Alには、グルココルチコイド(glucocorticoid)の結合部位および標的細胞集団の結合部位を有するタンパク質運搬分子を用いたグルココルチコイドの輸送系が開示されている。該輸送系を含む医薬組成物は有用であるが、グルココルチコイドで処置可能であることが知られている状態に用い得ることを具体的に示唆する記載はない。
【発明の詳細な説明】
【0010】
本発明は、ステロイドも哺乳動物タンパク質もそれ自身では実質的な細胞毒性作用を発揮しないかもしれない場合であっても、哺乳動物タンパク質とコンジュゲート(結合)(conjugated)したステロイドが、驚くべきことにガン細胞に毒性効果を有し得る、という発見に基づいている。
【0011】
故に、1つの側面にて本発明は、固形ガンまたは血液悪性腫瘍の処置のための医薬組成物の製造における、哺乳動物タンパク質とコンジュゲートした1つまたはそれ以上のステロイド(細胞増殖抑制性ではない)の使用に関する。
【0012】
ステロイドは原則として、可溶性の哺乳動物タンパク質とコンジュゲート(複合体形成)している時に細胞増殖抑制効果を有するステロイドであってよい。本発明の用語「ステロイド」は、天然および合成ステロイドホルモン、その類似体および誘導体、例えば、硫酸塩および脂肪酸エステル、それらの前駆体、代謝産物ならびにそれらの類似体(アナログ)をすべて含むものであり、構造上、ステロイド性あるいは非ステロイド性であってよい。
【0013】
本発明者らは、類似体として、ヒト膜ステロイド受容体類と結合しうる、すべての天然、半合成または合成多環式分子、それらの混合物、前駆体および代謝産物を想定している。
【0014】
1つの好ましい態様にて、ステロイドは、膜に連結したステロイド受容体と結合することが可能なステロイドである。
【0015】
本発明の好適なステロイドの例としては、グルココルチコイド、コルチゾール、テストステロン、エストロゲン、エストラジオール、プロゲステロンおよびその既知の類似体を挙げることができる。
本発明の哺乳動物タンパク質は原則として、ステロイドと複合体を形成している時に水に可溶な哺乳動物タンパク質であってよい。
哺乳動物タンパク質を、球状タンパク質、血漿タンパク質、アルブミン、結合タンパク質(binder)または選択的ヒト腫瘍細胞抗原の抗体から選択することができる。
【0016】
アルブミンは、本発明のステロイドとコンジュゲートするタンパク質の例として好ましい。
ヒトアルブミンおよびウシ血清アルブミン(BSA)は、本発明の複合体形成される好ましいタンパク質の例である。
ヒトアルブミンは、特定の複合体がヒトの処置を目的とする場合に特に好ましい。
【0017】
用語タンパク質とは、天然および天然でないタンパク質を含むと考えられる。この点に関して、天然でないタンパク質は、天然に生じるタンパク質とアミノ酸配列、グリコシル化パターンまたは化学修飾にて相違するタンパク質であると見なされる。天然でないタンパク質は、組換えDNA技術を用いて、または天然タンパク質の化学修飾によって提供され得る。
【0018】
天然でないタンパク質は、例えば、所望の宿主中における抗原性を減じるため;好適なハプテンを挿入するため;例えば酸化に対するタンパク質の安定性を増すため;タンパク質にステロイドの改善された結合のための好適な部位を供するため;所望のタンパク質を製造するための好適な方法を提供する、などのために、天然タンパク質修飾の可能性を提供する。
【0019】
天然でないタンパク質は、それらが直接または間接的に天然哺乳動物タンパク質から誘導される場合、例えば単離された天然タンパク質の化学修飾、あるいは組換えDNA技術により誘導される場合、哺乳動物タンパク質であると見なされる(ここに哺乳動物タンパク質をコードする遺伝子は、元のまま、あるいは修飾された形態で用いられる)。
【0020】
天然タンパク質は、天然資源、または組換えDNA技術により供される天然あるいは組換え細胞の組織培養物から提供され得る。
既知の手法を用いて所定の好適な天然または天然でないタンパク質を供することは、当業者の技術的範囲内である。
本発明のステロイドタンパク質複合体を治療計画に用いることを目的とする場合、タンパク質は、処置を行う所望の被験者に免疫原性でないように選択されることが好ましい。
【0021】
本発明の複合体は、それ自体知られている手法によって調製することができる(ここに、ステロイドをタンパク質と結合している)。前記結合は、安定な複合体を供する結合であり、好ましくは共有結合であり得る。
【0022】
ステロイドに加えてさらなる群、例えば診断を目的として結合される標識、例えばハプテン、着色部分(colored moiety)、蛍光部分、放射性核種などをタンパク質と結合することができる。
【0023】
ステロイド部分とタンパク質の共有結合は、従来の手法を用いて作製することができる(例えば、カルボキシ−メチルエーテル部分の結合、およびカルボキシジイミドの作用によるタンパク質との結合)。
【0024】
ステロイド−タンパク質複合体の選択性を増大するために、ステロイド骨格とタンパク質の異なる結合を作製することができる(例えば、ステロイドの炭素部位1、3、7、11または15に酸性基を付加する結合−前記一覧は限定的ではない)。
【0025】
本発明の複合体は、固形ガンおよび血液悪性腫瘍の処置に用いることができる。
【0026】
固形ガンの例としては、前立腺ガン(ホルモン感受性および耐性)およびその転移ガン(リンパ節、骨など)、乳ガン(ホルモン感受性および耐性)および様々な場所へのその転移ガン(リンパ節、骨など)、褐色細胞腫(phenochromocytoma)およびその転移ガン、骨腫瘍およびその転移ガン、脳腫瘍(ニューロブラストーマ)などを挙げることができる(これらに限定されない)。
【0027】
血液悪性腫瘍の例としては、急性および慢性骨髄性白血病、急性および慢性リンパ性白血病ならびにリンパ腫(B細胞およびT細胞)を挙げることができる。
原理上、そのような処置を必要とする哺乳動物における上述の兆候の処置に前記複合体を用いることが可能である。
本発明の複合体を用いて処置され得る哺乳動物の例としては、ヒト、ウシ、イヌ、ヒツジ、ウマ、ヤギ、ロバ、ネコおよびサルを挙げることができる。好ましくは、複合体はヒトの処置に用いられる。
【0028】
好ましい態様にて本発明の複合体は、ヒトのガンまたは血液悪性腫瘍の処置に用いられる。
そのような処置に関して、複合体は原則として既知の投与方法、例えば経口投与または直腸投与あるいは非経口投与、経皮内注射または静脈注射により投与することが可能であり、ここで、非経口投与、経皮内注射または静脈注射が好ましい。
【0029】
投与量および処方計画は一般的に、患者の年齢、体重、状態を考慮して、主治医の判断により決定される。
【0030】
一般的に日用量は、体重1kg当たり1mg〜100mgの範囲であり、好ましくは体重1kg当たり5mg〜100mgの範囲であり、より好ましくは体重1kg当たり5mg〜50mgの範囲であり、最も好ましくは体重1kg当たり5mg〜20mgの範囲であって、特定の好ましい態様にて、日用量は体重1kg当たり約7〜10mgである。処置は一般に、最長で6ヶ月間、好ましくは2週間〜6ヶ月の範囲であり、より好ましくは2週間〜3ヶ月の範囲で継続される。
【0031】
当業者が理解し得るように、循環血液中にて十分な濃度の活性化合物を維持するために、処置の期間中一定の間隔を置いて医薬組成物を投与することができる。従って、本発明の医薬組成物を、処置の効果と処置される患者の許容量を考慮に入れた主治医の判断により、一日に一度またはそれ以上の回数、あるいは一日またはそれ以上の日数の一定間隔毎、例えば一日おきに投与することができる。
【0032】
本発明のもう一つの態様としては、本発明の複合体の分解可能性およびその結果起こる遊離ホルモンの放出可能性を考慮に入れてもよい。
【0033】
テストステロン受容体を有する腫瘍を得るために、抗アンドロゲン(antiandrogen)を添加し、本発明のステロイド複合体(ここに複合体はテストステロンタンパク質複合体である)を用いて腫瘍を処置することができる。
【0034】
さらに、エストロゲン受容体またはプロゲステロン受容体を有する腫瘍については、抗テストステロンをそれぞれ抗エストロゲンまたは抗プロゲスチン(antiprogestin)に置換し、テストステロンタンパク質複合体をエストロゲン複合体またはプロゲスチン複合体とコンジュゲートしたタンパク質に置換するとよい。
【0035】
同じ開発方針に従い、膜ステロイド受容体が見出されるであろう組織に、相当するステロイド複合体を、10倍高濃度の抗ステロイド性物質および抗細胞骨格性物質と一緒に投与することができる。通常の技術および所定の実験を用いて得られる状況における最適な組合せを決定することは、当業者の技術的範囲内である。
【0036】
従って、1つの側面にて、本発明の医薬組成物はさらに、投与される複合体中に存在するステロイドがアンドロゲンである場合、1つまたはそれ以上の抗アンドロゲンを含むことができる。特定の理論に束縛されることは意図しないが、抗アンドロゲンは古典的なアンドロゲン受容体を遮断し、その結果、複合体から遊離され得るホルモンの効果をなくしてしまうと考えられる。
【0037】
抗アンドロゲンは、投与される複合体中、ステロイドの量よりも約10倍高濃度以内で添加され得る(モルを基準に測定)。
【0038】
ステロイド−タンパク質複合体に存在するステロイドが、アンドロゲンでなくエストロゲンまたはプロゲステロンである場合、抗アンドロゲンをそれぞれ抗エストロゲン(antiestrogen)または抗プロゲスチンに置換することができる。
【0039】
抗アンドロゲン、抗エストロゲンおよび抗プロゲスチンは、当業者に知られている。
抗アンドロゲンの例としては、酢酸シプロテロン(cyproterone acetate)およびフルタミド(flutamide)を挙ることができる。抗エストロゲンおよび抗プロゲスチンの例としては、それぞれタモキシフェン(tamoxifene)およびRU486を挙げることができる。
【0040】
もう1つの側面にて、診断を目的として本発明の複合体を用いる。
診断用途にて、標本(specimen, 試料)を複合体と接触させ、次に、適当な方法で結合した複合体を検出する。
1つの態様にて、薬剤的な腫瘍切除(pharmaceutical orchecthomy)をもたらし、かつ遊離テストステロンの悪影響を遮断するために、インビボ(in vivo)で前記複合体を抗アンドロゲンと組合せて診断に用いる。
【0041】
この態様では、複合体を被験者に投与し、次に複合体と標的の結合を検出する。そのようなインビボでの診断用途にて、標識、例えばX線分析の造影剤として機能する放射性核種または電子密度の高い化合物を、複合体に結合することが好ましい。
【0042】
もう1つの態様にて、エクスビボ(ex vivo)の診断に複合体を用いる。原則として、生物学的試料(標本)は、複合体と試料の結合を試験することができるものであれば任意である。そのような適用に関して、複合体は、例えば検出可能な基の結合により、または複合体のタンパク質部分に特異的な抗体の使用により、検出が容易であれば好都合であり得る。
【0043】
本発明者らはさらに、本発明の複合体と細胞骨格作用薬(cytoskeleton acting drug)との相乗効果を発見した。
故に、さらなる側面にて本発明は、哺乳動物タンパク質および細胞骨格作用薬とコンジュゲートした1つまたはそれ以上のステロイド(細胞増殖抑制性ではない)を含む医薬組成物に関する。
【0044】
本発明の複合体と細胞質骨格作用薬の相乗効果は、驚くことに、他の方法では細胞骨格作用薬に反応を示さないか、またはほんの少しだけあるいは中程度の反応を示す固形ガンおよび血液悪性腫瘍の処置を、この組合せを用いることで可能とする。
【0045】
従って、さらなる側面にて本発明は、固形ガンまたは血液悪性腫瘍の処置を目的とした、哺乳動物タンパク質と1つまたはそれ以上のステロイド(ここに、ステロイドは細胞増殖抑制性ではない)の複合体と細胞骨格作用薬とを含む医薬組成物の使用に関する。
【0046】
本発明において、用語「細胞骨格作用薬」は、通常の意味で用いられている。細胞骨格作用薬の例としては、タキソール(Taxol)(登録商標)またはタキソテール(Taxotere)(登録商標)を挙げることができる。
【0047】
本発明の複合体と細胞骨格作用薬の組合せを用いた処置は、両方の活性化合物を含む1つの医薬組成物を投与することにより行うか、または個々の製薬的な構成要素(1つは複合体を含み、もう1つは細胞骨格作用薬を含む)を投与することにより行うことが可能である。
【0048】
複合体および細胞骨格作用薬の投与量ならびに処方計画(regimen)は、特定の複合体および薬剤を別々に投与する場合に用いられる相当する投与量および処方計画と類似している。
【0049】
複合体と、細胞骨格作用薬および/または抗ステロイド化合物を個々の医薬組成物として投与する場合、キット中にこれら2つの医薬組成物を含んで提供されることが都合良い。
【0050】
従って、さらなる態様にて本発明は、以下を含むキットに関する。
哺乳動物タンパク質とコンジュゲートした1つまたはそれ以上のステロイド(ここに、ステロイドは細胞増殖抑制性ではない)を含む医薬組成物;および、
細胞骨格作用薬、または、
腫瘍がテストステロン受容体、エストロゲン受容体またはプロゲステロン受容体を有する場合に、それぞれ、抗アンドロゲン、抗エストロゲンおよび抗プロゲスチンのうち1つを含む医薬組成物。
さらなる態様にて、本発明は以下を含むキットに関する:
哺乳動物タンパク質とコンジュゲートした1つまたはそれ以上のステロイド(ここに、ステロイドは細胞増殖抑制性ではない)を含む医薬組成物;および、
細胞骨格作用薬、および、
腫瘍がテストステロン受容体、エストロゲン受容体またはプロゲステロン受容体を有する場合に、それぞれ、抗アンドロゲン、抗エストロゲンおよび抗プロゲスチンのうち1つを含む医薬組成物。
【0051】
本発明は、これらの分子と細胞の膜ステロイド受容体の結合により測定される、膜ステロイド受容体アゴニストの定量、調製および使用からなる。
【0052】
本発明では、ヒトにおける固形ガンおよび血液悪性腫瘍の診断ならびに処置にこれらの分子を使用することができる。
本発明によれば、診断および治療用の物質を調製するために特定の分子を用いることができる。それらは、タンパク質−結合(例えば、BSA−結合、ヒト血清アルブミン(HSA)−結合、バインダー(結合剤)または選択的ヒト腫瘍細胞抗原の抗体、これらは限定的なものではない)ステロイドである。
【0053】
本発明は、以下に記載の実施例に例示するように、固形ガンおよび血液悪性腫瘍の症例における特異的な診断薬を調製するために用いることができる。
【0054】
実施例に例示するように、アクチン細胞骨格の修飾、および細胞骨格作用薬(例えば、タキソール(登録商標))の作用の増強ならびに持続といった膜ステロイド受容体の作用は、膜ステロイド受容体アゴニストを薬剤としての可能性のある興味深いクラスにしている。
【0055】
故に、本発明者らはここに、記載した実施例に例証するように、選択的予備的あるいは補助的化学療法に照らして、選択的悪性腫瘍にて膜ステロイド受容体のクラスに特異的かつ選択的に結合することのできる新規の薬剤を調製することを目標としている。もう1つの側面にて、化学療法剤として用いられるこれらの物質は、選択的腫瘍の化学物質耐性を抑制または調節するために、単独で、抗ステロイド薬との組合せで、または他の化学療法剤(例えば、タキソール(登録商標)または同等の薬剤)と併用して用いられ得る。
【0056】
本発明者らは、これらの薬剤の最適な投与方法を決定する(治療中、局所的または全身的に注入可能、あるいは局所的に塗布するなど)。
【0057】
本発明を、添付した図面を参照して以下の実施例により詳しく説明する。本発明の他の特徴および利点は、以下の実施例、参照により本明細書に包含される引用文献、および添付した図面に記載されている。
【0058】
実施例および図面は、例示の目的で提供され、決して本発明を限定するものではないことが理解されるはずである。
【実施例】
【0059】
[材料および方法]
細胞株
ヒト前立腺ガン(human prostate cancer)LNCaP細胞株は、元々、前立腺ガン(prostate adenocarcinoma)のリンパ節転移から単離されたものであり[16]、DSMZ(Braun-schweig, Germany)から購入した。細胞を、加熱不活化した10%ウシ胎仔血清(FBS)入りのRPMI 1640培地中で、空気中5%COの加湿大気中にて37℃で培養した。それらを1週間に1度サブカルチャーし、実験前に24時間、血清なしの培地でインキュベートした。すべての培養培地は、Gibco BRL(Life Technologies, Paisley, UK)から購入した。
【0060】
細胞数を、テトラゾリウム塩分析(tetrazolium salt assay)を用いて分析した[17]。細胞をテトラゾリウム塩(3-(4,5ジメチルチアゾール-2-イル)-臭化2,5ジフェニルテトラゾリウム、シグマ、St Louis, MO)と一緒に37℃で3時間インキュベートした。生存細胞を色素(dye)で還元し、濃い青の結晶のように見える紫色のホルマザン(formazan)とした。インキュベーションの最後に、それらをプロパノール−1に溶解し、1時間以内に575nmにて吸光度を測定した。
【0061】
膜アンドロゲン受容体の検出
i.結合分析
(膜の調製)
血清なしで150cmフラスコにて培養した細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、剥離により採取し、1500rpmで遠心した。ペレット状の細胞を、新鮮に添加したプロテアーゼ阻害剤(lOμg/ml PMSFおよび1μ/ml アプロチニン)を含むpH7.4の50mMトリス−HCl緩衝液中における超音波処理(sonication)により均一化した。破壊されていない細胞を2500gで15分間の遠心により除去した。膜を45,000gで1時間の遠心により得、同じ緩衝液で1度洗浄した。タンパク質濃度をBradfordの方法により測定した[18]。
【0062】
(結合条件)
細胞膜をタンパク質終濃度2mg/mlで、かつ1000倍過剰のモル量の標識していないアンドロゲン(DHT)を添加しない(総結合量)あるいは添加した(非特異的結合量)、少なくとも6つの異なる濃度の[3H]テストステロン(2-50nMの範囲)を含む、終量0.1mlにて飽和結合実験を行った。置換結合実験にて、終濃度2mg/mlの細胞膜調製物を、10-12〜10-6 Mの範囲の異なる濃度の標識していないステロイド(DHT、エストラジオール、プロゲステロン、すべてSigma, St Louis, MOから購入)の非存在下または存在下における5nMの[3H] テストステロン(比活性度 95 Ci/mmole, Amersham-Pharmacia, Buckinghamshire, UK)と一緒に、インキュベートした。非特異的な結合を、5μM DHTの存在下で測定した。両方の結合実験にて、4℃で一晩インキュベーション後、水中0.5%ポリエチレンイミン(PEI)に前もって浸しておいたGF/Bフィルターで減圧下にてろ過することにより結合した放射活性物を単離し、氷冷トリス-HC1緩衝液で3回洗浄した。ろ過液を4mlのシンチレーション・カクテルと混合し、結合放射活性を60%効率のトリチウムにてシンチレーション・カウンターで測定した(Tricarb, Series 4000, Packard)。
【0063】
ii.フローサイトメトリー
血清なしの培地で24時間培養したLNCaP細胞を、剥離により培養フラスコから分離し、106細胞/mlの密度でPBSに懸濁した。それらを、10-7M テストステロン-BSA-FITC複合体と一緒に室温で異なる時間(1分〜1時間)インキュベートした。1000倍のBSA-FITCを非特異的な結合の測定に用いた。前方散乱光(forward scatter,FS)と側方散乱光(side scatter,SS)を通した10,000細胞数の試料にて、Coulter Epics L-MCL装置(Beckman-Coulter Inc. Foullerton CA, USA)を用いたフローサイトメトリーにより細胞を分析した。テストステロン3-(O-カルボキシメチル)オキシム-BSA-FITC (テストステロン-BSA-FITCと呼称)、テストステロン3-(O-カルボキシメチル)オキシム-BSA(テストステロン-BSAと呼称する)、エストラジオール6-(O-カルボキシメチル)オキシム-BSA-FITC(エストラジオール-BSA-FITCと呼称する)、プロゲステロン3-(O-カルボキシメチル)オキシム-BSA-FITC(プロゲステロン-BSA-FITCと呼称する)およびBSA-FITCを、Sigma (St Louis, MO)から入手した。
【0064】
iii.共焦点レーザー顕微鏡
LNCaP細胞を、培養培地を無血清培地に置換する前に少なくとも48時間、ポリ−L−リジンでコートしたガラスカバースリップ上に増殖させた。24時間後、細胞をPBSで2回洗浄し、DHTの存在下または非存在下でテストステロン-BSA-FITCと一緒に30分間インキュベートした。陰性対照としてBSA-FITCを用いた。その後、細胞をPBSで2回洗浄し、PBS中2% PFAで30分間固定した。グリセロールとヴェスタシールド(Vestashield)(Vector, Burlingame, CA)の1:1(v/v)混合液を用いて、カバースリップをスライドにマウントした。標本を共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)(Leica TCS-NT, Lasertechnik, Heidelberg, Germany)を用いて分析した。
【0065】
パラフィン包埋した組織調製物における膜ステロイド受容体の検出
組織スライドをホルマリン固定した組織調製物のパラフィン塊から調製した。3〜4ミクロン(μm)の厚さの組織切片を切断し、SuperFrost Plusスライド(Kindler O GmbH, Freiburg, Germany)上に置き、56℃で2時間インキュベートし、キシレンで6回洗浄し(5分ずつ)、次に96%、80%および70%エタノールで5分ずつ洗浄し、最後に蒸留水で20分間洗浄した。その後、組織スライドを、500ワットのマイクロ波オーブン中でクエン酸緩衝液中にて各4.5分間で3回インキュベートした。別法にて、スライドを40℃で一晩インキュベートし、より緩やかな方法でパラフィンを除去した。その後、それらを蒸留水およびトリス緩衝生理食塩水(TBS、10 mM、pH 7.4)中にて洗浄した。TBS中2%BSA溶液と一緒に10分間インキュベートすることにより、BSAの非特異的吸着を確立し、その後TBSで2回洗浄した。次にスライドをBSA-FITC-ステロイドと一緒に10分間インキュベートし、TBSで洗浄した。グリセロールとヴェスタシールド(Vestashield)(Vector, Burlingame, CA)の1:1(v/v)混合液を用いて、カバースリップをスライド上にマウントした。標本を共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)(Leica TCS-NT, Lasertechnik, Heidelberg, Germany)を用いて分析した。
【0066】
単量体および多量体アクチンの測定
単量体アクチン(トライトン可溶性)および多量体アクチン(トライトン不溶性)を測定するため、LNCaP細胞をDHTまたはテストステロン-BSA(10-7 M)の存在下あるいは非存在下で10分間インキュベートした。その後、トライトン抽出緩衝液(0.3%トライトンX-100、5mM トリス(pH 7.4)、2mM EGTA、300mM ショ糖、2μM ファロイジン、1mM PMSF、10μg/mlロイペプチン、20μg/ml アプロチニン、1mM バナジン酸ナトリウムおよび50 mM NaF)500μlを添加し、混合液を氷上で5分間インキュベートした。緩衝液を除去した後、可溶性タンパク質を等量の6%PCAで沈殿させた。プレート上に残ったトライトン不溶性画分を、1mlの3%PCAで沈殿させた。それぞれの画分の等量を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)した。生じたタンパク質バンドをニトロセルロース膜に転写し、前記膜を、室温で1時間、TBS-T(20mM トリス(pH 7.6)、137mM NaCl、0.05% Tween-20)中5%脱脂粉乳で遮へいした。抗体溶液(TBS-T中)を室温で1時間添加した[モノクローナル・マウス・抗-アクチン一次抗体 (Amersham-Pharmacia, Bukinghamshire, UK)およびホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ-結合二次抗体(Chemicon, Temecula,CA)]。ブロット(blot)をECLシステム(Amersham-Pharmacia, Bukinghamshire, UK)を用いて発色させ、バンド強度をPC-based 画像解析 (Image Analysis Inc. , Ontario, Canada)を用いて定量した[19]。
【0067】
免疫沈降、キナーゼ分析および免疫ブロッティング分析
テストステロン-BSAまたはDHT処理した細胞、および未処置(対照)の細胞を、氷冷したPBSで3回洗浄し、プロテアーゼ阻害剤およびホスファターゼ阻害剤を添加した、1% ノニデット(Nonidet)P-40、20mM トリス pH7.4および137mM NaClを含む冷リン酸緩衝液に懸濁した。透明溶解液をプロテインA−セファロースと一緒に4℃で1時間前もって吸着させておき、遠心し、上清(タンパク質と等量)を既述の抗体とプロテインA−セファロースビーズを用いて免疫沈降した。
【0068】
PI-3キナーゼの脂質キナーゼ活性を、Auger et al[20]の微修正した方法を用いて測定した。免疫沈降したリン酸化チロシンタンパク質を含むプロテインA−セファロースビーズを、緩衝液A(20mM トリス(pH 7.4)、137mM NaCl、1mM CaCl2、1mM MgCl2、1% ノニデットP-40、0.lmM Na3VO4)で3回洗浄し、0.1M トリス(pH 7.4)中5mM LiClで3回洗浄し、TNE (10mM トリス(pH 7.4)、150mM NaCl、5mM EDTA、0.1mM Na3VO4)で2回洗浄した。その後、免疫沈降物をTNEに再懸濁し、基質として0.2mg/ml ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスホスフェート(PI-4,5-P2)を用いて、58M ATP、10 Ciの [-32P]ATP (5000 Ci/mmol)および14mM MgCl2の存在下にて、PI-3キナーゼ活性を37℃で10分間分析した。反応を、1M HClおよびメタノール/クロロホルム (1/1)を添加して停止させた。よく混合した後、遠心して相を分離し、下方の有機相中の脂質を、[21]に記載のようにシュウ酸シリカゲル 60シートにおけるTLCによって分離した。クロマトグラフした脂質をヨード染色により視覚化し、既知の標準の移動度と比較した。
【0069】
免疫ブロット分析にて、細胞溶解物または免疫沈降物をLaemmli's試料緩衝液中に懸濁し、SDS−PAGEにより分離した。タンパク質をニトロセルロース膜上に転写し、前記膜を室温で1時間、TBS-T(20mM トリス(pH 7.6)、137mM NaCl、0.05% Tween-20)中5%脱脂粉乳で遮へいした。抗体溶液(5%脱脂粉乳を含むTBS-T中)を4℃で一晩添加し(一次抗体)、そして1時間(ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ-結合二次抗体)添加した。ブロットをECLシステムを用いて発色させ、バンド強度をPC-based 画像解析(Image Analysis Inc. , Ontario, Canada)を用いて定量した。
【0070】
親和性沈殿
GST-PBDを用いた親和性沈殿を、Benard et alの方法[22]を基にした分析法を用いて行った。細胞を、分析キット(UBI, Lake Placid, NY)により提供されるMg2+溶解緩衝液 (MLB)中に溶解し、グルタチオン−アガロースと結合した8gのGST-PBDを混合し、4℃で1時間インキュベートした。沈殿物をMLBで3回洗浄し、Laemmli's試料緩衝液に懸濁した。タンパク質を11%SDS−PAGEにより分離し、ニトロセルロース膜に転写し、抗-Cdc42または抗-Rac抗体と一緒にブロットした。
【0071】
ヌードマウスにおけるテストステロン-BSAのインビボ(in vivo)効果
ヌードマウスの背中に、全量0.1mlにてマトリゲル(登録商標)(Sigma, St Louis, MO)中に希釈した 5×106LNCaP細胞を注入した。4週間後、肉眼で見える腫瘍が生じ、以下のような処置を開始した:PBS中に希釈した薬剤を、全量0.5mlで1週間に3度腹腔内に注入した。動物を4つの群に分けた:第一の群に5×10-6 M BSAを注入した。第二の群に5×10-6 M テストステロン-BSA複合体を注入した。第三の群に10mg/mlタキソール(登録商標)を注入し、第四の群にはテストステロン-BSAとタキソール(登録商標)の組合せを導入した。処置の4週間後に腫瘍を測定した。腫瘍を切除し、測定し、重さを量り、さらなる分析のために病理学者に送った。
【0072】
[結果]
ヒト前立腺ガン細胞株LNCaPの膜アンドロゲン結合部位
LNCaP細胞の培養物から調製した膜を、1000倍モル過剰量の標識していないアンドロゲン(DHT)の存在下または非存在下にて異なる濃度の[3H]テストステロン(2-50nMの範囲)と一緒にインキュベートした。4℃で一晩インキュベーションした後、膜結合放射活性物を単離し、測定した。図1Aに示したように、1〜50nMの範囲の[3H]テストステロンは特異的可飽和結合を誘導することが分かった。結果のスキャッチャード解析(Scatchard analysis)(図5A掲載)は、テストステロン (KD 10.9nM)の高い結合親和性、および1mgのタンパク質に対する144.3 fモルの結合部位の数(細胞当たり約13340部位数に相当)を明らかにした。
【0073】
この膜結合成分のアンドロゲン選択性を、競合置換実験により確認した。膜を、様々な濃度(10-12〜10-6 M)のDHTまたは他のステロイドの存在下で[3H]テストステロンと一緒にインキュベートした。図1Bに示すように、DHTは放射標識したテストステロンの置換を生じた。対照的に、エストラジオールおよびプロゲステロンは、著しく低い親和性(それぞれ、104倍および102倍)で放射標識したテストステロンと置換し、同定された膜結合部位のアンドロゲン選択性を確認した。
【0074】
膜テストステロン受容体の存在は、Sigma (St Louis, MO)から入手したテストステロン類似体であるテストステロン3-(O-カルボキシメチル)オキシム-BSA-FITCを用いて同様に確認した。この類似体は、ステロイドとBSAが共有結合しているために、細胞に浸透することができない。図2の左パネルに示したように、テストステロン-BSAの特異的な膜結合が、フローサイトメトリーによりLNCaP細胞の膜上に発見された。テストステロン-BSAと膜受容体の結合は、インキュベーション後1分で観察され、10分後には最大となり、30分後には変化しなくなった。膜結合を、図2右パネルに示したように、共焦点レーザー顕微鏡により同様に確認した。図のように、膜染色のみが、テストステロン-BSA複合体の使用により発見され、化合物の内在化の可能性の仮説はなくなった。
【0075】
これらの実験から、前立腺ガン細胞は、アンドロゲンに選択的である、特異的な高親和性の膜結合部位を有するという結論に達した。
【0076】
前立腺ガンの標本における膜テストステロン受容体の同定
14個の前立腺ガン標本にて、10個の良性前立腺肥大症(BPH)の経尿管切除片、および顕微鏡下で確認した8個の同じ症例由来の悪性でない標本に対し、本発明者らは上皮細胞標本を調製した。細胞を、ビメンチン(vimentin)、サイトケラチン(cytokeratine)およびPSAに対するモノクローナル抗体で免疫染色し、それぞれ間質、および正常または悪性上皮細胞を示す証拠とした。上皮細胞は、すべての実験標本にて全細胞数の85%以上を占めることが確認された。細胞をテストステロン-BSAと一緒に10分間インキュベートし、フローサイトメトリーにより分析した。図3に示すように、膜テストステロン結合は、BPHの場合にはとても低い結合だが、ガンの場合にはすべて高い結合が見られる。この観点にて、膜テストステロン受容体は、悪性と良性の前立腺腫瘍を完全に判別することができる。
【0077】
上述の判別は、接触調製法における前立腺上皮細胞の蛍光染色によっても明らかに観察される(図4上図)。実際には、手術後、外科的調製物の同定した悪性病変すべてを、Super-Frost/Plus スライド上に接触させ、付着した細胞をテストステロン-BSA-FITCで染色し、直ちに蛍光顕微鏡で分析した。図に示すように、悪性上皮細胞のみが染色され、BPH上皮細胞にはほとんど蛍光が存在しなかった。最後に、図4の下図に示したように、ホルマリン固定した前立腺ガンのパラフィン層状標本由来の通常の組織学的スライドにて、膜テストステロン受容体を同定することができる。さらに興味深いこととして、テストステロン膜染色は、上皮内の新生組織形成を特異的に同定することが可能であることを特記しておく。
【0078】
上述の結果より、テストステロン膜受容体は、前立腺ガンに特異的および選択的な構成要素であることが明らかとなった。
【0079】
乳ガン標本における膜ステロイド受容体の同定
エストロゲン-、プロゲステロン-およびアンドロゲン-膜結合を、ステロイド受容体陽性および陰性の腫瘍にて免疫細胞化学により分析した。典型的な結果を図5に示す。図に示したように、細胞内ステロイド受容体の状態にかかわらず、BSA-結合ステロイドが組織調製液中の成分として確認される。アンドロゲン受容体は、これらの乳房腫瘍に低濃度存在している。対照的に、エストラジオール-BSAおよびプロゲステロン-BSAは、胸部の腫瘍細胞にて細胞周囲の成分として確認される。このことは、ER/PR陰性腫瘍にてより明らかであり、すなわち細胞内受容体との相互作用がない。実際には、ER/PR陽性の場合、スライド調製中に細胞性障害が起こり、ある場合には染色の拡散したパターンを示し、これらの場合は、細胞周辺、細胞内、または核結合によるものではない。
【0080】
血液悪性腫瘍における膜ステロイド受容体の同定
正常な血液中の白血球細胞(WBC)にて、本発明者らは、テストステロン膜結合を確認した(通常のフローサイトメトー分析を行った)。テストステロン陽性細胞の分布を、表1に示す。
表1:20人の健康な血液ドナーにおけるWBCの異なる群での膜テストステロン陽性(Testo+) 細胞の分布
【表1】

【0081】
表に示すように、膜テストステロン受容体は3つのWBCクラスすべてに発現している。単球が、これらの部位を高い割合で発現することは興味深い。
【0082】
リンパ球のサブクラスにおけるテストステロン膜受容体の分析を、表2に示す。
表2:リンパ球の異なる種類における膜テストステロン陽性細胞の分布。T細胞をCD3マーカーの分析により分析し、B細胞をCD19の発現により分析し、NK細胞をCD56リンパ球抗原の発現により分析した。上述のマーカー(PE標識したモノクローナル抗体によりマークした)とテストステロン−BSA−FITCの共発現を、テストステロン陽性な細胞の一部の検出に用いた。
【表2】

【0083】
表に示すように、Bリンパ球とNK細胞は、Tリンパ球と比較して、テストステロン受容体を優先的に発現していた。さらに、T細胞のさらなる分析が、CD4およびCD8陽性リンパ球における等しい分布を示した。
【0084】
悪性腫瘍の4つの場合における、テストステロン膜受容体の分布を表3に示す。
表3:悪性腫瘍の4つの場合における膜テストステロン結合の検出。正常な対照の平均を比較のために示す。
【表3】

【0085】
表に示すように、膜テストステロン結合は、「ALL」欄のリンパ球で減少が見られたが、寛解期にて正常の対照のレベルに戻った。対照的に、悪性リンパ腫およびAMLでは、単球にてテストステロン膜結合の増加が見られ、一方、ALLおよび検討したリンパ腫の場合では、多核白血球の膜テストステロン受容体の減少が見られた。
【0086】
表4に、リンパ球の異なるサブクラスにおけるテストステロン受容体の分布を示す。表に示すように、膜テストステロン受容体は、3つすべてのリンパ球サブクラスにて等しく低く、ALLの場合に、寛解後正常量に戻った。同様の結果がAMLの場合にも見られた。
表4:血液悪性腫瘍の4つの場合における膜テストステロン受容体の分布。正常血液ドナーにて得られた結果を、比較のために示す。
【表4】

【0087】
テストステロン膜部位の分布が、正常と白血病細胞とで異なる分布を示ことは興味深い。さらに、図6に示すように、骨髄幹細胞(CD34とAC133が共に陽性)は、試験した3つのステロイド(エストロゲン、プロゲステロンおよびアンドロゲン)すべての膜結合部位を発現する。従って、未成熟のリンパ球様細胞の発現は、膜テストステロン受容体の発現差の原因となる可能性があり、故に、本発明は血液悪性腫瘍の検出および処置にも用いることができる。
【0088】
膜ステロイド受容体とアクチン細胞骨格の相互作用
図7に、共焦点レーザー走査顕微鏡により分析した、LNCaPヒト前立腺ガン細胞のアクチン骨格に対するテストステロン-BSA複合体の作用の効果を示す。図に示すように、テストステロン投与後10分で、細胞骨格の完全な形態変化が起こった。アクチンフィラメントは、細胞の周囲に再分配されるが、図7の下方パネルに示すように、可溶性アクチン(単量体)の不溶性アクチン(多量体)に対する割合の著しい減少が、重合過程を有利にし、アクチン細胞骨格の完全な形態変化が起こったことを示している。
【0089】
さらに本研究は、LNCaP細胞の細胞膜に局在するテストステロン受容体が、FAK→PI-3キナーゼ→Cdc42/Rac1→アクチン再編成のヒエラルキー(hierarchy)の活性化の重要なシグナル分子を活性化することを明らかにした。テストステロンが、テストステロン-BSA複合体より活性が低いという事実はさらに、このシグナルカスケードがテストステロン膜結合部位の活性化に特異的である可能性を示している。これらの結果は、シグナル伝達経路が前立腺ガン細胞における膜テストステロン受容体により誘発され、アクチンの再編成に至る概要を初めて示すものである。
【0090】
テストステロン-BSAとの長時間インキュベーション(24時間)はガン細胞の細胞増殖を減少させる
上記の結果を踏まえ、本発明者らは前立腺ガンLNCaP細胞をテストステロン-BSAのみ(10-7 M)と一緒に、またはタキソール(登録商標)(10-8 M)も一緒に24時間インキュベートした。図8Aに示すように、テストステロン-BSAのみと一緒にインキュベートした細胞が50%の減少を示した。さらに、〜7%までのタキソール(登録商標)の作用の相乗効果も見られた。培地を前記24時間のインキュベーション後に置換し、細胞を添加物質なしの新鮮な培地でさらに48時間培養すると、(臨床における低投与量のタキソール(登録商標)の一週間投与に似せた条件)、細胞は部分的に回復した(図8B)。この場合、テストステロン-BSAの作用はタキソール(登録商標)よりも効果があった。この効果は、図8Cに示すようにテストステロン-BSAの投与量に比例し、テストステロン-BSAとタキソール(登録商標)の相加効果を示した。
【0091】
ヌードマウスにおけるテストステロン-BSAのインビボ(in vivo)効果
すべてのマウスが、用いた濃度のテストステロン-BSAのもと、十分に維持された。図9に示すように、テストステロン-BSAは、時間依存的に53%の腫瘍容積の減少を誘導した。タキソール(登録商標)の添加が、77%の腫瘍重量の劇的な減少を生じた。本実験は4週間で終了したが、テストステロン-BSAは停滞状態(plateau)には達しなかった。よって、より長期間の処理が腫瘍容積のより大きな減少となる可能性がある。さらに、アポトーシスがすべての腫瘍研究にて組織学的に観察された。
【0092】
[参考文献]
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22 Benard, V., Bohl, B. P. and Bokoch, G. M. (1999) J Biol Chem 274, 13198-13204.
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、LNCaP細胞における膜テストステロン受容体の結合特性および選択特性を示す。
【図2】図2は、フローサイトメトリー(左パネル)および共焦点レーザー走査顕微鏡(右パネル)によるLNCaP細胞における膜テストステロン受容体の検出を示す。
【図3】図3は、前立腺ガン、良性前立腺肥大症(BPH)および腫瘍周辺の非腫瘍細胞におけるテストステロン膜受容体の検出を示す(フローサイトメトリーによる)。
【図4】図4は、前立腺腫瘍の接触調製物(左が前立腺ガン、右がBPH)、および前立腺上皮内腫瘍(PIN、左)と前立腺ガン(右)の組織学的スライドにおける膜テストステロン受容体の検出を示す。
【図5】図5は、ER陽性乳ガン(上図)およびER陰性乳ガンにおけるエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体およびアンドロゲン受容体の検出を示す。
【図6】図6は、骨髄細胞CD34およびAC133 (上図および下図)におけるテストステロン受容体、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体の検出を示す。
【図7】図7は、共焦点走査型レーザー顕微鏡により分析したテストステロン-BSAによるLNCaP細胞中のアクチン細胞骨格の修飾(上方パネル)および生化学的方法により分析したテストステロン-BSAによる多量体アクチンの増加(下方パネル)を示す
【図8】図8は、テストステロン-BSA、タキソール(登録商標)のみ、またはテストステロン-BSAとタキソール(登録商標)の24時間インキュベーションによる細胞の生存率の変化(A)、および薬剤不存在下における48時間のさらなるインキュベーション後の効果(B)を示す。(C)は、テストステロン-BSAのみ、またはタキソール(登録商標)の添加に対する細胞の濃度依存的反応を示す。
【図9】図9は、移植した腫瘍を有するヌードマウスにおけるテストステロン-BSA投与の効果を示す。矢印は、体重1kg当たりタキソール(登録商標)10mgを添加または添加しないでテストステロン-BSA(5x10-6 M溶液を500μl)を注入した時間を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたはそれ以上の哺乳動物タンパク質とコンジュゲートした1つまたはそれ以上のステロイドの、固形ガンまたは血液悪性腫瘍の処置あるいは診断のための医薬組成物の製造における使用(ここに、ステロイドは細胞増殖抑制性ではない)。
【請求項2】
ステロイドが、テストステロン、エストロゲン、エストラジオール、プロゲステロン、コルチゾール、グルココルチコイドまたはその既知の類似体から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
哺乳動物タンパク質が、球状タンパク質、血漿タンパク質、アルブミン、バインダー(結合剤)または選択的ヒト腫瘍細胞抗原の抗体から選択される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
哺乳動物タンパク質が、ヒトアルブミンまたはウシ血清アルブミンである、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
医薬組成物がさらに、細胞骨格作用薬を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
細胞骨格作用薬が、タキソール(登録商標)またはタキソテール(登録商標)である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
処置または診断される腫瘍が、テストステロン受容体、エストロゲン受容体またはプロゲステロン受容体を有する場合に、医薬組成物が、それぞれ、抗アンドロゲン、抗エストロゲンおよび抗プロゲスチンのうちの1つをも含む、請求項1〜6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
抗アンドロゲンが、酢酸シプロテロンまたはフルタミドである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
抗エストロゲンが、タモキシフェンである、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
抗プロゲステロンがRU486である、請求項7に記載の使用。
【請求項11】
固形ガンが、前立腺ガン(ホルモン感受性または耐性)およびその転移ガン、乳ガンおよび様々な場所へのその転移ガン、褐色細胞腫およびそれらの転移ガン、骨腫瘍およびそれらの転移ガン、ならびに脳腫瘍(ニューロブラストーマ)から選択される、請求項1〜10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
血液悪性腫瘍が、急性および慢性骨髄性白血病、急性および慢性リンパ性白血病ならびにリンパ腫(B細胞およびT細胞)から選択される、請求項1〜10のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
哺乳動物タンパク質とコンジュゲートした1つまたはそれ以上のステロイド(細胞増殖抑制性ではない)および細胞骨格作用薬を含む医薬組成物。
【請求項14】
ステロイドが、テストステロン、エストロゲン、エストラジオール、プロゲステロン、コルチゾール、グルココルチコイドまたはその既知の類似体から選択される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
哺乳動物タンパク質が、球状タンパク質、血漿タンパク質、アルブミン、バインダー(結合剤)または選択的ヒト腫瘍細胞抗原の抗体から選択される、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
哺乳動物タンパク質が、ヒトアルブミンまたはウシ血清アルブミンである、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
細胞骨格作用薬が、タキソール(登録商標)またはタキソテール(登録商標)である、請求項13〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項18】
処置または診断される腫瘍が、テストステロン受容体、エストロゲン受容体またはプロゲステロン受容体を有する場合に、それぞれ、抗アンドロゲン、抗エストロゲンおよび抗プロゲスチンをも含む、請求項13〜17のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項19】
固形ガンまたは血液悪性腫瘍の処置における、請求項13〜18のいずれかに記載の医薬組成物、または請求項1〜12のいずれかに記載のように調製される医薬組成物の使用。
【請求項20】
固形ガンが、前立腺ガン(ホルモン感受性または耐性)およびその転移ガン、乳ガンおよび様々な場所へのその転移ガン、褐色細胞腫およびそれらの転移ガン、骨腫瘍およびそれらの転移ガン、ならびに脳腫瘍(ニューロブラストーマ)から選択される、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
血液悪性腫瘍が、急性および慢性骨髄性白血病、急性および慢性リンパ性白血病ならびにリンパ腫(B細胞およびT細胞)から選択される、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
以下の工程を含む、固形ガンまたは血液障害の検出のための診断方法:
i)試料と請求項1に記載の医薬組成物の溶液を接触する;
ii)試料と結合する哺乳動物タンパク質とコンジュゲートしたステロイドの複合体の量を検出する。
【請求項23】
複合体がさらに標識を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
哺乳動物タンパク質とコンジュゲートした1つまたはそれ以上のステロイド(細胞増殖抑制性ではない)を含む医薬組成物;および、
細胞骨格作用薬を含む医薬組成物、または、
腫瘍が、テストステロン受容体、エストロゲン受容体またはプロゲステロン受容体を有する場合に、それぞれ、抗アンドロゲン、抗エストロゲンおよび抗プロゲスチンのうちの1つを含むキット(装置一式)。
【請求項25】
哺乳動物タンパク質とコンジュゲートした1つまたはそれ以上のステロイド(細胞増殖抑制性ではない)を含む医薬組成物;および、
細胞骨格作用薬を含む医薬組成物、ならびに、
腫瘍が、テストステロン受容体、エストロゲン受容体またはプロゲステロン受容体を有する場合に、それぞれ、抗アンドロゲン、抗エストロゲンおよび抗プロゲスチンのうちの1つ、を含む請求項24に記載のキット(装置一式)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−507230(P2006−507230A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−520953(P2004−520953)
【出願日】平成15年7月14日(2003.7.14)
【国際出願番号】PCT/IB2003/002785
【国際公開番号】WO2004/006966
【国際公開日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【出願人】(505019987)メデクシス・ソシエテ・アノニム (1)
【氏名又は名称原語表記】MEDEXIS S.A.
【Fターム(参考)】