説明

ステロール含有粉末の製造方法

本発明は、被覆ステロール粉末の製造方法であって、a)炭水化物および/またはタンパク質および/またはタンパク質含有助剤を水中または水含有懸濁媒体中に溶解または分散させ、b)該溶液/分散体に前記ステロールおよび/またはスタノール粒子を添加し、c)得られた溶液をホモジナイザーおよび/またはコロイドミル内で回路によって均質化し、d)均質化物の一部を連続的に回路から抜き出し、および直接e)噴霧乾燥機へ粉状化によって導入し噴霧乾燥することを含む方法に関する。前記方法によって製造された被覆ステロール含有粒子は、その良好な湿潤性により複雑な装置を用いることなく食品中へ配合され、特に、飲料中で良好な官能特性と感覚特性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して食品に、より具体的には、フィトステロール含有粉末の製造方法、該方法によって製造された調製物、および該調製物を含有する製剤、とりわけ食品に関する。
【背景技術】
【0002】
低級コレステロールとして既知の難溶性フィトステロールおよびフィトスタノールを食品製剤、化粧品または医薬品中に配合することを可能とする多数の調製オプションが、文献に提案されている。分散性が乏しくなることに加えて、物質の好ましくない溶解挙動は、その生体利用性を低下させ、食品製剤の安定性に悪影響を及ぼす。
【0003】
多くの特許出願には、ステロールの利用度を、その粒度を主に微粉化により下げることによって、いかに改善し得るかについて記述されている。そこで、ドイツ公開公報DE10253111A1は、容易に水中に再分散し得る平均粒度が0.01〜100μmの粉体形状フィトステロール調製物を記載する。親水性助剤が保護コロイドとして好適に用いられる。有機溶媒が粉末の製造に使用され、エコロジーと適合性に不利益をもたらしている。
【0004】
ステロールが0.1〜30μmの粒度分布を有するステロール分散体の別の製造方法は、国際特許出願WO03/105611A2に開示されている。この方法のように、ステロール粒子の微粉化は、それ自体では均一な配合を促進するのに十分ではないことが多い。微分散粒子の生体利用性は表面を増大することによって向上し得るが、微粒化粒子は乏しい湿潤挙動を示し、容易に凝集して水含有表面上に浮揚するのが通常である。多くの場合には、粉末化ステロールは、強力な混合を伴う特別な方法によってのみ飲料中に分散し得る。しかしながら、強力な混合は、食品製造業者の最終使用者にとって通常利用されない。
【0005】
そのため、多くの製造業者は、ステロールの微粉化と乳化剤の追加的使用を組み合わせている。この一例は、欧州特許EP0897671B1にクレームされた製剤であって、該製剤は、選択された乳化剤との混合物における粒度が大きくて15μmのステロールとステロールエステルを含有し、ここで、乳化剤とステロールの水相中の重量比は1:2より小さい。
【0006】
低タンパク質含量を有し、並びに乳化剤としてモノおよびジグリセリドを含有する粉体形状ステロールエステル調製物が、国際特許出願WO03/086468A1に開示されている。かかる調製物が良好な適合性によって区別され、および食品乳化剤として既に知られてきたとしても、乳化剤も食品中に存在する他の物質の生体利用性に影響を与えることから、または乳化剤が調製物の安定性に悪影響を与え得ることから、かかる乳化剤の量を減らすための或いは乳化剤を完全に避けるためさえの努力がなされつつある。
【0007】
エマルジョン、ミクロエマルジョン、分散体、懸濁液またはシクロデキストリンまたは胆汁塩による錯化剤としての調製物などのような溶解性と分散性を向上させるための他の多くの方法が、国際特許出願WO99/63841A1に記載され、製剤の形態での調製物についても言及されている。PEG、PVP、コポリマー、セルロースエーテルおよびエステルは、担体として提案されている。担体としての食品ベースをプレミックス形態の粉体形状ステロールのために直接使用することも知られている(EP1003388B1を参照)。担体としてのタンパク質をエステル化されていないステロールおよびスタノールのために選択することは、WO01/37681に開示されている。
【0008】
そのエステル化誘導体より遙かに疎水性である、エステル化されていないステロールとスタノールの加工は、製造方法に対して特に厳しい要求を課する。ステロール含有微粒子の一つの可能な製造方法が、欧州特許EP1148793B1に記載されている。それは高エネルギー均質化に基づくものである。しかしながら、水含有懸濁媒体に基づいて引き続き製造される粉末は、不満足な均質性を示し、また再分散させることが困難である。
【特許文献1】欧州特許出願EP1275309A1
【特許文献2】国際特許出願WO03/105611A2
【特許文献3】欧州特許EP0897671B1
【特許文献4】国際特許出願WO03/086468A1
【特許文献5】国際特許出願WO99/63841A1
【特許文献6】欧州特許EP1003388B1
【特許文献7】国際特許出願WO01/37681
【特許文献8】欧州特許EP1148793B1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決すべき課題は、最初に記載した不都合を有さず、エステル化されていないステロールおよび/またはスタノールを食品中に容易かつ均質に分散させることが可能であって、好適な感覚特性と官能特性を食品に与える調製物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
a)炭水化物および/またはタンパク質および/またはタンパク質含有助剤を水中または水含有懸濁媒体中に溶解または分散させ、
b)得られた溶液/分散体にステロールおよび/またはスタノール粒子を添加し、
c)生成した懸濁液をスロットホモジナイザーまたはコロイドミルを通じて循環によって均質化し、
d)均質化物の一部を連続的に回路から抜き出し、および
e)噴霧乾燥機へ直接送り出し、噴霧乾燥する
ことを含む、被覆ステロール含有粉末の製造方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の方法によると、親油性活性成分を食品中、とりわけ飲料中で容易にさらに加工することを可能とする、遊離のエステル化されていないステロールおよびスタノールを含有する粉末を製造することが可能である。該粉末は凝集しにくい傾向を示し、そのため良好な流動特性を有する。該粉末は良好な均質性によって区別され、その改善された湿潤性により、機械装置の主要な出費なくこれを更に加工することができる。さらに、該粉末は最終的な調製物中に極めて迅速に均一分散される。コーティングによって、官能特性と感覚印象を大きく改善される。被覆粉末は歯または口腔粘膜に粘着しないため、活性成分を含有する食品における重大な味覚低下を引き起こす不快なステロール味は、完全に抑制される。
【0012】
炭水化物、タンパク質またはタンパク質含有添加剤などの親水性助剤によるコーティングは可溶化特性と分散特性を改善するだけでなく、該粉末は驚くべきことに、強力な凝集傾向を有する粉末化ステロールに関する向上した貯蔵安定性をも示す。
【0013】
水性媒体中でエステル化されていないステロールとスタノールを加工することになる場合、該方法によって、特に、レシチン、モノグリセリド、ジグリセリド、ポリソルベート、ステアリル乳酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、乳酸エステルおよびポリグリセロールエステルなどの高表面活性乳化剤を使用する必要がなくなる。親水性化助剤、とりわけタンパク質、カゼイン塩および高タンパク質助剤の最小限の乳化剤特性は、生成した粉末の均質性と容易な再分散性および加工性を保証するのに十分である。他の乳化剤が存在しないと、他の食品成分との生じ得る不適合性を低減することにより更なる加工が容易となり、最終使用者における不適合性の発生が低減される。連続的な均質化と均質化された懸濁液の直接的な取り出しおよび噴霧乾燥機への送出は、レシチン、モノグリセリド、ジグリセリド、ポリソルベート、ステアリル乳酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、乳酸エステルおよびポリグリセロールエステルなどの高活性乳化剤の必要をなくすのに重要である。本発明の方法によって、有機溶媒を使用する何らの必要もなく、非常に高いステロール含量を有し、上記の好適な特性を備えた粉末を製造することが可能となる。被覆ステロール調製物は、粉末の重量を基準に、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも55重量%、最も好ましくは少なくとも65重量%のステロールおよび/またはスタノールを含有する。
【0014】
本方法によって製造されるステロール含有調製物は、食品中、より具体的には乳汁、乳飲料、乳清およびヨーグルト飲料、マーガリン、果汁、果汁混合物、果汁飲料、野菜飲料、無炭酸および発泡飲料、大豆乳飲料および高タンパク質の液体代用食品飲料および発酵乳製剤、ヨーグルト、飲用ヨーグルト、またはチーズ製剤、シリアルおよび栄養バー、並びに化粧用製剤または医薬用製剤中に、容易に配合し得る。
【0015】
炭水化物および/またはタンパク質および/またはタンパク質含有助剤を水中または水含有懸濁媒体中に溶解または分散する製造方法の第一段階では、後の被覆材として働く親水性助剤を溶解または分散する。この目的で、水または水含有懸濁媒体を50〜80℃の温度、とりわけ65〜75℃の温度に加熱する。この第一段階では、他の助剤も、水相または水含有懸濁媒体へ必要に応じて添加する。
【0016】
好適な実施形態では、グルコースおよびカゼインまたはカゼイン塩を助剤として使用する。単にナトリウムカゼイン塩に変換されたカゼイン(酸カゼイン)を、分散媒中でpH6.5〜7.5まで水酸化ナトリウムを添加することによって温水中に分散させた後に使用することが、特に有効であることが証明された。驚くべきことに、このインサイチュでナトリウムカゼイン塩を形成する方法によって、ナトリウムカゼイン塩を直接添加する方法と比較してより良い分散性の最終調製物がもたらされる。
【0017】
別の好適な実施形態では、グルコースと粉乳を助剤として使用する。脱脂粉乳を使用することは特に有効であることが証明されたが、それは、この助剤は通常の不快なステロール味のマスクに最良であり、脱脂粉乳を含有する調製物は他の助剤に対して改善された感覚特性を有するからである。
【0018】
純粋に代えて、引き続き製造されるべきステロール含有食品の基礎原料を形成する水含有懸濁媒体を使用することも可能である。そこで、例えば、乳汁、乳飲料、乳清およびヨーグルト飲料、果汁、果汁混合物、果汁飲料、野菜飲料、大豆乳飲料および高タンパク質の液体代用食品飲料ならびに発酵乳製剤などの飲料、好ましくは果実および野菜飲料を、工程a)における懸濁媒体として直接使用してよい。噴霧乾燥後に得られたステロール含有粉末を、その後に水で容易に再分散して飲用状態のステロール含有飲料とすることができる。
【0019】
親水性助剤のこの溶液または分散体を75〜95℃、好ましくは80〜85℃に加熱し、ステロールおよび/またはスタノール粒子を撹拌しながら系へ添加する。D90%が最大50μm(ベックマンコールターLS320レーザー回折計で測定。体積分布で表示。該方法では、Lamegin ZE609(Citrem(登録商標))10%を含有する懸濁液中で測定を行う。)の小さな粒度を有する粉末化ステロールおよび/またはスタノールを使用することが有効であることが証明された。より大きい粒子をこれに代えて添加すると、より大きい粒度の最終調製物となり、生体利用性が低下するため望ましくない。D90%が最大30μmの粒度分布を有するステロールおよび/またはスタノールを使用することが好ましい。
【0020】
次いで、こうして形成された懸濁液を、スロットホモジナイザーまたはコロイドミルを用いて循環させることによって均質化する。使用するFryma millは、ローター/ステーター原理に基づく。ステロール含有懸濁液の均質化によって凝集体のサイズ縮小が生じるだけであって、ステロール粒子自体は処理中の更なるサイズ縮小を被らない。脱脂粉乳を親水性化助剤として使用する場合、コロイドミルによる均質化は、噴霧乾燥塔内への導入前におけるステロール粒子の均一分布を保証するのに十分である。
【0021】
均質化物の一部は体積流れから連続的に取り出され、噴霧乾燥塔へ送出される。高表面活性乳化剤を添加しなければ、強親油性のエステル化されていないステロールおよびスタノール粒子は懸濁媒体中で十分な均質性を保つことができない。こうして均質化された懸濁液は良好な物理的安定性を有さない。よって、スロットホモジナイザー中で均質化された懸濁液の一部を直接および連続的に取り出して噴霧乾燥塔へ送出することが極めて重要である。
【0022】
実際の粒子の被覆は、噴霧乾燥塔中での迅速な噴霧乾燥によって行われる。水含有媒体から粒子を噴霧乾燥するため、親水性助剤は水の蒸発後に親油性ステロール粒子の表面に残り、形成された粉末の特性を著しく改善する親水性被覆物を生成する。使用する概して粉末化されたステロール粒子は、その親油特性のほかに、容易く相互に絡み合う凸凹表面を有する。親水性被覆物は、遙かに良好な流動特性および従ってより良好な加工性を有する多少丸い粒子を与える。
【0023】
噴霧乾燥中の水の蒸発冷のため、高い供給エアー温度でさえ、懸濁したステロールまたはスタノール粒子は溶融しない。このように、該粒子は元のステロールまたはスタノール粒子を含有する芯および親水性助剤の被覆物を含んでなる。
【0024】
専門家は、通常のバリエーションによって、特定の調製物に対して噴霧乾燥の条件を適用すべきである。グルコースおよびカゼインまたはカゼイン塩を、全調製物を基準に40〜80重量%のステロールおよび/またはスタノール、3〜30重量%のグルコースおよび10〜30重量%のカゼインおよび/またはカゼイン塩の量で親水性助剤として使用する本方法の好適な実施形態では、供給エアー温度170〜190℃、廃棄エアー温度90±15℃および噴霧速度20,000〜30,000r.p.m.で、良好な結果が得られた。
【0025】
ステロールおよび/またはスタノール
植物および野菜原材料から得られるステロール、所謂フィトステロールおよびフィトスタノールは、本発明において用いられる。既知の具体例は、エルゴステロール、ブラシカステロール、カンペステロール、アヴィーナステロール、デスモステロール、クリオナステロール、スチグマステロール、ポリフェラステロール、カリノステロール、シトステロールおよびそれらの混合物である。これらの中で、β−シトステロールおよびカンペステロールは好適に用いられる。水素化された飽和形態のステロール、所謂スタノールも使用する化合物のなかに含まれる。β−シトスタノールおよびカンペスタノールのエステルもやはり好適である。野菜原材料源には、とりわけ、大豆、カノーラ、パーム核、コーン、ヤシ、菜種、サトウキビ、ヒマワリ、オリーブ、コットン、ソーヤ、ピーナッツの種子および油またはトール油製造由来の生成物が含まれる。
【0026】
本発明による製剤は、粉体形状被覆製剤に基づき10〜90重量%、好ましくは30〜70重量%、特に好適な実施形態では35〜65重量%のステロールおよび/またはスタノールエステルを含有する。
【0027】
本発明は、上記組成を有するステロール/スタノール調製物を含有する食品製剤にも関する。それらは、食品の全重量に基づき0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%の粉体形状被覆製剤を含有する飲料および乳製品中で好適に用いられる。
【0028】
タンパク質含有助剤および/またはタンパク質
好ましく使用されるタンパク質含有助剤は、乾燥することによって対応する種類の乳質から得られる市販の全乳および脱脂粉乳のような粉乳である。それらは、他のタンパク質との混合物形態で、または単一担体として用いてよい。他のタンパク質を添加する場合、または粉乳よりむしろタンパク質を担体として使用する場合には、当該タンパク質は、天然動物および植物源から得られ、粉体形状製剤の製造中に添加される単離タンパク質であるものと理解される。タンパク質源は、小麦、大豆、ルピン、コーンのような植物、または卵または乳汁のような動物由来の起源で有り得る。
【0029】
粉乳、または乳汁由来のタンパク質、例えばカゼインおよびカゼイン酸ナトリウムおよび/またはカルシウムなどは、好適に用いられる。カゼイン塩は、一方では乳化特性を有し、同時に、そうでなければ特に飲料および乳製品、とりわけヨーグルトなどの発酵生成物の製造のために通常用いられる食品乳化剤の上記不都合を示さないため、本発明の目的にとって特に好適である。
【0030】
本発明による製剤は、被覆粉体形状製剤に基づき5〜90重量%、好ましくは5〜70重量%、より好ましくは10〜40重量%、最も好ましくは12〜35重量%の粉乳および/またはタンパク質を、脱脂粉乳またはカゼインおよび/またはカゼイン酸ナトリウムおよび/またはカゼイン酸カルシウムの形態で含有する。
【0031】
炭水化物
炭水化物として用いる化合物は全て、グルコース、スクロース、フルクトース、トレハロース、マルトース、マルトデキストリン、シクロデキストリン、転化糖、パラチノースおよび乳糖からなる群から選択される食品級の糖類を含有する。グルコースシロップ状のグルコースは、炭水化物として好適に使用される。粉体形状ステロール/スタノール製剤の重量に基づき0〜40重量%、好ましくは10〜35重量%、特に好適な実施形態では15〜30重量%の炭水化物を使用すると、製剤の分散性と安定性に有利であることが判明した。
【0032】
他の助剤
本発明による製剤は、抗酸化剤、防腐剤および流れ促進剤を更なる助剤として含有してよい。抗酸化剤または防腐剤としては、例えばトコフェロール、レシチン、アスコルビン酸、パラベン、ブチルヒドロキシトルエンまたはアニソール、ソルビン酸または安息香酸およびそれらの塩が挙げられる。トコフェロールは、抗酸化剤として好適に用いられる。二酸化ケイ素は、流れ調節剤および促進剤として好適に用いられる。
【0033】
粉体形状被覆ステロール製剤
粉体形状被覆ステロール調製物はその製造に由来して、ステロールおよび/またはスタノール、並びに必要に応じて他の親油性助剤の親油性芯を有し、これは親水性助剤の被覆物によって被覆されている。該調製物は、粉末の全重量を基準に、
a)10〜97重量%のエステル化されていないステロールおよび/またはスタノール、
b)3〜70重量%のカゼイン酸ナトリウムおよび/またはカルシウムおよび/または粉乳、
c)0〜40重量%の炭水化物、
好ましくは、
a)10〜90重量%のエステル化されていないステロールおよび/またはスタノール、
b)5〜70重量%のカゼイン酸ナトリウムおよび/またはカルシウムおよび/または粉乳、
c)0〜40重量%の炭水化物、
また、
(a)30〜70重量%のエステル化されていないステロールおよび/またはスタノール、
(b)10〜40重量%のカゼイン酸ナトリウムおよび/またはカルシウムおよび/または粉乳、
(c)10〜35重量%のグルコース、
特に好適な実施形態では、
(a)35〜65重量%のエステル化されていないステロールおよび/またはスタノール、
(b)12〜35重量%のカゼイン酸ナトリウムおよび/またはカルシウム、
(c)10〜35重量%のグルコース、
そして、とりわけ、
(a)50〜65重量%のエステル化されていないステロールおよび/またはスタノール、
(b)12〜35重量%のカゼイン酸ナトリウムおよび/またはカルシウムおよび/または脱脂粉乳、
(c)15〜30重量%のグルコース、
または
(a)65〜75重量%のエステル化されていないステロールおよび/またはスタノール、
(b)25〜35重量%の脱脂粉乳、
または
(a)90〜97重量%のエステル化されていないステロールおよび/またはスタノール、
(b)3〜10重量%の脱脂粉乳
を含有し、但し、レシチン、モノグリセリド、ジグリセリド、ポリソルベート、ステアリル乳酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、乳酸エステルおよびポリグリセロールエステルからなる群から選択される高表面活性乳化剤を含有しない。
【実施例】
【0034】
実施例1
129.2gのカゼイン(Meggle製、Naehrcasein 30/60メッシュ)を1160gの冷水に添加し、約72℃に加熱した。この加熱段階の間に、NaOHを添加することによってpHを7.0に調節した。次いで、132.5gのグルコースシロップを添加した後、80〜85℃に加熱した。その後、最大30μm(レーザー回折法、ベックマンコールターLS320)のD90%の粒度分布を有する粉末化ステロール(250g、Vegapure(登録商標)FTE)を少しずつ添加した。懸濁液をFryma mill(Fryma Rheinfelden製、型MZ80R、スロット幅:240μm)に通過させた後、APVホモジナイザー(220/30bar)により循環させて均質化した。次いで、生成物流の約30%を回路から噴霧乾燥機(APV Anhydro、型3S)へ連続的に供給し、噴霧乾燥した。残りの懸濁液は循環させたままとし、徐々に噴霧乾燥塔へ供給した。
【0035】
噴霧乾燥条件:
供給口エアー温度: 180±5℃
出口エアー温度: 90±5℃
噴霧速度: 24,000r.p.m.
【0036】
次に、レーザー回折法(ベックマンコールターLS320)によって粉末の粒度分布を測定した:D50% 5μm、D90% 29μm。
【0037】
実施例2
150gの脱脂粉乳(噴霧乾燥した脱脂粉乳、ADPI級、供給者:Almil Bad Homburg)を水(1280g)に添加し、約80℃に加熱した。次いで、粉末化ステロール(350g、Vegapure FTE)を少しずつ添加した。懸濁液をFryma mill(スロット幅:240μm)によって繰り返し循環させた。次いで、生成物流の約30%を回路から噴霧乾燥機(APV Anhydro、型3S)へ連続的に供給し、噴霧乾燥した。残りの懸濁液は循環させたままとし、徐々に噴霧乾燥塔へ供給した。
【0038】
噴霧乾燥条件:
供給口エアー温度: 185±5℃
出口エアー温度: 90±5℃
噴霧速度: 24,000r.p.m.
【0039】
実施例3
15gの脱脂粉乳(噴霧乾燥した脱脂粉乳、ADPI級、供給者:Almil Bad Homburg)を水(1000g)に添加し、約80℃に加熱した。次いで、粉末化ステロール (485g、Vegapure FTE)を少しずつ添加した。懸濁液をFryma mill(スロット幅:240μm)によって繰り返し循環させた。次いで、生成物流の約30%を回路から噴霧乾燥機(APV Anhydro、型3S)へ連続的に供給し、噴霧乾燥した。残りの懸濁液は循環させたままとし、徐々に噴霧乾燥塔へ供給した。
【0040】
噴霧乾燥条件:
供給口エアー温度: 185±5℃
出口エアー温度: 90±5℃
噴霧速度: 24,000r.p.m.
【0041】
分散試験
こうして得られた粉末を乳汁および水に分散させ、その粒度分布において同程度の粉末化ステロールと比較した。この目的で、試験すべき液体約250mLをガラスビーカー中へ注ぎ入れ、撹拌した(約100r.p.m.)。50重量%および70重量%のステロールをそれぞれ含有する粉末2.5gを撹拌液に添加し、分散挙動を評価した。
【0042】
カプセル化ステロールは、冷水(15℃)および温水(60℃)中、および乳汁(18℃)に極めて均一に分散させることができたが、未処理ステロールは、分散が不良であって、疎水性表面のために、液体表面上に残存した。たった3%の粉乳を含有する製剤でさえ、純粋なステロール粉末よりも遙かに均一に分散させることができた。
【0043】
感覚評価によって、カプセル化ステロールは水中で中立的な味であって、ガムまたは口に粘着しなかったが、未処理粉末は口腔粘膜に粘着し、典型的な嫌なステロール味のほかに、不快な感覚印象を後に残すことが示された。カゼイン含有粉末は脱脂粉乳含有粉末より幾分良好に分散させることができたが、脱脂粉乳含有粉末はカゼイン含有粉末より改善された味特性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)炭水化物および/またはタンパク質および/またはタンパク質含有助剤を水中または水含有懸濁媒体中に溶解または分散させ、
b)得られた溶液/分散体にステロールおよび/またはスタノール粒子を添加し、
c)生成した懸濁液をスロットホモジナイザーおよび/またはコロイドミルを通じて循環によって均質化し、
d)均質化物の一部を連続的に回路から抜き出し、および
e)噴霧乾燥機へ直接送り出し、噴霧乾燥する
ことを含む、被覆ステロール粉末の製造方法。
【請求項2】
タンパク質またはタンパク質含有助剤は、粉乳および/またはカゼインおよび/またはカゼイン塩から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の被覆ステロール粉末の製造方法。
【請求項3】
炭水化物は、グルコース、スクロース、フルクトース、トレハロース、マルトース、マルトデキストリン、シクロデキストリン、転化糖、パラチノースおよび乳糖からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の被覆ステロール粉末の製造方法。
【請求項4】
グルコースおよびカゼイン、カゼインのナトリウム塩もしくはカルシウム塩または脱脂粉乳を助剤として使用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の被覆ステロール粉末の製造方法。
【請求項5】
90%が最大50μmの粒度分布を有するステロールおよび/またはスタノール粒子を工程b)で使用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の被覆ステロール粉末の製造方法。
【請求項6】
飲料、好ましくは果汁または野菜ジュース、を水含有懸濁媒体として使用することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の被覆ステロール粉末の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法によって得られる粉体形状被覆ステロール製剤。
【請求項8】
請求項7に記載の粉体形状被覆ステロール製剤0.1〜50重量%を含有する食品。
【請求項9】
請求項7に記載の粉体形状被覆ステロール製剤0.1〜50重量%を含有する飲料および乳製品。
【請求項10】
ステロールおよび/またはスタノールの芯と親水性助剤の被覆物を含んでなり、粉体形状被覆ステロール製剤を基準に
a)エステル化されていないステロールおよび/またはスタノール10〜97重量%、
b)カゼインのナトリウム塩および/またはカルシウム塩および/または粉乳3〜70重量%、
c)炭水化物0〜40重量%、
を含有し、但し、レシチン、モノグリセリド、ジグリセリド、ポリソルベート、ステアリル乳酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、乳酸エステルおよびポリグリセロールエステルからなる群から選択される高表面活性乳化剤をいずれも含有しない、粉体形状被覆ステロール製剤。

【公表番号】特表2009−528829(P2009−528829A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557600(P2008−557600)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011602
【国際公開番号】WO2007/101464
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】