説明

ストレッチ包装用フィルム

【課題】包装作業性、包装仕上り、弾性回復性、底折り込み安定性、透明性などが良好で、フィルムちぎれが発生しにくく、低温での使用時にも破れ難く、ペレットの保管安定性や経済性にも優れた、新たな非塩素系ストレッチ包装用フィルムを提供する。
【解決手段】エチレン含有量が5質量%以上であって、かつ結晶化曲線のピークがシングルであって、かつ当該ピーク温度が70℃以下である(条件(1))プロピレンエチレンランダム共重合体(A)成分と、結晶化曲線のピークのうち最高温のピーク温度が70℃を超えている(条件(2))結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)成分とを主成分として含有し、且つ、前記(A)成分及び(B)成分の質量比率が、(A)成分:(B)成分=8:2〜2:8である樹脂組成物XからなるX層を備えたストレッチ包装用フィルムを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装用に好適に用いられるストレッチ包装用フィルム、特に塩素やポリ塩化ビニル用可塑剤を含まないストレッチ包装用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から青果物、精肉、惣菜等を軽量トレイに載せてオーバーラップするフィルム、いわゆるプリパッケージ用のストレッチ包装用フィルムとして、主にポリ塩化ビニル系フィルムが使用されてきた。その理由は、ポリ塩化ビニル系フィルムは、包装効率が良く、包装仕上りが綺麗である等の包装適性が好ましいという理由のほか、包装後のフィルムを指で押して変形を加えた際に元に戻る弾性回復性に優れており、また、底折り込み安定性も良好であり、しかも輸送陳列中にフィルム剥がれが発生し難いなど、商品価値が低下しないという販売者、消費者の双方に認められた品質の優位性を持っていたためである。
【0003】
しかし、近年、ポリ塩化ビニル系フィルムについては、焼却時に発生する塩化水素ガスや、多量に含有する可塑剤の溶出等が問題視されてきている。このため、ポリ塩化ビニル系フィルムに代わる材料が種々検討されており、特にポリオレフィン系樹脂を用いたストレッチ包装用フィルムが各種提案されている。中でも、ストレッチフィルムとして良好な表面特性や、透明性、適度な耐熱性、材料設計の自由度、経済性等の理由から、表裏層にエチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分として用い、中間層に各種ポリプロピレン系樹脂を主成分として用いてなる2種3層構成のストレッチ包装用フィルムの検討が活発に行われている。
【0004】
例えば特許文献1では、結晶化熱量が10〜60J/gであるプロピレン系重合体及び石油樹脂類を少なくとも1層含有することを特徴とする食品包装用ストレッチフィルムが提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、下記(A)、(B)、及び(C)の3成分を主成分とする混合樹脂層を少なくとも一層有し、動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E´)が5.0×108 〜5.0×109 dyn/cm2 、損失正接(tanδ)が0.2〜0.8の範囲にあることを特徴とする食品包装用ストレッチフィルムが提案されている。
(A)ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体またはその水素添加誘導体
(B)石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂またはそれらの水素添加誘導体
(C)プロピレン系樹脂
【0006】
また、特許文献3には、分子鎖中に結晶性のブロックと非晶性のブロック部分が混在している立体規則性を制御された軟質ポリプロピレン系樹脂を主成分とする層を少なくとも一層有し、動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E′)が5.0×108 dyn/cm2 〜5.0×109dyn/cm2 、損失正接(tanδ)が0.2〜0.8の範囲にあることを特徴とするポリオレフィン系ストレッチ包装用フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3296532号公報
【特許文献2】特許第3386945号公報
【特許文献3】特開2000−44695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、塩素やポリ塩化ビニル用可塑剤を含まない非塩素系ストレッチ包装用フィルムとして、新たなポリオレフィン系ストレッチ包装用フィルムが各種提案されているが、原料ペレットの保管安定性(原料ペレットが保管中や計量・輸送過程でブロッキングしない性質)や、自動包装機を使用した場合の特性、フィルムの透明性、包装状態で例とした場合のフィルムのたるみなどの低温適性など、改良を加えてさらに使い易いものとすることが望まれていた。
【0009】
そこで本発明の目的は、包装作業性、包装仕上り、弾性回復性、底折り込み安定性、透明性などが良好で、フィルムちぎれが発生しにくく、かつ、低温での使用時にも破れ難く、ペレットの保管安定性や経済性にも優れた、新たな非塩素系ストレッチ包装用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エチレン含有量が5質量%以上であって、かつ下記(1)の条件を満たすプロピレンエチレンランダム共重合体(A)成分と、下記(2)の条件を満たす結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)成分とを主成分として含有し、且つ、前記(A)成分及び(B)成分の質量比率が、(A)成分:(B)成分=8:2〜2:8である樹脂組成物XからなるX層を備えたストレッチ包装用フィルムを提供する。
(1)示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化曲線のピークがシングルであって、かつ当該ピーク温度が70℃以下である。
(2)示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化曲線のピークのうち最高温のピーク温度が70℃を超えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原料ペレットの保管安定性、包装作業性、包装仕上り、弾性回復性、底折り込み安定性、透明性などが良く、さらにフィルムちぎれや低温での使用時の破れ、ペレットの保管安定性や経済性にも優れた非塩素系ストレッチ包装用フィルムが提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例としてのストレッチ包装用フィルム(以下「本ストレッチフィルム」と称する)について説明する。但し、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
<積層構成>
本ストレッチフィルムは、所定のプロピレンエチレンランダム共重合体(A)成分と、結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)成分とを主成分として含有する樹脂組成物XからなるX層を備えたストレッチ包装用フィルムである。
よって、X層からなる単層フィルムであってもよいし、他の層を含む複層フィルムであってもよい。複層フィルムの構成としては、例えば、X層の片面側又は両面側に、エチレン系重合体(D)成分を主成分とするY層を積層してなる構成を挙げることができる。この際、X層とY層の間に他の層が介在してもよいし、また、他の表裏層を積層してもよい。
【0014】
<X層>
X層は、所定のプロピレンエチレンランダム共重合体(A)成分と、結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)成分とを主成分として含有する層である。
【0015】
(プロピレンエチレンランダム共重合体(A))
本ストレッチフィルムに用いるプロピレンエチレンランダム共重合体(A)は、エチレン含有量が5質量%以上であり、さらに、示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化曲線のピークがシングルであって、かつ当該ピーク温度が70℃以下である(条件(1))ことが重要である。
【0016】
ここで、当該結晶化ピーク温度は、用いるプロピレンエチレンランダム共重合体(A)の分子量、エチレン含有量(共重合比)、ランダム度(エチレン成分の共重合体中の分散性)や立体規則性などに依存する。本ストレッチフィルムにおいては、エチレン含有量で制御することが好ましく、一般的に高含有量であるほど当該温度は低下する傾向にある。
【0017】
プロピレンエチレンランダム共重合体(A)において、エチレン含有量が5質量%未満であると、柔軟性が低下し、ストレッチ包装用フィルムとして要求される特性である包装作業性、包装仕上り、弾性回復性、底シール性、透明性などを確保することが難くなる。上限値としては特に限定されるものではないが、実用上は30質量%以下である。30質量%以下であれば、結晶性が低下し過ぎることがなく、原料ペレットがブロッキングし易くなるなどの問題を防止することができる。
このような観点から、プロピレンエチレンランダム共重合体(A)におけるエチレン含有量は、5〜30質量%であるのが好ましく、特に8〜25質量%、中でも特に10〜20質量%であるのがより一層好ましい。
【0018】
ここで、エチレン含有量は、公知の種々の分析手法で定量することが可能である。例えば、核磁気共鳴装置を用い、13C−NMRスペクトルの測定結果に基づき算出できる。具体的には13C−NMRスペクトルにおいて、プロピレン単位由来のメチル炭素のスペクトル強度とエチレン単位由来のメチル炭素スペクトルの強度比から、プロピレン単位とエチレン単位の組成比を算出することが可能である。
【0019】
また、プロピレンエチレンランダム共重合体(A)において、示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化温度のピークがシングルでない、すなわちダブルであるということは、エチレン単位の結晶化温度とプロピレン単位の結晶化温度とのピークが各々確認されるためであり、ランダム共重合体ではあっても、エチレン単位が結晶の塊として存在して均一に分散してないため、透明性の低下、原料ペレットのべとつきや保管中におけるブロッキングの原因となる可能性がある。
【0020】
さらに、プロピレンエチレンランダム共重合体(A)において、示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化曲線から求められるシングルピーク温度が70℃以下であれば、柔軟性を維持することができ、ストレッチ包装用フィルムとして要求される特性である包装作業性、包装仕上り、弾性回復性、底折り込み安定性、透明性などを確保することができる。
このような観点から、プロピレンエチレンランダム共重合体(A)において、示差走査熱量計(DSC)で測定したときの結晶化シングルピーク温度は60℃以下であるのがより好ましく、特に50℃以下であるのが好ましい。下限値としては特に限定はないが、実用上は0℃以上である。
【0021】
プロピレンエチレンランダム共重合体(A)のメルトフローレート(JIS K 7210、230℃、荷重21.18N)は、0.5〜25g/10分であるのが好ましく、特に1〜20g/10分であるのがより好ましい。
【0022】
プロピレンエチレンランダム共重合体(A)としては、前記条件(1)を満足するものであればよく、エチレン以外のコモノマーを共重合させたものであっても構わない。
この際、コモノマーとしては、例えば1−ブテン、1−ペンテン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどを挙げることができ、これらの一種又は二種以上であってもよい。
【0023】
また、前述したプロピレンエチレンランダム共重合体は一種のみを単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
(結晶性ポリプロピレン系樹脂(B))
本ストレッチフィルムに用いる結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)は、示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化曲線のピークのうち最高温のピーク温度が70℃を超えている(条件(2))ことが重要であり、プロピレンの単独重合体、或いは、プロピレンと「共重合可能な他の単量体」とのランダム共重合体やブロック共重合体などを挙げることができる。
このような結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)を配合することで、底折り込みやカット性等の各種包装適性を高めることができ、またペレット保管安定性のほか、強度や耐熱性を高めることができる。
【0025】
この際、共重合可能な他の単量体としては、エチレンや1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン等の炭素数4〜12のα−オレフィンおよびジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、エチリデンノルボルネン等のジエン類等が挙げられるが、これらの二種以上が共重合されていてもよい。
【0026】
ストレッチフィルムに必要な適度な柔軟性を付与するという観点からは、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、及びリアクタータイプのポリプロピレン系エラストマーの中から選ばれる1種又は2種類の混合成分を結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)として用いるのが好ましい。
【0027】
なお、結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)において、示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化曲線のピークのうち最高温のピーク温度とは、結晶化温度のピークがダブルまたはそれ以上に複数ある場合には、これら複数のピーク温度のうち最高温のピーク温度を意味しており、結晶化温度がシングルの場合は当該シングルピークのピーク温度を意味する。ここで、最高温のピーク温度は、用いる結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)の分子量、共重合比、ランダム度(他の単量体成分の共重合体中の分散性)や立体規則性などに依存する。本ストレッチフィルムにおいては、共重合比で制御することが好ましく、一般的に共重合成分が低含有量であるほど当該温度は向上する傾向にある。
【0028】
最高温の結晶化ピーク温度が70℃を超えていれば、強度や耐熱性を保持することができる。
より好ましくは、結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)において、示差走査熱量計(DSC)で測定したときの最高温の結晶化ピーク温度は80℃以上であるのがより好ましく、特に90℃以上であるのが好ましい。上限値としては特に限定はないが、実用上は170℃以下である。
【0029】
結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)がプロピレン−エチレンランダム共重合体である場合におけるエチレン含有量は、5質量%未満であることが好ましく、4.5質量%以下であるのがさらに好ましく、特に4質量%以下であるのがより好ましい。
【0030】
結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)のメルトフローレート(JIS K 7210、230℃、荷重21.18N)は、0.5〜25g/10分であるのが好ましく、特に1〜20g/10分であるのがより好ましい。
【0031】
(含有割合)
X層、言い換えれば樹脂組成物Xにおいて、プロピレンエチレンランダム共重合体(A)と結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)の含有割合は、質量比率として、(A)成分:(B)成分が8:2〜2:8であることが好ましい。
この範囲を超えて(A)成分が多くなると過柔軟となり、フィルムのカット性が悪化する他、耐熱性が劣るようになる。また、(B)成分が過剰に多くなるとストレッチ包装用フィルムとして要求される特性である包装作業性、包装仕上り、弾性回復性、底シール性、透明性などを確保することが出来難くなるようになる。
このような観点から、(A)成分と(B)成分の含有割合に関しては、質量比率として、(A)成分が2:8以上であるのがより好ましく、さらに3:7以上であるのがより好ましく、特に4:6以上であることがより好ましい。また、(A)成分が8:2以下であるのがより好ましく、さらに7:3以下であるのがより好ましく、特に6:4以下であることがより一層好ましい。
【0032】
(樹脂(C))
X層、すなわち樹脂組成物Xは、(A)成分及び(B)成分のほかに、所定の樹脂(C)成分を含有してもよい。
【0033】
樹脂(C)としては、例えば石油樹脂、テルペン樹脂、クマロンーインデン樹脂、ロジン系樹脂、及びそれらの水素添加誘導体の中から選ばれる1種の樹脂又は2種類以上の樹脂(以下、これらを総称して「石油樹脂」とも称する)を挙げることができる。
このような樹脂(C)成分は、フィルムの腰やカット性、底折り込み安定性等の包装適性並びに透明性の更なる向上などに有効に作用する。
【0034】
ここで、石油樹脂としては、シクロペンタジエン又はその二量体から得られた脂環式石油樹脂やC9成分から得られた芳香族石油樹脂、または、脂環式と芳香族石油樹脂の共重合系石油樹脂などを挙げることができる。
テルペン樹脂としては、β−ピネンから得られたテルペン樹脂やテルペン−フェノール樹脂などを挙げることができる。
ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン樹脂、グリセリンやペンタエリスリトール等で変性したエステル化ロジン樹脂等を挙げることができる。
【0035】
上記のような石油樹脂は、色調や熱安定性、相溶性といった面から水素添加誘導体を用いることが好ましい。
また、上記の石油樹脂は、主に分子量により種々の軟化温度を有するものが得られるが、軟化温度が100〜150℃、好ましくは110〜140℃にあるものがより好適である。
具体的には、三井化学(株)の商品名「ハイレッツ」、「ペトロジン」、荒川化学工業(株)の商品名「アルコン」、ヤスハラケミカル(株)の商品名「クリアロン」、出光石油化学(株)の商品名「アイマーブ」、イーストマンケミカル(株)の商品名「エスコレッツ」等の市販品を用いることができる。
【0036】
X層、言い換えれば樹脂組成物Xにおいて、樹脂(C)の含有量は1〜40質量%であるのが好ましい。樹脂(C)の含有量が1質量%以上であれば、ストレッチフィルムに必要なカット性及び底折り込み安定性を充分に発揮することができる。中でも樹脂(C)の含有量は5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、40質量%以下であればガラス転移温度の上昇に伴ってストレッチフィルムに必要な低温適性が損なわれることがなく、また、低分子物のブリードによるフィルムのブロッキングを引き起こす心配がない。よって、かかる観点から、樹脂(C)の含有量は35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0037】
(エチレン系重合体(D))
X層、すなわち樹脂組成物Xは、(A)成分及び(B)成分のほかに、所定のエチレン系重合体(D)を含有してもよい。この際、(A)成分とエチレン系重合体(D)を併用することにより、低温適性の向上といった効果を得ることができる。
【0038】
ここで、エチレン系重合体(D)としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及び、エチレンを主成分とする共重合体、例えばエチレンと、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などの炭素数3〜10のα−オレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステルおよびそのアイオノマー、共役ジエンや非共役ジエンのような不飽和化合物の中から選ばれる一種又は二種以上のコモノマーとの共重合体又は多元共重合体、或いは、それらの混合組成物などを挙げることができる。
エチレン系重合体中のエチレン単位の含有量は、通常50質量%を超えるものである。
【0039】
これらのエチレン系重合体(D)の中では、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリルエステル共重合体及びアイオノマー樹脂の中から選ばれる少なくとも一種のエチレン系重合体が好ましい。
アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル等が挙げられる。
メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
【0040】
中でも、エチレン系重合体(D)として、酢酸ビニル単位含有量が5〜25質量%で、メルトフローレート(JIS K 7210、190℃、荷重21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、特に0.5〜8g/10分、中でも特に1〜6g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体がさらに好ましい。
ここで、酢酸ビニル単位含有量が5質量%以上であれば、得られるフィルムが柔らかく、柔軟性や弾性回復性を維持することができるばかりか、X層が表面層である場合には、表面粘着性を付与することができる。その一方、25質量%以下であれば、例えばX層が表面層である場合であっても、表面粘着性が強過ぎることがなく巻き出し性や外観を良好に維持することができる。また、メルトフローレートが0.2g/10分以上であれば、押出加工性を良好に維持することができる一方、10g/10分以下であれば、製膜安定性を維持することができ、厚み斑や力学強度のバラツキ等が生じるのを抑えることができるから好ましい。
【0041】
X層、言い換えれば樹脂組成物Xにおいて、エチレン系重合体(D)の含有量は1〜40質量%であるのが好ましい。エチレン系重合体(D)の含有量が1質量%以上であればストレッチフィルムに必要な低温適性が充分であり、中でもエチレン系重合体(D)の含有量は5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、40質量%以下であれば底折り込み安定性や耐熱性が充分であり、かかる観点から、エチレン系重合体(D)の含有量は35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0042】
(他の成分)
X層、すなわち樹脂組成物Xは、本発明の主旨を超えない範囲で、例えば防曇剤、帯電防止剤、滑り性、自己粘着性等の性能を付与するために、次のような各種添加剤を樹脂層に適宜配合することができる。
ここで、各種添加剤としては例えば、炭素数が1〜12、好ましくは1〜6の脂肪酸アルコールと、炭素数が10〜22、好ましくは12〜18の脂肪酸との化合物である脂肪族アルコール系脂肪酸エステル、具体的には、モノグリセリオレート、ポリグリセリンオレート、グリセリントリリシノレート、グリセリンアセチルリシノレート、ポリグリセリンステアレート、グリセリンラウレート、ポリグリセリンラウレート、メチルアセチルリシノレート、エチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、プロピレングリコールオレート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレート、ポリエチレングリコールオレート、ポリプロピレングリコールオレート、ソルビタンオレート、ソルビタンラウレート、ポリエチレングリコールソルビタンオレート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート等、ならびに、ポリアルキルエーテルポリオール、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等、更に、パラフィン系オイル等を挙げることができ、これらのうち一種又は二種以上を併用することができる。
そして、これらの添加剤は、X層を構成する樹脂成分100質量部に対して0.1〜12質量部、好適には1〜8質量部配合させるのが好ましい。
【0043】
<Y層>
上述のように、必須ではないが、例えば上記X層の片面側又は両面側に、エチレン系重合体(D)成分を主成分とするY層を形成することができる。
上記X層の片面側又は両面側にこのようなY層を積層することで、特に低温でのヒートシール性(底シール性)や、自己粘着性、インフレーションした際の成形性などを高めることができる。
【0044】
ここで、エチレン系重合体(D)としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及び、エチレンを主成分とする共重合体、例えばエチレンと、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などの炭素数3〜10のα−オレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステルおよびそのアイオノマー、共役ジエンや非共役ジエンのような不飽和化合物の中から選ばれる一種又は二種以上のコモノマーとの共重合体又は多元共重合体、或いは、それらの混合組成物などを挙げることができる。
エチレン系重合体中のエチレン単位の含有量は、通常50質量%を超えるものである。
【0045】
これらのエチレン系重合体(D)の中では、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−メタクリルエステル共重合体の中から選ばれる少なくとも一種のエチレン系重合体が好ましい。
アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル等が挙げられる。
メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
【0046】
中でも、エチレン系重合体(D)として、酢酸ビニル単位含有量が5〜25質量%で、メルトフローレート(JIS K 7210、190℃、荷重21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、特に0.5〜8g/10分、中でも特に1〜6g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体がさらに好ましい。
ここで、酢酸ビニル単位含有量が5質量%以上であれば、得られるフィルムが柔らかく、柔軟性や弾性回復性を維持することができるばかりか、Y層が表面層である場合には、表面粘着性を付与することができる。その一方、25質量%以下であれば、例えばY層が表面層である場合であっても、表面粘着性が強過ぎることがなく巻き出し性や外観を良好に維持することができる。また、メルトフローレートが0.2g/10分以上であれば、押出加工性を良好に維持することができる一方、10g/10分以下であれば、製膜安定性を維持することができ、厚み斑や力学強度のバラツキ等が生じるのを抑えることができるから好ましい。
【0047】
なお、このようにX層の片面側又は両面側に、エチレン系重合体(D)成分を主成分とするY層を積層する場合、X層が含有するエチレン系重合体(D)は、Y層が含有するエチレン系重合体(D)と同じであってもよいし、異なるものであってもよい。
例えば本ストレッチフィルムの製造工程において、製膜したフィルムの両端をカットしてトリミングした際に発生するトリミングロスを、樹脂組成物Xに配合して使用することで、材料の無駄を無くし、材料コストの軽減を図ることができるが、この場合には、X層が含有するエチレン系重合体(D)は、Y層が含有するエチレン系重合体(D)と同じとなる。
【0048】
(他の成分)
Y層には、本発明の主旨を超えない範囲で、例えば防曇剤、帯電防止剤、滑り性、自己粘着性等の性能を付与するために、次のような各種添加剤を樹脂層に適宜配合することができる。
ここで、各種添加剤としては例えば、炭素数が1〜12、好ましくは1〜6の脂肪酸アルコールと、炭素数が10〜22、好ましくは12〜18の脂肪酸との化合物である脂肪族アルコール系脂肪酸エステル、具体的には、モノグリセリオレート、ポリグリセリンオレート、グリセリントリリシノレート、グリセリンアセチルリシノレート、ポリグリセリンステアレート、グリセリンラウレート、ポリグリセリンラウレート、メチルアセチルリシノレート、エチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、プロピレングリコールオレート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレート、ポリエチレングリコールオレート、ポリプロピレングリコールオレート、ソルビタンオレート、ソルビタンラウレート、ポリエチレングリコールソルビタンオレート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート等、ならびに、ポリアルキルエーテルポリオール、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等、更に、パラフィン系オイル等を挙げることができ、これらのうち一種又は二種以上を併用することができる。
そして、これらの添加剤は、Y層を構成する樹脂成分100質量部に対して0.1〜12質量部、好適には1〜8質量部配合させるのが好ましい。
【0049】
<フィルムの厚さ>
本ストレッチフィルムの厚さは、通常のストレッチ包装用フィルムとして用いられる範囲、すなわち8μm〜30μm程度、代表的には9μm〜20μm程度の範囲であればよい。
また、積層構成とする場合は、表裏層と中間層の厚み割合の好適な範囲は、表裏層20〜60%、中間層80〜40%であるのがストレッチ包装用フィルムとしての諸物性および経済性の面から好ましい。
【0050】
<製造方法>
本ストレッチフィルムは、例えば押出機から材料を溶融押出し、インフレーション成形又はTダイ成形によりフィルム状に成形することにより製造することができる。
積層フィルムとする場合は、複数の押出機を用いて多層ダイにより共押出するのが好ましい。実用的には、環状ダイから材料樹脂を溶融押出してインフレーション成形するのが好ましく、その際のブローアップ比(チューブ径/ダイ径)は3以上が好ましく、特に4〜7の範囲が好適である。その際の冷却方法としては、チューブの外面から冷却する方法、チューブの外、内面の両面から冷却する方法のどちらでもよい。
さらに、得られたフィルムを樹脂の結晶化温度以下に加熱し、ニップロール間の速度差を利用してフィルムの縦方向に1.2〜5倍程度に延伸、又はフィルムの縦横方向に1.2〜5倍程度に二軸延伸してもよい。これにより、カット性の改良や熱収縮性の付与などを行うことができる。
【0051】
<本ストレッチフィルムの物性>
本ストレッチフィルムの柔軟性は、JIS Z1702に準じて温度20℃、引張速度200mm/分で引張試験を行って測定されるフィルム幅方向の100%伸び引張応力が40kgf/cm2〜140kgf/cm2の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは50kgf/cm2〜130kgf/cm2である。
【0052】
<用語の説明>
本発明において「ストレッチ包装用フィルム」とは、伸び性と自己粘着性を有する包装フィルムを広く包含する意味である。典型的には、青果物、精肉、惣菜等を軽量トレイに載せてオーバーラップするプリパッケージ用の包装用フィルムや、荷物運搬時に荷物を固定するためにオーバーラップする包装用フィルムなどを挙げることができる。
【0053】
本発明において「主成分」とは、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含する。この際、当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分(2成分以上が主成分である場合には、これらの合計量)が組成物中の50質量%以上、特に70質量%以上、中でも特に90質量%以上(100%含む)を占めるのが好ましい。
【0054】
また、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。例えば厚さに関して言えば、狭義では100μm以上のものをシートと称し、100μm未満のものをフィルムと称すことがある。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0055】
本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
【実施例】
【0056】
以下に、本発明を実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるフィルム及びその材料についての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出樹からの流れ方向を縦方向、その直角方向を横方向と呼ぶ。
【0057】
(1)結晶化曲線と結晶化ピーク温度(Tc)
パーキンエルマー社製DSC−7を用いて、JIS K 7121に準じて、測定サンプルを10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、1分間保持した後、10℃/分の降温速度で測定し、得られた結晶化曲線に基づき結晶化温度のピークがシングルであるか否かを判定すると共に、結晶化ピーク温度(℃)を求めた。
【0058】
(2)フィルム幅方向の100%伸び引張応力
JIS Z1702に準じて、温度20℃、引張速度200mm/分で引張試験を行い、フィルム幅方向の100%伸び引張応力(kgf/cm2)を測定した。
【0059】
(3)原料ペレット保管性
ストックタンクに保管した原料を金属ノズル付きのホース(内径50mm)でブロア吸引し、計量器まで輸送した場合の不具合について下記の基準で評価した。
◎・・・・全く問題なし。
○・・・・わずかに空気輸送が不安定になった。
△・・・・ブロッキングで輸送や計量に支障が発生した。
×・・・・経時的に完全に固まってしまった。
【0060】
(4)包装機適性
実施例・比較例で得られたフィルム(幅350mm)を用い、自動包装機((株)イシダ製ISHIDA・WminiZERO1)により発泡ポリスチレントレー(長さ200mm、幅150mm、高さ30mm)を包装し、第2表に示す基準で、カット性、包装シワ、底折り込み安定性、ちぎれ性について評価し、包装機適性として表1に結果を示した。
【0061】
(5)低温適性
擬似食品として濡れタオル400gを発泡ポリスチレントレー(長さ250mm、幅180mm、高さ25mm)に入れ、実施例・比較例で得られたフィルムを用いてハンドラッパーにて手包装し、包装体を10個作製した。その包装体を5段重ねにし、段ボースケース(長さ380mm、巾315mm、高さ165mm)に2列となる様にサンプル挿入し、梱包した。ダンボールケースを−25℃で24時間保管し、パック品を冷凍した。冷凍完了後、ダンボールケースごと高さ1mの地点から地面に落下させた後、ダンボールケースを開梱し、包装体の状態(天面のたるみ、フィルムの破れ(割れ)を確認した。
◎・・・・全く問題なし。
○・・・・若干天面にたるみがあるが、フィルム破れはなし。
△・・・・最下段にフィルム破れが発生した。
×・・・・段数に関らずフィルム破れが発生した。
【0062】
(6)透明性(Haze)
ASTM D1003に準じて、得られたフィルムをヘイズメーターにて測定し、下記基準で評価した。
◎・・・・1.5%未満
○・・・・1.5〜2.0%未満
△・・・・2.0〜2.5%未満
×・・・・2.5%以上
【0063】
(実施例1)
(A−1)成分として、プロピレンエチレンランダム共重合体(エチレン含有量9質量%、結晶化ピーク:シングル、結晶化ピーク温度66.3℃、メルトフローレート(JIS K 7210、230℃、荷重21.18N)2g/10分)と、(B−1)成分である結晶性ポリプロピレン系樹脂(プロピレン−エチレンランダム共重合体、エチレン含有量3.2質量%、結晶化ピーク:シングル、結晶化ピーク温度115.9℃、メルトフローレート(JIS K 7210、230℃、荷重21.18N)3g/10分)とを、50質量部:50質量部の混合比率で溶融混練して樹脂組成物Xを得、この樹脂組成物Xを環状ダイ温度190℃、ブローアップ比5.0で押出インフレーション成形して、X層からなる厚み12μmの単層フィルム(サンプル)を得た。
【0064】
(実施例2)
実施例1で用いた(A−1)成分の代わりに、(A−2)成分としてプロピレン−エチレンランダム共重合体(エチレン含有量15質量%、結晶化ピーク:シングル、結晶化ピーク温度33.6℃、メルトフローレート(JIS K 7210、230℃、荷重21.18N)2g/10分)を用いた以外は実施例1と同様にして、厚み12μmの単層フィルム(サンプル)を得た。
なお、幅方向の100%伸び引張応力値は86.5kgf/cm2であった。
【0065】
(実施例3)
実施例2で用いた(A−2)成分及び(B−1)成分のほかに、(C)成分として水素添加石油樹脂(軟化温度125℃、荒川化学工業(株)製、アルコンP125)を、(A−2):(B−1):(C)=40質量部:40質量部:20質量部の比率で混合した以外は、実施例1と同様にして厚み12μmの単層フィルム(サンプル)を得た。
【0066】
(実施例4)
実施例3で用いた(A−2)成分、(B−1)成分及び(C)成分のほかに、(D)成分としてEVA(酢酸ビニル含有量15質量%、メルトフローレート(JIS K 7210、190℃、荷重21.18N)2.0g/10分)を、(A−2):(B−1):(C):(D)=32質量部:32質量部:16質量部:20質量部の比率で混合した以外は、実施例1と同様にして厚み12μmの単層フィルム(サンプル)を得た。
【0067】
(実施例5)
実施例3で作製した単層フィルムの両面に表面層を積層してなる3層フィルムを形成した。
すなわち、実施例3同様に、(A−2):(B−1):(C)=40質量部:40質量部:20質量部の比率で溶融混練する一方、EVA(酢酸ビニル含有量15質量%、メルトフローレート(JIS K 7210、190℃、荷重21.18N)2.0g/10分)と、防曇剤としてのジグリセリンオレートとを、97質量部:3質量部の比率で溶融混練し、これらの溶融混練樹脂を環状三層ダイ190℃、ブローアップ比5.0で共押出インフレーション成形して、総厚み12μm(2μm/8μm/2μm)の3層フィルム(サンプル)を得た。
【0068】
(実施例6)
実施例4で作製した単層フィルムの両面に表面層を積層してなる3層フィルムを形成した。
すなわち、実施例4同様に、(A−2):(B−1):(C):(D)=32質量部:32質量部:16質量部:20質量部の比率で溶融混練する一方、EVA(酢酸ビニル含有量15質量%、メルトフローレート(JIS K 7210、190℃、荷重21.18N)2.0g/10分)と、防曇剤としてのジグリセリンオレートとを、97質量部:3質量部の比率で溶融混練し、これらの溶融混練樹脂を環状三層ダイ190℃、ブローアップ比5.0で共押出インフレーション成形して、総厚み12μm(2μm/8μm/2μm)の3層フィルム(サンプル)を得た。
【0069】
(比較例1)
実施例1における樹脂組成物Xの組成を、実施例2で用いた(A−2)成分100質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、厚み12μmの単層フィルム(サンプル)を得た。
但し、インフレーション製膜設備によるフィルム成形性が不安定であった。
なお、幅方向の100%伸び引張応力値は18.5kgf/cm2であった。
【0070】
(比較例2)
(B−1)成分である結晶性ポリプロピレン系樹脂(エチレン含有量3.2質量%、結晶化ピーク:シングル、結晶化ピーク温度115.9℃、メルトフローレート(JIS K 7210、230℃、荷重21.18N)3g/10分)と、(B−2)成分である結晶性ポリプロピレン系樹脂(エチレン含有量22.6質量%、結晶化ピーク:ダブル、結晶化ピーク温度77.2℃、104.9℃、メルトフローレート(JIS K 7210、230℃、荷重21.18N)1.5g/10分)とを、50質量部:50質量部の混合比率で溶融混練して樹脂組成物を得、この樹脂組成物を環状ダイ温度190℃、ブローアップ比5.0で押出インフレーション成形して、厚み12μmの単層フィルム(サンプル)を得た。
【0071】
(比較例3)
実施例2において、(A−2)成分と(B−1)成分との配合比率を、10質量部:90質量部に変更した以外は実施例2と同様にして、厚み12μmの単層フィルム(サンプル)を得た。
【0072】
(比較例4)
実施例4において、(A−2)成分、(B−1)成分、(C)成分及び(D)成分の配合比率を、(A−2):(B−1):(C):(D)=15質量部:15質量部:20質量部:50質量部に変更した以外は、実施例4と同様にして厚み12μmの単層フィルム(サンプル)を得た。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
表1の結果より、エチレン含有量が5質量%以上であり、示差走査熱量計(DSC)で測定したときの結晶化温度のピークがシングルであるプロピレンエチレンランダム共重合体((A)成分)と、結晶性ポリプロピレン系樹脂((B)成分)とを使用した実施例1〜6は、包装機適性、低温適性、透明性のいずれも良好であったほか、ペレットの保管安定性も良好であることが分かった。これに対して本発明の規定範囲外である比較例は、包装機適性、低温適性、透明性のいずれかが劣ることが分かった。
【0076】
また、実施例1〜6で用いたプロピレンエチレンランダム共重合体(A)のエチレン含有量が9%((A−1)成分)、15%((A−2)成分)であったことと、これまで発明者が行った試験結果などを総合して考えると、プロピレンエチレンランダム共重合体(A)のエチレン含有量は5質量%以上であることが必要であり、特に8質量%以上、中でも特に9質量%以上、その中でも特に10質量%以上であるのが好ましいと考えられる。
他方、結晶性ポリプロピレン系樹脂((B)成分)としてプロピレンエチレンランダム共重合体を用いる場合には、本明細書に示した実施例及びこれまで発明者が行った試験結果などを総合して考えると、エチレン含有量が5質量%未満、特に4.5質量%未満、中でも特に4質量%未満であるのが好ましいと考えられる。
【0077】
また、実施例1〜6と比較例1〜4を対比すると、(A)成分と(B)成分の質量比率は8:2〜2:8であることが必要であり、好ましくは7:3〜3:7、特に好ましくは6:4〜4:6であることが分かった。
【0078】
また、実施例1〜6で用いたプロピレンエチレンランダム共重合体(A)のシングルピーク温度は、66.3℃((A−1)成分)、33.6℃((A−2)成分)であったことと、これまで発明者が行った試験結果などを総合して考えると、プロピレンエチレンランダム共重合体(A)のシングルピーク温度は70℃以下であるのが好ましく、特に60℃以下、中でも特に50℃以下であるのが好ましいと考えられる。
他方、実施例1〜6で用いた結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)のシングルピーク温度は、115.9℃((B−1)成分)であったことと、これまで発明者が行った試験結果などを総合して考えると、結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)の最高温のピーク温度は70℃を超えるのが好ましく、特に80℃以上、中でも特に90℃以上であるのが好ましいと考えられる。
【0079】
また、比較例4の結果を見ると、成分(D)の含有量が50質量%であり、プロピレンエチレンランダム共重合体(A)及び結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)がX層の主成分ではないことにより、包装シワが生じたり、底折り込み安定性が低下したり、ちぎれ性が悪くなるなど、包装機適性が低下する傾向が確認された。よって、X層においては、プロピレンエチレンランダム共重合体(A)及び結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)が主成分であることが重要であり、さらにエチレン系重合体(D)の含有量は1〜40質量%であるのが好ましいものと考えられる。
【0080】
実施例1〜4の単層系の中では実施例4がカット性・ちぎれ性・低温適性に優れ、好ましい対応であった。また、実施例1〜6の中では実施例5、6の積層系のものが包装機適性・透明性・低温適性に優れ、好ましい対応であった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン含有量が5質量%以上であって、かつ下記(1)の条件を満たすプロピレンエチレンランダム共重合体(A)成分と、下記(2)の条件を満たす結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)成分とを主成分として含有し、且つ、前記(A)成分及び(B)成分の質量比率が、(A)成分:(B)成分=8:2〜2:8である樹脂組成物XからなるX層を備えたストレッチ包装用フィルム。
(1)示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化曲線のピークがシングルであって、かつ当該ピーク温度が70℃以下である。
(2)示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶融解曲線のピークのうち最高温のピーク温度が70℃を超えている。
【請求項2】
結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)成分が、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体及び、リアクタータイプのポリプロピレン系エラストマーの中から選ばれる1種又は2種類以上の混合成分であることを特徴とする請求項1に記載のストレッチ包装用フィルム。
【請求項3】
前記樹脂組成物Xは、さらに下記樹脂(C)成分を含み、樹脂組成物X中の(C)成分の含有量が1〜40質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のストレッチ包装用フィルム。
(C)成分:石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、及びそれらの水素添加誘導体の中から選ばれる少なくとも一種の樹脂
【請求項4】
樹脂(C)成分が、軟化点100〜150℃の石油樹脂及びまたはその水素添加誘導体であることを特徴とする請求項3に記載のストレッチ包装用フィルム。
【請求項5】
前記X層の片面側又は両面側に、エチレン系重合体(D)成分を主成分とするY層を積層してなる構成を備えた請求項1〜4の何れかに記載のストレッチ包装用フィルム。
【請求項6】
前記樹脂組成物Xは、さらにエチレン系重合体(D)成分を含み、樹脂組成物X中の(D)成分の含有量が1〜40質量%であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載
のストレッチ包装用フィルム。
【請求項7】
エチレン系重合体(D)成分が、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリルエステル共重合体及びアイオノマー樹脂の中から選ばれる1種又は2種類の混合成分であることを特徴とする請求項5又は6に記載のストレッチ包装用フィルム。
【請求項8】
エチレン系重合体(D)成分が、酢酸ビニル単位含有量が5〜25質量%で、且つメルトフローレート(JIS K 7210、190℃、荷重21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項5又は6に記載のストレッチ包装用フィルム。

【公開番号】特開2011−68844(P2011−68844A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271921(P2009−271921)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】