スパッタリング装置、スパッタリング方法及び電子デバイスの製造方法
【課題】面内分布の均一性に優れた膜を成膜することができるようにし、優れた性能の電子デバイスを容易に製造することができるようにするスパッタリング技術の実現。
【解決手段】スパッタリング装置は、基板21をその処理面の面方向に沿って回転可能に保持する基板ホルダ22と、基板21の周囲に配設され、基板21の処理面に磁場を形成する基板側磁石30と、基板21の斜め上方に配置され、放電用の電力が印加されるカソード41と、基板21の回転位置を検出する位置検出部23と、該位置検出部23が検出した回転位置に応じて、前記放電用の電力を制御するコントローラ5とを備える。
【解決手段】スパッタリング装置は、基板21をその処理面の面方向に沿って回転可能に保持する基板ホルダ22と、基板21の周囲に配設され、基板21の処理面に磁場を形成する基板側磁石30と、基板21の斜め上方に配置され、放電用の電力が印加されるカソード41と、基板21の回転位置を検出する位置検出部23と、該位置検出部23が検出した回転位置に応じて、前記放電用の電力を制御するコントローラ5とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カソードに高電圧を印加して基板ホルダとの間で放電を発生させ、カソードに取り付けられたターゲットをスパッタして基板上に成膜するスパッタリング装置、スパッタリング方法及び電子デバイスの製造方法に関する。詳しくは、基板をその処理面に沿って回転させながら成膜を行うスパッタリング装置、スパッタリング方法及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板の斜め上方にターゲットを支持するカソードをオフセット配置し、基板をその処理面に沿って回転させながら、斜め入射スパッタリングによりターゲット材料をスパッタして基板上に成膜するスパッタリング装置が知られている。
【0003】
これに関連する技術としては、例えば、基板を適度の速さで回転させると共に、基板の法線に対し、ターゲットの中心軸線の角度θを、15°≦θ≦45°の関係に保ったスパッタリング方法および装置が提案されている(特許文献1参照)。このスパッタリング装置によれば、ターゲットの径を基板と同等以下にしても、均一膜厚、膜質を生成できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−265263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の斜め入射スパッタリング技術を用いても、磁性膜を成膜する場合には、他の材料を成膜する場合に比べて、シート抵抗分布に偏りが生じる。ところが、面内分布(1σ)は1%未満という値を実現していたため、大きな問題にはならなかった。
【0006】
しかし近年、スパッタレート向上の要請が高まるに従って、放電電力の高電力化が試みられている。高電力で斜め入射スパッタにより磁性膜の成膜を行ったところ、シート抵抗分布の偏りが一層増大するという問題があった。また、複数のカソードを用い、複数のターゲットに対し同時スパッタリングを行う場合は、成膜分布の偏りが各ターゲット材料の分布の偏りにつながっていた。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、面内分布の均一性に優れた膜を成膜することができるようにし、優れた性能の電子デバイスを容易に製造することができるようにするスパッタリング技術を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のスパッタリング装置は、基板をその処理面の面方向に沿って回転可能に保持する基板ホルダと、前記基板の周囲に配設され、前記基板の処理面に磁場を形成する基板磁場形成手段と、前記基板の斜向かいの位置に配置され、放電用の電力が投入されるカソードと、前記基板の回転位置を検出する位置検出手段と、前記位置検出手段の検出した回転位置に応じて、前記カソードへ投入する電力を制御する電力制御手段と、を備える。
【0009】
また、本発明のスパッタリング方法は、基板をその処理面の面方向に沿って回転させ、その処理面に磁場を形成させつつ、前記基板の斜向かいの位置に配置されるカソードに、位置検出手段の検出した前記基板の回転位置に応じて、調整した電力を投入することで、成膜を実行する。
【0010】
また、本発明の電子デバイスの製造方法は、基板をその処理面の面方向に沿って回転させ、その処理面に磁場を形成させつつ、前記基板の斜向かいの位置に配置されるカソードに、位置検出手段の検出した前記基板の回転位置に応じて、調整した電力を投入することで、スパッタリング法により成膜する成膜ステップを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、膜厚や組成の面内分布の均一性に優れた膜を成膜することができ、優れた性能の電子デバイスを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施の形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
【図1】第1の実施形態のスパッタリング装置を模式的に示す概略断面図である。
【図2】基板側磁石が形成する磁界の一例を模式的に示す平面図である。
【図3】第1の実施形態のカソードユニット及びコントローラの構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態の放電用電力の正弦波制御マップを例示する図である。
【図5】一定の放電用電力を投入して磁性材料を成膜する比較例のスパッタリング装置を示す図である。
【図6A】本実施形態の基板上のシート抵抗分布(膜厚分布)を例示する図である。
【図6B】比較例の基板上のシート抵抗分布(膜厚分布)を例示する図である。
【図7】第2の実施形態のコントローラの構成を示すブロック図である。
【図8】ターゲット材料と制御パターンの対応を規定するテーブルを例示する図である。
【図9】図8の制御パターンを説明する図である。
【図10】第3実施形態のスパッタリング装置を模式的に示す概略断面図である。
【図11】第3の実施形態のスパッタリング装置を模式的に示す上面図である。
【図12】第3の実施形態のカソードユニット及びコントローラの構成を示すブロック図である。
【図13】第4の実施形態のコントローラの構成を示すブロック図である。
【図14】カソードの位置関係と制御パターンの対応を規定するテーブルを例示する図である。
【図15】第5の実施形態のスパッタリング装置の構成を示すブロック図である。
【図16】スパッタリング装置の別の構成例である。
【図17】本発明のスパッタリング方法を適用して製造可能な電子部品の例であるTMR素子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0014】
[第1の実施形態]
図1に示すように、本実施形態のスパッタリング装置は、処理空間を区画形成するチャンバ(反応容器)10を備えている。このチャンバ10には、その内部を所望の真空度まで真空排気可能な排気系として、ゲートバルブ等の不図示の主弁を介して排気ポンプ11が接続されている。
【0015】
チャンバ10内の処理空間の下部には、上面に円盤状の基板21を支持する円盤状の基板ホルダ22が設けられている。処理対象である基板21は、通常、ハンドリング・ロボット(図示せず)により、水平スロット(図示せず)を通じて基板ホルダ22上に運ばれる。基板ホルダ22は、円盤状の載置台(ステージ)であって、例えば、その上面に静電吸着により基板21を吸着支持するようになっている。基板ホルダ22は導電性部材により形成され、後述するカソード41との間で放電を発生させる電極としても機能する。
【0016】
この基板ホルダ22は、不図示の回転駆動機構に接続されて、その中心軸周りに回転可能に構成されており、載置面に吸着支持した基板21をその処理面に沿って回転させるものとなっている。また、基板ホルダ22の回転部又は回転駆動機構には、基板21の回転位置(基板ホルダ22の回転位置、後述する基板側磁石30により形成される磁界Mの回転位置)を検知する位置検出部(位置センサ)23が設けられている。この位置検出部23としては、例えばロータリーエンコーダを用いることができる。
【0017】
円盤状の基板ホルダ22の外径は基板21の外径よりも大きく設定され、この基板ホルダ22における基板21の周囲には、基板21の処理面に磁場を形成する基板磁場形成部が配設されている。この基板磁場形成部は、例えば図2に示すように、基板ホルダ22の載置面の周囲に、永久磁石からなる複数の磁石片31を基板ホルダ22の周方向に沿って等間隔で配設した基板側磁石30によって構成されている。すなわち、この基板側磁石30は、基板ホルダ22の載置面上において基板21と共に回転可能に設けられている。
【0018】
図2に示すように、上記基板側磁石30は、基板21の処理面に沿って、処理面内で一方向を向いた方向性を有する一様な磁場を形成する。図2の例では、ダイポールリングが用いられ、夫々異なる方向に磁化された複数の円弧状の磁石片31を環状に組合せて、上記一方向の磁場Mを形成するように構成されている。なお、基板側磁石30の構成はこれに限定されず、磁石が一体成形されているものでもよいし、基板ホルダ22とは別に設け、基板21の回転と同期して回転可能に構成してもよい。また、基板側磁石30は永久磁石に限るものではなく、電磁石を用いてもよい。
【0019】
図1に示されるように、基板21は、基板ホルダ22の載置面上に水平状態を保って保持されている。基板21としては、例えば、円板状のシリコンウェハ(SiO2基板)を用いるが、これに限定されるものではない。
【0020】
また、上記処理空間の基板ホルダ22の斜め上方には、ターゲット42を保持するカソード41を備えたカソードユニット40が配置されている。カソードユニット40は、カソード41の中心位置を基板21の中心軸から基板21の面方向へずらして、カソード41が基板21の斜め向かいの位置となるようにオフセット配置されている。
【0021】
カソードユニット40におけるカソード41の裏面側には、複数の永久磁石(カソード側磁石)を配置したマグネトロンが備えられ、カソード41の表面に取り付けられるターゲット42の表面側に磁界を形成するようになっている。マグネトロンは、例えば、カソード41の裏面側に永久磁石を縦横に配置した磁石アセンブリを構成し、ターゲット42の表面側にカスプ磁界を形成するように構成してもよい。
【0022】
カソードユニット40のカソード41の表面側には、板状のターゲット42が取り付けられる。すなわち、ターゲット42は、カソード41よりも処理空間側に設けられ、下方へ臨んで配置されている。ターゲット42の材料は、基板21上に成膜する膜の種類によって異なる。
【0023】
カソードユニット40には、カソード41に放電電圧を印加する放電用電源44が電気的に接続されている。放電用の電力は、高周波電力、DC電力、高周波電力とDC電力との重畳のいずれであっても構わない。
【0024】
さらに、カソードユニッ40のケーシングには、カソード41近傍に放電用の処理ガス(放電用ガス)を供給する放電用ガス導入系43が接続されている。放電用ガスとしては、例えば、Arなどの不活性ガスが使用される。カソード41は基板ホルダ22との間でプラズマ放電を発生し、カソードユニット40に取り付けられたターゲット42をスパッタリング可能である。
【0025】
また、カソードユニット40の前方には、基板21との間を開放又は遮断するためのシャッタ45が設けられており、本スパッタの前にターゲット42の表面の付着物を除去するためのプリスパッタが可能となっている。
【0026】
次に、図3を参照して、本実施形態のスパッタリング装置に備えられ、上述の各構成要素を制御するコントローラ5について説明する。図3は本実施形態におけるコントローラ5を示すブロック図である。
【0027】
本実施形態のコントローラ5は、図3に示すようなもので、例えば、一般的なコンピュータと各種のドライバを備えて構成される。そして、所定のプログラム又は上位装置の指令にしたがって成膜処理動作を実行する。具体的には、図1に示される放電用電源44、シャッタ45の駆動部、放電用ガス導入系43、排気ポンプ11、基板ホルダ22の回転駆動機構などに指令を出力する。その指令にしたがって放電時間、放電電力、ターゲット42の選択およびプロセス圧力などの各種プロセス条件がコントロールされる。また、チャンバ10内の圧力を計測する圧力計(図示せず)や、基板21の回転位置を検出する位置検出部23などのセンサの出力値も取得可能であり、装置の状態に応じた制御も可能である。
【0028】
コントローラ5は、図1及び図3に示すように、位置検出部23で検出した回転位置に応じて、成膜量を増減させるように、カソード41への投入電力を演算する投入電力値演算部51aと、演算した電力値に調整するための制御用信号(例えば、演算した大きさの電力値に応じた電圧や電流)を出力する制御用信号出力部51bと、を備える。コントローラ5は、基板21の回転位置と放電中のカソード41との位置関係に基づいて、基板21の回転位置に応じてカソード41に投入する電力を制御するための信号を出力する機能を有する。
【0029】
図3に示される電力制御部52は、制御用信号出力部51bから入力する制御用信号に基づき、放電用電源44の電力を増減させて、投入電力値演算部51aで演算した大きさの電力をカソード41へ出力する。したがって、カソード41は、基板21の回転位置に応じた放電用の電力を受けることになる。投入電力値は、例えば、図4に示されるような基板21の回転位置の正弦波関数とすることができ、基板21の回転位置とカソード41への投入電力と対応関係を予め図4に示されるようなマップとして定めておくことで投入電力値演算部51aが投入電力値を演算可能である。また、基板21の回転位置は、例えば、図2に示される磁界Mの方向と平行でかつ基板21の中心を通る線分を基準に定めることができる。
【0030】
次に、図1〜図3に示されるスパッタリング装置の作用と共に、このスパッタリング装置を用いて実施するスパッタリング方法について説明する。
【0031】
本発明に係るスパッタリング装置を用いたスパッタリング方法は、まず、基板ホルダ22上に処理対象である基板(ウェハ)21を設置する。基板21は、例えば、ハンドリング・ロボット(図示せず)を用いて、水平スロット(図示せず)を通じて基板ホルダ22上に運ばれる。
【0032】
次に、チャンバ10の内部を排気ポンプ11により所定の真空度まで排気する。さらに、チャンバ10の内部に放電用ガス導入系43からAr等の放電用ガスを導入する。
【0033】
この状態で、まず、カソードユニット40のターゲット42表面に磁界を形成し、放電用電力を供給して、基板ホルダ22との間でプラズマ放電を発生させる。ターゲット42としては、例えば、Co含有ターゲット、Fe含有ターゲット、Ni含有ターゲット等の磁性材料を含有するターゲットが挙げられる。また、同時スパッタリングの例としては、Co含有ターゲットとFe含有ターゲットの同時スパッタリングによるCoFe層の成膜、Fe含有ターゲットとNi含有ターゲットの同時スパッタリングによるNiFe層の成膜等の各種磁性異種材料、特に強磁性材料からなるターゲットを用いた同時スパッタリングが挙げられる。もちろん、磁性材料にBや,C,Pなどの反磁性材料を含有しているものを用いることもできる。
【0034】
その成膜の際、基板21の処理面に一方向へ向いた方向性を有する磁場を形成すると共に、基板21をその処理面に沿って回転させる。さらに、カソードユニット40の放電中、例えば回転速度が安定したころ、位置検出部23が基板21の回転位置を検出すると共に、位置検出部23が検出した回転位置に応じて、カソード41への投入電力を調整する。
【0035】
以下に、投入電力の制御についてさらに詳しく説明する。図4は、本発明に係るスパッタリング装置を用いたスパッタリング方法における投入電力の制御マップを示す説明図である。また、図5及び図6A,6Bは本実施形態の原理を説明するための図である。
【0036】
本発明に係るスパッタリング装置を用いたスパッタリング方法では、図4および下記式(1)に示すように、基板21の回転位置(回転角)θに対し、カソード41への投入電力Pが正弦波となるように、投入電力を制御する。
【0037】
P=A・sin(θ+α)+B・・・(1)
A=a・B・・・(2)
すなわち、コントローラ5は、上記式(1)に基づいて、基板21の回転角の正弦波関数として、カソード41へ投入する放電用電力を算出する。なお、θは0°≦θ≦360°である。また、Aは投入電力の振幅、αは位相角、Bは投入電力の振幅の中心値、aは投入電力の変動率である。
【0038】
上記式(1)中、振幅Aは、均一な成膜を実現可能な範囲で任意に設定することができる。例えば、上記式(2)のように中心値Bの値に応じて決定することができ、この場合、変動率aは0.1から0.4のような値とすることが好ましい。あまりに小さいと、本発明の効果が得にくく、あまりに大きいと、変速しない場合の偏りを打ち消すレベルを超えてしまいかえって均一性が悪化しやすい。
【0039】
図5は、本発明とは異なり、基板21の回転位置にかかわらず、一定の放電用の電力を投入して磁性材料(例えば、NiFe)を成膜した状態を比較例として示している。この比較例では、基板21の処理面内における磁場の形成状態と強く相関した特定の部分で膜厚が厚くなる。具体的には、基板側磁石30のN極側からS極側に向かって膜Dの厚みが徐々に薄くなる斜めの分布ができ、特にN−S極間の各磁極の周方向中央部Nc,Sc(図2参照)近傍の膜厚差が大きくなる。なお、図5中Otはターゲット42の中心である。
【0040】
また、基板側磁石30を設けない場合には、スパッタ粒子の飛散量は、ターゲット42に近い位置で多く、ターゲット42から離れると少ない。基板側磁石30を設けた場合には、この基本的な分布において変わらないものの、基板21の処理面における磁場の形成状態により、処理面内でスパッタ粒子を引きつけやすい部分(スパッタ粒子の飛散量が多い部分)とそうでない部分との差が生じるものと考えられる。
【0041】
したがって、コントローラ5は、上記斜めの分布形状に対して、基板21における磁場の形成状態によりスパッタリング粒子の飛散量が多い第1の部分が放電中のカソード41に近い位置にあるときに投入電力を第1の電力値に制御する。さらに、投入電力制御部52は、上記第1の部分よりもスパッタリング粒子の飛散量が少ない第2の部分が放電中のカソード41に近い位置にあるときにターゲットのスパッタ率が比較的大きくなるように、第1の電力値よりも高い第2の電力値に制御する。
【0042】
具体的には、コントローラ5は、膜厚が厚くなってしまう部分(上記例ではN極周方向中央Nc近傍)が放電中のカソードユニット40のターゲット42側に向いたときに基板21の投入電力を小さくしてスパッタ率を低下させ、飛散量の多い部分における成膜量を小さくする。さらに、投入電力制御部51は、膜厚の薄くなってしまう部分(上記例ではS極周方向中央Sc近傍)が上記ターゲット側に向いたときに投入電力を増大させてスパッタ率を大きくし成膜量を多くすることで分布形状の偏りを打ち消し合うことができる。
【0043】
このとき、一定速度で回転する基板ホルダ22のある1点が、最もカソード41に近い位置と、最もカソード41から遠い位置との間を回転に伴って移動することから、電力値がこの基板21の回転位置と放電中のカソード41との位置関係の変化に対応する正弦波となるように制御すると、プラズマの条件を安定に保つことができるので好ましい。
【0044】
なお、どの部分が第1の部分、第2の部分になるかは、カソード41と基板ホルダ22の位置関係、基板ホルダ22の回転速度、マグネトロンスパッタを行う場合はカソード41側に設けるマグネットの構成等によっても異なる。したがって、予め実験等により第1の部分と第2の部分を求めておき、それに応じた投入電力の制御を行う。この第1の部分と第2の部分を求める実験は、投入電力を一定にして成膜を行い、得られた膜の厚さ分布を測定することで行うことができる。
【0045】
図6A,Bは、基板21上のシート抵抗分布(膜厚分布)を示す説明図であって、図6Aは投入電力の正弦波制御を行った場合の基板21上のシート抵抗分布(実施形態)であり、図6Bは成膜中に投入電力を一定にした場合のシート抵抗分布(比較例)である。
【0046】
実施形態の成膜条件は、ターゲット材料がNiFe、成膜圧力0.05Pa、基板21の回転速度が60rpm、投入電力の振幅Aの変動率aが14%、投入電力の振幅の中心値Bが4kWである。比較例は、投入電力を4kWで一定とし、他の条件は実施形態と同一である。
【0047】
図6A,Bに示すように、実施形態では面内分布(1σ)が0.5%であったのに対し、比較例では3.1%となり、実施形態で面内分布の均一性が非常に優れていることが確認された。なお、図6Bにおいて、磁場方向は等高線と略直交する方向であり、N極側でシート抵抗が小さく(すなわち膜厚が厚い)、S極側でシート抵抗値が大きく(すなわち膜厚が小さい)なっている。なお、等高線は規格化されたシート抵抗値を示しており、その間隔は0.01である。
【0048】
ここで規格化したシート抵抗値Rnは、下記式(3)により表される。
【0049】
Rn=Rs/Rs,max・・・(3)
なお、式(3)中、Rsはシート抵抗値、Rs,maxはシート抵抗値の最大値である。
【0050】
本実施形態の投入電力制御は正弦波制御に限られず、2段階以上のステップで投入電力を切り替える制御を行うようにしてもよいし、上記第1の部分が上記カソードに近づくに従って徐々に投入電力を減少させて上記第1の電力にすると共に、上記第2の部分が上記カソードに近づくに従って徐々に投入電力を増加させて上記第2の電力とすることもできる。さらに、回転位置の一次関数や二次関数などを合成したりしてもよい。また、成膜の間中同じ正弦波制御を行ってもよいが、例えば、成膜の初期、中期、後期で投入電力の制御方法を変更してもよい。また、第1の部分と第2の部分のほかに第3部分を求めて、第1の部分と第2の部分とは異なる投入電力に設定するようにしてもよい。
【0051】
なお、基板の回転位置とは、特定位置に限定されたものでなく、範囲を有する基板の回転区間(回転位置範囲)を含む意味であり、例えば、基板の回転区間に応じてその間に投入される平均電力の大きさを制御するようにしてもよい。
【0052】
例えば、所定の大きさの直流電力や所定周波数の高周波電力を間欠供給させ、その投入長さやインターバルを基板の回転区間に応じて増減させたりしてもよい。
【0053】
[第2の実施形態]
また、図7〜図9に示すように、ターゲット材料に応じて制御パターンの変更を行ってもよい。これはターゲット材料によって、膜厚分布の偏りの傾向が異なってくるためである。
【0054】
図7は、コントローラ5のみを取り出して示した図であり、その他は第1の実施形態の図3の構成と同じである。ターゲット材料情報取得部51cは、成膜時に選択されるターゲット材料の情報をユーザの入力や予め記憶するデータなどとして取得する。制御パターン決定部51dは、例えば図8に示すようなテーブルを保持しており、ターゲット材料情報取得部51cにより取得したターゲット材料情報に基づき制御パターンを決定する。
【0055】
図9に制御パターンの例を示す。図9は本発明の方法を用いることなく成膜した場合にできる膜厚分布を示しており、図9に示す例では膜厚が厚くなる方向と磁場方向が一致している。この場合は、差角Δθ=0として、これに応じた位相αの値を設定する。基準位置をどこに取るかによるが、N極周方向中央部Ncのターゲット位置に対する位置を基板の回転位置θとすれば、N極周方向中央部Ncがターゲット位置に来たとき(θ=0°)で最も回転速度を大きくする場合、位相αは90°に設定される。
【0056】
しかし、成膜材料によっては、磁場方向と膜厚が厚くなる方向に差が生じる。この差を差角Δθとして予め実験等により明らかにしておき、これに応じた位相αを設定することで、膜種に応じて適切に膜厚分布の制御を行うことができる。例えば、上記と同様に膜厚が最も厚い部分がターゲット位置に来たときに最も回転速度を大きくするのであれば、例えば差角Δθ=30のとき、位相αを120°(差角の方向によっては60°)に設定する。
【0057】
同様に、変動率aなどもターゲット材料に応じて適切な値に設定することができる。
【0058】
[第3の実施形態]
図10及び図11を参照して、第3の実施形態のスパッタリング装置について説明する。図10は本実施形態のスパッタリング装置を模式的に示す概略断面図であり、図11のi−i断面を示している。また、図11は基板ホルダとカソードユニットとの配置関係を模式的に示す平面図である。なお、以下では、第1の実施形態の図1と同じ構成には同一の符号を付して示している。
【0059】
図10に示すように、本実施形態のスパッタリング装置1のチャンバ10にはガス注入口12が開口され、このガス注入口12にはチャンバ10の内部に反応性の処理ガス(反応性ガス)を導入する反応性ガス導入系13が接続されている。反応性ガス導入系13は、例えば、マスフローコントローラなどの自動流量制御器(不図示)を介して、ガスボンベ(不図示)が接続され、ガス注入口12から反応性ガスが所定の流量で導入される。この反応性ガス導入系13は、チャンバ10内で反応性スパッタリングを行う場合に、チャンバ10内に反応性ガスを供給する。
【0060】
また、上記処理空間の基板ホルダ22の斜め上方には、ターゲットを保持するカソードを備えたカソードユニット40が複数配置されている。すなわち、一つの基板ホルダ22に対して複数のカソードユニット40が設けられ、各カソードユニット40はチャンバ10の上壁部に傾斜した状態で取り付けられている。
【0061】
本実施形態では、チャンバ10の上壁部に5基のカソードユニット40(40a〜40e)が設けられているが、カソードユニット40の数はこれに限定されない。各カソードユニット40は、基板ホルダ22上の基板21の処理面に対して傾斜すると共に、基板21の中心軸から処理面の延長方向へ等間隔を隔ててずらして、基板21の斜め向かいの位置となるようにオフセット配置されている。具体的には、各カソードユニット40のカソード中心軸は、基板ホルダ22の回転軸とは外れて位置し、回転軸から所定の距離を隔てた同心円上に等間隔で配置されている。このように同一のチャンバ10内に複数のカソードユニット40を設けることにより、一つのチャンバ10内で積層体(スタック)の成膜が可能である。
【0062】
なお、基板21の径やターゲット径は特に限定されないが、基板21中心とカソード中心をオフセット配置させ、本実施形態のように基板21を回転させる場合には、ターゲットの径が基板21の径より小さくても均一な成膜が可能である。また、本実施形態では、5基のカソードユニット40が配置されているので、例えば、材料成分の異なる5種類のターゲットが取り付けられるが、これに限定されない。
【0063】
各カソードユニット40には、図1と同様に、カソードに放電電圧を印加する不図示の放電用電源が電気的に接続されている。放電用の電力は、高周波電力、DC電力、高周波電力とDC電力との重畳のいずれであっても構わない。また、複数のカソードユニット40に放電電圧を選択的に印加するが、各カソードユニット40に個別の放電用電源を接続してもよいし、共通電源として選択的に電力供給を行うスイッチ等の切り替え機構を備えるように構成しても構わない。
【0064】
また、各カソードユニット40の前方には、一部のカソードと基板ホルダ22との間を選択的に遮断するシャッタ45が設けられている。このシャッタ45を選択的に開放することにより複数のカソードユニット40の中から目的のターゲットを選択してスパッタリングを実行することができ、スパッタされている他のターゲットからのコンタミネーションを防止することができる。
【0065】
次に、図12を参照して、本実施形態のスパッタリング装置に搭載されるコントローラ5及びカソードユニット40について説明する。図12は本実施形態におけるコントローラ5及びカソードユニット40の構成を示すブロック図である。
【0066】
図12に示すコントローラ5は、図3と同様に、位置検出部23で検出した回転位置に応じて、成膜量を増減させるように、複数のカソード41夫々への投入電力を演算する投入電力値演算部51aと、複数のカソード41の夫々に対応して設けられ、演算した電力値に調整するための制御用信号(例えば、演算した大きさの電力値に応じた電圧や電流)を出力する制御用信号出力部51bと、を備える。
【0067】
また、カソードユニット40の電力制御部52は、制御用信号出力部51bから入力する制御用信号に基づき、放電用電源44の電力を増減させて、投入電力値演算部51aで演算した大きさの電力をカソード41へ出力する。これにより、カソード41は、基板21の回転位置に応じた放電用の電力を受けることになる。投入電力値は、例えば、図4に示したような基板21の回転位置の正弦波関数とすることができ、基板21の回転位置とカソード41への投入電力と対応関係を予め図4に示したようなマップとして定めておくことで投入電力値演算部51aが投入電力値を演算可能である。
【0068】
本実施形態のスパッタリング装置を用いて実施するスパッタリング方法については、複数のカソードユニット40のターゲット42表面に磁界を形成し、放電用電力を供給して、基板ホルダ22との間でプラズマ放電を発生させ、複数のターゲットを同時にスパッタリングする以外は第1の実施形態で説明した通りであり、本実施形態のスパッタリング装置の作用についても第1の実施形態(図5及び図6A,6B)で説明した通りである。
【0069】
すなわち、コントローラ5の投入電力値演算部51aは、基板の特定位置と各カソード41の設置位置が回転中心に対してなす角をθとして、各カソード41について演算し、上記式(1),(2)を適用して、各カソードへの投入電力値を演算する。
【0070】
ここで、図5で説明したように、基板側磁石30により形成される磁界は基板と同期して回転することから、基板を回転させてもスパッタ粒子の飛散量の偏りは解消できず、最終的な膜厚分布の差となってしまう。そして、本実施形態のように同時スパッタを行った場合、同時に放電させる複数のカソード41の位置関係によっては、膜厚自体は平均化されたものとなることもあるが、膜の組成は、各ターゲットの材料がやはり上記のような分布の偏りをもったものとなる。これに対して、本実施形態では、各カソード41、ターゲット42単位で、成膜分布を均一化することで、同時スパッタの場合にも各ターゲット材料の分布を均一にし、組成が均等な成膜を実施可能である。なお、本実施形態においても、図7〜図9で説明したように、ターゲット材料に応じて制御パターンの変更を行ってもよい。これはターゲット材料によって、膜厚分布の偏りの傾向が異なってくるためである。
【0071】
[第4の実施形態]
また、図13及び14に示すように、同時に放電させるカソード同士の位置関係に応じて制御パターンの変更を行ってもよい。これは他のカソードにより形成される電界、電磁界の干渉によって、膜厚分布の偏りの傾向が異なってくるためである。図13は、コントローラ5の構成を示したブロック図であり、他は第1の実施形態の図3の構成と同じである。ターゲット材料情報取得部51cは、成膜時に選択されるターゲット材料の情報をユーザの入力や予め記憶するデータなどとして取得する。カソード位置取得部51fは、同時に放電させる複数のカソード41の組合せに基づいて相互の位置関係を取得する。制御パターン決定部51dは、例えば図8に示すようなテーブルを保持しており、ターゲット材料情報取得部51cにより取得したターゲット材料情報、及び、カソード位置取得部51fにより取得したカソードの位置関係に基づき、例えば、図14に示すようなテーブルを用いて制御パターンを決定する。
【0072】
図14に制御パターンの決定例を示す。図14の例によれば、ターゲット材料1を用い、図10に示したスパッタリング装置において隣接する位置のカソードと同時スパッタリングを行う場合(2行目、「カソード位置組合せ」=72°)、上記式(1)のA,B,αは、所定のA1,B1,α1に設定する。これにより、より組成が均一な膜を成膜できる。
【0073】
[第5の実施形態]
高周波電源を用いた高周波スパッタリングにおいても本発明を適用できる。つまり、基板の回転位置に応じ、スパッタ率が増減するように高周波電力を制御することで、膜厚分布改善の効果を得ることができる。
【0074】
これは、例えば、ベースとなる高周波電力の振幅を基板の回転位置に応じて変化させ、その高周波周期あたりの平均電力の大きさ(又は基板が所定回転区間あるときの平均電力の大きさ)を増減させることで、基板の回転位置に応じたスパッタ率に調整することができる。
【0075】
図15の例では、高周波電源(例えば、1MHz〜300MHz)を使用し、制御用信号出力部51bから制御用信号を高周波電源55へ出力し、電力調整部54を介して調整された高周波電力を整合回路53を介してカソード41へ供給するようにすることもできる。制御用信号は、振幅が基板の回転位置の正弦波関数となったものであり、カソードには基板の回転位置に応じ増減された高周波電力が投入される。
【0076】
[その他の実施形態]
なお、本発明は発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0077】
例えば、図1におけるカソード41(ターゲット42)の中心軸は基板21(基板ホルダ22)の中心軸と平行であるが、カソード41の中心軸を、カソード41の表面が基板21側を向く方向に傾斜させて配置することもできる。また、上記第1の部分と第2の部分間の膜厚の偏り防止は、上記第1の部分がカソード41側を移動するときの基板21の回転速度を上げ、上記第2の部分がカソード41側を移動するときの基板21の回転速度を下げることでも行うことができる。したがって、放電用の電力の制御と、基板21の回転速度の制御とを併用することで、膜厚分布の発生を抑制することもできる。例えば、放電用の電力と基板21の回転速度の両者を正弦波制御することができる。
【0078】
また、例えば、図10ではカソード41を基板ホルダ22に対して傾けて配置しているが、図16に示すように、カソード41(ターゲット42)の中心軸は基板21(基板ホルダ22)の中心軸と平行に配置してもよい。
【0079】
[製造可能な電子部品例]
図17は、本発明に係るスパッタリング装置を用いたスパッタリング方法を適用して形成可能な電子部品の例として、TMR素子を示す説明図である。ここで、TMR素子とは、磁気効果素子(TMR(Tunneling Magneto resistance:トンネル磁気抵抗効果)素子)である。
【0080】
図17に示すように、TMR素子110の基本層構成は、第2磁化固定層107、トンネルバリア層108及び磁化自由層109からなる磁気トンネルジャンクション部分(MTJ部分)を含む。例えば、第2磁化固定層107は強磁性材料、トンネルバリア層108は金属酸化物(酸化マグネシウム、アルミナなど)絶縁材料、および磁化自由層109は強磁性材料からなっている。
【0081】
TMR素子110は、トンネルバリア層108の両側の強磁性層の間に所要電圧を印加して一定電流を流した状態において、外部磁場を掛け、強磁性層の磁化の向きが平行で同じであるとき(「平行状態」という)、TMR素子の電気抵抗は最小になる。また、強磁性層の磁化の向きが平行で反対であるとき(「反平行状態」という)、TMR素子110の電気抵抗は最大になるという特性を有する。これら両側の強磁性層のうち、第2磁化固定層107は磁化を固定するとともに、磁化自由層109は書き込み用の外部磁場の印加により磁化方向が反転可能な状態に形成される。
【0082】
この第2磁化固定層107の成膜工程で、所定方向へ磁化するために上記基板側磁石30を用いてスパッタリング成膜を行う。この際、成膜中に、基板の回転位置に応じて投入電力を正弦波とする制御を行うことで、シート抵抗分布が均一な第2磁化固定層107を形成することが可能である。
【0083】
なお、第2磁化固定層107としては、例えば、Co、Fe、Niなどの強磁性材料を主成分として含み、これらに適宜Bなどの材料を添加したものを用いることができる。また、第2磁化固定層107のほか、第1磁化固定層、磁化自由層109などの成膜時も、基板側磁石30を用いて所定方向への磁化を行う。この場合にも、本発明を用いることで、シート抵抗分布の均一性に優れた膜を形成可能である。
【0084】
以上、本発明の好ましい実施形態を添付図面の参照により説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々な形態に変更可能である。
【0085】
本願は、2008年12月26日提出の日本国特許出願特願2008−333066と、2008年12月26日提出の日本国特許出願特願2008−333480と、を基礎として優先権を主張するものであり、その記載内容の全てを、ここに援用する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、カソードに高電圧を印加して基板ホルダとの間で放電を発生させ、カソードに取り付けられたターゲットをスパッタして基板上に成膜するスパッタリング装置、スパッタリング方法及び電子デバイスの製造方法に関する。詳しくは、基板をその処理面に沿って回転させながら成膜を行うスパッタリング装置、スパッタリング方法及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板の斜め上方にターゲットを支持するカソードをオフセット配置し、基板をその処理面に沿って回転させながら、斜め入射スパッタリングによりターゲット材料をスパッタして基板上に成膜するスパッタリング装置が知られている。
【0003】
これに関連する技術としては、例えば、基板を適度の速さで回転させると共に、基板の法線に対し、ターゲットの中心軸線の角度θを、15°≦θ≦45°の関係に保ったスパッタリング方法および装置が提案されている(特許文献1参照)。このスパッタリング装置によれば、ターゲットの径を基板と同等以下にしても、均一膜厚、膜質を生成できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−265263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の斜め入射スパッタリング技術を用いても、磁性膜を成膜する場合には、他の材料を成膜する場合に比べて、シート抵抗分布に偏りが生じる。ところが、面内分布(1σ)は1%未満という値を実現していたため、大きな問題にはならなかった。
【0006】
しかし近年、スパッタレート向上の要請が高まるに従って、放電電力の高電力化が試みられている。高電力で斜め入射スパッタにより磁性膜の成膜を行ったところ、シート抵抗分布の偏りが一層増大するという問題があった。また、複数のカソードを用い、複数のターゲットに対し同時スパッタリングを行う場合は、成膜分布の偏りが各ターゲット材料の分布の偏りにつながっていた。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、面内分布の均一性に優れた膜を成膜することができるようにし、優れた性能の電子デバイスを容易に製造することができるようにするスパッタリング技術を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のスパッタリング装置は、基板をその処理面の面方向に沿って回転可能に保持する基板ホルダと、前記基板の周囲に配設され、前記基板の処理面に磁場を形成する基板磁場形成手段と、前記基板の斜向かいの位置に配置され、放電用の電力が投入されるカソードと、前記基板の回転位置を検出する位置検出手段と、前記位置検出手段の検出した回転位置に応じて、前記カソードへ投入する電力を制御する電力制御手段と、を備える。
【0009】
また、本発明のスパッタリング方法は、基板をその処理面の面方向に沿って回転させ、その処理面に磁場を形成させつつ、前記基板の斜向かいの位置に配置されるカソードに、位置検出手段の検出した前記基板の回転位置に応じて、調整した電力を投入することで、成膜を実行する。
【0010】
また、本発明の電子デバイスの製造方法は、基板をその処理面の面方向に沿って回転させ、その処理面に磁場を形成させつつ、前記基板の斜向かいの位置に配置されるカソードに、位置検出手段の検出した前記基板の回転位置に応じて、調整した電力を投入することで、スパッタリング法により成膜する成膜ステップを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、膜厚や組成の面内分布の均一性に優れた膜を成膜することができ、優れた性能の電子デバイスを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施の形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
【図1】第1の実施形態のスパッタリング装置を模式的に示す概略断面図である。
【図2】基板側磁石が形成する磁界の一例を模式的に示す平面図である。
【図3】第1の実施形態のカソードユニット及びコントローラの構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態の放電用電力の正弦波制御マップを例示する図である。
【図5】一定の放電用電力を投入して磁性材料を成膜する比較例のスパッタリング装置を示す図である。
【図6A】本実施形態の基板上のシート抵抗分布(膜厚分布)を例示する図である。
【図6B】比較例の基板上のシート抵抗分布(膜厚分布)を例示する図である。
【図7】第2の実施形態のコントローラの構成を示すブロック図である。
【図8】ターゲット材料と制御パターンの対応を規定するテーブルを例示する図である。
【図9】図8の制御パターンを説明する図である。
【図10】第3実施形態のスパッタリング装置を模式的に示す概略断面図である。
【図11】第3の実施形態のスパッタリング装置を模式的に示す上面図である。
【図12】第3の実施形態のカソードユニット及びコントローラの構成を示すブロック図である。
【図13】第4の実施形態のコントローラの構成を示すブロック図である。
【図14】カソードの位置関係と制御パターンの対応を規定するテーブルを例示する図である。
【図15】第5の実施形態のスパッタリング装置の構成を示すブロック図である。
【図16】スパッタリング装置の別の構成例である。
【図17】本発明のスパッタリング方法を適用して製造可能な電子部品の例であるTMR素子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0014】
[第1の実施形態]
図1に示すように、本実施形態のスパッタリング装置は、処理空間を区画形成するチャンバ(反応容器)10を備えている。このチャンバ10には、その内部を所望の真空度まで真空排気可能な排気系として、ゲートバルブ等の不図示の主弁を介して排気ポンプ11が接続されている。
【0015】
チャンバ10内の処理空間の下部には、上面に円盤状の基板21を支持する円盤状の基板ホルダ22が設けられている。処理対象である基板21は、通常、ハンドリング・ロボット(図示せず)により、水平スロット(図示せず)を通じて基板ホルダ22上に運ばれる。基板ホルダ22は、円盤状の載置台(ステージ)であって、例えば、その上面に静電吸着により基板21を吸着支持するようになっている。基板ホルダ22は導電性部材により形成され、後述するカソード41との間で放電を発生させる電極としても機能する。
【0016】
この基板ホルダ22は、不図示の回転駆動機構に接続されて、その中心軸周りに回転可能に構成されており、載置面に吸着支持した基板21をその処理面に沿って回転させるものとなっている。また、基板ホルダ22の回転部又は回転駆動機構には、基板21の回転位置(基板ホルダ22の回転位置、後述する基板側磁石30により形成される磁界Mの回転位置)を検知する位置検出部(位置センサ)23が設けられている。この位置検出部23としては、例えばロータリーエンコーダを用いることができる。
【0017】
円盤状の基板ホルダ22の外径は基板21の外径よりも大きく設定され、この基板ホルダ22における基板21の周囲には、基板21の処理面に磁場を形成する基板磁場形成部が配設されている。この基板磁場形成部は、例えば図2に示すように、基板ホルダ22の載置面の周囲に、永久磁石からなる複数の磁石片31を基板ホルダ22の周方向に沿って等間隔で配設した基板側磁石30によって構成されている。すなわち、この基板側磁石30は、基板ホルダ22の載置面上において基板21と共に回転可能に設けられている。
【0018】
図2に示すように、上記基板側磁石30は、基板21の処理面に沿って、処理面内で一方向を向いた方向性を有する一様な磁場を形成する。図2の例では、ダイポールリングが用いられ、夫々異なる方向に磁化された複数の円弧状の磁石片31を環状に組合せて、上記一方向の磁場Mを形成するように構成されている。なお、基板側磁石30の構成はこれに限定されず、磁石が一体成形されているものでもよいし、基板ホルダ22とは別に設け、基板21の回転と同期して回転可能に構成してもよい。また、基板側磁石30は永久磁石に限るものではなく、電磁石を用いてもよい。
【0019】
図1に示されるように、基板21は、基板ホルダ22の載置面上に水平状態を保って保持されている。基板21としては、例えば、円板状のシリコンウェハ(SiO2基板)を用いるが、これに限定されるものではない。
【0020】
また、上記処理空間の基板ホルダ22の斜め上方には、ターゲット42を保持するカソード41を備えたカソードユニット40が配置されている。カソードユニット40は、カソード41の中心位置を基板21の中心軸から基板21の面方向へずらして、カソード41が基板21の斜め向かいの位置となるようにオフセット配置されている。
【0021】
カソードユニット40におけるカソード41の裏面側には、複数の永久磁石(カソード側磁石)を配置したマグネトロンが備えられ、カソード41の表面に取り付けられるターゲット42の表面側に磁界を形成するようになっている。マグネトロンは、例えば、カソード41の裏面側に永久磁石を縦横に配置した磁石アセンブリを構成し、ターゲット42の表面側にカスプ磁界を形成するように構成してもよい。
【0022】
カソードユニット40のカソード41の表面側には、板状のターゲット42が取り付けられる。すなわち、ターゲット42は、カソード41よりも処理空間側に設けられ、下方へ臨んで配置されている。ターゲット42の材料は、基板21上に成膜する膜の種類によって異なる。
【0023】
カソードユニット40には、カソード41に放電電圧を印加する放電用電源44が電気的に接続されている。放電用の電力は、高周波電力、DC電力、高周波電力とDC電力との重畳のいずれであっても構わない。
【0024】
さらに、カソードユニッ40のケーシングには、カソード41近傍に放電用の処理ガス(放電用ガス)を供給する放電用ガス導入系43が接続されている。放電用ガスとしては、例えば、Arなどの不活性ガスが使用される。カソード41は基板ホルダ22との間でプラズマ放電を発生し、カソードユニット40に取り付けられたターゲット42をスパッタリング可能である。
【0025】
また、カソードユニット40の前方には、基板21との間を開放又は遮断するためのシャッタ45が設けられており、本スパッタの前にターゲット42の表面の付着物を除去するためのプリスパッタが可能となっている。
【0026】
次に、図3を参照して、本実施形態のスパッタリング装置に備えられ、上述の各構成要素を制御するコントローラ5について説明する。図3は本実施形態におけるコントローラ5を示すブロック図である。
【0027】
本実施形態のコントローラ5は、図3に示すようなもので、例えば、一般的なコンピュータと各種のドライバを備えて構成される。そして、所定のプログラム又は上位装置の指令にしたがって成膜処理動作を実行する。具体的には、図1に示される放電用電源44、シャッタ45の駆動部、放電用ガス導入系43、排気ポンプ11、基板ホルダ22の回転駆動機構などに指令を出力する。その指令にしたがって放電時間、放電電力、ターゲット42の選択およびプロセス圧力などの各種プロセス条件がコントロールされる。また、チャンバ10内の圧力を計測する圧力計(図示せず)や、基板21の回転位置を検出する位置検出部23などのセンサの出力値も取得可能であり、装置の状態に応じた制御も可能である。
【0028】
コントローラ5は、図1及び図3に示すように、位置検出部23で検出した回転位置に応じて、成膜量を増減させるように、カソード41への投入電力を演算する投入電力値演算部51aと、演算した電力値に調整するための制御用信号(例えば、演算した大きさの電力値に応じた電圧や電流)を出力する制御用信号出力部51bと、を備える。コントローラ5は、基板21の回転位置と放電中のカソード41との位置関係に基づいて、基板21の回転位置に応じてカソード41に投入する電力を制御するための信号を出力する機能を有する。
【0029】
図3に示される電力制御部52は、制御用信号出力部51bから入力する制御用信号に基づき、放電用電源44の電力を増減させて、投入電力値演算部51aで演算した大きさの電力をカソード41へ出力する。したがって、カソード41は、基板21の回転位置に応じた放電用の電力を受けることになる。投入電力値は、例えば、図4に示されるような基板21の回転位置の正弦波関数とすることができ、基板21の回転位置とカソード41への投入電力と対応関係を予め図4に示されるようなマップとして定めておくことで投入電力値演算部51aが投入電力値を演算可能である。また、基板21の回転位置は、例えば、図2に示される磁界Mの方向と平行でかつ基板21の中心を通る線分を基準に定めることができる。
【0030】
次に、図1〜図3に示されるスパッタリング装置の作用と共に、このスパッタリング装置を用いて実施するスパッタリング方法について説明する。
【0031】
本発明に係るスパッタリング装置を用いたスパッタリング方法は、まず、基板ホルダ22上に処理対象である基板(ウェハ)21を設置する。基板21は、例えば、ハンドリング・ロボット(図示せず)を用いて、水平スロット(図示せず)を通じて基板ホルダ22上に運ばれる。
【0032】
次に、チャンバ10の内部を排気ポンプ11により所定の真空度まで排気する。さらに、チャンバ10の内部に放電用ガス導入系43からAr等の放電用ガスを導入する。
【0033】
この状態で、まず、カソードユニット40のターゲット42表面に磁界を形成し、放電用電力を供給して、基板ホルダ22との間でプラズマ放電を発生させる。ターゲット42としては、例えば、Co含有ターゲット、Fe含有ターゲット、Ni含有ターゲット等の磁性材料を含有するターゲットが挙げられる。また、同時スパッタリングの例としては、Co含有ターゲットとFe含有ターゲットの同時スパッタリングによるCoFe層の成膜、Fe含有ターゲットとNi含有ターゲットの同時スパッタリングによるNiFe層の成膜等の各種磁性異種材料、特に強磁性材料からなるターゲットを用いた同時スパッタリングが挙げられる。もちろん、磁性材料にBや,C,Pなどの反磁性材料を含有しているものを用いることもできる。
【0034】
その成膜の際、基板21の処理面に一方向へ向いた方向性を有する磁場を形成すると共に、基板21をその処理面に沿って回転させる。さらに、カソードユニット40の放電中、例えば回転速度が安定したころ、位置検出部23が基板21の回転位置を検出すると共に、位置検出部23が検出した回転位置に応じて、カソード41への投入電力を調整する。
【0035】
以下に、投入電力の制御についてさらに詳しく説明する。図4は、本発明に係るスパッタリング装置を用いたスパッタリング方法における投入電力の制御マップを示す説明図である。また、図5及び図6A,6Bは本実施形態の原理を説明するための図である。
【0036】
本発明に係るスパッタリング装置を用いたスパッタリング方法では、図4および下記式(1)に示すように、基板21の回転位置(回転角)θに対し、カソード41への投入電力Pが正弦波となるように、投入電力を制御する。
【0037】
P=A・sin(θ+α)+B・・・(1)
A=a・B・・・(2)
すなわち、コントローラ5は、上記式(1)に基づいて、基板21の回転角の正弦波関数として、カソード41へ投入する放電用電力を算出する。なお、θは0°≦θ≦360°である。また、Aは投入電力の振幅、αは位相角、Bは投入電力の振幅の中心値、aは投入電力の変動率である。
【0038】
上記式(1)中、振幅Aは、均一な成膜を実現可能な範囲で任意に設定することができる。例えば、上記式(2)のように中心値Bの値に応じて決定することができ、この場合、変動率aは0.1から0.4のような値とすることが好ましい。あまりに小さいと、本発明の効果が得にくく、あまりに大きいと、変速しない場合の偏りを打ち消すレベルを超えてしまいかえって均一性が悪化しやすい。
【0039】
図5は、本発明とは異なり、基板21の回転位置にかかわらず、一定の放電用の電力を投入して磁性材料(例えば、NiFe)を成膜した状態を比較例として示している。この比較例では、基板21の処理面内における磁場の形成状態と強く相関した特定の部分で膜厚が厚くなる。具体的には、基板側磁石30のN極側からS極側に向かって膜Dの厚みが徐々に薄くなる斜めの分布ができ、特にN−S極間の各磁極の周方向中央部Nc,Sc(図2参照)近傍の膜厚差が大きくなる。なお、図5中Otはターゲット42の中心である。
【0040】
また、基板側磁石30を設けない場合には、スパッタ粒子の飛散量は、ターゲット42に近い位置で多く、ターゲット42から離れると少ない。基板側磁石30を設けた場合には、この基本的な分布において変わらないものの、基板21の処理面における磁場の形成状態により、処理面内でスパッタ粒子を引きつけやすい部分(スパッタ粒子の飛散量が多い部分)とそうでない部分との差が生じるものと考えられる。
【0041】
したがって、コントローラ5は、上記斜めの分布形状に対して、基板21における磁場の形成状態によりスパッタリング粒子の飛散量が多い第1の部分が放電中のカソード41に近い位置にあるときに投入電力を第1の電力値に制御する。さらに、投入電力制御部52は、上記第1の部分よりもスパッタリング粒子の飛散量が少ない第2の部分が放電中のカソード41に近い位置にあるときにターゲットのスパッタ率が比較的大きくなるように、第1の電力値よりも高い第2の電力値に制御する。
【0042】
具体的には、コントローラ5は、膜厚が厚くなってしまう部分(上記例ではN極周方向中央Nc近傍)が放電中のカソードユニット40のターゲット42側に向いたときに基板21の投入電力を小さくしてスパッタ率を低下させ、飛散量の多い部分における成膜量を小さくする。さらに、投入電力制御部51は、膜厚の薄くなってしまう部分(上記例ではS極周方向中央Sc近傍)が上記ターゲット側に向いたときに投入電力を増大させてスパッタ率を大きくし成膜量を多くすることで分布形状の偏りを打ち消し合うことができる。
【0043】
このとき、一定速度で回転する基板ホルダ22のある1点が、最もカソード41に近い位置と、最もカソード41から遠い位置との間を回転に伴って移動することから、電力値がこの基板21の回転位置と放電中のカソード41との位置関係の変化に対応する正弦波となるように制御すると、プラズマの条件を安定に保つことができるので好ましい。
【0044】
なお、どの部分が第1の部分、第2の部分になるかは、カソード41と基板ホルダ22の位置関係、基板ホルダ22の回転速度、マグネトロンスパッタを行う場合はカソード41側に設けるマグネットの構成等によっても異なる。したがって、予め実験等により第1の部分と第2の部分を求めておき、それに応じた投入電力の制御を行う。この第1の部分と第2の部分を求める実験は、投入電力を一定にして成膜を行い、得られた膜の厚さ分布を測定することで行うことができる。
【0045】
図6A,Bは、基板21上のシート抵抗分布(膜厚分布)を示す説明図であって、図6Aは投入電力の正弦波制御を行った場合の基板21上のシート抵抗分布(実施形態)であり、図6Bは成膜中に投入電力を一定にした場合のシート抵抗分布(比較例)である。
【0046】
実施形態の成膜条件は、ターゲット材料がNiFe、成膜圧力0.05Pa、基板21の回転速度が60rpm、投入電力の振幅Aの変動率aが14%、投入電力の振幅の中心値Bが4kWである。比較例は、投入電力を4kWで一定とし、他の条件は実施形態と同一である。
【0047】
図6A,Bに示すように、実施形態では面内分布(1σ)が0.5%であったのに対し、比較例では3.1%となり、実施形態で面内分布の均一性が非常に優れていることが確認された。なお、図6Bにおいて、磁場方向は等高線と略直交する方向であり、N極側でシート抵抗が小さく(すなわち膜厚が厚い)、S極側でシート抵抗値が大きく(すなわち膜厚が小さい)なっている。なお、等高線は規格化されたシート抵抗値を示しており、その間隔は0.01である。
【0048】
ここで規格化したシート抵抗値Rnは、下記式(3)により表される。
【0049】
Rn=Rs/Rs,max・・・(3)
なお、式(3)中、Rsはシート抵抗値、Rs,maxはシート抵抗値の最大値である。
【0050】
本実施形態の投入電力制御は正弦波制御に限られず、2段階以上のステップで投入電力を切り替える制御を行うようにしてもよいし、上記第1の部分が上記カソードに近づくに従って徐々に投入電力を減少させて上記第1の電力にすると共に、上記第2の部分が上記カソードに近づくに従って徐々に投入電力を増加させて上記第2の電力とすることもできる。さらに、回転位置の一次関数や二次関数などを合成したりしてもよい。また、成膜の間中同じ正弦波制御を行ってもよいが、例えば、成膜の初期、中期、後期で投入電力の制御方法を変更してもよい。また、第1の部分と第2の部分のほかに第3部分を求めて、第1の部分と第2の部分とは異なる投入電力に設定するようにしてもよい。
【0051】
なお、基板の回転位置とは、特定位置に限定されたものでなく、範囲を有する基板の回転区間(回転位置範囲)を含む意味であり、例えば、基板の回転区間に応じてその間に投入される平均電力の大きさを制御するようにしてもよい。
【0052】
例えば、所定の大きさの直流電力や所定周波数の高周波電力を間欠供給させ、その投入長さやインターバルを基板の回転区間に応じて増減させたりしてもよい。
【0053】
[第2の実施形態]
また、図7〜図9に示すように、ターゲット材料に応じて制御パターンの変更を行ってもよい。これはターゲット材料によって、膜厚分布の偏りの傾向が異なってくるためである。
【0054】
図7は、コントローラ5のみを取り出して示した図であり、その他は第1の実施形態の図3の構成と同じである。ターゲット材料情報取得部51cは、成膜時に選択されるターゲット材料の情報をユーザの入力や予め記憶するデータなどとして取得する。制御パターン決定部51dは、例えば図8に示すようなテーブルを保持しており、ターゲット材料情報取得部51cにより取得したターゲット材料情報に基づき制御パターンを決定する。
【0055】
図9に制御パターンの例を示す。図9は本発明の方法を用いることなく成膜した場合にできる膜厚分布を示しており、図9に示す例では膜厚が厚くなる方向と磁場方向が一致している。この場合は、差角Δθ=0として、これに応じた位相αの値を設定する。基準位置をどこに取るかによるが、N極周方向中央部Ncのターゲット位置に対する位置を基板の回転位置θとすれば、N極周方向中央部Ncがターゲット位置に来たとき(θ=0°)で最も回転速度を大きくする場合、位相αは90°に設定される。
【0056】
しかし、成膜材料によっては、磁場方向と膜厚が厚くなる方向に差が生じる。この差を差角Δθとして予め実験等により明らかにしておき、これに応じた位相αを設定することで、膜種に応じて適切に膜厚分布の制御を行うことができる。例えば、上記と同様に膜厚が最も厚い部分がターゲット位置に来たときに最も回転速度を大きくするのであれば、例えば差角Δθ=30のとき、位相αを120°(差角の方向によっては60°)に設定する。
【0057】
同様に、変動率aなどもターゲット材料に応じて適切な値に設定することができる。
【0058】
[第3の実施形態]
図10及び図11を参照して、第3の実施形態のスパッタリング装置について説明する。図10は本実施形態のスパッタリング装置を模式的に示す概略断面図であり、図11のi−i断面を示している。また、図11は基板ホルダとカソードユニットとの配置関係を模式的に示す平面図である。なお、以下では、第1の実施形態の図1と同じ構成には同一の符号を付して示している。
【0059】
図10に示すように、本実施形態のスパッタリング装置1のチャンバ10にはガス注入口12が開口され、このガス注入口12にはチャンバ10の内部に反応性の処理ガス(反応性ガス)を導入する反応性ガス導入系13が接続されている。反応性ガス導入系13は、例えば、マスフローコントローラなどの自動流量制御器(不図示)を介して、ガスボンベ(不図示)が接続され、ガス注入口12から反応性ガスが所定の流量で導入される。この反応性ガス導入系13は、チャンバ10内で反応性スパッタリングを行う場合に、チャンバ10内に反応性ガスを供給する。
【0060】
また、上記処理空間の基板ホルダ22の斜め上方には、ターゲットを保持するカソードを備えたカソードユニット40が複数配置されている。すなわち、一つの基板ホルダ22に対して複数のカソードユニット40が設けられ、各カソードユニット40はチャンバ10の上壁部に傾斜した状態で取り付けられている。
【0061】
本実施形態では、チャンバ10の上壁部に5基のカソードユニット40(40a〜40e)が設けられているが、カソードユニット40の数はこれに限定されない。各カソードユニット40は、基板ホルダ22上の基板21の処理面に対して傾斜すると共に、基板21の中心軸から処理面の延長方向へ等間隔を隔ててずらして、基板21の斜め向かいの位置となるようにオフセット配置されている。具体的には、各カソードユニット40のカソード中心軸は、基板ホルダ22の回転軸とは外れて位置し、回転軸から所定の距離を隔てた同心円上に等間隔で配置されている。このように同一のチャンバ10内に複数のカソードユニット40を設けることにより、一つのチャンバ10内で積層体(スタック)の成膜が可能である。
【0062】
なお、基板21の径やターゲット径は特に限定されないが、基板21中心とカソード中心をオフセット配置させ、本実施形態のように基板21を回転させる場合には、ターゲットの径が基板21の径より小さくても均一な成膜が可能である。また、本実施形態では、5基のカソードユニット40が配置されているので、例えば、材料成分の異なる5種類のターゲットが取り付けられるが、これに限定されない。
【0063】
各カソードユニット40には、図1と同様に、カソードに放電電圧を印加する不図示の放電用電源が電気的に接続されている。放電用の電力は、高周波電力、DC電力、高周波電力とDC電力との重畳のいずれであっても構わない。また、複数のカソードユニット40に放電電圧を選択的に印加するが、各カソードユニット40に個別の放電用電源を接続してもよいし、共通電源として選択的に電力供給を行うスイッチ等の切り替え機構を備えるように構成しても構わない。
【0064】
また、各カソードユニット40の前方には、一部のカソードと基板ホルダ22との間を選択的に遮断するシャッタ45が設けられている。このシャッタ45を選択的に開放することにより複数のカソードユニット40の中から目的のターゲットを選択してスパッタリングを実行することができ、スパッタされている他のターゲットからのコンタミネーションを防止することができる。
【0065】
次に、図12を参照して、本実施形態のスパッタリング装置に搭載されるコントローラ5及びカソードユニット40について説明する。図12は本実施形態におけるコントローラ5及びカソードユニット40の構成を示すブロック図である。
【0066】
図12に示すコントローラ5は、図3と同様に、位置検出部23で検出した回転位置に応じて、成膜量を増減させるように、複数のカソード41夫々への投入電力を演算する投入電力値演算部51aと、複数のカソード41の夫々に対応して設けられ、演算した電力値に調整するための制御用信号(例えば、演算した大きさの電力値に応じた電圧や電流)を出力する制御用信号出力部51bと、を備える。
【0067】
また、カソードユニット40の電力制御部52は、制御用信号出力部51bから入力する制御用信号に基づき、放電用電源44の電力を増減させて、投入電力値演算部51aで演算した大きさの電力をカソード41へ出力する。これにより、カソード41は、基板21の回転位置に応じた放電用の電力を受けることになる。投入電力値は、例えば、図4に示したような基板21の回転位置の正弦波関数とすることができ、基板21の回転位置とカソード41への投入電力と対応関係を予め図4に示したようなマップとして定めておくことで投入電力値演算部51aが投入電力値を演算可能である。
【0068】
本実施形態のスパッタリング装置を用いて実施するスパッタリング方法については、複数のカソードユニット40のターゲット42表面に磁界を形成し、放電用電力を供給して、基板ホルダ22との間でプラズマ放電を発生させ、複数のターゲットを同時にスパッタリングする以外は第1の実施形態で説明した通りであり、本実施形態のスパッタリング装置の作用についても第1の実施形態(図5及び図6A,6B)で説明した通りである。
【0069】
すなわち、コントローラ5の投入電力値演算部51aは、基板の特定位置と各カソード41の設置位置が回転中心に対してなす角をθとして、各カソード41について演算し、上記式(1),(2)を適用して、各カソードへの投入電力値を演算する。
【0070】
ここで、図5で説明したように、基板側磁石30により形成される磁界は基板と同期して回転することから、基板を回転させてもスパッタ粒子の飛散量の偏りは解消できず、最終的な膜厚分布の差となってしまう。そして、本実施形態のように同時スパッタを行った場合、同時に放電させる複数のカソード41の位置関係によっては、膜厚自体は平均化されたものとなることもあるが、膜の組成は、各ターゲットの材料がやはり上記のような分布の偏りをもったものとなる。これに対して、本実施形態では、各カソード41、ターゲット42単位で、成膜分布を均一化することで、同時スパッタの場合にも各ターゲット材料の分布を均一にし、組成が均等な成膜を実施可能である。なお、本実施形態においても、図7〜図9で説明したように、ターゲット材料に応じて制御パターンの変更を行ってもよい。これはターゲット材料によって、膜厚分布の偏りの傾向が異なってくるためである。
【0071】
[第4の実施形態]
また、図13及び14に示すように、同時に放電させるカソード同士の位置関係に応じて制御パターンの変更を行ってもよい。これは他のカソードにより形成される電界、電磁界の干渉によって、膜厚分布の偏りの傾向が異なってくるためである。図13は、コントローラ5の構成を示したブロック図であり、他は第1の実施形態の図3の構成と同じである。ターゲット材料情報取得部51cは、成膜時に選択されるターゲット材料の情報をユーザの入力や予め記憶するデータなどとして取得する。カソード位置取得部51fは、同時に放電させる複数のカソード41の組合せに基づいて相互の位置関係を取得する。制御パターン決定部51dは、例えば図8に示すようなテーブルを保持しており、ターゲット材料情報取得部51cにより取得したターゲット材料情報、及び、カソード位置取得部51fにより取得したカソードの位置関係に基づき、例えば、図14に示すようなテーブルを用いて制御パターンを決定する。
【0072】
図14に制御パターンの決定例を示す。図14の例によれば、ターゲット材料1を用い、図10に示したスパッタリング装置において隣接する位置のカソードと同時スパッタリングを行う場合(2行目、「カソード位置組合せ」=72°)、上記式(1)のA,B,αは、所定のA1,B1,α1に設定する。これにより、より組成が均一な膜を成膜できる。
【0073】
[第5の実施形態]
高周波電源を用いた高周波スパッタリングにおいても本発明を適用できる。つまり、基板の回転位置に応じ、スパッタ率が増減するように高周波電力を制御することで、膜厚分布改善の効果を得ることができる。
【0074】
これは、例えば、ベースとなる高周波電力の振幅を基板の回転位置に応じて変化させ、その高周波周期あたりの平均電力の大きさ(又は基板が所定回転区間あるときの平均電力の大きさ)を増減させることで、基板の回転位置に応じたスパッタ率に調整することができる。
【0075】
図15の例では、高周波電源(例えば、1MHz〜300MHz)を使用し、制御用信号出力部51bから制御用信号を高周波電源55へ出力し、電力調整部54を介して調整された高周波電力を整合回路53を介してカソード41へ供給するようにすることもできる。制御用信号は、振幅が基板の回転位置の正弦波関数となったものであり、カソードには基板の回転位置に応じ増減された高周波電力が投入される。
【0076】
[その他の実施形態]
なお、本発明は発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0077】
例えば、図1におけるカソード41(ターゲット42)の中心軸は基板21(基板ホルダ22)の中心軸と平行であるが、カソード41の中心軸を、カソード41の表面が基板21側を向く方向に傾斜させて配置することもできる。また、上記第1の部分と第2の部分間の膜厚の偏り防止は、上記第1の部分がカソード41側を移動するときの基板21の回転速度を上げ、上記第2の部分がカソード41側を移動するときの基板21の回転速度を下げることでも行うことができる。したがって、放電用の電力の制御と、基板21の回転速度の制御とを併用することで、膜厚分布の発生を抑制することもできる。例えば、放電用の電力と基板21の回転速度の両者を正弦波制御することができる。
【0078】
また、例えば、図10ではカソード41を基板ホルダ22に対して傾けて配置しているが、図16に示すように、カソード41(ターゲット42)の中心軸は基板21(基板ホルダ22)の中心軸と平行に配置してもよい。
【0079】
[製造可能な電子部品例]
図17は、本発明に係るスパッタリング装置を用いたスパッタリング方法を適用して形成可能な電子部品の例として、TMR素子を示す説明図である。ここで、TMR素子とは、磁気効果素子(TMR(Tunneling Magneto resistance:トンネル磁気抵抗効果)素子)である。
【0080】
図17に示すように、TMR素子110の基本層構成は、第2磁化固定層107、トンネルバリア層108及び磁化自由層109からなる磁気トンネルジャンクション部分(MTJ部分)を含む。例えば、第2磁化固定層107は強磁性材料、トンネルバリア層108は金属酸化物(酸化マグネシウム、アルミナなど)絶縁材料、および磁化自由層109は強磁性材料からなっている。
【0081】
TMR素子110は、トンネルバリア層108の両側の強磁性層の間に所要電圧を印加して一定電流を流した状態において、外部磁場を掛け、強磁性層の磁化の向きが平行で同じであるとき(「平行状態」という)、TMR素子の電気抵抗は最小になる。また、強磁性層の磁化の向きが平行で反対であるとき(「反平行状態」という)、TMR素子110の電気抵抗は最大になるという特性を有する。これら両側の強磁性層のうち、第2磁化固定層107は磁化を固定するとともに、磁化自由層109は書き込み用の外部磁場の印加により磁化方向が反転可能な状態に形成される。
【0082】
この第2磁化固定層107の成膜工程で、所定方向へ磁化するために上記基板側磁石30を用いてスパッタリング成膜を行う。この際、成膜中に、基板の回転位置に応じて投入電力を正弦波とする制御を行うことで、シート抵抗分布が均一な第2磁化固定層107を形成することが可能である。
【0083】
なお、第2磁化固定層107としては、例えば、Co、Fe、Niなどの強磁性材料を主成分として含み、これらに適宜Bなどの材料を添加したものを用いることができる。また、第2磁化固定層107のほか、第1磁化固定層、磁化自由層109などの成膜時も、基板側磁石30を用いて所定方向への磁化を行う。この場合にも、本発明を用いることで、シート抵抗分布の均一性に優れた膜を形成可能である。
【0084】
以上、本発明の好ましい実施形態を添付図面の参照により説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々な形態に変更可能である。
【0085】
本願は、2008年12月26日提出の日本国特許出願特願2008−333066と、2008年12月26日提出の日本国特許出願特願2008−333480と、を基礎として優先権を主張するものであり、その記載内容の全てを、ここに援用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板をその処理面の面方向に沿って回転可能に保持する基板ホルダと、
前記基板の周囲に配設され、前記基板の処理面に磁場を形成する基板磁場形成手段と、
前記基板の斜向かいの位置に配置され、放電用の電力が投入されるカソードと、
前記基板の回転位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段の検出した回転位置に応じて、前記カソードへ投入する電力を制御する電力制御手段と、を備えることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
前記基板磁場形成手段は、前記基板と同期して回転可能であって、前記基板の処理面に沿って方向性を有する磁場を形成することを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記電力制御手段は、前記基板の特定の位置と、前記カソードとの位置関係に基づいて、電力を制御することを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記電力制御手段は、前記基板における磁場の形成状態によりスパッタリング粒子の飛散量が多い第1の部分が前記カソードに近い位置にあるときに第1の電力を投入し、前記第1の部分よりもスパッタリング粒子の飛散量が少ない第2の部分が前記カソードに近い位置にあるときに前記第1の電力よりも高い第2の電力を投入することを特徴とする請求項3に記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
前記電力制御手段は、前記第1の部分が前記カソードに近づくに従って徐々に投入電力を減少させて前記第1の電力にすると共に、前記第2の部分が前記カソードに近づくに従って徐々に投入電力を増加させて前記第2の電力とすることを特徴とする請求項4に記載のスパッタリング装置。
【請求項6】
前記電力制御手段は、電力値が前記基板の回転角の正弦波関数となるように、前記カソードに投入する電力を制御することを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項7】
基板をその処理面の面方向に沿って回転させ、その処理面に磁場を形成させつつ、前記基板の斜向かいの位置に配置されるカソードに、位置検出手段の検出した前記基板の回転位置に応じて、調整した電力を投入することで、成膜を実行することを特徴とするスパッタリング方法。
【請求項8】
磁性膜を成膜することを特徴とする請求項7に記載のスパッタリング方法。
【請求項9】
基板をその処理面の面方向に沿って回転させ、その処理面に磁場を形成させつつ、前記基板の斜向かいの位置に配置されるカソードに、位置検出手段の検出した前記基板の回転位置に応じて、調整した電力を投入することで、スパッタリング法により成膜する成膜ステップを有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記基板の斜向かいに位置し、放電用の電力が夫々投入される複数の前記カソードと、
前記複数のカソードに対応して夫々設けられ、前記位置検出手段の検出した回転位置に応じて、前記対応するカソードに投入する電力を制御する複数の前記電力制御手段と、
前記複数の電力制御手段を介して、前記複数のカソードへ放電用の電力を投入し、前記基板ホルダに保持される基板に対して同時スパッタリングによる成膜を実行させる成膜制御手段と、を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項11】
前記電力制御手段は、前記基板の特定の位置と、前記対応するカソードとの位置関係に応じて、電力を制御することを特徴とする請求項10に記載のスパッタリング装置。
【請求項12】
前記電力制御手段は、前記基板における磁場の形成状態によりスパッタリング粒子の飛散量が多い第1の部分が前記対応するカソードに近い位置にあるときに第1の電力を投入し、前記第1の部分よりもスパッタリング粒子の飛散量が少ない第2の部分が前記対応するカソードに近い位置にあるときに前記第1の電力よりも高い第2の電力を投入することを特徴とする請求項11に記載のスパッタリング装置。
【請求項13】
前記電力制御手段は、前記第1の部分が前記対応するカソードに近づくに従って徐々に投入電力を減少させて前記第1の電力にすると共に、前記第2の部分が前記対応するカソードに近づくに従って徐々に投入電力を増加させて前記第2の電力とすることを特徴とする請求項12に記載のスパッタリング装置。
【請求項14】
前記電力制御手段は、電力値が前記基板の回転角の正弦波関数となるように、前記対応するカソードに投入する電力を制御することを特徴とする請求項10に記載のスパッタリング装置。
【請求項15】
前記電力制御手段は、スパッタリング対象となるターゲット材料に応じて設定される制御パターンで、前記対応するカソードに投入する電力を調整することを特徴とする請求項10に記載のスパッタリング装置。
【請求項16】
前記電力制御手段は、前記対応するカソードと他の前記カソードとの位置関係に応じて設定される制御パターンで、前記対応するカソードに投入する電力を調整することを特徴とする請求項10に記載のスパッタリング装置。
【請求項17】
基板をその処理面の面方向に沿って回転させ、その処理面に磁場を形成させつつ、前記基板の斜向かいに位置しかつ異種材料からなるターゲットが配置される複数のカソードに、位置検出手段の検出した前記基板の回転位置に応じて、調整した電力を夫々投入することで、同時スパッタリングによる成膜を実行することを特徴とするスパッタリング方法。
【請求項18】
磁性膜を成膜することを特徴とする請求項17に記載のスパッタリング方法。
【請求項19】
基板をその処理面の面方向に沿って回転させ、その処理面に磁場を形成させつつ、前記基板の斜向かいに位置しかつ異種材料からなるターゲットが配置される複数のカソードに、位置検出手段の検出した前記基板の回転位置に応じて、調整した電力を夫々投入することで、同時スパッタリングによる成膜を実行する成膜ステップを有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項1】
基板をその処理面の面方向に沿って回転可能に保持する基板ホルダと、
前記基板の周囲に配設され、前記基板の処理面に磁場を形成する基板磁場形成手段と、
前記基板の斜向かいの位置に配置され、放電用の電力が投入されるカソードと、
前記基板の回転位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段の検出した回転位置に応じて、前記カソードへ投入する電力を制御する電力制御手段と、を備えることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
前記基板磁場形成手段は、前記基板と同期して回転可能であって、前記基板の処理面に沿って方向性を有する磁場を形成することを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記電力制御手段は、前記基板の特定の位置と、前記カソードとの位置関係に基づいて、電力を制御することを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記電力制御手段は、前記基板における磁場の形成状態によりスパッタリング粒子の飛散量が多い第1の部分が前記カソードに近い位置にあるときに第1の電力を投入し、前記第1の部分よりもスパッタリング粒子の飛散量が少ない第2の部分が前記カソードに近い位置にあるときに前記第1の電力よりも高い第2の電力を投入することを特徴とする請求項3に記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
前記電力制御手段は、前記第1の部分が前記カソードに近づくに従って徐々に投入電力を減少させて前記第1の電力にすると共に、前記第2の部分が前記カソードに近づくに従って徐々に投入電力を増加させて前記第2の電力とすることを特徴とする請求項4に記載のスパッタリング装置。
【請求項6】
前記電力制御手段は、電力値が前記基板の回転角の正弦波関数となるように、前記カソードに投入する電力を制御することを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項7】
基板をその処理面の面方向に沿って回転させ、その処理面に磁場を形成させつつ、前記基板の斜向かいの位置に配置されるカソードに、位置検出手段の検出した前記基板の回転位置に応じて、調整した電力を投入することで、成膜を実行することを特徴とするスパッタリング方法。
【請求項8】
磁性膜を成膜することを特徴とする請求項7に記載のスパッタリング方法。
【請求項9】
基板をその処理面の面方向に沿って回転させ、その処理面に磁場を形成させつつ、前記基板の斜向かいの位置に配置されるカソードに、位置検出手段の検出した前記基板の回転位置に応じて、調整した電力を投入することで、スパッタリング法により成膜する成膜ステップを有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記基板の斜向かいに位置し、放電用の電力が夫々投入される複数の前記カソードと、
前記複数のカソードに対応して夫々設けられ、前記位置検出手段の検出した回転位置に応じて、前記対応するカソードに投入する電力を制御する複数の前記電力制御手段と、
前記複数の電力制御手段を介して、前記複数のカソードへ放電用の電力を投入し、前記基板ホルダに保持される基板に対して同時スパッタリングによる成膜を実行させる成膜制御手段と、を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項11】
前記電力制御手段は、前記基板の特定の位置と、前記対応するカソードとの位置関係に応じて、電力を制御することを特徴とする請求項10に記載のスパッタリング装置。
【請求項12】
前記電力制御手段は、前記基板における磁場の形成状態によりスパッタリング粒子の飛散量が多い第1の部分が前記対応するカソードに近い位置にあるときに第1の電力を投入し、前記第1の部分よりもスパッタリング粒子の飛散量が少ない第2の部分が前記対応するカソードに近い位置にあるときに前記第1の電力よりも高い第2の電力を投入することを特徴とする請求項11に記載のスパッタリング装置。
【請求項13】
前記電力制御手段は、前記第1の部分が前記対応するカソードに近づくに従って徐々に投入電力を減少させて前記第1の電力にすると共に、前記第2の部分が前記対応するカソードに近づくに従って徐々に投入電力を増加させて前記第2の電力とすることを特徴とする請求項12に記載のスパッタリング装置。
【請求項14】
前記電力制御手段は、電力値が前記基板の回転角の正弦波関数となるように、前記対応するカソードに投入する電力を制御することを特徴とする請求項10に記載のスパッタリング装置。
【請求項15】
前記電力制御手段は、スパッタリング対象となるターゲット材料に応じて設定される制御パターンで、前記対応するカソードに投入する電力を調整することを特徴とする請求項10に記載のスパッタリング装置。
【請求項16】
前記電力制御手段は、前記対応するカソードと他の前記カソードとの位置関係に応じて設定される制御パターンで、前記対応するカソードに投入する電力を調整することを特徴とする請求項10に記載のスパッタリング装置。
【請求項17】
基板をその処理面の面方向に沿って回転させ、その処理面に磁場を形成させつつ、前記基板の斜向かいに位置しかつ異種材料からなるターゲットが配置される複数のカソードに、位置検出手段の検出した前記基板の回転位置に応じて、調整した電力を夫々投入することで、同時スパッタリングによる成膜を実行することを特徴とするスパッタリング方法。
【請求項18】
磁性膜を成膜することを特徴とする請求項17に記載のスパッタリング方法。
【請求項19】
基板をその処理面の面方向に沿って回転させ、その処理面に磁場を形成させつつ、前記基板の斜向かいに位置しかつ異種材料からなるターゲットが配置される複数のカソードに、位置検出手段の検出した前記基板の回転位置に応じて、調整した電力を夫々投入することで、同時スパッタリングによる成膜を実行する成膜ステップを有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図6A】
【図6B】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図6A】
【図6B】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−149104(P2011−149104A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97548(P2011−97548)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【分割の表示】特願2010−522884(P2010−522884)の分割
【原出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【分割の表示】特願2010−522884(P2010−522884)の分割
【原出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]