説明

スパッタ装置およびスパッタ方法

【課題】ターゲットの利用効率を向上させることができるスパッタ装置およびスパッタ方法を提供すること。
【解決手段】実施形態のスパッタ装置は、底面がウェハ基板と対向配置可能なターゲットと、ターゲットの上面に対向配置され、磁界を形成する磁石を含んだ磁界形成部と、ターゲットと磁界形成部との間隔を維持させつつ、磁界形成部にターゲットのウェハ基板と対向する面における中心点の周りを周回させながら、当該中心点から磁界形成部における所定の基準点までの距離を変化させる機構と、ウェハ基板を所定の位置に配置可能なウェハ保持部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、スパッタ装置およびスパッタ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェハ基板の表面に薄膜を形成する装置として、スパッタ装置が知られている。かかるスパッタ装置では、装置内において不活性ガスのイオンを薄膜の材料となるターゲットへ衝突させ、衝突のエネルギーによりターゲットから放出される材料の原子をウェハ基板の表面へ堆積させることにより薄膜を形成する。
【0003】
また、スパッタ装置の一種として、ターゲットを介してウェハ基板と対向する位置に磁石を設け、かかる磁石によってターゲットへのイオンの衝突を促進させることにより成膜速度を高めたマグネトロン方式のスパッタ装置がある。
【0004】
かかるマグネトロン方式のスパッタ装置では、磁石によって形成される磁界の強度にむらがあるため、イオンの衝突によって浸食されるターゲットの浸食速度は、ターゲットの部位によって異なる。
【0005】
そして、ターゲットは、局所的に浸食された部位の浸食量が一定量に達した場合、利用可能な部位が残っている状態であっても交換が必要になる。このことから、マグネトロン方式のスパッタ装置では、ターゲットの利用効率を向上させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−144409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ターゲットの利用効率を向上させることができるスパッタ装置およびスパッタ方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、スパッタ装置が提供される。スパッタ装置は、底面がウェハ基板と対向配置可能なターゲットと、前記ターゲットの上面に対向配置され、磁界を形成する磁石を含んだ磁界形成部と、前記ターゲットと前記磁界形成部との間隔を維持させつつ、前記磁界形成部に前記ターゲットの前記ウェハ基板と対向する面における中心点の周りを周回させながら、当該中心点から前記磁界形成部における所定の基準点までの距離を変化させる機構と、前記ウェハ基板を所定の位置に配置可能なウェハ保持部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態にかかるスパッタ装置を示す模式図。
【図2】第1の実施形態にかかるスパッタ装置の各駆動ユニットによって駆動される部材の形状、配置および動作を示す図。
【図3】第1の実施形態にかかるターゲットの底面に対するマグネット部の移動範囲を示す図。
【図4】第2の実施形態にかかるスパッタ装置を示す模式図。
【図5】第2の実施形態にかかるスパッタ装置の各駆動ユニットによって駆動される部材の動作を示す図。
【図6】第3の実施形態にかかるマグネット部の移動軌跡を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、添付図面を参照して、第1〜3の実施形態にかかるスパッタ装置およびスパッタ方法を詳細に説明する。なお、これらの実施形態によって本発明が限定されるものではない。図1は、第1の実施形態にかかるスパッタ装置1を示す模式図である。
【0011】
(第1の実施形態)
図1に示すように、スパッタ装置1は、処理チャンバ2と、真空制御部3と、ガス供給部4とを備えている。処理チャンバ2は、たとえば、シリコンウェハなどのウェハ基板Wに対してスパッタリング処理を行う処理室である。
【0012】
真空制御部3は、処理チャンバ2の内部から空気を吸引することによって処理チャンバ2内を減圧する真空ポンプである。ガス供給部4は、プラズマ発生用の不活性ガス(たとえば、アルゴンガス)を処理チャンバ2の内部へ導入する処理部である。
【0013】
また、スパッタ装置1は、処理チャンバ2の内部に処理対象のウェハ基板Wを保持するウェハ保持部(以下、「ペデスタル6」と記載する)を備える。ペデスタル6は、ウェハ基板Wが所定位置にセットされたシールド5を保持する。また、スパッタ装置1は、基板駆動ユニット8を備える。基板駆動ユニット8は、回転シャフト7を、回転軸Cを中心に回転させることでペデスタル6を回転させる。
【0014】
また、スパッタ装置1は、ウェハ基板Wの上面に対して底面を平行に対向配置可能なターゲット9と、ターゲット9を処理チャンバ2内部で保持するバックプレート10とを備える。
【0015】
ターゲット9は、円盤状であり、ウェハ基板Wの表面に成膜する薄膜の材料となる部材である。また、バックプレート10は、ターゲット9と径が同じ円盤状の部材である。なお、かかるターゲット9およびバックプレート10の径や形状はこれに限るものではない。
【0016】
ここで、かかるスパッタ装置1による薄膜の成膜手順について簡単に説明する。スパッタ装置1は、まず、真空制御部3によって処理チャンバ2の内部を所定の気圧まで減圧させる。続いて、スパッタ装置1は、ガス供給部4によって処理チャンバ2内へ不活性ガスを導入させる。
【0017】
続いて、スパッタ装置1は、ターゲット9とペデスタル6との間に所定の電圧を印加することによって不活性ガスをプラズマ化させ、プラズマ化したイオンをターゲット9の底面へ衝突させる。かかるイオンの衝突によってターゲット9の原子がターゲット9から弾き出される。そして、スパッタ装置1は、ターゲット9から弾き出された原子をウェハ基板Wの表面へ堆積させることによってウェハ基板Wの表面にターゲット9の原子からなる薄膜を成膜する。
【0018】
また、スパッタ装置1は、バックプレート10を介してターゲット9と対向する位置にマグネトロン装置20を備える。かかるマグネトロン装置20は、ターゲット9の底面に磁界を形成する装置である。そして、スパッタ装置1では、マグネトロン装置20によって磁界を形成することでターゲット9へ衝突するイオンの密度を高めることにより成膜速度を高めている。
【0019】
かかるマグネトロン装置20は、1個以上の磁石が固定された磁界形成部(以下、「マグネット部11」と記載する)と、マグネット駆動ユニット13と、ユニット支持板14と、支持板駆動ユニット16とを備える。
【0020】
マグネット部11は、円盤状の部材であり、バックプレート10を介してターゲット9と対向する位置に配置され、ターゲット9の底面に磁界を形成する。かかるマグネット部11は、上面の中心に立設された回転シャフト12によってマグネット駆動ユニット13に連結される。なお、かかるマグネット部11の径や形状はこれに限るものではない。
【0021】
マグネット駆動ユニット13は、第1軸である軸Aを中心に回転シャフト12を回転させることにより、マグネット部11の底面とターゲット9の底面とを平行に保ちつつ、軸Aを回転軸としてマグネット部11を自転させる。かかるマグネット駆動ユニット13は、ユニット支持板14によって支持される。
【0022】
ユニット支持板14は、円盤状の支持部材であり、下面の所定位置に取り付けられるマグネット駆動ユニット13を支持する。かかるユニット支持板14は、上面の中心に立設された回転シャフト15によって支持板駆動ユニット16に連結される。
【0023】
支持板駆動ユニット16は、第2軸である軸Bを中心に回転シャフト15を回転させることにより、ユニット支持板14の底面とターゲット9の底面とを平行に保ちつつ、軸Bを回転軸としてユニット支持板14を自転させる。
【0024】
また、スパッタ装置1は、マグネトロン装置20を支持する装置支持板17と、装置支持板17を駆動する装置駆動ユニット19とを備える。装置支持板17は、円盤状の支持部材であり、下面の所定位置に取り付けられる支持板駆動ユニット16を支持する。かかる装置支持板17は、上面の中心に立設された回転シャフト18によって装置駆動ユニット19に連結される。
【0025】
装置駆動ユニット19は、第3軸である軸Cを中心に回転シャフト18を回転させることにより、装置支持板17の底面とターゲット9の底面とを平行に保ちつつ、軸Cを回転軸として装置支持板17を自転させる。
【0026】
次に、図2を用いてスパッタ装置1の各駆動ユニットによって駆動される部材の形状、配置および動作について説明する。図2は、第1の実施形態にかかるスパッタ装置1の各駆動ユニットによって駆動される部材の形状、配置および動作を示す図である。なお、図2では、各駆動ユニットの図示を省略している。
【0027】
図2に示すように、スパッタ装置1では、ペデスタル6、シールド5、ターゲット9、バックプレート10および装置支持板17は、いずれも径が等しい。なお、かかる径は一例に過ぎず、各部の径は変更できる。
【0028】
また、スパッタ装置1では、ペデスタル6、シールド5、ターゲット9、バックプレート10および装置支持板17は、軸C上に各上下面の中心が位置するように配置される。さらに、ペデスタル6を回転する回転シャフト7および装置支持板17を回転する回転シャフト18は、軸Cを回転軸として回転するように配置される。
【0029】
シールド5は、上面の中心と外周との間に、円盤状のウェハ基板Wを嵌合可能な嵌合穴を備え、かかる嵌合穴内でウェハ基板Wを保持する。
【0030】
ユニット支持板14は、直径がターゲット9の半径と等しくなるように形成される。なお、かかる径は一例に過ぎない。そして、ユニット支持板14は、ターゲット9における底面の中心とターゲット9の外周との中点を通り、軸Cに平行な軸Bを回転軸として回転する位置に配置される。
【0031】
マグネット部11は、直径がユニット支持板14の半径と等しい。なお、かかる径は一例に過ぎない。そして、マグネット部11は、ユニット支持板14における底面の中心とユニット支持板14の外周との中点を通り、軸Bに平行な軸Aを回転軸として回転する位置に配置される。
【0032】
そして、スパッタ装置1では、マグネット部11、ユニット支持板14、装置支持板17、およびペデスタル6を同時に回転させる。このとき、スパッタ装置1では、マグネット部11の回転速度よりも遅い回転速度でユニット支持板14を回転させ、ユニット支持板14の回転速度よりも遅い回転速度で装置支持板17を回転させる。
【0033】
すなわち、スパッタ装置1では、マグネット部11、ユニット支持板14、装置支持板17、およびペデスタル6を同時に回転させることで、マグネット部11が、ターゲット9との距離を維持しつつ軸Aを回転軸として自転しながら軸Bの周りを公転し、さらに、軸Cの周りを公転する。
【0034】
このように、スパッタ装置1では、マグネット部11に連動連結される回転シャフト12、マグネット駆動ユニット13、ユニット支持板14、回転シャフト15、支持板駆動ユニット16、装置支持板17、回転シャフト18および装置駆動ユニット19を含む機構により、上記のようにターゲット9の上方でマグネット部11を移動させる。
【0035】
これにより、スパッタ装置1では、ターゲット9とマグネット部11との間隔を維持させつつ、ターゲット9のウェハ基板Wと対向する面における中心点からマグネット部11における所定の基準点(たとえば、マグネット部11における下面の中心点)までの距離を変化させることができる。したがって、スパッタ装置1は、ターゲット9との距離を維持させつつ、バックプレート10の上面と面する全領域を網羅するようにマグネット部11を移動させることができる。
【0036】
ここで、図3を用いてターゲット9の底面に対するマグネット部11の移動範囲について説明する。図3は、第1の実施形態にかかるターゲット9の底面に対するマグネット部11の移動範囲を示す図である。
【0037】
なお、図3(a)には、支持板駆動ユニット16によって移動するマグネット部11の移動範囲を示しており、図3(b)には、装置駆動ユニット19によって移動するマグネット部11の移動範囲を示している。また、図3(a)では、説明を簡略化する観点から軸Bを固定した場合におけるマグネット部11の移動範囲を示している。
【0038】
図3(a)に示すように、スパッタ装置1では、軸Aを回転軸としてマグネット部11を自転させながら(図3(a)における点線矢印参照)、支持板駆動ユニット16により軸Bを回転軸としてユニット支持板14を自転させる。
【0039】
その結果、マグネット部11は、位置11−1、11−2、11−3、11−4、11−5、11−6、11−7、11−8の順に移動しながら軸Bの周りを公転して位置11−1へ戻る。
【0040】
これにより、スパッタ装置1では、ターゲット9の底面におけるユニット支持板14と重なり合う全領域を網羅するようにターゲット9の上方でマグネット部11を移動させることができる。
【0041】
さらに、スパッタ装置1では、図3(b)に示すように、軸Bを回転軸としてユニット支持板14を自転させながら(図3(b)における一点鎖線矢印参照)、装置駆動ユニット19によって軸Cを回転軸として装置支持板17を自転させる。
【0042】
その結果、ユニット支持板14は、位置14−1、14−2、14−3、14−4、14−5、14−6、14−7、14−8の順に移動しながら軸Cの周りを公転して位置14−1へ戻る。
【0043】
このように、スパッタ装置1では、ターゲット9における底面の全領域を網羅するようにターゲット9の上方でユニット支持板14を移動させる。そして、前述したように、マグネット部11は、ターゲット9の底面におけるユニット支持板14と重なり合う全領域を網羅するようにターゲット9の上方を移動する。
【0044】
したがって、スパッタ装置1では、ターゲット9の底面全体を網羅するようにターゲット9の上方でマグネット部11を移動させることが可能となり、イオンが高密度に衝突する領域をターゲット9の底面における全領域にわたって移動させることができる。
【0045】
これにより、スパッタ装置1は、ターゲット9の底面全体に対して均一にイオンを衝突させて底面全体を均一に浸食させることによりターゲット9の利用効率を向上させることができる。
【0046】
さらに、スパッタ装置1では、ターゲット9から放出された原子がターゲット9の底面へ再付着した場合であっても、原子が再付着した部位へ高密度にイオンが衝突する期間が一定周期で訪れる。これにより、スパッタ装置1では、ターゲット9の底面に再付着した原子を定期的に除去されるので、成膜する薄膜上にパーティクルが生じることを防止することができる。
【0047】
図2の説明に戻り、各駆動ユニットによって駆動される部材の配置および動作の説明を続ける。スパッタ装置1では、ペデスタル6は、ウェハ基板Wの中心と第2軸である軸Bとが一致するように、ウェハ基板Wを配置可能に構成される。
【0048】
具体的には、スパッタ装置1は、基板駆動ユニット8によるペデスタル6の回転速度と、装置駆動ユニット19による装置支持板17の回転速度とが等しくなるようにペデスタル6および装置支持板17の回転を制御する。
【0049】
さらに、スパッタ装置1は、ユニット支持板14を回転する回転シャフト15の回転軸となる軸Bの延長線上にウェハ基板W表面の中心点が常に位置するようペデスタル6および装置支持板17の回転を制御する。
【0050】
すなわち、スパッタ装置1は、平面視における面積の等しいウェハ基板Wおよびユニット支持板14が常に対向した状態を維持させる。そして、前述したように、スパッタ装置1は、ターゲット9の底面におけるユニット支持板14と重なり合う全領域を網羅するようにターゲット9の上方でマグネット部11を移動させる。
【0051】
これにより、スパッタ装置1では、ターゲット9の底面におけるウェハ基板Wと面する領域からウェハ基板Wの表面へターゲット9の原子を均等に堆積させることが可能となり、均等な膜厚の薄膜を成膜することができる。
【0052】
上述したように、第1の実施形態にかかるスパッタ装置1は、底面がウェハ基板Wの上面に対向配置されたターゲット9と、ターゲット9の上面に対向配置され、磁界を形成する磁石を含んだマグネット部11と、ターゲット9とマグネット部11との間隔を維持させつつ、ターゲット9のウェハ基板Wと対向する面における中心点からマグネット部11における所定の基準点までの距離を変化させる機構とを備える。
【0053】
かかる構成により、スパッタ装置1は、ターゲット9の底面全体を網羅するようにターゲット9の上方でマグネット部11を移動させることができる。これにより、スパッタ装置1は、ターゲット9の底面全体に対して均一にイオンを衝突させて、ターゲット9の底面全体を均一に浸食させることによりターゲット9の利用効率を向上させることができる。
【0054】
また、スパッタ装置1は、マグネット部11にターゲット9のウェハ基板Wと対向する面における中心点の周りを周回させながら、ターゲット9のウェハ基板Wと対向する面における中心点からマグネット部11における所定の基準点までの距離を変化させる。
【0055】
これにより、スパッタ装置1は、ターゲット9における底面の各部位へ周期的に高密度なイオンを衝突させることができるため、ターゲット9の底面へ再付着した原子を周期的に除去することで成膜する薄膜にパーティクルが生じることを防止することができる。
【0056】
また、スパッタ装置1は、第1軸となるA軸を回転軸としてマグネット部11をターゲット9の上面に沿って回転させる第1回転機構(マグネット駆動ユニット13)と、第2軸となるB軸を回転軸として第1軸をターゲット9の上面に沿って回転させる第2回転機構(支持板駆動ユニット16)とを備える。
【0057】
さらに、スパッタ装置1は、ターゲット9のウェハ基板Wと対向する面における中心点を通り第2軸に対して平行な第3軸となるC軸を回転軸として第2軸をターゲット9の上面に沿って回転する第3回転機構(装置駆動ユニット19)とを備える。
【0058】
かかる構成により、スパッタ装置1は、マグネット部11の自転および公転の組み合わせによってターゲット9の底面と対向する任意の位置へマグネット部11を移動させることができる。
【0059】
したがって、スパッタ装置1によれば、ターゲット9の底面から定常的にイオンの衝突頻度が低い領域を排除することができるため、ターゲット9の底面全体を均一に浸食させることによりターゲット9の利用効率を向上させることができる。
【0060】
(第2の実施形態)
次に、図4を用いて第2の実施形態にかかるスパッタ装置1aについて説明する。図4は、第2の実施形態にかかるスパッタ装置1aを示す模式図である。なお、図4では、図1に示すスパッタ装置1と同様の構成要素に対して同一の符号を付している。
【0061】
図4に示すように、スパッタ装置1aは、マグネトロン装置20を固定した点、ターゲット駆動ユニット101を設けた点およびペデスタル60を固定した点が図1に示すスパッタ装置1と異なる。
【0062】
すなわち、スパッタ装置1aにおけるウェハ基板W、ターゲット9、バックプレート10、マグネット部11、回転シャフト12、マグネット駆動ユニット13、ユニット支持板14、回転シャフト15および支持板駆動ユニット16の形状および配置は、図1に示すものと同一である。また、図4に示す軸A、BおよびCの相対位置も図1に示すものと同一である。
【0063】
かかるスパッタ装置1aのターゲット駆動ユニット101は、バックプレート10の上面の中心に立設された回転シャフト100を駆動することにより、軸Cを回転軸としてバックプレート10およびターゲット9を回転させる。
【0064】
ここで、図5を用いてスパッタ装置1aの各駆動ユニットによって駆動される部材の動作について説明する。図5は、第2の実施形態にかかるスパッタ装置1aの各駆動ユニットによって駆動される部材の動作を示す図である。
【0065】
図5に示すように、スパッタ装置1aでは、マグネット部11は、軸Aを回転軸として自転しながら、ウェハ基板W表面の中心点を通る軸Bの周りを公転する。これにより、マグネット部11は、ターゲット9の底面におけるユニット支持板14と重なり合う全領域を網羅するようにターゲット9の上方を移動する。
【0066】
そして、ターゲット9は、ターゲット駆動ユニット101によって回転シャフト100が回転駆動されると、ユニット支持板14と重なり合う領域をずらしながら軸Cを回転軸として自転する。
【0067】
かかる動作によっても、スパッタ装置1aは、ターゲット9とマグネット部11との間隔を維持させつつ、ターゲット9のウェハ基板Wと対向する面における中心点からマグネット部11における所定の基準点までの距離を変化させることができる。
【0068】
このように、第2の実施形態にかかるスパッタ装置1aは、第1軸となるA軸を回転軸としてマグネット部11をターゲット9の上面に沿って回転させる第1回転機構(マグネット駆動ユニット13)と、第2軸となるB軸を回転軸として第1軸をターゲット9の上面に沿って回転させる第2回転機構(支持板駆動ユニット16)とを備える。
【0069】
さらに、スパッタ装置1aは、ターゲット9のウェハ基板Wと対向する面における中心点を通り第2軸に対して平行な第3軸となるC軸を回転軸としてターゲット9を回転する第3回転機構(ターゲット駆動ユニット101)を備える。
【0070】
かかる構成により、スパッタ装置1aは、マグネット部11の自転、公転およびターゲット9の自転の組み合わせによって、ターゲット9の底面の全領域を網羅するようにマグネット部11を移動させることができる。
【0071】
したがって、スパッタ装置1aは、図1に示したスパッタ装置1と同様に、ターゲット9の底面全体を均一に浸食させることでターゲット9の利用効率を向上させることができる。また、スパッタ装置1aは、図1に示したスパッタ装置1と同様に、ターゲット9の底面に再付着した原子を周期的に除去することができる。
【0072】
なお、上記した実施形態では、マグネット部11の移動領域の面積と、ターゲット9の底面積とが等しい場合について説明したが、マグネット部11の移動領域の面積をターゲット9の底面積よりも広くしてもよい。
【0073】
かかる場合、マグネット部11の上面に立設された回転シャフト12がユニット支持板14の底面における中心よりも外周に近い位置となるようにマグネット駆動ユニット13を取り付ける。
【0074】
また、第1の実施形態のスパッタ装置1の場合には、ユニット支持板14の上面に立設された回転シャフト15が装置支持板17の底面における中心よりも外周に近い位置となるように、支持板駆動ユニット16を取り付けてもよい。
【0075】
これにより、スパッタ装置1および1aでは、ターゲット9の底面における周縁部までを確実に網羅するようにマグネット部11をターゲット9の上方で移動させることができる。
【0076】
なお、上述した実施形態では、マグネット部11の自転および公転の軌道が全て円軌道の場合について説明したが、マグネット部11の自転および公転の軌道は楕円軌道など、円軌道以外の任意の軌道としてもよい。
【0077】
また、上述した実施形態では、マグネット部11がターゲット9のウェハ基板Wと対向する面における中心点の周りを周回移動する場合について説明したが、マグネット部11をターゲット9の上方で往復移動させてもよい。
【0078】
(第3の実施形態)
次に、図6を用いてマグネット部11をターゲット9の上方で往復移動させる第3の実施形態のスパッタ装置について説明する。図6は、第3の実施形態にかかるスパッタ装置によって移動させるマグネット部11の移動軌跡を示す図である。
【0079】
図6に示すように、第3の実施形態に係るスパッタ装置は、軸Aを回転軸としてマグネット部11を自転させつつ、ターゲット9の底面とマグネット部11との距離を一定に保ちながらターゲット9の上方を走査するように蛇行させてマグネット部11を往復移動させる。
【0080】
この場合、スパッタ装置は、ターゲット9の底面に対して平行に第1の方向へマグネット部11を移動させる機構と、ターゲット9の底面に対して平行に第1の方向と直交する第2の方向へマグネット部11を移動させる機構とを備える。
【0081】
かかる構成によっても、スパッタ装置は、ターゲット9の底面と対向する任意の位置へマグネット部11を移動させることが可能なため、ターゲット9の底面全体を均一に浸食させることでターゲット9の利用効率を向上させることができる。
【0082】
なお、上記した第1〜第3の実施形態では、薄膜の成膜中にターゲット9とユニット支持板14との相対位置を常時変化させる場合について説明したが、ターゲット9とユニット支持板14との相対位置を所定期間固定とし、周期的に変化させてもよい。
【0083】
たとえば、所定の成膜工程を行っている間、ターゲット9とユニット支持板14との相対位置を所定期間固定とし、工程が切り替わった場合に、ターゲット9とユニット支持板14との相対位置を変化させてもよい。
【0084】
また、予め定めた所定時間が経過するまでターゲット9とユニット支持板14との相対位置を固定とし、所定時間が経過した場合に、ターゲット9とユニット支持板14との相対位置を変化させてもよい。かかる構成によっても、ターゲット9とユニット支持板14との相対位置の変化を繰り返すことで、ターゲット9の底面全体を均一に浸食させることができる。
【0085】
また、第1〜第3の実施形態では、マグネット部11を自転させる場合について説明したが、マグネット部11を自転させずに、ターゲット9とユニット支持板14との相対位置を変化させても、ターゲット9の底面全体を均一に浸食させることが可能である。
【0086】
また、第1の実施形態に記載した技術と、第2の実施形態に記載した技術とを組み合わせ、軸Cを自転軸としてターゲット9を自転させつつ、軸Cを公転軸としてユニット支持板14を公転させるようにスパッタ装置を構成してもよい。かかる構成によっても、ターゲット9の底面全体を均一に浸食させることができる。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1、1a スパッタ装置、2 処理チャンバ、3 真空制御部、4 ガス供給部、5 シールド、6 ペデスタル、8 基板駆動ユニット、9 ターゲット、10 バックプレート、11 マグネット部、13 マグネット駆動ユニット、14 ユニット支持板、16 支持板駆動ユニット、17 装置支持板、19 装置駆動ユニット、20 マグネトロン装置、101 ターゲット駆動ユニット、7、12、15、18、100 回転シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面がウェハ基板と対向配置可能なターゲットと、
前記ターゲットの上面に対向配置され、磁界を形成する磁石を含んだ磁界形成部と、
前記ターゲットと前記磁界形成部との間隔を維持させつつ、前記磁界形成部に前記ターゲットの前記ウェハ基板と対向する面における中心点の周りを周回させながら、当該中心点から前記磁界形成部における所定の基準点までの距離を変化させる機構と、
前記ウェハ基板を所定の位置に配置可能なウェハ保持部と
を備えたことを特徴とするスパッタ装置。
【請求項2】
前記機構は、
第1軸を回転軸として前記磁界形成部を前記ターゲットの上面に沿って回転させる第1回転機構と、
第2軸を回転軸として前記第1軸を前記ターゲットの上面に沿って回転させる第2回転機構と、
前記中心点を通り前記第2軸に対して平行な第3軸を回転軸として前記第2軸を前記ターゲットの上面に沿って回転する第3回転機構と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のスパッタ装置。
【請求項3】
前記機構は、
第1軸を回転軸として前記磁界形成部を前記ターゲットの上面に沿って回転させる第1回転機構と、
第2軸を回転軸として前記第1軸を前記ターゲットの上面に沿って回転させる第2回転機構と
前記中心点を通り前記第2軸に対して平行な第3軸を回転軸として前記ターゲットを回転する第3回転機構と
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスパッタ装置。
【請求項4】
前記ウェハ保持部は、
前記ウェハ基板の中心と前記第2軸とが一致するように、前記ウェハ基板を配置可能とする
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のスパッタ装置。
【請求項5】
ターゲットの底面をウェハ基板に対向配置する工程と、
磁界を形成する磁石を含んだ磁界形成部を前記ターゲットの上面に対向配置する工程と、
前記ターゲットと前記磁界形成部との間隔を維持させつつ、前記磁界形成部に前記ターゲットの前記ウェハ基板と対向する面における中心点の周りを周回させながら、当該中心点から前記磁界形成部における所定の基準点までの距離を変化させ成膜処理を行う工程と
を含んだことを特徴とするスパッタ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−201919(P2012−201919A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66668(P2011−66668)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】