説明

スピロ化合物、それを含有する医薬組成物及び該化合物の中間体

下記式(I)


〔式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、塩素原子等を表し、nは1、2又は3を表し、破線を含む結合は単結合又は二重結合を表し、Aは−X−(CH−N(R)(R);下記式(a)


で表される基等を表し、ここにおいて、Xは酸素原子又はイオウ原子を表し、qは2又は3を表し、R及びRは、同一又は異なって、C1−6アルキル基等を表すか、あるいはR及びRは隣接する窒素原子と一緒になって、1個又は2個のC1−6アルキル等置換されてもよいピペリジン環等を形成していてもよく、RはC1−6アルキル基等を表し、Rは水素原子等を表し、r及びtはそれぞれ独立して1又は2を表す。〕で表されるスピロ化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩。該化合物は更年期症状の改善効果を有する選択的エストロゲン受容体モジュレーターとして有用であり、骨粗鬆症、更年期症状及び乳がんの予防薬及び/又は治療薬として期待できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、選択的エストロゲン受容体モジュレーターとして作用する新規なスピロ化合物、さらに詳しくはスピロ[インデン−1,1’−インダン]誘導体及びその類縁化合物、それを含有する医薬組成物及び該化合物の中間体に関する。
【背景技術】
女性の卵巣機能は閉経を中心とした前後数年の期間で急激に低下し、閉経後の血中のエストロゲン値は閉経前の1/10以下に低下する。したがって、閉経後女性は、このエストロゲン欠乏により、いわゆる更年期症状に加え、脂質代謝異常、動脈硬化性疾患、骨粗鬆症、記憶障害や認識障害などの症状が発現し易い。このような閉経後女性の様々な症状を改善するために、エストロゲンとプロゲスチンを併用するホルモン補充療法(以下、HRTと称す)あるいはエストロゲン補充療法(以下、ERTと称す)が行われている。
更年期症状の中心的愁訴であるホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)は、HRTやERTにより著明に改善する。また、骨粗鬆症の重篤度や頻度はこれらの補充療法により低下することが実証されている。更にこれらの補充療法は脂質代謝、心血管系及び精神神経系に対しても望ましい作用を有することが報告されている。しかし、HRTやERTでは、乳癌や子宮内膜癌の発生率が上昇することや、乳房痛、性器出血などの副作用が高頻度に発現することなどが問題となっている。
そこで、これらの副作用を軽減するために、HRTやERTで発現する多様なエストロゲン作用のうち、目的とする望ましい作用のみを持つ薬剤の開発が進められてきた。現在、塩酸ラロキシフェン([6−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゾ[b]チエン−3−イル][4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−メタノン塩酸塩)が骨粗鬆症の治療剤として、クエン酸タモキシフェン((Z)−2−[4−(1,2−ジフェニル−1−ブテニル)フェノキシ]−N,N−ジメチルエタンアミン クエン酸塩)が乳癌の予防・治療剤として臨床で用いられている。これらの薬剤は、標的臓器ごとにエストロゲン作用と抗エストロゲン作用を種々の割合と程度で発現するので、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(以下、SERMと称す)と呼ばれている。塩酸ラロキシフェンは骨や脂質代謝系に対してはエストロゲンアゴニストとして作用するが、子宮や乳房などの生殖器系に対してはエストロゲンアンタゴニストとして作用する。一方、クエン酸タモキシフェンも塩酸ラロキシフェンと同様に骨や脂質代謝系に対してはエストロゲンアゴニストとして作用し、乳房に対してはエストロゲンアンタゴニストとして働くが、子宮に対しては塩酸ラロキシフェンとは異なり、パーシャルアゴニストとして作用する。このような作用特性の違いは、それぞれの薬剤の化学構造に依存しており、これは化合物−受容体複合体の立体構造の違いに基づくものと考えられている。このことは、作用特性の異なる新規なSERMを創出しうることを意味する。
エストロゲン作用を期待する組織に対してはエストロゲンアゴニストとして作用し、同時にエストロゲン作用が好ましくない組織に対してはエストロゲンアンタゴニストとして作用するSERMが理想的である。すなわち、そのようなSERMを用いれば、乳癌や子宮内膜癌の発生を予防あるいは治療しつつ、エストロゲンの欠落症状を緩和することが可能となる。しかし、現在臨床で使用されているSERMは、そのような理想的なSERMとして十分満足できる薬剤ではない。すなわち、塩酸ラロキシフェンやクエン酸タモキシフェンは乳癌の発生率を低減させ、かつ閉経後骨粗鬆症に対する予防・治療効果及び脂質代謝改善作用を有するが、更年期症状の中心的愁訴であるホットフラッシュに対しては改善作用はなく、むしろ増悪することが知られている[Doren M,J.Endocrinol.Invest.,22,625(1999)]。
WO98/02151号公報には、下記式で表される化合物がケモカインレセプターアンタゴニストであり、異常型白血球の増大及び/又は活性化に関連した疾患の治療薬として有用であると記載されている。しかしながら、同文献にはSERMとしての有用性に関する記載は見当たらない。

〔式中、R50及びR51は独立して−OH、ハロゲン等であり、
52及びR53は独立して−H、脂肪族基、置換脂肪族基、ハロゲン、−NH、−NH(脂肪族基)、−NH(置換脂肪族基)、−N(脂肪族基)又は−N(置換脂肪族基)である。〕
WO02/46134号公報には、下記式で表される1,1’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−スピロビ(2H−インデン)誘導体がエストロゲン受容体リガンドであると記載されている。

〔式中、Rα及びRβは同一又は異なってヒドロキシル、R又はORから選ばれる基等であり、
は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール又はアリールアルキルから選ばれ、
但し、Rα及びRβは共にHであることはなく、RβがHであるときRαはOHではなく、Rαが水素であるときRβはOHではなく、
Xはメチレン基(−CH−)、エチレン基(−CHCH−)、又は置換メチレン基(−CRH−)であり、ここにおいてRはC1−4アルキル基であり、
は水素原子等であり、
、R、R5’、及びR6’は、同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシル基等である。〕
上記エストロゲン受容体リガンドは、インダンとインダンのそれぞれの2位において、又はインダンと1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンのそれぞれの2位においてスピロ結合を形成している化合物であり、化学構造が後記式(I)の化合物と異なる。
T.A.Blizzardら、Books of Abstracts 224th ACS National Meeting Boston,MA,August 18−22,2002,DIVISION OF MEDICINAL,CHEMISTRY,MEDI357(米国)には、下記化合物がSERMであると記載されている。

上記化合物は、インダンの2位においてスピロ結合を形成しており、さらにインダンのベンゼン環部分に2−ピペリジノエトキシ基があるので、後記式(I)の化合物とは化学構造が異なる。
また、2002年11月21日に上記化合物を包含するWO02/091993号公報が開示された。

〔式中、Xは独立してCH、C=O、C=CH、C=NOR、CHCH、CHF、CHOH、C(CH)OH、CF及びSからなる基から選ばれ;
、R、R、R、R、R、R、R及びR10はそれぞれ独立してR、OR等からなる基から選ばれ;
11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立してH、R、OR等からなる基から選ばれ;
はH、F及びC1−6アルキルからなる基から選ばれ;
はH、C1−6アルキル及びC1−6アシルからなる基から選ばれ;
はH、C1−6アルキル及びC1−6アシルからなる基から選ばれ、ここにおいて該アルキル及びアシル基はR基で置換されていてもよく;
はOR及びNRからなる基から選ばれ、
及びRはそれぞれ独立してRはH及びC1−7アルキルからなる基から選ばれるか;
あるいはR及びRはそれらと結合する窒素原子と一緒になって4−8員環を形成してもよく、ここにおいて該環は1個のO、NH、NCH及びSで割り込まれていてもよいと共に該環は1、2、3又は4個のC1−2アルキル基か1又は2個のR基で置換されていてもよく;
はCHOH及びCHCHOHからなる基から選ばれる。〕
【発明の開示】
本発明者らは、子宮や乳房などの生殖器系に対してはエストロゲンアンタゴニストとして作用し、かつ、脂質代謝や骨、心血管、脳に対してはエストロゲンアゴニストとして作用することにより、乳癌や子宮内膜癌の発生を予防あるいは治療しつつ、閉経後の脂質代謝異常や骨粗鬆症の予防や治療を可能にし、さらに、従来のSERMでは為し得なかった更年期症状の改善をも期待することができる、一層有用性の高いSERMを提供するべく鋭意研究を続けた結果、後記式(I)で表されるスピロ化合物がこの目的に合致することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 下記式(I)で表されるスピロ化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩。

〔式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子又はC1−6アルキル基を表し、
nは1、2又は3を表し、
破線を含む結合は単結合又は二重結合を表し、
Aは−(CH−N(R)(R);−X−(CH−N(R)(R);下記式(a)

で表される基;下記式(b)

で表される基又は下記式(c)

で表される基を表し、
ここにおいて、pは1、2又は3を表し、
Xは酸素原子又はイオウ原子を表し、
qは2又は3を表し、
及びRは、同一又は異なって、C1−6アルキル基又はフェニルC1−4アルキル基を表すか、あるいはR及びRは隣接する窒素原子と一緒になって、C1−6アルキル、フェニル及びベンジルから選ばれる1個又は2個の基でそれぞれ置換されてもよいピロリジン環、ピペリジン環、ホモピペリジン環、ピペラジン環又はモルホリン環を形成していてもよく、
はC1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基又はC3−8シクロアルキルC1−4アルキル基を表し、
は水素原子又はC1−4アルキル基を表し、
r、s及びtはそれぞれ独立して1又は2を表す。〕
[2] Aが−X−(CH−N(R)(R)(ここで、X、R、R及びqは上記[1]と同じものを表す。)である上記[1]記載の化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩。
[3] 下記式(1−1a)で表されるスピロ化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩。

(式中、R11及びR21は、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、
31及びR41は隣接する窒素原子と一緒になって、1個又は2個のメチル基でそれぞれ置換されてもよいピロリジン環、ピペリジン環又はホモピペリジン環を形成する。)
[4] 下記式(I−2a)で表されるスピロ化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩。

(式中、R11及びR21は、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、
31及びR41は隣接する窒素原子と一緒になって、1個又は2個のメチル基でそれぞれ置換されてもよいピロリジン環、ピペリジン環又はホモピベリジン環を形成する。)
[5] (1R,3S)−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]−1,1’−スピロビインダン−5,5’−ジオール、又はその製薬学的に許容される酸付加塩。
[6] 3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]−5,5’−ジオール、又はその製薬学的に許容される酸付加塩。
[7] (+)−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]−5,5’−ジオール及び(−)−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]−5,5’−ジオールから選ばれるいずれかの化合物、又はその製薬学的に許容される酸付加塩。
[8] 活性成分として上記[1]〜[7]のいずれか一に記載の化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩を含有する医薬組成物。
[9] 骨粗鬆症、更年期症状又は乳癌の予防及び/又は治療に用いられる、上記[8]に記載の医薬組成物。
[10] 骨粗鬆症、更年期症状又は乳癌の治療又は予防への上記[1]〜[7]のいずれか一に記載の化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩の使用。
[11] 上記[1]〜[7]のいずれか一に記載の化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩の有効量を骨粗鬆症、更年期症状又は乳癌の患者に投与することを含む、骨粗鬆症、更年期症状又は乳癌の治療又は予防方法。
[12] 上記[8]または[9]記載の医薬組成物、および該医薬組成物を骨粗鬆症、更年期症状又は乳癌の予防又は治療の用途に使用することができるか、あるいは使用すべきであることを記載した該医薬組成物に関する記載物を含む、商業用パッケージ。
[13] 下記式(II)で表されるスピロ化合物。

〔式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子又はC1−6アルキル基を表し、
nは1、2又は3を表し、
A’は−OH;−OCHCH=CH;−OSOCF;−(CH−N(R)(R);−X−(CH−N(R)(R);下記式(a)

で表される基;下記式(b)

で表される基又は下記式(c)

で表される基を表し、
ここにおいて、pは1、2又は3を表し、
Xは酸素原子又はイオウ原子を表し、
qは2又は3を表し、
及びRは、同一又は異なって、C1−6アルキル基又はフェニルC1−4アルキル基を表すか、あるいはR及びRは隣接する窒素原子と一緒になって、C1−6アルキル、フェニル及びベンジルから選ばれる1個又は2個の基でそれぞれ置換されてもよいピロリジン環、ピペリジン環、ホモピペリジン環、ピペラジン環又はモルホリン環を形成していてもよく、
はC1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基又はC3−8シクロアルキルC1−4アルキル基を表し、
は水素原子又はC1−4アルキル基を表し、
r、s及びtはそれぞれ独立して1又は2を表す。〕
[14] 下記式(III)で表されるスピロ化合物。

(式中、nは1、2又は3を表す。)
本発明は、SERMとして有用なスピロ化合物を提供することを目的とする。殊に本発明は、骨粗鬆症、更年期症状及び乳癌の予防及び/又は治療として有用性の高い化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、該化合物を含有する医薬組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、該化合物を製造するための中間体を提供することを目的とする。これらの目的及び他の目的及び利点は、当業者にとって以下に示す記載から明らかであろう。
発明の詳細な説明
本発明によれば下記式(I)で表されるスピロ化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩(以下、「本発明の化合物」と称することもある)が提供される。

〔式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子又はC1−6アルキル基を表し、
nは1、2又は3を表し、
破線を含む結合は単結合又は二重結合を表し、
Aは−(CH−N(R)(R);−X−(CH−N(R)(R);下記式(a)

で表される基;下記式(b)

で表される基又は下記式(c)

で表される基を表し、
ここにおいて、pは1、2又は3を表し、
Xは酸素原子又はイオウ原子を表し、
qは2又は3を表し、
及びRは、同一又は異なって、C1−6アルキル基又はフェニルC1−4アルキル基を表すか、あるいはR及びRは隣接する窒素原子と一緒になって、C1−6アルキル、フェニル及びベンジルから選ばれる1個又は2個の基でそれぞれ置換されてもよいピロリジン環、ピペリジン環、ホモピペリジン環、ピペラジン環又はモルホリン環を形成していてもよく、
はC1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基又はC3−8シクロアルキルC1−4アルキル基を表し、
は水素原子又はC1−4アルキル基を表し、
r、s及びtはそれぞれ独立して1又は2を表す。〕
式(I)で表される化合物の製薬学的に許容される酸付加塩とは、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩等の有機酸塩、グルタミン酸塩及びアスパラギン酸塩等のアミノ酸塩が挙げられる。
式(I)の化合物並びにその酸付加塩は、水和物及び/又は溶媒和物の形で存在することもあるので、これらの水和物及び/又は溶媒和物もまた本発明の化合物に包含される。
式(I)の化合物のスピロ炭素原子は不斉炭素原子である。そして、式(I)の化合物はさらに1個以上の不斉炭素原子を有している場合がある。また、式(I)の化合物は幾何異性を生じることがある。したがって、式(I)の化合物は、数種の立体異性体(例えば、光学活性体、ジアステレオ異性体など)として存在しうる。これらの立体異性体、それらの混合物及びラセミ体は本発明の化合物に包含される。
本発明の化合物は、インダン又はインデンの1位でスピロ結合を形成する化合物であるので、下記式に示すように位置番号が付与される。本明細書においてはこの位置番号に従って本発明の化合物を命名する。

(式中、nは1、2又は3を表す。)
本明細書における用語について以下に説明する。
「C1−6アルキル基」は直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよく、これらの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2−エチルブチル基及びこれらの均等物が挙げられる。「C1−4アルキル基」はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基又はtert−ブチル基を意味する。
「C3−8シクロアルキル基」の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基が挙げられる。
「C3−8シクロアルキルC1−4アルキル基」とは、「C3−8シクロアルキル基」で置換されている「C1−4アルキル基」を意味し、例えば、シクロプロピルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基及びこれらの均等物が挙げられる。
「フェニルC1−4アルキル基」とは、フェニル基で置換されている「C1−4アルキル基」を意味し、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基及びこれらの均等物が挙げられる。
「ホモピペリジン」の別名はヘキサメチレンイミン又はヘキサヒドロ−1H−アゼピンである。
破線を含む結合が単結合である式(I)の化合物とは、2位と3位の結合が単結合である下記式(I−1)

(式中、R、R、n及びAは前掲に同じものを表す。)
で表される化合物を意味し、破線を含む結合が二重結合である式(I)の化合物とは、2位と3位の結合が二重結合である下記式(I−2)

(式中、R、R、n及びAは前掲に同じものを表す。)
で表される化合物を意味する。破線を含む結合が二重結合である式(I)の化合物が好ましい。
本発明の化合物のうちで良好なSERMとしての作用を示す化合物は、式(I)においてAが−X−(CH−N(R)(R)又は下記式(a’)

で表される基であり、R、R、R、R、R、X、n、q及び破線を含む結合は前掲と同じものであるスピロ化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩が挙げられる。
式(I)においてAが−X−(CH−N(R)(R)であり、R、R、R、R、X、n、q及び破線を含む結合は前掲と同じものであるスピロ化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩は更に好ましい。
式(I)においてAが−O−(CH−N(R)(R)であり、nが1であり、R、R、R、R、q及び破線を含む結合は前掲と同じものであるスピロ化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩は更に好ましい。
本発明の化合物のうちで一層良好な化合物は、式(I)において、R及びRが、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、Aが−O−(CH−N(R30)(R40)であり、nが1であり、R30及びR40は、同一又は異なって、C1−6アルキル基を表すか、あるいはR30及びR40は隣接する窒素原子と一緒になって、1個又は2個のC1−3アルキルでそれぞれ置換されてもよいピロリジン環、ピペリジン環又はホモピペリジン環を形成していてもよく、破線を含む結合が単結合又は二重結合であるスピロ化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩が挙げられる。
特に好適な化合物は、下記式(I−1a)又は(I−2a)で表されるスピロ化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩が挙げられる。

(式中、R11及びR21は、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、
31及びR41は隣接する窒素原子と一緒になって、1個又は2個のメチル基でそれぞれ置換されてもよいピロリジン環、ピペリジン環又はホモピペリジン環を形成する。)

(式中、R11、R21、R31及びR41は前掲に同じものを表す。)
特に好適な化合物の具体例としては、例えば以下のスピロ化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩が挙げられる。
(1R,3S)−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]−1,1’−スピロビインダン−5,5’−ジオール(実施例36Aの化合物)、
3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]−5,5’−ジオール(実施例1の化合物)、
(+)−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]−5,5’−ジオール(実施例37の化合物)、及び
(−)−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]−5,5’−ジオール(実施例38の化合物)。
下記式(II)又は(III)で表されるスピロ化合物は中間体として有用である。

〔式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子又はC1−6アルキル基を表し、
nは1、2又は3を表し、
A’は−OH;−OCHCH=CH;−OSOCF;−(CH−N(R)(R);−X−(CH−N(R)(R);下記式(a)

で表される基;下記式(b)

で表される基又は下記式(c)

で表される基を表し、
ここにおいて、pは1、2又は3を表し、
Xは酸素原子又はイオウ原子を表し、
qは2又は3を表し、
及びRは、同一又は異なって、C1−6アルキル基又はフェニルC1−4アルキル基を表すか、あるいはR及びRは隣接する窒素原子と一緒になって、C1−6アルキル、フェニル及びベンジルから選ばれる1個又は2個の基でそれぞれ置換されてもよいピロリジン環、ピペリジン環、ホモピペリジン環、ピペラジン環又はモルホリン環を形成していてもよく、
はC1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基又はC3−8シクロアルキルC1−4アルキル基を表し、
は水素原子又はC1−4アルキル基を表し、
r、s及びtはそれぞれ独立して1又は2を表す。〕

(式中、nは1、2又は3を表す。)
式(I)の化合物は、例えば以下の製造法によって製造することができる。
製法(A1)
式(I)において破線を含む結合が単結合である化合物、すなわち、前記式(I−1)の化合物は、式(I)において破線を含む結合が二重結合である化合物、すなわち、前記式(I−2)の化合物に水素添加することにより製造できる。
水素添加反応は、適当な溶媒中で、触媒の存在下、式(I−2)の化合物と水素を常圧又は加圧下反応させることによって行われる。触媒としては、例えば、パラジウム炭素、水酸化パラジウム炭素、白金、ロジウム炭素などが挙げられる。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール類、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピペリドン、酢酸が挙げられる。反応温度は通常0℃〜60℃である。
本製法でジアステレオマーが生成する場合は、クロマトグラフィー、再結晶、再沈殿等の常法によりそれぞれ単離・精製する。
製法(A2)
式(I)において破線を含む結合が二重結合である化合物、すなわち、前記式(I−2)の化合物は、下記式(II−1)

(式中、R、R、n及びAは前掲に同じものを表す。)
で表される化合物を脱メチル化することにより製造できる。
この脱メチル化は、式(II−1)の化合物をリチウムジフェニルホスフィンと適当な溶媒中で反応させることにより行う。リチウムジフェニルホスフィンの代わりとして、三臭化ホウ素、ナトリウムエチルチオラート、ピリジン/塩酸錯体、エタンチオール/塩化アルミニウム等を用いることができる。使用する溶媒としては、例えば、ジメトキシエタン、ジグライム、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素等の有機ハロゲン類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピペリドンが挙げられる。これらの溶媒はそれぞれ単独で、或いは2種類以上の混合溶媒として用いられる。反応温度は通常0℃〜200℃で、好ましくは20℃〜100℃である。
中間体の製法(B1)
前記式(II−1)の化合物は、前記式(III)の化合物と、下記式(IV−1)

(式中、MはLi又はMgBrを表し、R、R及びAは前掲に同じものを表す。)
で表される化合物を適当な溶媒中で反応させ、続いて、酸触媒の存在下、適当な溶媒中で脱水反応させることにより製造することができる。
この反応の溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、1,2−ジクロロエタンを適宜用いることができる。これらの溶媒はそれぞれ単独で、或いは2種以上混合して用いられる。酸触媒としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸、塩酸が挙げられる。脱水反応は、通常0℃〜150℃、好ましくは80℃〜120℃で進行する。
式(IV−1)の化合物は、下記式(IV−2)

(式中、R、R及びAは前掲に同じものを表す。)
で表される化合物とアルキルリチウム類又は金属マグネシウムと反応させることにより製造することができる。アルキルリチウムとしては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムが挙げられる。
式(IV−2)の化合物とアルキルリチウムの反応、及び式(IV−1)の化合物と式(III)の化合物の反応は、通常−100℃〜120℃、好ましくは−80℃〜0℃で進行する。溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、ジエチルエーテルを適宜用いることができる。式(IV−2)の化合物と金属マグネシウムの反応はグリニャール反応の常法に従って行うことができる。具体例を実施例D〜Fに示す。
中間体の製法(B2)
前記式(III)の化合物は、市販あるいはそれ自体公知化合物である下記式(V)の化合物から、以下に示す方法によって製造することができる。

(式中、nは前掲に同じものを表す。)
工程1:上記式(VII)の化合物は、式(V)の化合物と式(VI)の化合物を、通常行われるグリニャール反応の反応条件で、反応させることにより製造できる。
式(VI)の化合物は、市販あるいはそれ自体公知化合物である2−(2−ブロモ−5−メトキシフェニル)−4,4−ジメチル−4,5−ジヒドロオキサゾールを原料として、J.Med.Chem.,19,1315(1976)及びJ.Org.Chem.,40,1427(1975)に記載の方法に準じて製造することができる。
工程2:上記式(VIII)の化合物は、式(VII)の化合物を適当な溶媒中、好ましくは1,4−ジオキサン、ジグライムのようなエーテル類の溶媒中で、硫酸水溶液と反応させることにより製造できる。
工程3:上記式(IX)の化合物は、前記製法(A1)と同様にして、式(VIII)の化合物に水素添加反応を行うことにより製造できる。
工程4:上記式(X)の化合物は、式(IX)の化合物を原料として、通常用いられるカルボン酸類からβ−ケトエステル類を製造する方法に従って、製造することができる。
工程5:上記式(XI)の化合物は、式(X)の化合物を原料とし、常法に従ってβ−ケトエステル類のα位をジアゾ化して製造することができる。
上記工程1〜5の具体例を後記参考例1及び参考例2に示す。
工程6:上記式(III)の化合物は、J.Amer.Chem.Soc.,107,196(1985)に記載の方法に準じて、式(XI)の化合物を酢酸ロジウム(II)と反応させることにより製造できる。具体例を実施例A〜Cに示す。
式(IV−2)の化合物は、市販されている化合物であるか、あるいは自体公知の方法、後記製法(C1)〜(C4)に記載の方法、又はこれらの方法に準じて製造することができる。
前記式(III)においてnが1である化合物は5,5’−ジメトキシスピロビ−1,1’−インダンをTetrahedron Lett.,28,3131(1987)に記載の方法に準じて酸化することによっても製造することができる。5,5’−ジメトキシスピロビ−1,1’−インダンはBull.Chem.Soc.Jpn.,44,496(1971)に記載の方法で製造することができる。
中間体の製法(B3)
式(II−1)において、Aが−O−(CH−N(R)(R)又は前記式(c)で表される基である化合物は、下記式(II−2)

(式中、R、R及びnは前掲に同じものを表す。)
で表される化合物と下記式(XII)

(式中、R、R及びqは前掲に同じものを表す。)
で表される化合物又は下記式(XIII)

(式中、R、R、r、s及びtは前掲に同じものを表す。)
で表される化合物を脱水縮合することにより製造することができる。
本脱水縮合は光延反応、すなわち、式(II−2)の化合物、式(XII)又は式(XIII)の化合物、トリフェニルホスフィン及びアゾジカルボン酸ジエステル類を反応させることによって達成される。本反応は、通常行われる光延反応の方法、あるいはこれに準じた方法で行うことができる。具体例を実施例L及び実施例Mに示す。
上記式(II−2)の化合物は、下記式(II−3)の化合物のアリル基を常法に従って除去することによって製造できる。具体例を実施例H及びKに示す。

(式中、nは前掲に同じものを表す。)
上記式(II−3)の化合物は、式(III)の化合物とp−アリルオキシブロモベンゼンを原料とし、中間体の製法(B1)に記載の方法に準じて製造することができる。具体例を実施例Gに示す。
式(XII)及び(XIII)の化合物は市販されているか、あるいは自体公知の方法で製造することができる。
中間体の製法(B4)
式(II−1)において、Aが前記式(a)で表される基である化合物は、下記式(II−4)

(式中、R、R及びnは前掲に同じものを表す。)
で表される化合物と下記式(XIV)

(式中、R、R、r及びtは前掲に同じものを表す。)
で表される化合物を反応させることにより製造することができる。
式(II−4)の化合物と式(XIV)の化合物の反応は、パラジウム触媒、リン配位子及び塩基存在下、無水条件下に行われる。使用する溶媒は、例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。パラジウム触媒としては、酢酸パラジウムあるいは塩化パラジウムを用い、リン配位子としては、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル、ジフェニルホスフィノフェロセン、2−(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル等を用いる。塩基としては、リン酸三カリウム、ナトリウムtert−ブトキシド、炭酸セシウムを用いることができる。反応温度は、通常60℃〜150℃である。
式(II−4)の化合物は、前記式(II−2)の化合物と、塩基の存在下、適当な溶媒中で2−[N,N−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミノ]−5−クロロピリジン、トリフルオロメタンスルホニルクロライド又は無水トリフルオロメタンスルホン酸と反応させることにより製造することができる。使用する塩基としては、例えば、水素化ナトリウム、トリエチルアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、ピリジン、2,6−ルチジンが挙げられる。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ジメトキシエタン、1,2−ジクロロエタン、アセトン、メチルエチルケトン、1,4−ジオキサン、ジグライム、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジンが挙げられる。反応温度は通常−100℃〜150℃で、好ましくは−20℃〜70℃である。具体例を実施例Nに示す。
式(XIV)の化合物は市販されているか、あるいは自体公知の方法で製造することができる。
式(IV−2)の化合物の製法(C1)
式(IV−2)において、Aが−X−(CH−N(R)(R)である化合物、すなわち、下記式(IV−2a)の化合物は、以下に示す方法によって製造することができる。

(式中、R、R、R、R、X及びqは前掲に同じものを表す。)
上記式(XV)の化合物と上記式(XVI)の化合物は、塩基存在下、適当な溶媒中で反応させる。塩基としては、例えば、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられ、溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、2−プロパノール等を適宜用いることができる。反応温度は通常0〜150℃で、好ましくは60〜120℃である。式(XV)及び式(XVI)の化合物は市販されているか、あるいは自体公知の方法により合成できる。
式(IV−2)の化合物の製法(C2)
式(IV−2)において、Aが−(CH−N(R)(R)である化合物、すなわち下記式(IV−2b)の化合物は、以下に示す方法によって製造することができる。

(式中、R、R、R、R及びpは前掲に同じものを表す。)
上記式(XIX)の化合物は、式(XVII)で表されるカルボン酸を脱水縮合剤存在下、式(XVIII)で表される二級アミン類と適当な溶媒中縮合させるか、あるいは、常法により式(XVII)の化合物を対応する酸クロリドへと変換後、塩基存在下、これと式(XVIII)の化合物と適当な溶媒中縮合反応させることにより製造できる。脱水縮合剤としては、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、N,N’−カルボニルジコハク酸イミド、1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン、ジフェニルホスホリルアジド、プロパンホスホン酸無水物、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロホスフェートを用いる。塩基としては、例えば、ピリジン、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等を用いる。溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、水、トルエン等を適宜用いることができる。反応温度は通常−50〜150℃で、好ましくは−10〜40℃である。
式(IV−2b)の化合物は、式(XIX)の化合物をテトラヒドロフラン中ボラン・テトラヒドロフラン錯体と反応させることにより製造できる。反応温度は通常−50〜150℃で、好ましくは0〜80℃である。
式(XVII)及び式(XVIII)の化合物は市販されているか、あるいは自体公知の方法で製造することができる。
式(IV−2)の化合物の製法(C3)
下記式(IV−2c)の化合物は、自体公知あるいはその製法に準じて得られる式(XX)の化合物及び式(XXI)の化合物を、製法(C2)に記載の方法に準じて、以下に示すルートで製造することができる。具体例を参考例3〜5に示す。

(式中、R’はC2−6アルキル基又はC3−8シクロアルキル基を表し、Yはヒドロキシル基又はハロゲン原子を表し、R、r及びtは前掲に同じものを表す。)
式(IV−2)の化合物の製法(C4)
下記式(IV−2d)の化合物は、下記式(XXV)の化合物をテトラヒドロフラン中ボラン・テトラヒドロフラン錯体と反応させることにより製造できる。式(XXV)の化合物は、自体公知あるいはその製法に準じて得られる式(XXIII)の化合物及び式(XXIV)の化合物を常法に従って反応させることにより製造することができる。具体例を参考例6及び7に示す。

(式中、R、R及びtは前掲に同じものを表す。)
前記各製法により生成する式(I)の化合物は、クロマトグラフィー、再結晶、再沈殿等の常法により単離・精製することができる。式(I)の化合物は、構造式中に存在する官能基の種類、原料化合物の選定、反応処理条件により、遊離塩基又は酸付加塩の形で得られるが、常法に従って式(I)の化合物に変換することができる。式(I)の化合物は、常法に従って各種の酸と処理することにより酸付加塩に導くことができる。また、式(I)の化合物の各種立体異性体は、クロマトグラフィー等の常法に従って分離・精製することができる。
前記各製法により生成する式(I−1)、式(I−2)、式(II−1)、式(II−2)、式(II−3)及び式(III)の化合物は、通常、ラセミ体として得られるので、光学活性カラムを用いたクロマトグラフィーによる光学分割方法、酸又は塩基の合成キラル分割剤による光学分割方法、優先晶出法、ジアステレオマー法等の常法に従って、それぞれの光学活性体へと分離・精製することができる。
以下に、本発明の代表的化合物についての薬理試験結果及び薬理作用について説明するが、本発明はこれらの試験例に限定されるものではない。
試験例1a 更年期症状(ホットフラッシュ様症状)に対する効果:
卵巣摘出ラットを用いて更年期症状に対する本発明の化合物の効果を検討した。卵巣摘出ラットは8週令のJcl:SD雌性ラット(日本クレア社製)の両側卵巣をエーテル麻酔下で摘出することにより作成した。動物は照明12時間(6:00〜18:00)、室温24±0.5℃の条件下で飼育し、固型飼料(CE−2、日本クレア社製)と水は自由に摂取させた。卵巣摘出2週間後のラットを以下の実験に供した。擬似手術群に用いるラットも卵巣摘出以外は同様に処置した。
卵巣摘出及び擬似手術2週間後のラットについて、それぞれ、尾部皮膚温を細野らの方法(Am.J.Physiol.Regulatory Integrative Comp.Physiol.280:R1341−R1347,2001)を参考に無麻酔にて測定した。つまり、ラット尾根部より5cmに温度センサ(SXK−67、タカラサーミスタ社製)を絆創膏(ニチバン社製)にて固定し、アルミ板で覆った。温度センサの他端はアンプ(E332、タカラサーミスタ社製)を介しフラクレット(大日本製薬社製)に接続し2時間測定ならびに解析した。結果は表1に示すとおりであり、卵巣摘出ラットが尾部にてホットフラッシュ様症状を示すことを確認した。

試験化合物を溶媒(10%シクロデキストリン水溶液)に溶解し、これを卵巣摘出ラットに1日1回2週間連続経口投与した。最終投与日に尾部皮膚温を前記方法と同様に測定した。結果を表2及び表3に示す。


表2に示す実施例1及び実施例36Aの化合物は、エストロゲン受容体アゴニストであるβ−エストラジオールと同様にホットフラッシュ様症状を改善した。また、表3で示すβ−エストラジオールと本発明の化合物の併用効果は、β−エストラジオール単独の効果と有意差がなかった。すなわち、実施例1及び実施例36Aの化合物は、ホットフラッシュ様症状に関与する組織に対するβ−エストラジオールの作用を阻害しなかった。
試験例1b 血清中の黄体化ホルモン(LH)量:
試験化合物を10%シクロデキストリン水溶液に溶解し、これを卵巣摘出ラットに1日1回2週間連続経口投与し、エーテル麻酔下で血液を採取した。血液試料を室温で1時間凝固させ、3000rpmで10分間遠心分離した後、血清を得た。ラットLHラジオイムノアッセイキット(イムノテック社製、フランス)を用いて血清中のLH量を測定した。結果を表4に示す。

表4に示す実施例1の化合物はβ−エストラジオールと同様に卵巣摘出によるLH量増加を有意に抑制した。すなわち、実施例1の化合物は更年期症状であるホットフラッシュ様症状に対しエストロゲンと同様に好ましい作用を示す。
試験例2 卵巣摘出ラットの大腿骨骨密度低下に対する効果:
13週令のJcl:SD雌性ラット(日本クレア社製)の両側卵巣をエーテル麻酔下で摘出あるいは擬似手術した後、翌日より10%シクロデキストリン水溶液に溶解した試験化合物を1日1回、4週間連続経口投与した(10匹/群)。最終投与の翌日に脱血により致死せしめ、左側大腿骨を摘出した。大腿骨骨幹端部の骨密度はpQCT[peripheral Quantitative Computed Tomography、XCT−960A)ノーランド・ストラテック(Norland・Stratec)社製]を用いて測定した。結果を表5(1)及び表5(2)に示す。


表5(1)及び表5(2)に示す実施例1及び実施例37の化合物はβ−エストラジオールと同様、卵巣摘除による骨密度の低下を有意に抑制した。
試験例3 ラットの血清コレステロール値に及ぼす効果:
試験化合物を10%シクロデキストリン水溶液に溶解し、7週令のJcl:SD雄性ラット(日本クレア社製)に1日1回4日間連続経口投与した。最終投与の翌日に採血し、血漿中のコレステロールを測定キット(コレステロールCII−テストワコー、和光純薬社製)を用いて測定した。結果を表6(1)及び表6(2)に示す。


表6(1)及び表6(2)に示す実施例1、24及び30の化合物は、β−エストラジオールよりも低用量で有意な血中コレステロール低下作用を示した。
試験例4 卵巣摘出ラットの子宮重量:
本発明の化合物の副作用を調べるために、卵巣摘出ならびに擬似手術ラットに、試験例1bと同様にして、試験化合物を連続経口投与した後、子宮を摘出してその重量を測定した。結果を表7及び表8に示す。


表7に示す実施例1の化合物は、β−エストラジオールと異なり、卵巣摘出ラットの子宮重量を有意に増加させない。また、表8に示すとおり、実施例1の化合物はβ−エストラジオールの子宮重量増加作用を有意に抑制した。すなわち、実施例1の化合物は子宮に係わる副作用を示さない。
以上の薬理試験から明らかなように、式(I)の化合物は、卵巣摘出ラットが示す更年期症状(ホットフラッシュ様症状)を改善し、卵巣摘出ラットの大腿骨骨密度低下を防ぎ、脂質低下作用を有し、そして卵巣摘出ラットの子宮重量に変化を起こさないので、エストロゲンが関与する疾患、例えば、更年期症状、骨粗鬆症、軟骨変性症、子宮内膜症、女性化乳房、肥満症、高脂血症、動脈硬化性疾患、失禁症、自己免疫疾患、乳癌、子宮内膜癌、結腸癌、肺癌、前立腺癌、記憶障害、認識障害、痴呆症などの予防及び/又は治療に有用である。特に、式(I)の化合物は、骨粗鬆症、更年期症状及び乳癌の予防薬及び/又は治療薬として期待できる。
式(I)の化合物の投与経路としては、経口投与又は非経口投与、直腸内投与、経皮投与のいずれでもよい。投与量としては、投与方法、患者の症状、患者の年齢、処置形式(予防又は治療)等により異なるが、通常0.01〜40mg/kg/日、好ましくは0.1〜20mg/kg/日である。
式(I)の化合物は通常、製剤用担体と混合して調製した医薬組成物の形で投与される。医薬組成物の担体としては、製剤分野において常用され、かつ式(I)の化合物と反応しない物質が用いられる。具体的には、例えば、乳糖、イノシトール、ブドウ糖、マンニトール、デキストラン、シクロデキストリン、ソルビトール、デンプン、部分アルファー化デンプン、白糖、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、イオン交換樹脂、メチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、カルボキシビニルポリマー、酸化チタン、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン、脂肪酸グリセリンエステル、精製ラノリン、グリセロゼラチン、ポリソルベート、マクロゴール、植物油、ロウ、プロピレングリコール、水、エタノール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO)、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩酸、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、クエン酸、グルタミン酸、ベンジルアルコール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、白色ワセリン、プラスチベース、サラシミツロウ、マクロゴール等が挙げられる。
剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、懸濁剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、貼付剤等が挙げられる。これらの製剤は常法に従って調製される。なお、液体製剤にあっては、用時、水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁する形であってもよい。また錠剤、顆粒剤は周知の方法でコーティングしてもよい。注射剤の場合には、式(I)の化合物を水に溶解させて調製されるが、必要に応じて等張化剤や溶解補助剤を用いて溶解させてもよく、またpH調節剤、緩衝剤や保存剤を添加してもよい。
これらの製剤は、式(I)の化合物を0.01%以上、好ましくは0.1〜70%の割合で含有することができる。これらの製剤はまた、治療上有効な他の成分を含有していてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に参考例及び実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。化合物は元素分析、水素核磁気共鳴吸収スペクトル(H−NMR)等により同定された。H−NMRのピークの帰属の記載においては、簡略化のために下記の略号を使用した。
J:結合定数、s:一重線、d:二重線、dd:二重の二重線、t:三重線、seq:七重線、m:多重線、br:幅広い線、brs:幅広い一重線、brd:幅広い二重線、brt:幅広い三重線。
参考例及び製造例において用いた塩基性シリカゲルカラムクロマトグラフィーは、富士シリシア化学社製のクロマトレックスNHである。
参考例1
5−メトキシ−2−(5−メトキシ−1−インダニル)安息香酸の製造:
(1)マグネシウム22.3gをテトラヒドロフラン400mLに懸濁し、そこへ2−(2−ブロモ−5−メトキシフェニル)−4,4−ジメチル−4,5−ジヒドロオキサゾール243gのテトラヒドロフラン(2L)溶液の1/10量を加えた。ヨウ素を少量入れ、反応液を加熱還流した。激しい反応の終了後,残りのオキサゾール溶液を加熱還流下1時間かけて加え、さらに滴下後2時間加熱還流した。これに氷冷下5−メトキシ−1−インダノン118gのテトラヒドロフラン(1L)溶液を0.5時間かけて滴下した。室温にて一昼夜攪拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液400mLを加えて撹拌した。有機相を分取した後、水、飽和食塩水で有機相を洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮し、油状物質を得た。
(2)上記油状物質を1,4−ジオキサン1L及び6mol/L硫酸500mLの混合物に懸濁し、6時間加熱還流した。減圧下濃縮し、残渣に酢酸エチル1L、ヘキサン500mL及び水1Lを加えて抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮し、油状物質を得た。
(3)前記油状物質を酢酸2Lに溶解し、20%水酸化パラジウム炭素50gを加え、室温下12時間水素添加した。反応液にクロロホルム600mLを加え析出結晶を溶解した後濾過した。ろ液は集めて減圧下濃縮し、残渣にエタノール300mLを加えて析出した結晶を濾取し、エタノール洗浄後、標記化合物135gを得た。
融点 180−181℃
参考例2
2−ジアゾ−3−[5−メトキシ−2−(5−メトキシ−1−インダニル)フェニル]−3−オキソプロパン酸エチルの製造:
(1)5−メトキシ−2−(5−メトキシ−1−インダニル)安息香酸83gをトルエン300mLに懸濁し、オキサリルクロリド33.2mLとジメチルホルムアミド0.1mLを加え、室温にて4時間攪拌した。反応液を減圧下濃縮し、油状物質を得た。
(2)20%ヘキサメチルジシラザンカリウム塩トルエン溶液789mLをテトラヒドロフラン700mLで希釈し、そこへ酢酸エチル68mLを−78℃にて1時間かけて滴下、さらに、同温にて1時間攪拌した。そこへ上記油状物質のテトラヒドロフラン(300mL)溶液を1時間かけて滴下、さらに、1時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液600mLを加え反応を終了させ、有機相を分離後、その有機相を水、飽和食塩水で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下濃縮し、油状物質を得た。
(3)前記油状物質とp−アセトアミノベンゼンスルホニルアジド80gをアセトニトリル600mLに溶解し、この溶液にトリエチルアミン92mLを1時間かけて加え、さらに室温下2時間攪拌した。反応混合物を濾過し、濾取した析出物を酢酸エチル25mL及びヘキサン25mLの混合溶媒で洗浄した。濾液と洗液を合わせて減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)に付し、標記化合物106gを得た。
融点 97−99℃
参考例3
1−(4−ブロモフェニル)−4−エチルピペラジンの製造:
(1)1−(4−ブロモフェニル)ピペラジン1.0gの酢酸エチル(20mL)溶液に水20mL及び炭酸水素ナトリウム0.6gを加えて激しく攪拌した。そこへ無水酢酸0.5mLを入れ,室温して2時間攪拌を継続した。有機相を分取し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。有機相を減圧下濃縮し、油状物質を得た。
(2)上記油状物質をテトラヒドロフラン5mLに溶解し、2.0Mボランメチルスルフィド錯体テトラヒドロフラン溶液4.5mLを加えて、室温にて一昼夜攪拌した。20%塩酸10mLを加えて1時間加熱還流した後、テトラヒドロフランを減圧で留去した。15%水酸化ナトリウム水溶液を反応液のpHが9になるまで加え、酢酸エチル20mLで抽出した。有機相を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)に付し、標記化合物0.86gを得た。
融点 84−85℃
参考例4〜5
対応する原料化合物を用い、参考例3と同様に反応・処理して、参考例4及び参考例5の化合物を得た。
(参考例4)
1−(4−ブロモフェニル)−4−プロピルピペラジン:
融点 86−87℃
(参考例5)
1−(4−ブロモフェニル)−4−イソブチルピペラジン:
融点95−97℃
参考例6
4−(4−ブロモフェニル)−1−エチルピペリジンの製造:
(1)(4−ブロモフェニル)−3,4,5−トリヒドロ−2H−ピラン−2,6−ジオン3.0gをトルエン30mLに懸濁し、これに70%エチルアミン水溶液1.0gを加えた。室温にて一昼夜攪拌した。反応液に酢酸エチル100mLを加え、10%塩酸20mL、飽和食塩水20mLで順次洗浄後、有機層を減圧下濃縮し、油状物質を得た。この油状物質をトルエン50mLに溶解し、p−トルエンスルホン酸0.2gを加えて、ディーン−スターク(Dean−Stark)装置を用いて15時間加熱還流した。反応溶液を水10mL、飽和食塩水20mLで順次洗浄後、減圧下濃縮し、油状物質を得た。
(2)上記油状物質2.6gをテトラヒドロフラン20mLに溶解し、10Mボランメチルスルフィド錯体テトラヒドロフラン溶液2.6mLを加えて、加熱還流下一昼夜攪拌した。20%塩酸10mLを加えた後6時間加熱還流し、テトラヒドロフランを減圧留去した。15%水酸化ナトリウム水溶液を反応液のpHが9になるまで加え、酢酸エチル20mLで抽出した。有機相を減圧下濃縮し、残渣を塩基性シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)に付し、標記化合物1.93gを得た。
融点 33−34℃
参考例7
4−(4−ブロモフェニル)−1−イソブチルピペリジンの製造:
対応する原料化合物を用い、参考例6と同様に反応・処理して、標記化合物を得た。
融点36−37℃
【実施例A】
5,5’−ジメトキシ−3−オキソスピロビ−1,1’−インダン(式(III)においてn=1である化合物)の製造:
2−ジアゾ−3−[5−メトキシ−2−(5−メトキシ−1−インダニル)フェニル]−3−オキソプロパン酸エチル106gのα,α,α−トリフルオロトルエン(700mL)溶液を激しく攪拌した酢酸ロジウム(II)水和物1.0gのα,α,α−トリフルオロトルエン(100mL)懸濁液へ60℃にて2時間かけて滴下した。滴下後さらに0.5時間同温にて攪拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)に付して油状物質を得た。この油状物質を90%ジメチルスルホキシド水溶液750mLに溶解し、150℃で1時間加熱した。放冷後、反応混合物を水1.5Lに加えて撹拌し、析出した結晶化を濾取した。結晶を水洗、ヘキサン洗浄したのち乾燥し、標記化合物65gを得た。
融点 94−96℃
【実施例B】
5,6’−ジメトキシ−3−オキソスピロ[インダン−1,1’−(1’,2’,3’,4’−テトラヒドロナフタレン)](式(III)においてn=2である化合物)の製造:
参考例1、参考例2及び実施例Aと同様の方法で、6−メトキシテトラロンから標記化合物を合成した。
H−NMR(300MHz,CDCl)δ 1.75−1.99(2H,m),2.02−2.28(2H,m),2.75−3.05(4H,m),3.75(3H,s),3.86(3H,s),7.0−7.2(3H,m),7.6−7.7(3H,m).
【実施例C】
5,7’−ジメトキシ−3−オキソスピロ[インダン−1,1’−(6’,7’,8’,9’−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン)](式(III)においてn=3である化合物)の製造:
参考例1、参考例2及び実施例Aと同様の方法で、7−メトキシスベレロンから標記化合物を合成した。
融点 143−145℃
【実施例D】
5,5’−ジメトキシ−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]の製造:
(1)1−ブロモ−4−(2−ピペリジノエトキシ)ベンゼン4.23gのテトラヒドロフラン(20mL)溶液を−78℃まで冷却し、これに1.6Mブチルリチウムヘキサン溶液9.3mLを加えた。同温にて0.5時間攪拌した後、5,5’−ジメトキシ−3−オキソスピロビ−1,1’−インダン2.0gのテトラヒドロフラン(10mL)溶液を加えた。1時間攪拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液20mLを加え、有機相を分取した。有機相を飽和食塩水で洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮し、油状物質を得た。
(2)上記油状物質をトルエン50mLに溶解し、これにp−トルエンスルホン酸3.9gを加えて0.5時間加熱還流した。放冷後、反応液を飽和食塩水で洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥した。有機相を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)に付し、標記化合物2.0gを油状物質として得た。
H−NMR(300MHz,CDCl)δ 1.4−1.7(6H,m),2.49(2H,t,J=6.6Hz),2.9−3.1(4H,m),2.81(2H,t,J=6.0Hz),3.1−3.4(2H,m),3.79(3H,s),3.82(3H,s),4.16(2H,t,J=6.6Hz),6.48(1H,s),6.5−6.6(2H,m),6.71(1H,dd,J=8.1,2.1Hz),6.89(1H,brs),6.97(2H,m),7.05−7.10(2H,m),7.54(2H,m).
【実施例E】
3−[4−(4−エチル−1−ピペラジニル)フェニル]−5,5’−ジメトキシスピロ[インデン−1,1’−インダン]の製造:
実施例Dの1−ブロモ−4−(2−ピペリジノエトキシ)ベンゼンの代わりに1−(4−ブロモフェニル)−4−エチルピペラジンを用い、実施例Dと同様に反応・処理して、標記化合物を得た。
H−NMR(300MHz,CDCl)δ 1.46(3H,t,J=6.9Hz),2.4−2.6(4H,m),2.63(4H,drt,J=5.1Hz),3.1−3.3(2H,m),3.29(4H,brt,J=5.1Hz),3.78(3H,s),3.82(3H,s),6.47(1H,s),6.5−6.6(2H,m),6.71(1H,dd,J=2.4,8.4Hz),6.88(1H,brs),7.00(2H,d,J=9.0Hz),7.06(1H,d,J=8.1Hz),7.11(1H,d,J=2.4Hz),7.52(2H,d,J=8.4Hz).
【実施例F】
3−[4−(4−イソブチル−1−ピペラジニル)フェニル]−5,5’−ジメトキシスピロ[インデン−1,1’−インダン]の製造:
実施例Dの1−ブロモ−4−(2−ピペリジノエトキシ)ベンゼンの代わりに4−(4−ブロモフェニル)−1−イソブチルピペラジンを用い、実施例Dと同様に反応・処理して、標記化合物を得た。
H−NMR(300MHz,CDCl)δ 0.93(6H,d,J=6.6Hz),1.7−1.9(4H,m),1.9−2.1(2H,m),2.12(2H,d,J=7.2Hz)2.50(2H,t,J=6.9Hz),2.52(1H,m),3.01(2H,brd,J=11.2Hz),3.6−3.8(2H,m),3.78(3H,s),3.82(3H,s),6.53(1H,s),6.5−6.6(2H,m),6.71(1H,dd,J=2.4,10.5Hz),6.88(1H,brs),7.07(2H,d,J=8.4Hz),7.11(1H,d,J=2.1Hz),7.31(2H,d,J=8.4Hz),7.55(2H,d,J=8.4Hz).
【実施例G】
(+)−3−(4−アリルオキシフェニル)−5,5’−ジメトキシスピロ[インデン−1,1’−インダン]及び(−)−3−(4−アリルオキシフェニル)−5,5’−ジメトキシスピロ[インデン−1,1’−インダン]の製造:
p−アリルオキシブロモベンゼン22.1gのテトラヒドロフラン(100mL)溶液の一部と少量のよう素をマグネシウム2.91gのテトラヒドロフラン(100mL)懸濁液に加え、攪拌した。激しい反応がおさまった後、残りのp−アリルオキシブロモベンゼン溶液を0.5時間かけて滴下、全量滴下後、さらに0.5時間攪拌した。そこへ5,5’−ジメトキシ−3−オキソスピロビ−1,1’−インダン15gのテトラヒドロフラン(50mL)溶液を室温にて滴下し、一昼夜攪拌した。飽和塩化アンモニウム溶液50mLを加えて攪拌した後、テトラヒドロフランを減圧留去した。残渣を酢酸エチル/水で抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。有機相は減圧濃縮し、油状物質を得た。この油状物質をトルエン150mLに溶解し、p−トルエンスルホン酸0.3gを加えて、ディーン−スターク(Dean−Stark)装置を付け2時間加熱還流した。放冷後、酢酸エチル/水で抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。有機相を減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)に付し、3−(4−アリルオキシフェニル)−5,5’−ジメトキシスピロ[インデン−1,1’−インダン](ラセミ化合物)16.2gを油状物質として得た。
上記ラセミ化合物11gを高速液体クロマトグラフィー(カラム;CHIRALCEL OJ、移動相;ヘキサン/2−プロパノール=50/50、流速;0.5mL/min)分離し、2種の標記光学活性化合物をそれぞれ光学純度99%以上で4.9gずつ得た[(+)−3−(4−アリルオキシフェニル)−5,5’−ジメトキシスピロ[インデン−1,1’−インダン]の保持時間17.27分、(−)−3−(4−アリルオキシフェニル)−5,5’−ジメトキシスピロ[インデン−1,1’−インダン]の保持時間32.39分]。
【実施例H】
(+)−3−(4−ヒドロキシフェニル)−5,5’−ジメトキシスピロ[インデン−1,1’−インダン]の製造:
(+)−3−(4−アリルオキシフェニル)−5,5’−ジメトキシスピロ[インデン−1,1’−インダン]0.5gをベンゼン10mLに溶解し、そこへ、酢酸パラジウム27mg、トリフェニルホスフィン0.12g及びギ酸1mLを加え、1時間加熱還流した。反応液を酢酸エチル/飽和炭酸水素ナトリウム溶液で抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)に付し、標記化合物0.43gを油状物質として得た。
[α]24+82.6°(c 1.34,CHCl
【実施例K】
(−)−3−(4−ヒドロキシフェニル)−5,5’−ジメトキシスピロ[インデン−1,1’−インダン]の製造:
実施例Hと同様に反応・処理して、(−)−3−(4−アリルオキシフェニル)−5,5’−ジメトキシスピロ[インデン−1,1’−インダン]から標記化合物を得た。
[α]24+82.4°(c 1.42,CHCl
【実施例L】
(+)−5,5’−ジメトキシ−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]
(+)−3−(4−ヒドロキシフェニル)−5,5’−ジメトキシスピロ[インデン−1,1’−インダン]0.41g、ピペリジンエタノール0.3g及びトリフェニルホスフィン0.61gを無水テトラヒドロフラン5mLに溶解し、氷冷下ジイソプロピルアゾジカルボキシレート0.46mLを徐々に加えた。室温にて一昼夜攪拌後、減圧濃縮し、残渣を塩基性シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)に付し、標記化合物0.41gを油状物質として得た。
[α]24+58.6°(c 0.56,CHCl
【実施例M】
(−)−5,5’−ジメトキシ−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]
実施例Lと同様に反応・処理して、(−)−3−(4−ヒドロキシフェニル)−5,5’−ジメトキシスピロ[インデン−1,1’−インダン]から標記化合物を合成した。
[α]24−58.8°(c 0.72,CHCl
【実施例N】
3−(4−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル)−5,5’−ジメトキシスピロ[インデン−1,1’−インダン]の製造:
(+)−3−(4−ヒドロキシフェニル)−5,5’−ジメトキシスピロ[インデン−1,1’−インダン]0.87gを無水ジメチルホルムアミドに溶解し、そこへ、60%水素化ナトリウム0.1gを加えて、室温下1時間攪拌した。さらに、2−[N,N−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミノ]−5−クロロピリジン1.0gを加え、一昼夜攪拌した。反応液を酢酸エチル/10%塩酸で抽出し、有機相は水、10%水酸化ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で順次洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)に付し、標記化合物1.0gを油状物質として得た。
H−NMR(300MHz,CDCl)δ 2.51(2H,t,J=7.5Hz),3.22(2H,m),3.79(3H,s),3.82(3H,s),6.5−6.6(3H,m),6.75(1H,dd,J=2.1,8.1Hz),6.90(1H,brs),7.01(1H,d,J=2.4Hz),7.11(1H,d,J=8.4Hz),7.34(2H,d,J=9.0Hz),7.68(2H,d,J=9.0Hz).
【実施例1】
3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]−5,5’−ジオール塩酸塩の製造:
ジフェニルホスフィン1.68mLをテトラヒドロフラン20mLに溶解し、氷冷した。そこへ1.6Mブチルリチウムヘキサン溶液6.0mLを加え、同温で0.5時間攪拌した。この反応溶液に5,5’−ジメトキシ−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]0.58gのテトラヒドロフラン(10mL)溶液を加え、20時間加熱還流した。放冷後、飽和塩化アンモニウム溶液20mLを加え、有機相を分取した。有機相を飽和食塩水で洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮し、得られた残渣を塩基性シリカカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)に付し、標記化合物0.37gを油状物質として得た。これを含水メタノールに溶解し、塩酸を加えた後、凍結乾燥し塩酸塩とした。
標記化合物のH−NMRデータを表9に示す。
【実施例2〜21】
対応する原料化合物を用い、実施例D及び実施例1と同様に反応・処理して、表9に示す実施例2〜21の化合物を得た。




【実施例22】
3−[4−(4−エチル−1−ピペラジニル)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]−5,5’−ジオール塩酸塩の製造:
3−[4−(4−エチル−1−ピペラジニル)フェニル]−5,5’−ジメトキシスピロ[インデン−1,1’−インダン]を用いて実施例1と同様に反応・処理し、標記化合物を得た。
標記化合物のH−NMRデータを表10に示す。
【実施例23〜29】
対応する原料化合物を用い、実施例22と同様にして、表10に示す実施例23〜29の化合物を得た。


【実施例30】
3−[4−(1−イソブチル−4−ピペリジニル)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]−5,5’−ジオール塩酸塩の製造:
3−[4−(4−イソブチル−1−ピペラジニル)フェニル]−5,5’−ジメトキシスピロ[インデン−1,1’−インダン]を用いて実施例1と同様に反応・処理し、標記化合物を得た。
標記化合物のH−NMRデータを表11に示す。
【実施例31〜35】
対応する原料化合物を用い、実施例30と同様にして、表11に示す実施例31〜35の化合物を得た。

【実施例36】
3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]−1,1’−スピロビインダン−5,5’−ジオール塩酸塩の製造:
3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]−5,5’−ジオール塩酸塩0.2gをエタノール3mL及び酢酸0.5mLの混合溶媒に溶解し、10%パラジウム炭素0.1g存在下室温にて水素添加(1気圧)を10時間行った。反応液を濾過し、濾取した10%パラジウム炭素を酢酸エチル20mLで洗浄した。濾液と洗液を合わせ減圧濃縮後、残渣を酢酸エチル20mLに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液10mL、飽和食塩水10mLで順次洗浄した。有機相を減圧濃縮し、標記化合物(2種のジアステレオマー混合物)を油状物質として得た。
【実施例36A】
(1R3S)−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]−1,1’−スピロビインダン−5,5’−ジオール塩酸塩の製造:
実施例36で得た油状物質を塩基性シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)に付し、標記化合物の遊離塩基0.17gを油状物質として得た。これを含水メタノールに溶解し、塩酸を加えた後、凍結乾燥により塩酸塩とした。
標記化合物の遊離塩基のH−NMR(300MHz,CDOD)δ 1.44(2H,m),1.6−1.7(4H,m),1.9−2.1(2H,m),2.40(1H,m),2.5−2.7(5H,m),2.77(2H,t,J=6.0Hz),2.87(2H,m),4.11(2H,t,J=6.0Hz),4.30(1H,dd,J=7.2,11.2Hz),6.24(1H,s),6.5−6.7(4H,m),6.82(1H,d,J=8.1Hz),6.89(2H,d,J=9.0Hz),7.16(2H,d,J=9.0Hz).
【実施例36B】
(1R,3R)−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]−1,1’−スピロビインダン−5,5’−ジオール塩酸塩の製造:
実施例36で得た油状物質を塩基性シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)に付し、標記化合物の遊離塩基0.01gを油状物質として得た。これを含水メタノールに溶解し、塩酸を加えた後、凍結乾燥により塩酸塩とした。
標記化合物の遊離塩基のH−NMR(300MHz,CDOD)δ 1.52(2H,m),1.6−2.0(4H,m),2.1−2.3(2H,m),2.49(1H,m),2.56(1H,dd,J=8.1,11.2Hz),2.87(2H,t,J=6.0Hz),3.05(2H,m),3.5−3.7(4H,m),4.33(2H,t,J=6.0Hz),4.41(1H,t,J=7.2Hz),6.38(1H,s),6.5−6.7(4H,m),6.79(1H,d,J=8.1Hz),6.85(2H,d,J=9.0Hz),7.07(2H,d,J=9.0Hz).
【実施例37】
(+)−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]−5,5’−ジオール塩酸塩の製造:
実施例1と同様に反応・処理して、(+)−5,5’−ジメトキシ−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]から標記化合物を合成した。
HPLC分析;保持時間19.73分(カラム;CHIRALCEL OJ、移動相;ヘキサン/エタノール/ジエチルアミン=80/20/1、流速;1.0mL/min)。
元素分析(1塩酸塩3/4水和物):理論値C:71.56;H:6.71;N:2.78;Cl;7.04:理論値C:71.64;H:6.65;N:2.83;Cl;7.05
[α]24+51.2°(c 0.41,MeOH)
【実施例38】
(−)−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]−5,5’−ジオール塩酸塩の製造:
実施例1と同様に反応・処理して、(−)−5,5’−ジメトキシ−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]から標記化合物を合成した。
HPLC分析;保持時間26.66分(カラム;CHIRALCEL OJ、移動相;ヘキサン/エタノール/ジエチルアミン=80/20/1、流速;1.0mL/min)。
[α]24−51.4°(c 0.52,MeOH)
【実施例39】
3−[4−((2S)−1−メチル−2−ピロリジニルメチルオキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]−5,5’−ジオール塩酸塩の製造:
(+)−3−(4−ヒドロキシフェニル)−5,5’−ジメトキシスピロ[インデン−1,1’−インダン]と(S)−N−メチルプロリノールを出発原料として、実施例L及び実施例1と同様に反応・処理して標記化合物を合成した。
H−NMR(300MHz,CDOD−d)δ 1.5−1.8(3H,m),1.9−2.1(2H,m),2.2−2.6(3H,m),2.37(3H,s),2.9−3.5(3H,m),3.86(1H,dd,J=6.0,9.0Hz),4.01(1H,dd,J=5.7,9.0Hz),6.29(1H,d,J=8.1Hz),6.40(1H,dd,J=1.8,8.6Hz),6.49(1H,s),6.53(1H,dd,J=2.1,8.1Hz),6.71(1H,s),6.8−6.9(2H,m),7.02(2H,d,J=8.4Hz),7.49(2H,d,J=8.4Hz),8.30(1H,s),9.16(1H,s),9.22(1H,s).
【実施例40】
(+)−3−[4−(4−エチル−1−ピペラジニル)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]−5,5’−ジオール2塩酸塩の製造:
(1)実施例Nで得られた3−[4−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−5,5’−ジメトキシスピロ[インデン−1,1’−インダン]0.5g、リン酸三カリウム0.3g、1−エチルピペラジン0.15mL、酢酸パラジウム16mg及び2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル45mgをフラスコに入れ、大気をアルゴン置換した。そこへ、無水1,4−ジオキサン4mLを入れ、80℃にて20時間加熱した。放冷後、反応液を濾過し、酢酸エチルで洗浄した。ろ液と洗液を合わせて、減圧濃縮し、残渣を塩基性シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)に付し、標記化合物0.28gを油状物質として得た。
(2)上記油状物質0.28g、ジフェニルホスフィン0.89g及びブチルリチウム3mLを実施例1と同様に反応・処理し、標記化合物0.22gを得た。
元素分析(1.95塩酸塩0.70水和物):理論値C:67.19;H:6.64;N:5.22;Cl;12.89:理論値C:67.27;H:6.58;N:5.13;Cl;12.80.
[α]24+46.7°(c 0.40,MeOH)
製剤例1 錠剤の製造:
3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]−5,5’−ジオール25g、乳糖60g、トウモロコシデンプン16g、結晶セルロース20g及びヒドロキシプロピルセルロース2.3gを常法により混和造粒乾燥後、軽質無水ケイ酸(0.6g)及びステアリン酸マグネシウム(1.1g)を加えた後、1錠あたり125mgで打錠し、1000錠を製する。
製剤例2 カプセル剤の製造:
3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]−5,5’−ジオール50g、乳糖117g、トウモロコシデンプン25g、ヒドロキシプロピルセルロース3.5g及び精製水100gを常法により混和造粒乾燥後、軽質無水ケイ酸1.8g及びステアリン酸マグネシウム2.7gを加えた後、顆粒200mgをカプセルに充填し、1000カプセルを製する。
製剤例3 散剤の製造:
3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]−5,5’−ジオール200g、乳糖770g、ヒドロキシプロピルセルロース25g及び軽質無水ケイ酸5gを常法により、上記成分を混合した後、散剤に製する。
【産業上の利用可能性】
以上で説明したように、式(I)の化合物は、既存のSERM同様に子宮や乳房などの生殖器系に対してはエストロゲンアンタゴニストとして作用し、かつ、脂質代謝や骨、心血管、脳に対してはエストロゲンアゴニスト作用を有する。さらに、式(I)の化合物は、更年期症状の改善効果が認められるので、既存のSERMより優れた骨粗鬆症及び更年期症状の予防薬及び/又は治療薬あるいは乳がんの予防薬及び/又は治療薬として期待できる。
本出願は、日本で出願された特願2002−289187を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるスピロ化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩。

〔式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子又はC1−6アルキル基を表し、
nは1、2又は3を表し、
破線を含む結合は単結合又は二重結合を表し、
Aは−(CH−N(R)(R);−X−(CH−N(R)(R);下記式(a)

で表される基;下記式(b)

で表される基又は下記式(c)

で表される基を表し、
ここにおいて、pは1、2又は3を表し、
Xは酸素原子又はイオウ原子を表し、
qは2又は3を表し、
及びRは、同一又は異なって、C1−6アルキル基又はフェニルC1−4アルキル基を表すか、あるいはR及びRは隣接する窒素原子と一緒になって、C1−6アルキル、フェニル及びベンジルから選ばれる1個又は2個の基でそれぞれ置換されてもよいピロリジン環、ピペリジン環、ホモピペリジン環、ピペラジン環又はモルホリン環を形成していてもよく、
はC1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基又はC3−8シクロアルキルC1−4アルキル基を表し、
は水素原子又はC1−4アルキル基を表し、
r、s及びtはそれぞれ独立して1又は2を表す。〕
【請求項2】
Aが−X−(CH−N(R)(R)(ここで、X、R、R及びqは請求の範囲1と同じものを表す。)である請求の範囲1の化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩。
【請求項3】
下記式(I−1a)で表されるスピロ化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩。

(式中、R11及びR21は、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、
31及びR41は隣接する窒素原子と一緒になって、1個又は2個のメチル基でそれぞれ置換されてもよいピロリジン環、ピペリジン環又はホモピペリジン環を形成する。)
【請求項4】
下記式(I−2a)で表されるスピロ化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩。

(式中、R11及びR21は、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、
31及びR41は隣接する窒素原子と一緒になって、1個又は2個のメチル基でそれぞれ置換されてもよいピロリジン環、ピペリジン環又はホモピペリジン環を形成する。)
【請求項5】
(1R,3S)−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]−1,1’−スピロビインダン−5,5’−ジオール、又はその製薬学的に許容される酸付加塩。
【請求項6】
3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]−5,5’−ジオール、又はその製薬学的に許容される酸付加塩。
【請求項7】
(+)−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]−5,5’−ジオール及び(−)−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)フェニル]スピロ[インデン−1,1’−インダン]−5,5’−ジオールから選ばれるいずれかの化合物、又はその製薬学的に許容される酸付加塩。
【請求項8】
活性成分として請求の範囲1〜7のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩を含有する医薬組成物。
【請求項9】
骨粗鬆症、更年期症状又は乳癌の予防及び/又は治療に用いられる、請求の範囲8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
骨粗鬆症、更年期症状又は乳癌の治療又は予防への請求の範囲1〜7のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩の使用。
【請求項11】
請求の範囲1〜7のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される酸付加塩の有効量を骨粗鬆症、更年期症状又は乳癌の患者に投与することを含む、骨粗鬆症、更年期症状又は乳癌の治療又は予防方法。
【請求項12】
請求の範囲8または9記載の医薬組成物、および該医薬組成物を骨粗鬆症、更年期症状又は乳癌の予防及び/又は治療の用途に使用することができるか、あるいは使用すべきであることを記載した、該医薬組成物に関する記載物を含む商業用パッケージ。
【請求項13】
下記式(II)で表されるスピロ化合物。

〔式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子又はC1−6アルキル基を表し、
nは1、2又は3を表し、
A’は−OH;−OCHCH=CH;−OSOCF;−(CH−N(R)(R);−X−(CH−N(R)(R);下記式(a)

で表される基;下記式(b)

で表される基又は下記式(c)

で表される基を表し、
ここにおいて、pは1、2又は3を表し、
Xは酸素原子又はイオウ原子を表し、
qは2又は3を表し、
及びRは、同一又は異なって、C1−6アルキル基又はフェニルC1−4アルキル基を表すか、あるいはR及びRは隣接する窒素原子と一緒になって、C1−6アルキル、フェニル及びベンジルから選ばれる1個又は2個の基でそれぞれ置換されてもよいピロリジン環、ピペリジン環、ホモピペリジン環、ピペラジン環又はモルホリン環を形成していてもよく、
はC1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基又はC3−8シクロアルキルC1−4アルキル基を表し、
は水素原子又はC1−4アルキル基を表し、
r、s及びtはそれぞれ独立して1又は2を表す。〕
【請求項14】
下記式(III)で表されるスピロ化合物。

(式中、nは1、2又は3を表す。)

【国際公開番号】WO2004/031125
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【発行日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541201(P2004−541201)
【国際出願番号】PCT/JP2003/004889
【国際出願日】平成15年4月17日(2003.4.17)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】