説明

スピンMOS電界効果トランジスタ

【課題】低電圧のスピン注入電流により高抵抗状態から低抵抗状態へ書き換えることができるスピンMOSFETを提供する。
【解決手段】pウエル2にはソース領域3及びドレイン領域4が形成されている。ソース領域3上には強磁性体層6が形成され、ドレイン領域4上には強磁性体層9が形成されている。強磁性体層9上には、非磁性体層10、第3強磁性体層11が形成されている。pウエル2上にはオーミック電極13が形成されている。強磁性体層6と強磁性体層11は磁化が不変とされ、強磁性体層9は磁化が可変とされる。さらに、強磁性体層11とオーミック電極13との間には、強磁性体層9を介して電流が流される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンMOS電界効果トランジスタに関し、例えばスピンMOS電界効果トランジスタの書き込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子のスピン自由度を利用したスピンエレクトロニクスデバイスの研究開発が盛んに行われている。トンネル磁気抵抗効果(TMR:Tunneling MagnetoResistance effect)を基礎とする研究が勢いを増しており、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM:Magnetic Random Access Memory)やハードディスクドライブ(HDD)の再生ヘッドなどに応用されるに至っている。
【0003】
また、磁性体とMOS電界効果トランジスタ(MOSFET)とを組み合わせたスピンMOS電界効果トランジスタ(以下、スピンMOSFET)(例えば、非特許文献1参照)によって、ANDゲートやORゲートなどの基本論理ゲートを構成し、磁性体の磁化状態を書き換えることにより、これらの基本論理ゲートを変更することができるリコンフィグラブル論理回路が提案されている。リコンフィグラブル論理回路では、ハードウエアを作製後に回路の論理を変更できるため、論理回路を再構成することにより、不具合の修正や学習機能が可能になる。
【0004】
現在の半導体技術を基にしたリコンフィグラブル論理回路として、FPGA(Field Programmable Gate Array)と呼ばれる集積回路がある。FPGAは、内部のSRAMメモリに情報を蓄え、このメモリに記憶された内容により、リコンフィグラブル論理回路の論理と結線とを制御することができる。このように、ソフトウエアで論理を変更できるため、ハードウエアを作製後に回路の修正が可能となる。複雑化する集積回路を短納期で安価に実現する手段として、近年急速に伸びている。
【0005】
スピンMOSFETはソース及びドレインに付加した磁性体の磁化状態により論理を記憶させておき、磁性体の磁化の向きを反転させることにより、論理状態を書き換えることができる素子である。スピンMOSFETのゲートに電圧を印加してソースとドレインの間が導通状態のときに、ソース及びドレインに付与した磁性体の磁化の向きが平行である平行状態の場合と、磁化の向きが反平行である反平行状態の場合とで磁性体間の抵抗値が異なる。平行状態と反平行状態のいずれかの状態で、ソースとドレインに付与した磁性体間の抵抗値が大きい方を高抵抗状態、小さい方を低抵抗状態とする。
【0006】
抵抗の変化率を磁気抵抗変化率MRとし、以下で定義する。
【0007】
MR=(高抵抗状態の抵抗値/低抵抗状態の抵抗値)−1
スピンMOSFETの書き換えは、ソースおよびドレインに付与した磁性体間にチャネルを通してスピン注入電流を流し、磁性体を磁化反転させることにより行う。磁化の向きはスピン注入電流の向きにより決まる。スピン注入電流による磁化反転電流は、高抵抗状態から低抵抗状態への磁化反転電流I(高から低)と、低抵抗状態から高抵抗状態への磁化反転電流I(低から高)の比iを以下で定義する。
【0008】
=I(低から高)/I(高から低)
また、高抵抗状態から低抵抗状態への磁化反転電圧V(高から低)と、低抵抗状態から高抵抗状態への磁化反転電圧(低から高)の比Vを以下で定義する。
【0009】
=V(高から低)/V(低から高)
は、iとMRを用いて以下であらわせる。
【0010】
=(1+MR)/i
磁性体にスピン偏極率の高い材料、もしくは磁性体と半導体の間にスピンフィルターとなるトンネルバリア層を挿入したスピンMOSFETでは、MRを1000%以上の大きな値にすることができる。一方、MRが高いスピンMOSFETにおいても、iは0.5から2程度の値である。そのため、MRが大きなスピンMOSFETでは、vが大きな値となる。つまり、高抵抗状態から低抵抗状態への磁化反転電圧V(高から低)が、低抵抗状態から高抵抗状態への磁化反転電圧(低から高)に比べて非常に大きくなる。例えばV(低から高)=1V、MR=1000%、i=2の場合、V(高から低)=5.5Vとなる。
【0011】
従って、高抵抗状態から低抵抗状態への書き換えには、高電圧が必要になる。高電圧をスピンMOSFET素子に印加する場合、昇圧回路などの余分な回路が必要になり、集積化が難しくなるという課題がある。また、高電圧を印加する場合は、消費電力が大きくなり、発熱量が増えるために集積化が難しくなるという課題がある。
【非特許文献1】ACM Transactions on Storage, Vol. 2, No. 2, 2006, pp. 197-219
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、低電圧のスピン注入電流により高抵抗状態から低抵抗状態へ書き換えることができるスピンMOSFETを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施態様のスピンMOS電界効果トランジスタは、半導体領域に形成されたソース領域及びドレイン領域と、前記ソース領域あるいは前記ドレイン領域のいずれか一方上に形成された第1強磁性体層と、前記ソース領域あるいは前記ドレイン領域のいずれか他方上に形成された第2強磁性体層と、前記第2強磁性体層上に形成された非磁性体層と、前記非磁性体層上に形成された第3強磁性体層と、前記半導体領域上に形成されたオーミック電極とを具備し、前記第1強磁性体層と前記第3強磁性体層は磁化が不変とされ、前記第2強磁性体層は磁化が可変とされ、前記第3強磁性体層と前記オーミック電極との間には前記第2強磁性体層を介して電流が流されることを特徴とする。
【0014】
本発明の他の実施態様のスピンMOS電界効果トランジスタは、半導体領域に形成されたソース領域及びドレイン領域と、前記ソース領域あるいは前記ドレイン領域のいずれか一方上に形成された第1強磁性体層と、前記ソース領域あるいは前記ドレイン領域のいずれか他方上に形成された第2強磁性体層と、前記第2強磁性体層上に形成された非磁性体層と、前記非磁性体層上に形成された第3強磁性体層と、前記ソース領域あるいは前記ドレイン領域の前記いずれか他方上に形成された導電体層とを具備し、前記第1強磁性体層と前記第3強磁性体層は磁化が不変とされ、前記第2強磁性体層は磁化が可変とされ、前記第3強磁性体層と前記導電体層との間には前記第2強磁性体層を介して電流が流されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低電圧のスピン注入電流により高抵抗状態から低抵抗状態へ書き換えることができるスピンMOSFETを提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、図面は模式的なものであり、各部分の大きさ、各電圧の高さおよび各時間の長さ、部分間の大きさの比率、電圧間の比率、時間の間隔などは現実のものとは異なる。また、図面の相互間においても、同じ部分を指す場合であっても、互いの寸法や比率が異なって示されている部分もある。
【0017】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態によるn型スピンMOSFETの書き込み方法を、図1(a)、図1(b)、図2(a)及び図2(b)を参照して説明する。
【0018】
図1(a)は、第1実施形態のn型スピンMOSFETの構造を示す断面図である。
【0019】
本実施形態のn型スピンMOSFETは、図1(a)に示すように、半導体基板1に、p型領域のpウエル2、n型領域のソース領域3及びn型領域のドレイン領域4を持ち、ソース領域3上にトンネルバリア層5/強磁性体層6/反強磁性体層7の順序で積層された構造を備え、ドレイン領域4上にトンネルバリア層8/強磁性体層9/非磁性体層10/強磁性体層11/反強磁性体層12の順序で積層された構造を備える。pウエル2上にはオーミック電極13を備え、オーミック電極13によりpウエル2にバイアス電圧が印加できる構造を有する。
【0020】
詳述すると、半導体基板1にはpウエル2が形成され、pウエル2にはソース領域3、及びドレイン領域4が形成されている。ソース領域3上にはトンネルバリア層5が形成され、トンネルバリア層5上には強磁性体層6が形成されている。さらに、強磁性体層6上には反強磁性体層7が形成されている。
【0021】
ドレイン領域4上にはトンネルバリア層8が形成され、トンネルバリア層8上には強磁性体層9が形成されている。強磁性体層9上には非磁性体層10が形成され、非磁性体層10上には強磁性体層11が形成されている。さらに、強磁性体層11上には反強磁性体層12が形成されている。
【0022】
pウエル2上には、オーミック電極13が形成されている。ソース領域3とドレイン領域4間のpウエル2上にはゲート絶縁膜14が形成され、ゲート絶縁膜14上にはゲート電極15が形成されている。
【0023】
前述したように、強磁性体層6上には反強磁性体層7が、強磁性体層11上には反強磁性体層12がそれぞれ付与されており、強磁性体層6の磁化と強磁性体層11の磁化は平行な向きに設定されている。強磁性体層9と強磁性体層6との磁化の向きは、強磁性体層9の磁化の向きが強磁性体層6の磁化の向きと平行である平行状態、もしくは強磁性体層9の磁化の向きが強磁性体層6の磁化の向きと反平行である反平行状態の2つの状態のいずれかの状態になる。ここで、ある磁化の向きに対して「平行」とは、2つの磁化の向きが略一致することを意味し、ある磁化の向きに対して「反平行」とは、2つの磁化の向きが互いに略反対であることを意味する。
【0024】
強磁性体層6及び強磁性体層11は、磁化が維持されるピン層(磁化固定層)として機能する強磁性体であり、その磁化は所定の方向に固定される。強磁性体層9は、磁化が変化するフリー層(磁化自由層)として機能する強磁性体であり、外部から与えられる磁界やスピン注入によって、その磁化の向きが変化する。換言すると、強磁性体層6及び強磁性体層11は磁化が不変とされ、強磁性体層9は磁化が可変とされる。なお、強磁性体層6、強磁性体層9、及び強磁性体層11の磁化の向きは、膜面に対して平行(面内磁化)であってもよいし、垂直(垂直磁化)であってもよい。
【0025】
図1(b)は、第1実施形態のn型スピンMOSFETにおいて、書き込み電流を流した様子を示す断面図である。本実施形態のスピンMOSFETは、図1(b)において、端子Gに電源電圧Vdd程度の電圧が印加されているときの端子Dと端子Sの間の抵抗値RDSが、前述した平行状態と反平行状態で異なることを利用して、論理を変更する。ここで、抵抗値RDSが大きい状態を高抵抗状態とし、抵抗値RDSが小さい状態を低抵抗状態とする。本実施形態では、強磁性体層9の磁化の向きが強磁性体層6の磁化の向きと平行である場合が低抵抗状態となり、強磁性体層9の磁化の向きが強磁性体層6の磁化の向きと反平行である場合が高抵抗状態となる。しかし、後述するようにこれに限られない。
【0026】
端子Gに電源電圧Vdd程度の電圧が印加されているときの、端子Dから端子Sへの電流−電圧特性を図2(a)に示す。強磁性体層9は、強磁性体層9と強磁性体層11の間に流れるスピン注入電流により磁化反転を起こす。このため、スピン注入磁化反転電流値I1c(高)およびI1c(低)で、磁化反転に伴う電流−電圧特性の跳びが観測される。ここで、高抵抗状態から低抵抗状態へ遷移するときの電流値をI1c(高)、電圧値をV1c(高)とし、低抵抗状態から高抵抗状態へ遷移するときの電流値をI1c(低)、電圧値をV1c(低)とする。本実施形態ではV1c(高)がV1c(低)に対して非常に大きくなっている。つまり、V1c(高)>>V1c(低)である。
【0027】
電流の向き1を端子Dから端子Sに流れる向きとし、電流の向き2を端子Wから端子Dに流れる向きとする。図1(b)における端子Wから端子Dへの電流−電圧特性を図2(b)に示す。pウエル2とドレイン領域4はpn接合となっているため、負バイアスには電流が流れない。また、電流値I2cにおいて強磁性体層9の磁化反転に伴い、電流−電圧特性に跳びが観測される。この跳びは、強磁性体層9/非磁性体層10/強磁性体層11におけるトンネル磁気抵抗効果による。
【0028】
端子Wから端子Dまでの経路では、トンネルバリア層8におけるトンネル抵抗と非磁性体層10におけるトンネル抵抗が直列に並んでいる。本実施形態では、トンネルバリア層8と非磁性体層10は同じ材料の絶縁体を用いているが、トンネルバリア層8の厚さが非磁性体層10よりも厚いため、正バイアス時の端子Wから端子Dまでの抵抗は、トンネルバリア層8のトンネル抵抗が支配的である。したがって、強磁性体層9/非磁性体層10/強磁性体層11におけるトンネル磁気抵抗効果による電流−電圧特性の跳びは、図2(a)に示した跳びに比べて非常に小さい。
【0029】
本実施形態のスピンMOSFETにおいて、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移は、電流の向き1にスピン注入電流を流し、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移は電流の向き2にスピン注入電流を流す。向き1に流れる電流により、強磁性体層9を通過したスピン偏極電子は非磁性体層10を介して強磁性体層11に到達し、強磁性体層11にて反射されて再び強磁性体層9に注入される。これにより、強磁性体層9の磁化の向きは強磁性体層11に対して反平行の向きとなる。即ち、強磁性体層9の磁化の向きは強磁性体層6の磁化の向きに対して反平行となり、低抵抗状態から高抵抗状態へと遷移する。一方、向き2に流れる電流により、強磁性体層11を通過したスピン偏極電子は非磁性体層10を介して強磁性体層9に注入される。これにより、強磁性体層9の磁化の向きは強磁性体層11に対して平行の向きとなる。即ち、強磁性体層9の磁化の向きは強磁性体層6の磁化の向きに対して平行となり、高抵抗状態から低抵抗状態へと遷移する。
【0030】
なお、高抵抗状態から高抵抗状態への遷移(高抵抗状態の維持)の場合には、スピン注入電流の向きを向き1とし、低抵抗状態から低抵抗状態への遷移(低抵抗状態の維持)の場合には、スピン注入電流の向きを向き2とすれば良い。高抵抗状態の維持の場合には、向き1にスピン注入電流を流す必要は無く、印加電圧を低電圧とすることができる。一方、低抵抗状態の維持の場合にも、向き2にスピン注入電流を流す必要は無いが、向き2に電流を流すことにより低電圧の印加で低抵抗状態を維持することができる。以上のことから、スピンMOSFETの抵抗状態を書き込み前に予め検出することは必要ではなく、高抵抗状態を書き込む場合にはスピン注入電流の向きを向き1とし、低抵抗状態を書き込む場合にはスピン注入電流の向きを向き2とすれば良い。
【0031】
本実施形態のスピン注入電流によれば、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移は図2(a)に示した正バイアス領域におけるスピン注入磁化反転で行い、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移は図2(b)に示した正バイアス領域におけるスピン注入磁化反転で行う。
【0032】
本実施形態のスピン注入電流の流し方によれば、低抵抗状態から高抵抗状態へV1c(低)の電圧で遷移し、高抵抗状態から低抵抗状態へV2cの電圧で遷移する。V1c(低)およびV2cは低電圧であるため、低電圧で磁化反転が行える。
【0033】
したがって、本実施形態による磁化反転電流の流し方によれば、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移と、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移の両方を低電圧の印加で行うことが可能となる。これにより、昇圧回路などの余分な回路を形成する必要がないため、スピンMOSFETを含む回路の高集積化が可能になる。
【0034】
本実施形態における材料は、半導体基板1に単結晶シリコンを用い、ゲート電極15にポリシリコン、ゲート絶縁膜14にシリコン酸化膜(SiO)、pウエル2にはイオン注入によりボロン(B)をドープしたp型シリコン、ソース及びドレイン領域3,4にはイオン注入によりリン(P)をドープしたn型シリコン、さらにオーミック電極13にはコバルトシリサイドをそれぞれ用いる。
【0035】
また、強磁性体層6、強磁性体層9および強磁性体層11にホイスラー合金のCo2Fe1Al0.5Si0.5、を用い、非磁性体層10、トンネルバリア層5およびトンネルバリア層8には(001)配向したMgO、反強磁性体層7及び反強磁性体層12にPtMnをそれぞれ用いる。
【0036】
本実施形態の各材料の厚さは、例えばトンネルバリア層5が0.8nm、強磁性体層6が4nm、反強磁性体層7が10nmである。また、トンネルバリア層8が0.8nm、強磁性体層9が4nm、非磁性体層10が3nm以下、例えば0.6nm、強磁性体層11が4nm、反強磁性体層12が10nmである。また、非磁性体層10に銅を用い、その厚さは5nm以下、例えば2nmとしてもよい。本実施形態の電源電圧Vddは1.2Vとする。
【0037】
また、本実施形態において、ドレイン−ソース間の電圧100mVにおけるMRは1980%、反転電圧V1c(低)は0.94V、反転電圧V2cは0.98Vである。本実施形態のスピンMOSFETでは、前述したように抵抗状態の書き換えを低電圧の印加で行うことができる。これにより、スピンMOSFETを含む回路の高集積化が可能になる。
【0038】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態のn型スピンMOSFETの構造を示す断面図である。
【0039】
本実施形態のスピンMOS電界効果トランジスタは、ドレイン領域4上にトンネルバリア層5/強磁性体層6/反強磁性体層7の順序で積層された構造を備え、ソース領域3上にトンネルバリア層8/強磁性体層9/非磁性体層10/強磁性体層11/反強磁性体層12の順序で積層された構造を持つ。上記以外の構造は第1実施形態と同様である。
【0040】
電流の向き1を端子Sから端子Dに流れる向きとし、電流の向き2を端子Wから端子Sに流れる向きとする。
【0041】
本実施形態のスピンMOSFETにおいて、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移は電流の向き1にスピン注入電流を流し、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移は電流の向き2にスピン注入電流を流す。各種の材料及び各層の厚さは、前述した第1実施形態と同様である。
【0042】
本実施形態は、第1実施形態においてソース領域とドレイン領域を入れ換えただけの構造であり、第1実施形態と実質的に同等の構造である。そのため、電気特性は第1実施形態と同様な出力が得られる。
【0043】
本実施形態のスピンMOSFETでは、第1実施形態と同様に、抵抗状態の書き換えを低電圧の印加で行うことができる。これにより、スピンMOSFETを含む回路の高集積化が可能になる。
【0044】
[第3実施形態]
図4は、第3実施形態のp型スピンMOSFETの構造を示す断面図である。
【0045】
本実施形態のp型スピンMOSFETは、図4に示すように、半導体基板21に、n型領域のnウエル22、p型領域のソース領域23及びp型領域のドレイン領域24を持ち、ソース領域23上にトンネルバリア層5/強磁性体層6/反強磁性体層7の順序で積層された構造を備え、ドレイン領域24上にトンネルバリア層8/強磁性体層9/非磁性体層10/強磁性体層11/反強磁性体層12の順序で積層された構造を備える。nウエル22上にはオーミック電極13を備え、オーミック電極13によりnウエル22にバイアス電圧が印加できる構造となっている。
【0046】
詳述すると、半導体基板21にはnウエル22が形成され、nウエル22にはソース領域23、及びドレイン領域24が形成されている。ソース領域23上にはトンネルバリア層5が形成され、トンネルバリア層5上には強磁性体層6が形成されている。さらに、強磁性体層6上には反強磁性体層7が形成されている。
【0047】
ドレイン領域24上にはトンネルバリア層8が形成され、トンネルバリア層8上には強磁性体層9が形成されている。強磁性体層9上には非磁性体層10が形成され、非磁性体層10上には強磁性体層11が形成されている。さらに、強磁性体層11上には反強磁性体層12が形成されている。
【0048】
nウエル22上には、オーミック電極13が形成されている。ソース領域23とドレイン領域24間のnウエル22上にはゲート絶縁膜14が形成され、ゲート絶縁膜14上にはゲート電極15が形成されている。
【0049】
前述したように、強磁性体層6上には反強磁性体層7が、強磁性体層11上には反強磁性体層12がそれぞれ付与されており、強磁性体層6の磁化と強磁性体層11の磁化は反平行の向きに設定されている。強磁性体層9と強磁性体層6の磁化の向きは、強磁性体層9の磁化の向きが強磁性体層6の磁化の向きと平行である平行状態、もしくは強磁性体層9の磁化の向きが強磁性体層6の磁化の向きと反平行である反平行状態の2つの状態のいずれかの状態になる。
【0050】
電流の向き1を端子Sから端子Dに流れる向きとし、電流の向き2を端子Dから端子Wに流れる向きとする。
【0051】
本実施形態のスピンMOSFETにおいて、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移は、電流の向き1にスピン注入電流を流し、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移は電流の向き2にスピン注入電流を流す。
【0052】
本実施形態のスピン注入電流の流し方によれば、低抵抗状態から高抵抗状態へV1c(低)の電圧で遷移し、高抵抗状態から低抵抗状態へV2cの電圧で遷移する。すなわち、本実施形態による磁化反転電流の流し方によれば、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移と、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移の両方を低電圧で行うことが可能となる。これにより、昇圧回路などの余分な回路を形成する必要がないため、スピンMOSFETを含む回路の高集積化が可能になる。上記以外の構成及び効果は第1実施形態と同様である。
【0053】
本実施形態における材料は、半導体基板21に単結晶シリコンを用い、ゲート電極15にポリシリコン、ゲート絶縁膜14にシリコン酸化膜(SiO)、nウエル22にはイオン注入によりリンをドープしたn型シリコン、ソース及びドレイン領域23,24にはイオン注入によりボロンをドープしたp型シリコン、さらにオーミック電極13にはコバルトシリサイドをそれぞれ用いる。また、反強磁性体層7にIrMnを、反強磁性体層12にPtMnを用いる。上記以外の各種の材料及び各層の厚さは、第1実施形態と同様である。本実施形態において、ドレイン−ソース間の電圧100mVにおけるMRは1010%、反転電圧V1c(低)は0.94V、反転電圧V2cは0.98Vである。
【0054】
前述したように本実施形態では、第1実施形態と同様に低電圧で抵抗状態の書き換えが実現できる。これにより、スピンMOSFETを含む回路の高集積化が可能になる。
【0055】
[第4実施形態]
図5は、第4実施形態のp型スピンMOSFETの構造を示す断面図である。
【0056】
本実施形態のスピンMOS電界効果トランジスタは、ドレイン領域24上にトンネルバリア層5/強磁性体層6/反強磁性体層7の順序で積層された構造を備え、ソース領域23上にトンネルバリア層8/強磁性体層9/非磁性体層10/強磁性体層11/反強磁性体層12の順序で積層された構造を持つ。上記以外の構造は第3実施形態と同様である。
【0057】
電流の向き1を端子Dから端子Sに流れる向きとし、電流の向き2を端子Sから端子Wに流れる向きとする。
【0058】
本実施形態のスピンMOSFETにおいて、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移は電流の向き1にスピン注入電流を流し、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移は電流の向き2にスピン注入電流を流す。各種の材料及び各層の厚さは、前述した第3実施形態と同様である。
【0059】
本実施形態は、第3実施形態においてソース領域とドレイン領域を入れ換えただけの構造であり、第3実施形態と実質的に同等の構造である。そのため、電気特性は第3実施形態と同様な出力が得られる。
【0060】
本実施形態のスピンMOSFETでは、第3実施形態と同様に、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移と、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移の両方を低電圧で行うことが可能となる。これにより、スピンMOSFETを含む回路の高集積化が可能になる。
【0061】
[第5実施形態]
本実施形態は、複数のスピンMOSFETを略同時にスピン注入電流により磁化反転する方法であり、図6を用いて説明する。
【0062】
図6は、第5実施形態の複数のn型スピンMOSFETの構成を示す平面図である。
【0063】
図6に示すように、pウエル2には第1実施形態のn型スピンMOSFET30が4個配置されている。さらに、pウエル2には、4個のn型スピンMOSFET30のドレイン領域4の近傍に、オーミック電極13が配置されている。オーミック電極13は、4個のn型スピンMOSFET30に対して共通に使用される。
【0064】
これら4個のn型スピンMOSFETの抵抗状態を書き換える場合、オーミック電極13に接続された端子Wから4個の端子Dにスピン注入電流を流すことにより、高抵抗状態にあるスピンMOSFETは高抵抗状態から低抵抗状態へ遷移する。このとき略同時に、4個のn型スピンMOSFETの抵抗状態が低電圧の印加によって遷移する。
【0065】
本実施形態によれば、同一のオーミック電極13から端子Dに電流を流すことにより、同一のウエル2上にある複数のスピンMOSFET30を低抵抗状態に一括して遷移することができる。複数のスピンMOSFET30に対して共通のオーミック電極13を配置すればよいため、小面積な回路が実現できる。これにより、スピンMOSFETを含む回路の高集積化が可能になる。その他の構成及び効果は第1実施形態と同様である。
【0066】
本実施形態では、複数のn型スピンMOSFETに対して共通のオーミック電極を用いて抵抗状態を書き換える例を示したが、図7に示すように複数のp型スピンMOSFET31に対しても共通のオーミック電極13を用いて抵抗状態を書き換えることが可能である。
【0067】
[第6実施形態]
本実施形態によるn型スピンMOSFETの書き込み方法を、図8(a)及び図8(b)を参照して説明する。
【0068】
図8(a)は、第6実施形態のn型スピンMOSFETの構造を示す断面図である。
【0069】
本実施形態のn型スピンMOSFETは、図8(a)に示すように、半導体基板1に、p型領域のpウエル2、n型領域のソース領域3及びn型領域のドレイン領域4を持ち、ソース領域3上にトンネルバリア層5/強磁性体層6/反強磁性体層7の順序で積層された構造を備え、ドレイン領域4上にトンネルバリア層8/強磁性体層9/非磁性体層10/強磁性体層11/反強磁性体層12の順序で積層された構造を備える。さらに、ドレイン領域4上の前記構造と別領域に、トンネルバリア層16/導電体層17/反強磁性体層18の順序で積層された構造を備える。ここでは、導電体層17に強磁性体を用いる。
【0070】
強磁性体層6、11および強磁性体を用いた導電体層17には、反強磁性体層7、12および18がそれぞれ付与されている。強磁性体層6の磁化と強磁性体を用いた導電体層17の磁化とは反平行の向きに磁化され、強磁性体層11の磁化と強磁性体を用いた導電体層17の磁化とは反平行の向きに磁化されている。上記以外の構造は、第1実施形態と同様である。
【0071】
図8(b)は、第6実施形態のn型スピンMOSFETにおいて、書き込み電流を流した様子を示す断面図である。図8(b)に示すように、電流の向き3を端子Dから端子Wに流れる向きとし、電流の向き4を端子Wから端子Dに流れる向きとする。本実施形態のスピンMOSFETにおいて、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移は、電流の向き3にスピン注入電流を流し、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移は電流の向き4にスピン注入電流を流す。
【0072】
本実施形態のスピン注入電流の流し方によれば、強磁性体層9の磁化は強磁性体層11のスピン注入により磁化反転する。そのため磁化反転電圧は、強磁性体層6と強磁性体層11の間の抵抗値に依存しないため、低電圧で強磁性体層9の磁化が反転する。
【0073】
本実施形態では、強磁性体を用いた導電体層17が強磁性体層9の磁化反転をアシストする向きに磁化されており、導電体層17における電子のスピンがドレイン領域を介して強磁性体層9に注入される。このため、導電体層17に非磁性体を用いた場合に比べて、反転電圧をより低くしている。
【0074】
本実施形態による磁化反転電流の流し方によれば、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移と、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移の両方を低電圧で行うことが可能となる。これにより、昇圧回路などの余分な回路を形成する必要がないため、スピンMOSFETを含む回路の高集積化が可能になる。
【0075】
本実施形態における材料は、強磁性体を用いた導電体層17にホイスラー合金のCo2Fe1Al0.5Si0.5を用い、トンネルバリア層16には(001)配向したMgO、反強磁性体層7及び反強磁性体層12にPtMn、反強磁性体層18にはIrMnをそれぞれ用いる。各材料の厚さは、トンネルバリア層16が0.8nm、強磁性体を用いた導電体層17が4nm、反強磁性体層18が10nmである。上記以外の各種の材料及び各層の厚さは第1実施形態と同様である。
【0076】
また、本実施形態において、電流の向き3にスピン注入電流を流した場合の反転電圧が0.90V、電流の向き4の向きにスピン注入電流を流した場合の反転電圧が0.88Vである。本実施形態では、前述したように抵抗状態の書き換えを低電圧の印加で行うことができる。これにより、スピンMOSFETを含む回路の高集積化が可能になる。
【0077】
また、強磁性体層6の磁化の向きと強磁性体層11の磁化の向きを反平行にして、抵抗状態の遷移を本実施形態と逆の電流の向きで行ってもよい。また、半導体材料としてGaAs、SiGeまたはGeを用いてもよい。
【0078】
[第7実施形態]
本実施形態によるp型スピンMOSFETの書き込み方法を、図9(a)及び図9(b)を参照して説明する。
【0079】
図9(a)は、第7実施形態のp型スピンMOSFETの構造を示す断面図である。
【0080】
本実施形態のp型スピンMOSFETは、図9(a)に示すように、半導体基板21に、n型領域のnウエル22、p型領域のソース領域23及びp型領域のドレイン領域24を持ち、ソース領域23上にトンネルバリア層5/強磁性体層6/反強磁性体層7の順序で積層された構造を備え、ドレイン領域24上にトンネルバリア層8/強磁性体層9/非磁性体層10/強磁性体層11/反強磁性体層12の順序で積層された構造を備える。さらに、ドレイン領域24上の前記構造と別領域に、トンネルバリア層16/導電体層17/反強磁性体層18の順序で積層された構造を備える。ここでは、導電体層17に強磁性体を用いる。上記以外の構造およびスピン注入電流の向きは、第6実施形態と同様である。
【0081】
本実施形態による磁化反転電流の流し方によれば、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移と、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移の両方を低電圧で行うことが可能となる。これにより、昇圧回路などの余分な回路を形成する必要がないため、スピンMOSFETを含む回路の高集積化が可能になる。
【0082】
本実施形態で用いた半導体材料は第3実施形態と同様である。上記以外の各種の材料及び各層の厚さは第6実施形態と同様である。
【0083】
また、本実施形態において、電流の向き3にスピン注入電流を流した場合の反転電圧が0.95V、電流の向き4の向きにスピン注入電流を流した場合の反転電圧が0.93Vである。本実施形態では、前述したように抵抗状態の書き換えを低電圧の印加で行うことができる。これにより、スピンMOSFETを含む回路の高集積化が可能になる。
【0084】
また、強磁性体層6の磁化の向きと強磁性体層11の磁化の向きを反平行にして、抵抗状態の遷移を本実施形態と逆の電流の向きで行ってもよい。また、半導体材料としてGaAs、SiGeまたはGeを用いてもよい。
【0085】
[その他の実施形態]
図1に示した第1実施形態ではpウエル2上にオーミック電極13を形成したが、図10に示すように、このオーミック電極13に換えて、pウエル2上にトンネルバリア層25/強磁性体層26/反強磁性体層27の順序で積層された構造を形成してもよい。このような構造では、強磁性体層26における電子のスピンがドレイン領域を介して強磁性体層9に注入されるため、強磁性体層9の磁化反転をアシストすることができる。なお、このような構造は、図3、図4、図5、図6、及び図7に示した実施形態にも適用でき、同様な効果を得ることができる。
【0086】
また、前記各実施形態では、強磁性体層6、強磁性体層9、及び強磁性体層11の磁化の向きは、膜面に対して平行(面内磁化)であってもよいし、膜面に対して垂直(垂直磁化)であってもよい。垂直磁化である場合は、図11に示すように、強磁性体層6、11上に反強磁性体層7、12を形成しない構造としてもよい。
【0087】
また、第1実施形態ではソース領域3とドレイン領域4間のpウエル2上にゲート絶縁膜14を介してゲート電極15を形成したが、図12に示すように、pウエル2上に直接、ゲート電極15を形成してもよい。ゲート電極15には、例えば金属が用いられる。pウエル2とゲート電極15とは、ショットキー接合を形成している。図12に示した構造を持つスピンMOSFETにおいても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、このような構造は、その他の実施形態にも適用でき、同様な効果を得ることができる。
【0088】
本発明の各実施形態によれば、低電圧の印加で高抵抗状態から低抵抗状態へ遷移することができるため、スピンMOSFETを含む回路を高集積化しやすくなるという効果を奏する。
【0089】
また、一つのオーミック電極から複数のスピンMOSFETにスピン注入電流を流すことができるため、高集積化しやすくなるという効果を奏する。
【0090】
また、スピンMOSFETの抵抗状態は、磁気トンネル接合又は半導体-磁性体結合を構成する2つの磁性体が反平行のときに高抵抗状態、平行のときに低抵抗状態になる場合と、2つの磁性体が平行のときに高抵抗状態、反平行のときに低抵抗状態になる場合との2通りがある。後者の具体例としては、FeCo/Si/FeCoからなる接合構造がある。これについては、例えば、”Spin transport in a lateral spin-injection device with an FM/Si/FM junction”, W.J.Hwang et al., Journal of Magnetism and Magnetic Materials 272-276(2004) 1915-1916に記載されている。前述した各実施形態では、2つの磁性体が反平行のときに高抵抗状態、平行のときに低抵抗状態になる場合を説明したが、2つの磁性体が平行のときに高抵抗状態、反平行のときに低抵抗状態になる場合にも適用することができる。この場合には、n型スピントランジスタの場合にはソース・ドレイン領域上の強磁性体層6、11の磁化の向きを互いに反平行とし、p型スピントランジスタの場合にはソース・ドレイン領域上の強磁性体層6、11の磁化の向きを互いに平行とすることができる。
【0091】
また、以上に説明した実施形態においては以下を用いてもよい。
【0092】
以下において、記述がない場合は半導体基板にシリコン半導体を用いる。ゲートには金属材料からなるメタルゲートを用いてもよく、ゲート絶縁膜には比誘電率が4以上の高誘電率の材料を用いてもよい。
【0093】
また、p型領域を形成するためのドープ材料は、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、パラジウム(Pd)、炭素(C)、白金(Pt)、金(Au)、酸素(O)のいずれかもしくは複数を含んでもよい。また、n型領域を形成するためのドープ材料は、アンチモン(Sb)、リン(P)、砒素(As)、チタン(Ti)、炭素(C)、白金(Pt)、金(Au)、酸素(O)のいずれかもしくは複数を含んでもよい。
【0094】
また、オーミック電極13には、チタンシリサイド、鉄シリサイド、コバルトシリサイド、ニッケルシリサイド、プラチナシリサイド、マグネシウムシリサイドのいずれかもしくは複数を含む材料を用いてもよい。
【0095】
また、強磁性体層6、9、11及び17の材料は、Ni、FeおよびCoの元素金属、Ni−Fe、Co−Fe、Co−Fe−Ni合金、または、(Co,Fe,Ni)−(Si,B,P)、(Co,Fe,Ni)−(Si,B,P)−(Al,Mo,Nb,Mn)系またはCo−(Zr,Hf,Nb,Ta,Ti)系などのアモルファス材料、XYZに近い組成でXがCo、YがV、Cr、Mn、Feのいずれかもしくは複数を含み、ZがAl,Si,Ga、Geのいずれかもしくは複数を含むホイスラー合金からなる群より選ばれる少なくとも1種の薄膜またはそれらの積層膜で構成してもよい。なお、前記−は、−で結ばれる元素を含む合金であることを意味する。()は、()内の元素から元素が選択されることを意味する。
【0096】
また、強磁性体の材料は、FePt、CoPt、CoCrPt、もしくは(Co,Fe、Ni)−(Pt,Ir、Pd、Rh)−(Cr、Hf,Zr、Ti、Al、Ta、Nb)のいずれかを含む合金、もしくは(Co,Fe)/(Pt,Ir,Pd)のいずれかの積層膜による垂直磁化材料で構成してもよい。
【0097】
また、強磁性体には、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、アルミニウム(Al)、ルテニウム(Ru)、オスニウム(Os)、レニウム(Re)、タンタル(Ta)、ボロン(B)、リン(P)、炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ジルコニウム(Zr)、イリジウム(Ir)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)などの非磁性元素を添加して、磁気特性を調節するばかりでなく、結晶性、機械的特性、化学的特性などの各種物性を調節することができる。
【0098】
トンネルバリア層5、8、16、及び25および非磁性体層10の材料には、Al(酸化アルミニウム)、SiO(酸化シリコン)、MgO(酸化マグネシウム)、AlN(窒化アルミニウム)、SiN(窒化シリコン)、Bi(酸化ビスマス)、MgF(フッ化マグネシウム)、CaF(フッ化カルシウム)、SrTiO(チタン酸ストロンチウム)、LaAlO(ランタンアルミネート)、Al−N−O(酸化窒化アルミニウム)、HfO(酸化ハフニウム)のいずれかの絶縁体もしくは複数の絶縁体を組み合わせた複合膜を用いることができる。
【0099】
非磁性体層10の材料には、銅もしくは電流狭窄のための絶縁体を含んだ銅を用いてもよい。
【0100】
反強磁性体層7、12、18、及び27の材料は、Fe−Mn(鉄−マンガン)、Pt−Mn(白金−マンガン)、Pt−Cr−Mn(白金−クロム−マンガン)、Ni−Mn(ニッケル−マンガン)、Ir−Mn(イリジウム−マンガン)、Pd−Pt−Mn(パラジウム−白金−マンガン)、NiO(酸化ニッケル)、Fe(酸化鉄)などを用いることができる。
【0101】
また、反強磁性体層として、磁気カップリングした強磁性体層/非磁性体層/反強磁性体層を含む構造の複合膜、もしくは(強磁性体層/非磁性体層)/反強磁性体層(n≧2)の複合膜を用いてもよい。
【0102】
また、半導体基板にGaAs半導体を用いてもよい。GaAs半導体上のゲート材料にTi/Pt/Auを用いてもよい。GaAs半導体とゲート電極の間にゲート絶縁膜を形成せず、GaAs半導体上に直接、ゲート電極を形成してもよい。GaAs半導体にn型領域を形成するためのドープ材料は、S、Se、Sn、Te、Si、CおよびOのいずれかもしくは複数を含んでもよい。GaAs半導体にp型領域を形成するためのドープ材料は、Be、Mg、Zn、Cd、Si、C、CuおよびCrのいずれかもしくは複数を含んでもよい。
【0103】
また、前述した各実施形態はそれぞれ、単独で実施できるばかりでなく、適宜組み合わせて実施することも可能である。さらに、前述した各実施形態には種々の段階の発明が含まれており、各実施形態において開示した複数の構成要件の適宜な組み合わせにより、種々の段階の発明を抽出することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の第1実施形態のn型スピンMOSFETの構造を示す断面図である。
【図2】第1実施形態のn型スピンMOSFETにおける電流−電圧特性を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態のn型スピンMOSFETの構造を示す断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態のp型スピンMOSFETの構造を示す断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態のp型スピンMOSFETの構造を示す断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態の複数のn型スピンMOSFETの構成を示す平面図である。
【図7】第5実施形態の変形例の複数のp型スピンMOSFETの構成を示す平面図である。
【図8】本発明の第6実施形態のn型スピンMOSFETの構造を示す断面図である。
【図9】本発明の第7実施形態のp型スピンMOSFETの構造を示す断面図である。
【図10】第1実施形態の第1変形例のn型スピンMOSFETの構造を示す断面図である。
【図11】第1実施形態の第2変形例のn型スピンMOSFETの構造を示す断面図である。
【図12】第1実施形態の第3変形例のn型スピンMOSFETの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0105】
1…半導体基板、2…pウエル、3…ソース領域、4…ドレイン領域、5…トンネルバリア層、6…強磁性体層、7…反強磁性体層、8…トンネルバリア層、9…強磁性体層、10…非磁性体層、11…強磁性体層、12…反強磁性体層、13…オーミック電極、14…ゲート絶縁膜、15…ゲート電極、16…トンネルバリア層、17…導電体層、18…反強磁性体層、21…半導体基板、22…nウエル、23…ソース領域、24…ドレイン領域、25…トンネルバリア層、26…強磁性体層、27…反強磁性体層、30…n型スピンMOSFET、31…p型スピンMOSFET。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体領域に形成されたソース領域及びドレイン領域と、
前記ソース領域あるいは前記ドレイン領域のいずれか一方上に形成された第1強磁性体層と、
前記ソース領域あるいは前記ドレイン領域のいずれか他方上に形成された第2強磁性体層と、
前記第2強磁性体層上に形成された非磁性体層と、
前記非磁性体層上に形成された第3強磁性体層と、
前記半導体領域上に形成されたオーミック電極とを具備し、
前記第1強磁性体層と前記第3強磁性体層は磁化が不変とされ、前記第2強磁性体層は磁化が可変とされ、
前記第3強磁性体層と前記オーミック電極との間には前記第2強磁性体層を介して電流が流されることを特徴とするスピンMOS電界効果トランジスタ。
【請求項2】
半導体領域に形成されたソース領域及びドレイン領域と、
前記ソース領域あるいは前記ドレイン領域のいずれか一方上に形成された第1強磁性体層と、
前記ソース領域あるいは前記ドレイン領域のいずれか他方上に形成された第2強磁性体層と、
前記第2強磁性体層上に形成された非磁性体層と、
前記非磁性体層上に形成された第3強磁性体層と、
前記ソース領域あるいは前記ドレイン領域の前記いずれか他方上に形成された導電体層とを具備し、
前記第1強磁性体層と前記第3強磁性体層は磁化が不変とされ、前記第2強磁性体層は磁化が可変とされ、
前記第3強磁性体層と前記導電体層との間には前記第2強磁性体層を介して電流が流されることを特徴とするスピンMOS電界効果トランジスタ。
【請求項3】
前記半導体領域は第1導電型の半導体領域であり、前記ソース領域及び前記ドレイン領域は第2導電型の半導体領域であり、前記スピンMOS電界効果トランジスタは第2導電型のスピンMOS電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項1または2に記載のスピンMOS電界効果トランジスタ。
【請求項4】
前記第1強磁性体層と前記第3強磁性体層は、磁化が略平行あるいは略反平行のいずれかに固定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスピンMOS電界効果トランジスタ。
【請求項5】
前記ソース領域あるいは前記ドレイン領域の前記いずれか一方と前記第1強磁性体層との間に形成された第1トンネルバリア層と、
前記ソース領域あるいは前記ドレイン領域の前記いずれか他方と前記第2強磁性体層との間に形成された第2トンネルバリア層と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のスピンMOS電界効果トランジスタ。
【請求項6】
前記導電体層は強磁性体であり、
前記ソース領域あるいは前記ドレイン領域の前記いずれか他方と前記導電体層との間にトンネルバリア層をさらに具備することを特徴とする請求項2に記載のスピンMOS電界効果トランジスタ。
【請求項7】
前記非磁性体層は厚さが3nm以下の絶縁体であり、前記非磁性体層は前記第2トンネルバリア層より薄いことを特徴とする請求項5に記載のスピンMOS電界効果トランジスタ。
【請求項8】
前記非磁性体層は厚さが5nm以下の銅であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のスピンMOS電界効果トランジスタ。
【請求項9】
前記半導体領域中に複数の前記スピンMOS電界効果トランジスタを具備し、
前記複数のスピンMOS電界効果トランジスタが有する複数の前記第3強磁性体層と前記オーミック電極との間には、前記スピンMOS電界効果トランジスタが有する前記第2強磁性体層をそれぞれ介して電流が流されることを特徴とする請求項1に記載のスピンMOS電界効果トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−74001(P2010−74001A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241566(P2008−241566)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ナノテクノロジープログラム/ナノテク・先端部材実用化研究開発/高スピン編極率材料を用いたスピンMOSFETの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】