スプライソソーム媒介RNAトランス−スプライシングにおける使用のための方法及び組成物
【課題】本発明の分子及び方法は、選択された細胞のサブセット中で、トランス−スプライスされた分子のインビボでの製造のための手段を提供する。
【解決手段】本発明の前−トランス−スプライシング分子は、前−トランス−スプライシング分子と特定の標的細胞において唯一発現される、前−mRNAとの間のトランス−スプライシング反応のための基質である。インビボでのトランス−スプライシング反応は、mRNAとして機能的な又は、ターゲット細胞において発現されるべきタンパクをコードする。mRNAの発現生成物は、細胞又は宿主生物に対して治療上の価値を持つタンパクであるか、特定の細胞の死を誘発する毒素か、またはそのような細胞に通常存在しないタンパクである。本発明はさらに、エキソンタグ方法を用いて前−mRNAのエキソン/イントロンの境界を同定するための、遺伝子操作されたPTMsを提供する。本発明のPTMsは、特定の細胞タイプにおいて発現されるタンパクの精製及び同定に用いることができる、ペプチドアフィニティ精製タグをコードするキメラRNAの製造を生じる。
【解決手段】本発明の前−トランス−スプライシング分子は、前−トランス−スプライシング分子と特定の標的細胞において唯一発現される、前−mRNAとの間のトランス−スプライシング反応のための基質である。インビボでのトランス−スプライシング反応は、mRNAとして機能的な又は、ターゲット細胞において発現されるべきタンパクをコードする。mRNAの発現生成物は、細胞又は宿主生物に対して治療上の価値を持つタンパクであるか、特定の細胞の死を誘発する毒素か、またはそのような細胞に通常存在しないタンパクである。本発明はさらに、エキソンタグ方法を用いて前−mRNAのエキソン/イントロンの境界を同定するための、遺伝子操作されたPTMsを提供する。本発明のPTMsは、特定の細胞タイプにおいて発現されるタンパクの精製及び同定に用いることができる、ペプチドアフィニティ精製タグをコードするキメラRNAの製造を生じる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.序論)
本発明は、標的を定めたスプライセオソーム(spliceosomal)トランス−スプライシング(trans-splicing)により新規核酸分子を創造するための方法および組成物を提供する。本発明による組成物は、天然標的メッセンジャーRNA先駆体(標的Pre−mRNA)(target pre-trans-mRNA) と相互作用し、また新規キメラRNA分子(キメラRNA)の創造を生じさせるトランス−スプライシング反応を媒介するようにデザインされているトランス−スプライシング分子先駆体(pre-trans-splicing molecules)(PTM)を含有する。本発明によるPTMは一般に、それ自体がRNAの翻訳の抑制などの機能を果たすことができ、または細胞における誘導蛋白質または不活性蛋白質を相補する蛋白質をコードする、または特定の細胞を殺滅するトキシンをコードする新規キメラRNAが生成されるように操作される。一般に、標的Pre−mRNAは、特定の細胞種内で発現されることから、標的として選択され、これにより新規キメラRNAの発現を、選択された細胞種に標的を定めるための手段が提供される。
【0002】
本発明はまた、エキソン標識法(exon tagging method)を用いるPre−mRNA分子のエキソン/イントロン境界を特定するために遺伝子操作されているPTMに関する。さらにまた、このPTMは特定の細胞種で発現される蛋白質の精製および同定に用いることができるペプチド親和性精製標識をコードするキメラRNAの生成が得られるようにデザインすることができる。本発明の方法は、本発明によるPTMを、当該PTMの蛋白質が天然Pre−mRNAの蛋白質にトランス−スプライシングされ、新規キメラRNA分子が形成される条件下に、標的Pre−mRNAと接触させることを包含する。本発明による方法および組成物は、細胞遺伝子調節、遺伝子修復および増殖性疾病、例えば癌の処置用、もしくは遺伝病、自己免疫性疾病または感染性疾病の処置用の自殺的遺伝子治療(suicide gene thrapy)に使用することができる。本発明による方法および組成物はまた、イントロン−エキソン境界のマップ作成およびいずれか指定の細胞で発現された新規蛋白質の同定に使用することができる。
【0003】
(2.発明の背景)
染色体中のDNA配列は、コード領域(エキソン)を含有し、および一般にまた、非コード領域(イントロン)を含有するPre−mRNAに転写される。イントロンは、スプライシングと称される正確な方法でPre−mRNAから分離される[ChowらによるCell 12:1〜8(1977);およびBergerらによるProc.Natl.Acad.Sci.USA,74:3171〜3175(1977)]。スプライシングは、数個の小型核を有するリボ核蛋白質粒子(snRNP)とスプライセオソームとして知られている酵素複合体を形成するように組み立てられる、かなり多くの蛋白質因子との配位相互反応として生じる[MooreらによるThe RNA wORLD,R.F.Gestiand and J.F.Athns eds(ColdSpring Harbor Laboratory Press,(Cold Spring Harbor,N.Y.)(1993);KramerらによるAnnu.Rev.Biochem.,65:367〜404(1996);StaleyおよびGuthrieによるCell,92:315〜326(1998)]。
【0004】
Pre−mRNAスプライシングは2段階メカニズムにより進行する。第一段階において、5’スプライシング部位が分裂され、「遊離」5’エキソンおよび投げ縄型中間体が生成される(Moore,M.J.およびP.A.SharpによるNature,365:364〜368(1993))。第二段階において、この5’エキソンは、投げ縄型生成物としてのイントロンの放出を伴い5’エキソンにリゲートされる。これらの段階は、小型核を有するリボ核蛋白質とスプライセオソームと称される蛋白質との複合体により触媒される。
【0005】
このスプライシング反応部位は、5’および3’スプライシング部位の周囲の共通配列を定めている。5’スプライシング部位共通配列は、AG/GURAGUである(ここで、A=アデノシン、U=ウラシル、G=グアニン、C=シトシン、R=プリンおよび/=スプライシング部位である)。3’スプライシング領域は、3個の分離した配列要素からなる;分岐点または分枝部位;ポリピリミジン配列および3’スプライシング共通配列(YAG)。これらの要素は、3’スプライシング領域を粗く定めており、3’スプライシング部位のイントロン上流の100ヌクレオチドを包含することができる。哺乳動物の分枝点共通配列は、YNYURACである(ここで、N=いずれかのヌクレオチド、Y=ピリミジンである)。下線を付けたAは、分枝形成部位である(BPA=分枝点アデノシン)。3’スプライシング共通配列は、YAG/Gである。この分枝点とスプライシング部位との間には、通常、ポリピリミジン配列が見出され、この配列は分枝点有効利用および3’スプライシング部位認識にとって、哺乳動物系で重要である(Roscigno,R.F.らによるBiol.Chem.,268:11222〜11229(1993))。この分枝点およびポリピリミジン配列から下流の第一YAGトリヌクレオチドは、最も慣用の3’スプライシング部位である(Smith,C.W.らによるNature,342:243〜247(1989))。
【0006】
大部分の場合、このスプライシング反応は、同一Pre−mRNA分子内で生じ、これはシス−スプライシング(cis-splicing)と称される。2個の独立して転写されるPre−mRNA間のスプライシングは、トランス−スプライシング(trans-splicing)と称される。トランス−スプライシングは、最初に、トリパノソームで見出され(Sutton & BoothroydによるCell,47:527(1986);MurphyらによるCell,47:517(1986))、引き続いてネマトイド類で(Krause & HirshによるCell,49:753(1987))、扁虫類で(flatworms)(RajkovieらによるNat'l.Acad.Sci.USA,87:8879(1990);DevisらによるJ.Biol.Chem.,270:21813(1995))および植物ミトコンドリアで(MalekらによるProc.Nat'l.Acad.Sci.USA,94:553(1997))で見出されている。寄生虫トリパノソーマ ブルセイ(Trypanosoma brucei)では、全部のmRNAが、トランス−スプライシングにより、それらの5’末端でスプライシングリーダー(SL)RNAを獲得する。カエノルハブジチス エレガンス(Caenorhabditis elegans)では、5’リーダー配列はまた、数個の遺伝子にトランス−スプライシングされる。このメカニズムは、かなりの相違する転写体に単一の共通配列を付加するものと認識される。
【0007】
慣用のシス−スプライシングとほとんど同一であるトランス−スプライシングのメカニズムは、2個のホスホリル転移反応を経て進行する。最初に、“Y”型分枝中間体(これは、シス−スプライシングにおける投げ縄型中間体に等しい)を生成する2’−5’ホスホジエステル結合の形成が生じる。第二反応、すなわちエキソン リゲーションは、慣用のシス−スプライシングと同様に進行する。さらに、トランス−スプライシングを触媒するsnRNAの若干と3’スプライシング部位とは、シス−スプライシングに包含されるそれらの対向部分と近似している。
【0008】
トランス−スプライシングはまた、相違するプロセスに関連することもある。すなわち、第一のpre−mRNAのイントロンが第二のpre−mRNAと相互反応する場合、2つの共通のpre−mRNA間のスプライシング部位の組換えを増強させる。このタイプのトランス−スプライシングは形質転換したマウスの固有定常領域に結合しているヒト免疫グロブリン可変領域配列をコードする転写体を説明するものと仮定されている(ShimizuらによるProc.Nat'l.Acad.Sci.USA,86:8020(1989))。さらにまた、c-myb pre-RNAのトランス−スプライシングが証明され(Vellard,M.らによるProc.Nat'l.Acad.Sci.89:251〜2515)、さらに最近になって、相互にトランス−スプライシングされたクローン形成したSV40からのRNA転写体が、培養された細胞および核抽出物で検出された(EueらによるEMBO.J.14:3226(1995))。しかしながら、哺乳動物pre−mRNAの天然で生じるトランス−スプライシングは、格別に稀な出来事であると考えられる。トランス−スプライシングの反応メカニズムは、慣用のシス−スプライシングとほとんど同一であると信じられる。これは、2’−5’ホスホジエステル結合の形成を経て進行し、“Y”形状の分枝した中間体を生成させる(この中間体は、シス−スプライシングにおける中間体に等しい)。
【0009】
インビトロ トランス−スプライシングは、数グルーブによるスプライシングのメカニズムを試験するためのモデルシステムとして使用されている(Konarska & SharpによるCell,46:165〜171(1985);SolnickによるCell,42:157(1985);Chiara & ReedによるNature,375:510(1995);PasmanおよびGarcis-BlancoによるNucleic Acids Res.,24:1638(1996))。妥当に効果的なトランス−スプライシング(シス−スプライシングされた同族体の30%)が、相互に塩基対を形成することができるRNA間で達成された。塩基対により集合しないRNAのスプライシングは、10のファクターでさらに減少された。基質の中で明白なRNA−RNA相互反応を要しない別のインビトロ トランス−スプライシング反応が、CharaおよびReedにより(1995,Nature,375:510);Bruzik,J.P.およびManiatis,T.により(1992,Nature,360:692);およびBruzik,J.J.およびManiatis,T.により(Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA,92:7056〜7059(1995)、見出された。これらの反応は、比較的小さい頻度で生じ、特殊化された要素、例えば下流5’スプライシング部位またはエキソンスプライシング部位などを必要とする。
【0010】
mRNA先駆体に複数の蛋白質を結合することを包含する(これは次いで、RNAの正確な切断および接合に作用する)スプライシング方法に加えて、第三のスプライシング法は、イントロンそれ自体(ここでは、触媒性RNA分子またはリボザイムと称される)によるRNAの切断および接合を包含する。このリボザイムの分裂活性は、分離した「ハイブリゼーション」領域をリボソーム中にエンジニアリングすることによって、特定のRNAに標的設定される。標的RNAへのハイブリゼーションによって、リボソームの触媒領域はほとんど分解する。このようなリボソーム活性は、インビボ標的RNAの不活性化または分解に、例えば異種の異常RNAの生成を特徴とするヒト疾病の処置に有用であると見做される。アンチセンスRNAの使用はまた、特定のRNAの標的設定および分解にかかわる別のメカニズムとして提供されている。このような場合、標的RNAにハイブリッド形成することにより、また標的RNAに結合させることによりデザインされている小型RNA分子は、標的RNAの翻訳を防止し、またはヌクレアーゼの活性化によるRNAの分解を生じさせる。
【0011】
最近まで、特定の標的遺伝子の修正に標的を定めたトランス−スプライシングを実用する用途は、グループ1リボソームに基づくメカニズムに制限されていた。テトラハイメナ(Tetrahymena)グループ1リボソームを使用することによって、標的を定めたトランス−スプライシングが、イー・コリ(E.Coli)で(Sullengen,B.A.およびCech,T.R.によるNature,341:619〜622(1994))、マウス繊維芽細胞で(Jones,J.T.によるNature Medicine,2:643〜648(1996))、ヒト繊維芽細胞で(Phylacton,L.A.によるNature Genetic,18:378〜381)、およびヒトエリスロイド先駆体で(LarnらによるScience,280:1593〜1596)、証明されている。グループ1リボソームを修飾することにより操作される、かなりの標的を定めたRNAトランス−スプライシングの用途が探査されているが、天然哺乳動物のスプライシング機構、すなわちスプライセオソームは、従来技術で報告されていない。
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、スプライセオソームが媒介する標的を定めたトランス−スプライシングにより新規核酸分子を創造するための方法および組成物に関する。本発明による組成物は、天然標的Pre−mRNA分子(以下の記載において、Pre−mRNAと記す)と相互作用し、また新規キメラRNA分子(以下の記載において、キメラRNAと記す)の創造を生じさせるスプライセオソームによるトランス−スプライシング反応を媒介するようにデザインされているトランス−スプライシング分子先駆体(以下の記載において、PTMと記す)を含有する。本発明の方法は、本発明によるPTMを、当該PTMの蛋白質が天然Pre−mRNAの蛋白質にスプライシングされ、新規キメラRNAが形成される条件下に、標的Pre−mRNAと接触させることを包含する。本発明によるPTMは、トランス−スプライシング反応から生じる新規キメラRNAがそれ自体で、RNAの翻訳の抑制などの機能を果たすことができ、または別様に、キメラRNAが細胞における不完全または不活性蛋白質を相補する蛋白質をコードする、または特定の細胞を殺滅するトキシンをコードすることができるように、遺伝子操作される。
【0013】
一般に、標的Pre−mRNAは、特定の細胞種内で発現されることから、標的として選択され、これにより新規キメラRNAの発現を、選択された細胞種に標的を定めるための手段が提供されるように選択する。この標的細胞には、これらに制限されないものとして、ウイルスまたはその他の感染体に感染した細胞、または悪性新生物、または自己免疫疾病または組織拒絶に含まれる免疫系の成分が包含される。本発明のPTMは、標的pre−mRNAにおけるエキソン/イントロン境界を特定するための方法としてmRNA分子内のエキソン配列に遺伝子操作することができる。本発明はまた、特定の細胞種で発現される蛋白質の精製および同定に用いることができるペプチド親和性精製標識をコードするように遺伝子操作されるPTM分子を使用することに関する。本発明の方法および組成物は、遺伝子調節、遺伝子修復および標的設定した細胞死において使用することができる。このような方法および組成物は、これらに制限されないものとして、遺伝病、感染性疾病または自己免疫性疾病を包含する種々の疾病および癌などの増殖性疾病の処置に使用することができる。
【0014】
本発明は、プレ−トランス−スプライシング分子(PTM)を含む組成物と、新規な核酸分子の作製のためのこのような分子の使用とに関する。本発明のPTMはpre−mRNAに特異的に結合するように設計されたターゲット結合ドメイン、分枝点、ピリミジン・トラクト(pyrimidine tract)及び3’スプライス受容部位及び/又は5’スプライス供与部位を包含する3’スプライス領域;並びにRNAスプライス部位をターゲット結合ドメインから分離するスペーサー領域を含む。さらに、本発明のPTMは、翻訳可能なタンパク質生成物をコードする任意のヌクレオチド配列を含有するように操作することができる。
【0015】
本発明の方法は、本発明のPTMを天然pre−mRNAに、PTMの一部を天然pre−mRNAの一部中にトランス−スプライシングさせるような条件下で接触させて、新規なキメラRNAを形成することを包含する。ターゲットpre−mRNAは、これが特異的細胞種類内で発現して、選択した細胞種類への新規なRNAの発現をターゲッティングする機構を与えるために、ターゲットとして選択する。得られるキメラRNAは特異的細胞種類に所望の機能を与えることができる、又は特異的細胞種類内で遺伝子産物を産生することができる。特異的細胞は、非限定的に、ウイルス若しくは他の感染性因子によって感染した細胞、良性若しくは悪性の新生細胞、又は自己免疫疾患若しくは組織拒絶に関与する免疫系の構成要素を包含する。ターゲット内因的pre−mRNAに結合するようにPTMの結合ドメインを修飾することによって、特異性が得られる。キメラRNAによってコードされる遺伝子産物は、例えば、治療的若しくはマーカー遺伝子、及び毒素をコードする遺伝子のような、臨床的有用性を有する遺伝子を含めた、任意の遺伝子でありうる。
【0016】
5.1.プレ−トランス−スプライシング分子の構造
本発明は、ターゲット化(targeted)トランス−スプライシングによる新規なキメラ核酸分子の生成に用いるための組成物を提供する。本発明のPTMは(i)pre−mRNAへのPTMの結合をターゲットとする1つ以上のターゲット結合ドメイン、(ii)分枝点、ピリミジン・トラクト(pyrimidine tract)及び3’スプライス受容部位及び/又は5’スプライス供与部位を包含する3’スプライス領域;並びに(iii)RNAスプライス部位をターゲット結合ドメインから分離するスペーサー領域を含む。さらに、翻訳可能なタンパク質生成物をコードする任意のヌクレオチド配列を含有するように、PTMを操作することができる。本発明のさらに他の実施態様では、キメラRNA分子の翻訳を阻害するヌクレオチド配列を含有するように、PTMを操作することができる。例えば、ヌクレオチド配列は翻訳終止コドン、又は二次構造を形成することによって翻訳を阻害するヌクレオチド配列を含有することができる。或いは、キメラRNAはアンチセンス分子として機能することによって、それが結合するRNAの翻訳を阻害することができる。
【0017】
PTMのターゲット結合ドメインは、選択されたpre−mRNAのターゲット化領域に相補的であり、この領域にアンチ−センス配向する少なくとも15〜30(数百まで)ヌクレオチドから成る1つ又は2つの結合ドメインを含有しうる。このことは結合の特異性を与え、核のスプライソソーム処理機構(spliceosome processing machinery)がPTMの一部をpre−mRNAの一部にトランス−スプライシングすることができるようなスペースにpre−mRNAをきっちりと固定する。第2ターゲット結合領域を分子の3’末端に配置して、本発明のPTM中に組み込むことができる。絶対的な相補性は、好ましいが、必要ではない。本明細書で述べるような、mRNAの一部に“相補的な”配列は、RNAとハイブリダイズして、安定な二本鎖を形成することができる充分な相補性を有する配列を意味する。ハイブリダイズ可能であることは、核酸の相補性度と長さの両方に依存する(例えば、Sambrook等,1989,Molecular Cloning,A Labouratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York参照)。一般に、ハイブリダイズする核酸が長ければ長いほど、それが含有し、まだ安定な二本鎖を形成するRNAとの塩基不適合は多くなる。当業者は、ハイブリダイズした複合体の融点を測定するための標準方法を用いて、許容されうる不適合度を確認することができる。
【0018】
PTMをイントロン−エキソン標識又はペプチドアフィニティ標識に用いるように設計する場合には、ターゲット結合ドメインにランダムなヌクレオチド配列を含有するようにPTMのライブラリーを一般に操作する。PTM分子のこのようなライブラリーを作製する目的は、ライブラリーが細胞内に発現した各RNA分子に結合することができるPTM分子群(population of PTM molecules)を含有することである。ランダムDNAフラグメントをPTM中に挿入して、ランダムターゲット結合ドメインを形成するために用いることができる制限エンドヌクレアーゼ部位を包含するPTMのコーディング領域を含有するように、組換え発現ベクターを遺伝子操作することができる。ターゲット結合ドメインとしてPTMに包含させるべきランダムヌクレオチド配列は、非限定的に、制限酵素によるDNAの部分的消化又はDNAのランダムフラグメントを形成するためのDNAの機械的剪断を包含する、当業者に周知の多様な異なる方法を用いて作製することができる。ランダム結合ドメイン領域を縮退的(degenerate)オリゴヌクレオチド合成によって作製することもできる。縮退的オリゴヌクレオチドは縮退的結合ドメインを有するPTM分子のライブラリーを生成するためのPTM分子へのクローニングを容易にするために、各末端に制限エンドヌクレアーゼ認識部位を有するように、縮退的オリゴヌクレオチドを操作することができる。
【0019】
他の機構によって、例えば三重らせん形成又は、特異的RNA結合タンパク質、即ち特異的ターゲットpre−mRNAに結合したタンパク質を認識するようにPTMが操作されるタンパク質/核酸相互作用によって、結合を達成することもできる。或いは、本発明のPTMを、例えばRNA分子内のヌクレオチド間の分子内塩基対合に由来するヘアピン構造のような、二次構造を認識するように、設計することもできる。
【0020】
PTM分子はまた、分岐点を含む3’スプライス領域、ピリミジントラクト(tract)及び3’スプライスアクセプターAG部位及び/または5’スプライスドナー部位を含有する。RNAスプライシングに用いられる5’スプライスドナー部位及び3’スプライス領域に対するコンセンサス配列は、当該分野において周知である(Moore,et al.,1993,The RNA World,Cold Springs Harbor Laboratory Press,p.303-358参照)。加えて、本願発明の実施において、5’スプライスドナー部位及び3’スプライス領域として機能する能力を維持する修飾コンセンサス配列を使用してもよい。手短に言えば、5’スプライス部位コンセンサス配列は、AG/GURAGU(ここで、A=アデノシン、U=ウラシル、G=グアニン、C=シトシン、R=プリン及び/=スプライス部位)である。3’スプライス部位は、3つの分離した配列エレメント:分岐点または分岐部位、ポリピリミジントラクト及び3’コンセンサス配列(YAG)から成る。哺乳類における分岐点コンセンサス配列は、YNYURAC(Y=ピリミジン)である。下線Aは分枝形成部位である。ポリピリミジントラクトは、分岐点とスプライス部位アクセプターとの間に位置し、異なった分岐点の利用及び3’スプライス部位認識にとって重要である。
【0021】
RNAスプライス部位を標的結合ドメインから分離するためのスペーサー領域もPTMに含まれる。スペーサー領域は、標的プレ−mRNAに対するトランス−スプライシングを増幅する非スプライスPTM及び/または配列の如何なる翻訳もブロックするストップコドン等で特徴付けられる。
【0022】
本願発明の好ましい態様において、「安全装置(safety)」がまた、非特異的トランス−スプライシングを防ぐために、スペーサー、結合ドメイン、またはPTMのどこか他の部分に組み込まれる。これが、PTMの3’及び/または5’スプライス部位のエレメントを比較的弱い相補性で覆い、非特異的トランス−スプライシングを防ぐPTMの一領域である。PTMは、PTMの結合/ターゲッティング部分のハイブリダイゼーションで、3’及び/または5’スプライス部位が覆われておらず、十分に活性があるように設計される。
【0023】
「安全装置」は、PTM分岐点、ピリミジントラクト、及び/または3’スプライス部位(スプライシングエレメント)の一方または両側に弱く結合する1以上の、シス−配列の伸展(stretch)からなるか、またはそのような第2の分離した核酸鎖であるか、もしくはスプライシングの部位自体に結合できるものである。この「安全装置」結合は、スプライシングエレメントが活性となることを防ぐ(つまり、U2snRNPまたは他のスプラシシング因子がPTMスプライス部位認識エレメントに付着するのをブロックする)。「安全装置」の結合は、PTMの標的結合領域の標的プレ−mRNAへの結合、即ち、PTMスプライシングエレメントを露出して活性化する(それらを、標的プレ−mRNAへトランス−スプライスするのに有効なものとする)ことによって破壊されてもよい。
【0024】
細胞死など、またはマーカーとしての失っていた機能または作用を回復するなどの効果を生み出すことのできる翻訳可能な蛋白質をコードするヌクレオチド配列が、本願発明のPTMに含まれる。例えば、そのヌクレオチド配列は、既知の遺伝子疾患において失われているまたは変化している遺伝子産物をコードするそれら配列を含むものである。または、そのヌクレオチド配列は、細胞を同定するまたは画像化するのに用いられるマーカー蛋白質またはペプチドをコードすることができる。本願発明のまた別の態様において、HISタグ(6個の連続するヒスチジン残基)(Janknecht,et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8972-8976)、C末端グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)(Smith and Johnson,1986,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8703-8707)(Pharmacia)またはFLAG(Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Lys)(Eastman Kodak/IBI,Rochester,NY)などのアフィニティータグをコードするヌクレオチド配列が、アフィニティー精製に有用なPTM分子に含まれる。このようなヌクレオチド配列を含有するPTMの使用によって、ペプチドアフィニティータグに結合して細胞中に正常に発現されるペプチド配列を含有する融合蛋白質をコードするキメラRNAを産生することになる。アフィニティータグは、細胞で発現されたペプチド配列を迅速に精製し同定する方法を提供する。好ましい態様において、そのヌクレオチド配列は、トキシンまたは、放射線照射もしくは化学療法などのその後の処理に対する細胞の感受性を増幅する機能を提供する他の蛋白質をコードしていてもよい。
【0025】
さらに好ましい本願発明の態様において、PTM分子は、ジフテリアトキシンサブユニットA(Greenfield,L.,et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:6853-6857)をコードするヌクレオチド配列を含有するように設計される。ジフテリアトキシンサブユニットAは、酵素的トキシン活性を含有し、発現されるかヒト細胞に輸送されると機能して細胞死をもたらす。さらに、多くの他の既知のペプチドトキシンが本願発明に使用されてもよく、限定するわけではないが、リシン(ricin)、シュードモナストキシン、シガ(Shiga)トキシン及びエキソトキシンAを含む。
【0026】
PTM分子に対して、翻訳可能な蛋白質をコードするヌクレオチドの後か前に、スプライシングを増幅するためのポリアデニル化シグナルまたは5’スプライス配列、付加的な結合領域、「安全装置」−自己相補的領域、付加的なスプライス部位、または分子の安定性を制御して分解を防ぐ保護基などの付加的な特徴を加えることができる。
【0027】
本願発明のPTMに組み込まれてもよい付加的な特徴として、結合ドメイン及びスプライス部位の間の領域に、非スプライスプレ−mRNA発現を防ぐために、ストップコドンまたは他のエレメントを含む。本願発明の別の態様において、PTMを、3’標的イントロンまたはエキソンへの結合を促進し、固定の標準(authentic)シス−5’スプライス部位(U5及び/またはU1結合部位)をブロックするための翻訳可能な蛋白質をコードするヌクレオチド配列から下流の第2アンチ−センス結合ドメインを伴って発生させることができる。PTMはまた、トランス−スプライス産物の発現のための二重のトランス−スプライシング反応を要求するものとして作製されてもよい。このようなPTMは、RNA修復に有用となる内部エキソンを置換するのに用いることができる。3’ヘアピン構造、環状化RNA、ヌクレオチド塩基修飾、または合成アナローグなどのさらなるエレメントを、核の局在化及びスプライセオゾームの(spliceosomal)編入、並びに細胞内安定性を促進または亢進させるために、PTMに組み込むことができる。
【0028】
本願発明のPTMは、標的細胞における新規キメラRNAを産生するように意図された方法において用いることができる。本願発明の方法は、RNA分子、またはRNA分子に転写されるDNAベクターなどの、当業者によって使用される如何なる形ででもよいPTMを標的細胞に輸送することからなり、当該PTMはプレ−mRNAに結合し、トランス−スプライシング反応を仲介して、プレ−mRNAの部分にスプライスされたPTM分子の部分からなるキメラRNAを形成することになる。
【0029】
5.2.トランス−スプライシング分子の合成
本願発明の核酸分子は、RNAもしくはDNA、またはその誘導体もしくは修飾変形種、一本鎖または二本鎖でもよい。核酸によって、PTM分子またはPTM分子をコードする核酸分子が、デオキシリボヌクレオチドからなるのか、リボヌクレオシドからなるのか、及びリン酸ジエステル結合からなるのか、修飾された結合からなるのか示されることになる。核酸という語はまた、具体的には、5つの天然の塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシン及びウラシル)以外の塩基からなる核酸も含む。
【0030】
本願発明のRNA及びDNA分子を、DNA及びRNA分子の合成のための、当該分野において既知の如何なる方法によって作製してもよい。例えば、核酸は、市販の試薬及び合成機を用いて、当該分野において周知の方法によって化学合成してもよい(e.e.,Gait,1985,Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach,IRL Press,Oxford,England参照)。または、RNA分子は、そのRNA分子をコードするDNA配列のイン・ビトロ及びイン・ビボ転写によって発生させることができる。このようなDNA配列は、T7またはSP6ポリメラーゼプロモーターなどの適当なRNAポリメラーゼプロモーターを組み込んだ広範囲のベクターに組み込むことができる。RNAを、高収率で、SPS65(Promega Corporation,Madison,WI)などのプラスミドを用いるイン・ビトロ転写を経て産生してもよい。加えて、Q−β増幅などのRNA増幅法が、RNAを産生するために利用される。
【0031】
核酸分子は、塩基部分、糖部分、またはリン酸骨格で、例えば分子の安定性、ハイブリダイゼーション、細胞への輸送等を改善するために修飾することができる。例えば、全体の荷電を減少させるためのPTMの修飾は、分子の細胞内取込みを増幅させる。加えて、ヌクレアーゼ分解に対する感受性を減じるように修飾することができる。核酸分子は、ペプチド(例えば、イン・ビボでの宿主細胞レセプターを標的とする)、または細胞膜を通過する輸送を亢進する薬剤(例えば、Letsinger et al.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:6553-6556;Lemaitre et al.,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.84:648-652;国際公開No.WO89/10134,1988年4月25日公開等参照)、ハイブリダイゼーションを引き金とする切断剤(hybridization-triggered cleavage agent)(例えば、Krol et al.,1988,BioTechniques 6:958-976参照)またはインターカレーション剤(例えば、Zon,1988,Pharm.Res.5:539-549参照)などの他の付加的な基を含んでいてもよい。この端に、核酸分子は、別の分子、例えばペプチド、ハイブリダイゼーションを引き金とするクロス−リンク剤(hybridization triggered cross-linking agent)、輸送剤(transport agent)、ハイブリダイゼーションを引き金とする切断剤等に結合していてもよい。DNA分子に対する種々の他の周知の修飾を、細胞内の安定性及び半減期を増大する方法として導入することができる。成し得る修飾として、限定するわけではないが、リボ−またはデオキシ−ヌクレオチドの配列を分子の5’及び/または3’端に隣接させる付加も含まれる。増大した安定性が望まれる環境下では、2’−O−メチル化などの修飾ヌクレオシド間(internucleoside)結合を有する核酸が好ましい。修飾ヌクレオシド間結合を含有する核酸は、当該分野において周知の試薬及び方法を用いて合成してもよい(Uhlmann et al.,1990,Chem.Rev.90:543-584;Schneider et al.,1990,Tetrahedron Lett.31:335及びここに引用される参考文献参照)。
【0032】
核酸は、当該分野において周知の如何なる適当な方法によって、精製されてもよい。例えば、核酸は、逆相クロマトグラフィーまたはゲル電気泳動によって精製することができる。もちろん、当業者は、精製法が部分的に、精製されるべき核酸の大きさに依存することを認識するであろう。
【0033】
PTMをコードする核酸分子が利用される場合、当該分野で既知のクローニング技術が、核酸分子の発現ベクターへのクローニングに用いられてもよい。使用され得る組換えDNA技術の分野において一般的に知られている方法が、Ausubel et al.(eds.),1993,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY;及びKriegler,1990,Gene Transfer and Expression,Alaboratory Manual,Stockton Press,NYに記載されている。
【0034】
主体のPTMをコードするDNAは、大規模でのDNAの複製を提供し、PTMの転写を導く必要なエレメントをも含有する、種々の宿主ベクター系に組換え操作によって組込まれるてもよい。患者の標的細胞を形質移入するような構築の使用によって、内部的に発現されたプレ−mRNA標的と相補塩基対を形成し、それによって複合核酸分子間のトランス−スプライシング反応を亢進するのに十分な量の転写が起こることになる。例えば、ベクターは、細胞によって取り込まれ、PTM分子の転写を導くように、イン・ビボで導入される。このようなベクターは、それが転写されて所望のRNAを産生する限り、エピゾームに残るか、染色体として組み込まれる。このようなベクターは、当該分野において標準的な組換えDNA技術の方法によって構築することができる。
【0035】
対象とするPTMをコードするベクターは、哺乳動物細胞で複製及び発現に用いられるプラスミド、ウイルス又は当業界において知られた他のものである。PTMをコードする配列の発現は、哺乳動物、好ましくはヒト細胞において作用する当業界において知られたいずれのプロモーターによっても制御できる。そのようなプロモーターは誘導可能であり、また構築可能である。このようなプロモーターとしては、限定されるものではないが、例えばSV40初期プロモーター領域(Benoist,C.and Chambon,P.1981,Nature 290:304-310)、ロウスザルコーマウイルスの3’ロング末端リピート(Yamamoto te al.,1980,Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al.,1981、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,78:14411445)、メタロチアネン遺伝子の調節配列(Brinster et al.,1981,Nature296:39-42)、ウイルスCMVプロモーター、ヒト絨毛性ゴナトロピンーβープロモーター(Iiollenberg et al.,1994,Mol.Cell.Endocrinology 106:111-119)などが挙げられる。いずれのタイプのプラスミド、コスミド、YAC、ウイルスベクターも、組織部位に直接導入できる組換えDNA構築物を調製するのに用いることができる。あるいは、望ましいターゲット細胞に選択的に感染するウイルスベクターを用いることもできる。
【0036】
ペプチドアフィニィティー精製タッグをコードするPTMの使用のためには、ランダムターゲット結合部位を含むヌクレオチド配列をPTMに挿入し、選択的哺乳動物発現ベクターシステムにクローン化するのが好ましい。これらに限定されるものではないが、tk欠損細胞における単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼの発現選択系、hgprt欠損細胞におけるヒポキサンチンーグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼの選択発現系及びaprt欠損細胞におけるアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼの発現選択系などの多くの選択系を用いることができる。また、メトトレキセートに対する耐性を付与するジヒドロホレートトランスフェラーゼ(dhfr)、ミコフエノール酸に対して耐性を付与するキサンチンーグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)、アミノグリコシドG−418に対して耐性を付与するネオマイシン(neo)、ヒグロマイシンに対して耐性を付与するヒグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(hygro)などの抗代謝耐性を選択に利用することもできる。本発明の好ましい態様においては、細胞培養物を、唯一のベクターが存在するような細胞に対して低い比率のベクターで、あるいは一つの細胞において限られた数のベクターで形質転換される。本発明の実施に用いられるベクターとしては、レトロウイルス又はアデノウイルス関連ウイルスなどのウイルス発現ベクターなどの原核発現ベクターが挙げられる。
【0037】
5.3. トランスースプライシング分子の使用及び投与
5.3.1. 遺伝子調節、遺伝子修復及びターゲット細胞死のためのPTMの使用
本発明の組成物及び方法は、遺伝子調節、遺伝子修復、ターゲット細胞死などの各種に適用できる。トランスースプライシングは、毒性を有する蛋白を細胞に導入するのに用いることができる。更に、PTMをウイルスmRNAに結合しウイルスmRNAの機能を破壊するように、あるいはウイルスmRNAを発現する細胞を破壊するように工夫することができる。本発明の他の態様では、有害なmRNA転写物にストップコドンを設けて転写物の発現を減少させるようにPTMを工夫することもできる。
末端が欠失した又は点変異を含む転写物を修復するためにターゲットトランスースプライシングを用いることができる。本発明のPTMは、特定の変異の上流または下流あるいは未熟3’の上流のターゲット転写物を解裂し、変異を含む転写物の部分を機能的配列に置換するトランス−スプライシングにより変異転写物を修正するようにデザインされている。
嚢胞性繊維症(CF)は、最も一般的な致命的なヒトの遺伝病である。遺伝子及び分子分析により、嚢胞性繊維症関連遺伝子が単離されその蛋白生産物が推定されている(Kerem,B.S.et al.,1989,Science 245:1073-1080;Riordan et al.,1989,Science 245:1066-1073;Rommans, et al.,1989,Science245:1059-1065)。CF関連遺伝子の蛋白生産物は、嚢胞性繊維症膜転移コンダクタンスレギュレーター(CFTR)と呼ばれている。本発明の特定の態様では、嚢胞性繊維症膜転移コンダクタンスレギュレーター(CFTR)をコードするDNAにおける欠損を修正して、嚢胞性繊維症膜転移コンダクタンスレギュレーターをコードするDNAが発現され機能的塩素イオンチャンネルが患者のエアウエイ表皮細胞に生じるように、PTMを用いる事が出来る。
【0038】
最も一般的な嚢胞性繊維症変異は、CFTRアミノ酸配列の508位のフェニルアラニンをコードするエクソン10の3つのヌクレオチドの欠失であることが集団の調査によって明かになった。図15に示されているように、トランス−スプライシング反応により、CFTRアミノ酸配列の508位の欠失を修正することができた。遺伝子欠損の修正に用いたPTMは、CFTR BDイントロン9配列、スペーサー配列、分岐点、ポリピリジン区域、3’スプライス部位及び野性型CFTR BDエクソン10配列を含んでいた(図13)。トランス−スプライシング反応を利用したCFTRをコードする変異DNAの修正に成功したことは、一般的な遺伝子欠損の修正にPTMが適用できることを支持している。
リポソームへのカプセル化、マイクロ粒子、マイクロカプセル、組成物を発現できる組換え細胞、レセプター仲介エンドサイトーシス(Wu and Wu,1987,J.Bol.Chem.262:4429-4432)、レトロウイルス又は他のベクターの一部としての核酸の構築、DNAのインジェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシクム仲介トランスフェクションなどの各種のデリバリーシステムが知られており、これらは、本発明の組成物を細胞へ導入するのに用いられる。
本発明の組成物及び方法は、特定のタイプの細胞の除去又は変異が効果的な癌、及び他の重篤な疾患、自己免疫疾患および他の病原性症状などの治療に有効である。更に、本発明の組成物及び方法は、遺伝的な遺伝子疾患を有する個人の細胞に機能的で生物学的に活性な分子をコードする遺伝子を提供して、欠失した又は変異した遺伝子生産物の発現により正常な表現型を形成するのに用いることが出来る。
【0039】
本発明の好ましい態様においては、PTMをコードする配列を含む核酸は、遺伝子デリバリーによって投与され宿主細胞に投与されてPTM機能を促進する。この態様では、PTM産生を促進することによって、核酸が効果を仲介する。当業界において利用できる宿主細胞への遺伝子デリバリー法はいかなるものも本発明により利用できる。遺伝子デリバリー法の一般的な概要については、Strauss,M and Barranger,J.A.,1997,Concepts in Gene Therapy,by Walter de Gruyter & Co.,Berlin;Goldspiel et al.,1993,Clinical Pharmacy12:488-505;Wu and Wu,1991,Biotherapy 3:87-95;Tolstoshev,1993,Ann.Rev.Pharmacol Toxicol,33:573-596;Mulligan,1993,Science 260;926-932;及びMorgan and Anderson,1993,Ann.Rev.Biochem.62:191-217;1993,TIBTECH 11(5):155-215などが参照される。具体的方法を以下に記載する。
【0040】
宿主細胞への核酸のデリバリーは、宿主を核酸又は核酸を保持するベクターに直接的に曝すことにより、あるいは宿主細胞を最初にin vitroで核酸で形質転換し、次いで宿主に移植する間接的方法により行われる。これら2つの方法は、in vivo又はex vivo遺伝子デリバリーとして公知である。
特定の態様では、核酸はin vivoで直接的に投与されて発現してPTMを産生する。これは、当業界で公知の各種の方法、例えば、核酸を適当な核酸発現ベクターの一部として構築してそれを分子内物となるように投与する方法、欠損又は変性レトロウイルス又は他のベクター(U.S.P.No.4,980,286)を用いた感染法、裸のベクターとして直接投与による方法、マイクロ粒子の射突による方法(ジーンガン:Biolistic,Dupont)、脂質又は細胞表面レセプター又はトランスフェクション試薬での皮膜による方法、リポゾームへのカプセル化による方法、マイクロ粒子又はマイクロカプセルによる方法、核に進入することが知られているペプチに核酸を結合させて投与する方法(Wu and Wu,1987,J.Biol.Chem.262:4429-4432)などにより、行うことができる。
特定の態様では、PTMを含むウイルスベクターを用いることができる。例えば、ウイルスゲノムのパッケージング及び宿主細胞DNAへの導入に必要でないレトロウイルス配列を削除したレトロウイルスベクター(Milier et al.,1993,Meth.Enzymol.217:581-599)を利用することが出来る。あるいは、アデノウイルス又はアデノ関連ウイルスベクターを、細胞又は組織への遺伝子デリバリーに用いることができる(アデノウイルスに基づく遺伝子デリバリーの総説としてKozarsky and Wilson,1993,Current Opinion in Genetics and Development 3:499-503)。
【0041】
細胞への遺伝子デリバリーの他のアプローチとしては、エレクトロポレーション、リポフェクチン、リン酸カルシウム仲介トランスフェクション又はウイルスインフェクションなどによる組織培養中の細胞への遺伝子導入などが挙げられる。通常、導入法は、細胞への選択マーカーの導入を含むものである。細胞は次いで選択条件下に置かれ、導入遺伝子を取りこみ発現する細胞を単離する。得られる組換え細胞は、当業界に公知の各種方法により宿主へデリバリーされる。好ましい態様では、遺伝子デリバリーに用いられる細胞は、宿主細胞中で自己複製するものである。
また本発明は、薬学的に許容できる担体と共に、有効量のPTM又はPTMをコードする核酸を含む薬学的組成物が提供される。特定の態様では、薬学的に許容できるとは、連邦政府又は国家の規則代理人によって許可されるもの、U.S.Pharmacopedia又は他の一般的に動物用に特にヒト用に認められた薬局方に記載されたものを意味する。担体とは、薬物と一緒に投与する希釈剤、アジュバント、賦形剤、ビークルなどを意味する。適当な担体の例は、E.W.MartinのRemington's Pharmaceutical Scienceに記載されている。
【0042】
特定の態様では、本発明の薬学的組成物は、(1)内因性蛋白又は機能のレベルがないあるいは低い(正常又は望ましいものに比べて)病気又は障害、例えば蛋白を欠いているあるいは遺伝子的に欠陥を有し生物学的に不活性または非反応性又は抑制されている宿主、又は(2)in vitro又はin vivoアッセイによりPTMの有用性により特定の蛋白の機能が抑制されていることが判明した病気又は障害などに投与される。PTM仲介トランス−スプライシング反応により得られるキメラmRNAによりコードされる蛋白の活性は、宿主組織サンプルをバイオプシサンプルなどから得てin vitroでmRNA又は蛋白レベル、発現したキメラmRNAの活性及び/又は構造をアッセイすることにより容易に検出できる。多くの標準的方法、例えば、キメラmRNAによってコードされる蛋白を検出し及び/又は視覚化するイムノアッセイ(ウエスタンブロット、免疫沈降それに続くドデシル硫酸ポリアクリルアミドゲル、電気泳動、イムノサイトケミストリー)
及び/又はキメラmRNAの存在を検出及び/又は視覚化することによるキメラmRNAの形成を検出するアッセイなどが挙げられる。
【0043】
また本発明は、薬学的に許容できる担体と共に、有効量のPTM又はPTMをコードする核酸を含む薬学的組成物が提供される。特定の態様では、薬学的に許容できるとは、連邦政府又は国家の規則代理人によって許可されるもの、U.S.Pharmacopedia又は他の一般的に動物用に特にヒト用に認められた薬局方に記載されたものを意味する。担体とは、薬物と一緒投与する希釈剤、アジュバント、賦形剤、ビークルなどを意味する。適当な担体の例は、E.W.MartinのRemington's Pharmaceutical Scienceに記載されている。特定の態様では、本発明の薬学的組成物を、治療が必要な領域に局所的に投与するのが望ましい。これは例えば、手術中の局所注入、手術後の包帯と共に局所適用、注射、カテーテル、坐剤、シアラスチックな膜又はファイバーなどのポーラス又は非ポーラス物質などによる移植等により投与される。放出制御ポリマー、ヒドロゲルなどのマトリックス、ナノ粒子などの他の薬物放出制御デリバリーシステムを利用することもできる。
PTMは、ターゲット細胞で望ましい効果を生み出すような効果的な量で投与される。PTMの効果的な投与は、生物学的活性半減期、バイオアベイラビリテー、毒性などのパラメーターを考慮した公知の手法により決定される。本発明の組成物の有効な量は、治療する病気及び障害の本質に依存し、標準的な臨床技術により決定できる。更に最適投与量を同定するために、in vitroアッセイを任意に用いることができる。
【0044】
本発明はまた医薬パック又はキットであって、一又は二以上の本発明の医薬組成物の成分を満たした一又は二以上の容器を含み、医薬又は生物学的製品の製造、使用又は販売を制限する政府官庁により処方された形態の警告であって、その警告が、ヒト投与用の製造、使用又は販売の官庁による許可を反映するもの、を任意に付しても良い。
【0045】
5.3.2.エキソンのタギングのためのPTM分子の使用
現在のヒト及び他の生物のゲノムの配列決定及び特徴決定の努力の点から、そのような特徴決定を容易にする方法に対するニーズが存在する。現在入手されるゲノムマッピング及び配列決定により得られる情報の大部分は、cDNAへのmRNAの逆転写により作られる相補性DNA(cDNA)ライブラリーから誘導される。不幸にも、この工程は、イントロン配列及びエキソン/イントロン境界の位置に関する情報のロスを生じる。
【0046】
本発明は、プレ−mRNA中のエキソン−イントロン境界のマッピングのための方法であって、(i)プレ−トランス−スプライシング分子の部分がターゲットプレ−mRNAの部分へとトランス−スプライスされる条件下で、ランダムターゲット結合ドメインを含むプレ−トランス−スプライシング分子をプレ−mRNA分子に接触させ、キメラmRNAを形成すること、(ii)該キメラmRNA分子を増幅すること、(iii)増幅した分子を選択的に精製すること、及び(iv)増幅した分子のヌクレオチド配列を決定し、それによりイントロン−エキソン境界を同定すること、
を含む、上記方法を包含する。
【0047】
本発明の一の態様において、PTMsをプレ−mRNA分子中のエキソン−イントロン境界の場所を突き止めるために用いることができる。イントロン−エキソン境界のマッピングにおいて使用するPTMsは、上記5.1節で既述したものに類似する構造を有する。特に、PTMsは(i)多くのプレ−mRNAに結合するように設計されたターゲット結合ドメイン、(ii)ブランチポイント、ピリミジン域、及び3’スプライス受容体部位を含む3’スプライス領域、(iii)mRNAスプライス部位をターゲット結合ドメインから分離するスぺーサー部位、並びに(iv)プレ−mRNA上にトランス−スプライスされるタグ領域、を含む。イントロン−エキソンマッピングの目的のためには、PTMsはランダムヌクレオチド配列を含むターゲット結合ドメインを含むように遺伝子操作される。ランダムヌクレオチド配列は、核の機構を処理するスプライソソームが、PTMの部分(タグ又はマーカー領域)をプレ−mRNAの部分へとトランス−スプライスすることができるように、プレ−mRNAに結合し、固定することができるヌクレオチド配列を少なくとも15〜30、最大では数百まで、含む。短いターゲット結合ドメインを含む、またはイノシンを含むPTMsは、よりストリンジェントでない条件下で、プレ−mRNA分子に結合する。更に、強いブランチポイント配列及びピリミジン域は、PTMトランス−スプライシングの非−特異性を増す働きをする。
【0048】
PTM分子中のターゲット結合ドメインとして使用するランダムヌクレオチド配列は、種々の異なる方法により作られ、その中には、制限エンドヌクレアーゼによるDNAの消化、又はDNAの機械的切断が含まれるが、これらに限定されない。そのようなランダムヌクレオチド配列の使用は、細胞中で発現される各ターゲットプレ−mRNAにつて、異なる結合活性を有するPTM分子の巨大な並びを作成するようデザインされる。オリゴヌクレオチドのランダム化されたライブラリーは、プラスミドベクター中への遺伝子操作されたPTM分子へとクローニングするための、各末端上の適当な制限エンドヌクレアーゼ認識部位を用いて合成される。ランダム化したオリゴヌクレオチドがリゲートされ、発現されると、PTMsのランダム化された結合ライブラリーが作成される。
【0049】
本発明の特定の態様において、ランダムヌクレオチド配列を含むターゲット結合ドメインを含むPTM分子をコードする発現ライブラリー当業者にとって周知の種々の方法を用いて作成される。理想的には、ライブラリーは細胞中で発現される各ターゲットプレ−mRNAと相互作用することができるPTM分子を含むのに十分なほど複雑である。
【0050】
例により、図9はイントロン−エキソン境界のマッピングに用いられるPTMsの二つの形態を図式的に表す。左側のPTMはプレ−mRNA3’スプライス部位への非−特異的なトランス−スプライシングをすることができ、一方、右側のPTMはプレ−mRNA5’スプライス部位へのトランス−スプライシングをすることができる。PTMとターゲットプレ−mRNAとの間のトランス−スプライシングは、真正のエキソンの3’又は5’上に特定のヌクレオチド配列「タグ」を有するキメラmRNA分子を与える。
【0051】
選択的な精製に続いて、次にPTMのタグヌクレオチド配列で始まり、タグされたエキソンの配列へと進行する、プライマーを用いたDNA配列決定反応をおこなう。タグヌクレオチド配列の最後のヌクレオチドに直接続く配列は、エキソン境界を表す。イントロン−エキソンタグの同定のため、本発明のトランス−スプライシング反応は、インビトロ又はインビボのいずれかにおいて、当業者に周知の方法を用いて行われ得る。
【0052】
5.3.3細胞中で発現されるタンパクの同定のためのPTM分子の使用
本発明の他の態様において、PTM媒介トランス−スプライシング反応は、細胞中に発現される未だ検出されていない、未知のタンパクの同定に用いることができる。この方法は、なかんずく、タンパクのサイズの小ささ、タンパクの低濃度により、または二次元電気泳動において、他のタンパクと類似する移動パターンを示すことによる検出の失敗により、二次元の電気泳動、又は他の方法により検出することができないタンパク質の同定に特に有用である。
【0053】
本発明は、細胞中に発現するタンパクの同定方法であって、(i)プレ−トランス−スプライシング分子の部分がターゲットプレ−mRNAの部分へとトランス−スプライスされる条件下で、ランダムターゲット結合ドメインとペプチドタグをコードするヌクレオチド配列を含むプレ−トランス−スプライシング分子をプレ−mRNA分子に接触させ、融合ポリペプチドをコードするキメラmRNAを形成すること又はそれをゲル電気泳動により分離すること、(ii)該融合ポリペプチドをアフィニティー精製すること、及び(iii)融合タンパクのアミノ酸配列を決定することを含む、上記方法に関する。
【0054】
細胞中に発現されるタンパクの同定のためには、本発明のPTMsは(i)ランダム化されたヌクレオチド配列を含むターゲット結合ドメイン、(ii)ブランチポイント、ピリミジン域、及び3’スプライス受容体部位、並びに/又は5’スプライスドナー部位を含む3’スプライス領域、(iii)PTMスプライス部位をターゲット結合ドメインから分離するスぺーサー部位、並びに(iv)マーカー又はペプチドアフィニティ精製タグをコードするヌクレオチド配列、を含むように、遺伝子操作される。そのようなペプチドタグには、HISタグ(6ヒスチジン連続残基)(Janknechtら、1991年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:8972-8976)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)(Smith,D.B.及びJohnson,K.s.1988,Gene67:31)(Pharmacia)又はFLAG(Kodak/IBJ)タグ(Nisson.J.ら、J.Mol.Recognit.、1996,5,585-594)が包含されるが、これらに限定されない。そのようなPTMsを用いたトランス−スプライシングは、マーカー又はペプチドアフィニティ精製タグに繋がった、細胞中において通常発現されるタンパク配列を含む、キメラmRNA分子の生成を与える。そのような方法の所望のゴールは、細胞中で合成される全てのタンパクがマーカー又はペプチドアフィニティタグを受けとり、それにより細胞中に発現する各タンパクを同定するための方法を提供することである。
【0055】
本発明の特定の態様において、ランダムヌクレオチド配列を含む異なるターゲット結合ドメインを有するPTMsをコードするPTM発現ライブラリーが作成される。所望のゴールは、細胞中で発現される各プレ−mRNAに結合することができるPTMを作るのに十分複雑なPTM発現ライブラリーを作製することである。好ましい態様において、ライブラリーは、哺乳類の発現ベクター中へクローニングされ、それにより、一つ又は、多くとも数個のベクターがいずれか一つの細胞中に存在することになる。
【0056】
キメラタンパクの発現を同定するため、宿主細胞をPTMライブラリーで形質転換し、植え付け、一のPTMを含む個々のコロニーが成長し、精製されるようにする。単一のコロニーを選択し、適当な培地中に増殖させ、標識したキメラタンパクのエキソン(複数でも良い)断片を、例えば、アフィニティー精製タグを用いて他の細胞タンパクから分離する。例えば、アフィニティークロマトグラフィーは、FLAGタグなど、ペプチドタグに特異的に結合する抗体の使用を含む。代替的に、HISタグを用いる時には、融合タンパクは、Ni2+ニトリロ酢酸アガロースカラムを用いて精製され、それにより、イミダゾール含有緩衝液により溶出される結合したペプチドの選択的溶出が可能となる。GSTタグを用いる時、融合タンパクはグルタチオン−S−トランスフェラーゼアガロースビーズを用いて精製される。融合タンパクは、次に遊離グルタチオンの存在下に溶出される。
【0057】
キメラタンパクの精製後、分析を行い、融合タンパクのアミノ酸配列を決定する。融合タンパクのアミノ酸配列は、当業者にとって周知の方法、例えば、エドマン分解とそれに次ぐ、HPLCを用いたアミノ酸分析、質量分析、またはアミノ酸アナライザーション、を用いて決定される。同定した後、ペプチド配列を例えばGeneBank等のタンパクデータベース中に入手可能な配列と比較する。もし部分的なペプチド配列が既知であれば、更なる分析は行わない。もし部分的なタンパク配列が未知であれば、完全なタンパク配列を決定するため、当該タンパクのより完全な配列決定を行うことができる。融合タンパクは、全長タンパクの一部分しか含まないので、全長タンパクをコードする核酸が慣用の方法により単離される。例えば、部分的なタンパク配列のオリゴヌクレオチドプライマーが、cDNAライブラリーをスクリーンするためのプローブ又はPCRプライマーとして使用するために生成される。
【0058】
6.例:トランス−スプライシング分子の製造
以下の節は、PTMsの製造及びそのような分子がトランス−スプライシング反応を媒介することができ、キメラmRNA分子の製造をなし得ることの例証を説明する。
【0059】
6.1 材料及び方法
6.1.1. プレ−mRNA分子の構築
野生型のジフテリア毒素サブユニットA(DT−A、野生型寄託番号K01722)及びDT−A変異体(CRM197、酵素活性なし)を含むプラスミドをVirginia Johnson博士、Food and Drug Administration、Bethesda、Marylandから得た(Uchidaら、1973、J.Biol.Chem.248:3838)。インビトロ実験のため、DT−Aをプライマー:DT−1F
及びDT−2R
を用いて増幅し、PstI及びHindIIIにより切断し、PstI及びHindIII消化したpBS(−)ベクター(Stratagene,La Jolla、CA)中へクローニングした。得られたクローンpDTAを個々のPTMsを構築するのに用いた。(1)pPTM+:ターゲットした構築物。IN3−1
及びIN2−4
プライマーをEcoRI及びPstI消化pDTA中へインサートすることにより作製。(2)pPTM+Sp:pPTM+と同様に、但し、BDとBPとの間に30bpのスぺーサーを有する。
pPTM+をXholで消化し、オリゴヌクレオチド中、スぺーサーS
及びスペーサーAS
をリゲートすることにより作製。インビボ研究のため、pcPTM+SpのEcoRI及びHindIII断片を哺乳類の発現ベクターpcDNA3.1(Invitrogen)中にCMVプロモーターの制御下でクローンした。また、コドン14のメチオニンをイソロイシンに代え、翻訳の誘発を防止した。得られたプラスミドをpcPTM+Spと指定した。(3)pPTM+CRM:pPTM+Spと同様に、ただし、野生型DT−AをCRM変異体DT−A(T.Uchidaら、1973、J.Biol.Chem.248:3838)。これは、プライマーDT−1F及びDT−2Rを用いたDT−A変異体(G52Eにおける変異)のPCR増幅により作製された。インビボ研究のためには、PTM+CRMのEcoRI HindIII断片を、pc3.1DNA中へクローンし、pcPTM+ARMとした。(4)PTM−:非ターゲット構築。PTM+のEcoRI及びPstIによる消化、結合ドメインの除去のためゲル精製し、次にオリゴヌクレオチド
のリゲートにより作製。(5)PTM−Sp、PTM−と同一のバージョン、但し、PstI部位に30bpのスペーサー配列を有する点を除く。同様に、スプライス変異体[Py(−)AG(−)及びBP(−)Py(−)AG(−)]及び安全変異体(safety variants)[PTM+SF-Py1,PTM+SF-Py2,PTM+SFBP3及びPTM+SFBP3-Py1]を、特定の配列の挿入、欠失(表1参照)のいずれかにより作製した。
【0060】
【0061】
太字のヌクレオチドは正常なBP、PPT及び3’スプライス部位と比較した突然変異を表す。
【0062】
枝分かれ部位Aには下線を引いてある。イタリック体のヌクレオチドはPTM中のBP配列をマスクするために安全BD中に導入されたミスマッチを表す。
【0063】
ダブルトランス−スプライシングPTM構築体(DS-PTM)もまた、PTM+SFの毒素コード配列の3’端に、5’スプライス部位と、βHCGプレmRNAの第二イントロンに相補的な第二の標的結合ドメインを付加して作った(図A)。
【0064】
6.1.2. βHCG6標的プレmRNA
インビトロ標的プレmRNAを作成するために、βHCG遺伝子6(受託番号X00266)のSacl断片をpBS(−)にクローニングした。これによりヌクレオチド460−1265(これは5’非翻訳領域、開始コドン、エクソン1、イントロン1、エクソン2及びイントロン2のほとんどを含む)から805bp挿入体を作成した。インビボ研究のために、EcoR1及びBamH1断片を哺乳類発現ベクター(pc3.1DNA)の中にクローニングしてβHCG6を作成した。
【0065】
6.1.3 mRNA調製
インビトロスプライシング実験のために、βHCG6、β−グロビンプレmRNA及び様々なPTMmRNAをT7mRNAポリメラーゼ(Pasman & Garcia-Blanco,1996,Nucleic Acids Res.24:1638)を用いて、BamH1及びHindIII消化プラスミドDNAのインビトロ転写によってそれぞれ合成した。合成されたmRNAを変性ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動により精製し、生成物を切り取って溶出した。
【0066】
6.1.4 インビトロスプライシング
PTM及び標的プレmRNAを98℃に加熱してアニーリングし、次いで30−34℃にゆっくりと冷やした。各反応液は12.5μlの最終体積中に、4μlのアニールされたmRNA複合体(100ngの標的と200ngのPTM)、1Xスプライスバッファー(2メモランダムMgCl2、1メモランダムATP、5メモランダムのリン酸クレアチニン及び40メモランダムのKCl)、及び4μlのHeLaスプライス核抽出物(Promega)を含んでいた。反応液を30℃で指示された時間インキュベートし、反応を等量の高濃度塩バッファー(7M尿素、5%SDS、100メモランダムLiCl、10メモランダムEDTA及び10メモランダムトリスHCl、pH7.5)の添加により止めた。核酸をフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(50:49:1)による抽出、次いでエタノール沈殿により精製した。
【0067】
6.1.5 逆転写PCR反応
RT−PCR分析をEZ−RT PCRキット(パーキンエルマー、Foster City、カリフォルニア)を用いて行った。各反応液は50μl反応体積中に、10ngのシス若しくはトランススプライストmRNA又は1−2μgの全mRNA、0.1μlの各3’及び5’特異的プライマー、0.3メモランダムの各dNTP、1X EZバッファー(50メモランダム ビシン、115メモランダム 酢酸カリウム、4%グリセロール、pH8.2)、2.5メモランダム 酢酸マグネシウム、及び5UのrTthDNAポリメラーゼを含んでいた。逆転写を60℃で45分間行い、次いで得られたcDNAのPCR増幅を以下のように行った。1サイクルの94℃、30秒間の初期変性、及び25サイクルの94℃、18秒間の変性及び60℃、40秒間のアニーリングと伸張、次いで70℃で7分の最終伸張。反応生成物をアガロースゲルで電気泳動により分離した。
【0068】
実験に使用したプライマーは以下のとおりであった。
【0069】
6.1.6 細胞増殖、トランスフェクション及びmRNA単離
ヒト肺がん細胞系H1299(ATCC受託番号CRL−5803)を10%ウシ胎仔血清で補充したRPMI培地で37℃、5%CO2環境で増殖させた。細胞を、pcSp+CRM(CRMは非機能性毒素)、PTMを発現するベクター又はリポフェクタミン試薬(Life Technologies,Gaithersburg,MD)を用いたベクター単独(pcDNA3.1)でトランスフェクトした。トランスフェクションの2週間後にネオマイシン抵抗性(neor)コロニー形成について検定のスコア付けをした。4つのneorコロニーを選択し、継続したneo選択下で拡張した。全細胞mRNAをRNAエクソール(BioChain Institute,Inc.,San Leandro,CA)を用いて単離し、RT−PCRのために使用した。
【0070】
6.1.7 ヌードマウスの腫瘍におけるトランススプライシング
11匹のヌードマウスを、1x107H1299ヒト肺腫瘍細胞で背側の腹側部皮下スペースの両側に注射した(但し、B10、B11及びB12は一つの腫瘍を持っていた)(第1日目)。第14日目にマウスに適量の麻酔薬を投与し、いくつかの配向でのエレクトロポレーションで又はエレクトロポレーションなしで、pcβHCG6又はpcPTM+Spとともに若しくはそれなしで、100μgのpcSp+CRMを含む全量100μlの生理食塩水を注射した。右側の腫瘍に注射した溶液には針の跡を印すためにインディアインクも含ませた。48時間後に動物を殺し、腫瘍を切り取り、ただちに−80℃で凍結した。分析のため、10mgの各腫瘍をホモジェネートし、mRNAをDynabeadsmRNAダイレクトキット(Dynal)を用いて、製造者の指示書に従って単離した。精製したmRNA(10μl全体積のうちの2μl)を先述のようにβHCG−F及びDT−5Rプライマーを用いてRT−PCTに付した。すべての試料をD−3R、入れ子のDT−Aプライマー及びビオチン化したβHCG−Fを用いて再増幅し、生成物を2%アガロースゲル上で電気泳動により分析した。バンドを形成した試料をM280 Streptavidin Dynabeadsを用いて一本鎖DNAへと処理し、毒素特異的プライマー(DT−3R)を用いて配列決定した。
【0071】
6.2 結果
6.2.1 PTMの合成
18nt標的結合ドメイン(βHCG6イントロン1に相補的)、30ヌクレオチドスペーサー領域、分岐点(BP)配列、ポリピリミジン領域(tract)(PPT)及びジフテリア毒素サブユニットA(DT-A)をコードするエキソンのすぐ上流の3’スプライス部位のAGジヌクレオチド(Uchida et al.,1973,J.Biol.Chem.248:3838)を含む、原型のトランススプライシングmRNA分子、pcPTM+Sp(図1A)を構築した。その後DT−Aエキソンを修飾してコドン14の翻訳開始部位を除去した。PTM構築体をトランススプライシングを発現すべく最大活性を示すように設計した。それゆえ、それらは強力な3’スプライスエレメントを含んでいた(酵母BP及び哺乳類PPT)(Moore et al.,1993,In The mRNA World,R.F.Gesteland and J.F.Atkins,eds.(Cold Spring Harbor,New York,Cold Spring Harbor Laboratory Press)。βHCG6プレmRNA(Talmadge et al.,1984,Nucleic Acids Res.12:8415)を、この遺伝子がほとんどの腫瘍細胞において発現されるのでモデル標的として選ばれた。それは、下垂体腺及び性腺におけるいくつかの例外はあるが正常な成人細胞では発現されない。(Acevedo et al.,1992,Cancer76:1467;Hoon et al.,1996,Int J.Cancer 69:369;Bellet et al.,1997,Cancer Res.57:516)。図1Cに示すように、pcPTM+Spは従来のワトソンクリック塩基対を、βHCG6イントロン1の3’末端を持ったその結合ドメインにより形成し、標的のイントロニック3’スプライスシグナルをマスクする。この特徴は標的とPTMの間のトランススプライシングを容易にするよう設計される。
【0072】
HeLa核抽出物を確立されたスプライシング手法に沿って用い(Pasman & Garcia-Blanco,1996,Nucleic Acids Res.24:1638)、PTM構築体がβHCG6プレmRNA標的に侵入し得るかどうかをテストした。インビトロトランススプライシングの生成物をキメラmRNA分子に特異的なプライマーを用いてRT−PCRにより検出した。成功したトランススプライシング反応の予想される生成物はβHCG6の第一エクソンと、そのすぐ後に続くDT−AをコードするpcPTM+Spから寄与するエキソンを含むキメラmRNAである(図1C)。このようなキメラmRNAはプライマーβHCG−F(βHCG6エキソン1に特異的)及びDT−3R(DT−A、図2、レーン1−2に特異的)を用いるRT−PCTにより容易に検出された。時間ゼロにおいてすなわちATPの不存在下においては、466bp生成物は観察されなかった。このことはこの反応がATPと時間の両方に依存性であるということを示していた。
【0073】
pcPTM+Spの標的結合ドメインはβHCG6イントロン1プレmRNAに相補的な18ヌクレオチドを含んでおり、効率的なトランススプライシングを示した(図2、レーン1−2)。トランススプライシング効率は、非相補的な18ヌクレオチド「非結合ドメイン」を含む非標的PTM−Spを用いて少なくとも8分の1に減少した(図2、レーン3−4)。結合ドメインとBPの間のスペーサーがある場合とない場合のPTMmRNAのトランススプライシング効率も比較した。この実験はスペーサーの付加によりトランススプライシングの効率が有意に増大することを示した(図2B、レーン2+5)。効率的なトランススプライシングに要求されるスプライシングファクターを採用することを容易にするために、3’スプライス部位と、ドメイン/標的相互作用により生じた二重鎖第二構造との間にいくつかのスペースが必要となり得る。
【0074】
トランススプライシング特異性についてのPTM長の効果を調べるために、より短いPTMをAccI切断PTMプラスミドから合成した(図1参照)。これはDT−Aコード領域の3’末端から479ntを除去した。図2Bは標的とされた短いPTM(+)(レーン10−12)のトランススプライシング能力を、標的とされない短いPTM(−)(レーン14−17)と比較して示す(レーン14−17)。短いPTM+は、その片方の非標的の短いPTM(図2B、レーン17)よりも、実質的により多くのトランススプライスされた生成物を生じた(図2B、レーン12)。これらの実験はより長いPTMの方がトランススプライシングを非特異的に仲介する能力が高いであろうことを示している。
【0075】
6.2.2. PTMスプライセオソーム仲介トランススプライシングの正確性
pcPTM+SpとβHCG6標的の間のトランススプライシングが正確であることを確認するために、RT−PCT増幅生成物を5’ビオチニル化βHCG−F及び非ビオチニル化DT−3Rプライマーを用いて生成した。この生成物は一本鎖DNAに変えて、Mitchel及びMerril(1989,Anal.Biochem.178:239)の方法を用いて、プライマーDT−3R(DT−A特異的逆プライマー)で直接配列決定した。トランススプライシングは予想されたスプライス部位(図3)の間で正確に起こり、従来のプレmRNAがスプライシングの間遺伝子工学PTM構築体により侵入され得ること、さらにこの反応が正確であることを確認した。
【0076】
さらに、ダブルスプラシングPTM(DS−PTM)の選択的トランススプライシングが観察された(図8B)。DS−PTMは3’又は5’スプライス部位のいずれかに貢献することによりトランススプライシングを生じることができる。さらに,3’部位と5’部位の両方において同時にダブルトランススプライシングを行うことができ、それによりエキソン置換を可能にするDS−PTMを構築することができる。図8Bはこの構築体において5’スプライス部位が標的βHCGプレmRNA:DS−PTMの1:1濃度でより活性であることを示している。1:6の比では5’スプライス部位はより活性である。
【0077】
6.2.3 3’スプライス部位はPTMトランススプライシングにとって本質的である
一般に、3’スプライス部位は三つの要素を含んでいる。1)アクセプター部位の5’に位置するBP配列、2)短いピリミジン残基からなるPPT、及び3)イントロン−エキソン境界におけるYAGトリヌクレオチドスプライス部位アクセプター(Senapathy et al.,1990,Cell 91:875;Moore et al.,1993)。これらの配列要素の一つの削除又は変更はスプライシングを減少させるか、あるいはなくしてしまうことが知られている(Aebi et al.,1986;Reed & Maniatis 1988,Genes Dev.2:1268;Reed,1989,Genes Dev.3:2113;Roscigno et al.,1993,J.Bio.Chem.268:11222;Coolidge et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:888)。標的トランススプライシングにおけるこれらの保存された要素の役割は実験的に処理された。一つのケース[(BP(−)Py(−)AG(−)]では、すべての三つの要素(BP、PPT及びAGジヌクレオチド)をランダムな配列で置き換えた。PPT及び3’スプライス部位アクセプターが突然変異を受けランダム配列で置き換わっている第二のスプライシング突然変異体[(Py(−)AG(−)]が構築された。いずれの構築体もインビトロではトランススプライシングを支持することはできなかった(図2A、レーン5−8)。これは、従来のシススプライシングの場合と同様に、PTMトランススプライシングプロセスもまた3’スプライス部位において機能的なBP、PPT及びAGアクセプターを要するということを示唆するものである。
【0078】
6.2.4.特異性を増大させるための”安全な”スプライス部位の発生:
結合領域の封入によりまたはPTMを短縮することにより達成される標的特異性の水準を改良するために、数種のPTM構造の標的結合領域は(”安全なPTM”と称される)3’スプライス部位をマスクするための分子内茎部を造るために修飾された。安全な茎部はPTM3’スプライス部位またはこれに隣接する配列の領域と部分的に塩基対にし、それにより標的獲得のまえにPTM3’スプライス部位へのスプライシング複合体成分の接近を遮断する、結合領域の部分により形成される(図4A、PTM+SF)。PTM結合領域およびβHCG6の遊離部分間の塩基対は、安全な茎部を巻戻してU2AFのようなスプライシングファクターをPTM3’スプライス部位に結合させそしてトランススプライシングを開始させるのを可能にする(図4B)。
【0079】
この概念は、PTM+SF(安全)またはpcPTM+Sp(線状)のいずれかそして標的(βHCG6)および非標的(β−グロビン)pre−mRNAの両方を含有するスプライシング反応において試験された。スプライシングされた生成物は次に、RT−PCRおよびゲル電気泳動により分析された。βHCG−FおよびDT−3Rプライマーを用いて、特異性196bpトランススプライシングされたバンドはβHCG標的そして線状PTM(pcPTM+Sp、図5、レーン2)または安全PTM(PTM−SF、図5、レーン8)のいずれかを含有する反応において示された。線状PTM(図5、レーン2)と安全PTM(図5、レーン8)との間での標的化トランスプライシングの比較は安全PTMが線状PTMより効率が低くトランススプライシングしたことを示した。
【0080】
非標的化反応はβ−グロブリン−F(β−グロブリンのエキソン1に特異性)およびDT−3Rプライマーを用いて増幅された。β−グロビンpre−mRNAを用いて非特性PTMをトランススプライシングすることにより、生成された予期生成物は189bpである。線状PTMとβ−グロビンpre−mRNAとの間で非特異性トランススプライシングは明らかであった(図5、レーン5)。対照的に、安全PTMの使用により非特異性トランススプライシングは実質的に排除された(図5、レーン11)。このことは、線状PTMがスプライシング複合体媒介トランススプライシングの概念を明らかにするための最大活性のためにデザインされたので、予期されなかった。その有力な3’スプライス部位と組み合わされた線状PTMの開いた構造はスプライシング因子の結合を促進する。いったん結合されたならばこれらのスプライシング因子は、トリパノソーマにおけるトランススプライシングに類似の方法で、任意の5’スプライス部位とともにトランススライシングを潜在的に開始することが出来る。安全茎は標的獲得のまえに、U2AFのようなスプライシング因子がPTMに結合するのを防止するようにデザインされた。この結果は、結合領域の遊離部分とβHCG6との間の塩茎対が(mRNA−mRNA相互作用により)安全茎部を巻戻し、5’スプライス部位をあらわし、スプライシング因子の漸増およびトランススプライシングの開始を可能にするモデルと一致している。β−グロビンとβHCG6pre−mRNAとの間でトランススプライシングは検出されなかった(図5、レーン3、6、9および12)。
【0081】
6.2.5 安全PTMおよび変異体のインビトロトランススプライシング:
トランススプライシングにおける3’スプライス部位の役割をより良く理解するために、PPTがプリンとの置換により弱められそして(または)BPが塩基置換により修飾されているかのいずれかである一連の安全PTMが構成された(表1参照)。安全(PTM+SF)のインビトロトランススプライシング効率が3種の安全変異体比較され、それはトランススプライシングに対する減少した能力を示した。最も大きな効果に変異体2(PTM+SFPy2)を用いて観察され、これはトランススプライシング不能であった(図4C、レーン5〜6)。トランススプラインシングのこの阻止は弱められたPPTおよび(または)安全茎部のより高いTmに起因している可能性がある。対照的に、BP配列における変異(PTM+SFBP3)はトランススプライシングに顕著に影響しなかった。このことは、導入された修飾が哺乳動物の分岐点コンセンサス範囲YNYURAC(但し、Y=ピリミジン、R=プリンおよびN=任意のヌクレオチド)内であったので驚くべきことではない(Moore等、1993)。この発見は、分枝点配列がスプライシング効率に影響することなしに除去されることが出来ることを示している。PPTにおける変化(PTM+SF−Pyl)はトランススプライシングにおける水準を減少させた(レーン3〜4)。同様に、BPおよびPPTの両方が変化されたPTM+SFBP3−Pylであった場合に、それらはトランススプライシングにおいてさらに減少を生じさせた(図4C、レーン9〜10)。これらの安全な変異体のトランススプライシング効率の順序はPTM+SF>PTM+SFBP3>PTM+SFPyl>PTM+SFBP3−Pyl>PTM+SFPy2である。これらの結果はPPTおよびBPの両方が有効なインビトロトランススプライシングのために重要であることを確認する(Roscigno等のJ.Biol.Chem.268:11222(1993))。
【0082】
6.2.6. シス スプライシングとトランススプライシングとの間の競合:
PTMの濃度を増大させることによるpre−mRNAシス スプライシングを遮断することが可能であるかどうかを調べるために、トランススプライシングに対する反応を駆動するために実験を行なった。それらのスプライシング反応は、一定量のβHCG6pre−mRNA標的および種々の濃度のトランススプライシングPTMを用いて行なわれた。シススプライシングはβHCG−F(エキソン1)およびβHCG−R2(エキソン2)に対するプライマーを用いるRT−PCRにより監視された。これは予期された125bPシススプライシングされた生成物および478bPスプライシングされていない生成物を増幅させた(図6A)。プライマーβHCG−FおよびDT−3Rがトランススプライシングされた生成物を検出するために用いられた(図6B)。PTMの低い濃度で、シススプライシング(図6A、レーン1〜4)は、トランススプライシング(図6B、レーン1〜4)よりも優勢であった。シススプライシングは標的よりも1.5倍大きいPTM濃度で約50%減少された。標的の3倍の濃度にPTMmRNA濃度を増大させると、90%よりも大きくシススプライシングを阻止し(図6A、レーン7〜9)、同時にトランススプライシングされた生成物を増大させている(図6B、レーン6〜10)。競合PT−PCRは1つの反応においてすべての3種のプライマー(βHCG−F、HCG−R2およびDT−3R)を包含させることによりシススプライシングされた生成物およびトランススプライシングされた生成物の両方を同時に増幅させるために行なわれた。この実験は図6において見られる結果と同様な結果を示し、インビトロ条件下に、PTMは標的pre−mRNAシススプライシングを有効に遮断しそしてそれを特別に設計されたトランススプライシングされたキメラmRNAの生産に置き換えることを示している。
【0083】
6.2.7 組織培養中のトランス−スプライシング
細胞培養モデルにおけるトランス−スプライシングのメカニズムを例証するため、ヒト肺ガン細胞株H1299(βHCG6陽性)をSP−CRM(非機能的なジフテリア毒素)を発現するベクター又はベクター単独(pcDNA3.1)でトランスフェクトし、ネオマイシン(neomycin)の存在下で成長させた。四つのネオマイシン耐性のコロニーを14日後に個々に回収し、続いてのネオマイシンの存在下に拡張した。mRNA全体を欠くコロニーから単離し、プライマーβHCG−F及びDT−3Rを用いたRT−PCRにより分析した。これにより、四つの選択したコロニーのうち三つから、予想される196bpのトランス−スプライスした生成物が得られた(図7A、第2,3,及び4レーン)。増幅したクローン番号2からの生成物を直接配列決定し、PTM誘導のトランス−スプライシングが、ヒト細胞において、内因的に発現されたβHCG6ターゲットエキソン1及びDT−Aの第一ヌクレオチドの、予想されたスプライス部位で正確に生じたことを確認した(図7B)。
【0084】
6.2.8 インビボモデルにおけるトランス−スプライシング
インビボにおけるトランス−スプライシングのメカニズムを例証するため、以下の実験をアシミック(athymic)(ヌード)マウスにおいて行った。107のH1299細胞を背側の側腹部の皮下空間中に注射して、腫瘍を発生させた。14日目に、PTM発現プラスミドを腫瘍へ注射した。大部分の腫瘍を次に、電気穿孔に付し、プラスミドの送達を容易にした(以下の表2参照)。48時間後、腫瘍を除去し、ポリA−mRNAを単離し、RT−PCRで増幅した。19のPTM処理腫瘍のうち8つにおいて、トランス−スプライシングが検出された。二つの試料が、一回のRT−PCRのラウンドで、mRNAから、予想されたトランス−スプライスされた生成物(466bp)を製造した。次に、6つの更なる腫瘍が、ネストしたプライマーのセットを用いた第二のPCRの増幅によりトランス−スプライスについて陽性であり、予想された196bpの生成物を製造した(表2)。各陽性のサンプルを配列決定し、βHCG6エキソン1が予想されたスプライス部位において、DT−Aのコード配列(野生型又はCRM変異体)に正確にトランス−スプライスされることを例証した。陽性試料の6つが、人工的にターゲット前−mRNAの濃度を増やした、プラスミドpcPTM+CRM及びpcHCG6の共トランスフェクション(cotransfection)を受けた処理グループ由来であった。これは、トランス−スプライスされる現象を検出する可能性を高めるために行われた。他の二つの陽性腫瘍は、pcPTM+Sp(野生型DT−A)のみを受けたグループ由来であった。これらの腫瘍は、βHCG6発現プラスミドによりトランスフェクトされず、再度、6.2.7節で述べた組織培養モデルと同様に、トランス−スプライシングが、腫瘍細胞により製造される、PTMと内因的なβHCG6前−mRNAとの間で起こったことを例証した。
【0085】
【0086】
7.例 LacZトランス−スプライシングモデル
特異的プレmRNA標的とPTMの間のスプライソソーム介在標的トランス−スプライシングの機構の普遍性を明白にし、評価するために、酵素β−ガラクトシダーゼに基づいた単純なモデルシステムを開発した。以下の節においては、特異標的とPTMの間のスプライソソーム介在標的トランス−スプライシングの成功例を明らかにする結果を記載する。
【0087】
7.1. 材料と方法
7.1.1. プライマー配列
以下のプライマーlacZモデルシステムをテストするために使用された:
【0088】
7.1.2. lacZプレmRNA標的分子の構築
lacZ標的プレmRNA(pc3.1、lacT1)を、以下のPCR産物のクローニングによって構築した:(i)lacZの5’フラグメント、次いで(ii)βHCG6イントロン1:(iii)およびlacZの3’フラグメント。lacZ遺伝子の5’および3’断片を、以下のプライマーを使用して、テンプイレートpcDNA3.1/His/lacZ(Invitrogen,SanDiego,CA)からPCR増幅した:5’lac−1Fおよび5’lac1R(5’断片用)、および3’lac−1Fおよび3’lac−1R(3’断片用)。増幅したlacZ5’断片は開始コドンを含む1788bp長であり、増幅した3’断片は1385bp長で、分枝点、ポリピリミジントラクトおよびβHCG6イントロン1、に加えて、天然の5’および3’スプライス部位を有している。βHCG6イントロン1は、以下のプライマーを用いてPCR増幅された:HCG−In1FおよびHCG−In1R。
【0089】
lacZ標的2は、3’スプライス部位の後にフレーム4コドン中に2つの停止コドン(TAATAA)を含有している他は、lacZ1と同じバージョンである。これは、以下のプライマーを用いて、3’断片(lacZ)のPCR増幅によって創製された:lac−Stopおよび3’lac1RおよびlacZ標的1中の機能的3’断片の置換。
【0090】
7.1.3. pc3.1PTMおよびpc3.1PTM2の構築
プレ−トランス−スプライシング分子、pc3.1PTM1は、PstIおよびHindIIIでpTM+Spを消化し、DT−AトキシンをコードするDNA断片を、lacZの機能的3’末端をコードするDNA断片で置換することによって創製した。この断片を以下のプライマーを用いてPCR増幅することによって産生した:3’lac1Fおよび3’lac1R。細胞培養実験のために、HCGイントロン1に対する結果領域、30bpスペーサー、酵母分枝点(TACTAAC)、および強いポリピリミジントラクトと次いでクローン化したlacZを含有するpc3.1PTM2の、EcoRIおよびHindIII断片をpcDNA3.1にクローン化した。
【0091】
プレ−トランス−スプライシング分子、pc3.1PTM2は、PstIおよびHindIIIでpPTM+Spを消化し、そしてDT−AトキシンをコードするDNA断片をβHCG6エキソン2で置換することによって創製された。βHCG6エキソン2は、以下のプライマーを用いてPCR増幅によって産生された:HCG−Ex2FおよびHCG−Ex2R。細胞培養実験のために、HCGイントロン1に対する結果領域、30bpスペーサー、酵母分岐点(TACTAAC)、および強いポリピリミジントラクトと次いでクローン化したβHCG6エキソン2を含有するpc3.1PTM2の、EcoRIおよびHindIII断片を使用した。
【0092】
7.1.4.lacZスプライス標的プレmRNAおよびPTMSを293細胞への同時トランスフェクション
ヒト胚腎細胞(293T)を、10%FBSを補充したDMEM倍地で37℃、5%CO2にて増殖させた。細胞を、製造元の指示書に従ってLipofectaminePlus[LifeTechnologies(Gaithersburg,MD)]を用いて、pc3.1LacT1およびpc3.1PTM2またはpc3.1LacT2およびpc3.1PTMで同時トランスフェクトした。24時間の後トランスフェクションで、細胞は収穫された;総RNAを単離し、RT−PCRを標的用およびPTM用特異性プライマーを用いて実行した。β−ガラクトシダーゼ活性は、β−gal染色キット(Invitrogen,SanDiego,CA)を使用して、細胞を染色することによりモニターされた。
【0093】
7.2.結果
7.2.1.lacZスプライス標的は、効率よくシス・スプライスして、機能的β−ガラクトシダーゼを産生する
スプライス標的プレmRNAのシス・スプライス効率の性能を比較するため、pc3.1lacT1を、LipofectaminePlus試薬[LifeTechnologies(Gaithersburg,MD)]を使用して、次いで総RNAのRT−PCR解析により、293T細胞にトランスフェクトした。シス・スプライスしたRT−PCRの配列解析は、スプライシングは正確であり、予測されたスプライス部位に正確に起こったことを示した(図12B)。更に、標的プレmRNA分子の正確なシス・スプライシングは、β−ガラクトシダーゼ、即ちx−galの、加水分解を触媒し、顕微鏡下で、可視化することができる青色を産生する活性β−ガラクトシダーゼをコードすることのできるmRNAの生成をもたらす。標的プレmRNAの正確なシス・スプライシングは、β−ガラクトシダーゼ酵素活性を成功裏に検出することにより、更に確認された。
【0094】
機能的3’lac断片(PTM1)のトランス・スプライシングによる欠損lacZ標的2プレmRNAの修復は、β−ガラクトシダーゼが酵素活性の染色により測定した。この目的のために、293T細胞をlacZ標的2プレmRNA(欠損3’断片を含有)およびPTM1(機能的3’lacZ活性を含有)の同時トランスフェクションを行った。24時間後トランスフェクショクン細胞のβ−ガラクトシダーゼ酵素活性をアッセイした。効果的なPTM1のlacZ標的2プレmRNAへのトランス・スプライシングは、機能的β−ガラクトシダーゼ活性の産生をもたらした。図11B−Eに明らかに示したように、PTM1のlacZ標的2へのトランス・スプライシングは、対照と比較して、5%ないし10%のβ−ガラクトシダーゼ酵素活性の回復をもたらした。
【0095】
7.2.2. lacZ標的プレmRNAをPTM2の間の標的トランス・スプライシング
トランス・スプライシングをアッセイするため、lacZ標的プレmRNAおよびPTM2を293T細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションに次いで、総RNAをRT−PCRを用いて分析した。PCR反応には、以下のプライマーを使用した:lacZ−TR1(lacZ5’エキソン特異的)およびHCGR2(βHCGRエキソン2特異的)。RT−PCR反応は、予測された195bpトランス・スプライス産物(図11、レーン2および3)を産生し、lacZ標的プレmRNAおよびPTM2の間の効率的なトランス・スプライシングを明らかにした。レーン1は、PRM2を含まない、対照を示す。
【0096】
トランス・スプライシングの効率を、β−ガラクトシダーゼ活性を染色して測定した。トランス・スプライシングをアッセイするために、293T細胞をlacZ標的プレmRNAおよびPTM2で同時トランスフェクションした。24時間後トランスフェクションで、細胞をβ−ガラクトシダーゼ活性をアッセイした。もし、標的プレmRNAをPTMの間に効果的なトランス・スプライシングが起これば、lacZ標的プレmRNAの5’断片からなるキメラmRNAが産生され、そして、活性β−ガラクトシダーゼをコードすることのできない、βHCG6エキソン2が生じる。同時トランスフェクション実験の結果は、lacZ標的1へのPTM2のトランス・スプライシングは、対照に比較して、β−ガラクトシダーゼ活性の10−15%の減少をもたらした。
【0097】
lacZ標的プレmRNAとPTM2の間のトランス・スプライシングが正確であることを更に確認するため、RT−PCRを5’ビオチン化lacZ−TR1および非ビオチン化HCGR2プライマーを使用して行った。一本鎖のDNAを単離し、HCGR2プライマー(HCGエキソン2特異的プライマー)を用いて直接配列決定した。スプライス部位の配列によって証明されるように、トランス・スプライシングはスプライス部位の間に予測されたように正確に起こっており(図12Aおよび12B)、通常のプレmRNAが、スプライシング中に操作したPTMにより浸食されており、そして更に、この反応が正しいことを確認した。
【0098】
8.実施例:嚢胞性繊維症膜貫通調節タンパク質の修正
嚢胞性繊維症(CF)は、世界で最も普通の遺伝性疾患の一つである。CFに関連する遺伝子は、単離され、そのタンパク質産物が推定された(kerem,B.S.et al.1989,Science,245:1073-1080;Riordan et al.,1989,Scienece,245:1066-1073;Rommans,et al.,1989,Science,245:1059-1065)。CF関連遺伝子のタンパク質産物は、嚢胞性繊維症膜貫通調節タンパク質(CFTR)と称されている。全ての突然変異アレルのおよそ〜70%を数える、突然変異起因性の最も普通の疾病は、位置508(△F508)のフェニルアラニンをコードするエキソン10における3つのヌクレオチドの欠損である。以下の節では、スプライソソーム介在トランス・スプライシングを使用した嚢胞性繊維症遺伝子の成功した修復を記載し、モデルシステムの修復CFTRの実行可能性を明らかにする。
【0099】
8.1. 材料および方法
8.1.1. プレトランススプライシング分子
CFTRプレ・トランス・スプライシング・分子(PTM)は、CFTRイントロン9(3’末端、−13から−31)に相補性の23ヌクレオチド結合領域、30ヌクレオチドスペーサー領域(スプライソソーム成分の効率的な結合を許容する)、分岐点(BP)配列、ポリピリミジントラクト(PPT)およびCFTRエキソン10をコードする配列の直上流の3’スプライス部位にあるAGジヌクレオチド(F508を含む野生型配列)からなる。この最初のPTMは、トランススプライシングを明らかにするために最大活性を表すよう設計された:それゆえ、PTMはUACUAACの酵母コンセンサスBP配列および大きなPPTを含む。18ヌクレオチドHISタグ(6ヒスタミンコドン)は、特異的増幅およびトランス・スプライシング産物の単離、および内部CFTRを有さないことを許容する野生型エキソン10コード配列の後に含まれる。2フラグメントを産生するに使用されるオリゴヌクレオチドは、ユニークな制限部位を含み、(それぞれ、ApaIおよびPstI、およびPstIおよびNotI)哺乳類発現ベクターpcDNA3.1に増幅したDNAを直接クローニングすることができる。
【0100】
8.1.2. 標的CFTRプレmRNAミニ遺伝子
CFTRミニ遺伝子標的は、図13に示され、CFTRエキソン9;イントロン9の機能的5’および3’領域(それぞれ、各末端から260および265ヌクレオチド);エキソン10[△F508];およびイントロン10の5’領域(90ヌクレオチド)からなる。更に、図16に示したように、CFTRエキソン9−10および10−24を含むミニ標的遺伝子は、嚢胞性繊維症突然変異の修正のためのトランス・スプライシング介在スプライソソームの使用をテストするために使用することができる。図17は、嚢胞性繊維症突然変異の修正のために使用することができる二重スプライシングPTMを示す。示したように、二重スプライシングPTMは、CFTR・BDイントロン9、スペーサー、分岐点、ポリピリミジントラクト、3’スプライス部位、CFTRエキソン10、スペーサー、分岐点、ポリミリミジントラクト、5’スプライス部位およびCFTR・BDエキソン10を含有する。
【0101】
8.1.3. オリゴヌクレオチド
以下のオリゴヌクレオチドは、CFTR・PTMを創製するために使用される。
【0102】
以下のヌクレオチドは、CFTRターゲット前−mRNAミニ遺伝子(エキソン9+ミニ−イントロン9+エキソン10+5’末端イントロン10)を作製するために用いられた。
【0103】
以下のオリゴヌクレオチドは、トランス−スプライスされた生成物を検出するために用いられた:
【0104】
8.2 結果
PTM及びターゲットプレ−mRNAを293胎児性腎細胞中に、リポフェクタミン(lipofectamine)(Life Technologies,Gaithersburg,MD)を用いて共トランスフェクションした。細胞をトランスフェクション後24時間で回収し、RNAを単離した。RT−PCR反応において、PTM及びターゲット特異性のプライマーを用いて、その中でターゲットプレ−mRNAの変異体エキソン10がPTMの野生型エキソン10(図14)と置き換わっている、トランス−スプライスした生成物を検出した。トランス−スプライスした生成物の配列分析により、三つのヌクレオチド欠失の回復、及びスプライシングが正確であり、予想されたスプライス部位に生じること(図15)が確認され、初めて嚢胞性線維症遺伝子CFTRのRNA修復を例証した。
【0105】
本発明は、本明細書中に記載の特定の態様による範囲内に限定されない。つまり、本明細書中に記載の改変加えて、本発明の種々の改変が、前記説明及び添付の図面より、当業者にとって明らかであろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるものと意図される。本明細書中に引用した種々の文献について、その開示は引用により全体として本明細書中に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1A】トランス−スプライシングRNA先駆体のモデル。
【図1B】モデルPTM構築物および標的を定めたトランス−スプライシング戦略。第一世代PTM(PTM+SpおよびPTM−Sp)の図解図。BD、結合ドメイン;NBD、非結合ドメイン;BP、分枝点;PPT、ピリミジン配列;ss、スプライシング部位;DT−A、ジフテリアトキシンサブユニットA。PTM内の特異な制限部位は、一字で示されている;E.coli,EcoRI;X,Xhil;K,Kpnl;P,Pstl;A,Accl;B,BamHおよび異種(Hetrologous),HindIII。
【図1C】βHCG6標的pre−mRNAに対する慣用のWatson Crick塩基対を経るPTM−Spの結合および提案されたシス−スプライシングおよびトランス−スプライシングメカニズムを示す図解図。
【図2A】種々のPTM構築物のβHCG6標的中へのインビトロ トランス−スプライシング効率。標的を定めた結合ドメインおよび活性スプライシング部位は、PTMトランス−スプライシング活性と関連している。十分の長さの標的を定めた(pc−PTM+Sp)、標的が定められていない(PTM−Sp)およびスプライシング変異体[Py(−)AG(−)およびBP(−)Py(−)AG(−)]PTM RNAを、βHCG6標的pre−mRNAを含有するスプライシング反応に付加した。この生成物は、プライマーβHCG−F(標的βHCG6エキソン1に対して特異性)およびDT−5R(DT−Aに対する相補体)を用いて増幅され、次いで1.5%アガロースゲルにおける電気泳動により分析して、RT−PCRであった。
【図2B】種々のPTM構築物のインビトロ トランス−スプライシング効率。結合ドメインとスプライシング部位との間に空間を有する十分の長さのPTM、標的結合ドメイン(短いPTM+)または標的が定められていない結合ドメイン(PTM−)を包含する短いPTMおよびスペーサー領域を有していないPTMを、βHCG6標的pre−mRNAを含有するスプライシング反応に付加した。この生成物は、プライマーβHCG−FおよびDT−3を用いて増幅されたRT−PCRであった。短いPTMを含有する反応の場合、可逆性PCRプライマーは、DT−4であった。これは、DT−3の結合部位がPTMから分離されることによる。
【図3】PTMと標的pre−mRNAとの間のインビトロ トランス−スプライシング生成物を示すヌクレオチド配列。図2(レーン2)からの466bpのトランス−スプライシングされたRT−PCR生成物を、5’ビオチン標識したせ前進プライマー(βHCG−F)および組み重ねられた(nested)非標識可逆性プライマー(DT−3R)を用いて再増幅した。一重鎖DNAは、精製し、次いでトキシン特異性DT−3Rプライマーを用いて直接に配列決定した。矢印は、標的βHCG6エキソンIの最後のヌクレオチドとDT−Aをコードする最初のヌクレオチドとの間のスプライシング接合を示す。
【図4A】BPおよびPPTがスプライシング因子から遮蔽されるように、PTM分子内基対ステムを示す、「安全」(safety)PTMおよびその変種の図解図。下線を引いた配列は、βHCG6イントロンI相補標的−結合ドメインを示す。イタリック体文字の配列は、BPに対して同族である標的ミスマッチを示している。
【図4B】標的に結合した際の飽和PTMを示す開放形態の図解図。
【図4C】インビトロ トランス−スプライシング反応は、安全PTMまたは安全PTM変種を、βHCG6標的とともにインキュベートすることによって行った。スプライシング反応は、βHCG−FおよびDT−3Rプライマーを用いるRT−PCRにより増幅させた;生成物は、2.0%アガロースゲルで分析した。
【図5】標的を定めたトランス−スプライシングの特異性は、PTM中に安全PTMを包含させることによって増強される。βHCG6pre−mRNA(250ng)およびβ−グロブリンpre−mRNA(250ng)を、PTM+SF(安全)またはpcPTM+Sp(線状)RNA(500ng)とともにアニーリングした。インビトロ トランス−スプライシング反応およびRT−PCR分析は、試験方法について記載されているとおり行い、また生成物は、2.0%アガロースゲルで分離した。RT−PCRに用いられたプライマーは、指定されているとおりである。
【図6】上昇するPTM濃度の存在下で、シス−スプライシングは阻害され、トランス−スプライシングによって取って代わられる。一定量のβHCG6ターゲットpre−mRNA(100ng)の存在下でPTM(pcPTM+Sp)RNA濃度を上昇させながら(52〜300ng)、in vitroスプライシングを行った。シス−スプライスト(cis-spliced)及びアン−スプライスト(un-spliced)生成物のRT−PCRはプライマーβHCG−F(エキソン1特異的)とβHCG−R2(エキソン2特異的−パネルA)を用いた;プライマーβHCG−FとDT−3RはRT−PCRトランス−スプライスト生成物(パネルB)に用いた。反応生成物を1.5%及び2.0%アガロースゲル上でそれぞれ分析した。パネルAでは、レーン9は300ngのPTMの存在下での60分時点を表し、これはパネルBのレーン10に相当する。
【図7A】PTMは培養ヒト癌細胞においてトランス−スプライシングすることができる。pcSp+CRM(非毒性変異体DT−Aを発現する)をトランスフェクトされた4拡大ネオマイシン耐性H1299肺癌コロニーの各々から、総RNAを単離した。1μgの総RNAと、5’ビオチニル化βHCG−F及び非ビオチニル化DT−3Rプライマーとを用いてRT−PCRを行った。一本鎖DNAを精製して、配列決定した。
【図7B】内因性βHCG6ターゲットとCRM197変異体毒素との間のトランス−スプライスト生成物のヌクレオチド配列(センス鎖)を示す。2つの矢印はスプライス部位の位置を示す。
【図8A】二重スプライシング治療前mRNAの概略図。
【図8B】二重スプライシングPTMの選択的トランス−スプライシング。PTM濃度を変えることによって、PTMをターゲットの5’又は3’スプライス部位にトランス−スプライシングすることができる。
【図9】エキソン標識(tagging)のためのPTM分子の使用の概略図。2例のPTMを示す。左側のPTMはターゲットpre−mRNA3’スプライス部位に非特異的にトランス−スプライシングすることができる。他方の右側PTMはターゲットpre−mRNA5’スプライス部位に非特異的にトランス−スプライシングするように設計される。PTM仲介トランス−スプライシング反応は、信頼すべき(authentic)エキソンの5’又は3’側のいずれかへの特異的タグを含むキメラRNAの生成を生じる。
【図10A】lacZノックアウトモデルに用いるための構築体の概略図。ターゲットlacZpre−mRNAは、lacZの5’フラグメントと、それに続くβHCG6イントロン1とlacZの3’フラグメントを含有する(ターゲット1)。このモデル系に用いるためのPTM分子は、pPTM+SPをPstIとHindIIIとによって消化させ、DT−A毒素をβHCG6エキソン2(pc3.1PTM2)と代えることによって作製された。
【図10B】スプライソソーム仲介RNAトランス−スプライシング(SMaRT)によるβ−Gal活性の修復の概略図。
【図10C】lacZノックアウトモデル(pc3.1 lacZT2)に用いるための構築体の概略図。lacZターゲットpre−mRNAは、3’スプライス部位後のフレーム4コドン中に2終止コドン(TAA TAA)を含有することを除いて、ノックアウト実験に用いたターゲットpre−mRNAと同じである。このモデル系に用いるためのPTM分子は、pPTM+SPをPstIとHindIIIとによって消化させ、DT−A毒素をlacZの機能的3’フラグメントと代えることによって作製された。
【図11A】lacZノックアウトモデルを用いた場合のシス−及びトランス−スプライシングの実証。lacZスプライスターゲット1pre−mRNAとPTM2を293T細胞中に同時トランスフェクトした。次に、総RNAを単離し、適当な特異的プライマーを用いて、シス−スプライスト生成物とトランス−スプライスト生成物に関してPCRによって分析した。増幅したPCR生成物を2%アガロースゲル上で分離させた。
【図11B】β−ガラクトシダーゼ活性に関する分析。293細胞をlacZターゲット2DNAのみ(パネルB)又はlacZターゲット2DNAとPTM1(パネルC)によってトランスフェクトした。
【図11C】β−ガラクトシダーゼ活性に関する分析。293細胞をlacZターゲット2DNAのみ(パネルB)又はlacZターゲット2DNAとPTM1(パネルC)によってトランスフェクトした。
【図12A】正確なトランス−スプライシングを実証するトランス−スプライスト分子のヌクレオチド配列。
【図12B】シス−スプライスト生成物とトランス−スプライスト生成物のヌクレオチド配列。これらのヌクレオチド配列は異なるスプライシング反応の各々に関して予想された配列であった。
【図13】嚢胞性線維症膜貫通調節タンパク質(CFTR)遺伝子の修復に関する遺伝子修復モデル。
【図14】外因的に供給されたCFTRミニ−遺伝子ターゲットとPTMとの間のトランス−スプライシングのRT−PCR実証。プラスミドを293胚腎臓細胞中へ同時トランスフェクトした。RT−PCR反応に用いたプライマー対は各レーン上方にリストする。各レーン中の下位帯(471bp)はトランス−スプライスト生成物を表す。レーン1の下位帯(471bp)を2%Seakemアガロースゲルから精製して、この帯のDNA配列を決定した。
【図15A】トランス−スプライスト生成物(図14に示したレーン1、下位帯)のDNA配列。このDNA配列はF508コドン(TTT)の存在を実証し、エキソン9配列はエキソン10配列及びHisタグ配列に隣接する。
【図15B】トランス−スプライスト生成物(図14に示したレーン1、下位帯)のDNA配列。このDNA配列はF508コドン(TTT)の存在を実証し、エキソン9配列はエキソン10配列及びHisタグ配列に隣接する。
【図16】エキソン10にF508欠失を有する外因的供給CFTRターゲット分子の修復の概略図。
【図17】二重スプライシングPTMを用いたエキソン10侵襲による内因的CFTR転写体の修復。二重スプライシングPTMの使用は、非常に短いPTM分子によるΔ508突然変異の修復を可能にする。
【技術分野】
【0001】
(1.序論)
本発明は、標的を定めたスプライセオソーム(spliceosomal)トランス−スプライシング(trans-splicing)により新規核酸分子を創造するための方法および組成物を提供する。本発明による組成物は、天然標的メッセンジャーRNA先駆体(標的Pre−mRNA)(target pre-trans-mRNA) と相互作用し、また新規キメラRNA分子(キメラRNA)の創造を生じさせるトランス−スプライシング反応を媒介するようにデザインされているトランス−スプライシング分子先駆体(pre-trans-splicing molecules)(PTM)を含有する。本発明によるPTMは一般に、それ自体がRNAの翻訳の抑制などの機能を果たすことができ、または細胞における誘導蛋白質または不活性蛋白質を相補する蛋白質をコードする、または特定の細胞を殺滅するトキシンをコードする新規キメラRNAが生成されるように操作される。一般に、標的Pre−mRNAは、特定の細胞種内で発現されることから、標的として選択され、これにより新規キメラRNAの発現を、選択された細胞種に標的を定めるための手段が提供される。
【0002】
本発明はまた、エキソン標識法(exon tagging method)を用いるPre−mRNA分子のエキソン/イントロン境界を特定するために遺伝子操作されているPTMに関する。さらにまた、このPTMは特定の細胞種で発現される蛋白質の精製および同定に用いることができるペプチド親和性精製標識をコードするキメラRNAの生成が得られるようにデザインすることができる。本発明の方法は、本発明によるPTMを、当該PTMの蛋白質が天然Pre−mRNAの蛋白質にトランス−スプライシングされ、新規キメラRNA分子が形成される条件下に、標的Pre−mRNAと接触させることを包含する。本発明による方法および組成物は、細胞遺伝子調節、遺伝子修復および増殖性疾病、例えば癌の処置用、もしくは遺伝病、自己免疫性疾病または感染性疾病の処置用の自殺的遺伝子治療(suicide gene thrapy)に使用することができる。本発明による方法および組成物はまた、イントロン−エキソン境界のマップ作成およびいずれか指定の細胞で発現された新規蛋白質の同定に使用することができる。
【0003】
(2.発明の背景)
染色体中のDNA配列は、コード領域(エキソン)を含有し、および一般にまた、非コード領域(イントロン)を含有するPre−mRNAに転写される。イントロンは、スプライシングと称される正確な方法でPre−mRNAから分離される[ChowらによるCell 12:1〜8(1977);およびBergerらによるProc.Natl.Acad.Sci.USA,74:3171〜3175(1977)]。スプライシングは、数個の小型核を有するリボ核蛋白質粒子(snRNP)とスプライセオソームとして知られている酵素複合体を形成するように組み立てられる、かなり多くの蛋白質因子との配位相互反応として生じる[MooreらによるThe RNA wORLD,R.F.Gestiand and J.F.Athns eds(ColdSpring Harbor Laboratory Press,(Cold Spring Harbor,N.Y.)(1993);KramerらによるAnnu.Rev.Biochem.,65:367〜404(1996);StaleyおよびGuthrieによるCell,92:315〜326(1998)]。
【0004】
Pre−mRNAスプライシングは2段階メカニズムにより進行する。第一段階において、5’スプライシング部位が分裂され、「遊離」5’エキソンおよび投げ縄型中間体が生成される(Moore,M.J.およびP.A.SharpによるNature,365:364〜368(1993))。第二段階において、この5’エキソンは、投げ縄型生成物としてのイントロンの放出を伴い5’エキソンにリゲートされる。これらの段階は、小型核を有するリボ核蛋白質とスプライセオソームと称される蛋白質との複合体により触媒される。
【0005】
このスプライシング反応部位は、5’および3’スプライシング部位の周囲の共通配列を定めている。5’スプライシング部位共通配列は、AG/GURAGUである(ここで、A=アデノシン、U=ウラシル、G=グアニン、C=シトシン、R=プリンおよび/=スプライシング部位である)。3’スプライシング領域は、3個の分離した配列要素からなる;分岐点または分枝部位;ポリピリミジン配列および3’スプライシング共通配列(YAG)。これらの要素は、3’スプライシング領域を粗く定めており、3’スプライシング部位のイントロン上流の100ヌクレオチドを包含することができる。哺乳動物の分枝点共通配列は、YNYURACである(ここで、N=いずれかのヌクレオチド、Y=ピリミジンである)。下線を付けたAは、分枝形成部位である(BPA=分枝点アデノシン)。3’スプライシング共通配列は、YAG/Gである。この分枝点とスプライシング部位との間には、通常、ポリピリミジン配列が見出され、この配列は分枝点有効利用および3’スプライシング部位認識にとって、哺乳動物系で重要である(Roscigno,R.F.らによるBiol.Chem.,268:11222〜11229(1993))。この分枝点およびポリピリミジン配列から下流の第一YAGトリヌクレオチドは、最も慣用の3’スプライシング部位である(Smith,C.W.らによるNature,342:243〜247(1989))。
【0006】
大部分の場合、このスプライシング反応は、同一Pre−mRNA分子内で生じ、これはシス−スプライシング(cis-splicing)と称される。2個の独立して転写されるPre−mRNA間のスプライシングは、トランス−スプライシング(trans-splicing)と称される。トランス−スプライシングは、最初に、トリパノソームで見出され(Sutton & BoothroydによるCell,47:527(1986);MurphyらによるCell,47:517(1986))、引き続いてネマトイド類で(Krause & HirshによるCell,49:753(1987))、扁虫類で(flatworms)(RajkovieらによるNat'l.Acad.Sci.USA,87:8879(1990);DevisらによるJ.Biol.Chem.,270:21813(1995))および植物ミトコンドリアで(MalekらによるProc.Nat'l.Acad.Sci.USA,94:553(1997))で見出されている。寄生虫トリパノソーマ ブルセイ(Trypanosoma brucei)では、全部のmRNAが、トランス−スプライシングにより、それらの5’末端でスプライシングリーダー(SL)RNAを獲得する。カエノルハブジチス エレガンス(Caenorhabditis elegans)では、5’リーダー配列はまた、数個の遺伝子にトランス−スプライシングされる。このメカニズムは、かなりの相違する転写体に単一の共通配列を付加するものと認識される。
【0007】
慣用のシス−スプライシングとほとんど同一であるトランス−スプライシングのメカニズムは、2個のホスホリル転移反応を経て進行する。最初に、“Y”型分枝中間体(これは、シス−スプライシングにおける投げ縄型中間体に等しい)を生成する2’−5’ホスホジエステル結合の形成が生じる。第二反応、すなわちエキソン リゲーションは、慣用のシス−スプライシングと同様に進行する。さらに、トランス−スプライシングを触媒するsnRNAの若干と3’スプライシング部位とは、シス−スプライシングに包含されるそれらの対向部分と近似している。
【0008】
トランス−スプライシングはまた、相違するプロセスに関連することもある。すなわち、第一のpre−mRNAのイントロンが第二のpre−mRNAと相互反応する場合、2つの共通のpre−mRNA間のスプライシング部位の組換えを増強させる。このタイプのトランス−スプライシングは形質転換したマウスの固有定常領域に結合しているヒト免疫グロブリン可変領域配列をコードする転写体を説明するものと仮定されている(ShimizuらによるProc.Nat'l.Acad.Sci.USA,86:8020(1989))。さらにまた、c-myb pre-RNAのトランス−スプライシングが証明され(Vellard,M.らによるProc.Nat'l.Acad.Sci.89:251〜2515)、さらに最近になって、相互にトランス−スプライシングされたクローン形成したSV40からのRNA転写体が、培養された細胞および核抽出物で検出された(EueらによるEMBO.J.14:3226(1995))。しかしながら、哺乳動物pre−mRNAの天然で生じるトランス−スプライシングは、格別に稀な出来事であると考えられる。トランス−スプライシングの反応メカニズムは、慣用のシス−スプライシングとほとんど同一であると信じられる。これは、2’−5’ホスホジエステル結合の形成を経て進行し、“Y”形状の分枝した中間体を生成させる(この中間体は、シス−スプライシングにおける中間体に等しい)。
【0009】
インビトロ トランス−スプライシングは、数グルーブによるスプライシングのメカニズムを試験するためのモデルシステムとして使用されている(Konarska & SharpによるCell,46:165〜171(1985);SolnickによるCell,42:157(1985);Chiara & ReedによるNature,375:510(1995);PasmanおよびGarcis-BlancoによるNucleic Acids Res.,24:1638(1996))。妥当に効果的なトランス−スプライシング(シス−スプライシングされた同族体の30%)が、相互に塩基対を形成することができるRNA間で達成された。塩基対により集合しないRNAのスプライシングは、10のファクターでさらに減少された。基質の中で明白なRNA−RNA相互反応を要しない別のインビトロ トランス−スプライシング反応が、CharaおよびReedにより(1995,Nature,375:510);Bruzik,J.P.およびManiatis,T.により(1992,Nature,360:692);およびBruzik,J.J.およびManiatis,T.により(Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA,92:7056〜7059(1995)、見出された。これらの反応は、比較的小さい頻度で生じ、特殊化された要素、例えば下流5’スプライシング部位またはエキソンスプライシング部位などを必要とする。
【0010】
mRNA先駆体に複数の蛋白質を結合することを包含する(これは次いで、RNAの正確な切断および接合に作用する)スプライシング方法に加えて、第三のスプライシング法は、イントロンそれ自体(ここでは、触媒性RNA分子またはリボザイムと称される)によるRNAの切断および接合を包含する。このリボザイムの分裂活性は、分離した「ハイブリゼーション」領域をリボソーム中にエンジニアリングすることによって、特定のRNAに標的設定される。標的RNAへのハイブリゼーションによって、リボソームの触媒領域はほとんど分解する。このようなリボソーム活性は、インビボ標的RNAの不活性化または分解に、例えば異種の異常RNAの生成を特徴とするヒト疾病の処置に有用であると見做される。アンチセンスRNAの使用はまた、特定のRNAの標的設定および分解にかかわる別のメカニズムとして提供されている。このような場合、標的RNAにハイブリッド形成することにより、また標的RNAに結合させることによりデザインされている小型RNA分子は、標的RNAの翻訳を防止し、またはヌクレアーゼの活性化によるRNAの分解を生じさせる。
【0011】
最近まで、特定の標的遺伝子の修正に標的を定めたトランス−スプライシングを実用する用途は、グループ1リボソームに基づくメカニズムに制限されていた。テトラハイメナ(Tetrahymena)グループ1リボソームを使用することによって、標的を定めたトランス−スプライシングが、イー・コリ(E.Coli)で(Sullengen,B.A.およびCech,T.R.によるNature,341:619〜622(1994))、マウス繊維芽細胞で(Jones,J.T.によるNature Medicine,2:643〜648(1996))、ヒト繊維芽細胞で(Phylacton,L.A.によるNature Genetic,18:378〜381)、およびヒトエリスロイド先駆体で(LarnらによるScience,280:1593〜1596)、証明されている。グループ1リボソームを修飾することにより操作される、かなりの標的を定めたRNAトランス−スプライシングの用途が探査されているが、天然哺乳動物のスプライシング機構、すなわちスプライセオソームは、従来技術で報告されていない。
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、スプライセオソームが媒介する標的を定めたトランス−スプライシングにより新規核酸分子を創造するための方法および組成物に関する。本発明による組成物は、天然標的Pre−mRNA分子(以下の記載において、Pre−mRNAと記す)と相互作用し、また新規キメラRNA分子(以下の記載において、キメラRNAと記す)の創造を生じさせるスプライセオソームによるトランス−スプライシング反応を媒介するようにデザインされているトランス−スプライシング分子先駆体(以下の記載において、PTMと記す)を含有する。本発明の方法は、本発明によるPTMを、当該PTMの蛋白質が天然Pre−mRNAの蛋白質にスプライシングされ、新規キメラRNAが形成される条件下に、標的Pre−mRNAと接触させることを包含する。本発明によるPTMは、トランス−スプライシング反応から生じる新規キメラRNAがそれ自体で、RNAの翻訳の抑制などの機能を果たすことができ、または別様に、キメラRNAが細胞における不完全または不活性蛋白質を相補する蛋白質をコードする、または特定の細胞を殺滅するトキシンをコードすることができるように、遺伝子操作される。
【0013】
一般に、標的Pre−mRNAは、特定の細胞種内で発現されることから、標的として選択され、これにより新規キメラRNAの発現を、選択された細胞種に標的を定めるための手段が提供されるように選択する。この標的細胞には、これらに制限されないものとして、ウイルスまたはその他の感染体に感染した細胞、または悪性新生物、または自己免疫疾病または組織拒絶に含まれる免疫系の成分が包含される。本発明のPTMは、標的pre−mRNAにおけるエキソン/イントロン境界を特定するための方法としてmRNA分子内のエキソン配列に遺伝子操作することができる。本発明はまた、特定の細胞種で発現される蛋白質の精製および同定に用いることができるペプチド親和性精製標識をコードするように遺伝子操作されるPTM分子を使用することに関する。本発明の方法および組成物は、遺伝子調節、遺伝子修復および標的設定した細胞死において使用することができる。このような方法および組成物は、これらに制限されないものとして、遺伝病、感染性疾病または自己免疫性疾病を包含する種々の疾病および癌などの増殖性疾病の処置に使用することができる。
【0014】
本発明は、プレ−トランス−スプライシング分子(PTM)を含む組成物と、新規な核酸分子の作製のためのこのような分子の使用とに関する。本発明のPTMはpre−mRNAに特異的に結合するように設計されたターゲット結合ドメイン、分枝点、ピリミジン・トラクト(pyrimidine tract)及び3’スプライス受容部位及び/又は5’スプライス供与部位を包含する3’スプライス領域;並びにRNAスプライス部位をターゲット結合ドメインから分離するスペーサー領域を含む。さらに、本発明のPTMは、翻訳可能なタンパク質生成物をコードする任意のヌクレオチド配列を含有するように操作することができる。
【0015】
本発明の方法は、本発明のPTMを天然pre−mRNAに、PTMの一部を天然pre−mRNAの一部中にトランス−スプライシングさせるような条件下で接触させて、新規なキメラRNAを形成することを包含する。ターゲットpre−mRNAは、これが特異的細胞種類内で発現して、選択した細胞種類への新規なRNAの発現をターゲッティングする機構を与えるために、ターゲットとして選択する。得られるキメラRNAは特異的細胞種類に所望の機能を与えることができる、又は特異的細胞種類内で遺伝子産物を産生することができる。特異的細胞は、非限定的に、ウイルス若しくは他の感染性因子によって感染した細胞、良性若しくは悪性の新生細胞、又は自己免疫疾患若しくは組織拒絶に関与する免疫系の構成要素を包含する。ターゲット内因的pre−mRNAに結合するようにPTMの結合ドメインを修飾することによって、特異性が得られる。キメラRNAによってコードされる遺伝子産物は、例えば、治療的若しくはマーカー遺伝子、及び毒素をコードする遺伝子のような、臨床的有用性を有する遺伝子を含めた、任意の遺伝子でありうる。
【0016】
5.1.プレ−トランス−スプライシング分子の構造
本発明は、ターゲット化(targeted)トランス−スプライシングによる新規なキメラ核酸分子の生成に用いるための組成物を提供する。本発明のPTMは(i)pre−mRNAへのPTMの結合をターゲットとする1つ以上のターゲット結合ドメイン、(ii)分枝点、ピリミジン・トラクト(pyrimidine tract)及び3’スプライス受容部位及び/又は5’スプライス供与部位を包含する3’スプライス領域;並びに(iii)RNAスプライス部位をターゲット結合ドメインから分離するスペーサー領域を含む。さらに、翻訳可能なタンパク質生成物をコードする任意のヌクレオチド配列を含有するように、PTMを操作することができる。本発明のさらに他の実施態様では、キメラRNA分子の翻訳を阻害するヌクレオチド配列を含有するように、PTMを操作することができる。例えば、ヌクレオチド配列は翻訳終止コドン、又は二次構造を形成することによって翻訳を阻害するヌクレオチド配列を含有することができる。或いは、キメラRNAはアンチセンス分子として機能することによって、それが結合するRNAの翻訳を阻害することができる。
【0017】
PTMのターゲット結合ドメインは、選択されたpre−mRNAのターゲット化領域に相補的であり、この領域にアンチ−センス配向する少なくとも15〜30(数百まで)ヌクレオチドから成る1つ又は2つの結合ドメインを含有しうる。このことは結合の特異性を与え、核のスプライソソーム処理機構(spliceosome processing machinery)がPTMの一部をpre−mRNAの一部にトランス−スプライシングすることができるようなスペースにpre−mRNAをきっちりと固定する。第2ターゲット結合領域を分子の3’末端に配置して、本発明のPTM中に組み込むことができる。絶対的な相補性は、好ましいが、必要ではない。本明細書で述べるような、mRNAの一部に“相補的な”配列は、RNAとハイブリダイズして、安定な二本鎖を形成することができる充分な相補性を有する配列を意味する。ハイブリダイズ可能であることは、核酸の相補性度と長さの両方に依存する(例えば、Sambrook等,1989,Molecular Cloning,A Labouratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York参照)。一般に、ハイブリダイズする核酸が長ければ長いほど、それが含有し、まだ安定な二本鎖を形成するRNAとの塩基不適合は多くなる。当業者は、ハイブリダイズした複合体の融点を測定するための標準方法を用いて、許容されうる不適合度を確認することができる。
【0018】
PTMをイントロン−エキソン標識又はペプチドアフィニティ標識に用いるように設計する場合には、ターゲット結合ドメインにランダムなヌクレオチド配列を含有するようにPTMのライブラリーを一般に操作する。PTM分子のこのようなライブラリーを作製する目的は、ライブラリーが細胞内に発現した各RNA分子に結合することができるPTM分子群(population of PTM molecules)を含有することである。ランダムDNAフラグメントをPTM中に挿入して、ランダムターゲット結合ドメインを形成するために用いることができる制限エンドヌクレアーゼ部位を包含するPTMのコーディング領域を含有するように、組換え発現ベクターを遺伝子操作することができる。ターゲット結合ドメインとしてPTMに包含させるべきランダムヌクレオチド配列は、非限定的に、制限酵素によるDNAの部分的消化又はDNAのランダムフラグメントを形成するためのDNAの機械的剪断を包含する、当業者に周知の多様な異なる方法を用いて作製することができる。ランダム結合ドメイン領域を縮退的(degenerate)オリゴヌクレオチド合成によって作製することもできる。縮退的オリゴヌクレオチドは縮退的結合ドメインを有するPTM分子のライブラリーを生成するためのPTM分子へのクローニングを容易にするために、各末端に制限エンドヌクレアーゼ認識部位を有するように、縮退的オリゴヌクレオチドを操作することができる。
【0019】
他の機構によって、例えば三重らせん形成又は、特異的RNA結合タンパク質、即ち特異的ターゲットpre−mRNAに結合したタンパク質を認識するようにPTMが操作されるタンパク質/核酸相互作用によって、結合を達成することもできる。或いは、本発明のPTMを、例えばRNA分子内のヌクレオチド間の分子内塩基対合に由来するヘアピン構造のような、二次構造を認識するように、設計することもできる。
【0020】
PTM分子はまた、分岐点を含む3’スプライス領域、ピリミジントラクト(tract)及び3’スプライスアクセプターAG部位及び/または5’スプライスドナー部位を含有する。RNAスプライシングに用いられる5’スプライスドナー部位及び3’スプライス領域に対するコンセンサス配列は、当該分野において周知である(Moore,et al.,1993,The RNA World,Cold Springs Harbor Laboratory Press,p.303-358参照)。加えて、本願発明の実施において、5’スプライスドナー部位及び3’スプライス領域として機能する能力を維持する修飾コンセンサス配列を使用してもよい。手短に言えば、5’スプライス部位コンセンサス配列は、AG/GURAGU(ここで、A=アデノシン、U=ウラシル、G=グアニン、C=シトシン、R=プリン及び/=スプライス部位)である。3’スプライス部位は、3つの分離した配列エレメント:分岐点または分岐部位、ポリピリミジントラクト及び3’コンセンサス配列(YAG)から成る。哺乳類における分岐点コンセンサス配列は、YNYURAC(Y=ピリミジン)である。下線Aは分枝形成部位である。ポリピリミジントラクトは、分岐点とスプライス部位アクセプターとの間に位置し、異なった分岐点の利用及び3’スプライス部位認識にとって重要である。
【0021】
RNAスプライス部位を標的結合ドメインから分離するためのスペーサー領域もPTMに含まれる。スペーサー領域は、標的プレ−mRNAに対するトランス−スプライシングを増幅する非スプライスPTM及び/または配列の如何なる翻訳もブロックするストップコドン等で特徴付けられる。
【0022】
本願発明の好ましい態様において、「安全装置(safety)」がまた、非特異的トランス−スプライシングを防ぐために、スペーサー、結合ドメイン、またはPTMのどこか他の部分に組み込まれる。これが、PTMの3’及び/または5’スプライス部位のエレメントを比較的弱い相補性で覆い、非特異的トランス−スプライシングを防ぐPTMの一領域である。PTMは、PTMの結合/ターゲッティング部分のハイブリダイゼーションで、3’及び/または5’スプライス部位が覆われておらず、十分に活性があるように設計される。
【0023】
「安全装置」は、PTM分岐点、ピリミジントラクト、及び/または3’スプライス部位(スプライシングエレメント)の一方または両側に弱く結合する1以上の、シス−配列の伸展(stretch)からなるか、またはそのような第2の分離した核酸鎖であるか、もしくはスプライシングの部位自体に結合できるものである。この「安全装置」結合は、スプライシングエレメントが活性となることを防ぐ(つまり、U2snRNPまたは他のスプラシシング因子がPTMスプライス部位認識エレメントに付着するのをブロックする)。「安全装置」の結合は、PTMの標的結合領域の標的プレ−mRNAへの結合、即ち、PTMスプライシングエレメントを露出して活性化する(それらを、標的プレ−mRNAへトランス−スプライスするのに有効なものとする)ことによって破壊されてもよい。
【0024】
細胞死など、またはマーカーとしての失っていた機能または作用を回復するなどの効果を生み出すことのできる翻訳可能な蛋白質をコードするヌクレオチド配列が、本願発明のPTMに含まれる。例えば、そのヌクレオチド配列は、既知の遺伝子疾患において失われているまたは変化している遺伝子産物をコードするそれら配列を含むものである。または、そのヌクレオチド配列は、細胞を同定するまたは画像化するのに用いられるマーカー蛋白質またはペプチドをコードすることができる。本願発明のまた別の態様において、HISタグ(6個の連続するヒスチジン残基)(Janknecht,et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8972-8976)、C末端グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)(Smith and Johnson,1986,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8703-8707)(Pharmacia)またはFLAG(Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Lys)(Eastman Kodak/IBI,Rochester,NY)などのアフィニティータグをコードするヌクレオチド配列が、アフィニティー精製に有用なPTM分子に含まれる。このようなヌクレオチド配列を含有するPTMの使用によって、ペプチドアフィニティータグに結合して細胞中に正常に発現されるペプチド配列を含有する融合蛋白質をコードするキメラRNAを産生することになる。アフィニティータグは、細胞で発現されたペプチド配列を迅速に精製し同定する方法を提供する。好ましい態様において、そのヌクレオチド配列は、トキシンまたは、放射線照射もしくは化学療法などのその後の処理に対する細胞の感受性を増幅する機能を提供する他の蛋白質をコードしていてもよい。
【0025】
さらに好ましい本願発明の態様において、PTM分子は、ジフテリアトキシンサブユニットA(Greenfield,L.,et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:6853-6857)をコードするヌクレオチド配列を含有するように設計される。ジフテリアトキシンサブユニットAは、酵素的トキシン活性を含有し、発現されるかヒト細胞に輸送されると機能して細胞死をもたらす。さらに、多くの他の既知のペプチドトキシンが本願発明に使用されてもよく、限定するわけではないが、リシン(ricin)、シュードモナストキシン、シガ(Shiga)トキシン及びエキソトキシンAを含む。
【0026】
PTM分子に対して、翻訳可能な蛋白質をコードするヌクレオチドの後か前に、スプライシングを増幅するためのポリアデニル化シグナルまたは5’スプライス配列、付加的な結合領域、「安全装置」−自己相補的領域、付加的なスプライス部位、または分子の安定性を制御して分解を防ぐ保護基などの付加的な特徴を加えることができる。
【0027】
本願発明のPTMに組み込まれてもよい付加的な特徴として、結合ドメイン及びスプライス部位の間の領域に、非スプライスプレ−mRNA発現を防ぐために、ストップコドンまたは他のエレメントを含む。本願発明の別の態様において、PTMを、3’標的イントロンまたはエキソンへの結合を促進し、固定の標準(authentic)シス−5’スプライス部位(U5及び/またはU1結合部位)をブロックするための翻訳可能な蛋白質をコードするヌクレオチド配列から下流の第2アンチ−センス結合ドメインを伴って発生させることができる。PTMはまた、トランス−スプライス産物の発現のための二重のトランス−スプライシング反応を要求するものとして作製されてもよい。このようなPTMは、RNA修復に有用となる内部エキソンを置換するのに用いることができる。3’ヘアピン構造、環状化RNA、ヌクレオチド塩基修飾、または合成アナローグなどのさらなるエレメントを、核の局在化及びスプライセオゾームの(spliceosomal)編入、並びに細胞内安定性を促進または亢進させるために、PTMに組み込むことができる。
【0028】
本願発明のPTMは、標的細胞における新規キメラRNAを産生するように意図された方法において用いることができる。本願発明の方法は、RNA分子、またはRNA分子に転写されるDNAベクターなどの、当業者によって使用される如何なる形ででもよいPTMを標的細胞に輸送することからなり、当該PTMはプレ−mRNAに結合し、トランス−スプライシング反応を仲介して、プレ−mRNAの部分にスプライスされたPTM分子の部分からなるキメラRNAを形成することになる。
【0029】
5.2.トランス−スプライシング分子の合成
本願発明の核酸分子は、RNAもしくはDNA、またはその誘導体もしくは修飾変形種、一本鎖または二本鎖でもよい。核酸によって、PTM分子またはPTM分子をコードする核酸分子が、デオキシリボヌクレオチドからなるのか、リボヌクレオシドからなるのか、及びリン酸ジエステル結合からなるのか、修飾された結合からなるのか示されることになる。核酸という語はまた、具体的には、5つの天然の塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシン及びウラシル)以外の塩基からなる核酸も含む。
【0030】
本願発明のRNA及びDNA分子を、DNA及びRNA分子の合成のための、当該分野において既知の如何なる方法によって作製してもよい。例えば、核酸は、市販の試薬及び合成機を用いて、当該分野において周知の方法によって化学合成してもよい(e.e.,Gait,1985,Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach,IRL Press,Oxford,England参照)。または、RNA分子は、そのRNA分子をコードするDNA配列のイン・ビトロ及びイン・ビボ転写によって発生させることができる。このようなDNA配列は、T7またはSP6ポリメラーゼプロモーターなどの適当なRNAポリメラーゼプロモーターを組み込んだ広範囲のベクターに組み込むことができる。RNAを、高収率で、SPS65(Promega Corporation,Madison,WI)などのプラスミドを用いるイン・ビトロ転写を経て産生してもよい。加えて、Q−β増幅などのRNA増幅法が、RNAを産生するために利用される。
【0031】
核酸分子は、塩基部分、糖部分、またはリン酸骨格で、例えば分子の安定性、ハイブリダイゼーション、細胞への輸送等を改善するために修飾することができる。例えば、全体の荷電を減少させるためのPTMの修飾は、分子の細胞内取込みを増幅させる。加えて、ヌクレアーゼ分解に対する感受性を減じるように修飾することができる。核酸分子は、ペプチド(例えば、イン・ビボでの宿主細胞レセプターを標的とする)、または細胞膜を通過する輸送を亢進する薬剤(例えば、Letsinger et al.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:6553-6556;Lemaitre et al.,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.84:648-652;国際公開No.WO89/10134,1988年4月25日公開等参照)、ハイブリダイゼーションを引き金とする切断剤(hybridization-triggered cleavage agent)(例えば、Krol et al.,1988,BioTechniques 6:958-976参照)またはインターカレーション剤(例えば、Zon,1988,Pharm.Res.5:539-549参照)などの他の付加的な基を含んでいてもよい。この端に、核酸分子は、別の分子、例えばペプチド、ハイブリダイゼーションを引き金とするクロス−リンク剤(hybridization triggered cross-linking agent)、輸送剤(transport agent)、ハイブリダイゼーションを引き金とする切断剤等に結合していてもよい。DNA分子に対する種々の他の周知の修飾を、細胞内の安定性及び半減期を増大する方法として導入することができる。成し得る修飾として、限定するわけではないが、リボ−またはデオキシ−ヌクレオチドの配列を分子の5’及び/または3’端に隣接させる付加も含まれる。増大した安定性が望まれる環境下では、2’−O−メチル化などの修飾ヌクレオシド間(internucleoside)結合を有する核酸が好ましい。修飾ヌクレオシド間結合を含有する核酸は、当該分野において周知の試薬及び方法を用いて合成してもよい(Uhlmann et al.,1990,Chem.Rev.90:543-584;Schneider et al.,1990,Tetrahedron Lett.31:335及びここに引用される参考文献参照)。
【0032】
核酸は、当該分野において周知の如何なる適当な方法によって、精製されてもよい。例えば、核酸は、逆相クロマトグラフィーまたはゲル電気泳動によって精製することができる。もちろん、当業者は、精製法が部分的に、精製されるべき核酸の大きさに依存することを認識するであろう。
【0033】
PTMをコードする核酸分子が利用される場合、当該分野で既知のクローニング技術が、核酸分子の発現ベクターへのクローニングに用いられてもよい。使用され得る組換えDNA技術の分野において一般的に知られている方法が、Ausubel et al.(eds.),1993,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY;及びKriegler,1990,Gene Transfer and Expression,Alaboratory Manual,Stockton Press,NYに記載されている。
【0034】
主体のPTMをコードするDNAは、大規模でのDNAの複製を提供し、PTMの転写を導く必要なエレメントをも含有する、種々の宿主ベクター系に組換え操作によって組込まれるてもよい。患者の標的細胞を形質移入するような構築の使用によって、内部的に発現されたプレ−mRNA標的と相補塩基対を形成し、それによって複合核酸分子間のトランス−スプライシング反応を亢進するのに十分な量の転写が起こることになる。例えば、ベクターは、細胞によって取り込まれ、PTM分子の転写を導くように、イン・ビボで導入される。このようなベクターは、それが転写されて所望のRNAを産生する限り、エピゾームに残るか、染色体として組み込まれる。このようなベクターは、当該分野において標準的な組換えDNA技術の方法によって構築することができる。
【0035】
対象とするPTMをコードするベクターは、哺乳動物細胞で複製及び発現に用いられるプラスミド、ウイルス又は当業界において知られた他のものである。PTMをコードする配列の発現は、哺乳動物、好ましくはヒト細胞において作用する当業界において知られたいずれのプロモーターによっても制御できる。そのようなプロモーターは誘導可能であり、また構築可能である。このようなプロモーターとしては、限定されるものではないが、例えばSV40初期プロモーター領域(Benoist,C.and Chambon,P.1981,Nature 290:304-310)、ロウスザルコーマウイルスの3’ロング末端リピート(Yamamoto te al.,1980,Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al.,1981、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,78:14411445)、メタロチアネン遺伝子の調節配列(Brinster et al.,1981,Nature296:39-42)、ウイルスCMVプロモーター、ヒト絨毛性ゴナトロピンーβープロモーター(Iiollenberg et al.,1994,Mol.Cell.Endocrinology 106:111-119)などが挙げられる。いずれのタイプのプラスミド、コスミド、YAC、ウイルスベクターも、組織部位に直接導入できる組換えDNA構築物を調製するのに用いることができる。あるいは、望ましいターゲット細胞に選択的に感染するウイルスベクターを用いることもできる。
【0036】
ペプチドアフィニィティー精製タッグをコードするPTMの使用のためには、ランダムターゲット結合部位を含むヌクレオチド配列をPTMに挿入し、選択的哺乳動物発現ベクターシステムにクローン化するのが好ましい。これらに限定されるものではないが、tk欠損細胞における単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼの発現選択系、hgprt欠損細胞におけるヒポキサンチンーグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼの選択発現系及びaprt欠損細胞におけるアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼの発現選択系などの多くの選択系を用いることができる。また、メトトレキセートに対する耐性を付与するジヒドロホレートトランスフェラーゼ(dhfr)、ミコフエノール酸に対して耐性を付与するキサンチンーグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)、アミノグリコシドG−418に対して耐性を付与するネオマイシン(neo)、ヒグロマイシンに対して耐性を付与するヒグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(hygro)などの抗代謝耐性を選択に利用することもできる。本発明の好ましい態様においては、細胞培養物を、唯一のベクターが存在するような細胞に対して低い比率のベクターで、あるいは一つの細胞において限られた数のベクターで形質転換される。本発明の実施に用いられるベクターとしては、レトロウイルス又はアデノウイルス関連ウイルスなどのウイルス発現ベクターなどの原核発現ベクターが挙げられる。
【0037】
5.3. トランスースプライシング分子の使用及び投与
5.3.1. 遺伝子調節、遺伝子修復及びターゲット細胞死のためのPTMの使用
本発明の組成物及び方法は、遺伝子調節、遺伝子修復、ターゲット細胞死などの各種に適用できる。トランスースプライシングは、毒性を有する蛋白を細胞に導入するのに用いることができる。更に、PTMをウイルスmRNAに結合しウイルスmRNAの機能を破壊するように、あるいはウイルスmRNAを発現する細胞を破壊するように工夫することができる。本発明の他の態様では、有害なmRNA転写物にストップコドンを設けて転写物の発現を減少させるようにPTMを工夫することもできる。
末端が欠失した又は点変異を含む転写物を修復するためにターゲットトランスースプライシングを用いることができる。本発明のPTMは、特定の変異の上流または下流あるいは未熟3’の上流のターゲット転写物を解裂し、変異を含む転写物の部分を機能的配列に置換するトランス−スプライシングにより変異転写物を修正するようにデザインされている。
嚢胞性繊維症(CF)は、最も一般的な致命的なヒトの遺伝病である。遺伝子及び分子分析により、嚢胞性繊維症関連遺伝子が単離されその蛋白生産物が推定されている(Kerem,B.S.et al.,1989,Science 245:1073-1080;Riordan et al.,1989,Science 245:1066-1073;Rommans, et al.,1989,Science245:1059-1065)。CF関連遺伝子の蛋白生産物は、嚢胞性繊維症膜転移コンダクタンスレギュレーター(CFTR)と呼ばれている。本発明の特定の態様では、嚢胞性繊維症膜転移コンダクタンスレギュレーター(CFTR)をコードするDNAにおける欠損を修正して、嚢胞性繊維症膜転移コンダクタンスレギュレーターをコードするDNAが発現され機能的塩素イオンチャンネルが患者のエアウエイ表皮細胞に生じるように、PTMを用いる事が出来る。
【0038】
最も一般的な嚢胞性繊維症変異は、CFTRアミノ酸配列の508位のフェニルアラニンをコードするエクソン10の3つのヌクレオチドの欠失であることが集団の調査によって明かになった。図15に示されているように、トランス−スプライシング反応により、CFTRアミノ酸配列の508位の欠失を修正することができた。遺伝子欠損の修正に用いたPTMは、CFTR BDイントロン9配列、スペーサー配列、分岐点、ポリピリジン区域、3’スプライス部位及び野性型CFTR BDエクソン10配列を含んでいた(図13)。トランス−スプライシング反応を利用したCFTRをコードする変異DNAの修正に成功したことは、一般的な遺伝子欠損の修正にPTMが適用できることを支持している。
リポソームへのカプセル化、マイクロ粒子、マイクロカプセル、組成物を発現できる組換え細胞、レセプター仲介エンドサイトーシス(Wu and Wu,1987,J.Bol.Chem.262:4429-4432)、レトロウイルス又は他のベクターの一部としての核酸の構築、DNAのインジェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシクム仲介トランスフェクションなどの各種のデリバリーシステムが知られており、これらは、本発明の組成物を細胞へ導入するのに用いられる。
本発明の組成物及び方法は、特定のタイプの細胞の除去又は変異が効果的な癌、及び他の重篤な疾患、自己免疫疾患および他の病原性症状などの治療に有効である。更に、本発明の組成物及び方法は、遺伝的な遺伝子疾患を有する個人の細胞に機能的で生物学的に活性な分子をコードする遺伝子を提供して、欠失した又は変異した遺伝子生産物の発現により正常な表現型を形成するのに用いることが出来る。
【0039】
本発明の好ましい態様においては、PTMをコードする配列を含む核酸は、遺伝子デリバリーによって投与され宿主細胞に投与されてPTM機能を促進する。この態様では、PTM産生を促進することによって、核酸が効果を仲介する。当業界において利用できる宿主細胞への遺伝子デリバリー法はいかなるものも本発明により利用できる。遺伝子デリバリー法の一般的な概要については、Strauss,M and Barranger,J.A.,1997,Concepts in Gene Therapy,by Walter de Gruyter & Co.,Berlin;Goldspiel et al.,1993,Clinical Pharmacy12:488-505;Wu and Wu,1991,Biotherapy 3:87-95;Tolstoshev,1993,Ann.Rev.Pharmacol Toxicol,33:573-596;Mulligan,1993,Science 260;926-932;及びMorgan and Anderson,1993,Ann.Rev.Biochem.62:191-217;1993,TIBTECH 11(5):155-215などが参照される。具体的方法を以下に記載する。
【0040】
宿主細胞への核酸のデリバリーは、宿主を核酸又は核酸を保持するベクターに直接的に曝すことにより、あるいは宿主細胞を最初にin vitroで核酸で形質転換し、次いで宿主に移植する間接的方法により行われる。これら2つの方法は、in vivo又はex vivo遺伝子デリバリーとして公知である。
特定の態様では、核酸はin vivoで直接的に投与されて発現してPTMを産生する。これは、当業界で公知の各種の方法、例えば、核酸を適当な核酸発現ベクターの一部として構築してそれを分子内物となるように投与する方法、欠損又は変性レトロウイルス又は他のベクター(U.S.P.No.4,980,286)を用いた感染法、裸のベクターとして直接投与による方法、マイクロ粒子の射突による方法(ジーンガン:Biolistic,Dupont)、脂質又は細胞表面レセプター又はトランスフェクション試薬での皮膜による方法、リポゾームへのカプセル化による方法、マイクロ粒子又はマイクロカプセルによる方法、核に進入することが知られているペプチに核酸を結合させて投与する方法(Wu and Wu,1987,J.Biol.Chem.262:4429-4432)などにより、行うことができる。
特定の態様では、PTMを含むウイルスベクターを用いることができる。例えば、ウイルスゲノムのパッケージング及び宿主細胞DNAへの導入に必要でないレトロウイルス配列を削除したレトロウイルスベクター(Milier et al.,1993,Meth.Enzymol.217:581-599)を利用することが出来る。あるいは、アデノウイルス又はアデノ関連ウイルスベクターを、細胞又は組織への遺伝子デリバリーに用いることができる(アデノウイルスに基づく遺伝子デリバリーの総説としてKozarsky and Wilson,1993,Current Opinion in Genetics and Development 3:499-503)。
【0041】
細胞への遺伝子デリバリーの他のアプローチとしては、エレクトロポレーション、リポフェクチン、リン酸カルシウム仲介トランスフェクション又はウイルスインフェクションなどによる組織培養中の細胞への遺伝子導入などが挙げられる。通常、導入法は、細胞への選択マーカーの導入を含むものである。細胞は次いで選択条件下に置かれ、導入遺伝子を取りこみ発現する細胞を単離する。得られる組換え細胞は、当業界に公知の各種方法により宿主へデリバリーされる。好ましい態様では、遺伝子デリバリーに用いられる細胞は、宿主細胞中で自己複製するものである。
また本発明は、薬学的に許容できる担体と共に、有効量のPTM又はPTMをコードする核酸を含む薬学的組成物が提供される。特定の態様では、薬学的に許容できるとは、連邦政府又は国家の規則代理人によって許可されるもの、U.S.Pharmacopedia又は他の一般的に動物用に特にヒト用に認められた薬局方に記載されたものを意味する。担体とは、薬物と一緒に投与する希釈剤、アジュバント、賦形剤、ビークルなどを意味する。適当な担体の例は、E.W.MartinのRemington's Pharmaceutical Scienceに記載されている。
【0042】
特定の態様では、本発明の薬学的組成物は、(1)内因性蛋白又は機能のレベルがないあるいは低い(正常又は望ましいものに比べて)病気又は障害、例えば蛋白を欠いているあるいは遺伝子的に欠陥を有し生物学的に不活性または非反応性又は抑制されている宿主、又は(2)in vitro又はin vivoアッセイによりPTMの有用性により特定の蛋白の機能が抑制されていることが判明した病気又は障害などに投与される。PTM仲介トランス−スプライシング反応により得られるキメラmRNAによりコードされる蛋白の活性は、宿主組織サンプルをバイオプシサンプルなどから得てin vitroでmRNA又は蛋白レベル、発現したキメラmRNAの活性及び/又は構造をアッセイすることにより容易に検出できる。多くの標準的方法、例えば、キメラmRNAによってコードされる蛋白を検出し及び/又は視覚化するイムノアッセイ(ウエスタンブロット、免疫沈降それに続くドデシル硫酸ポリアクリルアミドゲル、電気泳動、イムノサイトケミストリー)
及び/又はキメラmRNAの存在を検出及び/又は視覚化することによるキメラmRNAの形成を検出するアッセイなどが挙げられる。
【0043】
また本発明は、薬学的に許容できる担体と共に、有効量のPTM又はPTMをコードする核酸を含む薬学的組成物が提供される。特定の態様では、薬学的に許容できるとは、連邦政府又は国家の規則代理人によって許可されるもの、U.S.Pharmacopedia又は他の一般的に動物用に特にヒト用に認められた薬局方に記載されたものを意味する。担体とは、薬物と一緒投与する希釈剤、アジュバント、賦形剤、ビークルなどを意味する。適当な担体の例は、E.W.MartinのRemington's Pharmaceutical Scienceに記載されている。特定の態様では、本発明の薬学的組成物を、治療が必要な領域に局所的に投与するのが望ましい。これは例えば、手術中の局所注入、手術後の包帯と共に局所適用、注射、カテーテル、坐剤、シアラスチックな膜又はファイバーなどのポーラス又は非ポーラス物質などによる移植等により投与される。放出制御ポリマー、ヒドロゲルなどのマトリックス、ナノ粒子などの他の薬物放出制御デリバリーシステムを利用することもできる。
PTMは、ターゲット細胞で望ましい効果を生み出すような効果的な量で投与される。PTMの効果的な投与は、生物学的活性半減期、バイオアベイラビリテー、毒性などのパラメーターを考慮した公知の手法により決定される。本発明の組成物の有効な量は、治療する病気及び障害の本質に依存し、標準的な臨床技術により決定できる。更に最適投与量を同定するために、in vitroアッセイを任意に用いることができる。
【0044】
本発明はまた医薬パック又はキットであって、一又は二以上の本発明の医薬組成物の成分を満たした一又は二以上の容器を含み、医薬又は生物学的製品の製造、使用又は販売を制限する政府官庁により処方された形態の警告であって、その警告が、ヒト投与用の製造、使用又は販売の官庁による許可を反映するもの、を任意に付しても良い。
【0045】
5.3.2.エキソンのタギングのためのPTM分子の使用
現在のヒト及び他の生物のゲノムの配列決定及び特徴決定の努力の点から、そのような特徴決定を容易にする方法に対するニーズが存在する。現在入手されるゲノムマッピング及び配列決定により得られる情報の大部分は、cDNAへのmRNAの逆転写により作られる相補性DNA(cDNA)ライブラリーから誘導される。不幸にも、この工程は、イントロン配列及びエキソン/イントロン境界の位置に関する情報のロスを生じる。
【0046】
本発明は、プレ−mRNA中のエキソン−イントロン境界のマッピングのための方法であって、(i)プレ−トランス−スプライシング分子の部分がターゲットプレ−mRNAの部分へとトランス−スプライスされる条件下で、ランダムターゲット結合ドメインを含むプレ−トランス−スプライシング分子をプレ−mRNA分子に接触させ、キメラmRNAを形成すること、(ii)該キメラmRNA分子を増幅すること、(iii)増幅した分子を選択的に精製すること、及び(iv)増幅した分子のヌクレオチド配列を決定し、それによりイントロン−エキソン境界を同定すること、
を含む、上記方法を包含する。
【0047】
本発明の一の態様において、PTMsをプレ−mRNA分子中のエキソン−イントロン境界の場所を突き止めるために用いることができる。イントロン−エキソン境界のマッピングにおいて使用するPTMsは、上記5.1節で既述したものに類似する構造を有する。特に、PTMsは(i)多くのプレ−mRNAに結合するように設計されたターゲット結合ドメイン、(ii)ブランチポイント、ピリミジン域、及び3’スプライス受容体部位を含む3’スプライス領域、(iii)mRNAスプライス部位をターゲット結合ドメインから分離するスぺーサー部位、並びに(iv)プレ−mRNA上にトランス−スプライスされるタグ領域、を含む。イントロン−エキソンマッピングの目的のためには、PTMsはランダムヌクレオチド配列を含むターゲット結合ドメインを含むように遺伝子操作される。ランダムヌクレオチド配列は、核の機構を処理するスプライソソームが、PTMの部分(タグ又はマーカー領域)をプレ−mRNAの部分へとトランス−スプライスすることができるように、プレ−mRNAに結合し、固定することができるヌクレオチド配列を少なくとも15〜30、最大では数百まで、含む。短いターゲット結合ドメインを含む、またはイノシンを含むPTMsは、よりストリンジェントでない条件下で、プレ−mRNA分子に結合する。更に、強いブランチポイント配列及びピリミジン域は、PTMトランス−スプライシングの非−特異性を増す働きをする。
【0048】
PTM分子中のターゲット結合ドメインとして使用するランダムヌクレオチド配列は、種々の異なる方法により作られ、その中には、制限エンドヌクレアーゼによるDNAの消化、又はDNAの機械的切断が含まれるが、これらに限定されない。そのようなランダムヌクレオチド配列の使用は、細胞中で発現される各ターゲットプレ−mRNAにつて、異なる結合活性を有するPTM分子の巨大な並びを作成するようデザインされる。オリゴヌクレオチドのランダム化されたライブラリーは、プラスミドベクター中への遺伝子操作されたPTM分子へとクローニングするための、各末端上の適当な制限エンドヌクレアーゼ認識部位を用いて合成される。ランダム化したオリゴヌクレオチドがリゲートされ、発現されると、PTMsのランダム化された結合ライブラリーが作成される。
【0049】
本発明の特定の態様において、ランダムヌクレオチド配列を含むターゲット結合ドメインを含むPTM分子をコードする発現ライブラリー当業者にとって周知の種々の方法を用いて作成される。理想的には、ライブラリーは細胞中で発現される各ターゲットプレ−mRNAと相互作用することができるPTM分子を含むのに十分なほど複雑である。
【0050】
例により、図9はイントロン−エキソン境界のマッピングに用いられるPTMsの二つの形態を図式的に表す。左側のPTMはプレ−mRNA3’スプライス部位への非−特異的なトランス−スプライシングをすることができ、一方、右側のPTMはプレ−mRNA5’スプライス部位へのトランス−スプライシングをすることができる。PTMとターゲットプレ−mRNAとの間のトランス−スプライシングは、真正のエキソンの3’又は5’上に特定のヌクレオチド配列「タグ」を有するキメラmRNA分子を与える。
【0051】
選択的な精製に続いて、次にPTMのタグヌクレオチド配列で始まり、タグされたエキソンの配列へと進行する、プライマーを用いたDNA配列決定反応をおこなう。タグヌクレオチド配列の最後のヌクレオチドに直接続く配列は、エキソン境界を表す。イントロン−エキソンタグの同定のため、本発明のトランス−スプライシング反応は、インビトロ又はインビボのいずれかにおいて、当業者に周知の方法を用いて行われ得る。
【0052】
5.3.3細胞中で発現されるタンパクの同定のためのPTM分子の使用
本発明の他の態様において、PTM媒介トランス−スプライシング反応は、細胞中に発現される未だ検出されていない、未知のタンパクの同定に用いることができる。この方法は、なかんずく、タンパクのサイズの小ささ、タンパクの低濃度により、または二次元電気泳動において、他のタンパクと類似する移動パターンを示すことによる検出の失敗により、二次元の電気泳動、又は他の方法により検出することができないタンパク質の同定に特に有用である。
【0053】
本発明は、細胞中に発現するタンパクの同定方法であって、(i)プレ−トランス−スプライシング分子の部分がターゲットプレ−mRNAの部分へとトランス−スプライスされる条件下で、ランダムターゲット結合ドメインとペプチドタグをコードするヌクレオチド配列を含むプレ−トランス−スプライシング分子をプレ−mRNA分子に接触させ、融合ポリペプチドをコードするキメラmRNAを形成すること又はそれをゲル電気泳動により分離すること、(ii)該融合ポリペプチドをアフィニティー精製すること、及び(iii)融合タンパクのアミノ酸配列を決定することを含む、上記方法に関する。
【0054】
細胞中に発現されるタンパクの同定のためには、本発明のPTMsは(i)ランダム化されたヌクレオチド配列を含むターゲット結合ドメイン、(ii)ブランチポイント、ピリミジン域、及び3’スプライス受容体部位、並びに/又は5’スプライスドナー部位を含む3’スプライス領域、(iii)PTMスプライス部位をターゲット結合ドメインから分離するスぺーサー部位、並びに(iv)マーカー又はペプチドアフィニティ精製タグをコードするヌクレオチド配列、を含むように、遺伝子操作される。そのようなペプチドタグには、HISタグ(6ヒスチジン連続残基)(Janknechtら、1991年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:8972-8976)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)(Smith,D.B.及びJohnson,K.s.1988,Gene67:31)(Pharmacia)又はFLAG(Kodak/IBJ)タグ(Nisson.J.ら、J.Mol.Recognit.、1996,5,585-594)が包含されるが、これらに限定されない。そのようなPTMsを用いたトランス−スプライシングは、マーカー又はペプチドアフィニティ精製タグに繋がった、細胞中において通常発現されるタンパク配列を含む、キメラmRNA分子の生成を与える。そのような方法の所望のゴールは、細胞中で合成される全てのタンパクがマーカー又はペプチドアフィニティタグを受けとり、それにより細胞中に発現する各タンパクを同定するための方法を提供することである。
【0055】
本発明の特定の態様において、ランダムヌクレオチド配列を含む異なるターゲット結合ドメインを有するPTMsをコードするPTM発現ライブラリーが作成される。所望のゴールは、細胞中で発現される各プレ−mRNAに結合することができるPTMを作るのに十分複雑なPTM発現ライブラリーを作製することである。好ましい態様において、ライブラリーは、哺乳類の発現ベクター中へクローニングされ、それにより、一つ又は、多くとも数個のベクターがいずれか一つの細胞中に存在することになる。
【0056】
キメラタンパクの発現を同定するため、宿主細胞をPTMライブラリーで形質転換し、植え付け、一のPTMを含む個々のコロニーが成長し、精製されるようにする。単一のコロニーを選択し、適当な培地中に増殖させ、標識したキメラタンパクのエキソン(複数でも良い)断片を、例えば、アフィニティー精製タグを用いて他の細胞タンパクから分離する。例えば、アフィニティークロマトグラフィーは、FLAGタグなど、ペプチドタグに特異的に結合する抗体の使用を含む。代替的に、HISタグを用いる時には、融合タンパクは、Ni2+ニトリロ酢酸アガロースカラムを用いて精製され、それにより、イミダゾール含有緩衝液により溶出される結合したペプチドの選択的溶出が可能となる。GSTタグを用いる時、融合タンパクはグルタチオン−S−トランスフェラーゼアガロースビーズを用いて精製される。融合タンパクは、次に遊離グルタチオンの存在下に溶出される。
【0057】
キメラタンパクの精製後、分析を行い、融合タンパクのアミノ酸配列を決定する。融合タンパクのアミノ酸配列は、当業者にとって周知の方法、例えば、エドマン分解とそれに次ぐ、HPLCを用いたアミノ酸分析、質量分析、またはアミノ酸アナライザーション、を用いて決定される。同定した後、ペプチド配列を例えばGeneBank等のタンパクデータベース中に入手可能な配列と比較する。もし部分的なペプチド配列が既知であれば、更なる分析は行わない。もし部分的なタンパク配列が未知であれば、完全なタンパク配列を決定するため、当該タンパクのより完全な配列決定を行うことができる。融合タンパクは、全長タンパクの一部分しか含まないので、全長タンパクをコードする核酸が慣用の方法により単離される。例えば、部分的なタンパク配列のオリゴヌクレオチドプライマーが、cDNAライブラリーをスクリーンするためのプローブ又はPCRプライマーとして使用するために生成される。
【0058】
6.例:トランス−スプライシング分子の製造
以下の節は、PTMsの製造及びそのような分子がトランス−スプライシング反応を媒介することができ、キメラmRNA分子の製造をなし得ることの例証を説明する。
【0059】
6.1 材料及び方法
6.1.1. プレ−mRNA分子の構築
野生型のジフテリア毒素サブユニットA(DT−A、野生型寄託番号K01722)及びDT−A変異体(CRM197、酵素活性なし)を含むプラスミドをVirginia Johnson博士、Food and Drug Administration、Bethesda、Marylandから得た(Uchidaら、1973、J.Biol.Chem.248:3838)。インビトロ実験のため、DT−Aをプライマー:DT−1F
及びDT−2R
を用いて増幅し、PstI及びHindIIIにより切断し、PstI及びHindIII消化したpBS(−)ベクター(Stratagene,La Jolla、CA)中へクローニングした。得られたクローンpDTAを個々のPTMsを構築するのに用いた。(1)pPTM+:ターゲットした構築物。IN3−1
及びIN2−4
プライマーをEcoRI及びPstI消化pDTA中へインサートすることにより作製。(2)pPTM+Sp:pPTM+と同様に、但し、BDとBPとの間に30bpのスぺーサーを有する。
pPTM+をXholで消化し、オリゴヌクレオチド中、スぺーサーS
及びスペーサーAS
をリゲートすることにより作製。インビボ研究のため、pcPTM+SpのEcoRI及びHindIII断片を哺乳類の発現ベクターpcDNA3.1(Invitrogen)中にCMVプロモーターの制御下でクローンした。また、コドン14のメチオニンをイソロイシンに代え、翻訳の誘発を防止した。得られたプラスミドをpcPTM+Spと指定した。(3)pPTM+CRM:pPTM+Spと同様に、ただし、野生型DT−AをCRM変異体DT−A(T.Uchidaら、1973、J.Biol.Chem.248:3838)。これは、プライマーDT−1F及びDT−2Rを用いたDT−A変異体(G52Eにおける変異)のPCR増幅により作製された。インビボ研究のためには、PTM+CRMのEcoRI HindIII断片を、pc3.1DNA中へクローンし、pcPTM+ARMとした。(4)PTM−:非ターゲット構築。PTM+のEcoRI及びPstIによる消化、結合ドメインの除去のためゲル精製し、次にオリゴヌクレオチド
のリゲートにより作製。(5)PTM−Sp、PTM−と同一のバージョン、但し、PstI部位に30bpのスペーサー配列を有する点を除く。同様に、スプライス変異体[Py(−)AG(−)及びBP(−)Py(−)AG(−)]及び安全変異体(safety variants)[PTM+SF-Py1,PTM+SF-Py2,PTM+SFBP3及びPTM+SFBP3-Py1]を、特定の配列の挿入、欠失(表1参照)のいずれかにより作製した。
【0060】
【0061】
太字のヌクレオチドは正常なBP、PPT及び3’スプライス部位と比較した突然変異を表す。
【0062】
枝分かれ部位Aには下線を引いてある。イタリック体のヌクレオチドはPTM中のBP配列をマスクするために安全BD中に導入されたミスマッチを表す。
【0063】
ダブルトランス−スプライシングPTM構築体(DS-PTM)もまた、PTM+SFの毒素コード配列の3’端に、5’スプライス部位と、βHCGプレmRNAの第二イントロンに相補的な第二の標的結合ドメインを付加して作った(図A)。
【0064】
6.1.2. βHCG6標的プレmRNA
インビトロ標的プレmRNAを作成するために、βHCG遺伝子6(受託番号X00266)のSacl断片をpBS(−)にクローニングした。これによりヌクレオチド460−1265(これは5’非翻訳領域、開始コドン、エクソン1、イントロン1、エクソン2及びイントロン2のほとんどを含む)から805bp挿入体を作成した。インビボ研究のために、EcoR1及びBamH1断片を哺乳類発現ベクター(pc3.1DNA)の中にクローニングしてβHCG6を作成した。
【0065】
6.1.3 mRNA調製
インビトロスプライシング実験のために、βHCG6、β−グロビンプレmRNA及び様々なPTMmRNAをT7mRNAポリメラーゼ(Pasman & Garcia-Blanco,1996,Nucleic Acids Res.24:1638)を用いて、BamH1及びHindIII消化プラスミドDNAのインビトロ転写によってそれぞれ合成した。合成されたmRNAを変性ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動により精製し、生成物を切り取って溶出した。
【0066】
6.1.4 インビトロスプライシング
PTM及び標的プレmRNAを98℃に加熱してアニーリングし、次いで30−34℃にゆっくりと冷やした。各反応液は12.5μlの最終体積中に、4μlのアニールされたmRNA複合体(100ngの標的と200ngのPTM)、1Xスプライスバッファー(2メモランダムMgCl2、1メモランダムATP、5メモランダムのリン酸クレアチニン及び40メモランダムのKCl)、及び4μlのHeLaスプライス核抽出物(Promega)を含んでいた。反応液を30℃で指示された時間インキュベートし、反応を等量の高濃度塩バッファー(7M尿素、5%SDS、100メモランダムLiCl、10メモランダムEDTA及び10メモランダムトリスHCl、pH7.5)の添加により止めた。核酸をフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(50:49:1)による抽出、次いでエタノール沈殿により精製した。
【0067】
6.1.5 逆転写PCR反応
RT−PCR分析をEZ−RT PCRキット(パーキンエルマー、Foster City、カリフォルニア)を用いて行った。各反応液は50μl反応体積中に、10ngのシス若しくはトランススプライストmRNA又は1−2μgの全mRNA、0.1μlの各3’及び5’特異的プライマー、0.3メモランダムの各dNTP、1X EZバッファー(50メモランダム ビシン、115メモランダム 酢酸カリウム、4%グリセロール、pH8.2)、2.5メモランダム 酢酸マグネシウム、及び5UのrTthDNAポリメラーゼを含んでいた。逆転写を60℃で45分間行い、次いで得られたcDNAのPCR増幅を以下のように行った。1サイクルの94℃、30秒間の初期変性、及び25サイクルの94℃、18秒間の変性及び60℃、40秒間のアニーリングと伸張、次いで70℃で7分の最終伸張。反応生成物をアガロースゲルで電気泳動により分離した。
【0068】
実験に使用したプライマーは以下のとおりであった。
【0069】
6.1.6 細胞増殖、トランスフェクション及びmRNA単離
ヒト肺がん細胞系H1299(ATCC受託番号CRL−5803)を10%ウシ胎仔血清で補充したRPMI培地で37℃、5%CO2環境で増殖させた。細胞を、pcSp+CRM(CRMは非機能性毒素)、PTMを発現するベクター又はリポフェクタミン試薬(Life Technologies,Gaithersburg,MD)を用いたベクター単独(pcDNA3.1)でトランスフェクトした。トランスフェクションの2週間後にネオマイシン抵抗性(neor)コロニー形成について検定のスコア付けをした。4つのneorコロニーを選択し、継続したneo選択下で拡張した。全細胞mRNAをRNAエクソール(BioChain Institute,Inc.,San Leandro,CA)を用いて単離し、RT−PCRのために使用した。
【0070】
6.1.7 ヌードマウスの腫瘍におけるトランススプライシング
11匹のヌードマウスを、1x107H1299ヒト肺腫瘍細胞で背側の腹側部皮下スペースの両側に注射した(但し、B10、B11及びB12は一つの腫瘍を持っていた)(第1日目)。第14日目にマウスに適量の麻酔薬を投与し、いくつかの配向でのエレクトロポレーションで又はエレクトロポレーションなしで、pcβHCG6又はpcPTM+Spとともに若しくはそれなしで、100μgのpcSp+CRMを含む全量100μlの生理食塩水を注射した。右側の腫瘍に注射した溶液には針の跡を印すためにインディアインクも含ませた。48時間後に動物を殺し、腫瘍を切り取り、ただちに−80℃で凍結した。分析のため、10mgの各腫瘍をホモジェネートし、mRNAをDynabeadsmRNAダイレクトキット(Dynal)を用いて、製造者の指示書に従って単離した。精製したmRNA(10μl全体積のうちの2μl)を先述のようにβHCG−F及びDT−5Rプライマーを用いてRT−PCTに付した。すべての試料をD−3R、入れ子のDT−Aプライマー及びビオチン化したβHCG−Fを用いて再増幅し、生成物を2%アガロースゲル上で電気泳動により分析した。バンドを形成した試料をM280 Streptavidin Dynabeadsを用いて一本鎖DNAへと処理し、毒素特異的プライマー(DT−3R)を用いて配列決定した。
【0071】
6.2 結果
6.2.1 PTMの合成
18nt標的結合ドメイン(βHCG6イントロン1に相補的)、30ヌクレオチドスペーサー領域、分岐点(BP)配列、ポリピリミジン領域(tract)(PPT)及びジフテリア毒素サブユニットA(DT-A)をコードするエキソンのすぐ上流の3’スプライス部位のAGジヌクレオチド(Uchida et al.,1973,J.Biol.Chem.248:3838)を含む、原型のトランススプライシングmRNA分子、pcPTM+Sp(図1A)を構築した。その後DT−Aエキソンを修飾してコドン14の翻訳開始部位を除去した。PTM構築体をトランススプライシングを発現すべく最大活性を示すように設計した。それゆえ、それらは強力な3’スプライスエレメントを含んでいた(酵母BP及び哺乳類PPT)(Moore et al.,1993,In The mRNA World,R.F.Gesteland and J.F.Atkins,eds.(Cold Spring Harbor,New York,Cold Spring Harbor Laboratory Press)。βHCG6プレmRNA(Talmadge et al.,1984,Nucleic Acids Res.12:8415)を、この遺伝子がほとんどの腫瘍細胞において発現されるのでモデル標的として選ばれた。それは、下垂体腺及び性腺におけるいくつかの例外はあるが正常な成人細胞では発現されない。(Acevedo et al.,1992,Cancer76:1467;Hoon et al.,1996,Int J.Cancer 69:369;Bellet et al.,1997,Cancer Res.57:516)。図1Cに示すように、pcPTM+Spは従来のワトソンクリック塩基対を、βHCG6イントロン1の3’末端を持ったその結合ドメインにより形成し、標的のイントロニック3’スプライスシグナルをマスクする。この特徴は標的とPTMの間のトランススプライシングを容易にするよう設計される。
【0072】
HeLa核抽出物を確立されたスプライシング手法に沿って用い(Pasman & Garcia-Blanco,1996,Nucleic Acids Res.24:1638)、PTM構築体がβHCG6プレmRNA標的に侵入し得るかどうかをテストした。インビトロトランススプライシングの生成物をキメラmRNA分子に特異的なプライマーを用いてRT−PCRにより検出した。成功したトランススプライシング反応の予想される生成物はβHCG6の第一エクソンと、そのすぐ後に続くDT−AをコードするpcPTM+Spから寄与するエキソンを含むキメラmRNAである(図1C)。このようなキメラmRNAはプライマーβHCG−F(βHCG6エキソン1に特異的)及びDT−3R(DT−A、図2、レーン1−2に特異的)を用いるRT−PCTにより容易に検出された。時間ゼロにおいてすなわちATPの不存在下においては、466bp生成物は観察されなかった。このことはこの反応がATPと時間の両方に依存性であるということを示していた。
【0073】
pcPTM+Spの標的結合ドメインはβHCG6イントロン1プレmRNAに相補的な18ヌクレオチドを含んでおり、効率的なトランススプライシングを示した(図2、レーン1−2)。トランススプライシング効率は、非相補的な18ヌクレオチド「非結合ドメイン」を含む非標的PTM−Spを用いて少なくとも8分の1に減少した(図2、レーン3−4)。結合ドメインとBPの間のスペーサーがある場合とない場合のPTMmRNAのトランススプライシング効率も比較した。この実験はスペーサーの付加によりトランススプライシングの効率が有意に増大することを示した(図2B、レーン2+5)。効率的なトランススプライシングに要求されるスプライシングファクターを採用することを容易にするために、3’スプライス部位と、ドメイン/標的相互作用により生じた二重鎖第二構造との間にいくつかのスペースが必要となり得る。
【0074】
トランススプライシング特異性についてのPTM長の効果を調べるために、より短いPTMをAccI切断PTMプラスミドから合成した(図1参照)。これはDT−Aコード領域の3’末端から479ntを除去した。図2Bは標的とされた短いPTM(+)(レーン10−12)のトランススプライシング能力を、標的とされない短いPTM(−)(レーン14−17)と比較して示す(レーン14−17)。短いPTM+は、その片方の非標的の短いPTM(図2B、レーン17)よりも、実質的により多くのトランススプライスされた生成物を生じた(図2B、レーン12)。これらの実験はより長いPTMの方がトランススプライシングを非特異的に仲介する能力が高いであろうことを示している。
【0075】
6.2.2. PTMスプライセオソーム仲介トランススプライシングの正確性
pcPTM+SpとβHCG6標的の間のトランススプライシングが正確であることを確認するために、RT−PCT増幅生成物を5’ビオチニル化βHCG−F及び非ビオチニル化DT−3Rプライマーを用いて生成した。この生成物は一本鎖DNAに変えて、Mitchel及びMerril(1989,Anal.Biochem.178:239)の方法を用いて、プライマーDT−3R(DT−A特異的逆プライマー)で直接配列決定した。トランススプライシングは予想されたスプライス部位(図3)の間で正確に起こり、従来のプレmRNAがスプライシングの間遺伝子工学PTM構築体により侵入され得ること、さらにこの反応が正確であることを確認した。
【0076】
さらに、ダブルスプラシングPTM(DS−PTM)の選択的トランススプライシングが観察された(図8B)。DS−PTMは3’又は5’スプライス部位のいずれかに貢献することによりトランススプライシングを生じることができる。さらに,3’部位と5’部位の両方において同時にダブルトランススプライシングを行うことができ、それによりエキソン置換を可能にするDS−PTMを構築することができる。図8Bはこの構築体において5’スプライス部位が標的βHCGプレmRNA:DS−PTMの1:1濃度でより活性であることを示している。1:6の比では5’スプライス部位はより活性である。
【0077】
6.2.3 3’スプライス部位はPTMトランススプライシングにとって本質的である
一般に、3’スプライス部位は三つの要素を含んでいる。1)アクセプター部位の5’に位置するBP配列、2)短いピリミジン残基からなるPPT、及び3)イントロン−エキソン境界におけるYAGトリヌクレオチドスプライス部位アクセプター(Senapathy et al.,1990,Cell 91:875;Moore et al.,1993)。これらの配列要素の一つの削除又は変更はスプライシングを減少させるか、あるいはなくしてしまうことが知られている(Aebi et al.,1986;Reed & Maniatis 1988,Genes Dev.2:1268;Reed,1989,Genes Dev.3:2113;Roscigno et al.,1993,J.Bio.Chem.268:11222;Coolidge et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:888)。標的トランススプライシングにおけるこれらの保存された要素の役割は実験的に処理された。一つのケース[(BP(−)Py(−)AG(−)]では、すべての三つの要素(BP、PPT及びAGジヌクレオチド)をランダムな配列で置き換えた。PPT及び3’スプライス部位アクセプターが突然変異を受けランダム配列で置き換わっている第二のスプライシング突然変異体[(Py(−)AG(−)]が構築された。いずれの構築体もインビトロではトランススプライシングを支持することはできなかった(図2A、レーン5−8)。これは、従来のシススプライシングの場合と同様に、PTMトランススプライシングプロセスもまた3’スプライス部位において機能的なBP、PPT及びAGアクセプターを要するということを示唆するものである。
【0078】
6.2.4.特異性を増大させるための”安全な”スプライス部位の発生:
結合領域の封入によりまたはPTMを短縮することにより達成される標的特異性の水準を改良するために、数種のPTM構造の標的結合領域は(”安全なPTM”と称される)3’スプライス部位をマスクするための分子内茎部を造るために修飾された。安全な茎部はPTM3’スプライス部位またはこれに隣接する配列の領域と部分的に塩基対にし、それにより標的獲得のまえにPTM3’スプライス部位へのスプライシング複合体成分の接近を遮断する、結合領域の部分により形成される(図4A、PTM+SF)。PTM結合領域およびβHCG6の遊離部分間の塩基対は、安全な茎部を巻戻してU2AFのようなスプライシングファクターをPTM3’スプライス部位に結合させそしてトランススプライシングを開始させるのを可能にする(図4B)。
【0079】
この概念は、PTM+SF(安全)またはpcPTM+Sp(線状)のいずれかそして標的(βHCG6)および非標的(β−グロビン)pre−mRNAの両方を含有するスプライシング反応において試験された。スプライシングされた生成物は次に、RT−PCRおよびゲル電気泳動により分析された。βHCG−FおよびDT−3Rプライマーを用いて、特異性196bpトランススプライシングされたバンドはβHCG標的そして線状PTM(pcPTM+Sp、図5、レーン2)または安全PTM(PTM−SF、図5、レーン8)のいずれかを含有する反応において示された。線状PTM(図5、レーン2)と安全PTM(図5、レーン8)との間での標的化トランスプライシングの比較は安全PTMが線状PTMより効率が低くトランススプライシングしたことを示した。
【0080】
非標的化反応はβ−グロブリン−F(β−グロブリンのエキソン1に特異性)およびDT−3Rプライマーを用いて増幅された。β−グロビンpre−mRNAを用いて非特性PTMをトランススプライシングすることにより、生成された予期生成物は189bpである。線状PTMとβ−グロビンpre−mRNAとの間で非特異性トランススプライシングは明らかであった(図5、レーン5)。対照的に、安全PTMの使用により非特異性トランススプライシングは実質的に排除された(図5、レーン11)。このことは、線状PTMがスプライシング複合体媒介トランススプライシングの概念を明らかにするための最大活性のためにデザインされたので、予期されなかった。その有力な3’スプライス部位と組み合わされた線状PTMの開いた構造はスプライシング因子の結合を促進する。いったん結合されたならばこれらのスプライシング因子は、トリパノソーマにおけるトランススプライシングに類似の方法で、任意の5’スプライス部位とともにトランススライシングを潜在的に開始することが出来る。安全茎は標的獲得のまえに、U2AFのようなスプライシング因子がPTMに結合するのを防止するようにデザインされた。この結果は、結合領域の遊離部分とβHCG6との間の塩茎対が(mRNA−mRNA相互作用により)安全茎部を巻戻し、5’スプライス部位をあらわし、スプライシング因子の漸増およびトランススプライシングの開始を可能にするモデルと一致している。β−グロビンとβHCG6pre−mRNAとの間でトランススプライシングは検出されなかった(図5、レーン3、6、9および12)。
【0081】
6.2.5 安全PTMおよび変異体のインビトロトランススプライシング:
トランススプライシングにおける3’スプライス部位の役割をより良く理解するために、PPTがプリンとの置換により弱められそして(または)BPが塩基置換により修飾されているかのいずれかである一連の安全PTMが構成された(表1参照)。安全(PTM+SF)のインビトロトランススプライシング効率が3種の安全変異体比較され、それはトランススプライシングに対する減少した能力を示した。最も大きな効果に変異体2(PTM+SFPy2)を用いて観察され、これはトランススプライシング不能であった(図4C、レーン5〜6)。トランススプラインシングのこの阻止は弱められたPPTおよび(または)安全茎部のより高いTmに起因している可能性がある。対照的に、BP配列における変異(PTM+SFBP3)はトランススプライシングに顕著に影響しなかった。このことは、導入された修飾が哺乳動物の分岐点コンセンサス範囲YNYURAC(但し、Y=ピリミジン、R=プリンおよびN=任意のヌクレオチド)内であったので驚くべきことではない(Moore等、1993)。この発見は、分枝点配列がスプライシング効率に影響することなしに除去されることが出来ることを示している。PPTにおける変化(PTM+SF−Pyl)はトランススプライシングにおける水準を減少させた(レーン3〜4)。同様に、BPおよびPPTの両方が変化されたPTM+SFBP3−Pylであった場合に、それらはトランススプライシングにおいてさらに減少を生じさせた(図4C、レーン9〜10)。これらの安全な変異体のトランススプライシング効率の順序はPTM+SF>PTM+SFBP3>PTM+SFPyl>PTM+SFBP3−Pyl>PTM+SFPy2である。これらの結果はPPTおよびBPの両方が有効なインビトロトランススプライシングのために重要であることを確認する(Roscigno等のJ.Biol.Chem.268:11222(1993))。
【0082】
6.2.6. シス スプライシングとトランススプライシングとの間の競合:
PTMの濃度を増大させることによるpre−mRNAシス スプライシングを遮断することが可能であるかどうかを調べるために、トランススプライシングに対する反応を駆動するために実験を行なった。それらのスプライシング反応は、一定量のβHCG6pre−mRNA標的および種々の濃度のトランススプライシングPTMを用いて行なわれた。シススプライシングはβHCG−F(エキソン1)およびβHCG−R2(エキソン2)に対するプライマーを用いるRT−PCRにより監視された。これは予期された125bPシススプライシングされた生成物および478bPスプライシングされていない生成物を増幅させた(図6A)。プライマーβHCG−FおよびDT−3Rがトランススプライシングされた生成物を検出するために用いられた(図6B)。PTMの低い濃度で、シススプライシング(図6A、レーン1〜4)は、トランススプライシング(図6B、レーン1〜4)よりも優勢であった。シススプライシングは標的よりも1.5倍大きいPTM濃度で約50%減少された。標的の3倍の濃度にPTMmRNA濃度を増大させると、90%よりも大きくシススプライシングを阻止し(図6A、レーン7〜9)、同時にトランススプライシングされた生成物を増大させている(図6B、レーン6〜10)。競合PT−PCRは1つの反応においてすべての3種のプライマー(βHCG−F、HCG−R2およびDT−3R)を包含させることによりシススプライシングされた生成物およびトランススプライシングされた生成物の両方を同時に増幅させるために行なわれた。この実験は図6において見られる結果と同様な結果を示し、インビトロ条件下に、PTMは標的pre−mRNAシススプライシングを有効に遮断しそしてそれを特別に設計されたトランススプライシングされたキメラmRNAの生産に置き換えることを示している。
【0083】
6.2.7 組織培養中のトランス−スプライシング
細胞培養モデルにおけるトランス−スプライシングのメカニズムを例証するため、ヒト肺ガン細胞株H1299(βHCG6陽性)をSP−CRM(非機能的なジフテリア毒素)を発現するベクター又はベクター単独(pcDNA3.1)でトランスフェクトし、ネオマイシン(neomycin)の存在下で成長させた。四つのネオマイシン耐性のコロニーを14日後に個々に回収し、続いてのネオマイシンの存在下に拡張した。mRNA全体を欠くコロニーから単離し、プライマーβHCG−F及びDT−3Rを用いたRT−PCRにより分析した。これにより、四つの選択したコロニーのうち三つから、予想される196bpのトランス−スプライスした生成物が得られた(図7A、第2,3,及び4レーン)。増幅したクローン番号2からの生成物を直接配列決定し、PTM誘導のトランス−スプライシングが、ヒト細胞において、内因的に発現されたβHCG6ターゲットエキソン1及びDT−Aの第一ヌクレオチドの、予想されたスプライス部位で正確に生じたことを確認した(図7B)。
【0084】
6.2.8 インビボモデルにおけるトランス−スプライシング
インビボにおけるトランス−スプライシングのメカニズムを例証するため、以下の実験をアシミック(athymic)(ヌード)マウスにおいて行った。107のH1299細胞を背側の側腹部の皮下空間中に注射して、腫瘍を発生させた。14日目に、PTM発現プラスミドを腫瘍へ注射した。大部分の腫瘍を次に、電気穿孔に付し、プラスミドの送達を容易にした(以下の表2参照)。48時間後、腫瘍を除去し、ポリA−mRNAを単離し、RT−PCRで増幅した。19のPTM処理腫瘍のうち8つにおいて、トランス−スプライシングが検出された。二つの試料が、一回のRT−PCRのラウンドで、mRNAから、予想されたトランス−スプライスされた生成物(466bp)を製造した。次に、6つの更なる腫瘍が、ネストしたプライマーのセットを用いた第二のPCRの増幅によりトランス−スプライスについて陽性であり、予想された196bpの生成物を製造した(表2)。各陽性のサンプルを配列決定し、βHCG6エキソン1が予想されたスプライス部位において、DT−Aのコード配列(野生型又はCRM変異体)に正確にトランス−スプライスされることを例証した。陽性試料の6つが、人工的にターゲット前−mRNAの濃度を増やした、プラスミドpcPTM+CRM及びpcHCG6の共トランスフェクション(cotransfection)を受けた処理グループ由来であった。これは、トランス−スプライスされる現象を検出する可能性を高めるために行われた。他の二つの陽性腫瘍は、pcPTM+Sp(野生型DT−A)のみを受けたグループ由来であった。これらの腫瘍は、βHCG6発現プラスミドによりトランスフェクトされず、再度、6.2.7節で述べた組織培養モデルと同様に、トランス−スプライシングが、腫瘍細胞により製造される、PTMと内因的なβHCG6前−mRNAとの間で起こったことを例証した。
【0085】
【0086】
7.例 LacZトランス−スプライシングモデル
特異的プレmRNA標的とPTMの間のスプライソソーム介在標的トランス−スプライシングの機構の普遍性を明白にし、評価するために、酵素β−ガラクトシダーゼに基づいた単純なモデルシステムを開発した。以下の節においては、特異標的とPTMの間のスプライソソーム介在標的トランス−スプライシングの成功例を明らかにする結果を記載する。
【0087】
7.1. 材料と方法
7.1.1. プライマー配列
以下のプライマーlacZモデルシステムをテストするために使用された:
【0088】
7.1.2. lacZプレmRNA標的分子の構築
lacZ標的プレmRNA(pc3.1、lacT1)を、以下のPCR産物のクローニングによって構築した:(i)lacZの5’フラグメント、次いで(ii)βHCG6イントロン1:(iii)およびlacZの3’フラグメント。lacZ遺伝子の5’および3’断片を、以下のプライマーを使用して、テンプイレートpcDNA3.1/His/lacZ(Invitrogen,SanDiego,CA)からPCR増幅した:5’lac−1Fおよび5’lac1R(5’断片用)、および3’lac−1Fおよび3’lac−1R(3’断片用)。増幅したlacZ5’断片は開始コドンを含む1788bp長であり、増幅した3’断片は1385bp長で、分枝点、ポリピリミジントラクトおよびβHCG6イントロン1、に加えて、天然の5’および3’スプライス部位を有している。βHCG6イントロン1は、以下のプライマーを用いてPCR増幅された:HCG−In1FおよびHCG−In1R。
【0089】
lacZ標的2は、3’スプライス部位の後にフレーム4コドン中に2つの停止コドン(TAATAA)を含有している他は、lacZ1と同じバージョンである。これは、以下のプライマーを用いて、3’断片(lacZ)のPCR増幅によって創製された:lac−Stopおよび3’lac1RおよびlacZ標的1中の機能的3’断片の置換。
【0090】
7.1.3. pc3.1PTMおよびpc3.1PTM2の構築
プレ−トランス−スプライシング分子、pc3.1PTM1は、PstIおよびHindIIIでpTM+Spを消化し、DT−AトキシンをコードするDNA断片を、lacZの機能的3’末端をコードするDNA断片で置換することによって創製した。この断片を以下のプライマーを用いてPCR増幅することによって産生した:3’lac1Fおよび3’lac1R。細胞培養実験のために、HCGイントロン1に対する結果領域、30bpスペーサー、酵母分枝点(TACTAAC)、および強いポリピリミジントラクトと次いでクローン化したlacZを含有するpc3.1PTM2の、EcoRIおよびHindIII断片をpcDNA3.1にクローン化した。
【0091】
プレ−トランス−スプライシング分子、pc3.1PTM2は、PstIおよびHindIIIでpPTM+Spを消化し、そしてDT−AトキシンをコードするDNA断片をβHCG6エキソン2で置換することによって創製された。βHCG6エキソン2は、以下のプライマーを用いてPCR増幅によって産生された:HCG−Ex2FおよびHCG−Ex2R。細胞培養実験のために、HCGイントロン1に対する結果領域、30bpスペーサー、酵母分岐点(TACTAAC)、および強いポリピリミジントラクトと次いでクローン化したβHCG6エキソン2を含有するpc3.1PTM2の、EcoRIおよびHindIII断片を使用した。
【0092】
7.1.4.lacZスプライス標的プレmRNAおよびPTMSを293細胞への同時トランスフェクション
ヒト胚腎細胞(293T)を、10%FBSを補充したDMEM倍地で37℃、5%CO2にて増殖させた。細胞を、製造元の指示書に従ってLipofectaminePlus[LifeTechnologies(Gaithersburg,MD)]を用いて、pc3.1LacT1およびpc3.1PTM2またはpc3.1LacT2およびpc3.1PTMで同時トランスフェクトした。24時間の後トランスフェクションで、細胞は収穫された;総RNAを単離し、RT−PCRを標的用およびPTM用特異性プライマーを用いて実行した。β−ガラクトシダーゼ活性は、β−gal染色キット(Invitrogen,SanDiego,CA)を使用して、細胞を染色することによりモニターされた。
【0093】
7.2.結果
7.2.1.lacZスプライス標的は、効率よくシス・スプライスして、機能的β−ガラクトシダーゼを産生する
スプライス標的プレmRNAのシス・スプライス効率の性能を比較するため、pc3.1lacT1を、LipofectaminePlus試薬[LifeTechnologies(Gaithersburg,MD)]を使用して、次いで総RNAのRT−PCR解析により、293T細胞にトランスフェクトした。シス・スプライスしたRT−PCRの配列解析は、スプライシングは正確であり、予測されたスプライス部位に正確に起こったことを示した(図12B)。更に、標的プレmRNA分子の正確なシス・スプライシングは、β−ガラクトシダーゼ、即ちx−galの、加水分解を触媒し、顕微鏡下で、可視化することができる青色を産生する活性β−ガラクトシダーゼをコードすることのできるmRNAの生成をもたらす。標的プレmRNAの正確なシス・スプライシングは、β−ガラクトシダーゼ酵素活性を成功裏に検出することにより、更に確認された。
【0094】
機能的3’lac断片(PTM1)のトランス・スプライシングによる欠損lacZ標的2プレmRNAの修復は、β−ガラクトシダーゼが酵素活性の染色により測定した。この目的のために、293T細胞をlacZ標的2プレmRNA(欠損3’断片を含有)およびPTM1(機能的3’lacZ活性を含有)の同時トランスフェクションを行った。24時間後トランスフェクショクン細胞のβ−ガラクトシダーゼ酵素活性をアッセイした。効果的なPTM1のlacZ標的2プレmRNAへのトランス・スプライシングは、機能的β−ガラクトシダーゼ活性の産生をもたらした。図11B−Eに明らかに示したように、PTM1のlacZ標的2へのトランス・スプライシングは、対照と比較して、5%ないし10%のβ−ガラクトシダーゼ酵素活性の回復をもたらした。
【0095】
7.2.2. lacZ標的プレmRNAをPTM2の間の標的トランス・スプライシング
トランス・スプライシングをアッセイするため、lacZ標的プレmRNAおよびPTM2を293T細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションに次いで、総RNAをRT−PCRを用いて分析した。PCR反応には、以下のプライマーを使用した:lacZ−TR1(lacZ5’エキソン特異的)およびHCGR2(βHCGRエキソン2特異的)。RT−PCR反応は、予測された195bpトランス・スプライス産物(図11、レーン2および3)を産生し、lacZ標的プレmRNAおよびPTM2の間の効率的なトランス・スプライシングを明らかにした。レーン1は、PRM2を含まない、対照を示す。
【0096】
トランス・スプライシングの効率を、β−ガラクトシダーゼ活性を染色して測定した。トランス・スプライシングをアッセイするために、293T細胞をlacZ標的プレmRNAおよびPTM2で同時トランスフェクションした。24時間後トランスフェクションで、細胞をβ−ガラクトシダーゼ活性をアッセイした。もし、標的プレmRNAをPTMの間に効果的なトランス・スプライシングが起これば、lacZ標的プレmRNAの5’断片からなるキメラmRNAが産生され、そして、活性β−ガラクトシダーゼをコードすることのできない、βHCG6エキソン2が生じる。同時トランスフェクション実験の結果は、lacZ標的1へのPTM2のトランス・スプライシングは、対照に比較して、β−ガラクトシダーゼ活性の10−15%の減少をもたらした。
【0097】
lacZ標的プレmRNAとPTM2の間のトランス・スプライシングが正確であることを更に確認するため、RT−PCRを5’ビオチン化lacZ−TR1および非ビオチン化HCGR2プライマーを使用して行った。一本鎖のDNAを単離し、HCGR2プライマー(HCGエキソン2特異的プライマー)を用いて直接配列決定した。スプライス部位の配列によって証明されるように、トランス・スプライシングはスプライス部位の間に予測されたように正確に起こっており(図12Aおよび12B)、通常のプレmRNAが、スプライシング中に操作したPTMにより浸食されており、そして更に、この反応が正しいことを確認した。
【0098】
8.実施例:嚢胞性繊維症膜貫通調節タンパク質の修正
嚢胞性繊維症(CF)は、世界で最も普通の遺伝性疾患の一つである。CFに関連する遺伝子は、単離され、そのタンパク質産物が推定された(kerem,B.S.et al.1989,Science,245:1073-1080;Riordan et al.,1989,Scienece,245:1066-1073;Rommans,et al.,1989,Science,245:1059-1065)。CF関連遺伝子のタンパク質産物は、嚢胞性繊維症膜貫通調節タンパク質(CFTR)と称されている。全ての突然変異アレルのおよそ〜70%を数える、突然変異起因性の最も普通の疾病は、位置508(△F508)のフェニルアラニンをコードするエキソン10における3つのヌクレオチドの欠損である。以下の節では、スプライソソーム介在トランス・スプライシングを使用した嚢胞性繊維症遺伝子の成功した修復を記載し、モデルシステムの修復CFTRの実行可能性を明らかにする。
【0099】
8.1. 材料および方法
8.1.1. プレトランススプライシング分子
CFTRプレ・トランス・スプライシング・分子(PTM)は、CFTRイントロン9(3’末端、−13から−31)に相補性の23ヌクレオチド結合領域、30ヌクレオチドスペーサー領域(スプライソソーム成分の効率的な結合を許容する)、分岐点(BP)配列、ポリピリミジントラクト(PPT)およびCFTRエキソン10をコードする配列の直上流の3’スプライス部位にあるAGジヌクレオチド(F508を含む野生型配列)からなる。この最初のPTMは、トランススプライシングを明らかにするために最大活性を表すよう設計された:それゆえ、PTMはUACUAACの酵母コンセンサスBP配列および大きなPPTを含む。18ヌクレオチドHISタグ(6ヒスタミンコドン)は、特異的増幅およびトランス・スプライシング産物の単離、および内部CFTRを有さないことを許容する野生型エキソン10コード配列の後に含まれる。2フラグメントを産生するに使用されるオリゴヌクレオチドは、ユニークな制限部位を含み、(それぞれ、ApaIおよびPstI、およびPstIおよびNotI)哺乳類発現ベクターpcDNA3.1に増幅したDNAを直接クローニングすることができる。
【0100】
8.1.2. 標的CFTRプレmRNAミニ遺伝子
CFTRミニ遺伝子標的は、図13に示され、CFTRエキソン9;イントロン9の機能的5’および3’領域(それぞれ、各末端から260および265ヌクレオチド);エキソン10[△F508];およびイントロン10の5’領域(90ヌクレオチド)からなる。更に、図16に示したように、CFTRエキソン9−10および10−24を含むミニ標的遺伝子は、嚢胞性繊維症突然変異の修正のためのトランス・スプライシング介在スプライソソームの使用をテストするために使用することができる。図17は、嚢胞性繊維症突然変異の修正のために使用することができる二重スプライシングPTMを示す。示したように、二重スプライシングPTMは、CFTR・BDイントロン9、スペーサー、分岐点、ポリピリミジントラクト、3’スプライス部位、CFTRエキソン10、スペーサー、分岐点、ポリミリミジントラクト、5’スプライス部位およびCFTR・BDエキソン10を含有する。
【0101】
8.1.3. オリゴヌクレオチド
以下のオリゴヌクレオチドは、CFTR・PTMを創製するために使用される。
【0102】
以下のヌクレオチドは、CFTRターゲット前−mRNAミニ遺伝子(エキソン9+ミニ−イントロン9+エキソン10+5’末端イントロン10)を作製するために用いられた。
【0103】
以下のオリゴヌクレオチドは、トランス−スプライスされた生成物を検出するために用いられた:
【0104】
8.2 結果
PTM及びターゲットプレ−mRNAを293胎児性腎細胞中に、リポフェクタミン(lipofectamine)(Life Technologies,Gaithersburg,MD)を用いて共トランスフェクションした。細胞をトランスフェクション後24時間で回収し、RNAを単離した。RT−PCR反応において、PTM及びターゲット特異性のプライマーを用いて、その中でターゲットプレ−mRNAの変異体エキソン10がPTMの野生型エキソン10(図14)と置き換わっている、トランス−スプライスした生成物を検出した。トランス−スプライスした生成物の配列分析により、三つのヌクレオチド欠失の回復、及びスプライシングが正確であり、予想されたスプライス部位に生じること(図15)が確認され、初めて嚢胞性線維症遺伝子CFTRのRNA修復を例証した。
【0105】
本発明は、本明細書中に記載の特定の態様による範囲内に限定されない。つまり、本明細書中に記載の改変加えて、本発明の種々の改変が、前記説明及び添付の図面より、当業者にとって明らかであろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるものと意図される。本明細書中に引用した種々の文献について、その開示は引用により全体として本明細書中に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1A】トランス−スプライシングRNA先駆体のモデル。
【図1B】モデルPTM構築物および標的を定めたトランス−スプライシング戦略。第一世代PTM(PTM+SpおよびPTM−Sp)の図解図。BD、結合ドメイン;NBD、非結合ドメイン;BP、分枝点;PPT、ピリミジン配列;ss、スプライシング部位;DT−A、ジフテリアトキシンサブユニットA。PTM内の特異な制限部位は、一字で示されている;E.coli,EcoRI;X,Xhil;K,Kpnl;P,Pstl;A,Accl;B,BamHおよび異種(Hetrologous),HindIII。
【図1C】βHCG6標的pre−mRNAに対する慣用のWatson Crick塩基対を経るPTM−Spの結合および提案されたシス−スプライシングおよびトランス−スプライシングメカニズムを示す図解図。
【図2A】種々のPTM構築物のβHCG6標的中へのインビトロ トランス−スプライシング効率。標的を定めた結合ドメインおよび活性スプライシング部位は、PTMトランス−スプライシング活性と関連している。十分の長さの標的を定めた(pc−PTM+Sp)、標的が定められていない(PTM−Sp)およびスプライシング変異体[Py(−)AG(−)およびBP(−)Py(−)AG(−)]PTM RNAを、βHCG6標的pre−mRNAを含有するスプライシング反応に付加した。この生成物は、プライマーβHCG−F(標的βHCG6エキソン1に対して特異性)およびDT−5R(DT−Aに対する相補体)を用いて増幅され、次いで1.5%アガロースゲルにおける電気泳動により分析して、RT−PCRであった。
【図2B】種々のPTM構築物のインビトロ トランス−スプライシング効率。結合ドメインとスプライシング部位との間に空間を有する十分の長さのPTM、標的結合ドメイン(短いPTM+)または標的が定められていない結合ドメイン(PTM−)を包含する短いPTMおよびスペーサー領域を有していないPTMを、βHCG6標的pre−mRNAを含有するスプライシング反応に付加した。この生成物は、プライマーβHCG−FおよびDT−3を用いて増幅されたRT−PCRであった。短いPTMを含有する反応の場合、可逆性PCRプライマーは、DT−4であった。これは、DT−3の結合部位がPTMから分離されることによる。
【図3】PTMと標的pre−mRNAとの間のインビトロ トランス−スプライシング生成物を示すヌクレオチド配列。図2(レーン2)からの466bpのトランス−スプライシングされたRT−PCR生成物を、5’ビオチン標識したせ前進プライマー(βHCG−F)および組み重ねられた(nested)非標識可逆性プライマー(DT−3R)を用いて再増幅した。一重鎖DNAは、精製し、次いでトキシン特異性DT−3Rプライマーを用いて直接に配列決定した。矢印は、標的βHCG6エキソンIの最後のヌクレオチドとDT−Aをコードする最初のヌクレオチドとの間のスプライシング接合を示す。
【図4A】BPおよびPPTがスプライシング因子から遮蔽されるように、PTM分子内基対ステムを示す、「安全」(safety)PTMおよびその変種の図解図。下線を引いた配列は、βHCG6イントロンI相補標的−結合ドメインを示す。イタリック体文字の配列は、BPに対して同族である標的ミスマッチを示している。
【図4B】標的に結合した際の飽和PTMを示す開放形態の図解図。
【図4C】インビトロ トランス−スプライシング反応は、安全PTMまたは安全PTM変種を、βHCG6標的とともにインキュベートすることによって行った。スプライシング反応は、βHCG−FおよびDT−3Rプライマーを用いるRT−PCRにより増幅させた;生成物は、2.0%アガロースゲルで分析した。
【図5】標的を定めたトランス−スプライシングの特異性は、PTM中に安全PTMを包含させることによって増強される。βHCG6pre−mRNA(250ng)およびβ−グロブリンpre−mRNA(250ng)を、PTM+SF(安全)またはpcPTM+Sp(線状)RNA(500ng)とともにアニーリングした。インビトロ トランス−スプライシング反応およびRT−PCR分析は、試験方法について記載されているとおり行い、また生成物は、2.0%アガロースゲルで分離した。RT−PCRに用いられたプライマーは、指定されているとおりである。
【図6】上昇するPTM濃度の存在下で、シス−スプライシングは阻害され、トランス−スプライシングによって取って代わられる。一定量のβHCG6ターゲットpre−mRNA(100ng)の存在下でPTM(pcPTM+Sp)RNA濃度を上昇させながら(52〜300ng)、in vitroスプライシングを行った。シス−スプライスト(cis-spliced)及びアン−スプライスト(un-spliced)生成物のRT−PCRはプライマーβHCG−F(エキソン1特異的)とβHCG−R2(エキソン2特異的−パネルA)を用いた;プライマーβHCG−FとDT−3RはRT−PCRトランス−スプライスト生成物(パネルB)に用いた。反応生成物を1.5%及び2.0%アガロースゲル上でそれぞれ分析した。パネルAでは、レーン9は300ngのPTMの存在下での60分時点を表し、これはパネルBのレーン10に相当する。
【図7A】PTMは培養ヒト癌細胞においてトランス−スプライシングすることができる。pcSp+CRM(非毒性変異体DT−Aを発現する)をトランスフェクトされた4拡大ネオマイシン耐性H1299肺癌コロニーの各々から、総RNAを単離した。1μgの総RNAと、5’ビオチニル化βHCG−F及び非ビオチニル化DT−3Rプライマーとを用いてRT−PCRを行った。一本鎖DNAを精製して、配列決定した。
【図7B】内因性βHCG6ターゲットとCRM197変異体毒素との間のトランス−スプライスト生成物のヌクレオチド配列(センス鎖)を示す。2つの矢印はスプライス部位の位置を示す。
【図8A】二重スプライシング治療前mRNAの概略図。
【図8B】二重スプライシングPTMの選択的トランス−スプライシング。PTM濃度を変えることによって、PTMをターゲットの5’又は3’スプライス部位にトランス−スプライシングすることができる。
【図9】エキソン標識(tagging)のためのPTM分子の使用の概略図。2例のPTMを示す。左側のPTMはターゲットpre−mRNA3’スプライス部位に非特異的にトランス−スプライシングすることができる。他方の右側PTMはターゲットpre−mRNA5’スプライス部位に非特異的にトランス−スプライシングするように設計される。PTM仲介トランス−スプライシング反応は、信頼すべき(authentic)エキソンの5’又は3’側のいずれかへの特異的タグを含むキメラRNAの生成を生じる。
【図10A】lacZノックアウトモデルに用いるための構築体の概略図。ターゲットlacZpre−mRNAは、lacZの5’フラグメントと、それに続くβHCG6イントロン1とlacZの3’フラグメントを含有する(ターゲット1)。このモデル系に用いるためのPTM分子は、pPTM+SPをPstIとHindIIIとによって消化させ、DT−A毒素をβHCG6エキソン2(pc3.1PTM2)と代えることによって作製された。
【図10B】スプライソソーム仲介RNAトランス−スプライシング(SMaRT)によるβ−Gal活性の修復の概略図。
【図10C】lacZノックアウトモデル(pc3.1 lacZT2)に用いるための構築体の概略図。lacZターゲットpre−mRNAは、3’スプライス部位後のフレーム4コドン中に2終止コドン(TAA TAA)を含有することを除いて、ノックアウト実験に用いたターゲットpre−mRNAと同じである。このモデル系に用いるためのPTM分子は、pPTM+SPをPstIとHindIIIとによって消化させ、DT−A毒素をlacZの機能的3’フラグメントと代えることによって作製された。
【図11A】lacZノックアウトモデルを用いた場合のシス−及びトランス−スプライシングの実証。lacZスプライスターゲット1pre−mRNAとPTM2を293T細胞中に同時トランスフェクトした。次に、総RNAを単離し、適当な特異的プライマーを用いて、シス−スプライスト生成物とトランス−スプライスト生成物に関してPCRによって分析した。増幅したPCR生成物を2%アガロースゲル上で分離させた。
【図11B】β−ガラクトシダーゼ活性に関する分析。293細胞をlacZターゲット2DNAのみ(パネルB)又はlacZターゲット2DNAとPTM1(パネルC)によってトランスフェクトした。
【図11C】β−ガラクトシダーゼ活性に関する分析。293細胞をlacZターゲット2DNAのみ(パネルB)又はlacZターゲット2DNAとPTM1(パネルC)によってトランスフェクトした。
【図12A】正確なトランス−スプライシングを実証するトランス−スプライスト分子のヌクレオチド配列。
【図12B】シス−スプライスト生成物とトランス−スプライスト生成物のヌクレオチド配列。これらのヌクレオチド配列は異なるスプライシング反応の各々に関して予想された配列であった。
【図13】嚢胞性線維症膜貫通調節タンパク質(CFTR)遺伝子の修復に関する遺伝子修復モデル。
【図14】外因的に供給されたCFTRミニ−遺伝子ターゲットとPTMとの間のトランス−スプライシングのRT−PCR実証。プラスミドを293胚腎臓細胞中へ同時トランスフェクトした。RT−PCR反応に用いたプライマー対は各レーン上方にリストする。各レーン中の下位帯(471bp)はトランス−スプライスト生成物を表す。レーン1の下位帯(471bp)を2%Seakemアガロースゲルから精製して、この帯のDNA配列を決定した。
【図15A】トランス−スプライスト生成物(図14に示したレーン1、下位帯)のDNA配列。このDNA配列はF508コドン(TTT)の存在を実証し、エキソン9配列はエキソン10配列及びHisタグ配列に隣接する。
【図15B】トランス−スプライスト生成物(図14に示したレーン1、下位帯)のDNA配列。このDNA配列はF508コドン(TTT)の存在を実証し、エキソン9配列はエキソン10配列及びHisタグ配列に隣接する。
【図16】エキソン10にF508欠失を有する外因的供給CFTRターゲット分子の修復の概略図。
【図17】二重スプライシングPTMを用いたエキソン10侵襲による内因的CFTR転写体の修復。二重スプライシングPTMの使用は、非常に短いPTM分子によるΔ508突然変異の修復を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸分子を含む細胞であって、該核酸分子が:
a)該細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの該核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含み、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記細胞。
【請求項2】
核酸分子を含む細胞であって、該核酸分子が:
a)該細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの該核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)3’スプライス受容部位;
c)該3’スプライス受容部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含み、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記細胞。
【請求項3】
核酸分子を含む細胞であって、該核酸分子が:
a)該細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの該核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含み、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記細胞。
【請求項4】
該核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項5】
該核酸分子が3’スプライス領域の一又はそれ以上の面に結合する一又はそれ以上の相補的な配列を含む安全ヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項6】
該ターゲットプレ−mRNAへの該核酸分子の結合が相補的な、三重らせん形成の、又はタンパク質−核酸の、相互作用によって介される、請求項1に記載の細胞。
【請求項7】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列が翻訳可能な嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレーターポリペプチドをコードする、請求項1に記載の細胞。
【請求項8】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列が嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータータンパク質のエキソン10をコードする、請求項1に記載の細胞。
【請求項9】
組換えベクターを含む細胞であって、該ベクターが、
a)該細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記細胞。
【請求項10】
組換えベクターを含む細胞であって、該ベクターが
a)該細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)3’スプライス受容部位;
c)3’スプライス受容部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記細胞。
【請求項11】
組換えベクターを含む細胞であって、該ベクターが、
a)該細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記細胞。
【請求項12】
核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項9に記載の細胞。
【請求項13】
キメラRNA分子を細胞中で製造する方法であって:
該細胞中で発現されるターゲットプレ−mRNAを、
核スプライシング成分により認識される核酸分子と、
該核酸分子の一部がターゲットプレ−mRNAの一部へトランス−スプライスされて該細胞内にキメラRNAを生成する条件下で、
接触させることを含み、
該核酸分子が、
a)該細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含む、上記方法。
【請求項14】
キメラRNA分子を細胞中で製造する方法であって:
該細胞中で発現されるターゲットプレ−mRNAを、
核スプライシング成分により認識される核酸分子と、
該核酸分子の一部がターゲットプレ−mRNAの一部へトランス−スプライスされて該細胞内にキメラRNAを生成する条件下で、
接触させることを含み、
該核酸分子が、
a)該細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)3’スプライス受容部位;
c)3’スプライス受容部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含む、上記方法。
【請求項15】
キメラRNA分子を細胞中で製造する方法であって:
該細胞内で発現されるターゲットプレ−mRNAを、
核スプライシング成分により認識される核酸分子と、
該核酸分子の一部がターゲットプレ−mRNAの一部へとトランス−スプライスされて該細胞内にキメラRNAを生成する条件下で、
接触させることを含み、
該核酸分子が、
a)該細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含む、
上記方法。
【請求項16】
核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項13に記載の細胞。
【請求項17】
キメラRNA分子が翻訳可能なタンパク質をコードする配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
a)細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの該核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該3’スプライス部位の一の面又は両面に結合する一又はそれ以上の相補的な配列を含む安全配列;
e)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含み、
該細胞内の核スプライシング成分によって認識される、
核酸分子。
【請求項19】
a)細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの該核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)3’スプライス受容部位;
c)3’スプライス受容部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;
d)該3’スプライス部位の一の面又は両面に結合する一又はそれ以上の相補的な配列を含む安全配列;及び
e)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、を含み、
該細胞内の核スプライシング成分によって認識される、
核酸分子。
【請求項20】
a)細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの該核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;
d)該5’スプライス部位の一の面又は両面に結合する一又はそれ以上の相補的な配列を含む安全配列;及び
e)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含み、
該細胞内の核スプライス成分によって認識される、
核酸分子。
【請求項21】
核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項18に記載の核酸分子。
【請求項22】
該ターゲットプレ−mRNAへの該核酸分子の結合が相補性、三重らせん形成、又はタンパク質−核酸相互作用によって介される、請求項18に記載の核酸分子。
【請求項23】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列が翻訳可能な嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレーターポリペプチドをコードする、請求項18に記載の核酸分子。
【請求項24】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列が嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータータンパク質のエキソン10をコードする、請求項18に記載の核酸分子。
【請求項25】
該ターゲットプレ−mRNAへの該核酸分子の結合が相補性、三重らせん形成、又はタンパク質−核酸相互作用によって介される、請求項20に記載の核酸分子。
【請求項26】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列が翻訳可能な嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレーターポリペプチドをコードする、請求項20に記載の核酸分子。
【請求項27】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列が嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータータンパク質のエキソン10をコードする、請求項20に記載の核酸分子。
【請求項28】
真核発現ベクターであって、該ベクターが
a)細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータータンパク質プレ−mRNAへの該核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記ベクター。
【請求項29】
真核発現ベクターであって、該ベクターが
a)細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータータンパク質プレ−mRNAへの該核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)3’スプライス受容部位;
c)3’スプライス受容部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記ベクター。
【請求項30】
真核発現ベクターであって、該ベクターが、
a)細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータータンパク質プレ−mRNAへの該核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記ベクター。
【請求項31】
該核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項28に記載の細胞。
【請求項32】
生理学的に許容される担体及び請求項28〜31のいずれか一項に記載の核酸分子を含む組成物。
【請求項33】
核酸分子を含む細胞であって、該核酸分子が:
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含み、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記細胞。
【請求項34】
核酸分子を含む細胞であって、該核酸分子が:
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含み、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記細胞。
【請求項35】
該核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項33に記載の細胞。
【請求項36】
該核酸分子が3’スプライス領域の一又はそれ以上の面に結合する一又はそれ以上の相補的な配列を含む安全ヌクレオチド配列をさらに含む、請求項33に記載の細胞。
【請求項37】
該ターゲットプレ−mRNAへの該核酸分子の結合が相補性、三重らせん形成、又はタンパク質−核酸相互作用によって介される、請求項33に記載の細胞。
【請求項38】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列が翻訳可能なポリペプチドタグをコードする配列を含む、請求項33に記載の細胞。
【請求項39】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列がヌクレオチド配列タグを含む、請求項33に記載の細胞。
【請求項40】
組換えベクターを含む細胞であって、該ベクターが、
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記細胞。
【請求項41】
組換えベクターを含む細胞であって、該ベクターが、
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記細胞。
【請求項42】
核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項40に記載の細胞。
【請求項43】
キメラRNA分子を細胞中で製造する方法であって:
該細胞内で発現されるターゲットプレ−mRNAを、
核スプライシング成分により認識される核酸分子と、
該核酸分子の一部がターゲットプレ−mRNAの一部へとトランス−スプライスされて該細胞内にキメラRNAを生成する条件下で、
接触させることを含み、
該核酸分子が、
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含む、上記方法。
【請求項44】
キメラRNA分子を細胞中で製造する方法であって:
該細胞内で発現されるターゲットプレ−mRNAを、
核スプライシング成分により認識される核酸分子と、
該核酸分子の一部がターゲットプレ−mRNAの一部へとトランス−スプライスされて該細胞内にキメラRNAを生成する条件下で、
接触させることを含み、
該核酸分子が、
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含む、
上記方法。
【請求項45】
核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
キメラRNA分子が翻訳可能なポリペプチドタグをコードする配列を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項47】
キメラRNA分子がヌクレオチド配列タグを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該3’スプライス部位の一の面又は両面に結合する一又はそれ以上の相補的な配列を含む安全配列;
e)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含み、
細胞内の核スプライシング成分によって認識される、
核酸分子。
【請求項49】
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該5’スプライス部位の一の面又は両面に結合する一又はそれ以上の相補的な配列を含む安全配列;
e)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含み、
細胞内の核スプライシング成分によって認識される、
核酸分子。
【請求項50】
核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項48又は49に記載の核酸分子。
【請求項51】
該ターゲットプレ−mRNAへの該核酸分子の結合が相補性、三重らせん形成、又はタンパク質−核酸相互作用によって介される、請求項48又は49に記載の核酸分子。
【請求項52】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列が翻訳可能なポリペプチドタグをコードする配列を含む、請求項48又は49に記載の核酸分子。
【請求項53】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列がヌクレオチド配列タグを含む、請求項48又は49に記載の核酸分子。
【請求項54】
該ターゲットプレ−mRNAへの該核酸分子の結合が相補性、三重らせん形成、又はタンパク質−核酸相互作用によって介される、請求項50に記載の核酸分子。
【請求項55】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列が翻訳可能なポリペプチドタグをコードする配列を含む、請求項50に記載の核酸分子。
【請求項56】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列がヌクレオチド配列タグを含む、請求項50に記載の核酸分子。
【請求項57】
真核発現ベクターであって、該ベクターが
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記ベクター。
【請求項58】
真核ベクターであって、該ベクターが、
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含む核酸分子を発現する、
上記ベクター。
【請求項59】
該核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項57に記載のベクター。
【請求項60】
組換え発現ベクターを含む発現ライブラリーであって、
該ベクターが、
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記発現ライブラリー。
【請求項61】
組換え発現ベクターを含む発現ライブラリーであって、
該ベクターが、
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記発現ライブラリー。
【請求項62】
核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項60に記載の発現ライブラリー。
【請求項63】
該ターゲットプレ−mRNAへスプライスされるヌクレオチド配列がヌクレオチド配列タグを含む、請求項58又は59に記載のベクター。
【請求項64】
該ターゲットプレ−mRNAへスプライスされるヌクレオチド配列が翻訳可能なポリペプチドタグをコードする配列を含む、請求項58又は59に記載のベクター。
【請求項65】
a)ターゲット結合ドメインを含む核酸分子を、
該核酸分子の一部がターゲットプレ−mRNAの一部へトランス−スプライスされ、キメラmRNAを生成する条件下で、接触させ;ここで該ターゲット結合ドメインはターゲットプレ−mRNA分子への結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)該キメラmRNA分子を増幅させ;
c)増幅された分子を選択的に精製し;そして、
d)増幅された分子のヌクレオチド配列を決定し、それによりイントロン−エキソン境界を同定すること、
を含むプレ−mRNA分子中のエキソン−イントロン境界をマッピングする方法。
【請求項66】
a)ペプチドタグ又はマーカーをコードする配列及びターゲット結合ドメインを含む核酸分子を、
プレ−mRNA分子と、
該プレ−トランス−スプライシング分子の一部が該ターゲットプレ−mRNAの一部へとトランス−スプライスされ、キメラmRNAを生成する条件下で、
接触させ;
ここで該ターゲット結合ドメインはランダムヌクレオチド配列である;
b)融合ポリペプチドをアフィニティー精製し;そして、
c)融合タンパク質のペプチド配列を決定すること、
を含む、細胞中に発現されるタンパク質を同定する方法。
【請求項67】
融合ポリペプチドがHISポリペプチドである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
融合ポリペプチドがFLAGポリペプチドである、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
融合ポリペプチドがグルタチオン−S−トランスフェラーゼポリペプチドである、請求項66に記載の方法。
【請求項1】
核酸分子を含む細胞であって、該核酸分子が:
a)該細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの該核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含み、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記細胞。
【請求項2】
核酸分子を含む細胞であって、該核酸分子が:
a)該細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの該核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)3’スプライス受容部位;
c)該3’スプライス受容部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含み、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記細胞。
【請求項3】
核酸分子を含む細胞であって、該核酸分子が:
a)該細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの該核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含み、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記細胞。
【請求項4】
該核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項5】
該核酸分子が3’スプライス領域の一又はそれ以上の面に結合する一又はそれ以上の相補的な配列を含む安全ヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項6】
該ターゲットプレ−mRNAへの該核酸分子の結合が相補的な、三重らせん形成の、又はタンパク質−核酸の、相互作用によって介される、請求項1に記載の細胞。
【請求項7】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列が翻訳可能な嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレーターポリペプチドをコードする、請求項1に記載の細胞。
【請求項8】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列が嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータータンパク質のエキソン10をコードする、請求項1に記載の細胞。
【請求項9】
組換えベクターを含む細胞であって、該ベクターが、
a)該細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記細胞。
【請求項10】
組換えベクターを含む細胞であって、該ベクターが
a)該細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)3’スプライス受容部位;
c)3’スプライス受容部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記細胞。
【請求項11】
組換えベクターを含む細胞であって、該ベクターが、
a)該細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記細胞。
【請求項12】
核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項9に記載の細胞。
【請求項13】
キメラRNA分子を細胞中で製造する方法であって:
該細胞中で発現されるターゲットプレ−mRNAを、
核スプライシング成分により認識される核酸分子と、
該核酸分子の一部がターゲットプレ−mRNAの一部へトランス−スプライスされて該細胞内にキメラRNAを生成する条件下で、
接触させることを含み、
該核酸分子が、
a)該細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含む、上記方法。
【請求項14】
キメラRNA分子を細胞中で製造する方法であって:
該細胞中で発現されるターゲットプレ−mRNAを、
核スプライシング成分により認識される核酸分子と、
該核酸分子の一部がターゲットプレ−mRNAの一部へトランス−スプライスされて該細胞内にキメラRNAを生成する条件下で、
接触させることを含み、
該核酸分子が、
a)該細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)3’スプライス受容部位;
c)3’スプライス受容部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含む、上記方法。
【請求項15】
キメラRNA分子を細胞中で製造する方法であって:
該細胞内で発現されるターゲットプレ−mRNAを、
核スプライシング成分により認識される核酸分子と、
該核酸分子の一部がターゲットプレ−mRNAの一部へとトランス−スプライスされて該細胞内にキメラRNAを生成する条件下で、
接触させることを含み、
該核酸分子が、
a)該細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含む、
上記方法。
【請求項16】
核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項13に記載の細胞。
【請求項17】
キメラRNA分子が翻訳可能なタンパク質をコードする配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
a)細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの該核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該3’スプライス部位の一の面又は両面に結合する一又はそれ以上の相補的な配列を含む安全配列;
e)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含み、
該細胞内の核スプライシング成分によって認識される、
核酸分子。
【請求項19】
a)細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの該核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)3’スプライス受容部位;
c)3’スプライス受容部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;
d)該3’スプライス部位の一の面又は両面に結合する一又はそれ以上の相補的な配列を含む安全配列;及び
e)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、を含み、
該細胞内の核スプライシング成分によって認識される、
核酸分子。
【請求項20】
a)細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータープレ−mRNAへの該核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;
d)該5’スプライス部位の一の面又は両面に結合する一又はそれ以上の相補的な配列を含む安全配列;及び
e)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含み、
該細胞内の核スプライス成分によって認識される、
核酸分子。
【請求項21】
核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項18に記載の核酸分子。
【請求項22】
該ターゲットプレ−mRNAへの該核酸分子の結合が相補性、三重らせん形成、又はタンパク質−核酸相互作用によって介される、請求項18に記載の核酸分子。
【請求項23】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列が翻訳可能な嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレーターポリペプチドをコードする、請求項18に記載の核酸分子。
【請求項24】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列が嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータータンパク質のエキソン10をコードする、請求項18に記載の核酸分子。
【請求項25】
該ターゲットプレ−mRNAへの該核酸分子の結合が相補性、三重らせん形成、又はタンパク質−核酸相互作用によって介される、請求項20に記載の核酸分子。
【請求項26】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列が翻訳可能な嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレーターポリペプチドをコードする、請求項20に記載の核酸分子。
【請求項27】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列が嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータータンパク質のエキソン10をコードする、請求項20に記載の核酸分子。
【請求項28】
真核発現ベクターであって、該ベクターが
a)細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータータンパク質プレ−mRNAへの該核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記ベクター。
【請求項29】
真核発現ベクターであって、該ベクターが
a)細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータータンパク質プレ−mRNAへの該核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)3’スプライス受容部位;
c)3’スプライス受容部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記ベクター。
【請求項30】
真核発現ベクターであって、該ベクターが、
a)細胞内で発現される嚢胞性線維症膜貫通伝導レギュレータータンパク質プレ−mRNAへの該核酸分子の結合をターゲットとする、一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記ベクター。
【請求項31】
該核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項28に記載の細胞。
【請求項32】
生理学的に許容される担体及び請求項28〜31のいずれか一項に記載の核酸分子を含む組成物。
【請求項33】
核酸分子を含む細胞であって、該核酸分子が:
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含み、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記細胞。
【請求項34】
核酸分子を含む細胞であって、該核酸分子が:
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含み、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記細胞。
【請求項35】
該核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項33に記載の細胞。
【請求項36】
該核酸分子が3’スプライス領域の一又はそれ以上の面に結合する一又はそれ以上の相補的な配列を含む安全ヌクレオチド配列をさらに含む、請求項33に記載の細胞。
【請求項37】
該ターゲットプレ−mRNAへの該核酸分子の結合が相補性、三重らせん形成、又はタンパク質−核酸相互作用によって介される、請求項33に記載の細胞。
【請求項38】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列が翻訳可能なポリペプチドタグをコードする配列を含む、請求項33に記載の細胞。
【請求項39】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列がヌクレオチド配列タグを含む、請求項33に記載の細胞。
【請求項40】
組換えベクターを含む細胞であって、該ベクターが、
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記細胞。
【請求項41】
組換えベクターを含む細胞であって、該ベクターが、
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記細胞。
【請求項42】
核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項40に記載の細胞。
【請求項43】
キメラRNA分子を細胞中で製造する方法であって:
該細胞内で発現されるターゲットプレ−mRNAを、
核スプライシング成分により認識される核酸分子と、
該核酸分子の一部がターゲットプレ−mRNAの一部へとトランス−スプライスされて該細胞内にキメラRNAを生成する条件下で、
接触させることを含み、
該核酸分子が、
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含む、上記方法。
【請求項44】
キメラRNA分子を細胞中で製造する方法であって:
該細胞内で発現されるターゲットプレ−mRNAを、
核スプライシング成分により認識される核酸分子と、
該核酸分子の一部がターゲットプレ−mRNAの一部へとトランス−スプライスされて該細胞内にキメラRNAを生成する条件下で、
接触させることを含み、
該核酸分子が、
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含む、
上記方法。
【請求項45】
核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
キメラRNA分子が翻訳可能なポリペプチドタグをコードする配列を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項47】
キメラRNA分子がヌクレオチド配列タグを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該3’スプライス部位の一の面又は両面に結合する一又はそれ以上の相補的な配列を含む安全配列;
e)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含み、
細胞内の核スプライシング成分によって認識される、
核酸分子。
【請求項49】
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該5’スプライス部位の一の面又は両面に結合する一又はそれ以上の相補的な配列を含む安全配列;
e)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含み、
細胞内の核スプライシング成分によって認識される、
核酸分子。
【請求項50】
核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項48又は49に記載の核酸分子。
【請求項51】
該ターゲットプレ−mRNAへの該核酸分子の結合が相補性、三重らせん形成、又はタンパク質−核酸相互作用によって介される、請求項48又は49に記載の核酸分子。
【請求項52】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列が翻訳可能なポリペプチドタグをコードする配列を含む、請求項48又は49に記載の核酸分子。
【請求項53】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列がヌクレオチド配列タグを含む、請求項48又は49に記載の核酸分子。
【請求項54】
該ターゲットプレ−mRNAへの該核酸分子の結合が相補性、三重らせん形成、又はタンパク質−核酸相互作用によって介される、請求項50に記載の核酸分子。
【請求項55】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列が翻訳可能なポリペプチドタグをコードする配列を含む、請求項50に記載の核酸分子。
【請求項56】
該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列がヌクレオチド配列タグを含む、請求項50に記載の核酸分子。
【請求項57】
真核発現ベクターであって、該ベクターが
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記ベクター。
【請求項58】
真核ベクターであって、該ベクターが、
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含む核酸分子を発現する、
上記ベクター。
【請求項59】
該核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項57に記載のベクター。
【請求項60】
組換え発現ベクターを含む発現ライブラリーであって、
該ベクターが、
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)ブランチポイント、ピリミジン域及び3’スプライス受容部位を含む、3’スプライス領域;
c)該3’スプライス領域を該ターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)該ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列;
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記発現ライブラリー。
【請求項61】
組換え発現ベクターを含む発現ライブラリーであって、
該ベクターが、
a)一又はそれ以上のターゲット結合ドメイン;ここで該ターゲット結合ドメインは該細胞内で発現されるプレ−mRNAへの結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)5’スプライス部位;
c)該5’スプライス部位をターゲット結合ドメインから隔離するスペーサー領域;及び
d)ターゲットプレ−mRNAへトランス−スプライスされるヌクレオチド配列、
を含む核酸分子を発現し、
該核酸分子が該細胞内の核スプライシング成分により認識される、
上記発現ライブラリー。
【請求項62】
核酸分子が5’供与部位をさらに含む、請求項60に記載の発現ライブラリー。
【請求項63】
該ターゲットプレ−mRNAへスプライスされるヌクレオチド配列がヌクレオチド配列タグを含む、請求項58又は59に記載のベクター。
【請求項64】
該ターゲットプレ−mRNAへスプライスされるヌクレオチド配列が翻訳可能なポリペプチドタグをコードする配列を含む、請求項58又は59に記載のベクター。
【請求項65】
a)ターゲット結合ドメインを含む核酸分子を、
該核酸分子の一部がターゲットプレ−mRNAの一部へトランス−スプライスされ、キメラmRNAを生成する条件下で、接触させ;ここで該ターゲット結合ドメインはターゲットプレ−mRNA分子への結合をターゲットとするランダムヌクレオチド配列である;
b)該キメラmRNA分子を増幅させ;
c)増幅された分子を選択的に精製し;そして、
d)増幅された分子のヌクレオチド配列を決定し、それによりイントロン−エキソン境界を同定すること、
を含むプレ−mRNA分子中のエキソン−イントロン境界をマッピングする方法。
【請求項66】
a)ペプチドタグ又はマーカーをコードする配列及びターゲット結合ドメインを含む核酸分子を、
プレ−mRNA分子と、
該プレ−トランス−スプライシング分子の一部が該ターゲットプレ−mRNAの一部へとトランス−スプライスされ、キメラmRNAを生成する条件下で、
接触させ;
ここで該ターゲット結合ドメインはランダムヌクレオチド配列である;
b)融合ポリペプチドをアフィニティー精製し;そして、
c)融合タンパク質のペプチド配列を決定すること、
を含む、細胞中に発現されるタンパク質を同定する方法。
【請求項67】
融合ポリペプチドがHISポリペプチドである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
融合ポリペプチドがFLAGポリペプチドである、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
融合ポリペプチドがグルタチオン−S−トランスフェラーゼポリペプチドである、請求項66に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−312780(P2007−312780A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177115(P2007−177115)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【分割の表示】特願2000−565168(P2000−565168)の分割
【原出願日】平成11年8月12日(1999.8.12)
【出願人】(501108245)イントロン ホールディングス、エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【分割の表示】特願2000−565168(P2000−565168)の分割
【原出願日】平成11年8月12日(1999.8.12)
【出願人】(501108245)イントロン ホールディングス、エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
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