説明

スプール弁装置

【課題】スプール弁装置の小型化を図ると共に、当該スプール弁の切替制御の応答速度及び信頼性の向上を図る。
【解決手段】スプール弁装置は、略円柱形状のスプール穴が形成された筒状体であり、当該筒状体の側面に上記スプール穴に連通する複数の流路口が形成されたスプール弁筺体と、上記スプール穴に挿入され周囲に弁体が設けられた軸体であり、当該スプール穴に沿って軸方向に移動することで上記弁体にて上記各流路口の開閉制御を行うスプールと、上記スプールの少なくとも一端にパイロット圧を付与するパイロット圧室と、上記パイロット圧室に流体を供給して、上記スプールを移動制御するパイロット圧付与手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプール弁装置にかかり、特に、流体圧力にてスプール弁の開閉制御を行うスプール弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スプール弁装置は、略円柱形状の穴に対して外部から貫通する複数の流路が形成されたシリンダと、当該円筒形の穴内部を往復移動することによって上記流路の開閉を行うスプールと、当該スプールの往復移動動作を制御する制御手段と、を備えている。そして、上記スプールの制御手段としては、電磁石による電磁力、機械的な力によるもののほか、特許文献1に示すように、スプールの両端に圧力媒体を供給して、当該両端に形成された空間にかかるパイロット圧によって制御するものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−169875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような流体圧力による制御方式では、制御手段が大型化し、スプール弁装置自体の小型化を図ることができない、という問題がある。また、特許文献1のようにポンプを用いる場合には、制御手段として機械的な構成が必要となり、応答速度が遅い、という問題がある。さらには、制御手段の駆動電力が必要となるため、電磁ノイズの影響を受けやすく、信頼性に問題がある。
【0005】
このため、本発明の目的は、上述した課題である、スプール弁装置の小型化を図ると共に、当該スプール弁の切替制御の応答速度及び信頼性の向上を図る、ことをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するため本発明の一形態であるスプール弁装置は、
略円柱形状のスプール穴が形成された筒状体であり、当該筒状体の側面に上記スプール穴に連通する複数の流路口が形成されたスプール弁筺体と、
上記スプール穴に挿入され周囲に弁体が設けられた軸体であり、当該スプール穴に沿って軸方向に移動することで上記弁体にて上記各流路口の開閉制御を行うスプールと、
上記スプールの少なくとも一端にパイロット圧を付与するパイロット圧室と、
上記パイロット圧室に流体を供給して、上記スプールを移動制御するパイロット圧付与手段と、
を備えた装置である。
【0007】
更に、
上記パイロット圧付与手段は、流体を供給する供給ポートと、流体を出力する少なくとも2つの出力ポートと、上記供給ポートと上記出力ポートとの間に設けられ流体を光にて加熱することによって上記出力ポートからの流体の出力状態を制御する制御ポートと、を備えた光流体変換器であり、少なくとも1つの上記出力ポートから上記パイロット圧室に流体を出力するよう構成した、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以上のように構成されることにより、スプール弁装置の小型化を図ると共に、当該スプール弁の切替制御の応答速度及び信頼性の向上を図る、ことができる、という優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一形態であるスプール弁装置は、
略円柱形状のスプール穴が形成された筒状体であり、当該筒状体の側面に上記スプール穴に連通する複数の流路口が形成されたスプール弁筺体と、
上記スプール穴に挿入され周囲に弁体が設けられた軸体であり、当該スプール穴に沿って軸方向に移動することで上記弁体にて上記各流路口の開閉制御を行うスプールと、
上記スプールの少なくとも一端にパイロット圧を付与するパイロット圧室と、
上記パイロット圧室に流体を供給して、上記スプールを移動制御するパイロット圧付与手段と、
を備えた装置である。
【0010】
更に、
上記パイロット圧付与手段は、流体を供給する供給ポートと、流体を出力する少なくとも2つの出力ポートと、上記供給ポートと上記出力ポートとの間に設けられ流体を光にて加熱することによって上記出力ポートからの流体の出力状態を制御する制御ポートと、を備えた光流体変換器であり、少なくとも1つの上記出力ポートから上記パイロット圧室に流体を出力するよう構成した、
ことを特徴とする。
【0011】
また、上記スプール弁装置では、
上記スプールの両端に、それぞれ上記パイロット圧室を備え、
上記光流体変換器の上記各出力ポートから、それぞれ上記各パイロット圧室に流体を出力するよう構成した、
ことを特徴とする。
【0012】
上記発明によると、光流体変換器から流体をパイロット圧室に出力することによって、かかる流体によるパイロット圧にてスプールを移動させることができ、各流路口の開閉制御を行うことができる。そして、特に、光信号によって流体の出力状態を制御してこれによりパイロット圧を制御しているため、スプールの制御装置として機械的な構造が不要であり、小型化及び応答速度の向上を図ることができる。また、スプールの制御装置に電気回路も不要であるため、電磁ノイズの影響も受けることがなく、信頼性の向上を図ることができる。さらに、流体を出力する2つの出力ポートを、スプールの両端にそれぞれ形成された各パイロット圧室に連結することで、1つの光流体変換器にてスプールの両端のパイロット圧を適切に制御することができる。従って、さらなる制御装置の小型化、及び、制御精度の向上を図ることができる。
【0013】
また、上記スプール弁装置では、
上記光流体変換器は、流体を供給する増幅供給ポートと、流体を出力する少なくとも2つの増幅出力ポートと、上記増幅供給ポートと上記増幅出力ポートとの間に設けられ上記各出力ポートから出力された流体をそれぞれ入力することによって上記増幅出力ポートからの流体の出力状態を制御する増幅制御ポートと、を備えた増幅部を備え、上記各増幅出力ポートからそれぞれ上記各パイロット圧室に流体を出力するよう構成した、
ことを特徴とする。
【0014】
また、上記スプール弁装置では、
上記光流体変換器は、上記増幅部を複数備え、当該増幅部相互間を、上流側に位置する上記増幅部の上記増幅出力ポートから出力される流体を下流側に位置する上記増幅部の上記増幅制御ポートに入力するよう接続すると共に、最下流に位置する上記増幅部の上記各増幅出力ポートからそれぞれ上記各パイロット圧室に流体を出力するよう構成した、
ことを特徴とする。
【0015】
また、上記スプール弁装置では、
上記光流体変換器の上記供給ポートと上記制御ポートと上記出力ポートとを備えた変換部と、上記増幅部とを、それぞれ所定の厚みを有する略板状部材にて形成すると共に、
上記変換部と上記増幅部とを積層構造とした、
ことを特徴とする。
【0016】
また、上記スプール弁装置では、
上記光流体変換器を上記スプール弁筺体に内蔵して設けた、
ことを特徴とする。
【0017】
これにより、光流体変換器からの流体の出力を増幅器にて増幅することで、パイロット圧を高くすることができ、より高精度にスプールの移動を制御することができる。また、変換部と増幅部とを積層構造とすることで、高出力な制御装置を小型化することができる。特に、光流体変換器をスプール弁筺体に内蔵することで、スプール弁装置全体としての小型化を図ることができる。
【0018】
また、上記スプール弁装置では、
上記制御ポートに、流体を加熱するための光を導入する光ファイバの端面を配置し、
上記光ファイバの端面に、均一の厚みの光吸収体を設けた、
ことを特徴とする。
【0019】
また、上記スプール弁装置では、
上記光ファイバの端面に、上記光吸収体をその表面が平坦となるよう設けた、
ことを特徴とする。
【0020】
これにより、光ファイバの出力端において光吸収体による光吸収効率が高まり、当該出力端の温度を高温に設定することができる。従って、流体の出力をさらに高精度に制御することができ、より高精度にスプールを制御することができる。
【0021】
以下、本発明に係る、スプール弁装置の各実施形態について、図1乃至図8を参照しながら説明する。
【0022】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態を、図1乃至図3を参照して説明する。図1は、スプール弁装置の構成の概略を示す図である。図2は、スプール弁装置に使用される光ファイバの端面の様子を示す図である。図3は、スプール弁装置の動作を説明するための図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態におけるスプール弁装置は、流体の出力制御を行うスプール弁1と、このスプール弁1にて用いられるスプール20をパイロット圧にて移動制御する光流体変換器3と、を備えて構成されている。以下、具体的に説明する。
【0024】
まず、スプール弁1は、内部に略円柱形状のスプール穴11が形成された略筒状体の筺体10(スプール弁筺体)を備えている。そして、この筒状体である筺体の側面には、内部のスプール穴10に連通する複数の流路口(ポート)P,A,B,R1,R2が形成されている。なお、複数の流路口のうち、流路口Pには空気(流体)が流入し、後述するようにスプール20の移動によって、当該流路口Pと流路口A又はBが連通された状態となる。これによって、流路口A又はBから空気(流体)が出力されるが、かかる出力空気(流体)の圧力を、ロボットアームなどの駆動に用いる。
【0025】
また、上記スプール穴11の内部には、軸体であるスプール20が挿入されている。このスプール20の外径は、上記スプール穴11の内径より小さく形成され、ところどころの外径が、上記スプール穴11の内径とほぼ同一となるよう大きく形成されており、かかる大径部分が上記流路口P等の開閉制御を行う弁体21を形成している。なお、本実施形態では、弁体21は、スプール20の両端と中央に設けられており、各ポート間の連通状態を制御している。
【0026】
また、上記スプール20は、上述したスプール穴11の穴長さよりも短く形成されているため、スプール20の両端には、当該スプール20の端部20a,20bとスプール穴11による空間11a,11bが形成される。さらに、スプール穴11の両端部分には、当該スプール穴11の内径よりも小さい外部に通ずる穴12a,12bが形成されており、後述する光流体変換器3からの出力ポート35a,35bがそれぞれ接続され、流体である空気が流入されるよう構成されている。これにより、上記スプールの端部20a,20bとスプール穴11とによる空間は、光流体変換器3からの空気によるパイロット圧が付与されるパイロット圧室11a,11bを形成している。
【0027】
これにより、パイロット圧が高い方のパイロット圧室(例えば、11a)を形成しているスプール20の端部(例えば、20a)が押圧され、スプール20を軸方向に移動させることができ、スプール弁筺体10に形成された各流路口P等を、スプール20の弁体21にて開閉することができる。具体的に、本実施形態においては、流路口Pと流路口A、又は、流路口Pと流路口B、を選択的に連通させ、流路口Aあるいは流路口Bから空気を出力するよう制御することができる。
【0028】
また、光流体変換器3(パイロット圧付与手段)は、上記パイロット圧室11a,11bに流体を供給して、当該パイロット圧室11a,11bのパイロット圧を変化させることで、スプール20を移動制御するものである。具体的に、光流体変換器3は、図1に示すような形状の流路によって構成されている。なお、この流路は、例えば、アクリル板や金属板などの板を切り抜くなどすると共に、その両面を板にて挟むことによって形成することができる。
【0029】
そして、光流体変換器3は、まず、図1に示すように、その長手方向が、ほぼ中央で紙面の上下方向に沿って形成され、上端部分で開口する噴流口が形成された供給ポート31を有する。この供給ポート31には、図示しないポンプやボンベなど空気供給手段が連結され、当該空気供給手段から空気が供給されるが、この空気である流体を、上方の噴流口から出力する。
【0030】
また、上記供給ポート31の噴流口よりもさらに上方には、二股に分かれた2つの出力ポート35a,35bが形成されている。そして、出力ポート35a,35bは、上記スプール弁1のスプール20の両端に形成された各パイロット圧室11a,11bに連結されている。これにより、上記供給ポート31から噴流された空気(流体)が、出力ポート35a,35bを介して、各パイロット圧室11a,11bに供給される。なお、符号33a,33b,34b,34bにそれぞれ示すポート(ベント)は、それぞれ大気に開放されており、供給ポート31から噴流した空気や、出力ポート35a,35bから逆流した空気を外部に排出し、出力ポート35a,35bからの出力特性の悪化を抑制するためのものである。
【0031】
ここで、本発明では、供給ポート31から出力ポート35a,35bへの空気(流体)の出力制御は、光信号によって行われる。具体的に、上記供給ポート31の噴流口には、その左右から挿通するほぼ直線状の2本の制御ポート32a,32bが形成されている。この制御ポート32a,32bには、それぞれ光ファイバ40a,40bが挿通されており、上記供給ポート31の噴流口部分を左右から挟むよう、各光ファイバ40a,40bの端面が位置する。さらに、各光ファイバ40a,40bの端面は、図2(a)に示すように、黒色塗料41が塗布されている。この黒色塗料41を塗布することによって、光ファイバ40a,40b内を伝達してきた光が黒色塗料41に吸収され、光ファイバ40a,40bの端面の温度が上昇する。これにより、供給ポート31の噴流口から出力される空気を光にて加熱することができる。
【0032】
このとき、左右の光ファイバ40a,40bから導入する光強度を変化させることで、供給ポート31の噴流口部分を通過する空気(流体)に印加される熱量も左右で異なることとなり、当該空気の粘度が左右で非対称となる。すると、供給ポート31から噴流した空気は、左右のいずれかに偏向する。これによって、上記2つの出力ポート35a,35bのうち、いずれかのポートへの流量を多くすることができ、逆に言うと、光ファイバ40の光強度を制御することで、多くの流量の空気(流体)を出力させる出力ポート35a,35bを選択することができる。
【0033】
例えば、図3において、右側の光ファイバ40bからの光強度を強く設定した場合には、噴流口を通過する空気(流体)の右側の粘度が局所的に増加して摩擦が増加し速度が遅くなる。すると、噴流口の下流側では、空気(流体)は左側に偏向して、左側の出力ポート35aへの空気(流体)の流量が増加する(矢印参照)。一方で、右側の出力ポート35bへの空気の流量は減少する。その結果、2つの出力ポート35a,35bで差圧が生じ、その先に接続された各パイロット圧室11a,11bのパイロット圧も差が生じる。つまり、この場合には、スプール20の左側端面20aへのパイロット圧が右側よりも高くなるため、当該スプール20は右方向に移動することとなる。
【0034】
なお、上記では、光流体変換器3内を流れる流体は空気(気体)である場合を例示して説明しているが、かかる流体は水や油などの液体であってもよい。その場合には、光ファイバ40a,40bから導入する光によって、供給ポート31から噴流した液体の偏向方向が、上述した気体の場合とは逆となる。例えば、右側の光ファイバ40bからの光強度を強く設定した場合には、噴流口を通過する液体の右側の温度が高くなり、粘性が減少する。すると、噴流口の下流側では、液体(流体)は右側に偏向して、右側の出力ポート35bへの空気(流体)の流量が増加する。
【0035】
ここで、上記光ファイバ40a,40bの端面に塗布する黒色塗料41は、図2(a)に示すように、均一の厚みに、また、その表面が平坦となるよう塗布すると望ましい。かかる場合には、光量に対する温度上昇度が高く、また、耐久性も高い、ことが実験により明らかになっている。このような望ましい塗布は、例えば、エアブラシを用いず、手塗りで塗布するとよい。なお、図2(b)には、黒色塗料141の厚みにムラが生じ、その表面が平坦とはなっていない場合を例示している。例えば、エアブラシを用いて黒色塗料141を塗布すると、エア圧を受けて、この図に示すように、厚みにムラが生じうる。あるいは、塗料の中に空気が入り込むことで、厚みにムラが生じうる。
【0036】
以上のように、本実施形態によると、光信号によって流体の出力状態を制御してこれによりパイロット圧を制御しているため、スプールを制御する制御装置として機械的な構造が不要であり、スプール弁装置の小型化及び応答速度の向上を図ることができる。また、スプールの制御装置に電気回路も不要であるため、電磁ノイズの影響も受けることがなく、スプール弁装置の信頼性の向上を図ることができる。さらに、流体を出力する2つの出力ポートを、スプールの両端にそれぞれ形成された各パイロット圧室に連結することで、1つの光流体変換器にてスプールの両端のパイロット圧を適切に制御することができる。従って、さらなる制御装置の小型化、及び、制御精度の向上を図ることができる。
【0037】
なお、上記では、図1に示すように、光流体変換器3の2つ出力ポート35a,35bをそれぞれ各パイロット圧室11a,11bに接続し、スプール20の両端20a,20bにパイロット圧を付与する構成としているが、本発明は、かかる構成に限定されない。例えば、光流体変換器3の1つの出力ポートのみが、スプール20の一端側に形成されたパイロット圧室に流体を出力するよう構成されていてもよい。このようにしても、スプール20の少なくとも一端にパイロット圧が付与されるため、光流体変換器3にてスプール20を軸方向に移動制御することができる。これにより、各流路口(ポート)P,A,B,R1,R2の幅とそれらの間の距離、各弁体21の幅とそれら間の距離を適宜調整することにより、スプール弁制御を実現することができる。
【0038】
また、上記では、スプール20を移動制御する光流体変換器3を、スプール弁筺体1の外部に設けている構成を説明したが、かかる構成に限定されない。例えば、光流体変換器3は非常に薄く小型に形成できるため、スプール弁筺体10内部に形成してもよい。具体的には、スプール弁筺体10内部に、図1に示すような光流体変換器3を構成する各ポート形状の溝を形成して、供給ポートには外部からポンプやボンベなど空気供給手段を連結し、また、制御ポートには、外部から光ファイバを挿入する。そして、出力ポートは、パイロット圧室に連結し、ベントは外部に開放する。これにより、スプール弁1自体に制御手段を組み込んで一体的に構成でき、スプール弁装置1の小型化を図ることができる。
【0039】
<実施形態2>
次に、本発明の第2の実施形態を、図4乃至図6を参照して説明する。図4及び図6は、光流体変換器の構成を示す図であり、図5は、光流体変換器の動作の一例を示す図である。
【0040】
本実施形態における光流体変換器100は、上記実施形態1にて開示した供給ポート31と光ファイバ40a,40bが挿入される制御ポート32a,32bと、出力ポート35a,35bと、を備えた光流体変換器3からなる変換部3に、さらに、増幅部103,203を2つ備えている。つまり、スプール20の制御媒体である空気(流体)の上流側に変換部3が位置し、この変換部3から出力された空気を増幅する2つの増幅部103,203が下流側に設けられている。
【0041】
具体的に、増幅部103は、上記変換部3とほぼ同一の形状の流路によって形成されている。つまり、ほぼ中央に形成され、紙面上方に向かって開口する噴流口を有する供給ポート131(増幅供給ポート)と、当該供給ポート131の噴流口よりもさらに上方(下流側)に、流体を出力する二股に分かれた出力ポート135a,135b(増幅供給ポート)と、を有している。また、上記供給ポート131の噴流口には、その左右から連通する2つの制御ポート132a,132b(増幅制御ポート)が形成されている。
【0042】
なお、各制御ポート132a,132bは、上述した変換部3に形成された光ファイバが挿通される直線上の制御ポートとは形状が異なり、上記供給ポート131の噴流口の斜め下方(上流側)から連通する形状となっている。そして、各制御ポート132a,132bは、上記変換部3の出力ポート35a,35bが連結されており、当該変換部3からの出力空気(流体)が、増幅部103の供給ポート131の噴流口に出力されることとなる。
【0043】
すると、例えば、増幅部103の供給ポート131の噴流口には上記変換器3の一方の出力ポート35a,35bから空気(流体)が多く出力されることとなるが、これが供給ポート131の噴流口からの噴流を増幅し、また、その偏向を制御する圧力となる。従って、例えば、図5に示すように、増幅部103の左側の制御ポート132aから高い圧力の空気が供給ポート131の噴流口に流入されると、当該供給ポート131から噴流される空気は増幅され、かつ、右側に偏向される。従って、増幅された空気(流体)が、増幅部103の右側の出力ポート135bから出力される。
【0044】
同様に、上記増幅部103のさらに下流に設けられている第2の増幅部203は、上記増幅部103とほぼ同一の形状の流路によって形成されている。つまり、ほぼ中央に形成され、上方に向かって開口する噴流口を有する供給ポート231(増幅供給ポート)と、当該供給ポートの噴流口よりもさらに上方に、流体を出力する二股に分かれた出力ポート235a,235b(増幅供給ポート)と、を有している。また、上記供給ポート231の噴流口には、その下方側の左右から連通する2つの制御ポート232a,232b(増幅制御ポート)が形成されている。なお、第2の増幅部203の寸法は、上記増幅部103に対して約2倍となっている。
【0045】
そして、上記第2の増幅部203の各制御ポート232a,232bは、上述した上流側に位置する増幅部103の各出力ポート135a,135bが連結されており、当該増幅部103からの出力空気(流体)が、第2の増幅部203の供給ポート231の噴流口に出力されることとなる。
【0046】
すると、第2の増幅部203の供給ポート231の噴流口には、上記増幅部103の一方の出力ポート135a,135bから空気(流体)が多く出力されることとなるが、これが供給ポート231の噴流口からの噴流を増幅し、また、その偏向を制御する圧力となる。従って、例えば、図5に示すように、第2の増幅部203の右側の制御ポート232bから高い圧力の空気が供給ポート231の噴流口に流入されると、当該供給ポート231から噴流される空気は増幅され、かつ、左側に偏向される。従って、増幅された空気(流体)が、第2の増幅部203の左側の出力ポート235aから出力される。
【0047】
なお、このとき、第2の増幅部203の各出力ポート235a,235bは、それぞれ上記スプール弁1のスプール20の両端に形成された各パイロット圧室11a,11b(図1参照)に連結されている。従って、上述したように変換部103から出力され、増幅部103及び第2の増幅部203にて増幅され出力された空気(流体)が、当該第2の増幅部203の各出力ポート235a,235bを通じて、各パイロット圧室11a,11bに供給される。
【0048】
以上のように、光流体変換器100にて流体の出力を増幅器103,203で増幅することで、2つの出力ポート235a,235bで大きな差圧が生じるため、より高精度にスプールの移動を制御することができる。
【0049】
なお、本実施形態における上記光流体変換器100は、例えば、図6の符号P1に示すように、アクリル板や金属板などの板部材に各ポートを含む空気の流路を切り抜きで形成し、その両面を符号P2,P3に示す板にて挟むことによって形成することができる。このとき、例えば、一方の板P2に、各供給ポート31,131,231にそれぞれ連通する各供給穴31a,131a,231aをそれぞれ形成して、当該供給穴31a,131a,231aから空気を供給する。また、一方の板P2に、第2の増幅器の出力ポート235a,235bに連通する出力穴235aa,235baを形成して、当該出力穴235aa,235baをスプール弁筺体10の各パイロット圧室11a,11b(図1参照)に連結する。これにより、上述したように増幅した空気(流体)を各パイロット圧室11a,11bに供給して、スプール20を移動させることができる。
【0050】
ここで、上記では、第2の増幅部は、その寸法が、下流側の増幅部よりも約2倍に形成されている場合を例示したが、増幅部の寸法は、いかなる寸法であってもよく、増幅した空気が通過可能であればよい。
【0051】
また、上記では、変換部3に増幅部103,203を2つ連結した場合を例示したが、さらに多くの増幅部を連結してもよい。この場合には、上流側に位置する増幅部の出力ポートから出力される空気(流体)を、下流側に位置する増幅部の制御ポートに入力するよう接続する。そしてさらに、最下流に位置する増幅部の各出力ポートからそれぞれ各パイロット圧室に流体を出力するよう構成する。
【0052】
なお、本実施形態における増幅部を含む光流体変換器100も、実施形態1で説明したように、スプール弁筺体10内部に形成してもよい。これにより、スプール弁1自体に制御手段を組み込んで一体的に構成でき、スプール弁装置1の小型化を図ることができる。
【0053】
<実施形態3>
次に、本発明の第3の実施形態を、図7乃至図8を参照して説明する。図7は、光流体変換器の構成の一部を示す図であり、図8は、光流体変換器の動作の一例を示す図である。
【0054】
本実施形態における光流体変換器は、上記実施形態2にて示した変換部3と、増幅部103と、第2の増幅部203とが、上述したように一体的ではなく、それぞれ異なる部材にて構成されている。例えば、増幅部103は、図7の符号P11に示すように、アクリル板や金属板といった板状部材に各ポートを含む空気の流路を切り抜きで形成し、その両面を符号P12,P13に示す板状部材にて挟むことによって形成されている。
【0055】
このとき、例えば、一方の板P12に、供給ポート31に連通する供給穴131aを形成して、当該供給穴131aから空気を供給する。また、一方の板P12には、制御ポート132a,132bに連通する連結穴132aa,132baが形成されている。そして、この連結穴132aa,132baは、後述するように、変換部3の出力ポート35a,35bと連結される。つまり、変換部3の出力ポート35a,35bからの出力が、増幅部103の制御ポート132a,132bに入力されることとなる。さらに、他方の板P13には、出力ポート135a,135bに連通する出力穴135aa,135baが形成されている。そして、この出力穴135aa,135baは、第2の増幅部203の増幅制御ポート232a,232bに連結される。つまり、増幅部103の出力ポート135a,135bからの出力が、第2の増幅部203の制御ポート232a,232bに入力されることとなる。
【0056】
同様に、変換部3と第2の増幅部203も、流路が切り抜きにて形成された板部材にて形成され、当該板部材を他の板部材にて挟むことによって形成されている。これにより、変換部3と、増幅部103と、第2の増幅部203とは、所定の厚みの略板状に形成されている。
【0057】
さらに、本実施形態では、板状である変換部3と、増幅部103と、第2の増幅部203とを積層して一体的に構成している。このとき、各板部材には、供給ポート31,131,231に連通する供給穴(例えば、符号131a)を形成して、各供給ポート31,131,231に空気を供給する。
【0058】
また、図8に示すように、変換部3と、増幅部103と、第2の増幅部203とを、上下方向が交互に逆になるよう配置して、積層する。つまり、この図においては、変換部3と第2の増幅部203とは、紙面下側に供給ポート31,231が位置して向きが一致しているが、その間に位置する増幅部103は、紙面上側に供給ポート131が位置して向きが逆である。
【0059】
そして、変換部3と、増幅部103と、第2の増幅部203とを積層する際には、具体的に、まず、変換部3の出力ポート35a,35bと増幅部103の制御ポート132a,132bとの位置を一致させて配置し、これらの間に配置された板に形成された連結穴(例えば、図7の符号132aa,132ba)を介して、これら各ポートが連通した状態とする。また、増幅部103の出力ポート135a,135bと第2の増幅部203の制御ポート232a,232bとの位置を一致させて配置し、これらの間に配置された板に形成された連結穴(例えば、図7の符号135aa,135ba)を介して、これら各ポートが連通した状態とする。そして、さらに、第2の増幅部203の出力ポート235a,235bを、スプール弁筺体10の各パイロット圧室11a,11b(図1参照)に連結する。
【0060】
以上により、本実施形態における光流体変換器では、図8に示すように、まず、変換器3の供給ポート31に供給された空気は(矢印Y11)、当該供給ポート31の噴流口から噴流する。そして、この噴流口に対して出力される光ファイバ40a,40bからの光(矢印Y21,Y22)によって、空気が左右のいずれかに偏向する。これによって、上記出力ポート35a,35bのうち、いずれかのポートへの流量が多くなる。
【0061】
その後、変換器3の出力ポート35a,35bからの出力は、上述した連結穴132aa,132baなどを介して、増幅部103の制御ポート132a,132bに流入する(矢印Y31,Y32)。すると、この増幅制御ポート132a,132bへの流入は、上述したように、増幅部103の供給ポート131に供給されている空気(矢印Y12)の噴流口からの噴流に対する制御圧力となる。これにより、増幅部103の供給ポートから噴流される空気は増幅され、かつ、左右のいずれかに偏向され、いずれかの出力ポート135a,135bから増幅された空気が出力される。
【0062】
さらに、増幅器103の出力ポート135a,135bからの出力は、上述した出力穴135aa,135baなどを介して、第2の増幅部203の増幅制御ポート232a,232bに流入する(矢印Y41,Y42)。すると、この増幅制御ポート232a,232bへの流入は、上述したように、第2の増幅部203の増幅供給ポート231に供給されている空気(矢印Y13)の噴流口からの噴流に対する制御圧力となる。これにより、第2の増幅部203の増幅供給ポートから噴流される空気は増幅され、かつ、左右のいずれかに偏向され、いずれかの増幅出力ポート235a,235bから増幅された空気が出力される。
【0063】
そして、上記第2の増幅部203の各増幅出力ポート235a,235bは、それぞれ上記スプール弁1のスプール20の両端に形成された各パイロット圧室11a,11b(図1参照)に連結されている。従って、上述したように変換部103から出力され、増幅部103及び第2の増幅部203にて増幅され出力された空気(流体)が、当該第2の増幅部203の各出力ポート35a,35bを介して、各パイロット圧室11a,11bに供給される。
【0064】
以上のように、光流体変換器からの流体の出力を増幅器103,203にて増幅することで、2つの出力ポート235a,235bで大きな差圧が生じるため、より高精度にスプールの移動を制御することができる。
【0065】
そして、特に本実施形態では、光流体変換器を、板状部材の積層体にて形成しているため、かかる変換器全体の面積が小さくなり、小型化を図ることができる。
【0066】
なお、本実施形態における増幅部を含む光流体変換器も、実施形態1で説明したように、スプール弁筺体10内部に形成してもよい。これにより、スプール弁1自体に制御手段を組み込んで一体的に構成でき、スプール弁装置1の小型化を図ることができる。
【0067】
また、上記では、増幅部を2つ連結した場合を例示したが、さらに多くの増幅部を連結してもよい。この場合には、上流側に位置する増幅部の増幅出力ポートから出力される流体を下流側に位置する増幅部の増幅制御ポートに入力するよう接続すると共に、最下流に位置する増幅部の各増幅出力ポートからそれぞれ各パイロット圧室に流体を出力するよう構成すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のスプール弁装置は、制御したスプール弁の開閉によって出力する空気圧などを制御し、かかる空気圧でロボットアームを駆動するなど、アクチュエータとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施形態1におけるスプール弁装置の構成の概略を示す図である。
【図2】図1に開示したスプール弁装置に使用される光ファイバの端面の様子を示す図である。
【図3】図1に開示したスプール弁装置の動作を説明するための図である。
【図4】実施形態2における光流体変換器の構成の概略を示す図である。
【図5】図4に開示した光流体変換器の動作を説明するための図である。
【図6】実施形態2における光流体変換器の構成を示す図である。
【図7】実施形態3における光流体変換器の構成の概略を示す図である。
【図8】図7に開示した光流体変換器の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0070】
1 スプール弁
10 スプール弁筺体
11 スプール穴
11a,11b パイロット圧室
20 スプール
21 弁体
3 光流体変換器(変換部)
31 供給ポート
32a,32b 制御ポート
35a,35b 出力ポート
40a,40b 光ファイバ
103 増幅部
203 第2の増幅部
131,231 増幅供給ポート
132a,132b,232a,232b 増幅制御ポート
135a,135b,235a,235b 増幅出力ポート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円柱形状のスプール穴が形成された筒状体であり、当該筒状体の側面に前記スプール穴に連通する複数の流路口が形成されたスプール弁筺体と、
前記スプール穴に挿入され周囲に弁体が設けられた軸体であり、当該スプール穴に沿って軸方向に移動することで前記弁体にて前記各流路口の開閉制御を行うスプールと、
前記スプールの少なくとも一端にパイロット圧を付与するパイロット圧室と、
前記パイロット圧室に流体を供給して、前記スプールを移動制御するパイロット圧付与手段と、
を備えたスプール弁装置であって、
前記パイロット圧付与手段は、流体を供給する供給ポートと、流体を出力する少なくとも2つの出力ポートと、前記供給ポートと前記出力ポートとの間に設けられ流体を光にて加熱することによって前記出力ポートからの流体の出力状態を制御する制御ポートと、を備えた光流体変換器であり、少なくとも1つの前記出力ポートから前記パイロット圧室に流体を出力するよう構成した、
ことを特徴とするスプール弁装置。
【請求項2】
前記スプールの両端に、それぞれ前記パイロット圧室を備え、
前記光流体変換器の前記各出力ポートから、それぞれ前記各パイロット圧室に流体を出力するよう構成した、
ことを特徴とする請求項1記載のスプール弁装置。
【請求項3】
前記光流体変換器は、流体を供給する増幅供給ポートと、流体を出力する少なくとも2つの増幅出力ポートと、前記増幅供給ポートと前記増幅出力ポートとの間に設けられ前記各出力ポートから出力された流体をそれぞれ入力することによって前記増幅出力ポートからの流体の出力状態を制御する増幅制御ポートと、を備えた増幅部を備え、前記各増幅出力ポートからそれぞれ前記各パイロット圧室に流体を出力するよう構成した、
ことを特徴とする請求項2記載のスプール弁装置。
【請求項4】
前記光流体変換器は、前記増幅部を複数備え、当該増幅部相互間を、上流側に位置する前記増幅部の前記増幅出力ポートから出力される流体を下流側に位置する前記増幅部の前記増幅制御ポートに入力するよう接続すると共に、最下流に位置する前記増幅部の前記各増幅出力ポートからそれぞれ前記各パイロット圧室に流体を出力するよう構成した、
ことを特徴とする請求項3記載のスプール弁装置。
【請求項5】
前記光流体変換器の前記供給ポートと前記制御ポートと前記出力ポートとを備えた変換部と、前記増幅部とを、それぞれ所定の厚みを有する略板状部材にて形成すると共に、
前記変換部と前記増幅部とを積層構造とした、
ことを特徴とする請求項3又は4記載のスプール弁装置。
【請求項6】
前記光流体変換器を前記スプール弁筺体に内蔵して設けた、
ことを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載のスプール弁装置。
【請求項7】
前記制御ポートに、流体を加熱するための光を導入する光ファイバの端面を配置し、
前記光ファイバの端面に、均一の厚みの光吸収体を設けた、
ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6記載のスプール弁装置。
【請求項8】
前記光ファイバの端面に、前記光吸収体をその表面が平坦となるよう設けた、
ことを特徴とする請求項7記載のスプール弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−31890(P2010−31890A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191564(P2008−191564)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(801000027)学校法人明治大学 (161)
【Fターム(参考)】