説明

スモールギャップ光センサ

カソードからのとるに足らないスパッタリングと、その後のキャビティ内の不活性ガスを葬ることを最小にすることにより、検出器の長い寿命を生じさせ、高圧キャビティ(26)を可能にし、カソード(18)とアノード(15)との間の小さなギャップを備えた光検出器(10)を有するセンサ。検出器は、MEMS技術で作られる。センサは、光センサ(10)のアレイを包含しうる。検出器のいくつかは、UV検出器であって良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンサに関し、特に、MEMS構造を備えたセンサに関する。さらに、本発明はMEMS構造を備えた光センサに関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明は、放電のための特に小さなギャップと、キャビティ内に著しい高圧を備えたマルチ・ウェハ・チューブ・ベース光センサであってよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0003】
本センサ10は、光検出器として製造されるMEMS(微小電子機械システム)デバイスである。この検出器は、その構造に使用される材料に依存して、赤外線(IR)、可視光、および、紫外(UV)線の検出に使用されうる。ここで記載する例示は、UV光検出器である。炎検出および、UV特性を備えた他の用途に関して用いられうる。関連する技術分野のUV検出チューブは、かさばっており、こわれやすく、そして制限された寿命を有する。本MEMS検出器は、小型化され、丈夫であり、長い寿命を有する。本MEMS検出器は、関連する検出チューブよりも著しく低いコストで作ることが出来うる。本検出器は、MEMSアセンブリ技術で組み立てることが出来うる。本発明は、それがMEMS固体エンクロージャーに包含されるにもかかわらず、チューブタイプデバイスとみなされうる。UV検出器に加えて他の用途がありうる。
【0004】
典型的なUVセンサチューブは、比較的大きな容積を有し、例えば9000立方ミリメートル(mm)である。懸念のひとつである各チューブの寿命は、チューブ内のネオンガスの消費に制限される。ネオンの消費は、ネオンを埋めるカソード材料のスパッタリングによる。かかるチューブは、約100トールの圧力を備えたキャビティ内でアノードとカソードとの間の約500ミクロン(マイクロメートル;μm)の間隔を備えて作動する。放電ガス消費は、約15%のH混合のネオンを含む。ネオンに加えて他の不活性ガスも使用されうる。Hの追加は、キャビティ内のアノードとカソードとの間の1次放電の間および/またはその後に生じうる2次放電である準安定を低下させ得る。
【0005】
カソードとアノードとの間の間隔は、本デバイスでは約125ミクロンである。MEMS技術での製造で、かかる小さなギャップを作ることが出来る。当該技術分野における他のチューブの中くらいのギャップは、約4倍大きい。他のUVチューブに関しては、内部キャビティの圧力は、例えば、100トールから約400トールまで約4倍増大する。4倍の圧力増大、および、カソードとアノードとのギャップにおける4倍の縮小は、図3のグラフに示したように、パッシェン・ポイント25で同じブレークダウンまたは放電電圧のチューブキャビティ状態を維持する。オリジナルのパッシェン・ポイントの20パーセント内のポイントを維持するような設計をするのが望ましい。デバイスのカソードのスパッタ速度は、1/P5の関係を有し、ここでPは、キャビティ内のガスの圧力である。この関係は、デバイスの異なる構造の間で変化する。しかしながら、例示の例では、圧力が約4倍増大したとき、カソード材料のスパッタリング速度は、同じ圧力下の速度の1/1024まで低減されうる。更に、キャビティの容積を増大させることにより、より多くのネオンの部屋を作り、その結果として、チューブの寿命が比例的に増加する。
【0006】
図1は、MEMSチューブ10の断面図を示す。ベースまたは基板11は、石英ガラスから作られうる。石英ガラス11の上に、石英ガラススペーサ13とベース11との間にシールするように形成されたフリット12があってよい。頂部14は、頂部14の底部表面に形成されたアノード15を有する。アノード15は、スペーサ13の上に配置されている周囲シール16上に配置されている。このシール16は、頂部層14との間に薄いアノード層15を備えるにもかかわらず、チューブ10のカソード18とアノード15の間にキャビティ26を形成するために、適所に頂部層14を有効に保持する。アノードは、開口部を備えた金属グリッドであってよく、光30は、石英ガラス頂部層14とアノード15とを通ってキャビティ内に入ってくる。また、アノード15は、伝導性の材料であって良く、センサ10によって検出されうる光30に対して透明または透過であってよい。カソード18は、チューブ10の基板またはベース11の中心に堆積または形成され得る。カソード18は、アノード15から約125ミクロンの距離19を有しうる。別のチューブ10の設計は、別の距離19であってよい。タングステン化合物からなるカソード18の厚さ20は、約1ミクロンであってよい。厚さ20は、他のカソード材料によって変化しうる。カソード材料は、タングステン、銅、ニッケル、金、銀、ニッケル鉄、バリウム酸化物、セシウム、ハフニウム、モリブデンなどを含み得る。アノード15とスペーサ13との間のシール16は、共融金/銀シールであってよく、または、シール16は、適当な絶縁材料からなってもよい。
【0007】
カソード18材料は、検出器10スペクトル応答の長い波長制限を提供するように選択されうる。カソード材料は、以下の所定の波長(即ち、光放出しきい値)の電子を光放出しうる。検出器10の窓(即ち頂部14とアノード15)は、検出器スペクトル応答の短い波長制限を提供しうる。しかしながら、窓はまた、長い波長放射または検出器に影響する光を制限するフィルタを備える。かくして、頂部14、アノード15およびカソード18に用いられる材料の種類は、検出器のスペクトル応答を決定するように選択されうる。
【0008】
より多くのキャビティ容積をキャビティ26に加えるためにカソード18のまわりにトレンチ17を形成することができ得る。トレンチ17の結果、カソード18を支持するアイランドまたはメサのような構造ができうる。トレンチ17にわたってブリッジ27を形成することができ得る。チューブ10のキャビティの外側と接続する目的でベースまたは基板11の周辺にカソード18を接続する導体28をブリッジ27の上におくことができ得る。周辺シール12は、導体28にわたってまたはその上に配置されうる。導体28の頂部の上において、デバイス10の可動寿命中に、カソード18から金属スパッタの蓄積の可能性のためにキャビティの内側でアノード14とカソード18とがショートする可能性を妨げるためにカソード18からシール12まで薄いガラスまたは他の絶縁コーティング29を形成することができ得る。シール12の上に配置されたスペーサ13は同様に、電気的な絶縁特性を有する。かくして、カソード18およびアノード15は、キャビティの密封シールを維持しつつチューブのキャビティの外側で外部接続されうる。
【0009】
カソード18に関しては、100トールの標準圧力で、25ミクロンの銅が、例えば10000時間という適当な寿命を提供する。かかる寿命に関しては、約1ミクロンのタングステンだけでも十分である。タングステンは、同じキャビティおよび電気的状況下では、ニッケルよりも少ない(約20分の1)スパッタリング材料とみなされている。銅はニッケルよりも多くスパッタされうる。銅のスパッタはタングステンよりも25倍多いと結論付けるのが適正であろう。高圧でのスパッタ速度は、Rまで低減され、ここで「R」は圧力増大の比であり、「n」はRのべき乗数であり、上述の関係に適用すると、4=1024となる。かくして、タングステンカソードに関して必要な厚さは、1ミクロンより小さい。
【0010】
種々の要素が、カソードの厚さおよび材料の部分に作用する。例えば、スパッタ速度が、約1000倍だけ低減されるならば、約400トールまでキャビティの圧力を4倍増加させるために、ネオンの埋葬は、約1000倍だけ低減されうる。かくして、ネオンの存在に依存する、チューブの同様な寿命に関しては、ネオン(または他の不活性ガス)に関して要求される容積が、典型的な当該技術分野のチューブの容積よりも約1000倍小さくなりうる。
【0011】
典型的なUVチューブが100トールの圧力で約9000mmの容積を有し、アノード/カソード間の距離が約500ミクロンである場合では、かかるチューブの通常の寿命は約10000時間であろう。400トールまで圧力を増大させ、アノードとカソードとの間のギャップの距離を約125ミクロンまで低減させた新しい本チューブ10の場合、上述の情報の観点において同様の寿命に関して、チューブの体積を1000分の1の9mmまで低減させうる。
【0012】
図1および2は、キャビティ26に関するデバイス10のレイアウトを示す。トレンチまたはチャネル17を除き、不活性ガスに関するキャビティは、おおよそ5mm×5mm×0.125mmの寸法を有し、その結果、約3mmの容積を有する。トレンチ17は、更なる容積を総チューブキャビティ容積に追加する。例えば、図を参照すると、参照番号21,22,23および24の寸法は、それぞれ1,1,3および6ミリメートルであって良い。かくして、トレンチ17は、約16mm、即ち、((5mm×5mm)−(3mm×3mm))×1mm≒16mmを加えうる。チューブキャビティの結果としての容積は、約19mmになりうる。図1および2のスケールは、正しくない。
【0013】
少なくとも1つの例示に関して本発明を記載してきたが、多くの修正および変更がなされることは当業者にとって明らかであろう。それ故、本発明は、従来技術の観点から可能な限り広く、かかる全ての修正および変更を含むように添付の特許請求の範囲を解釈すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】センサの側面断面図である。
【図2】センサの平面断面図である。
【図3】カソードとアノード間隔の距離とキャビティの圧力との積に対する、センサキャビティ降伏電圧のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(11)と、
前記基板の第1の表面に形成された第1の伝導層(18)と、
頂部層(14)と、
前記頂部層の第1の表面に形成された第2の伝導層(15)と
を有し、
前記頂部層が前記基板に取り付けられ、
前記第1の伝導層および前記第2の伝導層が、キャビティ(26)内に位置決めされ、
前記頂部層が光(30)に対して著しく透明であり、
前記第2の伝導層が、光に対して著しく透明である
ことを特徴とする光検出器(30)。
【請求項2】
前記基板(11)に形成されたトレンチ(17)を更に有し、
前記トレンチがキャビティ(26)と隣接する
ことを特徴とする請求項1に記載の光検出器。
【請求項3】
前記第1の伝導層(18)がカソードであり、
前記第2の伝導層(15)がアノードであり、
前記カソードと前記アノードとの間の距離が200ミクロンよりも小さく、
前記キャビティ(26)の圧力が250トールよりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の光検出器。
【請求項4】
前記検出器(10)が、MEMS技術で製造されたことを特徴とする請求項3に記載の光検出器。
【請求項5】
前記第1の伝導層(18)が、タングステン、銅、ニッケル、金、銀、ニッケル鉄、酸化バリウム、セシウム、ハフニウム、モリブデンなどからなるグループから選択された材料からなり、
前記基板(11)が、石英ガラスからなり、
前記頂部層(14)が、石英ガラスからなる
ことを特徴とする請求項4に記載の光検出器。
【請求項6】
キャビティ(26)を包含する手段と、
キャビティ内に位置決めされ、光(30)を受けた際に放電を提供する手段と
を有し
前記キャビティを包含する手段および前記放電を提供する手段が、MEMS技術で製造され、
前記放電を提供する手段が、カソードおよびアノードとからなり、
前記カソードおよびアノードが、距離dだけ離れており、
キャビティが圧力pを有し、
前記dとpとの積が、前記カソードと前記アノードとの間の降伏電圧のパッシェン値とおおよそ等しい
ことを特徴とする光検出手段。
【請求項7】
前記dが200ミクロンよりも小さく、
前記pが250トールよりも大きく、
前記パッシェン値のレンジが、25と75トール-mmの間である
ことを特徴とする請求項6に記載の手段。
【請求項8】
基板(11)上にカソードを形成するステップと、
表面にアノード(15)を備えた頂部層(14)を備えたキャビティ(26)を形成するステップと
を有し、
前記キャビティ(26)は、200トールよりも大きな圧力の不活性ガスを有し、
前記カソード(18)および前記アノード(15)が、250ミクロンよりも小さい間隔を有し、
前記キャビティがMEMS技術で形成された、
ことを特徴とする、長い寿命を有する小型センサで光を検出する方法。
【請求項9】
基板(11)上に形成された少なくとも1つの紫外線検出器(10)を有し、
前記少なくとも1つの紫外線検出器が、
前記基板(11)上に形成されたカソード(18)と、
前記カソードの周りの基板に形成されたトレンチ(17)と、
結果としてキャビティ(26)がカソードおよびアノードを包含するように、前記カソードと面する前記アノードを備えた基板上に位置決めされ、一方の面上にアノード(15)を備えた頂部層(14)と、
を有することを特徴とする光センサ。
【請求項10】
前記カソードと前記アノードとの間の距離が200ミクロンよりも小さく、
前記キャビティ(26)の圧力が250トールよりも大きく、
前記少なくとも1つの検出器が、MEMS技術で製造され、
前記カソード(18)が、タングステン、銅、ニッケル、金、銀、ニッケル鉄、酸化バリウム、セシウム、ハフニウム、モリブデンなどからなるグループから選択された材料からなり、
前記アノード(15)が、伝導性であり、紫外線に対して透明であり、
前記基板(11)が、石英ガラスからなり、
前記頂部層(14)が、石英ガラスからなる
ことを特徴とする請求項9に記載のセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−514964(P2008−514964A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534783(P2007−534783)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/035097
【国際公開番号】WO2006/039444
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】