説明

スライド扉装置

【課題】スライド扉の開閉移動に伴うパッキンの変形や損傷を防止し、スライド扉の下端部のパッキンの位置調整を容易にし、気密性の向上を図れるようにすること。
【解決手段】庫体1に設けられた開口部2を開閉する扉体5の庫体側の左右側端部に沿設される筒状本体を有する側部パッキン70Bと、扉体の下端部に装着されるずれパッキン9と、を具備するスライド扉装置において、側部パッキンの下端に連なり、下端が床面に接触する補助パッキン70Cと、扉体の開閉側端部に設けられ、庫体の側面及び補助パッキンの開閉端部側面に接触するサイドパッキン70Dとを具備する。補助パッキンは、側部パッキンに連なる筒状本体71と、この筒状本体から接線方向に延在する取付片74とを有し、取付片は、ずれパッキンの長手方向の端部に重合され、ずれパッキンの表面に固定ねじ104によって扉体に固定される押え部材であるパッキン部材100にて固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スライド扉装置に関するもので、更に詳細には、建造物の庫体の出入口用開口部を開閉する扉体の上端部及び左右側端部と下端部にパッキンを具備するスライド扉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のスライド扉は、冷凍庫や冷蔵庫等の庫体の出入口用開口部を閉鎖する際、スライド扉の下端から庫体内の冷気が流出するのを防ぐために、スライド扉の扉体の下端部に、床面に接触するずれパッキンを装着している。また、この種のスライド扉は、庫体と扉体との間の隙間から冷気が流出を防止するために、扉体の上端部及び左右側端部にパッキンが沿設されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−344948号公報(特許請求の範囲、図1,図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のスライド扉においては、パッキンが床面に接触した状態で扉体が直線状に開閉移動するため、パッキンの変形や損傷防止のために保護を十分にする必要がある。また、庫体を建造した床面には勾配を有する場合があり、庫体に扉体を取り付けた後にパッキンの位置調整を行う必要がある。更にまた、扉体の下端部における気密性を十分にするには、扉体の左右側端部に装着される側部パッキンと扉体の下端部に装着されるずれパッキンとの間に気密性を持たせる必要がある。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、スライド扉の開閉移動に伴うパッキンの変形や損傷を防止し、かつ、スライド扉の下端部におけるパッキンの位置調整を容易にすると共に、気密性の向上を図れるようにしたスライド扉装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、この発明のスライド扉装置は、建造物の庫体の出入口用開口部の上部側に水平に配設される案内レールと、上記出入口用開口部を開閉する扉体と、この扉体の上部に装着されて、上記案内レールに転動可能に係合する吊り車輪と、上記扉体の上記庫体側の上端部及び左右側端部に沿設され、庫体壁面に接触する筒状本体を有する上部パッキン及び側部パッキンと、上記扉体の上記庫体側の下端部に垂下状に装着され、床面に接触する帯状のずれパッキンと、を具備するスライド扉装置において、 上記扉体の庫体側面における上記側部パッキンの下端に連なって設けられ、下端が床面に接触する補助パッキンと、 上記扉体の開閉側端部に設けられ、上記庫体の側面及び補助パッキンの開閉端部側面に接触するサイドパッキンと、を具備してなり、 上記補助パッキンは、上記側部パッキンの筒状本体に連なる筒状本体と、この筒状本体から接線方向に延在する取付片とを有し、 上記取付片は、上記ずれパッキンの長手方向の端部に重合され、ずれパッキンの表面に被装されて固定部材によって上記扉体に固定される押え部材にて固定される、ことを特徴とする。
【0007】
このように構成することにより、庫体に扉体を取り付けた後に、扉体の下部の気密保持用の補助パッキンとサイドパッキンを取り付けることができる。また、補助パッキンに設けた取付片をずれパッキンと扉体との間に介在させて、ずれパッキンと同時にパッキン押え部材によって固定することができる。
【0008】
この発明において、上記側部パッキン及び補助パッキンは、筒状本体の一側に突出する断面L字状の係止片を有し、上記係止片を、上記扉体の辺部を構成する枠材の庫体側片に設けられた嵌合溝内に嵌合する方が好ましい。
【0009】
このように構成することにより、側部パッキン及び補助パッキンに設けた係止片を、扉体を構成する枠材に設けられた嵌合溝内に嵌合することで、側部パッキン及び補助パッキンを連ねて扉体に装着することができる。
【0010】
また、この発明において、上記側部パッキン及び補助パッキンは、筒状本体の接線方向に延在し、庫体の側面に接触可能な気密補助片を更に具備し、少なくとも上記補助パッキンにおける筒状本体及び気密補助片は、上記扉体の開閉側端部に固定されるサイドパッキンに設けられた気密保護片の内方側に接触される構造とする方が好ましい。
【0011】
このように構成することにより、補助パッキンの気密補助片とサイドパッキンの気密保護片とが協働して気密保持が図れると共に、扉体の開閉移動時における補助パッキンの変形をサイドパッキンによって抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような優れた効果が得られる。
【0013】
(1)庫体に扉体を取り付けた後に、扉体の下部と床面との間に補助パッキンとサイドパッキンを取り付けることができるので、扉体と床面との隙間に対応した気密の維持が図れる。また、補助パッキンに設けた取付片をずれパッキンに重合させて、ずれパッキンと同時に押え部材によって固定することができるので、補助パッキンの固定を強固にすることができると共に、扉体の下端部の気密を確実にすることができる。
【0014】
(2)側部パッキン及び補助パッキンに設けた係止片を、扉体を構成する枠材に設けられた嵌合溝内に嵌合することで、側部パッキン及び補助パッキンを連ねて扉体に装着することができるので、側部パッキンと補助パッキンとに一体的に取り付けることができると共に、パッキンの取付を容易かつ強固にすることができる。
【0015】
(3)補助パッキンの気密補助片とサイドパッキンの気密保護片とが協働して気密保持が図れると共に、扉体の開閉移動時における補助パッキンの変形をサイドパッキンによって抑制することができる。したがって、更に扉体の下部の気密性の向上及びパッキンの寿命の増大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係るスライド扉装置を示す概略正面図である。
【図2】上記スライド扉装置を示す断面図(a)及び(a)のI部拡大断面図(b)である。
【図3】この発明における案内レールと吊り車輪を示す拡大断面図である。
【図4】この発明におけるずれパッキンの取付状態を示す断面図である。
【図5】図4の側面図である。
【図6】の発明におけるずれパッキンの取付状態を示す断面斜視図である。
【図7】この発明におけるずれパッキンのパッキン押え部材とキャップの連結状態の表面斜視図(a)及び裏面斜視図(b)である。
【図8】この発明における補助パッキンの取付状態を示す断面図である。
【図9】この発明における補助パッキンの取付状態を示す断面斜視図である。
【図10】この発明における補助パッキンを示す分解斜視図である。
【図11】この発明における第2実施形態のパッキンの取付状態を示す断面図である。
【図12】この発明における第2実施形態のパッキンの取付状態を示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、この発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、この発明に係るスライド扉装置を冷凍庫に用いた場合について説明する。
【0018】
この発明に係るスライド扉装置は、プレハブ式冷凍庫の庫体1に開設された出入口用開口部2(以下に開口部2という)の上部側に水平状に配設される案内レール3と、開口部2を開閉する扉体5と、この扉体5の上端部に装着されるL形状のブラケット6の垂直片6aに装着されると共に、案内レール3を転走する凹状走行面7aの対峙する両側に一対のフランジ部7bを有する吊り車輪7と、ブラケット6の水平片6bに装着されると共に、開口部2の開口縁に装着される開口枠2aの外面に転動可能な水平ガイドローラ8と、扉体5の庫体側の上端部及び左右側端部に沿設され、庫体壁面に接触する筒状本体71を有する上部パッキン70A及び側部パッキン70Bと、扉体5の下端部に垂下状に装着され、床面Fに接触するずれパッキン9とを具備している。
【0019】
また、この発明に係るスライド扉装置は、側部パッキン70Bの下端部に補助パッキン70Cを具備すると共に、補助パッキン70Cを保護すべく扉体5の開閉側端部にサイドパッキン70Dを具備している。
【0020】
なお、扉体5の下端部と庫体1の開口部2近傍の床面Fとの対向する位置には、扉体5を閉鎖する際に互いに係合して扉体5を庫体1の開口部2に押圧する密閉移動手段10が形成されている。また、開口枠2aの開口縁に沿ってパッキン受座2bが周設されている(図2参照)。
【0021】
上記案内レール3は、図2及び図3に示すように、吊り車輪7が転走する車輪走行部30と、庫体1の開口部2の上部外面に固定される固定部31と、固定部31の下部に延在し、開口部2の上部に設けられたパッキン受座2bの外面に当接される当接部32とが一体のアルミニウム製押出形材にて形成されている。案内レール3は、庫体1の開口部2を扉体5が閉鎖する閉鎖領域Aと、扉体5が開口部2を開放する開放領域Bに渡って配設されている。
【0022】
上記車輪走行部30は、吊り車輪7の凹状走行面7aが転動可能な断面逆U字状に隆起するレール面部33と、このレール面部33の両側下端から外方に向かって下り勾配状に傾斜する一対の傾斜片34と、これら両傾斜片34の下端から垂下する一対の垂下片35と、両垂下片35の下端同士を連結する下部連結片36とからなる中空状に形成されている。なお、傾斜片34の傾斜角(勾配)は、吊り車輪7のフランジ部7bに設けられた内向きテーパ面7cと略相似形状に形成されている。
【0023】
固定部31と当接部32は、クランク状段部37を介して連結されており、クランク状段部37に、車輪走行部30の下部連結片36から延在する水平片36aが連結されている。固定部31は、上部に庫体1の壁部1aを貫通する取付ボルト40の取付孔(図示せず)を有し、この取付孔部の下部と上記水平片36aとが傾斜片38aで連結され、傾斜片38aの中間部とクランク状段部37に補強片38bが連結されている。また、当接部32のクランク状段部37の近傍の表面には狭隘開口状の水平凹溝39aが設けられ、この水平凹溝39aの開口下部に延在する垂直案内片39bの下端にパッキン受座2bの表面に当接する折曲片39cが設けられている。なお、垂直案内片39cの表面に水平ガイドローラ8が転動可能に接触するようになっている。
【0024】
上記のように形成される案内レール3は、固定部31を庫体1の取付面に当接した状態で、取付ボルト40を固定部31に設けられた取付孔(図示せず)を貫通して庫体1に螺合することにより、案内レール3を強固に固定することができる。
【0025】
なお、扉体5の閉鎖位置及び開放位置の床面Fには、扉体5の移動を規制する戸先側及び戸尻側ストッパ部材52が取り付けられている(図1参照)。
【0026】
一方、上記吊り車輪7は、扉体5の上端におけるスライド方向の両端側の2箇所に取り付けられており、案内レール3のレール面部33の逆U字状に対応する凹状走行面7aと、凹状走行面7aの両側に設けられ、案内レール3の傾斜片34の傾斜角(勾配)と相似形の傾斜角度の内向きテーパ面7cを有する一対のフランジ部7bとを具備している。
【0027】
また、吊り車輪7は、扉体5の取付状態{具体的には、扉体5が位置する床面Fの凹凸や傾斜状態}に応じて位置調節が可能となっている。すなわち、扉体5の上端に固定されるL形状のブラケット6の垂直片6aに設けられた垂直状の長孔(図示せず)内を摺動可能(上下移動可能)に取り付けられた支持軸7dによって垂直方向に回転自在に装着されている(図2参照)。なお、ブラケット6の垂直片6aの上端には、扉体5が自重によって下がるのを防止するためのストッパ機構60が設けられている。このストッパ機構60のボルト61を締め付け又は緩めることにより、扉体5を吊った状態で扉体5の上下調整が可能となっており、左右両端部のストッパ機構60を調整することにより、扉体5の左右の傾きを抑制することができる。
【0028】
また、水平ガイドローラ8は、扉体5の上端に固定されたブラケット6の水平片6bに回転可能に支持された鉛直支持軸7eを介して水平方向に回転自在に装着されている。水平ガイドローラ8は、2箇所の吊り車輪7に対応して、吊り車輪7の下部側に配設されている。
【0029】
上記扉体5は、一対の表面板5aと、これら表面板5aの辺部間に介在される枠材5bと、両表面板5a及び枠材5bにて形成される空間内に発泡ポリウレタン等の発泡性の断熱性心材5cを充填したサンドイッチ構造となっている。この扉体5の庫体1側の上辺(上端部)及び左右辺(左右側部)には、開口部2の開口枠2aに周設されたパッキン受座2bに接触すなわち圧接する円筒状の上部パッキン70A及び側部パッキン70Bが沿設されている(図2参照)。また、側部パッキン70Bの下端部は扉体5の下端より上方に位置しており、この側部パッキン70Bの下端に連なって床面Fに接触する補助パッキン70Cが設けられている(図5,図7参照)。
【0030】
なお、案内レール3における扉体5の閉鎖時及び開放時に吊り車輪7が位置する部位には、吊り車輪7を庫体側に偏倚させる上部引き寄せ部材(図示せず)と水平ガイドローラ8を庫体側に偏倚させる下部引き寄せ部材(図示せず)が設けられている。また、扉体5の下端の側部における開閉移動の先端部側及び後端部側には扉寄せ部材11,12が装着されており、庫体1の開口部2近傍の床面Fに配設されて、扉体5の閉鎖位置における扉引寄せ部材11,12にそれぞれ係合するガイドローラ14A,14Bとによって密閉移動手段10が形成されている(図1及び図2参照)。また、扉体5の外側表面板5aの下端部には、扉引寄せ部材11,12間に連接するようにプロテクタ13が装着されており、このプロテクタ13にガイドローラ14A,14Bが接触することで、表面板5aを保護することができるようになっている。
【0031】
なお、庫体1の開口部2の上部には、リニアモータのリニアレールを配設するケース体(図示せず)が取り付けられる場合もあり、このケース体は化粧カバー20によって外部から目隠しされている。
【0032】
化粧カバー20は、庫体1の外面に固定ねじ22によって固定されるカバー受部材21に係脱可能に係合されている。この場合、カバー受部材21は、例えばアルミニウム製の押出形材を適宜長さに切断したピース状に形成されており、複数個が適宜間隔をおいて配設されている。このカバー受部材21は、庫体1の壁部1aに固定される垂直固定片23の上端部から外方に向かって下り勾配に傾斜する上部傾斜片24の先端と、垂直固定片23の上部側から外方に向かって上り勾配に傾斜する下部傾斜片25の先端とを連結した中空三角形状の突出部26を有し、この突出部26における上部傾斜片24の先端部に設けられた係止溝27に、化粧カバー20が係脱可能に係合されている。なお、係止溝27の上部側開口端には係止溝27内に向かって水平係止片27aが突設されている。
【0033】
なお、カバー受部材21は、必ずしも複数のピース状である必要はなく、長手通し状の1本のカバー受部材であってもよい。
【0034】
上記化粧カバー20は、例えばアルミニウム製の押出形材によって形成されている。この化粧カバー20には、一端にカバー受部材21の係止溝27内に係脱可能に係止する係止爪部28aを有し、カバー受部材21の上部傾斜片24に連なる傾斜状の上部カバー部28と、この上部カバー部28の下端(他端)から垂下状に折曲されて案内レール3及び吊り車輪7を覆う前面カバー部29とが設けられている。
【0035】
上記のように構成される化粧カバー20は、通常時には、係止爪部28aが係止溝27に係合されると共に、前面カバー部29がレール3及び吊り車輪7を覆っている(図2参照)。また、保守・点検時には、化粧カバー20を上方に持ち上げて係止爪部28aを係止溝27の水平係止片27aとの間で滑らせて、化粧カバー20を開放状態に保持して、案内レール3と吊り車輪7の走行部やリニアモータの保守・点検作業を行うことができる。
【0036】
上記のように化粧カバー20とカバー受部材21は共にアルミニウム製の押出形材であるため、係止溝27と係止爪部28aとはメタルタッチになるので、扉体5の開閉の衝撃により係止溝27と係止爪部28aがあたり、いわゆるビビリ音が発生する。このビビリ音を防止するためには、図2(b)に示すように、化粧カバー20の係止爪部28a側の裏面とカバー受部材21の上部傾斜片24の先端部上面との間に隙間sを設け、この隙間sに吸音用のパッキン部材Pを介在させるように構成する方がよい。
【0037】
なお、庫体1の開口枠2aの適宜位置とパッキング受座2bの適宜位置には解凍及び結露水防止用のヒータ(図示せず)が埋設されている。
【0038】
上記側部パッキン70Bは、図6ないし図8に示すように、筒状本体71と、この筒状本体71の一側に突出する断面L字状の係止片72と、筒状本体71の接線方向に延在する直状の気密補助片73とからなる可撓性を有する合成ゴム製部材にて形成されている。
【0039】
このように形成される側部パッキン70Bは、断面L字状の係止片72が、扉体5の辺部を構成する枠材5bの庫体側片5eに設けられた嵌合溝5d内に嵌合された状態で、扉体5に取り付けられる。なお、枠材5bは、図8ないし図10に示すように、開閉側端部片5fの幅方向の端部に、一方の表面板5aの折曲片5gが嵌合する第1の嵌挿溝5hを有し、庫体側片5eの端部に庫体側に向かって起立片5iを有し、この起立片5iに他方の表面板5aの折曲片5gが嵌合する第2の嵌挿溝5jを有している。
【0040】
また、補助パッキン70Cは、側部パッキン70Bと同様の合成ゴム製部材にて形成されると共に、側部パッキン70Bと同様に、側部パッキン70Bの筒状本体71と同形状の筒状本体71と、この筒状本体71の一側に突出する断面L字状の係止片72と、筒状本体71の接線方向に延在する直状の気密補助片73とを有する他に、筒状本体71から気密補助片73の延在方向と直交する接線方向に延在する取付片74を有している。
【0041】
このように形成される補助パッキン70Cは、断面L字状の係止片72が、扉体5の辺部を構成する枠材5bの庫体側片5eに設けられた嵌合溝5d内に嵌合された状態で、側部パッキン70Bの下端に連なって扉体5に取り付けられる。また、取付片74は、枠材5bの起立片5iに沿ってクランク状に屈曲してずれパッキン9の長手方向の端部表面に重合され、後述するように、ずれパッキンの表面に被装されて固定部材である固定ねじ104によって扉体5に固定されるずれパッキン9の押え部材であるキャップ部材100によってずれパッキン9と共に固定されている。
【0042】
上記のように扉体5の枠材5bに取り付けられた補助パッキン70Cは、気密補助片73が扉体5の開閉端側に位置しており、枠材5bの開閉側端部片5fに固定ねじ75によって固定されるクランク状のサイドパッキン70Dに設けられ気密保護片77の内方側に接触されている。
【0043】
この場合、サイドパッキン70Dは、枠材5bの開閉側端部片5fの表面に配置される矩形状の平坦取付部76と、この平坦取付部76の長手方向の一側辺からクランク状に折曲され、先端部が庫体1の側面に接触可能な気密保護片77とからなり、下端が床面Fに接触した状態で少なくとも気密保護片77が補助パッキン70Cの気密補助片73に接触するようになっている。
【0044】
サイドパッキン70Dは、平坦取付部76の表面に配置されるサイドパッキン押え板78に設けられた2個の取付孔78aを貫通する固定ねじ75を扉体5の枠材5bに螺合することで、扉体5の開閉側端部に固定される。
【0045】
また、扉体5の庫体側と半体の表面側の下部角部には、扉体5を保護するためのL字状のガード部材79が装着されている。この場合、ガード部材79の直交する両片79a,79bにそれぞれ固定ねじ79cが貫通されて扉体5に固定されている。なお、ガード部材79の扉体開閉側端部に位置する片79aによってサイドパッキン70Dの平坦取付部76が固定されている。このガード部材79の扉体開閉側端部に位置する片79aは、サイドパッキン押え板78の一側の対向する上下部に突設された一対の係止爪78b間に位置している(図9参照)。このように、サイドパッキン押え板78の一側の対向する上下部に一対の係止爪78bを設けることにより、ガード部材79とサイドパッキン押え板78の取付位置の位置決めを行うことができると共に、サイドパッキン押え板78の取付の間違えを防止することができる。この場合、図10に示すように、2個の固定ねじ75の取付孔78aを係止爪78b間の中心を通る線上に設けることにより、サイドパッキン押え板78を一度取り外しても全く同じ位置に取付可能である。
【0046】
一方、上記ずれパッキン9は、扉体5の庫体1側の下端部に垂下状に装着されており、このずれパッキン9の下端は床面Fに接触されている(図1,図2,図4,図5参照)。このずれパッキン9は、可撓性を有する合成ゴム部材によって帯板状に形成されており、図2,図4,図5に示すように、上記扉体5の下端面に固着されるパッキン受部材80と、扉体5の下端部表面に固着されるパッキン押え部材90及びパッキン押え部材90の端部に被着されるキャップ部材100とによって挟持固定されている。この際、ずれパッキン9の長手方向の端部表面には、上記補助パッキン70Cの取付片74が重合された状態で、パッキン受部材80とキャップ部材100とによって挟持固定される。
【0047】
上記パッキン受部材80は、扉体の下端面に第1の固定ねじ81によって固定される水平固定片82と、扉体5の庫体側面に添設される上部垂直片83及びこの上部垂直片83の下端に垂下する下部垂直片84を有するアルミニウム製押出形材にて形成されている。なお、冷蔵雇用扉の場合は、パッキン受部材80は合成樹脂製部材にて形成されている。この場合、水平固定片82の先端部の下面には下方に向かって狭隘開口状に開口する2個の嵌合凹溝85,86が並設されており、両嵌合凹溝85,86内にそれぞれ断面略T字状のT形パッキン9a,9bが垂下状に装着されている。なお、先端側の嵌合凹溝85の先端側開口縁には、保護片87が垂下されており、この保護片87によってT形パッキン9aの上部側表面が保護されるようになっている。また、水平固定片82における嵌合凹溝86に隣接する部位には、互いに平行な一対の係止壁88aを有する係止溝88が設けられており、この係止溝88内に嵌挿されるアルミニウム製押出形材製のヒーター線格納部材89を第1の固定ねじ81をもって水平固定片82及び扉体5の下部側の枠材5bにねじ結合することで、パッキン受部材80と共にヒーター線格納部材89が扉体5の下端部に固定される。なお、パッキン受部材80における上部垂直片83の裏面側には、スポンジ製塞ぎ材200を収容する凹所83aが形成されている。
【0048】
また、パッキン押え部材90はアルミニウム製の押出形材にて形成されている。このパッキン押え部材90は、中央部に上記ずれパッキン9の表面に当接すると共に、固定部材である第2の固定ねじ91が貫通する平坦固定片92と、この平坦固定片92に対して第2の固定ねじ91の頭部91aの高さより高く隆起する隆起部94を有すると共に、先端に向かって下り傾斜面を有する上下対称の一対の押え翼片93とを有し、かつ、押え翼片93の先端部が上記パッキン受部材80の下部垂直片84の下端部との間でずれパッキン9を挟持し得るように形成されている。なお、第2の固定ねじ91は、パッキン押え部材90,パッキン受部材80の上部垂直片83及びスポンジ製塞ぎ材200を貫通して扉体5に螺合される。また、図4及び図6に示すように、パッキン押え部材90の両押え翼片93の裏面には、それぞれ先端がずれパッキン9に当接する凹溝95が長手通しに形成されている。
【0049】
上記のように形成されるパッキン押え部材90によれば、パッキン受部材80の下部垂直片84と協働してずれパッキン9を床面Fに近い位置で挟持して固定することができるので、ずれパッキン9を強固に固定することができ、扉体5の開閉に伴うずれパッキン9の変形や損傷を抑制することができる。また、パッキン押え部材90の隆起部94によって固定ねじ91の頭部91aが外部に突出するのを防止することができ、かつ、パッキン押え部材90の上下部の一対の押え翼片93を先端に向かって下り傾斜面とすることで、外部の物との干渉をスムーズに行うことができる。また、パッキン押え部材90の一対の押え翼片93を上下対称の形状に形成することにより、扉体5にずれパッキン9を固定する時にパッキン押え部材90を上下間違って取り付ける心配がないので、ずれパッキン9の取付作業を容易にすることができる。
【0050】
また、パッキン押え部材90の長手方向端部には、パッキン押え部材90と同様にずれパッキン9を固定する合成樹脂製のキャップ部材100が被着されている。この場合、図7に示すように、キャップ部材100には、上記パッキン押え部材90の凹溝95内に嵌合する嵌合脚片101が設けられると共に、扉体5に当接可能な平坦固定片105の上下及び一端側にパッキン押え部材90の隆起部94の最隆起面94aと同一面の隆起面102が形成され、かつ、キャップ部材100の上下部及び先端部を先端に向かって下り傾斜状の傾斜面103が形成されている。なお、キャップ部材100は、平坦固定片105に設けられた取付孔106を貫通する固定ねじ104によって扉体5に固定されている。このようにキャップ部材100を固定ねじ104によって固定することによって、ずれパッキン9の長手方向端部と補助パッキン70Cの取付片74を重合させた状態でパッキン受部材80とキャップ部材100との間に挟持固定する。この場合、固定ねじ104の頭部104aは隆起面102より低い位置にあり、頭部104aは外部に突出することがない。
【0051】
上記のように、パッキン押え部材90の凹溝95内にキャップ部材100の嵌合脚片101を嵌合してパッキン押え部材90にキャップ部材100を装着することにより、パッキン押え部材90の両端部に、キャップ部材100を容易に取り付けることができると共に、パッキン押え部材90の両端部の切断角度誤差をキャップ部材100によって隠すことができる。また、キャップ部材100は、上下部及び先端部を先端に向かって下り傾斜状に形成されているので、外部の物との干渉を抑制することができる。
【0052】
また、パッキン押え部材90をアルミニウム製押出形材にて形成し、キャップ部材100を合成樹脂製材料にて形成することにより、長尺状のパッキン押え部材90の凹溝95の寸法精度の向上が図れ、パッキン押え部材90とキャップ部材100との接合を容易かつ確実にすることができる。
【0053】
なお、上記実施形態では、この発明に係るスライド扉装置をプレハブ式の冷凍庫に適用した場合について説明したが、プレハブ式の冷凍庫以外の例えばプレハブ式の冷蔵庫、クリーンルームあるいは保管庫や一般の建物にも同様に適用できる。
【0054】
例えば、この発明に係るスライド扉装置を冷蔵庫に適用する場合は、冷凍庫用の扉体5に比べて厚みの薄い扉体5Aを用いる点と、サイドパッキン押え板78を用いない点以外は、第1実施形態のスライド扉装置と同様の構造である。すなわち、第2実施形態においては、図11及び図12に示すように、扉体5Aは、枠材5Bの庫体側片5fの先端部に、上記嵌合溝5dと直交状に開口する第2の嵌挿溝5kを設け、この第2の嵌挿溝5k内に表面板5aの折曲片5gを嵌合してなる。このように形成される冷蔵庫用の扉体5Aは、冷凍庫用の扉体5に比べて冷凍庫用の扉体5の枠材5bの起立片5iの突出寸法分が薄い以外は冷凍庫用の扉体5と同じである。
【0055】
また、第2実施形態におけるサイドパッキン70Dは、ガード部材79の一方の片79aを貫通して枠材5Aに螺合される固定ねじ79cによって固定されている。すなわち、サイドパッキン70Dの平坦取付部76の表面にガード部材79の一方の片79aを配置した状態で、片79aに設けられた取付孔79dを貫通する固定ねじ79cを枠材5Aに螺合することによってサイドパッキン70Dを固定する。この状態で、サイドパッキン70Dの気密保護片77は補助パッキン70Cの筒状本体71及び気密補助片73に接触しているので、補助パッキン70Cの筒状本体71の気密補助片73とサイドパッキン70Dの気密保護片77とで扉体5Aの下部の気密性の向上が図れる。また、扉体5Aの開閉時における補助パッキン70Cの筒状本体71の変形をサイドパッキン70Dによって抑制することができる。
【0056】
また、第2実施形態においては、補助パッキン70Cの筒状本体71の取付片74は枠材5Aの庫体側片5eの平坦面に沿ってずれパッキン9の長手方向の端部表面に重合され、押え部材であるキャップ部材100を貫通する固定ねじ104を扉体5Aの枠材5Bに螺合することによって、ずれパッキン9と共にパッキン受部材80とキャップ部材100との間に挟持固定されている。
【0057】
なお、第2実施形態において、その他の部分は同じであるので、同一部分には同一符号を付して、説明は省略する。
【0058】
なお、上記実施形態では、サイドパッキン70Dの気密保護片77が補助パッキン70Cの筒状本体71及び気密補助片73にのみ接触する場合について説明したが、サイドパッキン70Dの気密保護片77は少なくとも補助パッキン70Cの筒状本体71の筒状本体71及び気密補助片73に接触すればよい。例えば、補助パッキン70Cの筒状本体71に連接する側部パッキン70Bの筒状本体71及び気密補助片73にサイドパッキン70Dの気密保護片77を接触させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 庫体
2 出入口用開口部
3 案内レール
5,5A 扉体
5b,5B 枠材
5d 嵌合溝
5e 庫体側片
7 吊り車輪
9 ずれパッキン
70B 側部パッキン
70C 補助パッキン
70D サイドパッキン
71 筒状本体
72 係止片
73 気密補助片
74 取付片
75 固定ねじ
76 平坦取付部
77 気密保護片
78 サイドパッキン押え板
78a 取付孔
78b 係止爪
80 パッキン受部材
90 パッキン押え部材
100 キャップ部材(押え部材)
104 固定ねじ(固定部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の庫体の出入口用開口部の上部側に水平に配設される案内レールと、上記出入口用開口部を開閉する扉体と、この扉体の上部に装着されて、上記案内レールに転動可能に係合する吊り車輪と、上記扉体の上記庫体側の上端部及び左右側端部に沿設され、庫体壁面に接触する筒状本体を有する上部パッキン及び側部パッキンと、上記扉体の上記庫体側の下端部に垂下状に装着され、床面に接触する帯状のずれパッキンと、を具備するスライド扉装置において、
上記扉体の庫体側面における上記側部パッキンの下端に連なって設けられ、下端が床面に接触する補助パッキンと、
上記扉体の開閉側端部に設けられ、上記庫体の側面及び補助パッキンの開閉端部側面に接触するサイドパッキンと、を具備してなり、
上記補助パッキンは、上記側部パッキンの筒状本体に連なる筒状本体と、この筒状本体から接線方向に延在する取付片とを有し、
上記取付片は、上記ずれパッキンの長手方向の端部に重合され、ずれパッキンの表面に被装されて固定部材によって上記扉体に固定される押え部材にて固定される、
ことを特徴とするスライド扉装置。
【請求項2】
請求項1記載のスライド扉装置において、
側部パッキン及び補助パッキンは、筒状本体の一側に突出する断面L字状の係止片を有し、上記係止片は、上記扉体の辺部を構成する枠材の庫体側片に設けられた嵌合溝内に嵌合される、ことを特徴とするスライド扉装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のスライド扉装置において、
上記側部パッキン及び補助パッキンは、筒状本体の接線方向に延在し、庫体の側面に接触可能な気密補助片を更に具備し、上記補助パッキンにおける筒状本体及び気密補助片は、上記扉体の開閉側端部に固定されるサイドパッキンに設けられた気密保護片の内方側に接触される、ことを特徴とするスライド扉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−17214(P2011−17214A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163599(P2009−163599)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(303013811)日軽パネルシステム株式会社 (47)
【Fターム(参考)】