説明

スラッジ抑制層劣化診断装置

【課題】内燃機関の内部に形成されたスラッジ抑制層の劣化度合いを知る。
【解決手段】本発明に係るスラッジ抑制層劣化診断装置は、内燃機関10の内部の部位の表面にスラッジの生成または付着を抑制するためのスラッジ抑制層74が形成された内燃機関10に適用されるスラッジ抑制層劣化診断装置であって、前記スラッジ抑制層74の内の少なくとも一部のスラッジ抑制層74pを観察可能に前記内燃機関10の外殻構造体20に設けられた窓86と、該窓86の内側からその外側へ向けて、前記スラッジ抑制層の構成材料によって遮断可能な電磁波を照射する電磁波照射手段88とを備え、前記窓86から観察可能な前記少なくとも一部のスラッジ抑制層74pは、前記窓86と前記電磁波照射手段88との間に位置付けられている。好ましくは、前記電磁波は光である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の内部でのスラッジの生成または付着を抑制するためにスラッジ抑制層が形成された内燃機関に適用されるスラッジ抑制層劣化診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用等の内燃機関では、潤滑油であるオイルが循環されていて、このオイルは、使用により劣化して汚れるようになる。オイルの汚れ物質には、いわゆるスラッジがあり、このスラッジが内燃機関の各部に様々な悪影響を与えることが知られている。スラッジは、燃料中に含まれるオレフィンと、ブローバイガスに含まれるNOxやSOxと、水とを主成分とし、これら主成分が熱や酸の力で反応し、スラッジプリカーサやスラッジバインダといった前駆物質を経て生成される。スラッジは視覚的には泥あるいはヘドロ状の物質であり、例えば、これが内燃機関内部の通路に堆積すると該通路を閉塞するといった問題を引き起こす。
【0003】
このスラッジの生成は、内燃機関内部で結露等によって生じる水と、ブローバイガス中に含まれるNOxやSOxとの反応によってできる酸性物質によって促進される。したがって、かかる酸性物質のオイルへの混入は、スラッジの生成を促進し、オイルの劣化を加速すると共に、オイルの潤滑油としての各機能を低下させる。
【0004】
このように、内燃機関のオイルが使用により劣化して汚れると好ましくない事態が生じ得るので、通常、オイルは一定期間ごとまたは一定走行距離ごとに交換される。しかしながら、この交換は、オイルの劣化度合いに基づいて判断された適切な時期に行われる方が経済的により好ましいこと明らかである。
【0005】
例えば、光を用いてガスエンジン油を初めとする潤滑油の劣化を検知する、オイル劣化センサが特許文献1に開示されている。このセンサは、発光部で発光された光を潤滑油に照射し、その透過光を受光部で受光することにより潤滑油による光の吸光度を測定して、潤滑油の劣化を検知するオイル劣化センサであり、このセンサでは波長600nm未満の可視光が用いられる。
【0006】
【特許文献1】特開平5−118987号公報
【特許文献2】特開平9−13066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来、内燃機関におけるオイル自体の劣化抑制を主目的として、潤滑油としてのオイル中に、金属系清浄剤と称される添加剤を直接的に加えて、上記酸性物質を中和・除去することが行われている(例えば特許文献2参照)。その一方で、上記スラッジが発生した場合に、スラッジが、内燃機関内部のオイルが常時行き渡るのではない部位に付着・堆積することが問題となっている。即ち、オイルが常時行き渡る部位であれば、スラッジが発生したとしても、このスラッジがオイルで洗い流されるので付着・堆積が起こりにくい。しかしながら、オイルが常時行き渡るのではない部位であると、そのようなスラッジを洗い流す効果が期待できず、その付着・堆積という問題が起こり得る。
【0008】
そこで、種々検討した結果、本発明者は、オイルが常時行き渡るのではない部位におけるスラッジの生成または付着を抑制するために、内燃機関の内部にスラッジの生成または付着を抑制することを可能にする、例えば炭酸カルシウムといった成分からなるスラッジ抑制層を形成することが有効であることを見出した。しかしながら、こうして形成されたスラッジ抑制層はその効能を発揮する過程で徐々に消耗する。それ故、このスラッジ抑制層の消耗度合いすなわち劣化度合いを知ることは、例えば、オイルの劣化の程度を推し測る上で、指標の一つとなり得る。または、スラッジ抑制層の劣化度合いを知ることで、内燃機関へのスラッジ抑制層の再形成時期を適切に判断することも可能になるので、内燃機関の性能を持続させることさえも可能になり得る。
【0009】
そこで、本発明はかかる点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、内燃機関の内部の部位の表面に形成されたスラッジ抑制層の劣化度合いを知ることにある。
【0010】
なお、上述の特許文献1のセンサでは、オイルそのものの劣化を診断することは可能であるかもしれないが、上記のように設けられたスラッジ抑制層の劣化診断は可能にならない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のスラッジ抑制層劣化診断装置は、内燃機関の内部の部位の表面にスラッジの生成または付着を抑制するためのスラッジ抑制層が形成された内燃機関に適用されるスラッジ抑制層劣化診断装置であって、前記スラッジ抑制層の内の少なくとも一部のスラッジ抑制層を観察可能に前記内燃機関の外殻構造体に設けられた窓と、該窓の内側からその外側へ向けて、前記スラッジ抑制層の構成材料によって遮断可能な電磁波を照射する電磁波照射手段とを備え、前記窓から観察可能な前記少なくとも一部のスラッジ抑制層は、前記窓と前記電磁波照射手段との間に位置付けられていることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、窓から観察可能な前記少なくとも一部のスラッジ抑制層が前記窓と前記電磁波照射手段との間に位置付けられるので、スラッジ抑制層の消耗すなわち劣化に伴って窓を透過する電磁波照射手段からの電磁波の量が変化する。したがって、この電磁波の量に基づいて、適切にスラッジ抑制層の劣化を診断して、その劣化度合いを知ることが可能になる。
【0013】
そして、前記窓の内面に直接的に前記少なくとも一部のスラッジ抑制層が形成されているとよい。こうすることで、窓が汚れてしまったがために、前記少なくとも一部のスラッジ抑制層を観察できなくなるということが生じることを防ぐことが可能になる。
【0014】
さらに、前記窓の外側に、前記電磁波照射手段からの電磁波を検知するための電磁波検知手段が設けられているとなおよい。こうすることで、スラッジ抑制層の劣化度合いに対応する、窓を透過した電磁波の量をより適切に知ることが可能になる。
【0015】
特に好ましくは、上記スラッジ抑制層劣化診断装置における、前記電磁波は光である。この場合、電磁波照射手段として、ライトなどの種々の既知の光照射手段を用いることができる。一態様としては、前記電磁波照射手段は光ファイバを含んで構成され得る。この場合、光ファイバを介して内燃機関外部の光を内燃機関内部に取り込むようにすることが可能であり、また、電磁波としての光の取込経路や照射経路の設計の自由度を高めることが可能になる。
【0016】
具体的には、前記電磁波照射手段が光ファイバを含んで構成されている場合、前記電磁波照射手段は、車両のヘッドライトの光の一部を前記光ファイバ内に取り込むように構成されているとよい。こうすることで、ヘッドライトを光源として用いることができる。これに加えてあるいはこれとは別に、前記電磁波照射手段が光ファイバを含んで構成されている場合、前記電磁波照射手段は、外光を前記光ファイバ内に取り込むように構成されているとよい。こうすることで、自然光といった外光を窓に向かって照射することが可能になる。
【0017】
さらに、好ましくは、前記窓から観察可能な前記少なくとも一部のスラッジ抑制層に、異なる厚みを有する複数の部分が含まれているとよく、具体的には、前記少なくとも一部のスラッジ抑制層の厚みは、その一端部側からその他端部側へ至るにつれて、徐々に変わるとよい。こうすることで、窓を透過する電磁波の量に基づいて、スラッジ抑制層にどの程度の劣化が生じているのかをより適切に知ることが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、内燃機関の内部の部位の表面に形成されたスラッジ抑制層の劣化度合いを知ることができるという、優れた効果が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。まず、第1実施形態について説明する。
【0020】
図1には本発明が適用される内燃機関、特にそのブローバイガス環流装置が示されている。図示されるように、エンジン(内燃機関)10はシリンダブロック12と、ピストン14と、クランクケース16と、シリンダヘッド18と、シリンダヘッド18を上方から覆うヘッドカバー20と、オイルパン22とを備える。なお、本明細書において、シリンダブロック12と、クランクケース16と、シリンダヘッド18と、ヘッドカバー20と、オイルパン22とは、エンジン10の内部領域を定める外殻構造体であり、ここでいうところの外殻構造体には、後述するチェーンカバーも含まれる。
【0021】
ブローバイガスとは、ピストンリングと、シリンダブロック12のシリンダボアとの隙間からクランクケース16内へ漏れ出るガスのことである。このブローバイガスは多量の炭化水素や水分を含む。このため、ブローバイガスがあまりに多いとエンジンオイルの早期劣化やエンジン内部の錆の原因になる。また、炭化水素が含まれているため、ブローバイガスをこのまま大気に解放することは環境上好ましくない。そのため、ブローバイガスは、吸気負圧を利用して後述の経路を通じて強制的に吸気系統へ戻される。なおエンジンの軽負荷時におけるブローバイガスおよび新気の流れを矢印で示す。
【0022】
吸気通路24にはスロットルバルブ26が設けられ、スロットルバルブ26の下流側の吸気通路24dと、ヘッドカバー20内とはPCV通路28によって連通されている。ここでPCVとはPositive Crankcase Ventilationの略称である。また、スロットルバルブ26の上流側の吸気通路24uと、ヘッドカバー20内とは大気通路30によって連通されている。PCV通路28にはこれを開閉するPCVバルブ32が設けられる。PCVバルブ32は吸気負圧の大きさに応じて開閉し、流量を変えるものであり、ここではヘッドカバー20に固設されている。
【0023】
シリンダブロック12とシリンダヘッド18とには、ヘッドカバー20内とクランクケース16内とを連通するオイル落とし通路34が設けられている。ここでのオイル落とし通路34は、動弁系の潤滑を終えてシリンダヘッド18上に滞留したオイルをオイルパン22へ向けて落とすための通路であると同時に、クランクケース16内のブローバイガスをヘッドカバー20内に向けて上昇移動させるための通路である。クランクケース16からヘッドカバー20に向かって上昇移動するブローバイガスには、クランクケース16内のオイルの攪拌、蒸発によって生成されたオイルミストが含まれる。
【0024】
図示されるように、エンジンの軽負荷時には、PCVバルブ32が開かれ、クランクケース16内のブローバイガスはオイル落とし通路34、ヘッドカバー20内、PCV通路28を順に通じて吸気通路24dに戻され、その後シリンダブロック12内の燃焼室で燃焼される。一方このときヘッドカバー20内には大気通路30を通じて大気が導入され、この大気はヘッドカバー20内のブローバイガスを適宜希釈する。
【0025】
他方、図示しないが、エンジンの高負荷時には、スロットルバルブ26が所定開度以上に開かれてPCVバルブ32が閉じられるので、ヘッドカバー20内のブローバイガスは大気通路30を通じて吸気通路24に戻される。
【0026】
このようにクランクケース16内のブローバイガスは、ヘッドカバー20内に導入された後、吸気通路24に戻されて燃焼される。ブローバイガスは、燃料成分であるHC(炭化水素)、既燃焼ガスに含まれるNOxおよびSOx、水分のほか、クランクケース16内のオイルの攪拌、蒸発によって生成された気体としてのオイルミストを含んでいる。このため、単にブローバイガスを吸気側に環流させるだけだとオイルも同時に燃焼されてしまい、オイルの消費量が多くなると同時に、オイル燃焼による白煙が生じて問題となる。
【0027】
そこで、ヘッドカバー20内には、詳細は後述するが、ブローバイガスからオイルを分離するためのオイルセパレータ室が区画形成されている。このオイルセパレータ室により、ブローバイガスを吸気系に戻す前にオイルを分離して回収することができ、上記問題を解決することができる。
【0028】
図2にエンジン10の外観を示す。図示されるように、エンジン10のクランク軸方向の一端部において、吸気側および排気側の二本のカムシャフト36I,36Eがタイミングチェーン38を介してクランク軸(図示せず)によって回転駆動される。そして、タイミングチェーン38は、シリンダブロック12に設けられたオイルジェット40から噴出されるオイルによって給油される。タイミングチェーン38はチェーンカバー42によって側方から覆われ、チェーンカバー42は、シリンダブロック12およびクランクケース16に締結される。チェーンカバー42の上端面にはヘッドカバー20が一部締結され、チェーンカバー42の下端面にはオイルパン22が一部締結される。これによりチェーンカバー42内には外部と仕切られた空間が形成される。
【0029】
ヘッドカバー20は、その長手方向に沿って設けられた気筒数(ここでは4気筒)と同数のプラグ穴44と、図示しないキャップによって開放可能に閉止される給油口46とを有する。また、ヘッドカバー20には、前述のPCVバルブ32が取り付けられると共に、大気通路30をなす配管が接続される管継手48が取り付けられる。
【0030】
図3に、ヘッドカバー20を裏側から見たときの斜視図が示されている。図示されるように、ヘッドカバー20の裏側上部には、前述のオイルセパレータ室を区画形成するための二つの溝50A,50Bが設けられている。これら溝50A,50Bは、ヘッドカバー20の長手方向Lに伸長されると共に、プラグ穴44を間に挟んで幅方向Wの一方側と他方側とに設けられている。以下、幅方向Wにおける一方の溝50Aが設けられる側を「前」、他方の溝50Bが設けられる側を「後」とする。これら方向は、エンジン10が図2に示されるように車両に横置きされた場合の車両の前後方向に対応する。
【0031】
これら前後の溝50A,50Bは、図4に示されるような略長方形の二つのバッフルプレート52A,52Bによってそれぞれ閉止される。これにより、ヘッドカバー20の前部には、溝50Aとバッフルプレート52Aとによって区画される一つのオイルセパレータ室54Aが形成され、またヘッドカバー20の後部には、溝50Bとバッフルプレート52Bとによって区画される一つのオイルセパレータ室54Bが形成されることとなる。これら前後のオイルセパレータ室54A,54Bは別個独立である。
【0032】
バッフルプレート52A,52Bは、図示状態から上下左右に反転され、それら周縁部が、ヘッドカバー20の溝50A,50Bの周縁部に形成された四角枠状の接合面56A,56Bに接合された後、溶接、ボルト止め等の締結手段によりヘッドカバー20に固定される。接合面56A,56Bに設けられた位置決めピン58A,58Bと、バッフルプレート52A,52Bに設けられた位置決め穴60A,60Bとが、両者の位置合わせに使用される。こうして出来たオイルセパレータ室54A,54Bは後述するガス出入口の部分を除いて基本的に閉じた空間である。
【0033】
ヘッドカバー20において、溝50A,50Bの底面(あるいは上面)には、そこから起立する複数のじゃま板62A,62Bが長手方向に所定間隔で一体に設けられ、他方、バッフルプレート52A,52Bの上面(あるいは底面)にも、そこから起立する複数のじゃま板64A,64Bが長手方向に所定間隔で設けられる。図5を参照して、これら上下のじゃま板62A,62Bおよび64A,64Bは、バッフルプレート52A,52Bが組み付けられたときに長手方向Lに交互に配置され、その長手方向Lにブローバイガスが流れるときの蛇行状の通路を画成する。これによって、オイルセパレータ室54A,54Bの長手方向にブローバイガスが流れるとき、ブローバイガスは屈曲されつつ流されることになり、これによってブローバイガスからのオイルの分離が促進される。なお、オイルセパレータ室の通路構造については様々なものが知られており、このような上下に蛇行する構造の他、左右に蛇行する構造、両者を組み合わせた構造、より複雑な迷路構造などがある。いずれの通路構造も採用され得る。
【0034】
図3に示すように、前部のオイルセパレータ室54Aに関しては、溝50Aの右端面に大気導入口66Aが形成され、この大気導入口66Aが前記管継手48に接続されて大気の取り入れ口となる。また、図4に示すように、前部バッフルプレート52Aの取付状態における左端部(図4では右端部)に大気の出口穴68Aが形成される。
【0035】
よって、ヘッドカバー20内に大気を導入するときは、図3、図4に白抜き矢印で示されるように、大気がまず大気導入口66Aから前部オイルセパレータ室54A内に入り、前部オイルセパレータ室54A内を図中右から左へと流れ、出口穴68Aから室外に流出される。また、エンジン高負荷時において、ブローバイガスが前部オイルセパレータ室54Aを通過して吸気側に戻されるときは、流れ方向が逆となり、ブローバイガスが出口穴68Aからオイルセパレータ室54A内に入って図中左から右へと流れ、このときブローバイガスからオイルが分離される。オイル分離後のブローバイガスは大気導入口66Aから大気通路30へと流出され、分離されたオイルは出口穴68Aから落とされる。
【0036】
他方、後部のオイルセパレータ室54Bに関しては、図4に示すように、バッフルプレート52Bの取付状態における右端部(図4では左端部)に、ブローバイガスの入口溝66Bが形成される。この入口溝66Bは、オイルセパレータ室54Bに溜まったオイルの落とし穴を兼用する。また、図3に示すように、溝50Bの左端部に後方に向かうブローバイガスの出口穴68Bが形成され、この出口穴68Bが前記PCVバルブ32に接続される。
【0037】
よって、ブローバイガスが吸気側に戻されるときは、図3、図4に黒塗り矢印で示されるように、ブローバイガスが入口溝66Bから後部オイルセパレータ室54B内に入って室内を右から左へと流れ、このときブローバイガスからオイルが分離される。オイル分離後のブローバイガスは出口穴68BからPCV通路28へと流出され、分離されたオイルは入口溝66Bから落とされる。
【0038】
ところで、かかるオイルセパレータ室54A,54Bは、ブローバイガスに含まれる気体としてのオイルミストが存在し、かつ、その内壁にオイルミストが接触される部位ではあるものの、オイルが常時行き渡る部位ではなく、言い換えればオイルが積極的に流されるような部位ではない。したがって、オイルセパレータ室54A,54Bの内面にはスラッジが生成・付着・堆積しやすい。
【0039】
より詳しく述べると、ブローバイガス中に含まれるNOxやSOxと、結露等によって生じる水との反応によってできる酸性物質が、スラッジ生成を促す。一方、オイルセパレータ室54A,54B内のブローバイガスにはNOxやSOxが含まれており、また、ヘッドカバー20がエンジンからの熱を伝達されづらくかつ外面が外気に晒されて冷却風等によって冷却されるので、ヘッドカバー20の内面には結露等による凝縮水が生じやすい。よって、オイルセパレータ室54A,54B内では酸性物質ができやすく、この結果スラッジが発生しやすくなってその付着・堆積が起きやすい。しかも、オイルが積極的に流されるような部位ではないので発生したスラッジを洗い流す効果も期待できない。
【0040】
オイルセパレータ室54A,54Bの内面にスラッジが付着・堆積すると、その室内に形成されたブローバイガス通路が半ば閉塞状態となり、オイル分離性能が低下する結果、ブローバイガス中のオイルミストが多量に吸気側に戻されてしまってオイル消費量増加やオイル燃焼による白煙発生などの不具合をもたらす。
【0041】
そこで、本第1実施形態では、オイルセパレータ室54A,54Bのような基本的にオイルの行き渡らない部位において、スラッジの生成または付着を抑制するため、当該部位の表面にスラッジ抑制層を形成することとしている。スラッジ抑制層を図3および図4にドット部分で示す。なお、図3および図4にドット部分で示されたスラッジ抑制層は、エンジン10の内部の部位の表面に形成されている。
【0042】
スラッジ抑制層は、好ましくは固体のアルカリ性物質からなり、このアルカリ性物質としてここでは主として炭酸カルシウム(CaCO3)が用いられる。例えば後部のオイルセパレータ室54Bにおいて、スラッジ抑制層74Bは、ヘッドカバー20の内面となる溝50Bの底面と、バッフルプレート52Bの上面とに形成され、即ち、図5にも示されるように、オイルセパレータ室54B内の上面(天井面)76Bと下面(床面)78Bとに形成される。なお、スラッジ抑制層は、炭酸カルシウム成分を含む溶液をヘッドカバー20の内表面などに塗布して乾燥させることで形成されているが、種々の方法を用いて形成され得る。
【0043】
本第1実施形態において、スラッジ抑制層74Bはオイルセパレータ室54B内の上面76Bおよび下面78Bの全面に設けられるが、部分的に設けられてもよい。スラッジ抑制層74Bを設けると、その厚み分だけ室内の通路面積が減少するので、本第1実施形態では、その通路面積減少をできるだけ少なくするため、じゃま板62B,64Bにはスラッジ抑制層74Bが形成されていない。ただし、そこに、これを形成するのは任意である。なお、図4に示されるように、バッフルプレート52Bの上面のうち、ヘッドカバー20の接合面56Bと接合される周縁部には、スラッジ抑制層74Bは設けられていない。
【0044】
オイルセパレータ室54Bの上面76Bは、外気に晒されるヘッドカバー外面の裏面若しくは内面であることから、図5に仮想線で示されるように、結露による水Mが生じやすく、また、その水Mは下面78Bに滴下しやすい。よって上面76Bと下面78Bとでは水MとNOx、SOxとの反応による酸性物質ができやすいが、ここではそれら上面76Bおよび下面78Bにスラッジ抑制層74Aを形成するので、そこに生成された酸性物質を効果的に中和し、スラッジの発生・付着を抑制できる。
【0045】
他方、前部のオイルセパレータ室54Aについても同様の構成がなされており、スラッジ抑制層74Aが、オイルセパレータ室54Aの上面(天井面)76Aと下面(床面)78Aとにのみ、全面に亘って形成される。
【0046】
このように、オイルが常時行き渡るのではなくかつオイルミストが接触されるオイルセパレータ室54A,54Bの内面に、アルカリ性物質からなるスラッジ抑制層74A,74Bを設けると、生成された酸性物質をアルカリ性物質と反応させて中和させることができる。したがってこれにより、スラッジ生成を促進させる酸性物質の除去が可能となり、これを以てスラッジの発生を抑制し、その付着・堆積を抑制することができる。
【0047】
また、生成された酸性物質を中和除去するので、この酸性物質がオイル中に溶け込んでオイルを劣化させるのを同時に抑制できる。
【0048】
なお、本第1実施形態では図3に示されるように、前後のオイルセパレータ室54A、54B以外のヘッドカバー20の内面にも、スラッジ抑制層74Cが形成されている。ヘッドカバー20はその全体が冷却されやすいので、本第1実施形態の如くオイルセパレータ室54A,54B以外のヘッドカバー20の内面にスラッジ抑制層74Cを形成することは好ましい。以下、スラッジ抑制層74A、74B、74Cをまとめて、符号「74」で指し得る。
【0049】
さらに、図1に示されているように、エンジン10の内部空間を定める外殻構造体の一つであるヘッドカバー20に窓86が設けられている。そして、エンジン10の内部から窓86に向かって光を照射するように、光照射手段としてのライト88が設けられている。さらに、窓86を挟んでこのライト88に対向するように、光検知センサ90が設けられている。これらの関係を概略的に表した部分拡大図が図6に示されている。
【0050】
なお、ライト88の制御等は、後述するように、ECU92により行われる。ECU92は、CPU、ROM、RAM、A/D変換器、入力インタフェース、出力インタフェース等を含むマイクロコンピュータで構成されている。入力インタフェースには、ここでは詳細を記さないが、前記光検知センサ90のみならず、エンジン回転速度やエンジン負荷等を検出可能にする各種センサ類が電気的に接続されている。これら各種センサ類からの出力信号(検出信号)に基づき、予め設定されたプログラムにしたがって円滑なエンジン10の運転ないし作動がなされるように、ECU92は出力インタフェースから電気的に燃料噴射弁等に作動信号(駆動信号)を出力すると共に、ECU92はライト88や警告灯94を点灯させるために作動信号を出力する。
【0051】
窓86は、ここでは透明な耐熱性ガラスから構成されている。具体的には、窓86の両面に何も付着等していない状態では、窓86は、外部からエンジン10の内部を肉眼により視認可能な程度の透明性を有している。エンジン10の内部である窓86の内面には、上記スラッジ抑制層74Cの一部のスラッジ抑制層74pが直接的に形成されている。ここでは、当初は、このスラッジ抑制層74pにより窓86の内面全体が覆われている(図6(a)参照)。スラッジ抑制層74Cは、他の箇所に設けられたスラッジ抑制層74A、74Bと同じ材料から構成されているのみならず、同じ厚さに形成されている。しかしながら、その内のスラッジ抑制層74pは、他の部分のスラッジ抑制層とは異なり、異なる厚みの部分を複数有するように、傾斜面Sを有して構成されている。具体的には、スラッジ抑制層74pは、図1、3、および6(a)から明らかなように、その一端部側から他端部側にかけてすなわち窓86の一端部側から他端部側にかけて、概略的に、その厚みが徐々に変化するように形成されている。
【0052】
窓86から観察可能なスラッジ抑制層74pは、窓86と電磁波照射手段の一態様としてのライト88との間に位置付けられている。ライト88は、エンジン10の内部にその照射部を備え、ECU92からの制御信号により作動され、エンジン10が作動状態にあるときに点灯される。例えば、ECU92は、エンジン10の始動および停止を、ユーザによって機関始動時にオン、機関停止時にオフされるエンジンスイッチ(不図示)からの電気信号に基づいて判断して、ライト88の点灯制御を行う。なお、ライト88は、窓86の全面に向けて光を照射するように構成されている。このように、本第1実施形態では、電磁波として光、より具体的には可視光線が用いられ、ライト88とライト88の制御を行うECU92の一部とを含んで光照射手段すなわち電磁波照射手段は構成されている。
【0053】
窓86の外側、すなわちヘッドカバー20の外側に実質的に配置された光検知センサ90は、窓86の外面に直接的に接するように設けられている。また、光検知センサ90は、窓86を通してエンジン10内部から外部に透過された光を適切に検知するように、光を集める集光部と、この集光部により集められた光の強度を検知する検知部とを備えている。検知部から出力される、光の強度に相当する電気信号はECU92に送られる。したがって、ECU92は、窓86を透過した光の量、ここではその強度を知ることができる。なお、ここでは、光検知センサ90とECU92の一部とを含んで電磁波検知手段は構成されている。
【0054】
スラッジ抑制層74はオイルミストと接触する面から劣化し、徐々に薄くなる。そして、スラッジ抑制層74pに関しては、図6(b)に示すように、その劣化が進むと窓86内面上に形成されたスラッジ抑制層74pが徐々に消耗して当初厚さの薄い部分から先にその厚みが「0」になる結果、スラッジ抑制層74pの劣化度合いが高くなればなるほどその窓86を透過する光の量が多くなる。つまり、当初はスラッジ抑制層74pにより遮断されるが故に、窓86を介して外部に透過されなかったライト88の光が、スラッジ抑制層74pが劣化することに伴い、窓86を透過するようになる。要するに、上記の如く、窓86上のスラッジ抑制層74pの厚さが一端部側から他端部側へ変化するようにスラッジ抑制層74pは形成されていることに鑑みると、窓86を透過した光の強度を検知してそれを用いることで、ECU92は、スラッジ抑制層74pの劣化を診断してその劣化度合いを知ることができる。
【0055】
ここでは、ECU92は、エンジン10の始動から停止まで、ライト88を点灯させ続ける。その状態で、スラッジ抑制層74pの厚さが減少すればするほど、光検知センサ90を用いてECU92によって検知される光量すなわち光の強度は増す。そして、ECU92は、検知した光の強度が、予めECU92内のROMに記憶しておいた所定強度値を超えたか否かを判定する。ここでは、この判定は、ECU90がオイル交換時期あるいはスラッジ抑制層74の再塗布の時期を判断することに対応する。
【0056】
ここでは所定強度値としては複数の値が予め設定されている。そして、それらの大部分は、オイル交換時期に対応するスラッジ抑制層74の劣化度合いに相当する光の強度値である。例えば、スラッジ抑制層が10分の1劣化したことに相当する光の強度値が予め実験により求められてROMに記憶されている。そして、このような所定強度値を検知した光の強度が超えると、ECU92は運転席のフロントパネルに設けられた警告灯94を点灯させる。これにより、運転者等は、自動的に、エンジン10の内部に形成されたスラッジ抑制層74の劣化度合いすなわちその消耗度合いを適切に知ると共に、オイル交換時期を的確に知ることが可能になる。
【0057】
さらに、例えば、スラッジ抑制層が概ね劣化したとき、具体的には10分の9が劣化したときには、スラッジ抑制層の再形成を促すべく、警告灯94が点灯される、あるいは点滅される。これにより、運転者等は、スラッジ抑制層74の劣化度合いを的確に知って、スラッジ抑制層74の再形成を行うための処置をとることができる。したがって、エンジン10の性能を維持することが可能になる。
【0058】
ただし、ECU92は、検知した光の強度に基づいて、予め光の強度とスラッジ抑制層の劣化度合いとを関係付けてROMに記憶しておいたデータを検索することで、スラッジ抑制層の劣化度合いを検知することも可能である。この場合には、ECU92は、スラッジ抑制層の劣化度合いそのものを表す数値を、運転席のフロントパネル等に設けられ得る表示部に表示するようにしてもよい。こうすることで、この表示を見た運転者や車両整備車等は、スラッジ抑制層の劣化度合いを的確に知ることが可能になる。
【0059】
また、上記のように、窓86の内面上に直接的にスラッジ抑制層74Cの一部が位置するようにスラッジ抑制層74pを設けているので、窓86に油分が付着してスラッジ抑制層74pの劣化度合いを観察できなくなることがなく、的確にかつ容易にスラッジ抑制層74pの劣化度合いを知ることが可能になる。
【0060】
なお、窓86の内面上に設けられるスラッジ抑制層74pは種々の厚さを有すると共に種々の形状に形成され得る。例えば、スラッジ抑制層74pは平板形状に形成されてもよい。
【0061】
次に、本発明の第2実施形態に関して説明する。第2実施形態の構成は、上記第1実施形態の構成と比べると、主として、電磁波照射手段の構成の点で異なる。これ以外の点では、上記第1実施形態の構成と第2実施形態の構成とは概ね同じであるので、以下ではその相違点のみ説明して重複する説明を省略する。なお、以下の説明では、上記した構成要素と同じあるいは同様のものには同じ符号を付す。ただし、本第2実施形態でも、上記第1実施形態と同様の変更や修正が可能である。
【0062】
本発明の第2実施形態に係るエンジンの概略断面図を図7に示すと共に、第2実施形態の窓86周囲の概略的な部分拡大図を図8に示す。なお、図8は、第1実施形態の図6(a)に相当する。
【0063】
第2実施形態でも、上記第1実施形態と同様に、電磁波として光が用いられる。しかしながら、光としては、夜間などに車外を照らすヘッドライトの光および外光が用いられるので、ここでの光照射手段188は固有の発光部材や電力源を有さない。本第2実施形態の光照射手段188は、光ファイバ190を含んで構成される。なお、図示された光ファイバ190は一束の光ファイバを表しているが、1本の光ファイバから構成されてもよい。
【0064】
光ファイバ190は、エンジン10の内部と外部との間に延びている。光ファイバ190の一端部190aはヘッドライト192の内部に延びていて、特に、その端面はヘッドライトのリフレクター192rに面して設けられている(図1参照)。したがって、ヘッドライト192点灯時には、ヘッドライト192の光が光ファイバ内に取り込まれて、エンジン10の内部に導かれる。他方、ヘッドライト192消灯時には、例えば昼間には、ヘッドライト192内に注ぎ込んでそのリフレクター192rにより反射された外光が光ファイバ190内に取り込まれて、エンジン10の内部に導かれる。なお、ヘッドライト192は、運転者のスイッチ操作に基づいて、あるいは、自動的に、ECU92からの制御信号により点灯される。
【0065】
光ファイバ190の他端部190bはエンジン10の内部にまで延びていて、その他端部190bの端面が窓86に向かうように光ファイバ190は設けられている。したがって、上記の如く、光ファイバ190内に取り込まれた光は、窓86の内面に向けて照射される。特に、ここでは、一束の光ファイバ190を構成する複数の光ファイバの各々の端面は個別に所定方向に向けられているので、一束の光ファイバ190は、窓86の内面の全体に向けて概ね均一な光を照射することを可能にする。このように照射された光は、窓86の内面に形成されたスラッジ抑制層74pの劣化度合いに応じた分、窓86を透過する。
【0066】
そして、窓86を透過した光の強度は、光検知センサ90を用いて、上記の如く検知される。したがって、上記第1実施形態の如く、ECU92は、適切に、スラッジ抑制層74p、74の劣化度合いを知ることが可能になり、また運転者等も警告灯94をみることなどによりこれを知ることが可能になる。
【0067】
なお、図7、8に概念的に表すように、光ファイバ190をエンジン10の内側と外側との間に延びるように設けるべく、ヘッドカバー20には接続部材194が設けられている。この接続部材194は、エンジン10の内部を外部から完全に隔てるように構成されている。ただし、光ファイバ190は例えば2つの束から構成されてもよい。この場合、接続部材はエンジン10の内外を隔てる透明な部材すなわち上記窓86の如き部材を備えて構成され、この部材を挟んで対向するように光ファイバの一方の束がエンジン10の外部にそしてその他方の束がエンジン10の内部に配置され得る。こうすることでも、上記したのと同様に、エンジン10の内部に光を取り込んで、窓86の内面に向けてそれを照射することが可能になる。
【0068】
以上、本発明を上記2つの実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されない。上記の如きスラッジ抑制層の劣化診断は、例えば、走行距離が100kmを超えるごとになど、所定の時期にのみ行われるようにしてもよい。
【0069】
また、例えば、窓は、エンジンの外殻構造体であれば他の部位に設けられてもよい。具体的には、ヘッドカバーの一部であるオイルセパレータ室の上面やチェーンカバーに窓が設けられてもよい。なお、上記両実施形態では、窓の内面に直接的にスラッジ抑制層を設けたが、スラッジ抑制層が窓から離れて配置されることを本発明は排除しない。ただし、窓を透過する光量、光の強度を適切に観察可能にするために、窓を通じて観察されるスラッジ抑制層は窓内面に直接的に形成されるのが好ましい。なお、窓は、ガラス材料から形成されることに限定されず、透明か半透明かを問わず、プラスチック材料(合成樹脂材料)からも形成され得る。
【0070】
ただし、電磁波照射手段や電磁波検知手段も、上記両実施形態に限定されず、他の位置に、窓の位置に応じた適切な位置に配置され得る。なお、電磁波照射手段における電磁波は、可視光線以外の他の電磁波であり得るが、スラッジ抑制層の構成材料によって遮断可能なものである必要がある。そして、電磁波照射手段の照射部は、LED等、種々の部材により構成され得る。
【0071】
また、スラッジ抑制層はエンジン10の他の部位の内表面に形成され得る。具体的には、スラッジ抑制層は、上記両実施形態の如き場所の他、オイルセパレータ室の上面のみあるいは下面のみ、チェーンカバーの内面などに形成され得る。また、本発明では、エンジンにオイルセパレータは設けられていなくてもよく、その場合にはヘッドカバーの内面に単独でスラッジ抑制層が形成されてもよい。また、オイルセパレータ室の設置位置は特に限定されず、特にオイルセパレータ室が外気に晒される外面を有する場合は、その外面の裏側に位置するオイルセパレータ室の内面に、スラッジ抑制層を形成するのが好ましい。
【0072】
なお、上記ではスラッジ抑制層を主として炭酸カルシウムから構成されるとしたが、本発明は、スラッジ抑制層が他のアルカリ性物質やアルカリ性物質以外の物質から主として構成されることを排除するものではない。スラッジの生成または付着を抑制する効果を奏する物質であれば、如何なる物質からもスラッジ抑制層は形成され得る。
【0073】
本発明の実施形態は前述の2つの実施形態や変形例のみに限られず、特許請求の範囲に
よって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に
含まれる。したがって本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲
内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施形態に係る内燃機関の概略断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る内燃機関の部分組立斜視図である。
【図3】ヘッドカバーを下方裏側から見たときの斜視図である。
【図4】バッフルプレートを上方から見たときの斜視図である。
【図5】オイルセパレータ室を示す部分断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態における、ヘッドカバーに設けられた窓周囲の概念的な部分拡大図であり、(a)は当初段階での状態を、(b)はある程度スラッジ抑制層が劣化した段階での状態を表している。
【図7】本発明の第2実施形態に係る内燃機関の概略断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態における、ヘッドカバーに設けられた窓周囲の概念的な部分拡大図であり、当初段階での状態を表している。
【符号の説明】
【0075】
10 エンジン
12 シリンダブロック
16 クランクケース
18 シリンダヘッド
20 ヘッドカバー
22 オイルパン
24 吸気通路
26 スロットルバルブ
28 PCV通路
30 大気通路
32 PCVバルブ
34 オイル落とし通路
42 チェーンカバー
54A、54B オイルセパレータ室
74、74A、74B、74C、74p スラッジ抑制層
86 窓
88 ライト
90 光検知センサ
190 光ファイバ
192 ヘッドライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の内部の部位の表面にスラッジの生成または付着を抑制するためのスラッジ抑制層が形成された内燃機関に適用されるスラッジ抑制層劣化診断装置であって、
前記スラッジ抑制層の内の少なくとも一部のスラッジ抑制層を観察可能に前記内燃機関の外殻構造体に設けられた窓と、
該窓の内側からその外側へ向けて、前記スラッジ抑制層の構成材料によって遮断可能な電磁波を照射する電磁波照射手段と
を備え、
前記窓から観察可能な前記少なくとも一部のスラッジ抑制層は、前記窓と前記電磁波照射手段との間に位置付けられていることを特徴とするスラッジ抑制層劣化診断装置。
【請求項2】
前記窓の内面に直接的に前記少なくとも一部のスラッジ抑制層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスラッジ抑制層劣化診断装置。
【請求項3】
前記窓の外側に、前記電磁波照射手段からの電磁波を検知するための電磁波検知手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のスラッジ抑制層劣化診断装置。
【請求項4】
前記電磁波は光であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のスラッジ抑制層劣化診断装置。
【請求項5】
前記電磁波照射手段は光ファイバを含んで構成されていることを特徴とする請求項4に記載のスラッジ抑制層劣化診断装置。
【請求項6】
前記電磁波照射手段は、車両のヘッドライトの光の一部を前記光ファイバ内に取り込むように構成されていることを特徴とする請求項5に記載のスラッジ抑制層劣化診断装置。
【請求項7】
前記電磁波照射手段は、外光を前記光ファイバ内に取り込むように構成されていることを特徴とする請求項5または6に記載のスラッジ抑制層劣化診断装置。
【請求項8】
前記窓から観察可能な前記少なくとも一部のスラッジ抑制層に、異なる厚みを有する複数の部分が含まれていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のスラッジ抑制層劣化診断装置。
【請求項9】
前記少なくとも一部のスラッジ抑制層の厚みは、その一端部側からその他端部側へ至るにつれて、徐々に変わることを特徴とする請求項8に記載のスラッジ抑制層劣化診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−150227(P2009−150227A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326258(P2007−326258)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】