説明

スリーブホルダ

【課題】配管孔から鉄筋までのコンクリートのかぶり厚さを十分確保でき、スリーブホルダに接するコンクリートが剥れたり割れたりせず、スリーブの位置調整が簡単であり、スリーブや鉄筋の直径の変更に対応できると共に、スリーブを鉄筋に対して簡単かつ強固に固定して施工の省力化を図ることができるスリーブホルダを提供する。
【解決手段】コンクリート躯体2をその厚さ方向に貫通する配管孔3を形成するためのスリーブ4を、コンクリート躯体2に埋設される鉄筋5に固定可能な合成樹脂製のスリーブホルダ1であって、保持用当接部21、保持用突出部22、及び保持用結束バンド23を有する保持部材11と、固定用当接部31、固定用突出部32、及び複数の固定用結束バンド33を有する固定部材12と、連結部材13と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート躯体をその厚さ方向に貫通する配管孔を形成するためのスリーブを、コンクリート躯体に埋設される鉄筋に固定可能なスリーブホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、鉄筋コンクリート造(RC造)の建物を構成する基礎、梁、壁等のコンクリート躯体においては、配管を挿通するための配管孔が厚さ方向に貫通するように設けられている。
【0003】
この場合、配管孔の形成には、円柱状又は円管状のスリーブ(ボイド)が使用されている。スリーブは、コンクリート躯体の施工に際し、軸方向が、施工されるコンクリート躯体の厚さ方向に対して平行方向となるように、かつ形成される配管孔から鉄筋までのコンクリートのかぶり厚さが十分確保されるように、鉄筋に固定された後、対向するコンクリート型枠の間に保持される。対向するコンクリート型枠の間にコンクリートを打設し、養生及び脱枠の後でコンクリート躯体からスリーブを抜き取れば、その抜き取られた部分が配管孔となっている。
【0004】
スリーブを鉄筋に固定するための従来の技術としては、(1)スリーブを略同心状に保持可能な径の保持環部材と、前記保持環部材から外向きに少なくとも三方へ略等角度状に伸びて鉄筋に止着可能な3つ以上の可撓性取付線部材とからなるスリーブホルダ(例えば、特許文献1参照。)が知られている。
【特許文献1】特開平8−128568号公報(請求項1、図1等)
【0005】
また、(2)本願の出願人が先に出願した特願2006−195612においては、スリーブの外周面に巻き付けられるバンド部材と、前記バンド部材の外周面となる一面に互いに間隔を開けて取り付けられた複数の連結部材とを備えたスリーブホルダが提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記(1)のスリーブホルダにおいては、以下のような問題点がある。
a)可撓性取付線部材の鉄筋への固定が不十分であり、コンクリートの打設によりスリーブの位置がずれるおそれがあるので、配管孔から鉄筋までのコンクリートのかぶり厚さを十分に確保できない。
b)スリーブホルダが鋼材で構成されている場合には、コンクリート躯体に埋め込まれたスリーブホルダに接するコンクリートが、鋼材の酸化に起因する膨張により剥れたり割れたりする。
c)スリーブの位置調整が難しいので、施工効率が良くない。
d)保持環部材の直径を調整できないので、スリーブの直径の変更に対応できない。
【0007】
前記(1)及び(2)のスリーブホルダにおいては、以下のような問題点がある。
e)3つ以上の可撓性取付線部材又は3つ以上の連結部材を用いて3方向以上からスリーブを固定する必要があるので、固定作業が煩雑である。
【0008】
本発明は、以上のような事情や問題点に鑑みてなされたものであり、配管孔から鉄筋までのコンクリートのかぶり厚さを十分確保でき、スリーブホルダに接するコンクリートが剥れたり割れたりせず、スリーブの位置調整が簡単であり、スリーブや鉄筋の直径の変更に対応できると共に、スリーブを鉄筋に対して簡単かつ強固に固定して施工の省力化を図ることができるスリーブホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1の発明は、コンクリート躯体をその厚さ方向に貫通する配管孔を形成するためのスリーブを、前記コンクリート躯体に埋設される鉄筋に固定可能な合成樹脂製のスリーブホルダであって、前記スリーブの外周面に当接するように円弧状に形成された保持用当接部、前記保持用当接部の外周面に突設された保持用突出部、及び前記保持用当接部の外周面に係止された状態で前記保持用当接部を介して前記スリーブの外周面に巻き付けられかつ前記スリーブを前記保持用当接部の内周面に押圧する保持用結束バンドを有する保持部材と、前記鉄筋の外周面に当接するように円弧状に形成された固定用当接部、前記固定用当接部の外周面に突設された固定用突出部、及び互いに間隔を開けて前記固定用当接部の外周面に係止された状態で前記固定用当接部を介して前記鉄筋に巻き付けられかつ前記固定用当接部の内周面を前記鉄筋に押圧する複数の固定用結束バンドを有する固定部材と、前記保持用突出部と前記固定用突出部との間に介在しかつ前記保持用突出部と前記固定用突出部との距離を調節可能な連結部材と、を備えたものである。
【0010】
請求項2の発明は、前記連結部材を、長さ方向に継ぎ足し自在な少なくとも1つの連結ピースで構成したものである。
【0011】
請求項3の発明は、前記連結ピースを、面方向が前記保持用当接部の周方向に対して平行方向となるように板状に形成したものである。
【0012】
請求項4の発明は、前記連結部材を、前記保持用突出部に突設されかつ前記固定用突出部に形成した雌ネジ穴に先端が螺着される雄ネジ部材で構成したものである。
【0013】
請求項5の発明は、前記保持用突出部を、面方向が前記保持用当接部の周方向に対して平行方向となるように板状に形成したものである。
【0014】
請求項6の発明は、前記固定用突出部を、面方向が前記固定用当接部の周方向に対して直角方向となるように板状に形成したものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、以下のような効果がある。
(1)スリーブを鉄筋に対して強固に固定でき、コンクリートの打設によりスリーブの位置がずれるおそれがないので、配管孔から鉄筋までのコンクリートのかぶり厚さを十分に確保することができる。
(2)合成樹脂製であるので、コンクリート躯体に埋め込まれたスリーブホルダに接するコンクリートが、鋼材の酸化に起因する膨張により剥れたり割れたりするおそれがない。
(3)連結部材により保持用突出部と固定用突出部との距離を調節するだけでスリーブの位置調整が可能であるので、施工効率が良い。
(4)保持用結束バンドをスリーブの外周面に巻き付けるので、スリーブの直径の変更に対応することができる。
(5)固定用結束バンドを鉄筋に巻き付けるので、鉄筋の直径の変更に対応することができると共に、多数のリブ及び多数の節を有する異形鉄筋に対しても強固に固定することができる。
(6)1つのスリーブホルダだけで1方向からスリーブを固定でき、固定作業が簡単であるので、施工の省力化を図ることができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、連結ピースの長さ単位で連結部材の長さを増減できるので、連結部材の長さをより簡単に調節することができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、連結ピースに対し、その長さ方向に対して直角その他の角度で交差する方向に荷重がかかる場合であっても、連結ピースがたわみにくい。
【0018】
請求項4の発明によれば、雄ネジ部材を雌ネジ穴に対してねじ込んだり、雌ネジ穴からゆるめたりすることにより、保持用突出部と固定用突出部との距離を無段階に増減できるので、保持用突出部と固定用突出部との距離を所望の大きさに簡単に調節することができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、保持用突出部に対し、その突出方向に対して直角その他の角度で交差する方向に荷重がかかる場合であっても、保持用突出部がたわみにくい。
【0020】
請求項6の発明によれば、固定用突出部に対し、その突出方向に対して直角その他の角度で交差する方向に荷重がかかる場合であっても、固定用突出部がたわみにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
第1実施形態に係るスリーブホルダ1は、図1〜図5に示すように、コンクリート躯体2をその厚さ方向に貫通する配管孔3を形成するためのスリーブ4を、コンクリート躯体2に埋設される鉄筋5に固定可能な合成樹脂製のものであって、保持部材11、固定部材12、及び連結部材13を備えている。
【0022】
配管孔3は、図示しない配管を挿通するためのものであり、図4及び図5に示すように、鉄筋コンクリート造(RC造)の建物を構成する基礎、梁、壁等のコンクリート躯体2にその厚さ方向に貫通するように設けられる。
【0023】
コンクリート躯体2は、鉄筋5を配筋し、面方向が鉄筋5の軸方向に対してそれぞれ平行となりかつ対向するように図示しないコンクリート型枠を建て込み、対向するコンクリート型枠の間にコンクリートを打設し、養生した後、コンクリート型枠を取り外す(脱枠)ことにより施工することができる。
【0024】
配管孔3の形成には、例えば図1及び図2のような円管状のスリーブ(ボイド)4、又は図示しない円柱状のスリーブが使用される。配管孔3は、スリーブ4の外周面4aに沿って形成される。
【0025】
保持部材11、固定部材12、及び連結部材13は、いずれも合成樹脂で構成されている。合成樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
【0026】
保持部材11は、図1〜図3に示すように、保持用当接部21、保持用突出部22、及び保持用結束バンド23を有している。保持用当接部21は、内周面21bがスリーブ4の外周面4aに当接するように円弧状に形成されている。保持用突出部22は、保持用当接部21の外周面21aに突設されている。
【0027】
保持用結束バンド23は、保持用当接部21の外周面21aに係止された状態で保持用当接部21を介してスリーブ4の外周面4aに巻き付けられ、かつスリーブ4を保持用当接部21の内周面21bに押圧するものである。そのため、スリーブホルダ1においては、スリーブ4の直径の変更に対応可能となっている。
【0028】
この保持用結束バンド23は、可撓性バンド部24及び係止部25を有している。係止部25は、可撓性バンド部24の一端24cに設けられている。係止部25には、図示しない挿通孔が形成されていると共に、その挿通孔に面するように係止爪が設けられている。使用時に内周面となる可撓性バンド部24の一面には、図2に示すように、長さ方向に沿って多数の係合爪26が設けられている。可撓性バンド部24は、他端24dから係止部25の挿通孔に挿通される。図1及び図2に示すように、保持用当接部21を介してスリーブ4の外周面4aに巻き付けた状態で可撓性バンド部24を引き締めれば、スリーブ4が保持用当接部21の内周面21bに押圧される。係合爪26は、可撓性バンド部24が引き締められる方向では係止爪に係止されないが、可撓性バンド部24がゆるむ方向では係止爪に係止されるようになっている。そのため、スリーブ4が保持用当接部21の内周面21bに押圧されるまで可撓性バンド部24を引き締めた後においては、可撓性バンド部24による締め付けがゆるむことはない。
【0029】
保持用当接部21の外周面21aの周方向の一端近傍及び他端近傍には、図1〜図3に示すように、挿通孔27を有する挿通部28がそれぞれ形成されている。保持用結束バンド23は、2つの挿通部28の挿通孔27にそれぞれ挿通することにより、保持用当接部21の外周面21aに着脱自在に係止される。
【0030】
なお、保持用結束バンド23は、保持用当接部21と一体成形していてもよい。挿通部28の数は、2つに限定されるものではなく、1つ又は3つ以上であってもよい。また、挿通部28は、保持用当接部21の外周面21aの周方向の一端近傍及び他端近傍以外の適宜の位置に設けることもできる。
【0031】
固定部材12は、固定用当接部31、固定用突出部32、及び2つの固定用結束バンド33を有している。固定用当接部31は、鉄筋5に当接するように円弧状に形成されている。固定用突出部32は、固定用当接部31の外周面31aに突設されている。
【0032】
固定用結束バンド33は、互いに間隔を開けて固定用当接部31の外周面31aに係止された状態で固定用当接部31を介して鉄筋5に巻き付けられ、かつ固定用当接部31の内周面31bを鉄筋5に押圧するものである。そのため、スリーブホルダ1においては、鉄筋5の直径の変更にも対応可能となっている。
【0033】
この固定用結束バンド33は、保持用結束バンド23と同様に構成されており、可撓性バンド部24及び係止部25を有しているが、可撓性バンド部24の長さが保持用結束バンド23のものよりも短く形成されている。固定用結束バンド33の可撓性バンド部24も、他端24dから係止部25の挿通孔に挿通される。そして、固定用当接部31を介して鉄筋5に巻き付けた状態で可撓性バンド部24を引き締めれば、固定用当接部31の内周面31bが鉄筋5に押圧される。この場合も、保持用結束バンド23と同様、固定用当接部31の内周面31bが鉄筋5に押圧されるまで可撓性バンド部24を引き締めた後においては、可撓性バンド部24による締め付けがゆるむことはない。
【0034】
固定用突出部32には、図3に示すように、固定用当接部31の接線方向に貫通する例えば2つの貫通孔37が互いに間隔を開けて形成されている。固定用結束バンド33は、図1及び図2に示すように、貫通孔37に挿通することにより、固定用当接部31の外周面31aに着脱自在に係止される。
【0035】
なお、固定用結束バンド33は、固定用当接部31又は固定用突出部32と一体成形していてもよい。固定用結束バンド33や貫通孔37の数は、2つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。固定用結束バンド33を固定用当接部31の外周面31aに係止する手段は、固定用突出部32に設けた貫通孔37の他、固定用当接部31の外周面31aの適宜の位置に突設された、既述の挿通部28と同様の少なくとも1つの挿通部等であってもよい。この場合、各固定用結束バンド33を2つ以上ずつの挿通部により係止してもよい。
【0036】
保持用結束バンド23や固定用結束バンド33を構成する合成樹脂としては、引張強度が高いポリアミド等が望ましい。このような保持用結束バンド23や固定用結束バンド33としては、「インシュロック・66ナイロンタイプ(商品名)、ホクリツ電機社製」等が例示される。
【0037】
連結部材13は、図1〜図3に示すように、保持用突出部22と固定用突出部32との間に介在しており、保持用突出部22と固定用突出部32との距離を調節可能なものである。この連結部材13は、長さ方向(図3の横方向)に継ぎ足し自在な少なくとも1つ(例えば2つ)の連結ピース41で構成されている。なお、連結ピース41の数は、2つに限定されるものではなく、必要とする保持用突出部22と固定用突出部32との距離に応じて1つ又は3つ以上としてもよい。
【0038】
保持用突出部22の突端面には、図3に示すように、例えば円柱状の凸部42が突設されている。固定用突出部32の突端面には、断面が例えば円状の凹部43が形成されている。連結ピース41の一端面には、保持用突出部22に設けた凸部42と同様の凸部42が突設されている。連結ピース41の他端面には、固定用突出部32に設けた凹部43と同様の凹部43が突設されている。
【0039】
2つの連結ピース41を使用する場合、一方の連結ピース41に設けた凸部42は、固定用突出部32に設けた凹部43に嵌着される。一方の連結ピース41に設けた凹部43には、他方の連結ピース41に設けた凸部42が嵌着される。他方の連結ピース41に設けた凹部43には、固定用突出部32に設けた凸部42が嵌着される。
【0040】
図示しないが、3つ以上の連結ピース41を使用する場合は、上記と同様にして連結ピース41を長さ方向に継ぎ足せばよい。一方、1つの連結ピース41を使用する場合、連結ピース41に設けた凸部42は、固定用突出部32に設けた凹部43に嵌着される。この場合、連結ピース41に設けた凹部43には、固定用突出部32に設けた凸部42が嵌着される。
【0041】
いずれにしても、凸部42と凹部43とは、着脱自在であるが、ある程度の荷重までは離脱しないようにしておくのが望ましい。このように、連結部材13を、長さ方向に継ぎ足し自在な少なくとも1つの連結ピース41で構成しておけば、連結ピース41の長さ単位で連結部材13の長さを増減できるので、連結部材13の長さをより簡単に調節できるという利点がある。
【0042】
次に、上記のように構成されたスリーブホルダ1の使用方法について説明する。
図1及び図2に示すように、配筋された鉄筋5にスリーブホルダ1を用いてスリーブ4を固定するには、まず、(a)必要とする保持用突出部22と固定用突出部32との距離に応じて適当な数(例えば2つ)の連結ピース41からなる連結部材13を既述のようにして保持用突出部22と固定用突出部32との間に介在させておく。
【0043】
次いで、(b)保持用結束バンド23を、2つの挿通部28の挿通孔27に挿通された状態で保持用当接部21を介してスリーブ4の外周面4aに巻き付けることにより、スリーブ4を保持用当接部21の内周面21bに押圧する。これにより、スリーブ4が保持部材11で保持される。
【0044】
そして、(c)2つの固定用結束バンド33を、各貫通孔37にそれぞれ挿通された状態で固定用当接部31を介して鉄筋5に巻き付けることにより、固定用当接部31の内周面31bを鉄筋5に押圧する。これにより、図1〜図5(図4及び図5はスリーブホルダ1を抜き取った後の状態)に示すように、軸方向がコンクリート躯体2の厚さ方向に対して平行方向となるようにかつ配管孔3から鉄筋5までのコンクリートのかぶり厚さが十分確保されるように、スリーブ4がスリーブホルダ1を介して鉄筋5に固定される。
【0045】
なお、上記の操作(a)、(b)、及び(c)は、順序を適宜替えて実行してもよい。また、鉄筋5の軸方向は、水平方向や斜め方向等、鉛直方向以外であってもよい。
【0046】
ここで、図1及び図2に示すように、保持用突出部22を、面方向が保持用当接部21の周方向に対して平行方向となるように板状に形成しておけば、保持用突出部22に対し、その突出方向(図1の横方向、図2の横方向)に対して直角その他の角度で交差する方向に荷重がかかる場合であっても、保持用突出部22がたわみにくいという利点がある。同様に、固定用突出部32を、面方向が固定用当接部31の周方向に対して直角方向となるように板状に形成しておけば、固定用突出部32に対し、その突出方向(図1の横方向、図2の横方向)に対して直角その他の角度で交差する方向に荷重がかかる場合であっても、固定用突出部32がたわみにくいという利点がある。更に同様に、連結ピース41を、面方向が保持用当接部21の周方向に対して平行方向となるように板状に形成しておけば、連結ピース41に対し、その長さ方向(図1の横方向、図2の横方向)に対して直角その他の角度で交差する方向に荷重がかかる場合であっても、連結ピース41がたわみにくいという利点がある。
【0047】
次いで、スリーブ4の長さ方向の両端を挟持しかつ対向するようにコンクリート型枠を建て込み、対向するコンクリート型枠の間にコンクリートを打設し、養生及び脱枠の後でコンクリート躯体2からスリーブ4を抜き取れば、図4及び図5に示すように、その抜き取られた部分が配管孔3となっている。スリーブホルダ1は、コンクリート躯体2に埋め込まれる。
【0048】
このように、スリーブホルダ1によれば、以下のような利点がある。
(1)スリーブ4を鉄筋5に対して強固に固定でき、コンクリートの打設によりスリーブ4の位置がずれるおそれがないので、配管孔3から鉄筋5までのコンクリートのかぶり厚さを十分に確保することができる。
(2)合成樹脂製であるので、コンクリート躯体2に埋め込まれたスリーブホルダ1に接するコンクリートが、鋼材の酸化に起因する膨張により剥れたり割れたりするおそれがない。
(3)連結部材13により保持用突出部22と固定用突出部32との距離を調節するだけでスリーブ4の位置調整が可能であるので、施工効率が良い。
(4)保持用結束バンド23をスリーブ4の外周面4aに巻き付けるので、スリーブ4の直径の変更に対応することができる。
(5)固定用結束バンド33を鉄筋5に巻き付けるので、鉄筋5の直径の変更に対応することができると共に、多数のリブ及び多数の節を有する異形鉄筋に対しても強固に固定することができる。
(6)1つのスリーブホルダ1だけで1方向からスリーブ4を固定でき、固定作業が簡単であるので、施工の省力化を図ることができる。
【0049】
第2実施形態に係るスリーブホルダ51は、図6〜図8に示すように、第1実施形態とほぼ同様であるが、連結部材13の代わりに、雄ネジ部材52で構成された連結部材を用いたものである。
【0050】
保持用突出部22の突端面には、凸部42の代わりに、雄ネジ部材52が突設されている。固定用突出部32の突端面には、凹部43の代わりに、雌ネジ穴53が形成されている。雄ネジ部材52の先端は、雌ネジ穴53に螺着される。そのため、雄ネジ部材52を雌ネジ穴53に対してねじ込んでいけば、保持用突出部22と固定用突出部32との距離を小さくすることができる。一方、雄ネジ部材52を雌ネジ穴53からゆるめていけば、保持用突出部22と固定用突出部32との距離を大きくすることができる。
【0051】
このように、スリーブホルダ51は、第1実施形態とほぼ同様の保持部材11、固定部材12、及び連結部材を備えているので、第1実施形態と同様の利点がある。また、連結部材を雄ネジ部材52で構成しておけば、雄ネジ部材52を雌ネジ穴53に対してねじ込んだり、雌ネジ穴53からゆるめたりすることにより、保持用突出部22と固定用突出部32との距離を無段階に増減できるので、保持用突出部22と固定用突出部32との距離を所望の大きさに簡単に調節できるという利点がある。
【0052】
なお、第1及び第2実施形態においては、図9に示すように、固定部材12の代わりに、固定用結束バンド33を使用せず、固定用突出部32に貫通孔37を形成せず、かつ固定用当接部31の断面形状をC字状として鉄筋5に側方から外嵌可能とした固定部材62を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明に係るスリーブホルダは、配管孔から鉄筋までのコンクリートのかぶり厚さを十分確保し、スリーブホルダに接するコンクリートが剥れたり割れたりしないようにし、スリーブの位置調整を簡単にし、スリーブや鉄筋の直径の変更に対応可能とすると共に、スリーブを鉄筋に対して簡単かつ強固に固定して施工の省力化を図るのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態に係るスリーブホルダを用いてスリーブを鉄筋に固定した状態を示す要部拡大正面図である。
【図2】図1の上方から見た要部拡大平面図である。
【図3】保持用結束バンド及び固定用結束バンドを省略し、かつ保持用当接部及び挿通部を断面で示すスリーブホルダの分解正面図である。
【図4】配管孔を有するコンクリート躯体を施工した状態を示す要部拡大正面図である。
【図5】図1の上方から見た要部拡大断面図である。
【図6】第2実施形態に係るスリーブホルダを用いてスリーブを鉄筋に固定した状態を示す要部拡大正面図である。
【図7】図6の上方から見た要部拡大平面図である。
【図8】保持用結束バンド及び固定用結束バンドを省略し、かつ保持用当接部及び挿通部を断面で示すスリーブホルダの分解正面図である。
【図9】固定用当接部の断面形状をC字状にした固定部材を用いた例を示す要部拡大平面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 スリーブホルダ
2 コンクリート躯体
3 配管孔
4 スリーブ
4a 外周面
5 鉄筋
11 保持部材
12 固定部材
13 連結部材
21 保持用当接部
21a 外周面
21b 内周面
22 保持用突出部
23 保持用結束バンド
31 固定用当接部
31a 外周面
31b 内周面
32 固定用突出部
33 固定用結束バンド
41 連結ピース
51 スリーブホルダ
52 雄ネジ部材(連結部材)
53 雌ネジ穴
62 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート躯体をその厚さ方向に貫通する配管孔を形成するためのスリーブを、前記コンクリート躯体に埋設される鉄筋に固定可能な合成樹脂製のスリーブホルダであって、
前記スリーブの外周面に当接するように円弧状に形成された保持用当接部、前記保持用当接部の外周面に突設された保持用突出部、及び前記保持用当接部の外周面に係止された状態で前記保持用当接部を介して前記スリーブの外周面に巻き付けられかつ前記スリーブを前記保持用当接部の内周面に押圧する保持用結束バンドを有する保持部材と、
前記鉄筋の外周面に当接するように円弧状に形成された固定用当接部、前記固定用当接部の外周面に突設された固定用突出部、及び互いに間隔を開けて前記固定用当接部の外周面に係止された状態で前記固定用当接部を介して前記鉄筋に巻き付けられかつ前記固定用当接部の内周面を前記鉄筋に押圧する複数の固定用結束バンドを有する固定部材と、
前記保持用突出部と前記固定用突出部との間に介在しかつ前記保持用突出部と前記固定用突出部との距離を調節可能な連結部材と、
を備えたことを特徴とするスリーブホルダ。
【請求項2】
前記連結部材を、長さ方向に継ぎ足し自在な少なくとも1つの連結ピースで構成した請求項1記載のスリーブホルダ。
【請求項3】
前記連結ピースを、面方向が前記保持用当接部の周方向に対して平行方向となるように板状に形成した請求項2記載のスリーブホルダ。
【請求項4】
前記連結部材を、前記保持用突出部に突設されかつ前記固定用突出部に形成した雌ネジ穴に先端が螺着される雄ネジ部材で構成した請求項1記載のスリーブホルダ。
【請求項5】
前記保持用突出部を、面方向が前記保持用当接部の周方向に対して平行方向となるように板状に形成した請求項1から4のいずれか記載のスリーブホルダ。
【請求項6】
前記固定用突出部を、面方向が前記固定用当接部の周方向に対して直角方向となるように板状に形成した請求項1から5のいずれか記載のスリーブホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−144823(P2008−144823A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331267(P2006−331267)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】