説明

ズームレンズおよび撮影システム

【課題】 小型軽量で高倍率を有し、かつ高い光学性能を有するズームレンズを実現する。
【解決手段】 変倍中に固定される正の屈折力を有する第1レンズユニットL1は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズサブユニットL1aと、正の屈折力を有する第2レンズサブユニットL1bと、負の屈折力を有する第3レンズサブユニットL1cとを有する。焦点調節に際して、第2レンズサブユニットL1bが移動し、かつ以下の条件を満たす。
−4.0<f1c/f1ab<−0.8,0.1<f1b/f1a<3.0
但し、f1aは第1レンズサブユニットの焦点距離、f1bは第2レンズサブユニットの焦点距離、f1cは第3レンズサブユニットの焦点距離、f1abは第1、第2レンズサブユニットの合成焦点距離である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルスチルカメラ、テレビカメラおよびビデオカメラ等の撮影装置に使用されるズームレンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のようなズームレンズのうち特に望遠タイプの高倍率ズームレンズとして、本発明と同一出願人である特許文献1において、望遠端の画角が2.0度以下で変倍比が5.5〜13.4倍のものが開示されている。
【特許文献1】特開2005−292524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
テレビの自然番組等の撮影において、屋外で動物や鳥などを遠距離から撮影する場合には、高変倍比(例えば、5倍以上の高倍率で、かつ画角が2度以下)であり、高い光学性能を有するズームレンズが要望されている。また、このような撮影においては、カメラを肩に担いで使用する場合も多いため、より小型軽量で携帯性に優れたズームレンズが要望されている。
【0004】
本発明は望遠ズームレンズにおいて、特に第1レンズユニットを適切に規定することにより、望遠端における被写体距離による諸収差の変動を抑制した、小型軽量で高倍率を有し、高い光学性能を有するズームレンズを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために本発明は、
1.物体側から順に、変倍中に固定される正の屈折力を有する第1レンズユニットと、変倍のために移動する第2レンズユニットと、変倍に伴う像面変動を補正するために移動する第3レンズユニットと、変倍中に固定される正の屈折力を有する第4レンズユニットとを有するズームレンズであって、前記第1レンズユニットは、前記物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズサブユニットと、正の屈折力を有する第2レンズサブユニットと、負の屈折力を有する第3レンズサブユニットとを有し、焦点調節に際して、前記第2レンズサブユニットが移動することを特徴とする。
【0006】
2.さらに以下の条件を満たすことを特徴とする。
−4.5<f1c/f1ab<−0.8
0.1<f1b/f1a<3.0
但し、f1aは前記第1レンズサブユニットの焦点距離、f1bは前記第2レンズサブユニットの焦点距離、f1cは前記第3レンズサブユニットの焦点距離、f1abは第1、第2レンズサブユニットの被写体距離無限遠時における合成焦点距離である。
【0007】
3.前記第2レンズサブユニットは、少なくとも1枚の正レンズエレメントと少なくとも1枚のR1面が像側に凸である負レンズエレメントを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1レンズユニットを正正負の3サブユニットで構成し、第2レンズサブユニットにおいて焦点調節を行ない、諸条件式を適切に設定することにより、高倍率、小型軽量で高い光学性能を有する望遠ズームレンズを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0010】
本実施例は、望遠端での画角が2.0度以下、変倍比が5倍以上で、広角端での口径比が3.0以下の望遠ズームレンズである。
【0011】
本実施例のズームレンズは、物体側から順に、変倍中に固定で正の屈折力の第1レンズユニットL1と、変倍用の負の屈折力の第2レンズユニットL2と、絞りSPと、変倍に伴う像面変動補正用の第3レンズユニットL3と、変倍中に固定で正の屈折力の第4レンズユニットL4とにより構成されている。
【0012】
ここで、前記L1は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズサブユニットL1aと、正の屈折力を有する第2レンズサブユニットL1bと、負の屈折力を有する第3レンズサブユニットL1cにより構成されている。焦点調節に際しては、前記L1bが移動する。
【0013】
そして、該ズームレンズは、以下の条件を満たす。
−4.5<f1c/f1ab<−0.8 …(1)
0.1<f1b/f1a<3.0 …(2)
但し、f1aは前記L1aの焦点距離、f1bは前記L1bの焦点距離、f1cは前記L1cの焦点距離、f1abは前記L1abの被写体距離無限遠時における合成焦点距離である。
【0014】
また、前記L1bは、少なくとも1枚の正レンズエレメントと少なくとも1枚のR1面が像側に凸である負レンズエレメントで構成されている。
【0015】
また、以下の条件を満たしている。
νbp−νbn>30 …(3)
但し、νbpは前記L1bに含まれる正レンズエレメントのアッベ数の平均値、νbnは前記L1bに含まれる負レンズエレメントのアッベ数の平均値である。
【0016】
また、以下の条件を満たしている。
Nbn−Nbp>0.1 …(4)
但し、Nbpは前記L1bに含まれる正レンズエレメントの屈折率の平均値、Nbnは前記L1bに含まれる負レンズエレメントの屈折率の平均値である。
【0017】
また、以下の条件も満たすとよい。
0.2<f1/fT<0.8 …(5)
但し、f1は前記L1の焦点距離、fTは該ズームレンズ全系の望遠端での焦点距離である。
【0018】
また、以下の条件も満たすとよい。
30<fT/Ld …(6)
5<Z …(7)
但し、Ldは該ズームレンズにより形成される有効画面の対角長、Zは該ズームレンズのズーム比である。
【0019】
さらに、以下の条件を満たすとよい。
0.6<K<1.3 …(8)
但し、Kは前記L1の焦点距離に対する前記L1aから前記L1の後側焦点までの距離の比である。
【0020】
第1レンズサブユニットL1aが、少なくとも2枚の正レンズエレメントと少なくとも1枚の負レンズエレメントを有する場合には、以下の条件を満たすとよい。
νap−νan>30 …(9)
但し、νapは前記L1aに含まれる正レンズエレメントのアッベ数の平均値、νanは前記L1aに含まれる負レンズエレメントのアッベ数の平均値である。
【0021】
また、第3レンズサブユニットL1cが、少なくとも1枚の正レンズエレメントと少なくとも1枚の負レンズエレメントで構成されている場合には、以下の条件を満たすとよい。
νcn−νcp>5 …(10)
但し、νcpは前記L1cに含まれる正レンズエレメントのアッベ数の平均値、νcnは前記L1cに含まれる負レンズエレメントのアッベ数の平均値である。
【0022】
図7に本実施例の第1、第2レンズユニットの広角端における概念図を示す。L1は変倍中固定で正の屈折力を有する第1レンズユニット、L2は変倍に際して像面側に移動する第2レンズユニット、Nは前記L1の後側焦点、すなわち前記L2の物点を示している。前記L1は物体側より順に第1レンズサブユニットL1a、第2レンズサブユニットL1b、第3レンズサブユニットL1cで構成される。f1は前記L1の焦点距離、e1wは広角端における前記L1,前記L2の主点間隔、mvは前記L2の広角端から望遠端までの移動量である。Kは前記f1に対する前記L1aから前記Nまでの距離の比である。e1abは前記L1a,前記L1bの主点間隔、e1bcは前記L1b,前記L1cの主点間隔である。
【0023】
e1abcは前記L1aと前記L1bを合成したレンズユニットL1abと第3レンズサブユニットL1cの被写体距離無限遠時における主点間隔である。
【0024】
図7のように第1レンズユニットL1をいわゆるテレフォト型の光学配置とすることにより、第1レンズユニットL1の望遠比を小さくすることができる。これにより、高倍率化のために広角端における前記L1と前記L2の主点間隔e1wを広げながら、かつ前記L1と前記L2の物理的な間隔を抑制して、高倍率化と小型軽量化を両立している。特に、前記L1を前記L1a,前記L1b、前記L1cに分割し前記L1bでフォーカスをすることにより、L1a〜L1b間およびL1b〜L1c間の2間隔が変化するために収差補正の自由度が増え、フォーカスに伴う収差変動を抑制でき高性能化が実現できる。前記L1a,前記L1b、前記L1cの焦点距離をそれぞれf1a,f1b、f1cとし、前記L1abの被写体距離無限遠時における焦点距離をf1abとする。また、前記L1b,前記L1cの結像倍率をそれぞれβ1b、β1cとし、第1レンズユニットL1の望遠比をKとすると、以下の式が成り立つ。
【0025】
【数1】

【0026】
【数2】

【0027】
【数3】

【0028】
また、前記β1b、前記β1cは、物体近軸光線入射角度をそれぞれα1b、α1cとし、物体近軸光線射出角度をα1b’、α1c’とすると、以下の式が成り立つ。
β1b=α1b/α1b’<1 ・・・(a−4)
β1c=α1c/α1c’>1 ・・・(a−5)
α1b’=α1c ・・・(a−6)
小型軽量化を達成するためには、前記Kの値を小さくするように前記f1abと前記f1cを適切に設定する必要がある。
【0029】
条件式(1)は、前記f1abと前記f1cとの比を規定している。条件式(1)の下限値を下回ると、前記L1cの屈折力が弱まり、式(a−5)において前記β1cは1に近づく。これにより、式(a−3)において前記Kが大きくなって、コンパクト化に不利となるため、好ましくない。
【0030】
条件式(1)の上限値を上回ると、前記Kが小さくなりコンパクト化に有利であるが、前記L1cの屈折力が強くなる。このため前記L1cにおいて高次の収差、特に望遠側における軸上色収差や高次の球面収差が発生し、他のレンズユニットで補正することが困難となる。
【0031】
なお、条件式(1)の下限値を−3.5とし、上限値を−1.5とすれば、より好ましい効果が得られる。
【0032】
次に、本実施例における焦点調節における動作を示す概略図を図8に示す。
【0033】
本実施例において、焦点調節は第2レンズサブユニットL1bを移動させて行う。前記L1bの物点の変位量をη1b、被写体から第1レンズサブユニットL1aの主点位置までの距離をOBJとすると、前記L1bの被写体距離無限遠時に対する移動量Δx1bは以下の式で与えられる。
【0034】
【数4】

【0035】
【数5】

【0036】
【数6】

【0037】
【数7】

【0038】
したがって前記f1a、前記f1bを適切に決定することにより、前記L1bの焦点調節による移動量の低減と、焦点調節による諸収差の変動の抑制を両立することが可能となる。また、第1レンズユニットL1の部分系である前記L1bのみを駆動することにより、焦点調節における駆動力の低減を図り、駆動機構全体の小型軽量化を達成することができる。
【0039】
条件式(2)は、前記f1aと前記f1bの比を規定している。条件式(2)の前記△x1bが低減できるが、前記L1bの屈折力が強くなる。このため前記L1bにおいて高次の収差、特に、望遠側における焦点調節による移動に伴う軸上色収差や球面収差の変動が発生し抑制することが困難となる。また、条件式(2)の上限値を上回ると、式(b−1)〜式(b−4)より前記△x1bが大きくなり、移動に必要な空気間隔が増大してコンパクト化に不利となるため、好ましくない。
【0040】
なお、条件式(2)の下限値を0.6とし、上限値を1.8とすれば、より好ましい効果が得られる。
【0041】
また、第2レンズサブユニットL1bは、少なくとも1枚の正レンズエレメントと少なくとも1枚のR1面が像側に凸である負レンズエレメントで構成されている。被写体距離を近づけた場合、第1レンズサブユニットL1aにおいて物体近軸光線の傾角αはマイナスとなり発散で入射し、射出後に収斂となる。この前記αの変化により負の球面収差が発生し、特に望遠側・近距離側で顕著となる。図8に示すように、前記L1bは近距離側への焦点調節に際して物体側に移動する。前記L1b内に物体側の面が像側に凸である負レンズエレメントを配置すると、前記L1bの物体側への移動に従い、物体近軸光線の高さhが高くなりより大きな正の球面収差を発生する。これにより焦点調節による望遠側の球面収差の変動を抑制することが可能となる。
【0042】
条件式(3)は、第2レンズサブユニットL1b内の正レンズエレメントのアッベ数と負レンズエレメントのアッベ数の平均値の差を規定している。第2レンズサブユニットL1bは近距離側への焦点調節に際して物体側に移動するため、前記L1b内の物体近軸光線の高さhが増大する。したがって焦点調節に伴う軸上色収差変動を抑制するためには、前記L1b内で軸上色収差を補正する必要がある。そこで前記L1b内に分散の小さい正レンズエレメントと分散の大きい負レンズエレメントを配置することにより、前記L1b内を正の色消しとして焦点調節による望遠側の軸上色収差の変動を抑制することが可能となる。条件式(3)の下限を下回ると軸上色収差補正効果が不十分となり焦点調節による軸上色収差の変動を抑制することが困難となる。
【0043】
条件式(4)は第2レンズサブユニットL1b内の正レンズエレメントのアッベ数と負レンズエレメントの屈折率の平均値の差を規定している。負レンズエレメントの屈折率を高くすることにより、焦点調節による球面収差の変動をより大きく抑制する効果が得られる。条件式(4)の下限値を下回ると望遠側における球面収差補正効果が不十分となり、焦点調節による球面収差の変動を抑制することが困難となる。
【0044】
条件式(5)は、望遠端の焦点距離に対する第1レンズユニットL1の焦点距離の比を規定している。条件式(5)の下限値を超えて第1レンズユニットL1の焦点距離を小さくすると、高倍率化には有利であるが、望遠化が困難となる。また、条件式(5)の上限値を超えると望遠化は容易であるが、第2レンズユニットL2に対する物点位置が遠ざかるため、前記L2の移動量が増大して、コンパクト化に不利となって好ましくない。
【0045】
なお、条件式(5)の下限値を0.25とし、上限値を0.7とすれば、より好ましい効果が得られる。
【0046】
条件式(6),(7)は、条件式(1),(2)が、特に有効に適用されるズームレンズの仕様を規定している。
【0047】
条件式(8)は、第1レンズユニットL1の焦点距離に対する、第1レンズサブユニットL1aから第1レンズユニットL1の後側焦点位置までの距離の比(以下、第1レンズユニットL1の望遠比と略す)を規定している。条件式(8)の上限値を上回る場合、コンパクト化に不利となり、下限値を下回ると、前記L1cのパワーが強くなりすぎ、高性能化が難しくなるので、好ましくない。
【0048】
条件式(9)は、望遠側での軸上色収差を良好に補正するための条件を規定している。本実施例のズームレンズは焦点距離が比較的長いため、特に望遠側の軸上色収差が問題となる。特に、第1レンズサブユニットL1aにて発生する軸上色収差は第2レンズサブユニットL1b以降の結像倍率の2乗に比例して拡大されるため、前記L1aにおいて色収差を良好に補正することが必要となる。
【0049】
特に、適切な正の屈折力を持たせながら軸上色収差を補正するためには、前記L1aを正レンズエレメントと負レンズエレメントの1枚ずつで構成したのでは不十分である。このため、前記L1aに含まれる正レンズエレメントを少なくとも2枚とし、かつ分散の小さい材料を選択することにより、望遠側での軸上色収差を良好に補正することが可能となる。
【0050】
そこで、条件式(9)は、前記L1aに含まれる正レンズエレメントのアッベ数の平均値と負レンズエレメントのアッベ数の平均値との差の下限値を規定する。条件式(9)下限値を下回ると、特に望遠端において前記L1aにて発生する軸上色収差が大きくなり、他のレンズユニットで補正することが困難となるため、好ましくない。また、色収差補正のために、レンズエレメントの枚数が増加したり、さらに前記L1a内の各レンズエレメントの曲率が強くなって他の収差が増大したりするため、好ましくない。
【0051】
条件式(10)は、第3レンズサブユニットL1cに含まれる正レンズエレメントのアッベ数の平均値と、負レンズエレメントのアッベ数の平均値との差の下限値を規定して、望遠側での軸上色収差を良好に補正するための条件である。条件式(10)の下限値を下回ると、特に望遠端において前記L1a、前記L1bで発生する軸上色収差を補正する効果が不十分となり好ましくない。また、色収差補正のために、レンズエレメントの枚数が増加したり、前記L1c内の各レンズエレメントの曲率が強くなって他の収差が増大したりするため、好ましくない。
【0052】
また、本実施例のズームレンズにおいて、第4レンズユニットL4内に形成された空間Sに対して、図1に示すように、焦点距離変換光学系(エクステンダ)EXを挿脱可能としてもよい。
【実施例1】
【0053】
図1は、本発明の実施例1(数値例1)であるズームレンズの広角端、フォーカス無限遠時における断面図である。また、図2はズームレンズの広角端、被写体距離2.5mにおける断面図である。
【0054】
また、図3〜5はそれぞれ、本数値例1の広角端、中間位置f=225mmおよび望遠端での収差図である。また、図6は被写体距離2.5mにおける望遠端での収差図である。なお、各収差図において、eはe線の収差を実線で、gはg線の収差を一点鎖線、cはc線の収差を点線でそれぞれ示している。また、Sはサジタル像面の収差を実線で、Mはメリディオナル像面の収差を点線でそれぞれ示す。
【0055】
図1において、L1は第1レンズユニットとしての正の屈折力を有するフォーカスレンズユニット(前玉レンズユニット)である。L2は第2レンズユニットとしての変倍用の負の屈折力を有するバリエータレンズユニットであり、光軸上を像面側へ単調に移動することにより、広角端(ワイド)から望遠端(テレ)への変倍を行う。L3は第3レンズユニットとしての負の屈折力を有するコンペンセータレンズユニットであり、変倍に伴う像面変動を補正するために光軸上を物体側へ凸の軌跡を描くように非直線的に移動する。バリエータレンズユニットL2とコンペンセータレンズユニットL3とで変倍系を構成している。
【0056】
SPは絞り、L4は第4レンズユニットとしての正の屈折力を有する固定のリレーレンズユニットである。Bは色分解プリズムや光学フィルター等を示すガラスブロックである。
【0057】
ここで、前記L1は、物体側から順に、正の第1レンズサブユニットL1aおよび正の第2レンズサブユニットL1b、負の第3レンズサブユニットで構成されており、前記L1aは2枚の正レンズエレメントと、1枚の負レンズエレメントとで構成されている。また、前記L1bは1枚の正レンズエレメントと、1枚の正レンズエレメントと1枚の負レンズエレメントとを貼り合せて構成している。また前記L1cは1枚の正レンズエレメントと1枚の負レンズエレメントを貼り合せて構成している。
【0058】
本実施例は、望遠端の焦点距離が450mm、バリエータレンズユニットL2の広角端と望遠端との間の移動量が58.297mm、変倍比が15倍であり、超望遠化、小型軽量化、高倍率化を実現している。本実施例における条件式(1)の値は
(1)f1c/f1ab=−2.5225
で条件を満たしており、小型軽量化を実現している。
【0059】
また、条件式(2)の値は
(2)f1b/f1a=1.3543
で条件を満たしており、焦点調節による移動量の低減と、球面収差の変動の補正を両立している。
【0060】
被写体距離2.5mにおける第2レンズサブユニットの移動量は物体側に7.523mmである。
【0061】
また、条件式(3)、(4)の値は
(3)νbp−νbn=53.62
(4)Nbn−Nbp=0.2550
であり、条件を満たしており、焦点調節による軸上色収差、球面収差の変動を良好に補正している。
【0062】
また、条件式(5)の値は
(5)f1/fT=0.3231
であり、条件を満たしており、望遠化と高倍率化の両立を実現している。
【0063】
また、条件式(6)、(7)の値は
(6)fT/Ld=40.9020
(7)Z=15
であり、条件を満たしている。
【0064】
また、条件式(8)の値は
(8)K=0.9676
であり、条件を満たしており、小型軽量化を実現している。
【0065】
また、条件式(9)、(10)はそれぞれ
(9)νap−νan=47.81
(10)νcn−νcp=11.94
であり、それぞれ条件を満たしており、望遠端での軸上色収差を良好に補正している。
【0066】
本実施例(数値例)におけるレンズ構成データを表1に示す。fはズームレンズ全系の焦点距離、FnoはFナンバー、ω(表にはwと記す)は半画角である。また、riは物体側からi番目のレンズ面の曲率半径、diはi番目とi+1番目のレンズ面間の間隔(空気間隔を含む)、ni,νi(表にはviと記す)はそれぞれ、i番目のレンズエレメントの材料の屈折率とアッベ数である。また、riにおいて、0.000は∞を意味する。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
なお、本実施例のズームレンズは、テレビカメラやビデオカメラ等の撮影装置に交換可能に装着される。次に、本実施例のズームレンズを撮影光学系として用いた撮影システム(テレビカメラシステム)について図9を用いて説明する。
【0070】
図9において、101は本実施例のズームレンズ、111は撮影装置としてのカメラ、117はカメラ111にズームレンズ101を装着することにより構成される撮影システムである。
【0071】
ズームレンズ101において、102はマニュアル操作によりフォーカスレンズユニットとして一部が光軸上を移動する前玉レンズユニット(第1レンズユニット)である。103aは変倍のために光軸上を移動するバリエータレンズユニット(第2レンズユニット)、103bは変倍に伴う像面変動を補正するために光軸上を移動するコンペンセータレンズユニット(第3レンズユニット)である。104は絞り、105は固定のリレーレンズユニット(第4レンズユニット)である。
【0072】
また、109は変倍時に移動するレンズユニット103a,103bの光軸上の位置をメカ的に制御し、手動によるズーム操作も可能とするカム等のズーム機構部材である。
【0073】
カメラ111において、106は光学フィルタや色分解プリズムに相当するガラスブロック、107はズームレンズ101によって形成された被写体像を受光するCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子(光電変換素子)である。108はカメラ111の制御を司るCPU等のカメラコントローラである。
【0074】
116はズームレンズ101の側面に装着されるドライブユニットである。このドライブユニット116には、ズームスイッチ、絞り切換えスイッチ等、各種の操作スイッチが設けられ、ズームレンズ101とカメラマンとのインターフェースとなる。ドライブユニット116において、112は機構部材109を駆動してレンズユニット103a,103bを移動させ、変倍を行わせるズームアクチュエータ、113は絞り104を駆動する絞りアクチュエータである。さらに、115はドライブユニット116の制御を司るCPU等のドライブユニットコントローラである。
【0075】
なお、図9には、ドライブユニットが装着(外付け)されるタイプのズームレンズについて説明したが、本発明は、ドライブユニットの機能が内蔵されたタイプのズームレンズにも適用することができる。また、焦点検出を行い、フォーカスレンズユニット102の位置を制御するオートフォーカス機能を搭載してもよい。
【0076】
また、上記実施例では、レンズユニット又はレンズエレメントの屈折力について説明したが、レンズ面に貼り付ける等した回折光学素子による屈折と等価な屈折力を有する場合にも、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施例1(数値例1)の広角端におけるレンズ断面図である。
【図2】数値例1の被写体距離2.5m、広角端におけるレンズ断面図である。
【図3】数値例1の広角端における収差図である。
【図4】数値例1の焦点距離225mmにおける収差図である。
【図5】数値例1の望遠端における収差図である。
【図6】数値例1の被写体距離2.5m、望遠端における収差図である。
【図7】実施例の第1レンズユニットと第2レンズユニットの基本構成を示す概略図である。
【図8】実施例の第1レンズユニットの焦点調節における動作を示す概略図である。
【図9】実施例のズームレンズを用いた撮影システムの構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0078】
L1 第1レンズユニット
L2 第2レンズユニット
L3 第3レンズユニット
L4 第4レンズユニット
L1a 第1レンズサブユニット
L1b 第2レンズサブユニット
L1c 第3レンズサブユニット
SP 絞り
B ガラスブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、変倍中に固定される正の屈折力を有する第1レンズユニットと、変倍のために移動する第2レンズユニットと、変倍に伴う像面変動を補正するために移動する第3レンズユニットと、変倍中に固定される正の屈折力を有する第4レンズユニットとを有するズームレンズであって、
前記第1レンズユニットは、前記物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズサブユニットと、正の屈折力を有する第2レンズサブユニットと、負の屈折力を有する第3レンズサブユニットとを有し、
焦点調節に際して、前記第2レンズサブユニットが移動することを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
さらに以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
−4.5<f1c/f1ab<−0.8
1<f1b/f1a<3.0
但し、f1aは前記第1レンズサブユニットの焦点距離、f1bは前記第2レンズサブユニットの焦点距離、f1cは前記第3レンズサブユニットの焦点距離、f1abは第1、第2レンズサブユニットの被写体距離無限遠時における合成焦点距離である。
【請求項3】
前記第2レンズサブユニットは、少なくとも1枚の正レンズエレメントと少なくとも1枚のR1面が像側に凸である負レンズエレメントを有することを特徴とする請求項1、2に記載のズームレンズ。
【請求項4】
さらに以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項1〜3記載のズームレンズ。
νbp−νbn>30
但し、νbpは前記第2レンズサブユニットに含まれる前記正レンズエレメントのアッベ数の平均値、νbnは前記第2レンズサブユニットに含まれる前記負レンズのアッベ数の平均値である。
【請求項5】
さらに以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項1〜4記載のズームレンズ。
Nbn−Nbp>0.1
但し、Nbpは前記第2レンズサブユニットに含まれる前記正レンズエレメントの屈折率の平均値、Nbnは前記第2レンズサブユニットに含まれる前記負レンズエレメントの屈折率の平均値である。
【請求項6】
さらに以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1〜5に記載のズームレンズ。
0.2<f1/fT<0.8
但し、f1は前記第1レンズユニットの焦点距離、fTは該ズームレンズ全系の望遠端での焦点距離である。
【請求項7】
さらに以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1〜6に記載のズームレンズ。
30<fT/Ld
5<Z
但し、Ldは該ズームレンズにより形成される有効画面の対角長、Zは該ズームレンズのズーム比である。
【請求項8】
さらに以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1〜7に記載のズームレンズ。
0.6<K<1.3
但し、Kは前記第1レンズユニットの焦点距離に対する前記第1レンズサブユニットから前記第1レンズユニットの後側焦点位置までの距離の比である。
【請求項9】
前記第1レンズサブユニットは、少なくとも2枚の正レンズエレメントと少なくとも1枚の負レンズエレメントを有し、かつ以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1〜8に記載のズームレンズ。
νap−νan>30
但し、νapは前記第1レンズサブユニットに含まれる前記正レンズエレメントのアッベ数の平均値、νanは前記第1レンズサブユニットに含まれる前記負レンズのアッベ数の平均値である。
【請求項10】
前記第3レンズサブユニットは、少なくとも1枚の正レンズエレメントと少なくとも1枚の負レンズエレメントを有し、かつ以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1〜9に記載のズームレンズ。
νcn−νcp>5
但し、νcpは前記第3レンズサブユニットに含まれる前記正レンズエレメントのアッベ数の平均値、νcnは前記第3レンズサブユニットに含まれる前記負レンズのアッベ数の平均値である。
【請求項11】
前記第1から第4レンズエレメントと、前記第3レンズユニットおよび前記第4レンズエレメントの間に配置された絞りとからなることを特徴とする請求項1〜10に記載のズームレンズ。
【請求項12】
前記第4レンズユニット内に形成された空間に対して挿脱可能な焦点距離変換光学系を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載のズームレンズ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1つに記載のズームレンズと、
該ズームレンズが装着される撮影装置とを有することを特徴とする撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−139858(P2007−139858A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329888(P2005−329888)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】