説明

セメント組成物用添加剤

【課題】流動性及び凝結性に優れたセメント組成物用添加剤を提供することである。
【解決手段】 一般式(1)で表されるビニルモノマーを必須構成単量体としてなるビニルポリマーを含有してなることを特徴とするセメント組成物用添加剤を用いる。
【化1】


OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、mは1〜200の整数、R1は(メタ)アクリロイル基、Nは窒素原子、R2及びR3は炭素数が1〜30の有機基であり、R2及びR3は窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。ビニルポリマーがさらに(メタ)アクリル酸(塩)を必須構成単量体として含むことが好ましい。また、オキシアルキレン基(OA)がオキシエチレン基であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセメント組成物用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシアルキレン鎖を有し、アミノ基を有しないビニルモノマーを構成単量体とした共重合体を含むセメント組成物用添加剤が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特公昭59−18338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のセメント組成物用添加剤は、セメント組成物の流動性を十分に低減できない上に、セメント組成物の凝結を遅らせるという問題がある。
特に、減水率が20%以上である高減水率のセメント組成物等に適用した場合、流動性を確保するためには添加剤の添加量を著しく多くする必要がある。そして、添加量を多くした結果、セメント組成物の凝結が著しく遅くなる。そこで、本発明の目的は、流動性及び凝結性に優れたセメント組成物用添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のセメント組成物用添加剤は、一般式(1)で表されるビニルモノマーを必須構成単量体としてなるビニルポリマーを含有してなる点を要旨とする。
【化1】

OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、mは1〜200の整数、R1は(メタ)アクリロイル基、Nは窒素原子、R2及びR3は炭素数が1〜30の有機基であり、R2及びR3は窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。
【発明の効果】
【0005】
本発明のセメント組成物用添加剤は、セメント組成物の流動性及び凝結性に著しく優れる。この結果、本発明のセメント組成物用添加剤は、セメント組成物に添加すると、高減水率のセメント組成物においても優れた作業性を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明において、(メタ)アクリ・・は、アクリ・・及びメタクリ・・を意味する。
一般式(1)において、炭素数2〜4のオキシアルキレン基(OA)としては、オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレンが挙げられる。
これらのうち、製造しやすさの観点等から、オキシエチレン及びオキシプロピレンが好ましく、さらに好ましくはオキシエチレンである。
オキシアルキレン基は、1種類でも2種類以上の混合でもよい。2種類以上の混合のとき、結合様式はブロック、ランダム及びこれらの組合せのいずれでもよい。
【0007】
mは、通常1〜200の整数のものが使用できるが、分散性の観点からは、1〜100の整数が好ましく、さらに好ましくは3〜50の整数、特に好ましくは5〜20の整数である。
【0008】
炭素数が1〜30の有機基(R2、R3)としては、アルキル、アルケニル及びアリール等が含まれ、これらはR2、R3が窒素原子とともに複素環を形成する場合、アルキレン及びアルケニレン等が含まれる。また、有機基は直鎖でも分岐があってもよく、複素環には置換基があってもなくてもよい。
アルキルとしては、メチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、ウンデシル、ドデシル、オクタデシル、イコシル及びトリアコンチル等が挙げられる。
アルケニルとしては、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、ヘプテニル、デセニル、ドデセニル、イコセニル、ペンタコセニル及びトリアコンテニル等が挙げられる。
アリールとしては、フェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、アントリル、フェナントリル、ピレニル及びピラントリル等が挙げられる。
アルキレンとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン、オクチレン、デシレン、イコシレン及びトリアコンチレン等が挙げられる。
アルケニレンとしては、エテニレン、プロペニレン、ブテニレン、オクテニレン、デセニレン、イコセニレン及びトリアコンテニレン等が挙げられる。
複素環としては、アジリジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピペリジン環、モルホリン環、インドール環、インドリン環、スクシンイミド環、マレイミド環及びフタルイミド環等が挙げられる。
炭素数が1〜30の有機基(R2、R3)のうち、アルキル及びアリールが好ましく、さらに好ましくはアルキル、特に好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル及びオクタデシルである。これらのアルキル及びアルケニルは直鎖状でも、分岐状でも、環状(シクロヘキシル及びシクロヘキセニル等)でもよいが、直鎖状が好ましい。
【0009】
次に、本発明のセメント組成物用添加剤の製造方法について説明する。
一般式(1)で表されるビニルモノマーは、公知の製造方法等を組み合わせて得ることができる。
たとえば、2級アミンと炭素数2〜4のアルキレンオキシドとを反応させて一般式(2)で表されるアミノアルコールを製造した後、アミノアルコールと(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリル酸とを反応させて一般式(1)で表されるビニルモノマーを得ることができる。
【0010】
2級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、N−エチルベンジルアミン、ジデシルアミン、ジトリアコンチルアミン、オクチルオクタデシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、ジアリルアミン、ジフェニルアミン、アジリジン、イミダゾール及びモルホリン等が使用できる。これらは2種以上の混合物でもよく、市販品を用いてもよい。このような混合物からなる市販品としては、ココヤシ油由来の炭素数8〜18のアルキル基を有するジアルキルアミン混合物(商品名ア−ミン2C;ライオン株式会社製)及び牛脂由来の炭素数12〜20のアルキル基を有するジアルキルアミン混合物(商品名ア−ミン2HT;ライオン株式会社製、商品名ファ−ミンD86;花王株式会社製)等が挙げられる。
【0011】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1〜4のアルキルエステル等が含まれ、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート及びt−ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0012】
【化2】

OA、m、N、R2及びR3は一般式(1)と同じである。
【0013】
2級アミンと炭素数2〜4のアルキレンオキシドとの反応には、反応触媒(C)及び/又は反応溶媒(S)等を用いることができる。
反応触媒(C)としては、酸触媒及び塩基触媒のいずれも使用できる。
酸触媒としては、ハロゲン化水素(塩化水素等)、カルボン酸(酢酸、シュウ酸等)、リン酸、スルホン酸(メタンスルホン酸等)、三フッ化硼素、金属化合物(三塩化アルミニウム、ジエチル亜鉛、トリエチルアルミニウム及びジブチルスズラウレート等)等が挙げられる。
塩基触媒としては、水酸化アルカリ金属塩(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、トリエチルアミン、ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(DBU:サンアプロ社の登録商標)、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)}等が挙げられる。
【0014】
反応溶媒(S)としては、芳香族炭化水素(トルエン及びキシレン等)、エーテル(テトラヒドロフラン及びジオキサン等)、ニトリル(アセトニトリル等)、ケトン(アセトン等)、脂肪族炭化水素(ヘキサン及びシクロヘキサン等)等が使用できる。
【0015】
また、一般式(2)で表されるアミノアルコールは、2級アミンと炭素数2〜4のアルキレンオキシドとを反応させる代わりに、市販品{例えば、ジメチルアミノエタノール(日本乳化剤製)、ジエチルアミノエタノール(日本乳化剤製)、ジブチルアミノエタノール(日本乳化剤製)等}を使用することもできる。市販のアミノアルコールはそのまま用いることもできるが、市販のアミノアルコールと炭素数2〜4のアルキレンオキシドとを反応させてから用いてもよい。
【0016】
アミノアルコールと炭素数2〜4のアルキレンオキシドとの反応には、反応触媒(C)及び/又は反応溶媒(S)等を用いることができる。
【0017】
本発明のセメント組成物用添加剤は、一般式(1)で表されるビニルモノマーを必須構成単量体としてなるビニルポリマーを含有してなれば、このビニルモノマーの他に、他の構成単量体を含んでもよい。
他の構成単量体としては、(メタ)アクリル酸(塩)、アリルアルコール、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられるが、(メタ)アクリル酸(塩)を含むことが好ましい。なお、(メタ)アクリル酸(塩)とは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸塩及び/又はメタクリル酸塩を意味する。
塩としては、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム等)塩、アンモニウム塩、アミン(アルキル基の炭素数が1〜4のアルキルアミン等:たとえば、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、モノブチルアミン)塩、第4級アンモニウム塩(アルキル基の炭素数が1〜4のテトラアルキルアンモニウム塩:たとえば、テトラメチルアンモニウム塩、トリメチルエチルアンモニウム塩)等が含まれる。
【0018】
ビニルポリマーが他の構成単量体と共重合してなる場合、一般式(1)で表されるビニルモノマーの使用量(モル%)は、一般式(1)で表されるビニルモノマー及び他の構成単量体の合計モル数に基づいて、10〜95が好ましく、さらに好ましくは20〜85、特に好ましくは25〜75、最も好ましくは30〜65である。
また、この場合、他の構成単量体の使用量(モル%)は、一般式(1)で表されるビニルモノマー及び他の構成単量体の合計モル数に基づいて、5〜90が好ましく、さらに好ましくは15〜80、特に好ましくは25〜75、最も好ましくは35〜70である。
【0019】
ビニルポリマーを得るための重合方法としては公知の重合方法等が適用でき、例えば、溶液重合、懸濁重合、塊状重合、逆相懸濁重合又は乳化重合等が挙げられる。
これらの重合方法のうち、溶液重合、懸濁重合、逆相懸濁重合又は乳化重合が好ましく、さらに好ましくは溶液重合、逆相懸濁重合又は乳化重合、特に好ましくは溶液重合又は乳化重合、最も好ましくは溶液重合である。
この重合には、公知の、重合開始剤、連鎖移動剤及び/又は溶媒等が使用できる。
ビニルポリマーの重量平均分子量(Mw)は、分散性等の観点から、1000〜1000000が好ましく、さらに好ましくは3000〜500000、特に好ましくは5000〜100000である。また、分子量分布{重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)}は、1〜2が好ましく、さらに好ましくは1〜1.8、特に好ましくは1〜1.5である。
重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(標準物質:ポリエチレングリコール)により測定される。
【0020】
本発明のセメント組成物用添加剤には、ビニルポリマー以外に、公知の混和剤(材)[例えば「コンクリート混和材料ハンドブック」(社)日本材料学会編(2004年)に記載のもの等]等を含んでもよい。
混和剤(材)等としては、例えば、溶媒(水、アルコール)、AE剤、減水剤、流動化剤、遅延剤、収縮低減剤、膨張剤、分離低減剤、起泡剤、湿潤剤、防錆剤、硬化促進剤、消泡剤、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、シリカフューム及び膨張材等が含まれる。
本発明のセメント組成物用添加剤は、作業性等の観点から、水を含有すること、すなわち水溶液とすることが好ましい。水溶液の濃度は、水溶液の重量に基づいて、10〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは15〜45、特に好ましくは20〜40である。
【0021】
本発明のセメント組成物用添加剤は、ポルトランドセメント、アルミナセメント、各種混合セメント等の公知の水硬セメント等に適用できる。
本発明のセメント組成物用添加剤は水硬セメント等に適用すると、セメント組成物が得られる。このセメント組成物には、本発明のセメント組成物用添加剤及び水硬セメント等以外に、混和剤(材)を含むことができる。
そして、本発明のセメント組成物用添加剤は、セメント組成物の流動性及び凝結性に著しく優れるため、本発明のセメント組成物用添加剤を添加したセメント組成物は、流動性及び凝結性に極めて優れる。したがって、速やかに凝結し、良好なセメント構造体を得ることができる。
本発明のセメント組成物用添加剤を水硬化セメントに適用する場合、この添加量(重量%)は、水硬セメントの重量に基づいて、0.001〜5が好ましく、さらに好ましくは0.005〜2、特に好ましくは0.01〜1、最も好ましくは0.02〜0.7である。
【実施例】
【0022】
実施例において、部及び%は、特記しない限り、重量部及び重量%を意味する。
<合成例1>
ジエチルアミン73部(1モル部)及び水酸化カリウム2部を混合し、100℃に調整した後、100℃でエチレンオキシド440部(10モル部)を滴下して反応させ、次いで水酸化カリウムを吸着処理により除去して、ジエチルアミノポリエチレンオキシエチルアルコールを得た。
ついで、このジエチルアミノポリエチレンオキシエチルアルコール257部(0.5モル部)、アクリル酸メチル86部(1モル部)、ジブチルスズラウレート0.2部、メトキシハイドロキノン0.03部及びトルエン800部を混合し、120℃でエステル交換反応させて、ビニルモノマー(1)(N,N−ジエチルアミノポリエチレンオキシエチルアクリレート)を得た。なお、ビニルモノマーの構造は、13C−NMR、1H−NMR及びIRスペクトルにより同定した(以下同様)。
【0023】
<合成例2>
アクリル酸メチル86部(1モル部)をメタクリル酸メチル100部(1モル部)に変更した以外、合成例1と同様にして、ビニルモノマー(2)(N,N−ジエチルアミノポリエチレンオキシエチルメタクリレート)を得た。
【0024】
<合成例3>
ジエチルアミン45部(1モル部)をイミダゾール68部(1モル部)に変更した以外、合成例1と同様にして、ビニルモノマー(3)(イミダゾリルポリエチレンオキシエチルアクリレート)を得た。
【0025】
<合成例4>
ジエチルアミン45部(1モル部)をモルホリン58部(1モル部)に変更した以外、合成例1と同様にして、ビニルモノマー(4)(モルホリノポリエチレンオキシエチルアクリレート)を得た。
【0026】
<合成例5>
エチレンオキシド440部(10モル部)をエチレンオキシド880部(20モル部)に変更した以外、合成例1と同様にして、ビニルモノマー(5)(N,N−ジエチルアミノポリエチレンオキシエチルアクリレート)を得た。
【0027】
<合成例6>
エチレンオキシド440部(10モル部)をエチレンオキシド220部(5モル部)に変更した以外、合成例1と同様にして、ビニルモノマー(6)(N,N−ジエチルアミノポリエチレンオキシエチルアクリレート)を得た。
【0028】
<合成例7>
ジエチルアミン45部(1モル部)をココヤシ油由来の炭素数8〜18のアルキル基を有するジアルキルアミン混合物(商品名:ア−ミン2C、ライオン株式会社製、全アミン価148)380部(1モル部)に変更した以外、合成例1と同様にして、ビニルモノマー(7)(N,N−ジアルキルアミノポリエチレンオキシエチルメタクリレート)を得た。
【0029】
<実施例1>重合反応容器に、水2000部を仕込み、攪拌しながら、反応容器内を窒素ガスで置換し、窒素雰囲気下で水の温度を80℃まで加熱した。
次いで、合成例1で得たビニルモノマー(1)284部(0.50モル部)、メタクリル酸43部(0.5モル部)、水90部及びメルカプトプロピオン酸5.4部からなるモノマー溶液を4時間かけて重合反応容器内に滴下した。この滴下開始と同時に過硫酸アンモニウム6.5部及び水130部からなる触媒水溶液を5時間かけて滴下した。触媒水溶液の滴下終了後、さらに80℃で1時間反応させて、重合溶液を得た。
次いで、25℃に冷却した重合溶液に50%水酸化ナトリウム水溶液をpH7になるように添加して、ビニルポリマー(P1)の水溶液からなるセメント組成物用添加剤(1)を得た。このビニルポリマー(P1)の重量平均分子量(Mw)は34000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.3であった。
【0030】
なお、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、次の条件のGPC測定により得た。
装置: HLC−8120GPC(東ソー株式会社)
カラム:TSKgelα−3000(東ソー株式会社)とTSKgelα−6000(東ソー株式会社)を直列に結合したカラム
カラム温度:40℃
展開溶媒:水/メタノール(容積比=70:30)+酢酸ナトリウム(0.5%)
流速:1.0(ml/min)
検出器:RI検出器
標準物質: TSK標準ポリエチレンオキシド(東ソー株式会社)
【0031】
<実施例2>
合成例1で得たビニルモノマー(1)284部(0.50モル部)を、合成例2で得たビニルモノマー(2)285部(0.49モル部)に変更し、メタクリル酸43部(0.50モル部)をメタクリル酸42部(0.49モル部)に変更した以外実施例1と同様にして、ビニルポリマー(P2)の水溶液からなるセメント組成物用添加剤(2)を得た。このビニルポリマー(P2)の重量平均分子量(Mw)は25000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.1であった。
【0032】
<実施例3>
合成例1で得たビニルモノマー(1)284部(0.50モル部)を、合成例3で得たビニルモノマー(3)285部(0.49モル部)に変更し、メタクリル酸43部(0.50モル部)をメタクリル酸42部(0.49モル部)に変更した以外実施例1と同様にして、ビニルポリマー(P3)の水溶液からなるセメント組成物用添加剤(3)を得た。このビニルポリマー(P3)の重量平均分子量(Mw)は25000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.3であった。
【0033】
<実施例4>
合成例1で得たビニルモノマー(1)284部(0.50モル部)を、合成例4で得たビニルモノマー(4)285部(0.49モル部)に変更し、メタクリル酸43部(0.50モル部)をメタクリル酸42部(0.49モル部)に変更した変更した以外実施例1と同様にして、ビニルポリマー(P4)の水溶液からなるセメント組成物用添加剤(4)を得た。このビニルポリマー(P4)の重量平均分子量(Mw)は24000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.2であった。
【0034】
<実施例5>
合成例1で得たビニルモノマー(1)284部(0.50モル部)を、合成例5で得たビニルモノマー(5)302部(0.30モル部)に変更し、メタクリル酸43部(0.50モル部)をメタクリル酸25部(0.30モル部)に変更した以外実施例1と同様にして、ビニルポリマー(P5)の水溶液からなるセメント組成物用添加剤(5)を得た。このビニルポリマー(P5)の重量平均分子量(Mw)は27000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.4であった。
【0035】
<実施例6>
合成例1で得たビニルモノマー(1)284部(0.50モル部)を、合成例6で得たビニルモノマー(6)262部(0.75モル部)に変更し、メタクリル酸43部(0.50モル部)をメタクリル酸65部(0.75モル部)に変更した以外実施例1と同様にして、ビニルポリマー(P6)の水溶液からなるセメント組成物用添加剤(6)を得た。このビニルポリマー(P6)の重量平均分子量(Mw)は23000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.1であった。
【0036】
<実施例7>
合成例1で得たビニルモノマー(1)282(0.50モル部)部を合成例1で得たビニルモノマー(1)251部(0.44モル部)に変更し、メタクリル酸43部(0.50モル部)をメタクリル酸76部(0.88モル部)に変更した以外実施例1と同様にして、ビニルポリマー(P7)の水溶液からなるセメント組成物用添加剤(7)を得た。このビニルポリマー(P7)の重量平均分子量(Mw)は32000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.1であった。
【0037】
<実施例8>
合成例1で得たビニルモノマー(1)282部(0.50モル部)を合成例2で得たビニルモノマー(2)252部(0.44モル部)に変更し、メタクリル酸43部(0.50モル部)をメタクリル酸75部(0.87モル部)に変更した以外実施例1と同様にして、ビニルポリマー(P8)の水溶液からなるセメント組成物用添加剤(8)を得た。このビニルポリマー(P8)の重量平均分子量(Mw)は25000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.1であった。
【0038】
<実施例9>
合成例1で得たビニルモノマー(1)282部(0.50モル部)を合成例1で得たビニルモノマー(1)304部(0.54モル部)に変更し、メタクリル酸43部(0.50モル部)をメタクリル酸23部(0.27モル部)に変更した以外実施例1と同様にして、ビニルポリマー(P9)の水溶液からなるセメント組成物用添加剤(9)を得た。このビニルポリマー(P9)の重量平均分子量(Mw)は24000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.2であった。
【0039】
<実施例10>
合成例1で得たビニルモノマー(1)282部(0.50モル部)を合成例2で得たビニルモノマー(2)305部(0.52モル部)に変更し、メタクリル酸43部(0.50モル部)をメタクリル酸22部(0.26モル部)に変更した以外実施例1と同様にして、ビニルポリマー(P10)の水溶液からなるセメント組成物用添加剤(10)を得た。このビニルポリマー(P10)の重量平均分子量(Mw)は23000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.2であった。
【0040】
<実施例11>
合成例1で得たビニルモノマー(1)282部(0.50モル部)を合成例7で得たビニルモノマー(7)280部(0.32モル部)に変更し、メタクリル酸43部(0.50モル部)をメタクリル酸28部(0.32モル部)に変更した以外実施例1と同様にして、ビニルポリマー(P11)の水溶液からなるセメント組成物用添加剤(11)を得た。このビニルポリマー(P11)の重量平均分子量(Mw)は25000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.3であった。
【0041】
<比較例1>
合成例1で得たビニルモノマー(1)282部(0.50モル部)を、ポリエチレングリコール(重合度10)モノメタクリレート281部(0.53モル部)に変更し、メタクリル酸43部(0.50モル部)をメタクリル酸46部(0.53モル部)に変更した以外た以外実施例1と同様にして、ビニルポリマー(HP1)の水溶液からなる比較用のセメント組成物用添加剤(H1)を得た。このビニルポリマー(HP1)の重量平均分子量(Mw)は25000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.2であった。なお、ポリエチレングリコール(重合度10)モノメタクリレートは、公知の方法により、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(1モル部)へのエチレンオキシド(9モル部)の付加反応により得た。
【0042】
<比較例2>
合成例1で得たビニルモノマー(1)282部(0.50モル部)を、メチルポリオキシエチレン(重合度12)メタクリレート314部(0.50モル部)に変更した以外実施例1と同様にして、ビニルポリマー(HP2)の水溶液からなる比較用のセメント組成物用添加剤(H2)を得た。このビニルポリマー(HP2)の重量平均分子量(Mw)は23000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.1であった。なお、メチルポリオキシエチレン(重合度12)メタクリレートは、公知の方法により、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(重合度12)(商品名:ドデカエチレングリコールモノメチルエーテル、東京化成工業株式会社製)とメタクリル酸とのエステル化反応により得た。
【0043】
<流動性及び凝結性の評価>
セメント組成物用添加剤(1)〜(11)、(H1)及び(H2)について、以下の方法で流動性及び凝結性を評価し、結果を表2に示した。
(1)評価用モルタルの調製
表1に示す配合で、JIS R5201−1997の10.4.3練混ぜ方法に準拠して、評価用モルタルを調製した。
【0044】
【表1】

【0045】
(2)フロー試験(流動性)
JIS R5201−1997「11.フロー試験」に準拠して、フロー試験によりフロー値(mm)を得た。なお、数値が大きい程、流動性が良好であることを意味する。
【0046】
(3)レベリング(流動性)
フロー試験において、フローコーンを上の方に取り去りったときのセルフレベリング性を目視観察し、次の基準によりレベリングを評価した。
○:形状が崩れ始めた(レベリングした⇒流動性が良好)
×:形状が保たれたまま(レベリングせず⇒流動性が不良)
【0047】
(4)凝結性
JIS R5201−1997「8.凝結試験」に準拠して、凝結の始発時間及び終結時間を得た。なお、セメント組成物用添加剤を全く含まないブランクの始発時間は4時間40分、終結時間9時間であった。また、始発時間及び終結時間が早いほど、凝結が速やかに起こることを示し、凝結性が良好であることを意味する。
【表2】

表2において、凝結性の欄において、3−50/8−30(実施例1)は、始発時間が3時間50分、終結時間が8時間30分であることを示す。他の例についても同様である。
【0048】
本発明のセメント組成物用添加剤は、比較用のセメント組成物用添加剤に比較して、優れた流動性(フロー値、レベリング)及び凝結性を示した。すなわち、本発明の添加剤はモルタルに対して優れた流動性を与え、凝結を遅らせない効果を有することが明らかである。
また、本発明のセメント組成物用添加剤は、セメント組成物に対して優れた分散性を発現するため、モルタル以外のセメント組成物、例えば、コンクリート等に対しても、優れた分散性を発現することが期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のセメント組成物用添加剤は、従来のセメント組成物用添加剤よりも優れた流動性を示し、凝結を遅らせない。したがって、本発明のセメント組成物用添加剤を使用したモルタルやコンクリートは作業性に優れている。このため、本発明のセメント組成物用添加剤は、モルタル、無筋コンクリート、鉄筋コンクリート、プレストレストコンクリート等に好適である。このようなモルタルやセメントは、建築用、土木用、道路用、かんがい排水用、河海用等の広い分野で制限なく適用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるビニルモノマーを必須構成単量体としてなるビニルポリマーを含有してなることを特徴とするセメント組成物用添加剤。
【化1】

OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、mは1〜200の整数、R1は(メタ)アクリロイル基、Nは窒素原子、R2及びR3は炭素数が1〜30の有機基であり、R2及びR3は窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。
【請求項2】
ビニルポリマーがさらに(メタ)アクリル酸(塩)を必須構成単量体としてなる請求項1に記載のセメント組成物用添加剤。
【請求項3】
オキシアルキレン基(OA)がオキシエチレン基である請求項1又は2に記載のセメント組成物用添加剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のセメント組成物用添加剤を含有してなるセメント組成物を硬化してなるセメント構造体。

【公開番号】特開2006−206367(P2006−206367A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19534(P2005−19534)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】