セラミックスローラ及びその製造方法
【課題】金属製の軸芯と、該軸芯の外周に形成される多孔質セラミックスの円筒体層とを備えるセラミックスローラにおいて、200℃を超えるような温度に加熱されても、円筒体層に亀裂を発生させないセラミックスローラ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】帯電像を用いる電子写真装置の熱定着装置で使用されるセラミックスローラであって、金属製の軸芯と、該軸芯の外周に形成される無機繊維を含有するセラミックス製の円筒体層からなり、該円筒体層は、軸芯長手方向に圧縮されて該軸芯に固定され、且つ該無機繊維は該軸芯長手方向に対して垂直方向に配向しているセラミックスローラ。
【解決手段】帯電像を用いる電子写真装置の熱定着装置で使用されるセラミックスローラであって、金属製の軸芯と、該軸芯の外周に形成される無機繊維を含有するセラミックス製の円筒体層からなり、該円筒体層は、軸芯長手方向に圧縮されて該軸芯に固定され、且つ該無機繊維は該軸芯長手方向に対して垂直方向に配向しているセラミックスローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の軸芯と、該軸芯の外周に形成される円筒体層を備えるセラミックスローラ及びその製造方法に関し、特に帯電像を用いる電子複写機やプリンタなどの電子写真装置に搭載される熱定着装置に使用されるセラミックスローラ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電複写機、レーザープリンタなどの電子写真装置は、暗中で一様に帯電した感光体表面に光学像を投影すると、感光体表面には光学像に対応した静電気潜像が形成され、その表面に現像剤である帯電トナーを散布して静電気的に付着させて画像を現像し、この感光体表面に前記トナーの帯電とは反対の極性に帯電させた印刷紙の表面を重ねて該トナーを紙面に転写し、この紙面上のトナーを熱定着ローラにより加圧下、加熱、溶融して紙面上に熱定着することにより、画像を複写させるものである。
【0003】
熱定着ローラにより紙面上のトナーを熱定着する熱定着装置部分としては、通常、熱定着ローラと加圧ローラの2つのローラで構成されたもの、あるいは、熱定着ローラと加圧ローラと搬送ローラの3つのローラで構成され、熱定着ローラまたは加圧ローラのうち何れか一方と、搬送ローラとの間に巻装される無端ベルトを有するものが知られている。すなわち、印刷紙は、その裏面側から加圧ローラ又は無端ベルトを介した加圧ローラで支持され、表面側から加熱された熱定着ローラにより加圧、加熱させて紙面上のトナーが融着して熱定着される。熱定着ローラの温度は、一般的に150〜200℃程度であるが、ローラ昇温時には、オーバーシュートにより、一時的にそれ以上の温度に達する場合も考えられる。
【0004】
熱定着ローラにより紙面上のトナーを融着させるために、融着可能な高温に加熱されるが、熱定着操作が行われる際、常に熱定着温度より遥かに低温の印刷紙や加圧ローラ、あるいは無端ベルトと接触し、回転するため、その瞬間に、多量の熱エネルギーが奪い取られて冷却される。このため、熱定着ローラは、このような接触による冷却を見込んで、より高い温度に加熱しておく必要があり、消費電力が増大してしまう。従って、加圧ローラには、熱伝導率の小さな性質、すなわち、断熱性が要求される。また、加圧ローラは、高温の熱定着ローラと接触するため、耐熱性も要求される。このような加圧ローラとして、軸芯と、該軸芯の外周に形成される多孔質セラミックスの円筒体層からなる加圧セラミックスローラが提案されている(特開2004−86219号公報)。
【0005】
しかしながら、このような加圧セラミックスローラにおいて、軸芯が金属製の場合、熱定着ローラが加熱される際、金属製の軸芯とセラミックス製の円筒体層の熱膨張の差による応力を緩和できず、円筒体層に亀裂を生じさせる可能性がある。金属のうち、例えばステンレス鋼の熱膨張率は約10〜20×10−6/Kであり、セラミックスの熱膨張率は約3〜8×10−6/Kであり、温度上昇に伴う熱膨張の差はしばしばセラミックスの円筒体層に亀裂や欠損を生じさせるという問題がある。
【0006】
特開平2−261922号公報には、金属製の軸芯とセラミックス層からなる複合ローラにおいて、ローラ加熱時における、金属とセラミックス層の熱膨張の差により生じる応力を、中間層となる粘弾性体で緩和して、セラミックス層の亀裂を防ぐことが開示されている。しかし、この複合ローラにおける中間層となる粘弾性体は、40〜120℃のような比較的低温での使用であるため、耐熱性のないゴム類であるか、ゴム類より硬質な樹脂類である。また、粘弾性体からなる中間層には接着の機能はないため、別途、エポキシ系やシリコーン系などの接着剤を使用した接着層を設けており、製造工程を複雑にしている。
【0007】
一方、特開昭54−74950号公報には、正温度特性サーミスタからなる複数個の円筒部材を連結して構成した熱ロールが開示されている。しかし、該熱ロールにおいて複数個の円筒部材を連結するのは、正温度特性サーミスタの加工性がよくないことから、加工の容易な短い寸法の円筒部材を所要長に応じて複数連結したものであり、セラミックスローラにおける金属製の軸芯とセラミックス製の円筒体層の熱膨張の差による応力歪の問題を解決するものではない。
【特許文献1】特開2004−86219号公報
【特許文献2】特開平2−261922号公報
【特許文献3】特開昭54−74950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、金属製の軸芯と、該軸芯の外周に形成される多孔質セラミックスの円筒体層とを備えるセラミックスローラにおいて、200℃を超えるような温度に加熱されても、円筒体層に亀裂を発生させないセラミックスローラ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、円筒体層を、軸芯長手方向に圧縮して軸芯に固定し、且つ無機繊維を軸芯長手方向に対して垂直方向に配向させたセラミックスローラであれば、ローラが加熱されて金属製の軸芯が熱膨張しても、円筒体層が弾性変形して追従するため、円筒体層に亀裂を生じさせることがない。また、圧縮弾性率が小さい、すなわち圧縮弾性範囲が大きい特性を圧縮方向に利用し、ローラ表面強度としては圧縮弾性率が高い強度特性を選択的に利用することができることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、帯電像を用いる電子写真装置の熱定着装置で使用されるセラミックスローラであって、金属製の軸芯と、該軸芯の外周に形成される無機繊維を含有するセラミックス製の円筒体層からなり、該円筒体層は、軸芯長手方向に圧縮されて該軸芯に固定され、且つ該無機繊維は該軸芯長手に対して垂直方向に配向していることを特徴とするセラミックスローラを提供するものである。
【0011】
また、本発明は、無機繊維を含む原材料と水を混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、スラリーから板状または柱状の成形体を湿式プレス成形又は抄造によって得る成形工程と、成形体に無機繊維の配向方向に対して垂直に孔を空け、中空部を備えた成形片を得る工程と、成形片の中空部に軸芯を通し且つ成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程とを有することを特徴とするセラミックスローラの製造方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、無機繊維を含む原材料と水を混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、スラリーから湿式プレス成形により無機繊維の配向方向に対して垂直に貫通する中空部を備えた円筒状の成形片を得る成形工程と、成形片の中空部に軸芯を通し且つ成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程とを有することを特徴とするセラミックスローラの製造方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、無機繊維を含む原材料と水を混合して水系混合物を調整して混練物を得る混練工程と、混練物を押出成形して柱状又は板状の成形体を成形する成形工程と、成形体の押出方向に対して垂直に孔を空け、中空部を備えた成形片を得る工程と、成形片の中空部に軸芯を通し且つ成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程とを有することを特徴とするセラミックスローラの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のセラミックスローラによれば、円筒体層を形成するセラミックスは、軸芯長手方向における圧縮弾性により、ローラが加熱されて金属製の軸芯が軸芯長手方向に熱膨張しても、円筒体層が弾性変形して追従するため、円筒体層に熱膨張の差に起因する応力が発生せず亀裂を生じさせることがない。また、圧縮弾性率が小さい、すなわち圧縮弾性範囲が広い特性を圧縮方向に利用することができ、ローラ表面強度としては圧縮弾性率が高い強度特性を選択的に利用することができる。また、本発明のセラミックスローラの製造方法によれば、比較的簡易な工程により、新規な構造のセラミックスローラを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のセラミックスローラは、中心から外側に向けて順に、金属製の軸芯、及びセラミックス製の円筒体層からなる。なお、本発明において、セラミックスとは非金属無機材料を主成分とする材料を言う。本発明において、軸芯としては、使用に耐える剛性を有する金属であれば、特に制限されず、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、炭素鋼などが挙げられる。本発明は、軸芯が金属製で、その外周の円筒体層がセラミックス製の場合における加熱時の熱膨張の差による円筒体層の亀裂を防止するものである。
【0016】
本発明において、軸芯の外周に形成されるセラミックス製の円筒体層としては、特に制限されず、低熱伝導率及び低熱容量で表される高断熱性、高耐熱性、高強度のものが好適であり、具体的には、ケイ酸カルシウムを主成分とし、無機繊維を補強繊維とするセラミックス(以下、第1のセラミックスとも言う。)及び無機質バインダーと無機繊維を主成分とするセラミックス(以下、第2のセラミックスとも言う。)が挙げられる。
【0017】
次に、第1のセラミックスについて説明する。第1のセラミックスにおいて、ケイ酸カルシウムとしては、特に制限されず、ケイ酸質原料とカルシウム原料を水の存在下で水熱反応せしめて生成した化合物である。ケイ酸カルシウムの結晶としては、例えばゾノトライト結晶、トバモライト結晶、不定形C−S−H結晶等が挙げられる。これらの結晶は、単独結晶または2つ以上が混在する結晶であってもよいが、単独結晶が好ましい。特にゾノトライト結晶からなる成形体は軽量で比強度が非常に大きく、耐熱性と断熱性に優れているため好ましい。ゾノトライト結晶は、集合し且つ結合して二次粒子を形成している。このような結晶は、円筒体層表面をX線回折することにより容易に特定することができる。
【0018】
ゾノトライト結晶の二次粒子は、明確な球形状で、粒子表面には針状のゾノトライト結晶が栗のいが状に析出しており、内部が空洞またはそれに近い状態となっている。従って、この二次粒子を用いて成形した場合、非常に嵩高く、熱伝導率及び熱容量が低いものとなる。また、この二次粒子の自己硬化性により、相互に結合しているため、軽量であっても優れた強度も有している。
【0019】
ケイ酸カルシウムと併用される無機繊維は、補強繊維として使用されるものである。無機繊維としては、耐熱性の無機繊維であって、例えば、ガラス繊維、セラミックス繊維、アルミナ繊維、ワラストナイト、パルプ、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、カーボン繊維などが挙げられる。なお、これらの無機繊維は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
円筒体層は、ケイ酸カルシウム及び無機繊維以外に、補強材、充填材、軽量骨材等が必要に応じて任意の配合割合で添加されていてもよい。補強材としては、セメント、石膏等が挙げられ、充填材としては、タルク、珪藻土、フライアッシュ等が挙げられ、軽量骨材としては、マイクロシリカ、パーライト、シラスバルーン、ガラスバルーン等が挙げられる。また、その配合量としては、例えば、ケイ酸カルシウム100質量部に対して、無機繊維2〜20質量部、好ましくは5〜10質量部、補強材0〜20質量部、好ましくは10〜20質量部、充填材0〜20質量部、好ましくは5〜10質量部、軽量骨材0〜20質量部、好ましくは5〜10質量部である。
【0021】
第2のセラミックスは、断熱ローラの円筒体層に用いる公知のセラミックスであり、例えば特開2004−301293号に開示されている。
【0022】
第2のセラミックスで使用する該無機質バインダーは、乾燥及び焼成工程において自らセラミックス成分となり且つ該無機繊維を相互に固結する材料である。該無機質バインダーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ガラスフリット、コロイダルシリカ、アルミナゾル、シリカゾル、珪酸ソーダ、チタニアゾル、珪酸リチウム、水ガラスなどが挙げられる。これらの無機質バインダーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
第2のセラミックスで使用する無機繊維としては、耐熱性の無機繊維であって、例えば、アルミナシリカ繊維、アルミナ繊維、クリソタイル、カーボンファイバー、ガラス繊維、スラグウール、シリカ繊維、ジルコニア繊維、石膏ウイスカー、炭化珪素繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、高珪酸ファイバー、溶融シリカファイバー及びロックウールなどが挙げられる。これらの無機繊維は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
第2のセラミックスにおいて、無機繊維以外に、粒子状耐熱性無機質材料を配合することができる。粒子状耐熱性無機質材料としては、クレー、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミ、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、ジルコニア、チタニア、セピオライト、カオリン、ゼオライト、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミノボロシリケート、アルミノシリケート及び多孔質炭素等が挙げられる。また、粒子状耐熱性無機質材料として中空セラミックス、ガラスバルーン等の中空材料を使用することもできる。なお、これらの粒子状耐熱性無機質材料は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
上記の無機繊維の長さまたは粒子状耐熱性無機質材料の長径は、特に限定されず、水中分散性、押出成形性などを考慮し、3mm以下のものが好ましい。また、無機繊維の直径および粒子状材料の直径は、製品であるセラミックスローラの内部熱容量をより小さくするためには、やや太い、例えば1〜15μmのものが好ましい。
【0026】
第2のセラミックスにおいて、無機繊維の使用量は、無機質バインダー100質量部に対して50〜500質量部、好ましくは100〜300質量部である。使用量が50質量部未満であると、軸芯長手方向における圧縮弾性率を小さく採ることができず、ローラが加熱されて金属製の軸芯が軸芯長手方向に熱膨張しても、円筒体層が弾性変形し難くなり、円筒体層に亀裂が生じ易くなる。また、使用量が500質量部を超えると、得られる円筒体層の強度が十分でなくなる。
【0027】
本発明のセラミックスローラの一例を図1を参照して説明する。図1(A)はセラミックスローラの断面図、(B)は(A)のセラミックスローラで使用する円筒体層の断面図である。セラミックスローラ10は、中心から外側に向けて順に、金属製の軸芯4及びセラミックスの円筒体層1からなる。軸芯4は軸芯4に装着された円筒体層を両側から所定の押圧力で挟持することができるフランジ2と、ジャーナル部3とからなる。円筒体層1は、同じ物性且つ同じ大きさの6つの分割円筒体層1a〜1fが端面同士付き合わされて繋がったものであり、軸芯4の長手方向に圧縮されて軸芯4に固定される。なお、本発明において、円筒体層1は分割されたものである必要はなく、また分割円筒体層を使用する場合、分割個数に制限はなく、分割円筒体層の軸芯長手方向の長さ寸法は互いに異なっていてもよい。
【0028】
セラミックスローラ10における、軸芯4に装着された後の軸芯長手方向の長さl1は、軸芯4に装着される前の軸芯長手方向の長さl0より小である。すなわち、l1<l0であり、l0−l1=Δlは圧縮長さである。圧縮長さΔlとしては、特に制限されないが、軸芯4の軸芯長手方向における熱膨張による長さの伸び以上、好ましくは軸芯長手方向における軸芯とセラミックスとの熱膨張による長さの伸びの差以上であることが好ましく、更に圧縮長さΔlは円筒体層1の弾性範囲内であることが、本発明の効果が顕著に表れる点で好ましい。圧縮長さΔlの上限値は、圧縮長さ方向における材料の応力-歪曲線(SS曲線)から得られる弾性限界点であり、公知の計算手法で得ることができる。
【0029】
具体的には、例えば軸芯が熱膨張率17.3×10−6/KのSUSであり、円筒体層が嵩密度0.3g/cm3、熱膨張率3×10−6/Kのセラミックス製からなる常温で311mmの長さのセラミックスローラの場合、200℃では熱膨張によりSUSが0.91mm膨張し、セラミックスが0.16mm膨張し、その差0.75mmの歪を生じることなる。このため、圧縮長さΔlは0.75mmを越える長さとする。通常、圧縮長さΔlは1.0mm以上であれば、熱膨張率の大きい金属と熱膨張率の小さい金属で生じる熱歪みをカバーできる。圧縮長さΔlが長い場合は、熱膨張時にも圧縮方向に応力がかかりローラ構造強度としては好ましいが、圧縮長さΔlは長過ぎると、セラミックスの弾性限界を超えてしまい、軸芯の熱膨張に円筒体層の弾性変形が追従できなくなる。
【0030】
また、円筒体層1中の無機繊維は軸芯4の長手方向に対して垂直方向に配向している。無機繊維の配向とは、無機繊維の長手方向が延出する方向を言う。この無機繊維の特定配向に伴う円筒体層1の特性を図2〜図4を参照して説明する。図2は嵩密度0.23、0.33及び0.43g/cm3の3つのセラミックスの嵩密度と圧縮強度の関係を示す図、図3は同様のセラミックスの嵩密度と圧縮弾性率の関係を示す図、図4は圧縮長さと面圧(軸芯長手方向の圧縮時の面圧)の関係を示す図である。それぞれの図において、符号◆は軸芯長手方向における関係を、符号■は軸芯長手方向に対して垂直方向における関係をそれぞれ示す。図2から明らかなように、同じ嵩密度の場合、軸芯長手方向に対して垂直方向における圧縮強度が、軸芯長手方向における圧縮強度よりも高いことから、例えば熱ローラなどの他のローラとの接触使用においてローラ表面強度の高い耐久性のあるローラが得られる。また、図3から明らかなように、同じ嵩密度の場合、軸芯長手方向に対して垂直方向における弾性率が、軸芯長手方向における弾性率よりも高いことから、軸芯長手方向における歪、すなわち弾性が大きいことが判る。また、図4から明らかなように、同じ面圧の場合、軸芯長手方向の圧縮長さは、軸芯長手方向に対して垂直方向における圧縮長さよりも大きいことから、同じ圧縮長さを採る場合、軸芯長手方向では面圧は少なくて済む。従って、ローラを組み付ける場合、軸芯長手方向においては、圧縮長さを大きく採り易い。このように、本発明のセラミックスローラにおいて、無機繊維の特定配向に伴う円筒体層は、軸芯長手方向に対して垂直方向において圧縮強度が高く、軸芯長手方向の圧縮弾性率は、軸芯長手方向に対して垂直方向の圧縮弾性率より小さい、すなわち、軸芯長手方向では弾性範囲が大きく、圧縮長さを大きくとれる有利な特性を有することになる。
【0031】
円筒体層1中、無機繊維が軸芯4の長手方向に対して垂直方向に配向していることは、セラミックスのSEM写真で観察することができ、また、圧縮弾性率が、軸芯長手方向と、軸芯長手方向に対して垂直方向とは大きく異なることから、この圧縮弾性率を測定することによっても確認することができる。
【0032】
円筒体層のセラミックスの嵩密度は、0.05〜1.5g/cm3であり、第1のセラミックスの場合、その嵩密度は、通常0.05〜0.7g/cm3であり、好ましくは0.2〜0.4g/cm3である。第2のセラミックスの場合、その嵩密度は、通常0.5〜1.5g/cm3であり、好ましくは0.5〜1.0g/cm3である。
【0033】
また、円筒体層のセラミックスの熱容量は、0.04〜1.5J/(K・cm3)であり、第1のセラミックスの場合、0.04〜0.4J/(K・cm3)である。第2のセラミックスの場合、0.4〜1.5J/(K・cm3)である。また、円筒体層のセラミックスの熱伝導率は、0.01〜0.5W/(m・K)であり、第1のセラミックスの場合、その熱伝導率は0.01〜0.15W/(m・K)であり、好ましくは0.06〜0.09W/(m・K)である。第2のセラミックスの場合、その熱伝導率は0.1〜0.5W/(m・K)であり、好ましくは0.1〜0.3W/(m・K)である。
【0034】
熱容量(KJ/cm3)は、試料を粉砕し、そのうちの50gを、高温試料投下型比熱測定装置を用いて比熱を測定し、嵩密度の値から算出することができる。また、熱伝導率(W/m・K)は、幅100mm、厚さ20mm、長さ50mmの平面板状の試験体における表面を、JIS R2618 非定常熱線法に準じて、迅速熱伝導率計QTM−500(京都電子工業株式会社製)により、室温で測定したものである。なお、上記の円筒体層は異なった嵩密度や熱容量のセラミックス層から構成されていてもよい。たとえば、外周面に近い部分はその内部より比較的低い熱容量のセラミックス層とすることもできる。
【0035】
本発明のセラミックスローラにおいて、軸芯と円筒体層との間に、応力緩和層を設けることが、高温度に加熱されても、更に安定して円筒体層に亀裂を発生させることがない点で好ましい。応力緩和層としては、特に制限されないが、硬度が、デュロメータAで10〜90、好ましくは20〜50、更に好ましくは20〜30の接着層であることが、接着と熱応力緩和を共に達成できる点で好ましい。一般的に、ゴムの柔軟性(弾性)の指標は、ゴム硬度で表される。接着層の硬度がデュロメータAで10未満であると、接着性が低下し、また、デュロメータAで90を超えると、熱膨張の差に起因する応力を緩和する程度の弾性が発現しない。デュロメータAは、JIS K6253(加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法)に規定される方法で測定することができ、デュロメータ硬さ試験のタイプA(中硬さ用試験)として規定されるものである。このような接着層としては、シリコーンゴムが挙げられる。
【0036】
本発明のセラミックスローラにおいて、円筒体層の外周には、更にPFA樹脂のフイルムなどのフッ素樹脂層やシリコーンゴム層、ガラス層などの無機質の表面層を被覆することができる。
【0037】
次に、本発明のセラミックスローラの製造方法について説明する。本発明のセラミックスローラの製造方法としては、無機繊維を含む原材料と水を混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、スラリーから板状または柱状の成形体を湿式プレス成形又は抄造によって得る成形工程と、成形体に無機繊維の配向方向に対して垂直に孔を空け、中空部を備えた成形片を得る工程と、成形片の中空部に軸芯を通し且つ成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程とを有する方法(以下、「第1の製造方法」と言う。)、無機繊維を含む原材料と水を混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、スラリーから湿式プレス成形により無機繊維の配向方向に対して垂直に貫通する中空部を備えた円筒状の成形片を得る成形工程と、成形片の中空部に軸芯を通し且つ成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程とを有する方法(第2の製造方法)及び無機繊維を含む原材料と水を混合して水系混合物を調整して混練物を得る混練工程と、混練物を押出成形して柱状又は板状の成形体を成形する成形工程と、成形体の押出方向に対して垂直に孔を空け、中空部を備えた成形片を得る工程と、成形片の中空部に軸芯を通し且つ成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程とを有する方法(第3の製造方法)が挙げられる。
【0038】
第1の製造方法は、第1のセラミックスを製造するのに好適な方法である。該方法のスラリー調製工程において、無機繊維及びケイ酸カルシウムを含むスラリーを用いることができる。ケイ酸カルシウムは、ケイ酸カルシウム結晶を得る結晶化工程を経て得られるものである。すなわち、結晶化工程において得られるケイ酸カルシウム結晶の種類としては、ゾノトライト結晶、トバモライト結晶、不定形C-S-H結晶のいずれであってもよいが、ゾノトライト結晶のみを生成させることが好ましい。結晶化工程において、ゾノトライト結晶を生成させるには、オートクレーブ中の温度条件、圧力条件、攪拌条件を適宜設定すればよい。ゾノトライト結晶の一次粒子は針状結晶を形成し、該一次粒子は、直径10〜150μmの球状の二次粒子を形成する。また、一次粒子は、集合してさらに結合して内部が空洞またはそれに近い状態の球状の二次粒子を形成し、二次粒子の表面には針状のゾノトライト結晶が栗のいが状に析出する。こうしたゾノトライト結晶からなる二次粒子は、乾燥して水を除いただけで強固に結びついて強度が発現する。なお、一次粒子および二次粒子の形態は走査型電子顕微鏡等により確認できる。
【0039】
ケイ酸カルシウム結晶として好適なゾノトライト結晶を得るためには、ケイ酸質原料と石灰質原料とを、ケイ酸質原料と石灰質原料の合計に対して通常20〜40倍量の多量の水と攪拌しながらオートクレーブ中で、飽和蒸気圧7〜20kg/cm2、好ましくは13〜17kg/cm2で水熱合成させる。また、ケイ酸質原料と石灰質原料とは、CaO/SiO2をモル比で通常0.8〜1.2、好ましくは0.9〜1.1に調整すればよい。
【0040】
ケイ酸質原料としては、成分としてSiO2が含まれていれば、特に制限はされず、例えば、珪石、溶融シリカ等が挙げられる。このうち、結晶質のもの、特に珪石を用いることが、ゾノトライト結晶を生成させることができる点で好ましい。また、平均粒径5〜15μmの微粉末を用いることが好ましい。石灰質原料としては、成分としてCaOが含まれていれば、特に制限はされず、例えば、消石灰、生石灰等が挙げられる。このうち、生石灰を用いることが、ゾノトライト結晶を十分に成長させることができる点で好ましい。
【0041】
スラリーに配合される無機繊維は、第1のセラミックスにおいて記載されたものと同じものが挙げられる。
【0042】
スラリー調製工程において、スラリーには、無機繊維及びケイ酸カルシウム結晶の他に、任意成分として補強材、充填材又は軽量骨材がさらに含まれていてもよい。こうした任意成分を添加することにより、さらに強度の高いケイ酸カルシウム結晶含有成形体を得ることができる。無機繊維、補強材、充填材及び軽量骨材は、円筒体層の説明で記載されたものと同様のものが挙げられる。
【0043】
成形工程は、スラリーから板状又は柱状の成形体を、湿式プレス又は抄造により得ると共に、無機繊維の配向を一定方向にする工程である。所望の成形体の密度が0.5g/cm3未満の場合には、水量が多いスラリー状の状態より成形する湿式プレス(脱水プレス)成形法が好適である。湿式プレス成形法によれば、ゾノトライト二次粒子の自己硬化性作用により、嵩密度0.05〜0.5g/cm3といった比較的低密度であっても、熱伝導率0.01〜0.1W/(m・K)かつ圧縮強度1〜10Mpa、さらには、熱伝導率0.06〜0.09W/(m・K)かつ圧縮強度3〜5Mpaの成形体を得ることができる。成形体の密度は、スラリー中のゾノトライト結晶二次粒子の嵩高さ、脱水成形時の成形圧力を変更することにより調整すればよい。例えば、ゾノトライト結晶二次粒子を嵩高くすると比較的嵩密度が低い成形体を得ることができる。ゾノトライト結晶二次粒子の嵩密度は、出発原料、スラリーの濃度や攪拌条件等を適宜変更して調整される。成形圧力は通常1〜100kgf/cm2、好ましくは10〜70kgf/cm2、時間は通常1〜30分、好ましくは5〜10分かけて行うのがよい。なお、無機繊維の配向方向は、湿式プレス法の場合、プレス方向に対して垂直方向であり、抄造法の場合、水が抄造機から重力落下する方向に対して垂直方向である。また、板状の成形体は抄造又は湿式プレスにより得られ、柱状の成形体は湿式プレスにより得られる。柱状は四角柱等の多角柱、円柱などが挙げられる。上記方法により得られた成形体は、公知の技術により乾燥することができる。乾燥条件は、通常50〜300℃で1〜24時間、好ましくは150〜250℃で3〜10時間かけるのが好ましい。
【0044】
中空部を備えた成形片を得る工程は、前記成形工程で得られた成形体に無機繊維の配向方向に対して垂直に孔を空ける工程であり、その一例を図5を参照して説明する。図5は湿式プレス法で得られた板状の成形体に孔を空ける工程を説明する図である。図5中、符号Xで示す方向、すなわち板状の成形体5の厚み方向が板状の成形体5のプレス方向である。従って、板状の成形体5中、無機繊維はプレス方向に対して垂直方向に配向している。そして、図5中、平面視における一辺が、円筒体層の外径と同じか、またはそれよりやや大きい寸法の四角形55を有する柱状の成形片6a、6b・・において、該四角形の中心に軸芯4が嵌る内径を有する中空部7a、7b・・を空ける。当該工程においては、板状の成形体5に中空部7a、7b・・を空けた後、切断線51、52に沿って切断して成形片6a、6b・・を得てもよく、また、板状の成形体5を切断線51、52に沿って切断して成形片6a、6b・・を得た後、中空部7a、7b・・を空けてもよい。次いで、例えば図6に示すように、金属製の軸芯4に対して、成形片6aを挿入し、次いで成形片6bをその次ぎに挿入し、順次所定個数の成形片を挿入し、軸芯長手方向に圧縮固定し、次いで、成形片6a〜6fの外周を切削加工して、6つの分割円筒体層が端面で繋がった円筒形状の成形体を得る。従来のセラミックスローラにおいて、円筒体層は一体物であったため、図12に示すように、板状の成形体5のプレス方向Xに対して垂直方向に中空部71を形成する必要があった。この場合、ローラを形成すると、円周方向における無機繊維の配向は異方性があり、不均一であった。また、長手方向に中空部を形成する加工は容易ではない。これに対し、本発明によれば、円周方向における無機繊維の配向に異方性はなく、均一である。また、長さが短い中空部を形成することは容易である。また、長さが短い成形片は、円筒状の湿式プレス成形からも得ることができる。
【0045】
成形片1a〜1fを軸芯長手方向に所定の圧縮長さΔlとなるように圧縮して固定する方法(図1及び図6参照)としては、例えば雌螺子がきられたフランジをねじ込む方法、または圧入された成形片とローレット加工で軸芯に形成される凹凸との固定方法等が挙げられる。これにより、セラミックスローラ10は、フランジ2間の圧縮力と軸芯4の周面41と円筒体層1の内周面11との押圧力により回転トルクを発生することができる。従って、軸芯4と円筒体層1間の接着剤は使用せずともよい。なお、軸芯の周面と円筒体層1の内周面との押圧力は、フランジ2間の圧縮により、円筒体層1は軸芯長手方向のみならず、軸芯長手方向に対して垂直方向にも圧縮力を与えることになり、軸芯の周面と円筒体層1の内周面との押圧力は強いものとなる。
【0046】
第1の製造方法において、焼成工程(オートクレーブ)は任意の工程であるが、焼成工程を行う場合、焼成後に成形片を得ることが、寸法変化が生じない点で好ましい。また、成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する際、軸芯と成形片との間に、例えばシリコーンゴムなどの接着剤を注入して、応力緩和層を形成することができる。また、軸芯に成形片を装着した後、円筒体層の外周に、更にPFA樹脂のフイルムなどのフッ素樹脂層、シリコーンゴム層、ガラス層などの表面層を、公知の方法により被覆することができる。
【0047】
次ぎに、第2の製造方法を説明する。第2の製造方法において、第1の製造方法と同一構成要素については同様であるため、その説明を省略し、異なる点について説明する。すなわち、第2の製造方法において、第1の製造方法と異なる点は、スラリー調製工程と、成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程との間の工程を、スラリーから湿式プレス成形により無機繊維の配向方向に対して垂直に貫通する中空部を備えた円筒状の成形片を得る成形工程とした点にある。
【0048】
当該成形工程においては、中空部を備えた円筒状の成形片を直接得るものである。かかる成形工程は、成形型内に軸芯を配置する工程と、成形型と軸芯との間にスラリーを流し込む工程と、成形型内で軸芯長手方向に加圧して成形片を得る工程とを有する軸芯一体成形方法が挙げられる。当該工程の一例を図7を参照して説明する。成形型9は、円筒状の外筒93の径方向の中心で且つ軸方向に延出する軸芯91と、軸芯91を貫通し軸方向に移動自在に設置される一対の円板状のプレス板92とを有する。プレス板92はスラリーを成形及び脱水するもので、多孔構造である。外筒93、軸芯91及び成形板92で囲まれる空間にスラリーを流し込み、成形型内でプレス板92により軸芯長手方向(符号X方向)に加圧して脱水しながら成形片1aを得る。なお、成形片1aを得た後、図8に示すように、更に成形片1aとプレス板92間の空間にスラリーを流し込み、軸芯長手方向(符号X方向)に加圧して脱水しながら成形片1bを得、この操作を順次行って、成形型内で円筒状の成形片1a、1b・・を得ることができる。
【0049】
第3の製造方法は、第2のセラミックスを製造するのに好適な方法である。混練工程は、例えば、無機繊維、無機質バインダー、粒子状耐熱性無機質材料、押出し成形助剤の他、必要によりさらに耐水性有機質材料と、を主成分とする混合物に水を加えて水系混合物を調製する。無機繊維、無機質バインダー及び粒子状耐熱性無機質材料は、第2のセラミックスで記載したものと同じものである。混練物は、固形分100質量部に対して50〜100質量部の水を含むようにすれば、押出成形法に好適な混練物とすることができる。ここで、押出し成形助剤は、押出し成形に使用できる有機バインダーであれば特に制限はなく、有機バインダーの配合量は、無機繊維100質量部に対して1〜30質量部であればよい。また、混練物には、その他の任意成分が含まれていてもよい。また、各原料成分の配合量は、無機繊維100質量部に対して、無機バインダー5〜300質量部、好ましくは50〜100質量部、耐熱性無機質材料0〜20質量部、好ましくは10〜20質量部、耐水性有機質材料0〜100質量部、好ましくは30〜80質量部、押出し成形助剤1〜30質量部、好ましくは10〜20質量部である。密度の調整は、混練水量、無機繊維量、耐水性有機質材料量を組み合わせて調整すればよい。混錬工程に使用する混錬装置としては、例えば、加圧型ニーダ、双腕型ニーダ、高速ミキサー、バタフライミキサー等挙げられるが、公知のものであれば適宜使用することができる。
【0050】
混練物に配合される無機繊維は、第2のセラミックスにおいて記載された無機繊維と同じものが挙げられる。また、耐水性有機質材料としては、特に制限されず、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、フェノール樹脂などの耐水性合成樹脂、木材、竹材、その他の天然有機物などが挙げられる。耐水性有機質材料の形状は、特に制限されず、繊維状又は粒子状が挙げられる。これらの材料としては、内部発泡しているものも好適に使用することができる。また、これら耐水性有機質材料は、1種単独又は2種以上を組合わせて使用することができる。
【0051】
混練工程で得られた混練物を押出成形して柱状又は板状の成形体を成形する成形方法の一例を図9を参照して説明する。図9(A)は角柱押出成形のイメージ図、(B)は押出成形された角状成形体である。すなわち、当該成形工程において、混練物は押出し開口95から角柱状96に押し出される。この場合、角柱状96中、無機繊維の配向は、押出方向(符号Y)である。次いで、成形体96の押出方向に対して垂直に孔961を空け、切断線962に沿って切断して、中空部を備えた角状の成形片を得る。なお、成形片の中空部に軸芯を通し且つ成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程は、前記第1の製造方法の同工程と同じである。
【0052】
本発明のセラミックスローラは、嵩密度が小さく、熱容量および熱伝導率が小さいため、断熱性が優れる。このため、電子複写機やプリンタなどの電子写真装置に搭載される熱定着装置に使用される断熱性が要求されるセラミックスローラに使用することができる。すなわち、本発明のセラミックスローラが使用できる用途としては、種々な名称で呼ばれている、例えば、加圧ローラ、搬送ローラ、補助ローラ、ドライブローラ、剥離ローラ、テンションローラ、駆動ローラ、ガイドローラ等が挙げられる。
【0053】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。なお、実施例および比較例において、表1に記載の各評価項目は以下の試験法により測定した。
【0054】
(1) 嵩密度(g/cm3):試験片の質量と形状寸法から算出される体積とから算出した。
(2)圧縮強度:プレス面圧縮強度はプレス面方向における圧縮強度であり、層間圧縮強度はプレス面方向に対して垂直方向における圧縮強度であり、それぞれJISR1608に準拠して測定したものである。
(3)圧縮弾性率:プレス面圧縮弾性率はプレス面方向における圧縮弾性率であり、層間圧縮弾性率はプレス面方向に対して垂直方向における圧縮弾性率であり、それぞれ弾性領域での歪みと応力より算出した((応力σ/歪みε)(MPa))ものである。
(4)ゴム硬度:試験片として、直径40mm、厚さ10mmの円柱状の試験片を別に作製し、JIS K6253のデュロメータ硬さ試験における、タイプAの中硬さ用試験方法に準拠して測定したものである。
(5)ローラ加熱試験;送風定温恒温器(「DN610」ヤマト科学社製)内にローラを置き、昇温速度40℃/時間で所定の加熱温度まで加熱し、1時間保持した後、降温速度40℃/時間で100℃まで降温し、恒温器からローラを取り出し、円筒体層の亀裂の有無を目視観察する。なお、所定の加熱温度は100、200及び300℃の各温度である。
(6)回転加熱試験;ハロゲンランプ内蔵の加熱ローラに、試料であるセラミックスローラを圧接回転加熱する装置を使用し、加熱ローラの加熱温度200℃、回転数100rpm、総荷重60kgfの条件下、100時間稼動させ、円筒体層の破壊の状況を観察する。
【実施例1】
【0055】
(ゾノトライト結晶の生成)
石灰質原料としての生石灰(150メッシュの足立生石灰)を24倍量の90℃の熱水に投入し、160rpmで回転する攪拌翼で攪拌しながら30分間消化して石灰乳を得た。次いで、得られた石灰乳にケイ酸質原料としての珪石粉末(伊豆珪石特粉D)をCaO/SiO2モル比が1.0となるように添加し、同時に、生石灰と珪石粉末との合計量の30倍量の水を加えて均一なスラリーとし、オートクレーブ中、120rpmで攪拌しながら、圧力16kg/cm2で4時間水熱反応させた。得られたスラリー中の固形物は実質的にゾノトライト結晶からなり、針状結晶が多数集合した直径30〜130μmの球状の二次粒子を形成していた。
【0056】
(スラリーの調整)
該スラリーにゾノトライト結晶100重量部に対して5.6重量部のポルトランドセメント(「普通ポルトランドセメント」;宇部三菱セメント社製)、5.6重量部のガラス繊維(「ECS131−33G」;日本電気硝子社製)、固形分換算で100ppmの凝集剤(「サンフロックN−OP」三洋化成工業社製)を添加して混合して脱水プレス成形用のスラリーを得た。該スラリーを型枠に流し込み、成形圧40kgf/cm2で湿式プレス成形したのち、200℃で24時間乾燥して、長さ300mm、幅300mm、厚さ60mmの板状の成形体を得た。
【0057】
(セラミックスローラの製造)
得られた板状の成形体から、図5に示すように、プレス方向に内径穴を加工して、縦50mm、横50mm、長さ(厚み)60mmの角柱状物に内径29.0mmの中空部を形成した成形片を5個作製した。次いで、ステンレス製の軸芯にこの5個の成形片の中空部を挿入して、5個の分割成形片が繋がったものを得た。次いで、圧縮長さ3mmとなるように、フランジを圧入した。成形片が軸芯に固定したことを確認した後に、成形体片の外径を研削して肉厚5.47mmの円筒体層を得た。圧縮長さ3mmは、ステンレス製の軸芯の300℃の熱歪みより大きく、当該セラミックスの弾性限界より小さいものである。また、円筒体層の周面に厚さ30μmのPFAチューブをシリコーンゴム接着剤で接着して、外径40mm、長さ297mmのセラミックスローラを得た。
【0058】
板状の成形体について、前記の方法で嵩密度、熱伝導率、プレス面圧縮強度、プレス面圧縮弾性率、層間圧縮強度及び層間圧縮弾性強度を測定し、また、セラミックスローラについて、ローラ加熱試験及び回転加熱試験を行い、それらの結果を表1に記載した。その結果、実施例1はローラ加熱試験において、300℃まで加熱しても円筒体層に亀裂は生じなかった。また、回転加熱試験において、円筒体層の破壊は観察されなかった。
【実施例2】
【0059】
(円筒体層の調製)
組成物の配合組成が、ガラス繊維100質量部、無機質バインダーとしてガラスフリット100質量部、可燃性有機物質としてポリエチレン繊維60質量部および押出し成形助剤としてメチルセルロース20質量を水125質量部に混合して水系混合物とし、この混合物を双腕型ニーダで、混練して可塑性混合物を得、次いで、この可塑性混合物を押出成形して縦50mm、横50mmの四角形断面の柱状体を得た。得られた四角柱の成形体を、105℃で5時間乾燥して硬化し、ついで300〜400℃までの範囲で合計24時間加熱して、含有されるポリエチレン繊維およびメチルセルロース成分を焼失させ、その後、さらに大気中にて600℃3時間焼成して、無機質バインダーを融着させて、無機質成分を一体化させた。
【0060】
(セラミックスローラの製造)
得られた角柱状の成形体から、図9(B)に示すように、押出し方向に対して垂直方向に内径穴を加工して、縦50mm、横50mm、長さ60mmの角柱状物に内径29.0mmの中空部を形成した成形片を5個作製した。次いで、ステンレス製の軸芯にこの5個の成形片の中空部を挿入して、5個の分割成形片が繋がったものを得た。次いで、圧縮長さ3mmとなるように、フランジを圧入した。成形片が軸芯に固着したことを確認したのちに、成形体片の外径を研削して肉厚5mmの円筒体層を得た。
【0061】
柱状の成形体について、実施例1と同様に諸物性を測定し、また、セラミックスローラについて、ローラ加熱試験及び回転加熱試験に供し、それらの結果を表1に記載した。その結果、実施例2はローラ加熱試験において、300℃まで加熱しても円筒体層に亀裂は生じなかった。また、回転加熱試験において、円筒体層の破壊は観察されなかった。また、図9の角柱の成形体の上から見た、すなわち、面963から見たSEM写真を図10に示し、図9の角柱の成形体の正面から見た、すなわち、面964から見たSEM写真を図11に示す。図10のSEM写真から、無機繊維の長手方向が図10中、上下方向、すなわち、押出し方向に配向しており、図11では、無機繊維の短手方向、すなわち点で観察されることから、無機繊維がプレス方向に配向していることが判る。
【0062】
比較例1
実施例1と同様の方法で得られた板状の成形体から、図12に示すように、プレス方向に対して垂直方向に内径穴を加工して、縦50mm、横50mm、長さ297mmの角柱状物に内径29.3mmの中空部を形成した成形体を作製し、次いで、ステンレス製の外径29mmの軸芯をこの成形体の中空部に挿入した。この際、軸芯の周面にシリコーンゴム接着剤を塗布して、常温硬化により軸芯と円筒体層を接着させた。成形片が軸芯に固着したことを確認したのちに、成形体片の外径を研削して肉厚5.32mmの円筒体層を得た。また、円筒体層の周面に厚さ30μmのPFAチューブをシリコーンゴム接着剤で接着して、外径40mm、長さ297mmのセラミックスローラを得た。
【0063】
角柱状の成形体について、実施例1と同様に諸物性を測定し、また、セラミックスローラについて、ローラ加熱試験及び回転加熱試験に供し、それらの結果を表1に記載した。その結果、比較例1はローラ加熱試験において、200℃において円筒体層に亀裂が生じた。また、回転加熱試験において、円筒体層の層間方向に破壊が観察された。
【0064】
比較例2
実施例2と同様の方法で得られた柱状の成形体から、押出し方向に内径穴を加工して、縦50mm、横50mm、長さ297mmの角柱状物に内径29.0mmの中空部を形成した成形体を作製し、次いで、ステンレス製の軸芯にこの成形体の中空部を挿入した。この際、軸芯の周面にシリコーンゴム接着剤を塗布して、常温硬化により軸芯と円筒体層を接着させた。成形片が軸芯に固着したことを確認したのちに、成形体片の外径を研削して肉厚5mmの円筒体層を得た。
【0065】
角柱状の成形体について、実施例1と同様に諸物性を測定し、また、セラミックスローラについて、ローラ加熱試験及び回転加熱試験に供し、それらの結果を表1に記載した。その結果、比較例2はローラ加熱試験において、200℃において円筒体層の押出し方向に亀裂が生じた。また、回転加熱試験においても、円筒体層の押出し方向に破壊が観察された。
【0066】
【表1】
【0067】
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】(A)はセラミックスローラの断面図、(B)は(A)のセラミックスローラで使用する円筒体層の断面図。
【図2】無機繊維の特定配向に伴うセラミックスの特性であって、嵩密度と圧縮強度の関係を示す図。
【図3】セラミックスの嵩密度と圧縮弾性率の関係を示す図。
【図4】圧縮長さと面圧(軸芯長手方向の圧縮時の面圧)の関係を示す図。
【図5】湿式プレス法で得られた板状の成形体に孔を空ける工程を説明する図。
【図6】図5で得られた成形片を軸芯に組み付ける工程を説明する図。
【図7】軸芯一体成形方法を説明する図。
【図8】軸芯一体成形方法を説明する他の図。
【図9】押出成形方法を説明する図。
【図10】実施例で得られた角柱の成形体のSEM写真。
【図11】実施例で得られた角柱の成形体の他のSEM写真。
【図12】比較例1で得られた板状の成形体の穴加工を説明する図。
【符号の説明】
【0069】
1 円筒体層
1a〜1f 分割円筒体層
2 フランジ
3 ジャーナル部
4 金属製の軸芯
5 成形体
6a、6b 柱状の成形片
7a、7b 中空部
9 成形型
10 セラミックスローラ
91 軸芯
92 プレス板
93 円筒状の外筒
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の軸芯と、該軸芯の外周に形成される円筒体層を備えるセラミックスローラ及びその製造方法に関し、特に帯電像を用いる電子複写機やプリンタなどの電子写真装置に搭載される熱定着装置に使用されるセラミックスローラ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電複写機、レーザープリンタなどの電子写真装置は、暗中で一様に帯電した感光体表面に光学像を投影すると、感光体表面には光学像に対応した静電気潜像が形成され、その表面に現像剤である帯電トナーを散布して静電気的に付着させて画像を現像し、この感光体表面に前記トナーの帯電とは反対の極性に帯電させた印刷紙の表面を重ねて該トナーを紙面に転写し、この紙面上のトナーを熱定着ローラにより加圧下、加熱、溶融して紙面上に熱定着することにより、画像を複写させるものである。
【0003】
熱定着ローラにより紙面上のトナーを熱定着する熱定着装置部分としては、通常、熱定着ローラと加圧ローラの2つのローラで構成されたもの、あるいは、熱定着ローラと加圧ローラと搬送ローラの3つのローラで構成され、熱定着ローラまたは加圧ローラのうち何れか一方と、搬送ローラとの間に巻装される無端ベルトを有するものが知られている。すなわち、印刷紙は、その裏面側から加圧ローラ又は無端ベルトを介した加圧ローラで支持され、表面側から加熱された熱定着ローラにより加圧、加熱させて紙面上のトナーが融着して熱定着される。熱定着ローラの温度は、一般的に150〜200℃程度であるが、ローラ昇温時には、オーバーシュートにより、一時的にそれ以上の温度に達する場合も考えられる。
【0004】
熱定着ローラにより紙面上のトナーを融着させるために、融着可能な高温に加熱されるが、熱定着操作が行われる際、常に熱定着温度より遥かに低温の印刷紙や加圧ローラ、あるいは無端ベルトと接触し、回転するため、その瞬間に、多量の熱エネルギーが奪い取られて冷却される。このため、熱定着ローラは、このような接触による冷却を見込んで、より高い温度に加熱しておく必要があり、消費電力が増大してしまう。従って、加圧ローラには、熱伝導率の小さな性質、すなわち、断熱性が要求される。また、加圧ローラは、高温の熱定着ローラと接触するため、耐熱性も要求される。このような加圧ローラとして、軸芯と、該軸芯の外周に形成される多孔質セラミックスの円筒体層からなる加圧セラミックスローラが提案されている(特開2004−86219号公報)。
【0005】
しかしながら、このような加圧セラミックスローラにおいて、軸芯が金属製の場合、熱定着ローラが加熱される際、金属製の軸芯とセラミックス製の円筒体層の熱膨張の差による応力を緩和できず、円筒体層に亀裂を生じさせる可能性がある。金属のうち、例えばステンレス鋼の熱膨張率は約10〜20×10−6/Kであり、セラミックスの熱膨張率は約3〜8×10−6/Kであり、温度上昇に伴う熱膨張の差はしばしばセラミックスの円筒体層に亀裂や欠損を生じさせるという問題がある。
【0006】
特開平2−261922号公報には、金属製の軸芯とセラミックス層からなる複合ローラにおいて、ローラ加熱時における、金属とセラミックス層の熱膨張の差により生じる応力を、中間層となる粘弾性体で緩和して、セラミックス層の亀裂を防ぐことが開示されている。しかし、この複合ローラにおける中間層となる粘弾性体は、40〜120℃のような比較的低温での使用であるため、耐熱性のないゴム類であるか、ゴム類より硬質な樹脂類である。また、粘弾性体からなる中間層には接着の機能はないため、別途、エポキシ系やシリコーン系などの接着剤を使用した接着層を設けており、製造工程を複雑にしている。
【0007】
一方、特開昭54−74950号公報には、正温度特性サーミスタからなる複数個の円筒部材を連結して構成した熱ロールが開示されている。しかし、該熱ロールにおいて複数個の円筒部材を連結するのは、正温度特性サーミスタの加工性がよくないことから、加工の容易な短い寸法の円筒部材を所要長に応じて複数連結したものであり、セラミックスローラにおける金属製の軸芯とセラミックス製の円筒体層の熱膨張の差による応力歪の問題を解決するものではない。
【特許文献1】特開2004−86219号公報
【特許文献2】特開平2−261922号公報
【特許文献3】特開昭54−74950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、金属製の軸芯と、該軸芯の外周に形成される多孔質セラミックスの円筒体層とを備えるセラミックスローラにおいて、200℃を超えるような温度に加熱されても、円筒体層に亀裂を発生させないセラミックスローラ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、円筒体層を、軸芯長手方向に圧縮して軸芯に固定し、且つ無機繊維を軸芯長手方向に対して垂直方向に配向させたセラミックスローラであれば、ローラが加熱されて金属製の軸芯が熱膨張しても、円筒体層が弾性変形して追従するため、円筒体層に亀裂を生じさせることがない。また、圧縮弾性率が小さい、すなわち圧縮弾性範囲が大きい特性を圧縮方向に利用し、ローラ表面強度としては圧縮弾性率が高い強度特性を選択的に利用することができることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、帯電像を用いる電子写真装置の熱定着装置で使用されるセラミックスローラであって、金属製の軸芯と、該軸芯の外周に形成される無機繊維を含有するセラミックス製の円筒体層からなり、該円筒体層は、軸芯長手方向に圧縮されて該軸芯に固定され、且つ該無機繊維は該軸芯長手に対して垂直方向に配向していることを特徴とするセラミックスローラを提供するものである。
【0011】
また、本発明は、無機繊維を含む原材料と水を混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、スラリーから板状または柱状の成形体を湿式プレス成形又は抄造によって得る成形工程と、成形体に無機繊維の配向方向に対して垂直に孔を空け、中空部を備えた成形片を得る工程と、成形片の中空部に軸芯を通し且つ成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程とを有することを特徴とするセラミックスローラの製造方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、無機繊維を含む原材料と水を混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、スラリーから湿式プレス成形により無機繊維の配向方向に対して垂直に貫通する中空部を備えた円筒状の成形片を得る成形工程と、成形片の中空部に軸芯を通し且つ成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程とを有することを特徴とするセラミックスローラの製造方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、無機繊維を含む原材料と水を混合して水系混合物を調整して混練物を得る混練工程と、混練物を押出成形して柱状又は板状の成形体を成形する成形工程と、成形体の押出方向に対して垂直に孔を空け、中空部を備えた成形片を得る工程と、成形片の中空部に軸芯を通し且つ成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程とを有することを特徴とするセラミックスローラの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のセラミックスローラによれば、円筒体層を形成するセラミックスは、軸芯長手方向における圧縮弾性により、ローラが加熱されて金属製の軸芯が軸芯長手方向に熱膨張しても、円筒体層が弾性変形して追従するため、円筒体層に熱膨張の差に起因する応力が発生せず亀裂を生じさせることがない。また、圧縮弾性率が小さい、すなわち圧縮弾性範囲が広い特性を圧縮方向に利用することができ、ローラ表面強度としては圧縮弾性率が高い強度特性を選択的に利用することができる。また、本発明のセラミックスローラの製造方法によれば、比較的簡易な工程により、新規な構造のセラミックスローラを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のセラミックスローラは、中心から外側に向けて順に、金属製の軸芯、及びセラミックス製の円筒体層からなる。なお、本発明において、セラミックスとは非金属無機材料を主成分とする材料を言う。本発明において、軸芯としては、使用に耐える剛性を有する金属であれば、特に制限されず、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、炭素鋼などが挙げられる。本発明は、軸芯が金属製で、その外周の円筒体層がセラミックス製の場合における加熱時の熱膨張の差による円筒体層の亀裂を防止するものである。
【0016】
本発明において、軸芯の外周に形成されるセラミックス製の円筒体層としては、特に制限されず、低熱伝導率及び低熱容量で表される高断熱性、高耐熱性、高強度のものが好適であり、具体的には、ケイ酸カルシウムを主成分とし、無機繊維を補強繊維とするセラミックス(以下、第1のセラミックスとも言う。)及び無機質バインダーと無機繊維を主成分とするセラミックス(以下、第2のセラミックスとも言う。)が挙げられる。
【0017】
次に、第1のセラミックスについて説明する。第1のセラミックスにおいて、ケイ酸カルシウムとしては、特に制限されず、ケイ酸質原料とカルシウム原料を水の存在下で水熱反応せしめて生成した化合物である。ケイ酸カルシウムの結晶としては、例えばゾノトライト結晶、トバモライト結晶、不定形C−S−H結晶等が挙げられる。これらの結晶は、単独結晶または2つ以上が混在する結晶であってもよいが、単独結晶が好ましい。特にゾノトライト結晶からなる成形体は軽量で比強度が非常に大きく、耐熱性と断熱性に優れているため好ましい。ゾノトライト結晶は、集合し且つ結合して二次粒子を形成している。このような結晶は、円筒体層表面をX線回折することにより容易に特定することができる。
【0018】
ゾノトライト結晶の二次粒子は、明確な球形状で、粒子表面には針状のゾノトライト結晶が栗のいが状に析出しており、内部が空洞またはそれに近い状態となっている。従って、この二次粒子を用いて成形した場合、非常に嵩高く、熱伝導率及び熱容量が低いものとなる。また、この二次粒子の自己硬化性により、相互に結合しているため、軽量であっても優れた強度も有している。
【0019】
ケイ酸カルシウムと併用される無機繊維は、補強繊維として使用されるものである。無機繊維としては、耐熱性の無機繊維であって、例えば、ガラス繊維、セラミックス繊維、アルミナ繊維、ワラストナイト、パルプ、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、カーボン繊維などが挙げられる。なお、これらの無機繊維は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
円筒体層は、ケイ酸カルシウム及び無機繊維以外に、補強材、充填材、軽量骨材等が必要に応じて任意の配合割合で添加されていてもよい。補強材としては、セメント、石膏等が挙げられ、充填材としては、タルク、珪藻土、フライアッシュ等が挙げられ、軽量骨材としては、マイクロシリカ、パーライト、シラスバルーン、ガラスバルーン等が挙げられる。また、その配合量としては、例えば、ケイ酸カルシウム100質量部に対して、無機繊維2〜20質量部、好ましくは5〜10質量部、補強材0〜20質量部、好ましくは10〜20質量部、充填材0〜20質量部、好ましくは5〜10質量部、軽量骨材0〜20質量部、好ましくは5〜10質量部である。
【0021】
第2のセラミックスは、断熱ローラの円筒体層に用いる公知のセラミックスであり、例えば特開2004−301293号に開示されている。
【0022】
第2のセラミックスで使用する該無機質バインダーは、乾燥及び焼成工程において自らセラミックス成分となり且つ該無機繊維を相互に固結する材料である。該無機質バインダーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ガラスフリット、コロイダルシリカ、アルミナゾル、シリカゾル、珪酸ソーダ、チタニアゾル、珪酸リチウム、水ガラスなどが挙げられる。これらの無機質バインダーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
第2のセラミックスで使用する無機繊維としては、耐熱性の無機繊維であって、例えば、アルミナシリカ繊維、アルミナ繊維、クリソタイル、カーボンファイバー、ガラス繊維、スラグウール、シリカ繊維、ジルコニア繊維、石膏ウイスカー、炭化珪素繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、高珪酸ファイバー、溶融シリカファイバー及びロックウールなどが挙げられる。これらの無機繊維は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
第2のセラミックスにおいて、無機繊維以外に、粒子状耐熱性無機質材料を配合することができる。粒子状耐熱性無機質材料としては、クレー、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミ、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、ジルコニア、チタニア、セピオライト、カオリン、ゼオライト、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミノボロシリケート、アルミノシリケート及び多孔質炭素等が挙げられる。また、粒子状耐熱性無機質材料として中空セラミックス、ガラスバルーン等の中空材料を使用することもできる。なお、これらの粒子状耐熱性無機質材料は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
上記の無機繊維の長さまたは粒子状耐熱性無機質材料の長径は、特に限定されず、水中分散性、押出成形性などを考慮し、3mm以下のものが好ましい。また、無機繊維の直径および粒子状材料の直径は、製品であるセラミックスローラの内部熱容量をより小さくするためには、やや太い、例えば1〜15μmのものが好ましい。
【0026】
第2のセラミックスにおいて、無機繊維の使用量は、無機質バインダー100質量部に対して50〜500質量部、好ましくは100〜300質量部である。使用量が50質量部未満であると、軸芯長手方向における圧縮弾性率を小さく採ることができず、ローラが加熱されて金属製の軸芯が軸芯長手方向に熱膨張しても、円筒体層が弾性変形し難くなり、円筒体層に亀裂が生じ易くなる。また、使用量が500質量部を超えると、得られる円筒体層の強度が十分でなくなる。
【0027】
本発明のセラミックスローラの一例を図1を参照して説明する。図1(A)はセラミックスローラの断面図、(B)は(A)のセラミックスローラで使用する円筒体層の断面図である。セラミックスローラ10は、中心から外側に向けて順に、金属製の軸芯4及びセラミックスの円筒体層1からなる。軸芯4は軸芯4に装着された円筒体層を両側から所定の押圧力で挟持することができるフランジ2と、ジャーナル部3とからなる。円筒体層1は、同じ物性且つ同じ大きさの6つの分割円筒体層1a〜1fが端面同士付き合わされて繋がったものであり、軸芯4の長手方向に圧縮されて軸芯4に固定される。なお、本発明において、円筒体層1は分割されたものである必要はなく、また分割円筒体層を使用する場合、分割個数に制限はなく、分割円筒体層の軸芯長手方向の長さ寸法は互いに異なっていてもよい。
【0028】
セラミックスローラ10における、軸芯4に装着された後の軸芯長手方向の長さl1は、軸芯4に装着される前の軸芯長手方向の長さl0より小である。すなわち、l1<l0であり、l0−l1=Δlは圧縮長さである。圧縮長さΔlとしては、特に制限されないが、軸芯4の軸芯長手方向における熱膨張による長さの伸び以上、好ましくは軸芯長手方向における軸芯とセラミックスとの熱膨張による長さの伸びの差以上であることが好ましく、更に圧縮長さΔlは円筒体層1の弾性範囲内であることが、本発明の効果が顕著に表れる点で好ましい。圧縮長さΔlの上限値は、圧縮長さ方向における材料の応力-歪曲線(SS曲線)から得られる弾性限界点であり、公知の計算手法で得ることができる。
【0029】
具体的には、例えば軸芯が熱膨張率17.3×10−6/KのSUSであり、円筒体層が嵩密度0.3g/cm3、熱膨張率3×10−6/Kのセラミックス製からなる常温で311mmの長さのセラミックスローラの場合、200℃では熱膨張によりSUSが0.91mm膨張し、セラミックスが0.16mm膨張し、その差0.75mmの歪を生じることなる。このため、圧縮長さΔlは0.75mmを越える長さとする。通常、圧縮長さΔlは1.0mm以上であれば、熱膨張率の大きい金属と熱膨張率の小さい金属で生じる熱歪みをカバーできる。圧縮長さΔlが長い場合は、熱膨張時にも圧縮方向に応力がかかりローラ構造強度としては好ましいが、圧縮長さΔlは長過ぎると、セラミックスの弾性限界を超えてしまい、軸芯の熱膨張に円筒体層の弾性変形が追従できなくなる。
【0030】
また、円筒体層1中の無機繊維は軸芯4の長手方向に対して垂直方向に配向している。無機繊維の配向とは、無機繊維の長手方向が延出する方向を言う。この無機繊維の特定配向に伴う円筒体層1の特性を図2〜図4を参照して説明する。図2は嵩密度0.23、0.33及び0.43g/cm3の3つのセラミックスの嵩密度と圧縮強度の関係を示す図、図3は同様のセラミックスの嵩密度と圧縮弾性率の関係を示す図、図4は圧縮長さと面圧(軸芯長手方向の圧縮時の面圧)の関係を示す図である。それぞれの図において、符号◆は軸芯長手方向における関係を、符号■は軸芯長手方向に対して垂直方向における関係をそれぞれ示す。図2から明らかなように、同じ嵩密度の場合、軸芯長手方向に対して垂直方向における圧縮強度が、軸芯長手方向における圧縮強度よりも高いことから、例えば熱ローラなどの他のローラとの接触使用においてローラ表面強度の高い耐久性のあるローラが得られる。また、図3から明らかなように、同じ嵩密度の場合、軸芯長手方向に対して垂直方向における弾性率が、軸芯長手方向における弾性率よりも高いことから、軸芯長手方向における歪、すなわち弾性が大きいことが判る。また、図4から明らかなように、同じ面圧の場合、軸芯長手方向の圧縮長さは、軸芯長手方向に対して垂直方向における圧縮長さよりも大きいことから、同じ圧縮長さを採る場合、軸芯長手方向では面圧は少なくて済む。従って、ローラを組み付ける場合、軸芯長手方向においては、圧縮長さを大きく採り易い。このように、本発明のセラミックスローラにおいて、無機繊維の特定配向に伴う円筒体層は、軸芯長手方向に対して垂直方向において圧縮強度が高く、軸芯長手方向の圧縮弾性率は、軸芯長手方向に対して垂直方向の圧縮弾性率より小さい、すなわち、軸芯長手方向では弾性範囲が大きく、圧縮長さを大きくとれる有利な特性を有することになる。
【0031】
円筒体層1中、無機繊維が軸芯4の長手方向に対して垂直方向に配向していることは、セラミックスのSEM写真で観察することができ、また、圧縮弾性率が、軸芯長手方向と、軸芯長手方向に対して垂直方向とは大きく異なることから、この圧縮弾性率を測定することによっても確認することができる。
【0032】
円筒体層のセラミックスの嵩密度は、0.05〜1.5g/cm3であり、第1のセラミックスの場合、その嵩密度は、通常0.05〜0.7g/cm3であり、好ましくは0.2〜0.4g/cm3である。第2のセラミックスの場合、その嵩密度は、通常0.5〜1.5g/cm3であり、好ましくは0.5〜1.0g/cm3である。
【0033】
また、円筒体層のセラミックスの熱容量は、0.04〜1.5J/(K・cm3)であり、第1のセラミックスの場合、0.04〜0.4J/(K・cm3)である。第2のセラミックスの場合、0.4〜1.5J/(K・cm3)である。また、円筒体層のセラミックスの熱伝導率は、0.01〜0.5W/(m・K)であり、第1のセラミックスの場合、その熱伝導率は0.01〜0.15W/(m・K)であり、好ましくは0.06〜0.09W/(m・K)である。第2のセラミックスの場合、その熱伝導率は0.1〜0.5W/(m・K)であり、好ましくは0.1〜0.3W/(m・K)である。
【0034】
熱容量(KJ/cm3)は、試料を粉砕し、そのうちの50gを、高温試料投下型比熱測定装置を用いて比熱を測定し、嵩密度の値から算出することができる。また、熱伝導率(W/m・K)は、幅100mm、厚さ20mm、長さ50mmの平面板状の試験体における表面を、JIS R2618 非定常熱線法に準じて、迅速熱伝導率計QTM−500(京都電子工業株式会社製)により、室温で測定したものである。なお、上記の円筒体層は異なった嵩密度や熱容量のセラミックス層から構成されていてもよい。たとえば、外周面に近い部分はその内部より比較的低い熱容量のセラミックス層とすることもできる。
【0035】
本発明のセラミックスローラにおいて、軸芯と円筒体層との間に、応力緩和層を設けることが、高温度に加熱されても、更に安定して円筒体層に亀裂を発生させることがない点で好ましい。応力緩和層としては、特に制限されないが、硬度が、デュロメータAで10〜90、好ましくは20〜50、更に好ましくは20〜30の接着層であることが、接着と熱応力緩和を共に達成できる点で好ましい。一般的に、ゴムの柔軟性(弾性)の指標は、ゴム硬度で表される。接着層の硬度がデュロメータAで10未満であると、接着性が低下し、また、デュロメータAで90を超えると、熱膨張の差に起因する応力を緩和する程度の弾性が発現しない。デュロメータAは、JIS K6253(加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法)に規定される方法で測定することができ、デュロメータ硬さ試験のタイプA(中硬さ用試験)として規定されるものである。このような接着層としては、シリコーンゴムが挙げられる。
【0036】
本発明のセラミックスローラにおいて、円筒体層の外周には、更にPFA樹脂のフイルムなどのフッ素樹脂層やシリコーンゴム層、ガラス層などの無機質の表面層を被覆することができる。
【0037】
次に、本発明のセラミックスローラの製造方法について説明する。本発明のセラミックスローラの製造方法としては、無機繊維を含む原材料と水を混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、スラリーから板状または柱状の成形体を湿式プレス成形又は抄造によって得る成形工程と、成形体に無機繊維の配向方向に対して垂直に孔を空け、中空部を備えた成形片を得る工程と、成形片の中空部に軸芯を通し且つ成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程とを有する方法(以下、「第1の製造方法」と言う。)、無機繊維を含む原材料と水を混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、スラリーから湿式プレス成形により無機繊維の配向方向に対して垂直に貫通する中空部を備えた円筒状の成形片を得る成形工程と、成形片の中空部に軸芯を通し且つ成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程とを有する方法(第2の製造方法)及び無機繊維を含む原材料と水を混合して水系混合物を調整して混練物を得る混練工程と、混練物を押出成形して柱状又は板状の成形体を成形する成形工程と、成形体の押出方向に対して垂直に孔を空け、中空部を備えた成形片を得る工程と、成形片の中空部に軸芯を通し且つ成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程とを有する方法(第3の製造方法)が挙げられる。
【0038】
第1の製造方法は、第1のセラミックスを製造するのに好適な方法である。該方法のスラリー調製工程において、無機繊維及びケイ酸カルシウムを含むスラリーを用いることができる。ケイ酸カルシウムは、ケイ酸カルシウム結晶を得る結晶化工程を経て得られるものである。すなわち、結晶化工程において得られるケイ酸カルシウム結晶の種類としては、ゾノトライト結晶、トバモライト結晶、不定形C-S-H結晶のいずれであってもよいが、ゾノトライト結晶のみを生成させることが好ましい。結晶化工程において、ゾノトライト結晶を生成させるには、オートクレーブ中の温度条件、圧力条件、攪拌条件を適宜設定すればよい。ゾノトライト結晶の一次粒子は針状結晶を形成し、該一次粒子は、直径10〜150μmの球状の二次粒子を形成する。また、一次粒子は、集合してさらに結合して内部が空洞またはそれに近い状態の球状の二次粒子を形成し、二次粒子の表面には針状のゾノトライト結晶が栗のいが状に析出する。こうしたゾノトライト結晶からなる二次粒子は、乾燥して水を除いただけで強固に結びついて強度が発現する。なお、一次粒子および二次粒子の形態は走査型電子顕微鏡等により確認できる。
【0039】
ケイ酸カルシウム結晶として好適なゾノトライト結晶を得るためには、ケイ酸質原料と石灰質原料とを、ケイ酸質原料と石灰質原料の合計に対して通常20〜40倍量の多量の水と攪拌しながらオートクレーブ中で、飽和蒸気圧7〜20kg/cm2、好ましくは13〜17kg/cm2で水熱合成させる。また、ケイ酸質原料と石灰質原料とは、CaO/SiO2をモル比で通常0.8〜1.2、好ましくは0.9〜1.1に調整すればよい。
【0040】
ケイ酸質原料としては、成分としてSiO2が含まれていれば、特に制限はされず、例えば、珪石、溶融シリカ等が挙げられる。このうち、結晶質のもの、特に珪石を用いることが、ゾノトライト結晶を生成させることができる点で好ましい。また、平均粒径5〜15μmの微粉末を用いることが好ましい。石灰質原料としては、成分としてCaOが含まれていれば、特に制限はされず、例えば、消石灰、生石灰等が挙げられる。このうち、生石灰を用いることが、ゾノトライト結晶を十分に成長させることができる点で好ましい。
【0041】
スラリーに配合される無機繊維は、第1のセラミックスにおいて記載されたものと同じものが挙げられる。
【0042】
スラリー調製工程において、スラリーには、無機繊維及びケイ酸カルシウム結晶の他に、任意成分として補強材、充填材又は軽量骨材がさらに含まれていてもよい。こうした任意成分を添加することにより、さらに強度の高いケイ酸カルシウム結晶含有成形体を得ることができる。無機繊維、補強材、充填材及び軽量骨材は、円筒体層の説明で記載されたものと同様のものが挙げられる。
【0043】
成形工程は、スラリーから板状又は柱状の成形体を、湿式プレス又は抄造により得ると共に、無機繊維の配向を一定方向にする工程である。所望の成形体の密度が0.5g/cm3未満の場合には、水量が多いスラリー状の状態より成形する湿式プレス(脱水プレス)成形法が好適である。湿式プレス成形法によれば、ゾノトライト二次粒子の自己硬化性作用により、嵩密度0.05〜0.5g/cm3といった比較的低密度であっても、熱伝導率0.01〜0.1W/(m・K)かつ圧縮強度1〜10Mpa、さらには、熱伝導率0.06〜0.09W/(m・K)かつ圧縮強度3〜5Mpaの成形体を得ることができる。成形体の密度は、スラリー中のゾノトライト結晶二次粒子の嵩高さ、脱水成形時の成形圧力を変更することにより調整すればよい。例えば、ゾノトライト結晶二次粒子を嵩高くすると比較的嵩密度が低い成形体を得ることができる。ゾノトライト結晶二次粒子の嵩密度は、出発原料、スラリーの濃度や攪拌条件等を適宜変更して調整される。成形圧力は通常1〜100kgf/cm2、好ましくは10〜70kgf/cm2、時間は通常1〜30分、好ましくは5〜10分かけて行うのがよい。なお、無機繊維の配向方向は、湿式プレス法の場合、プレス方向に対して垂直方向であり、抄造法の場合、水が抄造機から重力落下する方向に対して垂直方向である。また、板状の成形体は抄造又は湿式プレスにより得られ、柱状の成形体は湿式プレスにより得られる。柱状は四角柱等の多角柱、円柱などが挙げられる。上記方法により得られた成形体は、公知の技術により乾燥することができる。乾燥条件は、通常50〜300℃で1〜24時間、好ましくは150〜250℃で3〜10時間かけるのが好ましい。
【0044】
中空部を備えた成形片を得る工程は、前記成形工程で得られた成形体に無機繊維の配向方向に対して垂直に孔を空ける工程であり、その一例を図5を参照して説明する。図5は湿式プレス法で得られた板状の成形体に孔を空ける工程を説明する図である。図5中、符号Xで示す方向、すなわち板状の成形体5の厚み方向が板状の成形体5のプレス方向である。従って、板状の成形体5中、無機繊維はプレス方向に対して垂直方向に配向している。そして、図5中、平面視における一辺が、円筒体層の外径と同じか、またはそれよりやや大きい寸法の四角形55を有する柱状の成形片6a、6b・・において、該四角形の中心に軸芯4が嵌る内径を有する中空部7a、7b・・を空ける。当該工程においては、板状の成形体5に中空部7a、7b・・を空けた後、切断線51、52に沿って切断して成形片6a、6b・・を得てもよく、また、板状の成形体5を切断線51、52に沿って切断して成形片6a、6b・・を得た後、中空部7a、7b・・を空けてもよい。次いで、例えば図6に示すように、金属製の軸芯4に対して、成形片6aを挿入し、次いで成形片6bをその次ぎに挿入し、順次所定個数の成形片を挿入し、軸芯長手方向に圧縮固定し、次いで、成形片6a〜6fの外周を切削加工して、6つの分割円筒体層が端面で繋がった円筒形状の成形体を得る。従来のセラミックスローラにおいて、円筒体層は一体物であったため、図12に示すように、板状の成形体5のプレス方向Xに対して垂直方向に中空部71を形成する必要があった。この場合、ローラを形成すると、円周方向における無機繊維の配向は異方性があり、不均一であった。また、長手方向に中空部を形成する加工は容易ではない。これに対し、本発明によれば、円周方向における無機繊維の配向に異方性はなく、均一である。また、長さが短い中空部を形成することは容易である。また、長さが短い成形片は、円筒状の湿式プレス成形からも得ることができる。
【0045】
成形片1a〜1fを軸芯長手方向に所定の圧縮長さΔlとなるように圧縮して固定する方法(図1及び図6参照)としては、例えば雌螺子がきられたフランジをねじ込む方法、または圧入された成形片とローレット加工で軸芯に形成される凹凸との固定方法等が挙げられる。これにより、セラミックスローラ10は、フランジ2間の圧縮力と軸芯4の周面41と円筒体層1の内周面11との押圧力により回転トルクを発生することができる。従って、軸芯4と円筒体層1間の接着剤は使用せずともよい。なお、軸芯の周面と円筒体層1の内周面との押圧力は、フランジ2間の圧縮により、円筒体層1は軸芯長手方向のみならず、軸芯長手方向に対して垂直方向にも圧縮力を与えることになり、軸芯の周面と円筒体層1の内周面との押圧力は強いものとなる。
【0046】
第1の製造方法において、焼成工程(オートクレーブ)は任意の工程であるが、焼成工程を行う場合、焼成後に成形片を得ることが、寸法変化が生じない点で好ましい。また、成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する際、軸芯と成形片との間に、例えばシリコーンゴムなどの接着剤を注入して、応力緩和層を形成することができる。また、軸芯に成形片を装着した後、円筒体層の外周に、更にPFA樹脂のフイルムなどのフッ素樹脂層、シリコーンゴム層、ガラス層などの表面層を、公知の方法により被覆することができる。
【0047】
次ぎに、第2の製造方法を説明する。第2の製造方法において、第1の製造方法と同一構成要素については同様であるため、その説明を省略し、異なる点について説明する。すなわち、第2の製造方法において、第1の製造方法と異なる点は、スラリー調製工程と、成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程との間の工程を、スラリーから湿式プレス成形により無機繊維の配向方向に対して垂直に貫通する中空部を備えた円筒状の成形片を得る成形工程とした点にある。
【0048】
当該成形工程においては、中空部を備えた円筒状の成形片を直接得るものである。かかる成形工程は、成形型内に軸芯を配置する工程と、成形型と軸芯との間にスラリーを流し込む工程と、成形型内で軸芯長手方向に加圧して成形片を得る工程とを有する軸芯一体成形方法が挙げられる。当該工程の一例を図7を参照して説明する。成形型9は、円筒状の外筒93の径方向の中心で且つ軸方向に延出する軸芯91と、軸芯91を貫通し軸方向に移動自在に設置される一対の円板状のプレス板92とを有する。プレス板92はスラリーを成形及び脱水するもので、多孔構造である。外筒93、軸芯91及び成形板92で囲まれる空間にスラリーを流し込み、成形型内でプレス板92により軸芯長手方向(符号X方向)に加圧して脱水しながら成形片1aを得る。なお、成形片1aを得た後、図8に示すように、更に成形片1aとプレス板92間の空間にスラリーを流し込み、軸芯長手方向(符号X方向)に加圧して脱水しながら成形片1bを得、この操作を順次行って、成形型内で円筒状の成形片1a、1b・・を得ることができる。
【0049】
第3の製造方法は、第2のセラミックスを製造するのに好適な方法である。混練工程は、例えば、無機繊維、無機質バインダー、粒子状耐熱性無機質材料、押出し成形助剤の他、必要によりさらに耐水性有機質材料と、を主成分とする混合物に水を加えて水系混合物を調製する。無機繊維、無機質バインダー及び粒子状耐熱性無機質材料は、第2のセラミックスで記載したものと同じものである。混練物は、固形分100質量部に対して50〜100質量部の水を含むようにすれば、押出成形法に好適な混練物とすることができる。ここで、押出し成形助剤は、押出し成形に使用できる有機バインダーであれば特に制限はなく、有機バインダーの配合量は、無機繊維100質量部に対して1〜30質量部であればよい。また、混練物には、その他の任意成分が含まれていてもよい。また、各原料成分の配合量は、無機繊維100質量部に対して、無機バインダー5〜300質量部、好ましくは50〜100質量部、耐熱性無機質材料0〜20質量部、好ましくは10〜20質量部、耐水性有機質材料0〜100質量部、好ましくは30〜80質量部、押出し成形助剤1〜30質量部、好ましくは10〜20質量部である。密度の調整は、混練水量、無機繊維量、耐水性有機質材料量を組み合わせて調整すればよい。混錬工程に使用する混錬装置としては、例えば、加圧型ニーダ、双腕型ニーダ、高速ミキサー、バタフライミキサー等挙げられるが、公知のものであれば適宜使用することができる。
【0050】
混練物に配合される無機繊維は、第2のセラミックスにおいて記載された無機繊維と同じものが挙げられる。また、耐水性有機質材料としては、特に制限されず、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、フェノール樹脂などの耐水性合成樹脂、木材、竹材、その他の天然有機物などが挙げられる。耐水性有機質材料の形状は、特に制限されず、繊維状又は粒子状が挙げられる。これらの材料としては、内部発泡しているものも好適に使用することができる。また、これら耐水性有機質材料は、1種単独又は2種以上を組合わせて使用することができる。
【0051】
混練工程で得られた混練物を押出成形して柱状又は板状の成形体を成形する成形方法の一例を図9を参照して説明する。図9(A)は角柱押出成形のイメージ図、(B)は押出成形された角状成形体である。すなわち、当該成形工程において、混練物は押出し開口95から角柱状96に押し出される。この場合、角柱状96中、無機繊維の配向は、押出方向(符号Y)である。次いで、成形体96の押出方向に対して垂直に孔961を空け、切断線962に沿って切断して、中空部を備えた角状の成形片を得る。なお、成形片の中空部に軸芯を通し且つ成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程は、前記第1の製造方法の同工程と同じである。
【0052】
本発明のセラミックスローラは、嵩密度が小さく、熱容量および熱伝導率が小さいため、断熱性が優れる。このため、電子複写機やプリンタなどの電子写真装置に搭載される熱定着装置に使用される断熱性が要求されるセラミックスローラに使用することができる。すなわち、本発明のセラミックスローラが使用できる用途としては、種々な名称で呼ばれている、例えば、加圧ローラ、搬送ローラ、補助ローラ、ドライブローラ、剥離ローラ、テンションローラ、駆動ローラ、ガイドローラ等が挙げられる。
【0053】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。なお、実施例および比較例において、表1に記載の各評価項目は以下の試験法により測定した。
【0054】
(1) 嵩密度(g/cm3):試験片の質量と形状寸法から算出される体積とから算出した。
(2)圧縮強度:プレス面圧縮強度はプレス面方向における圧縮強度であり、層間圧縮強度はプレス面方向に対して垂直方向における圧縮強度であり、それぞれJISR1608に準拠して測定したものである。
(3)圧縮弾性率:プレス面圧縮弾性率はプレス面方向における圧縮弾性率であり、層間圧縮弾性率はプレス面方向に対して垂直方向における圧縮弾性率であり、それぞれ弾性領域での歪みと応力より算出した((応力σ/歪みε)(MPa))ものである。
(4)ゴム硬度:試験片として、直径40mm、厚さ10mmの円柱状の試験片を別に作製し、JIS K6253のデュロメータ硬さ試験における、タイプAの中硬さ用試験方法に準拠して測定したものである。
(5)ローラ加熱試験;送風定温恒温器(「DN610」ヤマト科学社製)内にローラを置き、昇温速度40℃/時間で所定の加熱温度まで加熱し、1時間保持した後、降温速度40℃/時間で100℃まで降温し、恒温器からローラを取り出し、円筒体層の亀裂の有無を目視観察する。なお、所定の加熱温度は100、200及び300℃の各温度である。
(6)回転加熱試験;ハロゲンランプ内蔵の加熱ローラに、試料であるセラミックスローラを圧接回転加熱する装置を使用し、加熱ローラの加熱温度200℃、回転数100rpm、総荷重60kgfの条件下、100時間稼動させ、円筒体層の破壊の状況を観察する。
【実施例1】
【0055】
(ゾノトライト結晶の生成)
石灰質原料としての生石灰(150メッシュの足立生石灰)を24倍量の90℃の熱水に投入し、160rpmで回転する攪拌翼で攪拌しながら30分間消化して石灰乳を得た。次いで、得られた石灰乳にケイ酸質原料としての珪石粉末(伊豆珪石特粉D)をCaO/SiO2モル比が1.0となるように添加し、同時に、生石灰と珪石粉末との合計量の30倍量の水を加えて均一なスラリーとし、オートクレーブ中、120rpmで攪拌しながら、圧力16kg/cm2で4時間水熱反応させた。得られたスラリー中の固形物は実質的にゾノトライト結晶からなり、針状結晶が多数集合した直径30〜130μmの球状の二次粒子を形成していた。
【0056】
(スラリーの調整)
該スラリーにゾノトライト結晶100重量部に対して5.6重量部のポルトランドセメント(「普通ポルトランドセメント」;宇部三菱セメント社製)、5.6重量部のガラス繊維(「ECS131−33G」;日本電気硝子社製)、固形分換算で100ppmの凝集剤(「サンフロックN−OP」三洋化成工業社製)を添加して混合して脱水プレス成形用のスラリーを得た。該スラリーを型枠に流し込み、成形圧40kgf/cm2で湿式プレス成形したのち、200℃で24時間乾燥して、長さ300mm、幅300mm、厚さ60mmの板状の成形体を得た。
【0057】
(セラミックスローラの製造)
得られた板状の成形体から、図5に示すように、プレス方向に内径穴を加工して、縦50mm、横50mm、長さ(厚み)60mmの角柱状物に内径29.0mmの中空部を形成した成形片を5個作製した。次いで、ステンレス製の軸芯にこの5個の成形片の中空部を挿入して、5個の分割成形片が繋がったものを得た。次いで、圧縮長さ3mmとなるように、フランジを圧入した。成形片が軸芯に固定したことを確認した後に、成形体片の外径を研削して肉厚5.47mmの円筒体層を得た。圧縮長さ3mmは、ステンレス製の軸芯の300℃の熱歪みより大きく、当該セラミックスの弾性限界より小さいものである。また、円筒体層の周面に厚さ30μmのPFAチューブをシリコーンゴム接着剤で接着して、外径40mm、長さ297mmのセラミックスローラを得た。
【0058】
板状の成形体について、前記の方法で嵩密度、熱伝導率、プレス面圧縮強度、プレス面圧縮弾性率、層間圧縮強度及び層間圧縮弾性強度を測定し、また、セラミックスローラについて、ローラ加熱試験及び回転加熱試験を行い、それらの結果を表1に記載した。その結果、実施例1はローラ加熱試験において、300℃まで加熱しても円筒体層に亀裂は生じなかった。また、回転加熱試験において、円筒体層の破壊は観察されなかった。
【実施例2】
【0059】
(円筒体層の調製)
組成物の配合組成が、ガラス繊維100質量部、無機質バインダーとしてガラスフリット100質量部、可燃性有機物質としてポリエチレン繊維60質量部および押出し成形助剤としてメチルセルロース20質量を水125質量部に混合して水系混合物とし、この混合物を双腕型ニーダで、混練して可塑性混合物を得、次いで、この可塑性混合物を押出成形して縦50mm、横50mmの四角形断面の柱状体を得た。得られた四角柱の成形体を、105℃で5時間乾燥して硬化し、ついで300〜400℃までの範囲で合計24時間加熱して、含有されるポリエチレン繊維およびメチルセルロース成分を焼失させ、その後、さらに大気中にて600℃3時間焼成して、無機質バインダーを融着させて、無機質成分を一体化させた。
【0060】
(セラミックスローラの製造)
得られた角柱状の成形体から、図9(B)に示すように、押出し方向に対して垂直方向に内径穴を加工して、縦50mm、横50mm、長さ60mmの角柱状物に内径29.0mmの中空部を形成した成形片を5個作製した。次いで、ステンレス製の軸芯にこの5個の成形片の中空部を挿入して、5個の分割成形片が繋がったものを得た。次いで、圧縮長さ3mmとなるように、フランジを圧入した。成形片が軸芯に固着したことを確認したのちに、成形体片の外径を研削して肉厚5mmの円筒体層を得た。
【0061】
柱状の成形体について、実施例1と同様に諸物性を測定し、また、セラミックスローラについて、ローラ加熱試験及び回転加熱試験に供し、それらの結果を表1に記載した。その結果、実施例2はローラ加熱試験において、300℃まで加熱しても円筒体層に亀裂は生じなかった。また、回転加熱試験において、円筒体層の破壊は観察されなかった。また、図9の角柱の成形体の上から見た、すなわち、面963から見たSEM写真を図10に示し、図9の角柱の成形体の正面から見た、すなわち、面964から見たSEM写真を図11に示す。図10のSEM写真から、無機繊維の長手方向が図10中、上下方向、すなわち、押出し方向に配向しており、図11では、無機繊維の短手方向、すなわち点で観察されることから、無機繊維がプレス方向に配向していることが判る。
【0062】
比較例1
実施例1と同様の方法で得られた板状の成形体から、図12に示すように、プレス方向に対して垂直方向に内径穴を加工して、縦50mm、横50mm、長さ297mmの角柱状物に内径29.3mmの中空部を形成した成形体を作製し、次いで、ステンレス製の外径29mmの軸芯をこの成形体の中空部に挿入した。この際、軸芯の周面にシリコーンゴム接着剤を塗布して、常温硬化により軸芯と円筒体層を接着させた。成形片が軸芯に固着したことを確認したのちに、成形体片の外径を研削して肉厚5.32mmの円筒体層を得た。また、円筒体層の周面に厚さ30μmのPFAチューブをシリコーンゴム接着剤で接着して、外径40mm、長さ297mmのセラミックスローラを得た。
【0063】
角柱状の成形体について、実施例1と同様に諸物性を測定し、また、セラミックスローラについて、ローラ加熱試験及び回転加熱試験に供し、それらの結果を表1に記載した。その結果、比較例1はローラ加熱試験において、200℃において円筒体層に亀裂が生じた。また、回転加熱試験において、円筒体層の層間方向に破壊が観察された。
【0064】
比較例2
実施例2と同様の方法で得られた柱状の成形体から、押出し方向に内径穴を加工して、縦50mm、横50mm、長さ297mmの角柱状物に内径29.0mmの中空部を形成した成形体を作製し、次いで、ステンレス製の軸芯にこの成形体の中空部を挿入した。この際、軸芯の周面にシリコーンゴム接着剤を塗布して、常温硬化により軸芯と円筒体層を接着させた。成形片が軸芯に固着したことを確認したのちに、成形体片の外径を研削して肉厚5mmの円筒体層を得た。
【0065】
角柱状の成形体について、実施例1と同様に諸物性を測定し、また、セラミックスローラについて、ローラ加熱試験及び回転加熱試験に供し、それらの結果を表1に記載した。その結果、比較例2はローラ加熱試験において、200℃において円筒体層の押出し方向に亀裂が生じた。また、回転加熱試験においても、円筒体層の押出し方向に破壊が観察された。
【0066】
【表1】
【0067】
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】(A)はセラミックスローラの断面図、(B)は(A)のセラミックスローラで使用する円筒体層の断面図。
【図2】無機繊維の特定配向に伴うセラミックスの特性であって、嵩密度と圧縮強度の関係を示す図。
【図3】セラミックスの嵩密度と圧縮弾性率の関係を示す図。
【図4】圧縮長さと面圧(軸芯長手方向の圧縮時の面圧)の関係を示す図。
【図5】湿式プレス法で得られた板状の成形体に孔を空ける工程を説明する図。
【図6】図5で得られた成形片を軸芯に組み付ける工程を説明する図。
【図7】軸芯一体成形方法を説明する図。
【図8】軸芯一体成形方法を説明する他の図。
【図9】押出成形方法を説明する図。
【図10】実施例で得られた角柱の成形体のSEM写真。
【図11】実施例で得られた角柱の成形体の他のSEM写真。
【図12】比較例1で得られた板状の成形体の穴加工を説明する図。
【符号の説明】
【0069】
1 円筒体層
1a〜1f 分割円筒体層
2 フランジ
3 ジャーナル部
4 金属製の軸芯
5 成形体
6a、6b 柱状の成形片
7a、7b 中空部
9 成形型
10 セラミックスローラ
91 軸芯
92 プレス板
93 円筒状の外筒
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電像を用いる電子写真装置の熱定着装置で使用されるセラミックスローラであって、金属製の軸芯と、該軸芯の外周に形成される無機繊維を含有するセラミックス製の円筒体層からなり、該円筒体層は、軸芯長手方向に圧縮されて該軸芯に固定され、且つ該無機繊維は該軸芯長手方向に対して垂直方向に配向していることを特徴とするセラミックスローラ。
【請求項2】
前記セラミックスの軸芯長手方向の圧縮弾性率は、該軸芯長手方向に対して垂直方向の圧縮弾性率より小さいことを特徴とする請求項1記載のセラミックスローラ。
【請求項3】
前記円筒体層は、軸芯長手方向に沿って、少なくとも2つに分割されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックスローラ。
【請求項4】
前記軸芯長手方向の圧縮長さが、該軸芯の熱膨張による長さの伸び以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のセラミックスローラ。
【請求項5】
前記軸芯と該円筒体層との間に、応力緩和層を設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセラミックスローラ。
【請求項6】
前記円筒体層の外周に、フッ素樹脂からなる表面層を更に備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセラミックスローラ。
【請求項7】
前記円筒体層は、ケイ酸カルシウムを更に含むセラミックス製であり、嵩密度0.05〜1.5g/cm3、熱伝導率0.01〜0.5W/(m・K)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のセラミックスローラ。
【請求項8】
無機繊維を含む原材料と水を混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、スラリーから板状または柱状の成形体を湿式プレス成形又は抄造によって得る成形工程と、成形体に無機繊維の配向方向に対して垂直に孔を空け、中空部を備えた成形片を得る工程と、成形片の中空部に軸芯を通し且つ成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程とを有することを特徴とするセラミックスローラの製造方法。
【請求項9】
無機繊維を含む原材料と水を混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、スラリーから湿式プレス成形により無機繊維の配向方向に対して垂直に貫通する中空部を備えた円筒状の成形片を得る成形工程と、成形片の中空部に軸芯を通し且つ成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程とを有することを特徴とするセラミックスローラの製造方法。
【請求項10】
前記成形工程は、成形型内に軸芯を配置する工程と、成形型と軸芯との間にスラリーを流し込む工程と、成形型内で軸芯長手方向に加圧して成形片を得る工程とを有することを特徴とする請求項9に記載のセラミックスローラの製造方法。
【請求項11】
無機繊維を含む原材料と水を混合して水系混合物を調整して混練物を得る混練工程と、混練物を押出成形して柱状又は板状の成形体を成形する成形工程と、成形体の押出方向に対して垂直に孔を空け、中空部を備えた成形片を得る工程と、成形片の中空部に軸芯を通し且つ成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程とを有することを特徴とするセラミックスローラの製造方法。
【請求項1】
帯電像を用いる電子写真装置の熱定着装置で使用されるセラミックスローラであって、金属製の軸芯と、該軸芯の外周に形成される無機繊維を含有するセラミックス製の円筒体層からなり、該円筒体層は、軸芯長手方向に圧縮されて該軸芯に固定され、且つ該無機繊維は該軸芯長手方向に対して垂直方向に配向していることを特徴とするセラミックスローラ。
【請求項2】
前記セラミックスの軸芯長手方向の圧縮弾性率は、該軸芯長手方向に対して垂直方向の圧縮弾性率より小さいことを特徴とする請求項1記載のセラミックスローラ。
【請求項3】
前記円筒体層は、軸芯長手方向に沿って、少なくとも2つに分割されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックスローラ。
【請求項4】
前記軸芯長手方向の圧縮長さが、該軸芯の熱膨張による長さの伸び以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のセラミックスローラ。
【請求項5】
前記軸芯と該円筒体層との間に、応力緩和層を設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセラミックスローラ。
【請求項6】
前記円筒体層の外周に、フッ素樹脂からなる表面層を更に備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセラミックスローラ。
【請求項7】
前記円筒体層は、ケイ酸カルシウムを更に含むセラミックス製であり、嵩密度0.05〜1.5g/cm3、熱伝導率0.01〜0.5W/(m・K)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のセラミックスローラ。
【請求項8】
無機繊維を含む原材料と水を混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、スラリーから板状または柱状の成形体を湿式プレス成形又は抄造によって得る成形工程と、成形体に無機繊維の配向方向に対して垂直に孔を空け、中空部を備えた成形片を得る工程と、成形片の中空部に軸芯を通し且つ成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程とを有することを特徴とするセラミックスローラの製造方法。
【請求項9】
無機繊維を含む原材料と水を混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、スラリーから湿式プレス成形により無機繊維の配向方向に対して垂直に貫通する中空部を備えた円筒状の成形片を得る成形工程と、成形片の中空部に軸芯を通し且つ成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程とを有することを特徴とするセラミックスローラの製造方法。
【請求項10】
前記成形工程は、成形型内に軸芯を配置する工程と、成形型と軸芯との間にスラリーを流し込む工程と、成形型内で軸芯長手方向に加圧して成形片を得る工程とを有することを特徴とする請求項9に記載のセラミックスローラの製造方法。
【請求項11】
無機繊維を含む原材料と水を混合して水系混合物を調整して混練物を得る混練工程と、混練物を押出成形して柱状又は板状の成形体を成形する成形工程と、成形体の押出方向に対して垂直に孔を空け、中空部を備えた成形片を得る工程と、成形片の中空部に軸芯を通し且つ成形片を軸芯長手方向に圧縮して固定する工程とを有することを特徴とするセラミックスローラの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−272051(P2007−272051A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99331(P2006−99331)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】
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