説明

セラミック基板及びその製造方法

【課題】表面からメッキ液および水分が浸入してセラミック基板の性能が低下してしまうことを抑制できるセラミック基板を提供する。
【解決手段】 Bとアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物とを含むガラスセラミックスからなる第1および第2の絶縁層を積層してなる積層体を有し、最上層に第2の絶縁層が位置するセラミック基板であって、第2の絶縁層は、第1の絶縁層上に積層され、第1の絶縁層は、Bとアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の総量が無機成分全体の30質量%以下であり、第2の絶縁層は、Bとアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の総量が無機成分全体の40質量%以上であり、第1および第2の絶縁層は、導体が内部に設けられた、互いに連通する貫通孔をそれぞれ有し、第1の絶縁層における第1貫通孔の第2の絶縁層側の開口縁が、第2の絶縁層における第2貫通孔の第1の絶縁層側の開口縁よりも内側にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック基板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミック基板は、半導体素子や各種電子部品を搭載、または機密に封止するパッケージ基板として用いられている。
【0003】
このセラミック基板は、一般に次のような方法で製造される。1)セラミック組成物に樹脂成分あるいは溶剤を混錬し、ドクターブレード法によりグリーンシートを成形する。2)得られたグリーンシートに穴あけ加工を行い、この穴に導体ペーストを充填してビアホール導体を形成する。3)このグリーンシートの表面に導体ペーストを回路パターンにスクリーン印刷を行うことにより、グリーンシート上に配線層を被着する。4)これを複数枚位置合わせして脱バインダを行った後、焼成する。また、表面の配線層の表面には、酸化防止、あるいはワイヤーボンドを行う為にNiやAuからなるメッキ層を形成する。
【0004】
また、基板の小型化の要求から配線幅は細く、また、絶縁層厚みは薄くなりつつある。さらに、小型化に伴い、近年では、焼結温度の異なる2種類のグリーンシートを組み合わせて積層し、焼成温度の異なる2回の焼成を施してセラミック多層配線基板を作製する方法が提案されている(特許文献1参照)。このような方法によれば、2種類のグリーンシートが異なる温度で収縮し、お互いに収縮を制限することから、寸法精度に優れたセラミック多層配線基板を作製することができる。
【特許文献1】特開平6−97656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、セラミック多層配線基板の表層の絶縁層となるグリーンシートとして、結晶化ガラス粉末及びセラミック粉末を含むグリーンシートが用いられる場合がある。そして、その場合、ガラスが収縮を開始する温度を低くするために、例えば、Bとアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の総量が無機成分全体の40質量%以上であるグリーンシートが用いられる場合がある。このグリーンシートは、焼成後において、配線との密着性が優れるという利点がある。しかし、一方で、焼成後における耐薬品性、耐絶縁性が弱く、メッキ処理液の酸、アルカリに比較的侵食されやすい。よって、セラミック多層配線基板の表層を上述のグリーンシートで形成すると、表層ビアホール上の電極でメッキ処理時のメッキ液および高温雰囲気での水分を遮断しても、表層の絶縁層を通してメッキ液および水分がビアホール導体まで到達してしまい、その結果、ビアホール導体を伝わって、基板の内部にまで浸透してしまう可能性があった。その結果、セラミック基板の性能を低下させてしまう可能性があった。
【0006】
従って、本発明は、表面部分からメッキ液および水分が浸入してセラミック基板の性能が低下してしまうことを抑制できるセラミック基板およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガラスセラミック基板は、Bとアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物とを含むガラスセラミックスからなる第1の絶縁層および第2の絶縁層を積層してなる積層体を有し、最上層に前記第2の絶縁層が位置するセラミック基板であって、前記第2の絶縁層は、前記第1の絶縁層上に積層され、
前記第1の絶縁層は、Bとアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の総量が無機成分全体の30質量%以下であり、
前記第2の絶縁層は、Bとアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の総量が無機成分全体の40質量%以上であり、
前記第1および第2の絶縁層は、導体が内部に設けられた、互いに連通する貫通孔をそれぞれ有し、前記第1の絶縁層における第1貫通孔の前記第2の絶縁層側の開口縁が、前記第2の絶縁層における第2貫通孔の前記第1の絶縁層側の開口縁よりも内側にある。
【0008】
好適には、前記第1貫通孔の前記開口縁は、全周に渡って前記第2貫通孔の前記開口縁から10μm以上離間している。
【0009】
好適には、前記第1の絶縁層は、前記第2の絶縁層よりも厚い。
【0010】
本発明のガラスセラミック基板の第1の製造方法は、Bとアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物とをそれぞれ含み、前記Bと前記アルカリ金属酸化物と前記アルカリ土類金属酸化物の総量が無機成分全体の30質量%以下である第1のガラスセラミックグリーンシートと、前記無機成分全体の40質量%以上である第2のガラスセラミックグリーンシートとを準備する準備工程と、前記第1のガラスセラミックグリーンシートに第1貫通孔を形成し、前記第2のガラスセラミックグリーンシートに第2貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔の内部に導体ペーストを設ける工程と、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔が連通するように、前記第1のガラスセラミックグリーンシートと前記第2のガラスセラミックグリーンシートとを積層してグリーンシート積層体を形成する積層体形成工程と、前記グリーンシート積層体を焼成する焼成工程とを有する。前記積層体形成工程において、前記第1貫通孔の前記第2のガラスセラミックグリーンシート側の開口縁は、前記第2貫通孔の前記第1のガラスセラミックグリーンシート側の開口縁よりも内側にあるように、前記第1および第2のガラスセラミックグリーンシートを積層する。
【0011】
好適には、本発明のガラスセラミック基板の第1の製造方法は、前記準備工程において、複数の前記第1のガラスセラミックグリーンシートおよび複数の前記第2のガラスセラミックグリーンシートを準備し、前記貫通孔形成工程において、前記複数の第1のガラスセラミックグリーンシートのうち少なくとも2つに前記第1貫通孔を形成し、前記複数の第2のガラスセラミックグリーンシートのうち少なくとも2つに前記第2貫通孔を形成し、前記積層体形成工程において、最上層および最下層に前記第2貫通孔が形成された前記第2のガラスセラミックグリーンシートを有し、該表層の第2のガラスセラミックグリーンシートに隣接して前記第1貫通孔が形成された前記第1のガラスセラミックグリーンシートが位置するように、前記グリーンシート積層体を形成する。
【0012】
本発明のガラスセラミック基板の第2の製造方法は、Bとアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物とをそれぞれ含み、前記Bと前記アルカリ金属酸化物と前記アルカリ土類金属酸化物の総量が無機成分全体の30質量%以下であるガラスセラミックグリーンシートを準備する準備工程と、前記ガラスセラミックグリーンシートに貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔の内部に導体ペーストを設ける工程と、前記ガラスセラミックグリーンシート上に、マスキングを行って、前記Bと前記アルカリ金属酸化物と前記アルカリ土類金属酸化物とを含み、前記Bと前記アルカリ金属酸化物と前記アルカリ土類金属酸化物の総量が無機成分全体の40質量%以上であるセラミックペーストを塗布する塗布工程と、前記セラミックペーストが塗布された前記ガラスセラミックグリーンシートを焼成する焼成工程とを有する。前記塗布工程において、前記貫通孔の開口縁の周囲を除いた領域に前記セラミックペーストを塗布する。
【0013】
好適には、本発明のガラスセラミック基板の第2の製造方法は、前記準備工程において、複数の前記ガラスセラミックグリーンシートを準備し、前記貫通孔形成工程において、前記複数のガラスセラミックグリーンシートの少なくとも2つに前記貫通孔をそれぞれ形成し、前記塗布工程において、前記ガラスセラミックグリーンシート上における前記貫通孔の開口縁の周囲を除いた領域に前記セラミックペーストを塗布する。さらに、前記ガラスセラミックグリーンシートが最上層および最下層に位置し、かつ前記セラミックペーストが表面に露出するように、前記複数のガラスセラミックグリーンシートを積層する積層工程を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のセラミック基板によれば、表面部分からメッキ液の浸入および水分が浸入して、セラミック基板の性能が低下してしまうことを抑制することができる。
【0015】
本発明のセラミック基板の製造方法によれば、表面部分からメッキ液の浸入および水分が浸入してセラミック基板の性能が低下してしまうことを抑制できるセラミック基板を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
図1は本発明の実施形態に係るセラミック基板1の断面図であり、セラミック基板1の構造の概略を示すものである。
【0018】
セラミック基板1は、第1絶縁層11a〜11dと第2絶縁層12a〜12eとが積層されてなる積層体基板を有する。最上層および最下層には第2絶縁層12a,12eが配置され、第1絶縁層11a,11dは第2絶縁層12a,12eと接している。積層体基板の内部および表層には、配線導体2が形成されている。第2絶縁層12a,12eにはビアホール導体3aが形成されている。また、その他の絶縁層11a〜11d,12b〜12dには、ビアホール導体3bが形成されている。
【0019】
セラミック基板1における表層の配線導体2は、主に電子部品素子の搭載部となる接続パッドとして機能し、内部の配線導体2及びビアホール導体3a,3bは、主に各回路素子を電気的に接続する配線またはインダクタやキャパシタ等の回路素子として機能する。
【0020】
第1絶縁層11a〜11d及び第2絶縁層12a〜12eは、例えば850〜1050℃の比較的低い温度で焼成可能であるガラス−セラミックス材料が用いられる。
【0021】
第1絶縁層11a〜11d及び第2絶縁層12a〜12eに含まれる無機物フィラーは、コランダム(αアルミナ)、クリストパライト、石英、ムライト、若しくはコージライトなどのセラミック材料が例示できる。
【0022】
また、ガラス成分は、複数の金属酸化物を含む低融点ガラスからなり、例えば850〜1050℃の比較的低い温度で焼成処理することによって、コージエライト、ムライト、アノーサイト、セルジアン、スピネル、ガーナイト、ウイレマイト、ドロマイト、若しくはその置換誘導体の結晶相の少なくとも1種類を析出するものである。
【0023】
これらの絶縁層11a〜11d,12a〜12eは、B、アルカリ金属酸化物、およびアルカリ土類酸化物を含有し、第1絶縁層11a〜11dに含まれるBとアルカリ金属酸化物とアルカリ土類酸化物の総量は無機成分全体の30質量%以下であり、第2絶縁層12a〜12eに含まれるBとアルカリ金属酸化物とアルカリ土類酸化物の総量が無機成分全体の40質量%以上である。
【0024】
具体的には、第1絶縁層11a〜11dの無機組成物は、ガラス成分として、SiOを20質量%、Alを1質量%、MgOを7.5質量%、CaOを0.5質量%、BaOを7.5重量%、Bを10質量%、ZnOを0.5質量%、TiOを0.25質量%、NaOを0.25質量%、LiOを2.5質量%含有し、セラミック粉末として、Alを50質量%含む。ここで、アルカリ金属酸化物は、NaO,LiOであり、アルカリ土類金属酸化物は、MgO、CaO、BaOである。よって、第1絶縁層11a〜11dにおいて、Bとアルカリ金属酸化物とアルカリ土類酸化物の総量は、無機成分全体の28.25%である。なお、この組成の絶縁層は、焼成後における耐薬品性、耐絶縁性が強く、メッキ処理液の酸、アルカリに侵食されにくい。
【0025】
第2絶縁層12a〜12eの無機組成物は、ガラス成分として、SiOを34質量%、Alを1.7質量%, MgOを12.75質量%、CaOを0.85質量%、BaOを12.75重量%、Bを17質量%、ZnOを0.85質量%、TiOを0.425質量%、NaOを0.425質量%、LiOを4.25質量%含有し、セラミック粉末として、MgTiOを15質量%含む。よって、第2絶縁層12a〜12eにおいて、Bとアルカリ金属酸化物とアルカリ土類酸化物の総量は、無機成分全体の48.025%である。
【0026】
上記のようにB、アルカリ金属酸化物、およびアルカリ土類酸化物の総量を調整することにより、収縮開始温度の異なる2種類のセラミックグリーンシートを組み合わせて焼成することができる。これにより互いの平面方向の収縮する力が強くなり平面方向の焼成収縮率を5%以下、特に2%以下、最適には1%以下とすることができる。
【0027】
内部配線導体2、ビアホール導体3a,3bはAg系(Ag単体、Ag−PdなどのAg合金)、Cu系(Cu単体、Cu合金)などの導体から成り、内部導体の厚みは8〜20μm程度である。ビアホール導体3a,3bの直径は任意な値とすることができるが、例えば、その直径は50〜250μmである。
【0028】
ここで、第1絶縁層11a,11dに形成されたビアホール導体3bと第2絶縁層12a,12bに形成されたビアホール導体3aは互いに連通する。そして、第1絶縁層11a,11dにおけるビアホール導体3bの絶縁層12a,12e側の開口縁が、第1絶縁層12a,12eにおけるビアホール導体3aの第1絶縁層11a,11d側の開口縁よりも内側にある。
【0029】
この構成により、耐薬品性が弱い最上層および最下層の第2絶縁層12a,12eが酸、アルカリあるいは金属を含むメッキ処理液等によって浸食され、浸食部がビアホール導体3aに達しても、耐薬品性の強い第1絶縁層11a,11dは浸食されないために、第1絶縁層11a,11dとビアホール導体3aの平面方向の界面でメッキ処理液等の浸入を抑制することができる。また、例えば、断面方向の第1絶縁層11a,11eとビアホール導体3bとの界面に引っ張り応力による隙間が発生した場合でも、メッキ処理液等の浸入を防ぐことができ、配線層間での絶縁抵抗の劣化や内臓素子の動作不具合を抑制することができる。なお、ここでは最上層および最下層と説明しているが、これは積層体の最も外側にある層、すなわち最表層の意味である。
【0030】
また、この構成において、ビアホール導体3aの開口縁は、全周に渡って、連通するビアホール導体3bの開口縁から10μm以上離間している。これにより、第1絶縁層11a、11dとビアホール導体3aの接触面積を十分に確保することができ、水分浸入をより効果的に抑制することができる。
【0031】
また、第1絶縁層11a,11dは、第2絶縁層12a,12eより厚くすると、アルカリ金属酸化物とアルカリ土類酸化物の含有量が多い第2絶縁層12a,12eが相対的に薄くなるため、絶縁耐圧を改善することができる。
【0032】
次に上述したセラミック基板1の製造方法について説明する。
【0033】
まず、第1の無機組成物から成る第1のガラスセラミックグリーンシートと第2の無機組成物からなる第2のガラスセラミックグリーンシートを準備する。これらのセラミックグリーンシートは、例えば上述したガラス粉末とセラミック粉末とを組み合わせた粉末に、有機バインダと有機溶剤及び必要に応じて可塑剤とを混合してスラリー化し、このスラリーを用いてドクターブレード法などによりテープ成形を行い、所定の寸法に切断することによって得られる。このとき、焼成後に第1絶縁層11a〜11dとなる第1ガラスセラミックグリーンシートは、Bとアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の総量が無機成分全体の30質量%以下であり、焼成後に第2絶縁層12a〜12eとなる第2ガラスセラミックグリーンシートは、Bとアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の総量が無機成分全体の40質量%以上に設定される。
【0034】
これにより、第1のグリーンシートに含まれる結晶化ガラス粉末の結晶化温度が、第2のグリーンシートに含まれる結晶化ガラス粉末の軟化点よりも低くなるように作製されている。
【0035】
セラミックススラリーに用いる有機バインダとしては、実績のあるグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、たとえばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系などの単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系バインダがより好ましい。
【0036】
また、セラミックスラリーに用いる溶剤としては、上記のセラミック粉末と有機バインダとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、トルエン,ケトン類,アルコール類の有機溶媒および水などが挙げられる。これらの中で、トルエン,メチルエチルケトン,イソプロピルアルコールなどの蒸発係数の高い溶剤はスラリー塗布後の乾燥工程が短時間で実施できるので好ましい。
【0037】
次に、第1ガラスセラミックシートに第1貫通孔をパンチングまたは、レーザー加工などにより形成する。同様に第2ガラスセラミックシートに第2貫通孔を形成する。このとき、第1貫通孔の径は、第2貫通孔の径よりも小さくなるように形成する。
【0038】
そして、焼成後に配線導体2となる導電ペーストを、例えばスクリーン印刷法等の手法を用いて、積層前のセラミックグリーンシートの所定の位置に所定の形状に印刷塗布する。このような方法で作製された電極は平滑性に優れ、厚みの薄い電極を形成することができる。
【0039】
また、焼成後にビアホール導体3a,3bとなる導電ペーストは、例えば埋め込み印刷等の手法を用いて、第1貫通孔および第2貫通孔に埋め込まれる。
【0040】
導体ペーストは、主成分の金属粉末に有機バインダ、有機溶剤、必要に応じて分散剤等を加えてボールミル、三本ロールミル、プラネタリーミキサー等の混練手段により混合および混練することで製作される。また、セラミックグリーンシートの焼結挙動に合わせたり、焼結後の絶縁基板との接合強度を高めたりするためにガラス若しくはセラミックスの粉末を添加しても良い。
【0041】
導体ペーストに用いる導体材料としては、例えばAg,Cuが挙げられる。その導体材料はアトマイズ法、若しくは還元法などによって製造された粉末であり、必要により酸化防止、若しくは凝集防止などの処理をおこなってもよい。分級などにより微粉末または粗粉末を導体粉末から除去し粒度分布を調整したものであってもよい。
【0042】
導体ペーストに用いる有機バインダとしては、実績のある導体ペーストに使用されているものが使用可能である。有機バインダとして、たとえばアクリル系,ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系などの単独重合体または共重合体が挙げられる。アクリル系の重合体としては、アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体若しくは共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系、アルキド系の有機バインダがより好ましい。有機バインダの添加量としては、導体粒子により異なるが、有機バインダの分解性に問題なく、かつ導体粒子を分散できる量であればよい。
【0043】
導体ペーストに用いる有機溶剤としては、上記の導体粉末と有機バインダとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、テルピネオールやブチルカルビトールアセテートおよびフタル酸などの可塑剤などが使用可能であるが、配線導体2形成後の溶剤の乾燥性を考慮し、テルピネオールなどの低沸点溶剤などが好ましい。
【0044】
次に、第1ガラスセラミックグリーンシートと第2ガラスセラミックグリーンシートとを交互に積層していく。このとき第1貫通孔と第2貫通孔は互いに貫通し、第1貫通孔の第2ガラスセラミックグリーンシート側の開口縁が、第2貫通孔の第1のガラスセラミックグリーンシート側の開口縁よりも内側になるように積層して積層体を形成する。
【0045】
最後に、上記グリーンシート積層体を焼成して、セラミック基板1を得る。
【0046】
上述の方法では、第1のガラスセラミックグリーンシートに含まれる結晶化ガラス粉末の結晶化温度が、第2のガラスセラミックグリーンシートに含まれる結晶化ガラス粉末の軟化点よりも低くなるように作製されていることから、これらを積層した積層体を同時焼成することにより、2種類のガラスセラミックグリーンシートが異なる温度で収縮し、お互いに収縮を制限することから、寸法精度に優れたセラミック多層配線基板を作製することができる。
【0047】
また、上述したセラミック多層基板の作製方法によると、平面方向への収縮が拘束されることから、ビアホール導体3bと基板との界面で隙間が発生する可能性もある。しかし、本実施の形態によるセラミック基板1によれば、メッキ液および水分が、ビアホール導体3bと基板との間の隙間へと浸入することを抑制でき、例えば配線層間での絶縁抵抗の劣化や内蔵素子の動作不具合を引き起越す可能性も低減できる。
【0048】
その他にも、第1ガラスセラミックグリーンシートと第2ガラスセラミックグリーンシートを交互に積層するのではなく、第1ガラスセラミックグリーンシート上にペースト状になした第2の無機組成物を印刷等で塗布して直接形成するようにしても良い。このとき、焼成後に第2絶縁層12a、12eとなる第2の無機組成物を塗布する場合には、第1ガラスセラミックグリーンシートに形成された第1貫通孔の開口縁よりも外側に、すなわち第1貫通孔の開口縁の周囲を除いた領域にペースト状になした第2の無機組成物が塗布されるように、製版などによってマスキングを行うとよい。また、焼成後に絶縁層12b〜12dとなる第2の無機組成物を塗布する場合には、マスキングをしないで、ペースト状になした第2の無機組成物を第1ガラスセラミックグリーンシート全面に塗布後、第1貫通孔と第2貫通孔を同時に形成しても良い。
【0049】
この場合、第1絶縁層より厚みの薄い第2絶縁層をペーストの塗布などによって比較的簡単に形成でき、第2絶縁層をガラスセラミックグリーンシート等で構成する場合にくらべて、第1絶縁層を形成する作業性が良好となり、また、第1貫通孔と第2貫通孔の形成も一括で行うことができ、セラミック基板の生産性を向上させることができる利点がある。
【0050】
また、上述の実施形態において、第1絶縁層と第2絶縁層を交互に積層して積層体を形成するようにしたが、最表層である第2絶縁層とそれに接した第1絶縁層以外の構成は、これに限らず、例えば、複数の第1絶縁層および複数の第2絶縁層を厚み方向に連続して積層した構成であってもよい。
【0051】
また、用途によりセラミック基板の1つの面のみ露出する場合であれば、セラミック基板は、一方の表層のみ第2絶縁層であり、その第2絶縁層に隣接して第1絶縁層が位置された積層基板であってもよい。さらに、単に、第1絶縁層上に第2絶縁層を積層した積層基板であってもよい。
【0052】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内での変更、改良が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係るガラスセラミックス基板の断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ・・・・・セラミック基板
2・・・・・・配線導体
3a,3b・・ビアホール導体
11a〜11d・・・第1絶縁層
12a〜12e・・・第2絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
とアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物とを含むガラスセラミックスからなる第1の絶縁層および第2の絶縁層を積層してなる積層体を有し、最上層に前記第2の絶縁層が位置するセラミック基板であって、
前記第2の絶縁層は、前記第1の絶縁層上に積層され、
前記第1の絶縁層は、Bとアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の総量が無機成分全体の30質量%以下であり、
前記第2の絶縁層は、Bとアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の総量が無機成分全体の40質量%以上であり、
前記第1および第2の絶縁層は、導体が内部に設けられた、互いに連通する貫通孔をそれぞれ有し、前記第1の絶縁層における第1貫通孔の前記第2の絶縁層側の開口縁が、前記第2の絶縁層における第2貫通孔の前記第1の絶縁層側の開口縁よりも内側にあるセラミック基板。
【請求項2】
前記第1貫通孔の前記開口縁は、全周に渡って前記第2貫通孔の前記開口縁から10μm以上離間している請求項1に記載のセラミック基板。
【請求項3】
前記第1の絶縁層は、前記第2の絶縁層よりも厚い請求項1または請求項2に記載のセラミック基板。
【請求項4】
とアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物とをそれぞれ含み、前記Bと前記アルカリ金属酸化物と前記アルカリ土類金属酸化物の総量が無機成分全体の30質量%以下である第1のガラスセラミックグリーンシートと、前記無機成分全体の40質量%以上である第2のガラスセラミックグリーンシートとを準備する準備工程と、
前記第1のガラスセラミックグリーンシートに第1貫通孔を形成し、前記第2のガラスセラミックグリーンシートに第2貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔の内部に導体ペーストを設ける工程と、
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔が連通するように、前記第1のガラスセラミックグリーンシートと前記第2のガラスセラミックグリーンシートとを積層してグリーンシート積層体を形成する積層体形成工程と、
前記グリーンシート積層体を焼成する焼成工程と
を有し、
前記積層体形成工程において、前記第1貫通孔の前記第2のガラスセラミックグリーンシート側の開口縁が、前記第2貫通孔の前記第1のガラスセラミックグリーンシート側の開口縁よりも内側にあるように、前記第1および第2のガラスセラミックグリーンシートを積層するセラミック基板の製造方法。
【請求項5】
前記準備工程において、複数の前記第1のガラスセラミックグリーンシートおよび複数の前記第2のガラスセラミックグリーンシートを準備し、
前記貫通孔形成工程において、前記複数の第1のガラスセラミックグリーンシートのうち少なくとも2つに前記第1貫通孔を形成し、前記複数の第2のガラスセラミックグリーンシートのうち少なくとも2つに前記第2貫通孔を形成し、
前記積層体形成工程において、最上層および最下層に前記第2貫通孔が形成された前記第2のガラスセラミックグリーンシートを有し、該最上層および最下層の第2のガラスセラミックグリーンシートに隣接して前記第1貫通孔が形成された前記第1のガラスセラミックグリーンシートが位置するように、前記グリーンシート積層体を形成する請求項4に記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項6】
とアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物とをそれぞれ含み、前記Bと前記アルカリ金属酸化物と前記アルカリ土類金属酸化物の総量が無機成分全体の30質量%以下であるガラスセラミックグリーンシートを準備する準備工程と、
前記ガラスセラミックグリーンシートに貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記貫通孔に導体ペーストを設ける工程と、
前記ガラスセラミックグリーンシート上に、マスキングを行って、前記Bと前記アルカリ金属酸化物と前記アルカリ土類金属酸化物とを含み、前記Bと前記アルカリ金属酸化物と前記アルカリ土類金属酸化物の総量が無機成分全体の40質量%以上であるセラミックペーストを塗布する塗布工程と、
前記セラミックペーストが塗布された前記ガラスセラミックグリーンシートを焼成する焼成工程と
を有し、
前記塗布工程において、前記貫通孔の開口縁の周囲を除いた領域に前記セラミックペーストを塗布するセラミック基板の製造方法。
【請求項7】
前記準備工程において、複数の前記ガラスセラミックグリーンシートを準備し、
前記貫通孔形成工程において、前記複数のガラスセラミックグリーンシートの少なくとも2つに前記貫通孔をそれぞれ形成し、
前記塗布工程において、前記ガラスセラミックグリーンシート上における前記貫通孔の開口縁の周囲を除いた領域に前記セラミックペーストを塗布し、
前記セラミックペーストが塗布された前記ガラスセラミックグリーンシートが最上層および最下層に位置し、かつ前記セラミックペーストが表面に露出するように、前記複数のガラスセラミックグリーンシートを積層する積層工程を有する請求項6に記載のセラミック基板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−153554(P2010−153554A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329521(P2008−329521)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】