説明

センサ出力データの補正装置及びセンサ出力データの補正方法

【目的】経時的な、光量変化やセンサの各受光素子自体の感度変化に起因するセンサの出力レベル変化を補正する。
【構成】センサ出力データの補正装置は次回路を備える。オフセット回路は試料を照明して、透過或いは反射して得られる光を受光して画像データを出力するセンサからの出力データを入力し、オフセット補正を行う。ゲイン補正回路はゲイン補正係数を入力し、入力されたゲイン補正係数でゲイン補正を行う。平均値算出回路はオフセット補正とゲイン補正が行われたセンサの出力データのうち、透過の場合はパターンから光が透過する位置で、反射の場合はパターンから光が反射する位置で取得したセンサの出力データを用いて、各画素値の平均値を演算する。ゲイン補正係数算出回路は設定された基準値からの平均値の変化率を用いてゲイン補正に用いるゲイン補正係数を補正し前記ゲイン補正回路にフィードバックする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、センサ出力データの補正装置及びセンサ出力データの補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。これらの半導体素子は、回路パターンが形成された原画パターン(マスク或いはレチクルともいう。以下、マスクと総称する)を用いて、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写して回路形成することにより製造される。よって、かかる微細な回路パターンをウェハに転写するためのマスクの製造には、微細な回路パターンを描画することができるパターン描画装置を用いる。かかるパターン描画装置を用いてウェハに直接パターン回路を描画することもある。或いは、電子ビーム以外にもレーザビームを用いて描画するレーザビーム描画装置の開発が試みられている。
【0003】
そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになろうとしている。歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるマスクのパターン欠陥があげられる。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0004】
一方、マルチメディア化の進展に伴い、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)は、500mm×600mm、またはこれ以上への液晶基板サイズの大型化と、液晶基板上に形成されるTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)等のパターンの微細化が進んでいる。従って、極めて小さいパターン欠陥を広範囲に検査することが要求されるようになってきている。このため、このような大面積LCDのパターン及び大面積LCDを製作する時に用いられるフォトマスクの欠陥を短時間で、効率的に検査する試料検査装置の開発も急務となってきている。
【0005】
ここで、従来のパターン検査装置では、拡大光学系を用いてリソグラフィマスク等の試料上に形成されているパターンを所定の倍率で撮像した光学画像と、設計データ、あるいは試料上の同一パターンを撮像した光学画像と比較することにより検査を行うことが知られている。例えば、パターン検査方法として、同一マスク上の異なる場所の同一パターンを撮像した光学画像データ同士を比較する「die to die検査」や、パターン設計されたCADデータをマスクにパターンを描画する時に描画装置が入力するための装置入力フォーマットに変換した描画データ(設計パターンデータ)を検査装置に入力して、これをベースに設計画像データ(参照画像)を生成して、それとパターンを撮像した測定データとなる光学画像とを比較する「die to database検査」がある。かかる検査装置における検査方法では、試料はステージ上に載置され、ステージが動くことによって光束が試料上を走査し、検査が行われる。試料には、光源及び照明光学系によって光束が照射される。試料を透過あるいは反射した光は光学系を介して、センサ上に結像される。センサで撮像された画像は測定データとして比較回路へ送られる。比較回路では、画像同士の位置合わせの後、測定データと参照データとを適切なアルゴリズムに従って比較し、形状や出力信号レベルが一致しない場合には、パターン欠陥有りと判定する。
【0006】
ここで、試料上に形成されているパターンの撮像を行うセンサの出力データは、AD変換後にオフセット補正により、センサの出力オフセットの補正を行い、ゲイン補正によりゲインの補正が行われる。オフセットとゲインの補正は、撮像される画素毎に行なわれる。オフセットとゲインの補正係数は、測定前に予め基準となる被測定物の白部と黒部の領域で採取したセンサの出力データから、センサの画像取込み幅に対応する画素毎に算出する。そして、算出された補正係数が装置に設定され、以降、かかる補正係数を使って補正が行われる。しかしながら、かかる従来のオフセット補正やゲイン補正の手法では、光源の経時的な光量変化やセンサの各受光素子自体の経時的な感度変化に起因するセンサの出力レベルの変化により欠陥の出力レベルやパターンの線幅が変化してしまい、微細な欠陥の検出やパターンの線幅の差を検出する要求について、対処することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−071630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態は、上述した問題点を克服し、経時的な光量変化やセンサの各受光素子自体の経時的な感度変化に起因するセンサの出力レベルの変化を補正する装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、センサ出力データの補正装置は、オフセット回路と、ゲイン補正回路と、平均値算出回路と、ゲイン補正係数算出回路と、を備える。オフセット回路は、パターン形成された試料を照明して、透過或いは反射して得られる光を受光して画像データを出力するセンサからの出力データを入力し、前記出力データのオフセット補正を行う。ゲイン補正回路は、ゲイン補正係数を入力し、入力されたゲイン補正係数を前記出力データに乗じることでゲイン補正を行う。平均値算出回路は、前記オフセット補正とゲイン補正が行われた前記センサの出力データのうち、透過により得られる場合は前記パターンから光が透過する位置で、反射により得られる場合は前記パターンから光が反射する位置で取得した前記センサの出力データを用いて、前記センサの出力データの各画素値の平均値を演算する。ゲイン補正係数算出回路は、設定された基準値からの前記平均値の変化率を用いて前記ゲイン補正に用いるゲイン補正係数を補正し、前記ゲイン補正回路にフィードバックする。
【0010】
また、実施形態によれば、センサ出力データの補正方法は、パターン形成された試料を照明して、透過或いは反射して得られる光を受光して画像データを出力するセンサからの出力データを入力し、前記出力データのオフセット補正を行う工程と、ゲイン補正係数を入力し、入力されたゲイン補正係数を前記出力データに乗じることでゲイン補正を行う工程と、前記オフセット補正とゲイン補正が行われた前記センサの出力データから、透過により得られる場合は前記パターンから光が透過する位置で取得した前記センサの出力データを、反射により得られる場合は前記パターンから光が反射する位置で取得した前記センサの出力データを用いて、前記センサの出力データの各画素値の平均値を演算する工程と、設定された基準値からの前記平均値の変化率を用いて前記ゲイン補正に用いるゲイン補正係数を補正し、前記ゲイン補正用にフィードバックする工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。
【図2】第1の実施形態における光学画像の取得手順を説明するための図である。
【図3】第1の実施形態におけるセンサ出力補正回路の内部構成を示す概念図である。
【図4】第1の実施形態におけるオフセット補正の仕方を説明するためのグラフの一例である。
【図5】第1の実施形態におけるゲイン補正の仕方を説明するためのグラフの一例である。
【図6】第1の実施形態における白部平均出力レベル算出回路の内部構成を示す概念図である。
【図7】第1の実施形態におけるセンサ出力の順序とデータ変換回路後のデータ出力順序の一例を示す図である。
【図8】第1の実施形態におけるゲイン補正係数算出回路の内部構成を示す概念図である。
【図9】第2の実施形態におけるセンサ出力補正回路の内部構成を示す概念図である。
【図10】第2の実施形態における白部識別回路と白部平均出力レベル算出回路の内部構成を示す概念図である。
【図11】第2の実施形態におけるセンサ出力の順序とデータ変換回路後のデータ出力順序の一例を示す図である。
【図12】第2の実施形態における白部判定回路の内部構成を示す概念図である。
【図13】第2の実施形態における注目画素を中心とした画素領域の一例を示す図である。
【図14】第2の実施形態における白部テンプレートの一例を示す図である。
【図15】別の光学画像取得手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。図1において、パターンが形成されたマスクやウェハ等の基板を試料して、かかる試料上のパターンの欠陥を検査するパターン検査装置100は、光学画像取得部150と制御系回路160を備えている。光学画像取得部150は、XYθテーブル102、光源103、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105、センサ回路106、レーザ測長システム122、オートローダ130、照明光学系170を備えている。制御系回路160では、コンピュータとなる制御計算機110が、データ伝送路となるバス120を介して、位置回路107、比較回路108、展開回路111、参照回路112、センサ出力補正回路140、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレシキブルディスク装置(FD)116、CRT117、パターンモニタ118、プリンタ119に接続されている。また、XYθテーブル102は、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータにより駆動される。センサ出力補正回路140は、センサ出力データの補正装置の一例となる。図1では、本第1の実施形態を説明する上で必要な構成部分以外については記載を省略している。パターン検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれることは言うまでもない。
【0013】
光学画像取得工程として、光学画像取得部150は、設計データに基づいて設計データに含まれる図形データが示す図形が描画された試料となるフォトマスク101における光学画像を取得する。具体的には、光学画像は、以下のように取得される。
【0014】
被検査試料となるフォトマスク101は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能に設けられたXYθテーブル102上に載置され、フォトマスク101に形成されたパターンには、XYθテーブル102の上方に配置されている適切な光源103によって光が照射される。光源103から照射される光束は、照明光学系170を介して試料となるフォトマスク101を照射する。フォトマスク101の下方には、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105及びセンサ回路106が配置されており、露光用マスクなどの試料となるフォトマスク101を透過した光は拡大光学系104を介して、フォトダイオードアレイ105に光学像として結像し、入射する。
【0015】
図2は、第1の実施形態における光学画像の取得手順を説明するための図である。
被検査領域は、図2に示すように、Y方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプに仮想的に分割され、更にその分割された各検査ストライプが連続的に走査されるようにXYθテーブル102の動作が制御され、X方向に移動しながら光学画像が取得される。フォトダイオードアレイ105では、図2に示されるようなスキャン幅Wの画像を連続的に入力する。そして、第1の検査ストライプにおける画像を取得した後、第2の検査ストライプにおける画像を今度は逆方向に移動しながら同様にスキャン幅Wの画像を連続的に入力する。そして、第3の検査ストライプにおける画像を取得する場合には、第2の検査ストライプにおける画像を取得する方向とは逆方向、すなわち、第1の検査ストライプにおける画像を取得した方向に移動しながら画像を取得する。このように、連続的に画像を取得していくことで、無駄な処理時間を短縮することができる。
【0016】
フォトダイオードアレイ105上に結像されたパターンの像は、フォトダイオードアレイ105によって光電変換され、更にセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。このように、光電変換により光を画像に変換する。フォトダイオードアレイ105には、TDI(タイムディレイインテグレーション)センサやラインセンサのように複数の画素列が配置されたセンサが設置されている。ステージとなるXYθテーブル102をX軸方向に連続的に移動させることにより、TDIセンサは試料となるフォトマスク101のパターンを撮像する。これらの光源103、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105、センサ回路106により高倍率の検査光学系が構成されている。
【0017】
XYθテーブル102は、制御計算機110の制御の下にテーブル制御回路114により駆動される。X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X−Y−θ)モータの様な駆動系によって移動可能となっている。
【0018】
センサ回路106から出力された測定データ(光学画像)は、センサ出力補正回路140でオフセット補正やゲイン補正が行われる。ここで、従来のように、予め設定された補正係数のみでオフセット補正やゲイン補正を行っていたのでは、上述したように、経時的な光量変化やセンサの各受光素子自体の経時的な感度変化に起因するセンサの出力レベルの変化を補正することは困難である。そこで、第1の実施形態では、ゲイン補正を行う際に用いる補正係数を補正してフィードバックすることで、かかる経時的な光量変化やセンサの各受光素子自体の経時的な感度変化に起因するセンサの出力レベルの変化を補正する。
【0019】
図3は、第1の実施形態におけるセンサ出力補正回路の内部構成を示す概念図である。図3において、センサ出力補正回路140は、オフセット補正回路10、ゲイン補正回路12、白部平均出力レベル算出回路14、及びゲイン補正係数算出回路16を有している。センサ回路106でA/D変換されたフォトダイオードアレイ105の出力は、オフセット補正回路10でオフセット補正が行われる。ここでは、一例として、パターン形成されたフォトマスク101を照明して、透過して得られる光をフォトダイオードアレイ105が受光する場合を示している。
【0020】
図4は、第1の実施形態におけるオフセット補正の仕方を説明するためのグラフの一例である。図4において、横軸は光量、縦軸はセンサ出力(画素値)を示している。オフセット補正回路10は、予め設定されたオフセット補正係数を入力して、フォトダイオードアレイ105の各出力(デジタル化された後のデータ)に対してオフセット補正係数を加算して出力データをオフセットする。
【0021】
図5は、第1の実施形態におけるゲイン補正の仕方を説明するためのグラフの一例である。図5において、横軸は光量、縦軸はセンサ出力(画素値)を示している。ゲイン補正回路12は、予め設定されたゲイン補正係数を入力し、入力されたゲイン補正係数を出力データに乗じることでゲイン補正を行う。
【0022】
ここで、センサ出力データのうち、白部となる、透過により得られる場合は、周囲の影響を受けない位置であって対象画素中にパターンが存在しない位置から得られるデータが、本来、画素値が最大になる。他方、黒部となる、透過型の場合、パターンが対象画素の全体を占める位置、すなわちパターンで埋め尽くされた位置からは光が透過しないので画素値は最小の値「0」となる。その中間が領域の一部にパターンが存在する位置、白部でありながら周囲のパターンの影響を受けた位置、或いは黒部でありながら周囲の白部の影響を受けた位置から受光した画素値となる。そのため、経時的な光量変化やセンサの各受光素子自体の経時的な感度変化に起因するセンサの出力レベルの変化は、かかる周囲の影響を受けていない白部からの信号についての出力レベル(画素値)が基準となる出力レベル(画素値)に対してどのように変化したか算出することで把握できる。そこで、第1の実施形態では、オフセット補正とゲイン補正の後に取り付けた、白部平均出力レベル算出回路14とゲイン補正係数算出回路16により、センサのゲイン係数を補正してセンサ出力を補正する。
【0023】
第1の実施形態では、補正用白パターンを用いてかかるゲイン係数を補正する。補正用白パターン20,22は、図2で示したフォトマスク101の検査領域外に形成しておくとよい。光学画像取得部150は、検査前、或いは検査途中に一旦検査ストライプの撮像を中断してかかる補正用白パターン20,22を撮像する。補正用白パターン20,22は、周囲の影響を受けない白部の領域で形成される。例えば、複数の検査ストライプの光学画像を取得後、次の検査ストライプを撮像する前に、ステージ位置を補正用白パターン20,22に照明光が照射されるように位置を移動させる。そして、ステージを移動しながら補正用白パターン20,22を撮像する。これにより、補正用白パターン20,22から白部における複数の画素値を取得できる。経時的な光量変化やセンサの各受光素子自体の経時的な感度変化が生じていれば、得られるセンサの出力レベルも変化していることになる。ここでは、補正用白パターン20,22と2つの領域に分けているがこれに限るものではない。1つでも3つ以上であってもよい。そして、かかる補正用白パターン20,22の撮像データを用いてゲイン係数を補正する。
【0024】
図6は、第1の実施形態における白部平均出力レベル算出回路の内部構成を示す概念図である。白部平均出力レベル算出回路14は、データ変換回路40、画素出力積算回路42、および画素平均値の平均回路44を有している。TDIセンサでは、複数の画素列が同時に撮像できるように複数のフォトダイオード素子が並んで配列される。そのため、画像取り込み幅分の複数のフォトダイオード素子が同時に撮像していくことで例えばL画素(L≧2、例えば、1024個)分の画像を同時に取得できる。さらに、各列にも複数のフォトダイオード素子が配列される。そして、移動しながら同じ列の複数のフォトダイオード素子が時間をずらしながら同じ画素位置を連続的に撮像していく。そのため、フォトマスク101上の同じ位置について複数の画素データが得られる。例えば、各画素位置についてm個(m≧2、例えば、1024個)のデータを取得できる。データ変換回路40は、画素毎に、得られた複数の画素データを連続的に出力するようにデータの出力順序を変換する。
【0025】
図7は、第1の実施形態におけるセンサ出力の順序とデータ変換回路後のデータ出力順序の一例を示す図である。例えば、1〜L画素が同時に撮像できるようにL個のフォトダイオード素子が一方向に並んで配列される場合を示している。データ変換回路40には、図7(a)に示すように、最初に同時撮像された1画素目のデータ、2画素目のデータ、・・・L画素目のデータと順に入力される。そして、時間をずらして同時撮像された2回目の、1画素目のデータ、2画素目のデータ、・・・L画素目のデータと順に入力される。このように、同じ画素のデータが連続して入力されない。そのため、データ変換回路40は、図7(b)に示すように、画素毎に、得られた複数の画素データを連続的に出力する。すなわち、1画素目について1回目のデータ、2回目のデータ、・・・・、m回目のデータを連続的に出力し、次に、2画素目について同様に1回目のデータ、2回目のデータ、・・・・、m回目のデータを連続的に出力し、次に、3画素目について同様に、・・・L画素目について同様に出力する。以上のようにして、補正用白パターン20,22を連続的に撮像したセンサ出力データを変換して、画素毎に、補正用白パターン20,22から得られた複数の画素データを連続的に出力する。
【0026】
画素出力積算回路42は、画素毎に、N個毎のデータの画素値を積算し、積算値をNで割ることで、N個分のデータ毎に画素値の平均値を算出する。但しN<mである。すなわち、1画素目について画素出力積算回路42aがN個分のデータ毎に画素値の平均値を算出する。2画素目について画素出力積算回路42bがN個分のデータ毎に画素値の平均値を算出する。3画素目について画素出力積算回路42cがN個分のデータ毎に画素値の平均値を算出する。以降、同様に、画素毎に対応する画素出力積算回路42がN個分のデータ毎に画素値の平均値をそれぞれ算出する。以上のようにして、補正用白パターン20,22から得られた複数の画素データについて、N個分のデータ毎に画素値の平均値を算出する。
【0027】
さらに、画素平均値の平均回路44は、N個分のデータ毎の複数の平均値を入力し、かかる平均値の平均値を演算する。全ての画素値の平均値を一度で計算せずに、複数の平均値から全体の平均値を求めることでデータメモリの容量を小さくできる。すなわち、1画素目について画素平均値の平均回路44aが平均値の平均値を演算する。2画素目について画素平均値の平均回路44bが平均値の平均値を演算する。以降、同様に、画素毎に対応する画素平均値の平均回路44が平均値の平均値を演算する。以上のようにして、補正用白パターン20,22から得られた複数の画素データについて、平均値の平均値を演算する。
【0028】
以上のようにして、白部平均出力レベル算出回路14は、オフセット補正とゲイン補正が行われたセンサの出力データのうち、白部の位置から得られる複数の画素値の平均値を演算する。白部平均出力レベル算出回路14は、平均値算出回路の一例である。
【0029】
図8は、第1の実施形態におけるゲイン補正係数算出回路の内部構成を示す概念図である。ゲイン補正係数算出回路16内では、画素毎に、メモリ51、変化率演算回路50、補正回路52が配置される。各メモリ51内には、画素毎に、まだ経時的な光量変化やセンサの各受光素子自体の経時的な感度変化が生じる前の段階で撮像された白部の基準出力値が格納されている。
【0030】
まず、変化率演算回路50は、画素毎に、白部の位置から得られた画素平均値Aをメモリ51内の基準出力値Bで割った変化率Cを算出する。すなわち、1画素目について変化率演算回路50aが白部の位置から得られた1画素目の画素平均値Aをメモリ51a内の基準出力値Bで割った変化率Cを算出する。2画素目について変化率演算回路50bが白部の位置から得られた1画素目の画素平均値Aをメモリ51b内の基準出力値Bで割った変化率Cを算出する。以降、同様に、画素毎に対応する変化率演算回路50が変化率Cを演算する。以上のようにして、補正用白パターン20,22から得られたセンサ出力データについて、画素毎に変化率Cを演算する。
【0031】
次に、補正回路52は、画素毎に、補正前のゲイン係数を入力し、補正前のゲイン係数を変化率Cで割った値を補正後のゲイン係数としてゲイン補正回路12に出力して、フィードバックする。フィードバックを受けたゲイン補正回路12は、以降、フィードバックされたゲイン係数を用いてゲイン補正を行う。
【0032】
以上のように、ゲイン補正係数算出回路16は、設定された基準値からの補正用白パターン20,22における画素平均値の変化率を用いてゲイン補正に用いるゲイン係数を補正し、ゲイン補正回路14にフィードバックする。かかる構成により、経時的な光量変化やセンサの各受光素子自体の経時的な感度変化に起因するセンサの出力レベルの変化をゲイン補正で補正できる。
【0033】
そして、以降、補正されたゲイン係数で各検査ストライプ内のパターンが撮像される。このように、経時的な光量変化やセンサの各受光素子自体の経時的な感度変化に起因するセンサの出力レベルの変化が補正された光学画像データ(測定データ)は、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上におけるフォトマスク101の位置を示すデータとともに比較回路108に送られる。測定データは例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調を表現している。
【0034】
また、参照データ作成工程として、展開回路111および参照回路112等で構成される参照画像作成部が被検査試料となるフォトマスク101の設計データに基づいて、測定データと比較するための参照データ(参照画像)を作成する。設計データは磁気ディスク装置109等に格納されている。
【0035】
比較工程として、比較回路108(比較部)は、測定データと参照データとを入力後、位置合わせを行なってから両者を比較する。所定のアルゴリズムに従って比較し、画素毎に欠陥の有無を判定する。比較結果は、パターンモニタ118等に出力される。
【0036】
以上のように、経時的な光量変化やセンサの各受光素子自体の経時的な感度変化に起因するセンサの出力レベルの変化が補正されたデータで比較を行うことにより欠陥の誤検出を抑制して擬似欠陥を低減し、高精度の検査を行うことができる。
【0037】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、フォトマスク101に形成された補正用白パターン20,22を必要に応じて撮像し、撮像の都度、ゲイン係数を補正したが、これに限るものではない。第2の実施形態では、わざわざ、補正用白パターン20,22を撮像せずに検査領域内で撮像された画素データを用いて補正する構成について説明する。パターン検査装置の構成は図1と同様である。センサ出力補正回路140の内部構成以外は、第1の実施形態と同様である。以下、特に説明する内容以外は、第1の実施形態と同様である。
【0038】
図9は、第2の実施形態におけるセンサ出力補正回路の内部構成を示す概念図である。図9において、センサ出力補正回路140は、白部平均出力レベル算出回路14の代わりに白部平均出力レベル算出回路15となり、ゲイン補正回路12と白部平均出力レベル算出回路15の間に、白部識別回路13を備えた点以外は図3と同様である。白部識別回路13は、検査中の検査領域のセンサ出力データの中から自動的に白部となる画素位置を識別する。
【0039】
図10は、第2の実施形態における白部識別回路と白部平均出力レベル算出回路の内部構成を示す概念図である。白部識別回路13は、オフセット補正とゲイン補正が行われたセンサの出力データを入力する。そして、入力された出力データのうち、白部の画素位置を識別する。白部識別回路13内には、画素毎に、データ変換回路60、メモリ61、および白部判定回路62を有している。メモリ61内には白部テンプレートが格納されている。
【0040】
図11は、第2の実施形態におけるセンサ出力の順序とデータ変換回路後のデータ出力順序の一例を示す図である。ここでも、上述したように、例えば、1〜L画素が同時に撮像できるようにL個のフォトダイオード素子が一方向に並んで配列される場合を示している。データ変換回路60には、図11(a)に示すように、最初に同時撮像された1画素目のデータ、2画素目のデータ、・・・L画素目のデータと順に入力される。そして、時間をずらして同時撮像された2回目の、1画素目のデータ、2画素目のデータ、・・・L画素目のデータと順に入力される。ここで、データ変換回路60は、図11(b)に示すように、注目画素毎に、注目画素とかかる注目画素を取り囲む周囲の複数の画素データを連続的に出力する。例えば、注目画素を中心にしたk×k個(k≧3)の画素領域の各データを連続的に出力する。次に、注目画素を1つL画素目側にずらして、同様に、k×k個の画素領域の各データを連続的に出力する。すなわち、1画素目について、1画素目の注目画素とかかる注目画素を取り囲む前後と画素が存在する側の画素で構成される画素領域の各データを出力する。注目画素を中心にしたk×k個の画素領域が選択できない場合には、有効となる画素で画素領域を構成すればよい。以下、同様である。次に、注目画素を1つL画素目側にずらして、2画素目の注目画素とかかる注目画素を取り囲む前後と画素が存在する側の画素で構成される画素領域の各データを出力する。同様に、3画素目以降、順次、注目画素をずらしながら画素領域の各データを出力する。L画素目まで注目画素をずらし終わったら、1画素目の2番目の画素を注目画素として、同様に繰り返す。以上のようにして、データ変換回路60は、注目画素をずらしながら注目画素とかかる注目画素を取り囲む画素領域の各データが連続して出力されるようにデータの出力順序を変換する。
【0041】
図12は、第2の実施形態における白部判定回路の内部構成を示す概念図である。各画素の白部判定回路62内には、しきい値判定回路64とテンプレートマッチング回路66が配置される。注目画素用のしきい値判定回路64は、データ変換回路60から注目画素とかかる注目画素を取り囲む画素領域の各データを入力する。
【0042】
図13は、第2の実施形態における注目画素を中心とした画素領域の一例を示す図である。図13では、5列×5段の画素領域を一例として示している。しきい値判定回路64は、かかる画素領域の各データを入力する。そして、得られた各データの画素値がそれぞれ所定の閾値以上かどうかを判定する。或いは、上限下限の各閾値を用意して、得られた各データの画素値がそれぞれ上限下限の各閾値の間に入るかどうかによって判定してもよい。
【0043】
注目画素用のテンプレートマッチング回路66は、画素領域について、白部テンプレートを用いてマッチングする。
【0044】
図14は、第2の実施形態における白部テンプレートの一例を示す図である。白部テンプレートとしては、図14(a)に示す横長、図14(b)に示す縦長、或いは図14(c)に示すようなk×kの画素領域の角部を入れない形状であってもよい。そして、テンプレートマッチング回路66は、白部テンプレートと重なる画素についてすべてしきい値判定がokであったかどうかを判定する。そして、白部テンプレートと重なる画素についてすべてしきい値判定がokであった場合、かかる画素領域の注目画素に有効フラグを定義して出力する。以上により、有効フラグが付いた画素が白部と識別されたことになる。注目画素の画素値が閾値の範囲内であっても周囲の画素値が外れる場合には、かかる外れた画素の影響を受ける場合があるため、白部とは識別しない。そして、有効フラグの情報と注目画素のデータが白部平均出力レベル算出回路15に出力される。
【0045】
白部平均出力レベル算出回路15内では、画素毎に、画素出力積算回路70と画素平均値の平均回路72が配置される。
【0046】
画素出力積算回路70は、画素毎に、有効フラグが付いたN個毎のデータの画素値を積算し、積算値をNで割ることで、白部だけを抜き出したN個分のデータ毎に画素値の平均値を算出する。
【0047】
さらに、画素平均値の平均回路44は、白部だけを抜き出したN個分のデータ毎の複数の平均値を入力し、かかる平均値の平均値を演算する。以上のようにして、検査用のセンサデータから白部の画素だけを識別して、かかる識別された白部の複数の画素データについて、平均値の平均値を演算する。
【0048】
以上のようにして、白部平均出力レベル算出回路15は、オフセット補正とゲイン補正が行われたセンサの出力データのうち、白部の位置から得られる複数の画素値の平均値を演算する。白部平均出力レベル算出回路15は、平均値算出回路の一例である。以降の工程は第1の実施形態と同様である。
【0049】
以上のように第2の実施形態では、検査用のセンサデータから白部の画素だけを自動認識することができる。そして、かかる識別された白部の複数の画素データを用いてゲイン係数を補正できる。よって、検査を止める必要がないため、検査中にリアルタイムでゲイン係数を補正できる。
【0050】
光量変化やセンサ感度変化に起因するセンサの出力レベルの変化の補正回路を提供することが可能になり、センサの出力レベルの変動を低減することができる。
【0051】
図15は、別の光学画像取得手法を説明するための図である。図1の構成では、スキャン幅Wの画素数(例えば2048画素)を同時に入射するフォトダイオードアレイ105を用いているが、これに限るものではなく、図10に示すように、XYθテーブル102をX方向に定速度で送りながら、レーザ干渉計で一定ピッチの移動を検出した毎にY方向に図示していないレーザスキャン光学装置でレーザビームをY方向に走査し、透過光を検出して所定の大きさのエリア毎に二次元画像を取得する手法を用いても構わない。
【0052】
以上の説明において、「〜回路」、「〜部」、或いは「〜工程」と記載したものは、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができる。或いは、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組合せにより実施させても構わない。或いは、ファームウェアとの組合せでも構わない。また、プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録される。例えば、演算制御部を構成するテーブル制御回路114、展開回路111、参照回路112、比較回路108、及びセンサ出力補正回路140内の各回路等は、電気的回路で構成されていても良いし、制御計算機110或いは各回路内に配置されるコンピュータ等によって処理することのできるソフトウェアとして実現してもよい。また電気的回路とソフトウェアの組み合わせで実現しても良い。
【0053】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、各実施の形態では、透過光を用いているが、反射光あるいは、透過光と反射光を同時に用いてもよい。反射光を用いる反射型の場合、周囲の影響を受けない位置であってパターンが対象画素の全体を占める位置、すなわちパターンで埋め尽くされた位置からは光が透過せずに反射するので、白部となる。そして、周囲の影響を受けない位置であって対象画素中にパターンが存在しない位置では光が透過してしまうので反射せず黒部となる。よって、反射型の検査装置を用いる場合には、パターンが全体を占める位置から得られる複数の画素値の平均値の基準値からの変化率を用いてゲイン係数を補正し、ゲイン補正回路14にフィードバックすればよい。
【0054】
参照画像は設計データから生成しているが、フォトダイオードアレイ等のセンサにより撮像した同一パターンのデータを用いても良い。言い換えれば、die to die検査でもdie to database検査でも構わない。
【0055】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0056】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパターン検査装置、パターン検査方法、画像位置合わせ方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0057】
10 オフセット補正回路
12 ゲイン補正回路
14 白部平均出力レベル算出回路
16 ゲイン補正係数算出回路
100 パターン検査装置
101 フォトマスク
102 XYθテーブル
103 光源
104 拡大光学系
105 フォトダイオードアレイ
106 センサ回路
140 センサ出力補正回路
150 光学画像取得部
160 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン形成された試料を照明して、透過或いは反射して得られる光を受光して画像データを出力するセンサからの出力データを入力し、前記出力データのオフセット補正を行うオフセット回路と、
ゲイン補正係数を入力し、入力されたゲイン補正係数を前記出力データに乗じることでゲイン補正を行うゲイン補正回路と、
前記オフセット補正とゲイン補正が行われた前記センサの出力データのうち、透過により得られる場合は前記パターンから光が透過する位置で、反射により得られる場合は前記パターンから光が反射する位置で取得した前記センサの出力データを用いて、前記センサの出力データの各画素値の平均値を演算する平均値算出回路と、
設定された基準値からの前記各画素値の平均値の変化率を用いて前記ゲイン補正に用いるゲイン補正係数を補正し、前記ゲイン補正回路にフィードバックするゲイン補正係数算出回路と、
を備えたことを特徴とするセンサ出力データの補正装置。
【請求項2】
前記オフセット補正とゲイン補正が行われた前記センサの出力データを入力し、入力された出力データから、透過により得られる場合は前記パターンから光が透過する位置で取得した前記センサの出力データを、反射により得られる場合は前記パターンから光が反射する位置で取得した前記センサの出力データを識別する識別回路をさらに備え、
前記平均値算出回路は、前記識別回路により識別された位置で取得した前記センサの出力データの各画素値の平均値を演算することを特徴とする請求項1記載のセンサ出力データの補正装置。
【請求項3】
前記センサは、光電変換により光を画像に変換するラインセンサ、またはTDIセンサであることを特徴とする請求項1又は2記載のセンサ出力データの補正装置。
【請求項4】
前記識別回路は、所定の領域毎に前記センサの出力データを入力し、入力された領域毎の出力データについての閾値判定処理と、テンプレートを用いたマッチング処理とを行うことにより前記位置を識別することを特徴とする請求項2記載のセンサ出力データの補正装置。
【請求項5】
パターン形成された試料を照明して、透過或いは反射して得られる光を受光して画像データを出力するセンサからの出力データを入力し、前記出力データのオフセット補正を行う工程と、
ゲイン補正係数を入力し、入力されたゲイン補正係数を前記出力データに乗じることでゲイン補正を行う工程と、
前記オフセット補正とゲイン補正が行われた前記センサの出力データのうち、透過により得られる場合は前記パターンが存在しない位置から、反射により得られる場合は前記パターンが全体を占める位置から得られる複数の画素値の平均値を演算する工程と、
設定された基準値からの前記平均値の変化率を用いて前記ゲイン補正に用いるゲイン補正係数を補正し、前記ゲイン補正用にフィードバックする工程と、
を備えたことを特徴とするセンサ出力データの補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−2680(P2012−2680A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138125(P2010−138125)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】