説明

センサ制御システムおよびセンサ制御装置

【課題】ドライバーの視界を補いつつ走行中の車両に起こりうる衝突の危険性を広範囲に検出すること。
【解決手段】車両の進行方向における前面および左側面を監視可能な位置に配設されており1つ以上の前記監視センサからなる監視センサユニットの向きを左右および/または上下方向へ可動可能に保持するセンサ保持部(右)と、車両の進行方向における前面および右側面を監視可能な位置に配設された監視センサユニットの向きを左右および/または上下方向へ可動可能に保持するセンサ保持部(左)とを備え、監視方向変更指示部が、地図情報および車両の現在位置に基づき、監視センサユニットの監視方向の変更をセンサ保持部(右)およびセンサ保持部(左)に対してそれぞれ独立に指示するようにセンサ制御システムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両周辺を監視する監視センサの制御を行うセンサ制御システムおよびセンサ制御装置に関し、特に、ドライバーの視界を補いつつ走行中の車両に起こりうる衝突の危険性を広範囲に検出することができるセンサ制御システムおよびセンサ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波レーダ、レーザレーダ、超音波センサ、画像センサといった車外監視用のセンサが自動車に搭載されるようになってきている。このような監視センサは、歩行者や対向車などの障害物を発見してドライバーへ報知したり、衝突の恐れがある場合には、ブレーキの作動やシートベルトの巻き上げといった制御を行ったりするために用いられる。
【0003】
しかし、各監視センサは、その種別に応じて監視可能な距離や、監視範囲に制限があるため、監視センサを車両に固定すると監視可能な領域が限られてしまう。このため、監視センサの向きを動的に変更する機構を設け、車両の走行状態に応じて監視センサ自体の向きを変更する技術が提案されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、通常時には車両前方を監視するように設けた可動式の監視センサの向きを、ウィンカー操作やヨーレートセンサの信号値に基づいて車両の進行方向へ変更する技術が開示されている。これにより、交差点を右折したり、左折したりする場合、すなわち、車両の進行方向が変化した場合に、あらたな進行方向における領域を監視することが可能となる。
【0005】
【特許文献1】特開2007−58326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術を用いた場合であっても、交差点等における危険を十分には回避することができないという問題がある。たとえば、自車両が交差点を左折しようとする場合を仮定すると、車両の左側のみならず、車両の前方や、車両の右側からも車両等が接近してくる可能性がある。しかし、特許文献1の技術では、交差点を左折しようとする自車両の左前方のみを監視するように制御するので、左前方以外の方向から到来する危険を察知することはできない。
【0007】
一般的に、熟練ドライバーの視点の動きは、初心者ドライバーの視点の動きよりも大きいといわれており、熟練ドライバーの場合、たとえ左折をする場合であっても、前方や右方向に対する警戒も怠らない。しかし、すべてのドライバーが、熟練ドライバーのようなスキルを身につけることは困難である。
【0008】
これらのことから、ドライバーの視界を補いつつ走行中の車両に起こりうる衝突の危険性を広範囲に検出することができるセンサ制御システムをいかにして実現するかが大きな課題となっている。なお、かかる課題は、センサ制御システムに含まれるECU(Engine Control Unit)等のセンサ制御装置についても同様に発生する課題である。
【0009】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、ドライバーの視界を補いつつ走行中の車両に起こりうる衝突の危険性を広範囲に検出することができるセンサ制御システムおよびセンサ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、車両周辺を監視する監視センサの制御を行うセンサ制御システムであって、車両の進行方向および片方の側面を監視可能な位置に配設されており1つ以上の前記監視センサからなる監視センサユニットの向きを水平方向および/または垂直方向へ変更可能に保持する第1の保持手段と、車両の進行方向および他方の側面を監視可能な位置に配設された前記監視センサユニットの向きを水平方向および/または垂直方向へ変更可能に保持する第2の保持手段と、地図情報および車両の現在位置に基づき、前記監視センサユニットの監視方向の変更を前記第1の保持手段および第2の保持手段に対してそれぞれ独立に指示する監視方向変更指示手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、車両周辺を監視する監視センサの制御を行うセンサ制御装置であって、地図情報および車両の現在位置に基づき、1つ以上の前記監視センサからなる複数の監視センサユニットの監視方向の変更を、それぞれ独立に指示する監視方向変更指示手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両の進行方向および片方の側面を監視可能な位置に配設されており1つ以上の監視センサからなる監視センサユニットの向きを水平方向および/または垂直方向へ変更可能に保持する第1の保持手段と、車両の進行方向および他方の側面を監視可能な位置に配設された監視センサユニットの向きを水平方向および/または垂直方向へ変更可能に保持する第2の保持手段とを備え、地図情報および車両の現在位置に基づき、監視センサユニットの監視方向の変更を第1の保持手段および第2の保持手段に対してそれぞれ独立に指示することとしたので、ドライバーの視界を補いつつ走行中の車両に起こりうる衝突の危険性を広範囲に検出することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明に係るセンサ制御システムの好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下では、本発明に係るセンサ制御手法の概要を、図1を用いて説明した後に、本発明に係るセンサ制御手法を適用したセンサ制御システムについての実施例を図2〜図9を用いて説明することとする。
【0014】
まず、本発明に係るセンサ制御手法の概要について図1を用いて説明する。図1は、本発明に係るセンサ制御手法の概要を示す図である。同図に示すように、車両の右前方部分および左前方部分には、センサの監視方向を垂直方向および水平方向へ変更可能な可動式センサユニットが、それぞれ配設されている。
【0015】
ここで、各可動式センサユニットには、ミリ波レーダ、レーザレーダ、超音波センサ、画像センサといった車外監視用のセンサが組み合わせて搭載される。なお、いずれかの種類のセンサのみを搭載することとしてもよい。
【0016】
各可動式センサユニットに搭載されたセンサは、同図に示した「監視方向」を中心とした所定の範囲(同図に示した「監視範囲」参照)を監視することが可能である。そして、可動式センサユニットは、センサ自体の向きを変更することで、かかる監視方向を所定の範囲内(同図の「監視方向の可動範囲」参照)で制御する。
【0017】
なお、各可動式センサユニットの制御はそれぞれ独立して行うことができ、たとえば、片方の可動式センサユニットの監視方向を車両の前方へ向けたまま、他方の可動式センサユニットの監視方向のみを車両の左側方へ向けることも可能である。
【0018】
また、同図では、監視方向の可動範囲が真円もしくは楕円の形状となる場合を示しているが、可動範囲が矩形等となるように制御することとしてもよい。また、同図では、各可動式センサユニットを自動車の前方角のバンパー付近に配設した場合について示しているが、他の場所、たとえば、各ドアミラー付近に配設することとしてもよい。
【0019】
このように、本発明に係るセンサ制御手法では、前方/右側面用の可動式センサユニットおよび前方/左側面用の可動式センサユニットを車両上に配設し(同図の(1)参照)、地図情報等に基づいて各可動式センサユニットの監視方向を、地図情報や各種車両センサの出力値に基づき、独立して制御することとした(同図の(2)参照)。したがって、ドライバーの視界を補いつつ走行中の車両に起こりうる衝突の危険性を広範囲に検出することができる。
【0020】
以下では、図1で説明したセンサ制御手法を適用したセンサ制御システムについての実施例について説明する。なお、以下に示す実施例では、センサ制御システムを自動車等の車両に適用した場合について説明するが、鉄道車両、船舶や航空機といった移動体に適用することとしてもよい。
【実施例】
【0021】
図2は、本実施例に係るセンサ制御システム10の構成を示すブロック図である。同図に示すように、センサ制御システム10は、ナビゲーション装置101と接続されており、車速センサ102やヨーレートセンサ103といった車両状態を取得する車両センサとも接続されている。
【0022】
ナビゲーション装置101は、GPS(Global Positioning System)測位機能を用いて車両の現在位置や目的地までのルート情報等を提供する装置である。このナビゲーション装置101は、道路や建物の位置情報を含んだ地図情報101aと、GPS測位機能やジャイロ、各種車両センサを用いて随時更新される現在位置10bとを図示しない記憶部に記憶しており、これらの情報をセンサ制御システム10へ提供する。
【0023】
車速センサ102は、車両の速度を検出するセンサであり、ヨーレートセンサ103は、車両のヨー運動を検出するセンサである。なお、図2では、車両センサの一例として車速センサ102およびヨーレートセンサ103を示したが、車両のピッチ運動を検出するピッチレートセンサや、車両のロール運動を検出するロールレートセンサ等のセンサをセンサ制御システム10へ接続することとしてもよい。
【0024】
センサ制御システム10は、監視センサユニット11aと、この監視センサユニット11aを可動可能に保持するセンサ保持部(右)12aと、監視センサユニット11bと、この監視センサユニット11bを可動可能に保持するセンサ保持部(左)12bと、センサ制御装置13とを備えている。そして、センサ制御装置13は、監視方向変更指示部13aと、監視方向補正部13bと、監視精度補正部13cとをさらに備えている。
【0025】
監視センサユニット11aおよび監視センサユニット11bは、ミリ波レーダ、レーザレーダ、超音波センサ、画像センサといった車外監視用のセンサの所定の組み合わせ、もしくは、いずれか1つのセンサから構成される。そして、監視センサユニット11aおよび監視センサユニット11bは、制御方向補正部13bおよび監視精度補正部13cに対して検知結果を出力するとともに、監視精度補正部13cからの監視精度変更指示に従って各センサの監視精度を変更する処理を行う。
【0026】
センサ保持部(右)12aおよびセンサ保持部(左)12bは、それぞれ、監視センサユニット11aおよび監視センサユニット11bを可動可能に保持するとともに、センサ制御装置13の監視方向変更指示部13aからの監視方向変更指示に従って、各ユニットの監視方向を変更する。たとえば、各センサ保持部(12aおよび12b)は、サーボモータと、サーボモータと連動した可動機構とを備え、監視方向変更指示部13aからの信号に基づいてサーボモータを作動させることで各ユニットの監視方向を変更する。なお、各ユニットに複数のセンサが含まれている場合には、各センサの監視方向をそれぞれ独立に制御するのものとする。
【0027】
センサ制御装置13は、ナビゲーション装置101から提供される地図情報101aおよび現在位置101b、車速センサ102やヨーレートセンサ103といった車両センサからの信号値に基づいて各センサ保持部(12aおよび12b)を動作制御するECU等の処理部である。また、このセンサ制御装置13は、いったん決定した監視方向を各監視センサユニット(11aおよび11b)のセンサ出力値に基づいて変更する補正や、各監視センサユニット(11aおよび11b)のセンサ出力値に基づいて各各監視センサユニット(11aおよび11b)の監視精度を変更する補正を行う処理部でもある。
【0028】
監視方向変更指示部13aは、ナビゲーション装置101から提供される地図情報101aおよび現在位置101b、車速センサ102やヨーレートセンサ103といった車両センサからの信号値に基づき、各監視センサユニット(11aおよび11b)の監視方向を変更する指示を、各センサ保持部(12aおよび12b)に対して出力する処理を行う処理部である。また、この監視方向変更指示部13aは、監視方向補正部13bからの指示に従い、いったん決定した監視方向を変更する処理を併せて行う。
【0029】
ここで、この監視方向変更指示部13aの指示によって行われる監視方向変更制御の例について図3〜図7を用いて説明する。図3は、交差点と自車両との位置関係を示す図である。なお、同図に示す200は、センサ制御システム10を搭載した自車両をあらわしている。
【0030】
図3に示すように、監視方向変更指示部13aは、ナビゲーション装置101から提供される地図情報101aおよび現在位置101bに基づき、自車両200の進行方向に存在する交差点との位置関係を算出する。ここで、X1は、自車両200の左側面から走行中の道路の左端までの距離を、Y1は、自車両200の前端から交差点の始点までの距離を、X2は、自車両200の右側面から走行中の道路の右端までの距離を、Y2は、自車両200の前端から交差点の終点までの距離を、それぞれ示している。
【0031】
監視方向変更指示部13aは、同図に示したX1、X2、Y1およびY2の値に基づき、センサ保持部(右)12aおよびセンサ保持部(左)12bへ、監視方向の変更指示をそれぞれが独立に出力する。たとえば、同図に示した場合、センサ保持部(左)12bに対しては、少なくとも同図に示す31が監視範囲(図1参照)に含まれるように監視方向を指示する。
【0032】
また、センサ保持部(右)12aに対しては、少なくとも同図に示す32が監視範囲に含まれるように監視方向を指示する。なお、各監視方向は、同図に示す31および32を含むように、自車両200が交差点へ接近するに従って段階的に変更されていくものとする。
【0033】
次に、進行方向に存在する十字型交差点を自車両200が通過する場合の監視方向制御の例について図4を用いて説明する。図4は、十字型交差点通過時における監視方向制御の概要を示す図である。同図の(1)に示すように、自車両200が交差点へ接近した場合、監視方向変更指示部13aは、センサ保持部(左)12bには、交差点手前側の左角に向けて監視方向を変更するように指示する。なお、同図に示す41Lは、センサ保持部(左)12bによって保持される監視センサユニット11bの監視範囲を示している。
【0034】
また、監視方向変更指示部13aは、センサ保持部(右)12aには、交差点手前側の右角に向けて監視方向を変更するように指示する。なお、同図に示す41Rは、センサ保持部(右)12aによって保持される監視センサユニット11aの監視範囲を示している。
【0035】
そして、同図の(2)に示すように、自車両200が交差点へ進入した場合、監視方向変更指示部13aは、自車両200が走行する道路と交差する道路から接近する他車両等を検出するために、センサ保持部(左)12bには、監視方向を左側に変更するように指示する。また、監視方向変更指示部13aは、センサ保持部(右)12aには、監視方向を右側に変更するように指示する。このようにして、監視範囲41Lは監視範囲42Lへ、監視範囲41Rは監視範囲42Rへ、それぞれ変更される。
【0036】
なお、同図の(3)に示すように、自車両200が交差点を脱出した場合には、監視方向変更指示部13aは、各監視方向を前方へ戻すように各センサ保持部(12aおよび12b)に対して指示する。このようにして、監視範囲42Lは監視範囲43Lへ、監視範囲42Rは監視範囲43Rへ、それぞれ変更される。
【0037】
次に、進行方向に存在するT字型交差点を自車両200が通過する場合の監視方向制御の例について図5を用いて説明する。図5は、T字型交差点通過時における監視方向制御の概要を示す図である。同図の(1)に示すように、自車両が交差点へ接近した場合、監視方向変更指示部13aは、センサ保持部(右)12aには、交差点手前側の右角に向けて監視方向を変更するように指示する。
【0038】
なお、同図に示す51Lは、センサ保持部(左)12bによって保持される監視センサユニット11bの監視範囲を、同図に示す51Rは、センサ保持部(右)12aによって保持される監視センサユニット11aの監視範囲を、それぞれ示している。
【0039】
そして、同図の(2)に示すように、自車両が交差点へ進入した場合、監視方向変更指示部13aは、自車両200が走行する道路と交差する道路から接近する他車両等を検出するために、センサ保持部(右)12aには、監視方向を右側に変更するように指示する。なお、センサ保持部(左)12bに対する指示は行わない。このようにして、監視範囲51Rは監視範囲52Rへ変更される。
【0040】
なお、同図の(3)に示すように、自車両200が交差点を脱出した場合には、監視方向変更指示部13aは、監視センサユニット11aの監視方向を前方へ戻すようにセンサ保持部(右)12aに対して指示する。このようにして、監視範囲52Rは監視範囲53Rへ変更される。
【0041】
また、同図では、進行方向右側に交差する道路があるT字型交差点を示したが、進行方向左側に交差する道路があるT字型交差点の場合には、センサ保持部(左)12bによって監視センサユニット11bの監視方向が変更されるように、監視方向変更指示部13aが指示することになる。
【0042】
次に、進行方向に存在するカーブを自車両200が通過する場合の監視方向制御の例について図6を用いて説明する。図6は、カーブ通過時における監視方向制御の概要を示す図である。同図に示すように、カーブへの侵入前の自車両200aにおける監視範囲61Lおよび監視範囲61Rは、カーブ通過時(同図の200b参照)には、地図情報101aに含まれるカーブの曲率(R)などに基づき、それぞれ、監視範囲62Lおよび監視範囲62Rへと変更される。
【0043】
なお、監視範囲62Lは、先行車両および路脇障害物を検知可能な方向へ、監視範囲62Rは、対向車を検知可能な方向へ、それぞれ調整される。また、地図情報101aに基づくカーブの曲率(R)に加えて、車両の操舵角や、車線幅に対する車両の位置等に基づいて各監視範囲が段階的に調整される。
【0044】
次に、道路の勾配変化または自車両のピッチ運動に伴う監視方向制御の例について図7を用いて説明する。図7は、道路の勾配変動時および車両のピッチ角変動時における監視方向制御の概要を示す図である。なお、同図に示す上下方向の監視方向変更制御は、地図情報101aに含まれる道路の勾配情報や、ピッチレートセンサなどの車両センサの出力値に基づいて行われる。
【0045】
同図の(1)に示すように、進行方向における道路の勾配が上り坂へと変化している場合には、監視方向変更指示部13aは、各監視センサユニット(11aおよび11b)の監視方向を通常時の監視方向よりも上方へ変更するように各センサ保持部(12aおよび12b)に対して指示する。このようにして、通常時の監視範囲71aは監視範囲71bへ変更され、上り坂に存在する車両や歩行者の監視が可能となる。
【0046】
また、同図の(2)に示すように、進行方向における道路の勾配が下り坂へと変化している場合には、監視方向変更指示部13aは、各監視センサユニット(11aおよび11b)の監視方向を通常時の監視方向よりも下方へ変更するように各センサ保持部(12aおよび12b)に対して指示する。このようにして、通常時の監視範囲72aは監視範囲72bへ変更され、下り坂に存在する車両や歩行者の監視が可能となる。
【0047】
また、同図の(3)に示すように、道路上の凹凸や障害物の影響によって車両の前方が押し上げられる状態(または、車両の後方が押し下げられる状態)となった場合には、監視方向変更指示部13aは、各監視センサユニット(11aおよび11b)の監視方向を通常時の監視方向よりも下方へ変更するように各センサ保持部(12aおよび12b)に対して指示する。このようにして、通常時の監視範囲73aは監視範囲73bへ変更され、進行方向の監視が可能となる。
【0048】
また、同図の(4)に示すように、道路上の凹凸や障害物の影響によって車両の前方が押し下げられる状態(または、車両の後方が押し上げられる状態)となった場合には、監視方向変更指示部13aは、各監視センサユニット(11aおよび11b)の監視方向を通常時の監視方向よりも上方へ変更するように各センサ保持部(12aおよび12b)に対して指示する。このようにして、通常時の監視範囲74aは監視範囲74bへ変更され、進行方向の監視が可能となる。
【0049】
次に、監視方向補正部13bについて説明する。監視方向補正部13bは、各監視センサユニット(11aおよび11b)のセンサ値に基づいて監視方向の補正を行う処理部である。そして、この監視方向補正部13bは、監視方向の補正量を監視方向変更指示部13aへ指示するなどして、監視方向変更指示部13a経由で各センサ保持部(12aおよび12b)が保持する各監視センサユニット(11aおよび11b)の監視方向を変更する。
【0050】
ここで、この監視方向補正部13bの動作例について図8を用いて説明する。図8は、監視方向補正処理の概要を示す図である。なお、同図に示した場合には、各監視センサユニット(11aおよび11b)に画像センサが含まれており、この画像センサが、道路上の移動物体と静止物体とを判別可能であるものとする。
【0051】
自車両200が交差点へ接近し、いったん、監視方向変更指示部13aの指示によって、交差点手前側の右角に向けて監視センサユニット11aの監視方向が指示された場合(この場合の監視範囲は同図に示す81R)について説明する。この場合において、監視方向補正部13bは、監視センサユニット11aからのセンサ値を検査し、同図に示す静止物体300の位置を取得する。
【0052】
そして、監視方向補正部13bは、静止物体300を避けて接近してくる他車両400等を監視することができるように、監視範囲81Rを監視範囲82Rへと変更する。なお、同図では、監視センサユニット11aによって静止物体300が検出された場合を例示したが、地図情報101aでは存在するはずの道路が検出されない場合や、地図情報101aには存在しない道路が検出された場合などにも、かかる監視方向補正処理を行うことができる。このように、監視方向補正処理を行うことで、自車両200からみた死角をさらに減少させることができる。
【0053】
次に、監視精度補正部13cについて説明する。監視精度補正部13cは、各監視センサユニット(11aおよび11b)のセンサ値や各種車両センサのセンサ値に基づき、各センサの検出精度を上げたり、下げたりする補正を行う処理部である。
【0054】
たとえば、この監視精度補正部13cは、車速センサ102から取得した車速、地図情報101aおよび現在位置101bに基づき、車速を下げることなく交差点へ進入しようとしていることを検知した場合には、センシングの閾値を下げるなどしてセンサの検出精度を向上させる。このようにすることで、自車両に対する危険をより確実に検知することが可能となる。
【0055】
なお、監視精度補正部13cが、地図情報101aに含まれる事故多発地点情報に基づき、事故多発地点の近辺ではセンサ精度を向上させるように制御することとしてもよく、路車間通信などによって前方に渋滞が予想される場合に、センサ精度を向上させるように制御することとしてもよい。
【0056】
さらに、各監視センサユニット(11aおよび11b)が、道路標識を検出した場合に、標識の内容を検知したうえで、かかる内容に基づいてセンサ精度を変更することとしてもよく、各監視センサユニット(11aおよび11b)が、悪天候や路面の異常を検出した場合に、センサ精度を変更することとしてもよい。
【0057】
次に、センサ制御システム10が実行する処理手順について図9を用いて説明する。図9は、センサ制御システム10が実行する処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、監視方向変更指示部13aは、地図情報101aなどに基づいて前方に交差点があるか否かを判定する(ステップS101)。そして、前方に交差点がある場合には(ステップS101,Yes)、車両が減速しているか否かを判定する(ステップS102)。
【0058】
そして、減速がない場合には(ステップS102,Yes)、監視精度補正部13cは、各監視センサユニット(11aおよび11b)の監視精度を上げるように指示する(ステップS103)。一方、減速がある場合には(ステップS102,No)、通常の監視精度を維持するように指示する(ステップS104)。なお、ステップS101の判定条件を満たさない場合には(ステップS101,No)、以降の処理を行うことなく処理を終了する。
【0059】
つづいて、監視方向変更指示部13aは、交差点についての距離情報を取得し(ステップS105)、より早期に飛び出しを検出できるエリアがあるか否かを判定する(ステップS106)。ここで、より早期に飛び出しを検出できるエリアとは、現在の監視方向における監視範囲に含まれていないエリアであって、自動車や歩行者が飛び出してくる可能性がある交差点角などのエリアのことを指す。
【0060】
そして、より早期に飛び出しを検出できるエリアがある場合には(ステップS106,Yes)、監視方向変更指示部13aは、各センサ保持部(12aおよび12b)に対し、監視方向を変更するように指示する(ステップS107)。一方、ステップS106の判定条件を満たさない場合には(ステップS106,No)、監視方向を維持するように指示する(ステップS108)。
【0061】
そして、交差点を脱出したか否かを判定し(ステップS109)、未だ交差点を脱出していない場合には(ステップS109,No)、ステップS105以降の処理を繰り返す。一方、交差点を脱出した場合には(ステップS109,Yes)、監視方向変更指示部13aは、各センサ保持部(12aおよび12b)に対し、監視方向を通常状態へ変更するように指示し(ステップS110)、処理を終了する。
【0062】
上述してきたように、本実施例では、車両の進行方向における前面および左側面を監視可能な位置に配設されており1つ以上の前記監視センサからなる監視センサユニットの向きを左右および/または上下方向へ可動可能に保持するセンサ保持部(右)と、車両の進行方向における前面および右側面を監視可能な位置に配設された監視センサユニットの向きを左右および/または上下方向へ可動可能に保持するセンサ保持部(左)とを備え、監視方向変更指示部が、地図情報および車両の現在位置に基づき、監視センサユニットの監視方向の変更をセンサ保持部(右)およびセンサ保持部(左)に対してそれぞれ独立に指示するようにセンサ制御システムを構成した。
【0063】
したがって、ドライバーの視界を補いつつ走行中の車両に起こりうる衝突の危険性を広範囲に検出することができる。なお、ドライバーごとの運転動作を学習する学習データベースをさらに備えることとし、各監視センサユニットの向きや検出精度を調整することとしてもよい。
【0064】
たとえば、現在のアクセル操作状況、ブレーキ操作状況、ステアリング操作状況、道路状況、車両位置情報を用いて学習データベースを検索し、車両の動きを予測したうえで、各監視センサユニットの向きや検出精度を変更する。このようにすることで、ドライバーごとの操作ぐせ等にあわせて、センサの向きや精度を調整することが可能となり、自車両に対する危険をより確実に検知することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明に係るセンサ制御システムは、ドライバーの視界を補いつつ走行中の車両に起こりうる衝突の危険性を広範囲に検出したい場合に有用である。また、このセンサ制御システムを、不審者等の侵入監視に用いることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係るセンサ制御手法の概要を示す図である。
【図2】本実施例に係るセンサ制御システムの構成を示すブロック図である。
【図3】交差点と自車両との位置関係を示す図である。
【図4】十字型交差点通過時における監視方向制御の概要を示す図である。
【図5】T字型交差点通過時における監視方向制御の概要を示す図である。
【図6】カーブ通過時における監視方向制御の概要を示す図である。
【図7】道路の勾配変動時および車両のピッチ角変動時における監視方向制御の概要を示す図である。
【図8】監視方向補正処理の概要を示す図である。
【図9】センサ制御システムが実行する処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
10 センサ制御システム
11a、11b 監視センサユニット
12a センサ保持部(右)
12b センサ保持部(左)
13 センサ制御装置
13a 監視方向変更指示部
13b 監視方向補正部
13c 監視精度補正部
101 ナビゲーション装置
101a 地図情報
101b 現在位置
102 車速センサ
103 ヨーレートセンサ
200 自車両
300 静止物体
400 他車両


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周辺を監視する監視センサの制御を行うセンサ制御システムであって、
車両の進行方向および片方の側面を監視可能な位置に配設されており1つ以上の前記監視センサからなる監視センサユニットの向きを水平方向および/または垂直方向へ変更可能に保持する第1の保持手段と、
車両の進行方向および他方の側面を監視可能な位置に配設された前記監視センサユニットの向きを水平方向および/または垂直方向へ変更可能に保持する第2の保持手段と、
地図情報および車両の現在位置に基づき、前記監視センサユニットの監視方向の変更を前記第1の保持手段および第2の保持手段に対してそれぞれ独立に指示する監視方向変更指示手段と
を備えたことを特徴とするセンサ制御システム。
【請求項2】
前記変更指示手段の指示によって前記監視センサユニットの監視方向が変更された場合に、当該監視センサユニットに含まれる前記監視センサのセンサ値に基づいて前記監視方向を補正する監視方向補正手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のセンサ制御システム。
【請求項3】
前記監視センサユニットに含まれる前記監視センサのセンサ値に基づいて各監視センサの監視精度を補正する監視精度補正手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ制御システム。
【請求項4】
前記監視方向変更指示手段は、
車両の姿勢変化を検出した場合に、当該姿勢変化が起こる前の前記監視方向を維持するように指示することを特徴とする請求項1、2または3に記載のセンサ制御システム。
【請求項5】
車両周辺を監視する監視センサの制御を行うセンサ制御装置であって、
地図情報および車両の現在位置に基づき、1つ以上の前記監視センサからなる複数の監視センサユニットの監視方向の変更を、それぞれ独立に指示する監視方向変更指示手段
を備えたことを特徴とするセンサ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−301146(P2009−301146A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152228(P2008−152228)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】