説明

センサ端末装置

【課題】限られた無線帯域リソースを利用しながら、複数種別のセンサを備えたセンサ端末装置からサーバ側に各計測データを効率よく転送することができるセンサ端末装置を提供する。
【解決手段】センサから入力する計測データをデジタル化してメモリに蓄積し、メモリに蓄積された計測データを無線フレームとして構成し、計測データを収集するサーバに無線送信するセンサ端末装置において、メモリの蓄積データ量を監視し、当該蓄積データ量が無線フレームとして送信可能な最大データサイズに達したときに、メモリに蓄積されている計測データを一括して収容した無線フレームを送信する計測データ送信手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種別のセンサで計測される計測データを収集し、限られた無線帯域リソースを利用して効率よくサーバへ転送するセンサ端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来のセンサネットワークシステムの構成例を示す(特許文献1)。
図7において、センサネットワークシステムは、複数のセンサ71−1〜71−Nでそれぞれ計測される計測データを処理する複数のセンサ端末装置72−1〜72−M、各センサの計測データを収集するサーバ73−1〜73−N、無線基地局74および各サーバのデータ要求に応じたポーリング制御を行うポーリング装置75により構成される。センサ端末装置72−1〜72−Mは、それぞれ各センサの計測データを処理するデータ処理部721と、無線基地局74との間で無線フレームを送受信する無線通信処理部722とを備える。
【0003】
ポーリング装置75は、各サーバ73−1〜73−Nから出力されるデータ要求を、無線基地局74を介してセンサ端末装置72−1〜72−Mに送信する。ポーリング装置75のポーリング制御に応じてサーバ73−i(iは1〜N)からのデータ要求を受信したセンサ端末装置72−j(jは1〜M)は、対応するセンサ71−iの計測データを処理して無線基地局74に向けて送信する。無線基地局74は、受信した計測データをポーリング装置75を介して対応するサーバ73−iに転送する。ここでは、センサ端末装置72−1〜72−Mの各センサ71−iの計測データは、サーバ73−iからのデータ要求に応じてサーバ73−iに収集される。なお、ポーリング装置75は、各サーバ73−1〜73−Nから出力されるデータ要求をトリガとせず、定期的にセンサ端末装置72−1〜72−Mに順番にデータ要求を送信する構成も考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−295907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7に示すセンサネットワークシステムは、無線基地局74から複数のセンサ端末装置72−1〜72−Mに対してデータ要求を送信する構成であるが、そのために無線帯域が大きく消費されることになる。
【0006】
また、センサ端末装置72−jは、データ要求の受信に応じてセンサ71−iの計測データを取得し、無線フレームを構成して無線基地局74に向けて送信する。この無線フレームは、一般に送信可能なデータサイズの最大値が規定されているが、データ要求ごとに計測される計測データから所定の無線フレームが構成されるので、無線フレームのヘッダに比べてペイロードの割合が小さくなり、データ送信効率がよくない。また、無線区間の帯域が狭いネットワークでは、効率の低いデータ送信によって帯域を圧迫し、遅延の増加やデータの再送処理が増えることになる。
【0007】
さらに、センサ端末装置72−jが複数のセンサ71−1〜71−Nを備える場合には、センサごとに対応するサーバから無線基地局74を介してセンサ端末装置72−jにデータ要求を送信する必要があり、計測データの収集効率がよくない。
【0008】
本発明は、限られた無線帯域リソースを利用しながら、複数種別のセンサを備えたセンサ端末装置からサーバ側に各計測データを効率よく転送することができるセンサ端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、センサから入力する計測データをデジタル化してメモリに蓄積し、メモリに蓄積された計測データを無線フレームとして構成し、計測データを収集するサーバに無線送信するセンサ端末装置において、メモリの蓄積データ量を監視し、当該蓄積データ量が無線フレームとして送信可能な最大データサイズに達したときに、メモリに蓄積されている計測データを一括して収容した無線フレームを送信する計測データ送信手段を備える。
【0010】
本発明のセンサ端末装置において、計測データ送信手段は、センサが複数種別あるときに、無線フレームとして、センサ種別と計測データをセットで収容する構成、またはセンサ種別ごとに計測データを集約して収容する構成である。
【0011】
本発明のセンサ端末装置において、計測データ送信手段は、計測データが予め設定される設定値と比較して有意な値であるときにメモリに蓄積する構成である。
【0012】
本発明のセンサ端末装置において、計測データ送信手段は、メモリの蓄積データ量が無線フレームとして送信可能な最大データサイズに達する前に所定の送信間隔を超えたときに、その時点で蓄積されている計測データを一括して収容した無線フレームを送信する構成である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のセンサ端末装置は、センサの計測データを蓄積し、蓄積データ量が無線フレームとして送信可能な最大データサイズに達したときに、サーバ側からデータ要求を受信することなく自発的に一括送信することにより、限られた無線帯域リソースの中で効率のよいデータ送信が可能である。また、センサ種別ごとに計測データを集約して無線フレームに収容することにより、さらにデータ送信効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のセンサ端末装置を含むセンサネットワークシステムの構成例を示す図である。
【図2】センサ端末装置から送信される無線フレームの構成例を示す図である。
【図3】データ処理部11の構成例を示す図である。
【図4】メモリ113の第1の構成例を示す図である。
【図5】メモリ113の書込み/読出しの動作例を説明する図である。
【図6】メモリ113の第2の構成例を示す図である。
【図7】従来のセンサネットワークシステムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明のセンサ端末装置を含むセンサネットワークシステムの構成例を示す。
図1において、複数のセンサ端末装置10−1〜10−Mは、それぞれ複数のセンサ21−1〜21−Nから入力する計測データをセンサ種別とともに蓄積するデータ処理部11と、無線基地局22との間で無線フレームを送受信する無線通信処理部12とを備える。データ処理部11はセンサ種別と計測データをセットで蓄積しながら蓄積データ量を監視し、蓄積データ量が無線フレームとして送信可能な最大データサイズに達すると、蓄積データ(センサ種別と計測データのセット)を一括して無線通信処理部12に出力する。
【0016】
ここで、データ処理部11は、図2(1) に示すように、一括出力するセンサ種別と計測データのセットにセンサ端末装置の端末IDを付加した無線フレームを構成する。あるいは、図2(2) に示すように、センサ種別ごとに計測データを集約し、センサ端末装置の端末IDを付加した無線フレームを構成してもよい。無線通信処理部12は、データ処理部11から入力する無線フレームを自発的に無線基地局22に送信する。
【0017】
無線基地局22は、受信した無線フレームから端末IDとセンサ種別と計測データを抽出してデータ振分装置23に出力する。データ振分装置23は、センサ種別に応じた計測データを端末IDとともにそれぞれ対応するサーバ24−1〜24−Nに出力する。ここでは、センサ端末装置10−1〜10−Mの各センサ21−iの計測データは、サーバ24−iに収集されるものとする。図2(1) に示すフレーム構成の場合には、センサ種別ごとに集約して対応するサーバに端末IDとともに出力される。図2(2) に示すフレーム構成の場合には、すでにセンサ種別ごとに集約されているので、そのまま対応するサーバに端末IDとともに出力される。
【0018】
本発明のセンサ端末装置10−1〜10−Mは、それぞれ自発的に無線フレームを無線基地局22に送信する構成であるため、無線フレームが衝突した場合には無線基地局22で受信できない可能性がある。これについては、例えば無線基地局22が正常に受信したときにACK信号を送信し、ACK信号を受信しないセンサ端末装置が再送を行う構成により対応できる。また、センサ端末装置が無線フレームを送信する前に無線基地局22に対して送信要求を行い、無線基地局22から許可されたセンサ端末装置が無線フレームを送信するアルゴリズムにより衝突を回避することができる。いずれの場合も、センサ端末装置の蓄積データ量が無線フレームとして送信可能な最大データサイズに達したときの処理であるので、従来のポーリング制御に伴う信号の送受信に比べて、ACK信号や送信要求/送信許可の信号の頻度は小さく、限られた無線帯域リソースでも対応が可能である。
【0019】
図3は、データ処理部11の構成例を示す。
図3において、データ処理部11は、制御部111、複数のセンサ21−1〜21−Nに接続されるA/D変換器112−1〜112−N、メモリ113、無線通信処理12に接続するシリアルインタフェース部(I/F)114を備える。A/D変換器112−1〜112−Nは、センサ21−1〜21−Nからそれぞれ入力するアナログの計測データを所定のサンプリングタイミングでデジタルの計測データに変換する。制御部111は、A/D変換器112−1〜112−Nから計測データを入力し、各センサのセンサ種別とセットでメモリ113に蓄積する。あるいは、後述するようにセンサ種別ごとに対応するメモリ面に計測データを蓄積してもよい。さらに制御部111は、メモリ113の蓄積データ量を監視し、蓄積データ量が無線フレームとして送信可能な最大データサイズSmax に達すると、メモリ113から蓄積データ(センサ種別と計測データのセット)を一括して読み出し、図2(1),(2) に示すような無線フレームを構成してI/F114を介して無線通信処理部12に出力する。
【0020】
図4は、メモリ113の第1の構成例を示す。
図4において、アドレス#0〜#(P−1)には、順番にセンサ種別と計測データがセットで書き込まれる。アドレス#(P−1)に書き込まれた後はアドレス#0に上書きされ、以下サイクリックに書込みが行われる。書込みアドレス管理レジスタ41の値(書込みアドレスW)は、新しい計測データが入力したときに書き込むべきアドレスを示し、データ書込みが行われるごとに+1インクリメントされる。読出しアドレス管理レジスタ42の値(読出しアドレスR)は、メモリ113から読み出す計測データの先頭アドレスを示し、無線フレームとして送信可能な最大データサイズSmax 分のデータ読出しが行われるごとに、+Smax インクリメントされる。
【0021】
メモリ113の蓄積データ量Sは、
S=(W−R)mod P
で計算できる。mod は剰余演算を示す。Pは、メモリ113の最大データ保持数を示す(P>Smax )。この蓄積データ量Sは蓄積データ量管理レジスタ43に書き込まれ、S=Smax になったときに読出しアドレスRからSmax 分のデータ読出しが行われる。
【0022】
ここで、P=9、Smax =3の場合におけるメモリ113の書込み/読出しの動作例を図5を参照して説明する。
【0023】
図5(1) は、アドレス#2,#3にデータが書き込まれた状態である。W=4、R=2、S=2であるので、データ読出しは行われない。
【0024】
図5(2) は、アドレス#4にデータを書き込むことにより書込みアドレスWが+1インクリメントした状態である。W=5、R=2、S=3になるので、アドレス#2〜#4のデータが一括して読み出され、無線通信処理部12から無線フレームとして送信される。そして、無線通信処理部12から送信完了の応答により読出しアドレスRが+3インクリメントされる。
【0025】
図5(3) は、読出しアドレスRが2から5となり、さらにアドレス#5にデータを書き込むことにより書込みアドレスWが+1インクリメントした状態である。W=6、R=5、S=1であるので、データ読出しは行われない。
【0026】
図6は、メモリ113の第2の構成例を示す。
図6において、メモリ113は、センサ種別ごとにメモリ面を備え、それぞれアドレス#0〜#(P−1)に順番に計測データが書き込まれる。センサ21−iに対応する書込みアドレス管理レジスタ41の値(書込みアドレスW)は、センサ21−iから新しい計測データが入力したときに書き込むべきアドレスを示し、データ書込みが行われるごとに+1インクリメントされる。読出しアドレス管理レジスタ42の値(読出しアドレスR)は、読み出す計測データの先頭アドレスを示し、データ読出しが行われるごとに、読み出したデータ数分だけインクリメントされる。
【0027】
各メモリ面の蓄積データ量Si は、
i =(Wi −Ri )mod Pi
で計算できる。mod は剰余演算を示す。Pi は、各メモリ面の最大データ保持数を示す。この蓄積データ量Si は蓄積データ量管理レジスタ43に書き込まれる。
【0028】
メモリ113は、各メモリ面の蓄積データ量Si の合計(ΣSi )がSmax になったときに、各メモリ面の読出しアドレスRi からそれぞれ蓄積データ量Si のデータ読出しが行われ、全体でSmax 分のデータ読出しが行われる。ここで読み出された計測データは、図2(2) に示すように、センサ種別ごとに計測データが集約されて一括送信される。
【0029】
なお、センサ端末装置のデータ処理部11では、センサ21−1〜21−Nから入力する計測データのデジタル値と設定値とを比較し、例えば計測データが設定値を超える有意な値のときにメモリ113に書込みを行うようにしてもよい。これにより、メモリ113の蓄積データ量が無線フレームとして送信可能な最大データサイズSmax に達するまでの時間が延び、有意な計測データを効率よく転送することができる。
【0030】
また、センサ端末装置10−1〜10−Mから無線基地局22への送信間隔の最大値をそれぞれ個別に設定し、メモリ113の蓄積データ量が無線フレームとして送信可能な最大データサイズSmax に達する前に、送信間隔の最大値を超えたセンサ端末装置からその時点の蓄積データを一括して送信するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
10−1〜10−M センサ端末装置
11 データ処理部
12 無線通信処理部
21−1〜21−N センサ
22 無線基地局
23 データ振分装置
24−1〜24−N サーバ
41 書込みアドレス管理レジスタ
42 読出しアドレス管理レジスタ
43 蓄積データ量管理レジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサから入力する計測データをデジタル化してメモリに蓄積し、メモリに蓄積された計測データを無線フレームとして構成し、計測データを収集するサーバに無線送信するセンサ端末装置において、
前記メモリの蓄積データ量を監視し、当該蓄積データ量が前記無線フレームとして送信可能な最大データサイズに達したときに、前記メモリに蓄積されている計測データを一括して収容した無線フレームを送信する計測データ送信手段を備えた
ことを特徴とするセンサ端末装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ端末装置において、
前記計測データ送信手段は、前記センサが複数種別あるときに、前記無線フレームとして、センサ種別と計測データをセットで収容する構成、またはセンサ種別ごとに計測データを集約して収容する構成である
ことを特徴とするセンサ端末装置。
【請求項3】
請求項1に記載のセンサ端末装置において、
前記計測データ送信手段は、前記計測データが予め設定される設定値と比較して有意な値であるときに前記メモリに蓄積する構成である
ことを特徴とするセンサ端末装置。
【請求項4】
請求項1に記載のセンサ端末装置において、
前記計測データ送信手段は、前記メモリの蓄積データ量が前記無線フレームとして送信可能な最大データサイズに達する前に所定の送信間隔を超えたときに、その時点で蓄積されている計測データを一括して収容した無線フレームを送信する構成である
ことを特徴とするセンサ端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−227646(P2012−227646A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92036(P2011−92036)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】