センサ
【課題】SAWの信号強度及び検出感度を向上することができると共に、長期に亘って高い作動信頼性を確保することができ、且つシンプルな構成で製造容易化及び低コスト化を図り易いセンサを提供すること。
【解決手段】圧電性基板11と、圧電性基板の一方の面11aに接合され、圧電性基板との間に気密封止されたキャビティを画成させる封止基板12と、を具備するパッケージ13と、圧電性基板の一方の面に形成され、キャビティ内に配設されたIDT16と、両基板のうちの少なくとも一方に形成され、パッケージ外部に露出すると共に引出し電極を介してIDTに導通された外部接続電極18と、を備え、圧電性基板が、パッケージ外部から作用する力学量に応じて変位する変位部21を有し、圧電性基板には変位部を圧電性基板の他方の面側に露出させる開放部Eが設けられているセンサ10を提供する。
【解決手段】圧電性基板11と、圧電性基板の一方の面11aに接合され、圧電性基板との間に気密封止されたキャビティを画成させる封止基板12と、を具備するパッケージ13と、圧電性基板の一方の面に形成され、キャビティ内に配設されたIDT16と、両基板のうちの少なくとも一方に形成され、パッケージ外部に露出すると共に引出し電極を介してIDTに導通された外部接続電極18と、を備え、圧電性基板が、パッケージ外部から作用する力学量に応じて変位する変位部21を有し、圧電性基板には変位部を圧電性基板の他方の面側に露出させる開放部Eが設けられているセンサ10を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SAW(表面弾性波:Surface Acoustic Waves)を利用したセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のセンサは、一般的に圧電性基板と、該基板の表面に形成され、圧電効果を利用してSAWを励振、受信可能なIDT(櫛型電極:Inter Digital Transducer)と、を備えており、気圧、圧力や応力等に起因する力学量変化をSAWの特性変化として検出することが可能なセンサとして知られている。
【0003】
上記センサの1つとして、例えば圧力センサが知られている。この圧力センサによれば、センサ外部の圧力が変化すると、その圧力変化が圧電性基板に作用して該圧電性基板が変形する。これにより、圧電性基板の表面(伝播面)を伝播するSAWの伝播長が変化する。そのため、例えばSAWを励振してから受信するまでの遅延時間が変化するので、この遅延時間の変化に基づいて圧力を検知することが可能とされている。
【0004】
しかしながら、上記従来の圧力センサは、一般的にIDTが形成されている圧電性基板の上記伝播面が外部に露出している構成となっている。そのため、長期的な作動信頼性が低下し易いうえ、励振されたSAWのQ値が低下し易く、それにより信号強度及び検出感度が低下し易いものであった。
【0005】
一方、容器と蓋部との間に画成されたキャビティ内に圧電性基板をパッケージングした圧力モニタも知られている(特許文献1参照)。この圧力モニタによれば、圧電性基板の伝播面及びIDTが気密封止されたキャビティ内に配設されるので、上記問題が生じ難い構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4320593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1に記載の圧力モニタでは、圧力変化によってダイヤフラムとして機能する蓋部を変形させ、この蓋部に形成された突出部により圧電性基板を押圧することで圧電性基板を撓み変形させる構成とされている。
しかしながら、圧力を精度良く検出するには、圧電性基板が応答性良く撓み変形するように該基板との位置関係を考慮しながら蓋部に突出部を精度良く形成する必要がある。そのため、容器及び蓋部からなるパッケージングの構造が複雑化し易いうえ、効率の良い製造が難しくコスト高に繋がり易かった。特に、突出部を圧電性基板に対して直接物理的に押し当てる構造のため、長期的な作動信頼性を確保することが難しいものと考えられる。
【0008】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、SAWの信号強度及び検出感度を向上することができると共に、長期に亘って高い作動信頼性を確保することができ、且つシンプルな構成で製造容易化及び低コスト化を図り易いセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
(1)本発明に係るセンサは、圧電性基板と、該圧電性基板の一方の面に接合され、圧電性基板との間に気密封止されたキャビティを画成させる封止基板と、を具備するパッケージと、前記圧電性基板の一方の面に形成され、前記キャビティ内に配設されたIDTと、前記圧電性基板及び前記封止基板のうちの少なくとも一方に形成され、前記パッケージ外部に露出すると共に引出し電極を介して前記IDTに導通された外部接続電極と、を備え、前記圧電性基板が、前記パッケージ外部から作用する力学量に応じて変位する変位部を有し、前記圧電性基板には、前記変位部を該圧電性基板の他方の面側に露出させる開放部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るセンサによれば、気圧、圧力や応力等に起因してパッケージ外部の力学量が変化すると、開放部によって露出されている圧電性基板の変位部が力学量変化に応じて変位する。そのため、IDTによって励振され、圧電性基板の一方の面上を伝播するSAW(表面弾性波)の伝播長が変化し、SAWの伝播特性が変化する。そのため、引出し電極及び外部接続電極を介して上記SAWの特性変化をモニタすることで、パッケージ外部の力学量を検出することができる。
【0011】
特に、SAWの伝播面とされている圧電性基板の一方の面、及びIDTは、パッケージのキャビティ内に気密封止されているので、外部からの影響を受け難い。しかも、上記一方の面とは反対側の面である他方の面側から作用した力学量によって、圧電性基板の変位部が変位する構造とされているので、圧電性基板の一方の面及びIDTが従来のように押圧力等の物理的な力を直接的に受けることがない。
これらのことにより、励振されたSAWのQ値の低下を抑制することができ、一定のQ値を確保してSAWの信号強度及び検出感度を向上することができるうえ、長期的な作動信頼性を確保することができる。また、従来のようにパッケージに突出部を設ける等の複雑な構成が不要であり、構成のシンプル化を図ることができる。従って、製造容易化及び低コスト化を図り易い。
【0012】
(2)上記本発明に係るセンサにおいて、前記引出し電極が、前記封止基板を厚み方向に貫通すると共に前記IDTに導通された貫通電極を有し、前記外部接続電極が、前記貫通電極に導通された状態で前記封止基板に形成されていても良い。
【0013】
この場合には、外部接続電極が封止基板側に形成されており、貫通電極によって封止基板の接合面とは反対側の面に引き出された引出し電極に導通している。そのため、外部接続電極を下側にして例えば回路基板上にセンサを表面実装した際、圧電性基板の変位部を回路基板とは反対側の上側に向けることが可能である。そのため、回路基板に邪魔されずに、変位部に対してパッケージ外部からの力学量をよりダイレクトに作用させることができ、検出精度を高め易い。
【0014】
(3)上記本発明に係るセンサにおいて、前記圧電性基板の前記他方の面には凹部が形成され、該凹部の内側が前記開放部とされていても良い。
【0015】
この場合には、圧電性基板に凹部を形成するだけの簡略な構成で変位部を圧電性基板の他方の面側に露出させることができるので、センサの構成のさらなるシンプル化及び製造容易化を図ることができる。
【0016】
(4)上記本発明に係るセンサにおいて、前記圧電性基板を前記封止基板との間で挟み込むように、該圧電性基板の他方の面側に接合されたプレート基板を備え、前記プレート基板は、前記封止基板と同一材料で形成され、前記プレート基板には、前記変位部を露出させる開口部が形成され、該開口部の内側が前記開放部とされていても良い。
【0017】
この場合には、同一材料の封止基板とプレート基板とが圧電性基板を間に挟み込むようにして接合されているので、3枚の基板を接合する際に、反り等の不正変形が圧電性基板に生じ難い。そのため、圧電性基板の一方の面を伝播するSAWの伝播長を予め決められた長さに確実に設定することができると共に、凹凸を極力抑えた平坦面にし易い。従って、検出精度をより高めることができる。
また、プレート基板に開口部を形成するだけの簡略な構成で開放部を形成することができるうえ、変位部を圧電性基板の他方の面側に露出させることができる。従って、さらなるセンサの製造容易化を図ることができる。
【0018】
(5)上記本発明に係るセンサにおいて、前記封止基板、前記プレート基板および前記圧電性基板が、同一材料で形成されていても良い。
【0019】
この場合には、圧電性基板、封止基板及びプレート基板が同一材料で形成されているので、接合時に例えば熱圧着等、熱を加えながら接合を行ったとしても、封止基板、プレート基板及び圧電性基板の熱膨張係数が同じであるので各基板の熱膨張の違いに起因する熱残留応力が圧電性基板に影響することがない。従って、接合方法のバリエーションを増やすことができると共に、熱を加えながら接合をより強固に行ってキャビティ内の気密封止をより確実なものにすることができる。これにより、作動信頼性をさらに高めることができ、より高品質なセンサとすることができる。
【0020】
(6)上記本発明に係るセンサにおいて、前記キャビティ内が、真空封止されていても良い。
【0021】
この場合には、キャビティ内が真空状態に維持されているので、励振されたSAWのQ値の低下をさらに抑制でき、SAWの検出信号及び検出感度をより効果的に高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るセンサによれば、SAWの信号強度及び検出感度を向上することができると共に、長期に亘って高い作動信頼性を確保することができ、且つシンプルな構成で製造容易化及び低コスト化を図り易い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る第1実施形態を示す図であって、空気圧センサを利用したタイヤの空気圧を監視するシステムの構成図である。
【図2】図1に示す空気圧センサの外観斜視図である。
【図3】図1に示す空気圧センサの分解斜視図である。
【図4】図3に示す圧電性基板の平面図である。
【図5】図3に示すA−A線に沿った空気圧センサの断面図である。
【図6】図2に示す空気圧センサの作動原理を説明するための図である。
【図7】図2に示す空気圧センサの作動原理を説明するための図であって、励振されたSAWの送信バースト波と受信された反射受信波との関係を示した図である。
【図8】図2に示す空気圧センサを製造する際の一工程図であって、圧電性基板の元となる圧電性基板用ウエハと、封止基板の元となる封止基板用ウエハと、を接合する直前の状態を示す図である。
【図9】図2に示す空気圧センサを製造する際の一工程図であって、圧電性基板用ウエハにIDTや反射器等を形成した状態を示す図である。
【図10】図2に示す空気圧センサを製造する際の一工程図であって、封止基板用ウエハにキャビティ用の凹部及び貫通孔を形成した状態を示す図である。
【図11】図10に示す状態の後、接合膜及び接続膜を形成した状態を示す図である。
【図12】本発明に係る第1実施形態の変形例を示す図であって、空気圧センサの外観斜視図である。
【図13】図12に示す空気圧センサの分解斜視図である。
【図14】図13に示すB−B線に沿った空気圧センサの断面図である。
【図15】本発明に係る第1実施形態の別の変形例を示す図であって、空気圧センサの外観斜視図である。
【図16】図15に示す空気圧センサの分解斜視図である。
【図17】図16に示すC−C線に沿った空気圧センサの断面図である。
【図18】本発明に係る第2実施形態を示す図であって、空気圧センサの外観斜視図である。
【図19】図18に示す空気圧センサの分解斜視図である。
【図20】図19に示すD−D線に沿った空気圧センサの断面図である。
【図21】図18に示す空気圧センサの作動原理を説明するための図である。
【図22】本発明に係る第2実施形態の変形例を示す図である。
【図23】本発明に係る第3実施形態を示す図であって、空気圧センサの分解斜視図である。
【図24】図23に示すE−E線に沿った空気圧センサの断面図である。
【図25】図23に示す空気圧センサの作動原理を説明するための図である。
【図26】図23に示す空気圧センサの等価回路を示す図である。
【図27】本発明に係る第4実施形態を示す図であって、空気圧センサの外観斜視図である。
【図28】図27に示すF−F線に沿った空気圧センサの断面図である。
【図29】図27に示す圧電性基板の平面図である。
【図30】図27に示す空気圧センサを製造する際の一工程図であって、圧電性基板の元となる圧電性基板用ウエハと、封止基板の元となる封止基板用ウエハと、プレート基板の元となるプレート基板用ウエハと、を接合する直前の状態を示す図である。
【図31】本発明に係る第4実施形態の変形例を示す図である。
【図32】本発明に係る第4実施形態の別の変形例を示す図である。
【図33】本発明に係る第4実施形態のさらに別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係るセンサの第1実施形態について説明する。
なお、本実施形態ではセンサの一例として、力学量の1つである圧力を検出する圧力センサを例に挙げて説明する。より詳しくは、自動車のタイヤ内の空気圧を検出する空気圧センサを例に挙げて説明する。
【0025】
(空気圧センサの構成)
本実施形態の空気圧センサ(センサ)10は、図1に示すように、空気圧監視モジュール1を構成する一部品とされている。これら空気圧監視モジュール1は、各タイヤUに取り付けられており、車体A側に取り付けられた空気圧監視本体部2からの指示を受けて、タイヤU内の空気圧を検出している。
【0026】
空気圧監視本体部2は、空気圧監視モジュール1に高周波数の電気信号であるバースト信号S1を送信すると共に、空気圧監視モジュール1から送信された電気信号である検出信号S2を受信する送受信器2aと、該送受信器2aの作動を制御すると共に、受信した検出信号S2に基づいてタイヤU内の空気圧を算出する本体制御部2bと、システム電源部2cと、送受信アンテナ2dと、を備えている。
【0027】
上記本体制御部2bは、定期的或いは運転者からの入力操作等に応じて上記バースト信号S1を送るように送受信器2aを作動させて、空気圧監視モジュール1にタイヤU内の空気圧監視を行わせている。また、この本体制御部2bは、算出したタイヤU内の空気圧を予め決められた基準空気圧と比較し、基準空気圧よりもタイヤU内の空気圧が低い場合には、インターフェース部2eを介してインジケータパネルに取り付けられた表示ランプRを点灯させる機能も具備している。
【0028】
空気圧監視モジュール1は、送受信アンテナ1aと、該送受信アンテナ1aを介して前記バースト信号S1を受信すると共に前記検出信号S2を送信する送受信器1bと、上記空気圧センサ10と、該空気圧センサ10の作動を制御するモジュール制御部1cと、を備えている。
モジュール制御部1cは、送受信器1bで受信したバースト信号S1を空気圧センサ10に送り、SAW(表面弾性波)を励振させると共に、空気圧センサ10によって電気信号に変換された検出信号S2を送受信器1bから空気圧監視本体部2に送信させる。
【0029】
上記空気圧センサ10は、図2から図5に示すように、圧電性基板11と封止基板12とがそれぞれの接合膜14、15を介して接合され、両基板11、12の間に気密封止されたキャビティCが画成されたパッケージ13と、圧電性基板11の一方の面11aに形成され、上記キャビティC内に配設されたIDT16と、封止基板12に形成され、パッケージ13外部に露出すると共に引出し電極17を介してIDT16に電気的接続された2つの外部接続電極18と、を備えた表面実装型のデバイスである。
そして、この空気圧センサ10は、空気圧監視モジュール1の図示しない回路基板上に外部接続電極18を下側に向けた状態(図2参照)で表面実装されている。
【0030】
圧電性基板11は、例えば水晶や、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)や、タンタル酸リチウム(LiTaO3)や、酸化亜鉛(ZnO)等からなる平面視矩形状の基板とされている。なお、以下、単に長手方向、短手方向という場合があるが、圧電性基板11の長手方向、短手方向を指す。
圧電性基板11の一方の面11a(封止基板12に対する接合面)には、上記した接合膜14及びIDT16と、反射器19と、がそれぞれ導電性材料のパターニングによって形成されている。即ち、本実施形態の空気圧センサ10は、反射器19を利用した遅延線型のパッシブセンサとされている。
【0031】
なお、導電性材料としては、例えばクロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、金(Au)やチタン(Ti)等の金属膜であり、単層膜でも積層膜でも構わない。
【0032】
一方、圧電性基板11の他方の面(上述した一方の面11aとは反対側の面)11bには、長手方向の中央部において凹部20が形成されており、該凹部20によって圧電性基板11の厚みが他の部分よりも薄肉とされた部分が形成されている。この薄肉部分は、パッケージ13外部から作用するタイヤU内の空気圧変化に応じてダイヤフラムの如く変位する変位部21として機能している。また、凹部20の内側は、この変位部21を圧電性基板11の他方の面11b側に露出させる開放部Eとして機能している。
【0033】
上記接合膜14は、圧電性基板11の一方の面11a上において、IDT16及び反射器19の周囲を囲むように圧電性基板11の周縁に沿って枠状に形成されている。
IDT16は、圧電性基板11による圧電効果を利用して、SAWを励振及び受信するための電極であって、SAWの伝播方向である長手方向に沿って配設された第1の櫛歯電極25及び第2の櫛歯電極26を備えている。
【0034】
第1の櫛歯電極25は、圧電性基板11の長手方向一方側に配置されたマウント部25aと、マウント部25aに接続され、長手方向他方側に向かって延びたバスバー25bと、バスバー25bに接続され、短手方向に延びた複数の電極指25cと、を備えている。
同様に第2の櫛歯電極26は、圧電性基板11の長手方向他方側に配置されたマウント部26aと、マウント部26aに接続され、長手方向一方側に向かって延びたバスバー26bと、バスバー26bに接続され、短手方向に延びた複数の電極指26cと、を備えている。また、マウント部25a、マウント部26aは、圧電性基板11と封止基板12との接合部に形成されている。
【0035】
第1の櫛歯電極25及び第2の櫛歯電極26のそれぞれの電極指25c、26cは、互いに間挿し合うように配置されている。具体的には、両電極指25c、26cは、圧電性基板11の長手方向に沿って一定の間隔を開けながら交互に並ぶように配置されている。その際、両電極指25c、26cは中心間距離が間隔d(図4参照)となるように配置されている。
これにより、IDT16によって励振されるSAWの励振周波数Fは、V(圧電性基板11によって決定される伝播速度)/P(IDT16の周期2d)で規定される。
【0036】
反射器19は、圧電性基板11の変位部21を挟んで2つの電極指25c、26cと長手方向に向かい合うように、第2の櫛歯電極26のマウント部26aに対して隣接配置されている。
【0037】
封止基板12は、例えばガラスやシリコン、又は圧電性基板11と同じ圧電材等からなる基板であり、圧電性基板11に対して重ね合わせ可能なサイズの平面視矩形状に形成されている。この封止基板12の一方の面(圧電性基板11に対する接合面)12aには、上述したキャビティCを画成させるためのキャビティ用の凹部30が形成されている。
この凹部30は、第1の櫛歯電極25及び第2の櫛歯電極26のうちの各電極指25c、26c及び各バスバー25b、26bと、反射器19と、がキャビティC内に収納されるようにそのサイズが決定されている。
【0038】
さらに封止基板12の一方の面12aには、上記接合膜15と2つの接続膜31(図5参照)とがそれぞれ導電性材料のパターニングによって形成されている。一方、封止基板12の他方の面(一方の面12aとは反対側の面)12bには、上述した2つの外部接続電極18が導電性材料のパターニングによって形成されている。
【0039】
接合膜15は、封止基板12の周縁に沿って枠状に形成されており、圧電性基板11側の接合膜14に対して強固に接合されている。接続膜31は、封止基板12の一方の面12a上において、第1の櫛歯電極25及び第2の櫛歯電極26のマウント部25a、26aに対してそれぞれ向かい合う部分に形成されており、両マウント部25a、26aに対してそれぞれ強固に接合されている。これらのことにより、キャビティC内の気密が確実なものとされている。
【0040】
ところで、封止基板12には、図5に示すように、該封止基板12を厚み方向に貫通する貫通孔32が形成されている。これら貫通孔32は、接続膜31が形成される部分に開口が開くように形成されている。そして、これら貫通孔32の内周面には、導電性材料の被膜によって貫通電極33が形成されており、2つの接続膜31に対してそれぞれ導通している。
【0041】
外部接続電極18は、上記した貫通電極33にそれぞれ導通するように封止基板12の他方の面12b上に形成されている。そのため、一方の外部接続電極18は、貫通電極33及び接続膜31を介して第1の櫛歯電極25に導通しており、他方の外部接続電極18は、貫通電極33及び接続膜31を介して第2の櫛歯電極26に導通している。
なお、第2の櫛歯電極26は、他方の外部接続電極18を介して接地されている。また、上述した接続膜31及び貫通電極33は、引出し電極17として機能している。
【0042】
(空気圧センサ10の作動)
次に、上記のように構成された空気圧センサ10を利用してタイヤU内の空気圧を検出すると共に、検出したタイヤU内の空気圧が正常値であるか否かを監視する場合について説明する。
まず、エンジン始動等により車体Aに電力が供給されると、車体A側に取り付けられている空気圧監視本体部2のシステム電源部2cがONになり、本体制御部2bが作動する。すると、本体制御部2bは、図1に示すように、送受信器2aを作動させて各タイヤUに取り付けられた空気圧監視モジュール1に向けてバースト信号S1を送信させる。
【0043】
空気圧監視モジュール1のモジュール制御部1cは、送受信器1bを介してこのバースト信号S1を受信すると、該バースト信号S1を空気圧センサ10に送りSAWを励振させる。具体的には、空気圧センサ10の2つの外部接続電極18を介して、IDT16を構成する第1の櫛歯電極25の電極指25cと第2の櫛歯電極26の電極指26cとの間にバースト信号S1を印加する。
【0044】
すると、両電極指25c、26c間に電界が発生し、圧電効果によりSAWが励振される。IDT16によって励振されたこのSAWは、図6に示すように送信バースト波W1として圧電性基板11の一方の面11a上を反射器19に向かって伝播する。するとこの伝播したSAWは、反射器19によって反射された後、再度IDT16に向かって伝播し、受信反射波W2としてIDT16にて受信される。IDT16は、SAWを受信すると、該SAWを検出信号S2に電気信号変換した後、モジュール制御部1cに送る。モジュール制御部1cは、図1に示すように、この送られてきた検出信号S2を、送受信器1bを介して空気圧監視本体部2に送信させる。
【0045】
ところで、空気圧監視本体部2の本体制御部2bは、この間図7に示すように励振によって発生したSAWが送信バースト波W1として送信されてから、受信反射波W2として受信されるまでの遅延時間Tをモニタしている。
【0046】
ここで、例えば走行中等においてタイヤU内の空気圧が低下すると、図6に示すように、凹部20によって外部に露出している圧電性基板11の変位部21が圧力低下に応じて変位する。そのため、圧電性基板11の一方の面11a上を伝播するSAWの伝播長Lが変化する(図示の場合は伝播長Lが長くなる)ので、SAWの伝播特性の1つである上記した遅延時間Tが変化(図示の場合は伝播時間Tが長くなる)する。
【0047】
これにより、空気圧監視本体部2の本体制御部2bは、遅延時間Tの変化に基づいてタイヤU内の空気圧の変化量を算出し、例えば予め設定されているタイヤU内の設定空気圧と上記変化量とから現在のタイヤU内の空気圧を算出することができる。
そして、本体制御部2bは、算出した現在のタイヤU内の空気圧を基準空気圧と比較する。比較した結果、タイヤU内の現在の空気圧が基準空気圧よりも低い場合には、インターフェース部2eを介して表示ランプRを点灯させる。その結果、運転者はタイヤU内の空気圧が低下していることを速やかに視覚によって把握することができ、適切な対処を直ちに行うことができる。
【0048】
特に、本実施形態の空気圧センサ10によれば、SAWの伝播面とされている圧電性基板11の一方の面11a及びIDT16が、パッケージ13のキャビティC内に気密封止されているので、外部からの影響を受け難い構造とされている。しかも、他方の面11b側から作用した圧力変化によって圧電性基板11の変位部21が変位する構造とされているので、圧電性基板11の一方の面11a及びIDT16が従来のように押圧力等の物理的な力を直接的に受けることがない。
これらのことにより、励振されたSAWのQ値の低下を抑制することができ、一定のQ値を確保してSAWの信号強度及び検出感度を共に向上することができるうえ、長期的な作動信頼性を確保することができる。また、従来のようにパッケージ13に突出部を設ける等の複雑な構成が不要であり、構成のシンプル化を図ることができる。従って、製造容易化及び低コスト化を図り易い。
【0049】
更に、本実施形態の空気圧センサ10では、外部接続電極18が封止基板12側に形成されており、外部接続電極18を下側にして回路基板に表面実装することが可能とされている。そのため、圧電性基板11の変位部21を基板回路とは反対側の上側に向けることができる。従って、タイヤU内の空気圧変化を回路基板に邪魔されることなく、変位部21に対してよりダイレクトに作用させることができ、検出精度を高め易い。
また、圧電性基板11に凹部20を形成するだけの簡略な構成で圧電性基板11の変位部21を他方の面11b側に露出させることができるので、空気圧センサ10のシンプル化及び製造容易化を図ることができる。
【0050】
加えて、本実施形態の空気圧センサ10は、バースト信号S1を受けることで作動し、SAWを励振させるパッシブ型(受動型)のセンサであるので、該空気圧センサ10を作動させるための電源部が不要である。従って、この空気圧センサ10を具備する空気圧監視モジュール1の構成の簡略化を図り易い。
【0051】
なお、上記本実施形態では、空気圧監視モジュール1が、送受信アンテナ1a、送受信器1b、モジュール制御部1c及び空気圧センサ10を具備していたが、空気圧センサ10がパッシブ型のセンサであるので、この場合には送受信器1b及びモジュール制御部1cは必須な構成ではなく、具備していなくても構わない。
この場合であっても、空気圧監視本体部2から送られてきたバースト信号S1を送受信アンテナ1aで受信し、空気圧センサ10のIDT16に印加してSAWを励振させることができると共に、IDT16で電気信号変換された検出信号S2を送受信アンテナ1aを介して空気圧監視本体部2に送信することが可能である。
【0052】
(空気圧センサの製造)
次に、上述した空気圧センサ10の製造方法の一例について簡単に説明する。
ここでは、図8に示すように、圧電性基板用ウエハ40と封止基板用ウエハ41とを利用して、空気圧センサ10を一度に複数製造する場合を例に挙げて説明する。
【0053】
はじめに、圧電性基板用ウエハ40を、接合を行う直前の状態まで作製する工程を行う。
まず、図9に示すように、圧電性基板用ウエハ40の他方の面11bに、加熱プレス成形やエッチング等により行列方向に凹部20を複数形成する工程を行う。これにより、圧電性基板用ウエハ40には、ダイヤフラムの如く変位する変位部21が複数形成される。次いで、圧電性基板用ウエハ40の一方の面11aに導電性材料をパターニングして接合膜14を形成すると共にIDT16及び反射器19をそれぞれ複数形成する工程を行う。
【0054】
これにより、図8に示すように、製造する空気圧センサ10の数に応じて、IDT16、反射器19及び変位部21がそれぞれ複数形成された圧電性基板用ウエハ40を得ることができる。
なお、図8及び図9に示す点線Mは、後に圧電性基板用ウエハ40を切断する切断線を図示している。
【0055】
次に、上記工程と同時に或いは前後のタイミングで封止基板用ウエハ41を、接合を行う直前の状態まで作製する工程を行う。
まず、図10に示すように、封止基板用ウエハ41の一方の面12aに、加熱プレス成形やエッチング等により行列方向にキャビティ用の凹部30を複数形成すると共に、封止基板用ウエハ41を貫通する貫通孔32を複数形成する工程を行う。次いで、複数の貫通孔32の内周面に導電性材料を被膜させて貫通電極33を複数形成すると共に、封止基板用ウエハ41の一方の面12aに導電性材料をパターニングして、図11に示すように接合膜15を形成すると共に、接続膜31をそれぞれ複数形成する工程を行う。
なお、図10及び図11に示す点線Mは、後に封止基板用ウエハ41を切断する切断線を図示している。
【0056】
続いて、圧電性基板用ウエハ40と、封止基板用ウエハ41と、を互いに重ね合わせて接合する工程を行う。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら両ウエハ40、41を正しい位置にアライメントした後、図8に示すように、圧電性基板用ウエハ40の一方の面11aと、封止基板用ウエハ41の一方の面12aと、を互いに重ね合わせると同時にそれぞれの接合膜14、15を利用して接合する。
なお、この際の接合方法としては、半田接合や熱圧着接合や陽極接合等、既に知られている周知な接合方法を採用すれば良い。
【0057】
この接合によって、圧電性基板用ウエハ40と封止基板用ウエハ41とが一体的に接合されたウエハ体42を得ることができると共に、両ウエハ40、41の間に気密封止されたキャビティCが複数形成される。また、圧電性基板用ウエハ40の一方の面11aに形成されたIDT16及び反射器19が、この気密封止されたキャビティC内に収容された状態となる。
【0058】
次いで、上述した接合が終了した後、封止基板用ウエハ41の他方の面12bに導電性材料をパターニングして、貫通電極33にそれぞれ電気的に接続された外部接続電極18を複数形成する工程を行う。
そして最後に、接合されたウエハ体42を図8に示す切断線Mに沿って切断して小片化する工程を行う。その結果、図2に示す空気圧センサ10を一度に複数製造することができる。
【0059】
上述したように、上記製造方法によれば、圧電性基板用ウエハ40及び封止基板用ウエハ41に対して、例えば突出部を設ける等の複雑な形成工程を何ら行う必要がなく、効率良く空気圧センサ10を製造することが可能である。従って、生産性を高めることができると共に低コスト化を図り易い。
【0060】
ところで、上記第1実施形態では、SAWの伝播特性変化の1つである遅延時間Tの変化に基づいてタイヤU内の空気圧を検出したが、SAWの送信バースト波W1及び受信反射波W2の位相差の変化をモニタすることで空気圧を検出しても構わない。
特に、SAWの受信反射波W2に関しては、ピーク位置が明瞭に現れ難いため受信反射波W2の受信時間を正確に把握できない場合も考えられる。このような場合には、遅延時間Tの変化ではなく位相差の変化をモニタすることで、空気圧の検出をより高精度に行うことができるものと考えられるので有効である。
【0061】
また、上記第1実施形態において、キャビティC内を真空にした状態で気密封止することが好ましい。こうすることで、励振されたSAWのQ値の低下をさらに抑制することができ、SAWの検出信号S2及び検出感度をより効果的に高めることができる。
【0062】
なお、上記第1実施形態では、封止基板12を1枚構造としたが、図12から図14に示すように2枚の基板で構成しても構わない。
この場合の空気圧センサ50は、圧電性基板11の一方の面11aに、第1封止基板52と第2封止基板53とからなる封止基板12が接合されている。封止基板51は、第2封止基板53を圧電性基板11の一方の面11aに重ね合わせた状態で接合されている。また、第1封止基板52と第2封止基板53とは、それぞれの接合膜55を介して強固に接合されている。
【0063】
第2封止基板53は、第1封止基板52よりも厚みを有する基板とされており、中央部分にはキャビティ用の開口部53aが形成されている。そのため、第2封止基板53は、枠状に形成されている。これに対して、第1封止基板52は板状に形成されており、第2封止基板53の開口部53aの一方側を塞いでいる。そして、第2封止基板53の開口部53aの内側と第1封止基板52とで画成された空間が、キャビティCとして機能する。
【0064】
なお、この場合では、貫通孔32は第1封止基板52及び第2封止基板53を通して形成されている。また、第1封止基板52及び第2封止基板53には、中間接続膜56が互いの接合面にそれぞれ形成されている。これら両中間接続膜56は、強固に接合していると共に引出し電極17の一部として機能している。
【0065】
このように構成された空気圧センサ50によれば、第1封止基板52と第2封止基板53とを接合するだけで、キャビティCを容易且つ精度良く形成することができるので、キャビティ用の凹部30を形成する場合よりも製造の容易化を図ることができる。なお、それ以外については、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏効することができる。
【0066】
また、上記第1実施形態では、圧電性基板11と封止基板12との2枚の基板でパッケージ13を構成したが、図15から図17に示すように、圧電性基板11と封止基板12とプレート基板61との3枚の基板でパッケージ13を構成した空気圧センサ60としても構わない。
【0067】
この場合、プレート基板61は、圧電性基板11を封止基板12との間で挟み込むように、圧電性基板11の他方の面11b側にそれぞれの接合膜62を介して強固に接合されている。また、プレート基板61は、圧電性基板11よりも厚みを有する基板とされており、中央部分には開口部61aが形成されている。そのため、圧電性基板11の変位部21は、この開口部61aを介して圧電性基板11の他方の面11b側に露出されている。
なお、プレート基板61の開口部61aの内側は、変位部21を露出させる開放部Eとして機能している。
【0068】
このように構成された空気圧センサ60によれば、封止基板12とプレート基板61とが圧電性基板11を間に挟み込むようにして接合されているので、3枚の基板を互いに接合する際に、反り等の不正変形が圧電性基板11に生じ難い。そのため、圧電性基板11の一方の面11a上を伝播するSAWの伝播長Lを予め決められた長さに確実に設定することができると共に、凹凸を極力抑えた平坦面にすることができる。そのため、検出精度をより高め易い。
また、プレート基板61に開口部61aを形成するだけの簡略な構成で開放部Eを形成でき、圧電性基板11に凹部20を形成する場合よりも変位部21を圧電性基板11の他方の面11b側に容易に露出させ易い。従って、さらなる製造の容易化を図ることができる。なお、それ以外については、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏効することができる。
【0069】
なお、プレート基板61を利用する場合には、封止基板12と同一材料でプレート基板61を形成することが好ましい。例えば、封止基板12及びプレート基板61を共にガラス基板とすることが好ましい。
こうすることで、接合時に例えば熱圧着等、熱を加えながら接合を行ったとしても、封止基板12及びプレート基板61の熱膨張係数が同じであるので、両基板12、61の熱膨張の違いに起因する反りが圧電性基板11に影響することがない。従って、接合方法のバリエーションを増やすことができると共に、熱を加えながら接合をより強固に行ってキャビティC内の気密封止をより確実なものにすることができる。従って、作動信頼性をさらに高めることができると共に、より高品質なセンサとすることができる。
また、封止基板12、プレート基板61および圧電性基板11が、同一材料で形成されていても良い。
こうすることで、圧電性基板11、封止基板12及びプレート基板61が同一材料で形成されているので、接合時に例えば熱圧着等、熱を加えながら接合を行ったとしても、封止基板12、プレート基板61、圧電性基板11の熱膨張係数が同じであるので各基板の熱膨張の違いに起因する熱残留応力が圧電性基板に影響することがない。従って、接合方法のバリエーションを増やすことができると共に、熱を加えながら接合をより強固に行ってキャビティ内の気密封止をより確実なものにすることができる。これにより、作動信頼性をさらに高めることができ、より高品質なセンサとすることができる。
【0070】
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係るセンサの第2実施形態について説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では反射器19を利用した遅延線型のパッシブセンサとしたが、第2実施形態では4端子(4つの外部接続電極18)を具備する遅延線型のセンサとされている点である。
【0071】
本実施形態の空気圧センサ70は、図18から図20に示すように、圧電性基板11の一方の面11aに、SAWを励振させるための入力用IDT72と、一方の面11a上を伝播してきたSAWを受信するための出力用IDT73と、からなるIDT71が形成されている。
【0072】
入力用IDT72は、圧電性基板11の長手方向一方側に配置され、圧電性基板11の短手方向に並んだ第1の櫛歯電極74及び第2の櫛歯電極75を具備している。これら第1の櫛歯電極74及び第2の櫛歯電極75は、それぞれマウント部74a、75aと、マウント部74a、75aに接続されたバスバー74b、75bと、バスバー74b、75bに接続され、互いに間挿し合うように配置された複数の電極指74c、75cと、を備えている。
【0073】
出力用IDT73は、圧電性基板11の変位部21を挟んで上記入力用IDT72と長手方向に向かい合うように、圧電性基板11の長手方向他方側に配置され、圧電性基板11の短手方向に並んだ第1の櫛歯電極76及び第2の櫛歯電極77を具備している。これら第1の櫛歯電極76及び第2の櫛歯電極77は、それぞれマウント部76a、77aと、マウント部76a、77aに接続されたバスバー76b、77bと、バスバー76b、77bに接続され、互いに間挿し合うように配置された複数の電極指76c、77cと、を備えている。
【0074】
本実施形態の封止基板12は、一方の面12aに接合膜15と4つの接続膜31とがそれぞれ形成されており、他方の面12上に4つの外部接続電極18が形成されている。
接続膜31は、封止基板12の一方の面12a上において、入力用IDT72の2つのマウント部74a、75aと、出力用IDT73の2つのマウント部76a、77aと、に対してそれぞれ向かい合う部分に形成されており、各マウント部74a、75a、76a、77aに対してそれぞれ強固に接合されている。
【0075】
また、封止基板12には、4つの接続膜31が形成される部分に開口がそれぞれ開くように4つの貫通孔32が形成されており、これら貫通孔32の内周面に貫通電極33が形成されている。そして、4つの外部接続電極18は、各貫通電極33にそれぞれ導通するように封止基板12の他方の面12b上に形成されている。
なお、入力用IDT72及び出力用IDT73の第2の櫛歯電極75、77は、外部接続電極18を介して接地されている(図21参照)。
【0076】
このように構成された空気圧センサ70を作動させる場合には、図21に示すように、まず入力用IDT72を構成する第1の櫛歯電極74の電極指74cと第2の櫛歯電極75の電極指75cとの間にバースト信号S1を印加する。これにより、両電極指74c、75c間に電界を発生させることができ、圧電効果によりSAWを励振させることができる。そして、入力用IDT72によって励振されたこのSAWは、圧電性基板11の一方の面11a上を伝播した後、出力用IDT73にて受信されて検出信号S2に変換される。
【0077】
ここで、タイヤU内の空気圧が低下によって圧電性基板11の変位部21が変位すると、それによりSAWの伝播長Lが変化するのでSAWの遅延時間Tが変化する。これにより、遅延時間Tをモニタしている空気圧監視本体部2の本体制御部2bは、遅延時間Tの変化に基づいて現在のタイヤU内の空気圧を算出することができる。
【0078】
上述したように、本実施形態の空気圧センサ70であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏効することができる。
なお、本実施形態の場合であっても、遅延時間Tの変化に基づいてタイヤU内の空気圧を検出するのではなく、SAWの送信時と受信時とによる位相差の変化をモニタすることで空気圧を検出するように構成しても構わない。
【0079】
更に、本実施形態の場合において、図22に示すように、入力用IDT72及び出力用IDT73に、増幅器78を具備する発振回路79を組み合わせることで、遅延線型の発振回路方式としたセンサとすることができる。
この場合には、タイヤU内の空気圧の変化がSAWの発振周波数の変化となって出力される。そのため、この発振周波数の変化に基づいて圧力を検出できるように、空気圧監視本体部2の本体制御部2bを構成しておけば良い。特に、発振周波数の変化に基づいて空気圧を検出する場合には、高い分解能を期待できる。
【0080】
〔第3実施形態〕
次に、本発明に係るセンサの第3実施形態について説明する。なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第3実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では反射器19を利用した遅延線型のパッシブセンサとしたが、第3実施形態では共振子型のセンサとされている点である。
【0081】
本実施形態の空気圧センサ80は、図23及び図24に示すように、IDT16を構成する第1の櫛歯電極25及び第2櫛歯電極26の電極指25c、26cが、圧電性基板11の一方の面11aにおける2つのマウント部25a、26a間の全面に亘ってそれぞれ形成されている。また、図25に示すように、IDT16には反転増幅器81を具備する発振回路(LC型発振回路)82が組み合わされている。
なお、本実施形態の空気圧センサ80の等価回路は、図26に示すように水晶振動子と同じ等価回路となるものである。図中において、Coは並列容量、L1は等価直列インダクタンス、C1は等価直列容量、R1は等価直列抵抗を示す。
【0082】
このように構成された空気圧センサ80の場合には、タイヤU内の空気圧の低下によって圧電性基板11の変位部21が変位すると、第1の櫛歯電極25及び第2の櫛歯電極26の電極指25c、26cの間隔dが変化し、それによりIDT16の周期長さが変化する。そのため、SAWの伝播特性が変化し、タイヤU内の空気圧の変化がSAWの発振周波数の変化或いは発振振幅変化となって出力される。
従って、これらの変化に基づいて圧力を検出できるように、空気圧監視本体部2の本体制御部2bを構成することで、タイヤU内の空気圧を検出することが可能である。このように本実施形態の場合であっても、タイヤU内の空気圧を精度良く検出することができる。
【0083】
〔第4実施形態〕
次に、本発明に係るセンサの第4実施形態について説明する。なお、この第4実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第4実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では外部接続電極18が封止基板12側に形成されていたが、第4実施形態では圧電性基板11側に形成されている点である。それに加え、第1実施形態では、圧電性基板11と封止基板12との2枚の基板でパッケージ13を構成したが、第4実施形態では、3枚の基板でパッケージ13を構成している点が異なる。
【0084】
本実施形態の空気圧センサ90は、図27から図29に示すように、圧電性基板11と封止基板12とプレート基板91とでパッケージ13が構成されている。
プレート基板91は、圧電性基板11を封止基板12との間で挟み込むように、圧電性基板11の他方の面11b側にそれぞれの接合膜92を介して接合されている。また、プレート基板91は、圧電性基板11よりも厚みを有する基板とされており、長手方向の中央部に開口部91aが形成されている。そのためプレート基板91は、途中が分断されて、圧電性基板11の長手方向の両端部分にのみ接合された状態となっている。また、圧電性基板11の変位部21は、プレート基板91の開口部91aを介して該圧電性基板11の他方の面11b側に露出されている。従って、プレート基板91の開口部91aの内側は、変位部21を露出させる開放部Eとして機能している。
【0085】
ところで、本実施形態の圧電性基板11には、該圧電性基板11を厚み方向に貫通する貫通孔32が形成されている。これら貫通孔32は、第1の櫛歯電極25及び第2の櫛歯電極26のマウント部25a、26aが形成される部分に開口が開くように形成されている。そして、これら貫通孔32の内周面に貫通電極33が形成されており、2つのマウント部25a、26aに対してそれぞれ導通している。さらにこれら貫通電極33は、圧電性基板11とプレート基板91とを接合している上記接合膜92に対しても導通している。
【0086】
外部接続電極18は、プレート基板91の他方の面91bに形成されている。また、プレート基板91の側面には、側面電極膜93が形成されており、プレート基板91に形成された上記接合膜92と、外部接続電極18とを互いに導通させている。
そのため、一方の外部接続電極18は、側面電極膜93、接合膜92及び貫通電極33を介して第1の櫛歯電極25に導通しており、他方の外部接続電極18は、側面電極膜93、接合膜92及び貫通電極33を介して第2の櫛歯電極26に導通している。
なお、第2の櫛歯電極26は、他方の外部接続電極18を介して接地されている。また、上述した接合膜92、貫通電極33及び側面電極膜93は、引出し電極17として機能している。
【0087】
このように構成された空気圧センサ90であっても、第1実施形態と同様の動作によりタイヤU内の空気圧を検出することができると共に、同様の作用効果を奏効することができる。
但し、外部接続電極18を下側にして図示しない回路基板上に空気圧センサ90を表面実装した際、変位部21が回路基板側を向くので、第1実施形態の構成の方がより好ましい。
【0088】
なお、本実施形態の空気圧センサ90の製造方法の一例について簡単に説明する。
ここでは、図30に示すように、圧電性基板用ウエハ100と封止基板用ウエハ101とプレート基板用ウエハ102とを利用して、空気圧センサ90を一度に複数製造する場合を例に挙げて説明する。
【0089】
はじめに、圧電性基板用ウエハ100を、接合を行う直前の状態まで作製する工程を行う。
即ち、圧電性基板用ウエハ100に貫通孔32及び貫通電極33をそれぞれ複数形成した後、圧電性基板用ウエハ100の一方の面11aに接合膜14を形成すると共に、IDT16及び反射器19をそれぞれ複数形成する。また、圧電性基板用ウエハ100の他方の面11bに接合膜92を形成する。これにより、図30に示す圧電性基板用ウエハ100を得ることができる。
【0090】
次いで、上記工程と同時或いは前後のタイミングで封止基板用ウエハ101を、接合を行う直前の状態まで作製する工程を行う。即ち、封止基板用ウエハ101の一方の面12aに、加熱プレス成形やエッチング等により行列方向にキャビティ用の凹部30を複数形成すると共に、接合膜15を形成する。
【0091】
次いで、上記工程と同時或いは前後のタイミングでプレート基板用ウエハ102を、接合を行う前の状態まで作製する工程を行う。即ち、後に開口部91aとなる切欠部103aを、基板表面に平行なY方向に沿って延びるように形成すると共に、該Y方向に直交するX方向に沿って一定の間隔を開けて並列に並ぶように複数形成する。そして、プレート基板用ウエハ102の接合面に接合膜92を形成すると共に、プレート基板用ウエハ102の他方の面91bに外部接続電極18を形成し、さらに切欠部103aの側面に側面電極膜93を形成して接合膜92と外部接続電極18とを導通させておく。
【0092】
次いで、圧電性基板用ウエハ100と、封止基板用ウエハ101と、プレート基板用ウエハ102と、を互いに重ね合わせて接合する工程を行う。これにより、3枚のウエハ100、101、102が一体的に接合されたウエハ体103を得ることができる。
そして最後に、接合されたウエハ体103を図30に示す切断線Mに沿って切断して小片化する工程を行う。その結果、図27に示す空気圧センサ90を一度に複数製造することができる。
【0093】
なお、上記第4実施形態において、図31に示すように、プレート基板91に貫通孔32を形成し、該貫通孔32の内周面にさらに貫通電極33を形成しても構わない。こうすることで、プレート基板91の側面に形成されていた側面電極膜93を省くことができ、2つの貫通電極33を通じて外部接続電極18とIDT16とを互いに導通させることができる。
特に、このように構成した場合には、空気圧センサ90を表面実装した際に、側面電極膜93が形成されていない分、電気的ショートが発生する可能性を低減できるのでより好ましい。
【0094】
なお、上記第4実施形態のように圧電性基板11に貫通電極33を形成した場合であっても、反射器19を利用した遅延線型のパッシブセンサに限定されるものではない。例えば、図32に示すように、上述した第2実施形態のごとく、入力用IDT72及び出力用IDT73からなるIDT71を利用した遅延線型のセンサとしても構わないし、図33に示すように、上述した第3実施形態のごとく、第1の櫛歯電極25及び第2の櫛歯電極26のそれぞれの電極指25c、26cを広範囲に形成した共振子型のセンサとしても構わない。
【0095】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0096】
例えば、上述した各実施形態では、本発明に係るセンサを、自動車のタイヤの空気圧を検出する空気圧センサに適用した場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、例えば航空機のキャビン内の気圧を測定する気圧センサや、歪センサや荷重センサとしても構わない。
いずれにしても、気圧、圧力や応力等の各種力学量を検出するセンサとして幅広く適用することができる。特に、第1実施形態のようにパッシブ型センサとした場合には、バッテリレス無線センサに適用することが可能である。
【0097】
また、上記各実施形態では、貫通孔の内周面に導電性材料を被膜することで貫通電極を形成したが、貫通孔内に導電性ペーストを充填した後に固化させることで貫通電極を形成しても構わないし、貫通孔内に導電性の芯材を埋め込むことで貫通電極を形成しても構わない。
更に、貫通孔は、ストレート形状ではなく、例えば断面テーパ状となるように形成しても構わない。この場合には、サンドブラスト等により貫通孔を容易に形成することが可能である。
【符号の説明】
【0098】
C…キャビティ
E…開放部
10、50、60、70、80、90…空気圧センサ(センサ)
11…圧電性基板
11a…圧電性基板の一方の面
11b…圧電性基板の他方の面
12…封止基板
13…パッケージ
16、71…IDT
17…引出し電極
18…外部接続電極
20…凹部
21…変位部
33…貫通電極
61、91…プレート基板
61a、91a…プレート基板の開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、SAW(表面弾性波:Surface Acoustic Waves)を利用したセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のセンサは、一般的に圧電性基板と、該基板の表面に形成され、圧電効果を利用してSAWを励振、受信可能なIDT(櫛型電極:Inter Digital Transducer)と、を備えており、気圧、圧力や応力等に起因する力学量変化をSAWの特性変化として検出することが可能なセンサとして知られている。
【0003】
上記センサの1つとして、例えば圧力センサが知られている。この圧力センサによれば、センサ外部の圧力が変化すると、その圧力変化が圧電性基板に作用して該圧電性基板が変形する。これにより、圧電性基板の表面(伝播面)を伝播するSAWの伝播長が変化する。そのため、例えばSAWを励振してから受信するまでの遅延時間が変化するので、この遅延時間の変化に基づいて圧力を検知することが可能とされている。
【0004】
しかしながら、上記従来の圧力センサは、一般的にIDTが形成されている圧電性基板の上記伝播面が外部に露出している構成となっている。そのため、長期的な作動信頼性が低下し易いうえ、励振されたSAWのQ値が低下し易く、それにより信号強度及び検出感度が低下し易いものであった。
【0005】
一方、容器と蓋部との間に画成されたキャビティ内に圧電性基板をパッケージングした圧力モニタも知られている(特許文献1参照)。この圧力モニタによれば、圧電性基板の伝播面及びIDTが気密封止されたキャビティ内に配設されるので、上記問題が生じ難い構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4320593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1に記載の圧力モニタでは、圧力変化によってダイヤフラムとして機能する蓋部を変形させ、この蓋部に形成された突出部により圧電性基板を押圧することで圧電性基板を撓み変形させる構成とされている。
しかしながら、圧力を精度良く検出するには、圧電性基板が応答性良く撓み変形するように該基板との位置関係を考慮しながら蓋部に突出部を精度良く形成する必要がある。そのため、容器及び蓋部からなるパッケージングの構造が複雑化し易いうえ、効率の良い製造が難しくコスト高に繋がり易かった。特に、突出部を圧電性基板に対して直接物理的に押し当てる構造のため、長期的な作動信頼性を確保することが難しいものと考えられる。
【0008】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、SAWの信号強度及び検出感度を向上することができると共に、長期に亘って高い作動信頼性を確保することができ、且つシンプルな構成で製造容易化及び低コスト化を図り易いセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
(1)本発明に係るセンサは、圧電性基板と、該圧電性基板の一方の面に接合され、圧電性基板との間に気密封止されたキャビティを画成させる封止基板と、を具備するパッケージと、前記圧電性基板の一方の面に形成され、前記キャビティ内に配設されたIDTと、前記圧電性基板及び前記封止基板のうちの少なくとも一方に形成され、前記パッケージ外部に露出すると共に引出し電極を介して前記IDTに導通された外部接続電極と、を備え、前記圧電性基板が、前記パッケージ外部から作用する力学量に応じて変位する変位部を有し、前記圧電性基板には、前記変位部を該圧電性基板の他方の面側に露出させる開放部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るセンサによれば、気圧、圧力や応力等に起因してパッケージ外部の力学量が変化すると、開放部によって露出されている圧電性基板の変位部が力学量変化に応じて変位する。そのため、IDTによって励振され、圧電性基板の一方の面上を伝播するSAW(表面弾性波)の伝播長が変化し、SAWの伝播特性が変化する。そのため、引出し電極及び外部接続電極を介して上記SAWの特性変化をモニタすることで、パッケージ外部の力学量を検出することができる。
【0011】
特に、SAWの伝播面とされている圧電性基板の一方の面、及びIDTは、パッケージのキャビティ内に気密封止されているので、外部からの影響を受け難い。しかも、上記一方の面とは反対側の面である他方の面側から作用した力学量によって、圧電性基板の変位部が変位する構造とされているので、圧電性基板の一方の面及びIDTが従来のように押圧力等の物理的な力を直接的に受けることがない。
これらのことにより、励振されたSAWのQ値の低下を抑制することができ、一定のQ値を確保してSAWの信号強度及び検出感度を向上することができるうえ、長期的な作動信頼性を確保することができる。また、従来のようにパッケージに突出部を設ける等の複雑な構成が不要であり、構成のシンプル化を図ることができる。従って、製造容易化及び低コスト化を図り易い。
【0012】
(2)上記本発明に係るセンサにおいて、前記引出し電極が、前記封止基板を厚み方向に貫通すると共に前記IDTに導通された貫通電極を有し、前記外部接続電極が、前記貫通電極に導通された状態で前記封止基板に形成されていても良い。
【0013】
この場合には、外部接続電極が封止基板側に形成されており、貫通電極によって封止基板の接合面とは反対側の面に引き出された引出し電極に導通している。そのため、外部接続電極を下側にして例えば回路基板上にセンサを表面実装した際、圧電性基板の変位部を回路基板とは反対側の上側に向けることが可能である。そのため、回路基板に邪魔されずに、変位部に対してパッケージ外部からの力学量をよりダイレクトに作用させることができ、検出精度を高め易い。
【0014】
(3)上記本発明に係るセンサにおいて、前記圧電性基板の前記他方の面には凹部が形成され、該凹部の内側が前記開放部とされていても良い。
【0015】
この場合には、圧電性基板に凹部を形成するだけの簡略な構成で変位部を圧電性基板の他方の面側に露出させることができるので、センサの構成のさらなるシンプル化及び製造容易化を図ることができる。
【0016】
(4)上記本発明に係るセンサにおいて、前記圧電性基板を前記封止基板との間で挟み込むように、該圧電性基板の他方の面側に接合されたプレート基板を備え、前記プレート基板は、前記封止基板と同一材料で形成され、前記プレート基板には、前記変位部を露出させる開口部が形成され、該開口部の内側が前記開放部とされていても良い。
【0017】
この場合には、同一材料の封止基板とプレート基板とが圧電性基板を間に挟み込むようにして接合されているので、3枚の基板を接合する際に、反り等の不正変形が圧電性基板に生じ難い。そのため、圧電性基板の一方の面を伝播するSAWの伝播長を予め決められた長さに確実に設定することができると共に、凹凸を極力抑えた平坦面にし易い。従って、検出精度をより高めることができる。
また、プレート基板に開口部を形成するだけの簡略な構成で開放部を形成することができるうえ、変位部を圧電性基板の他方の面側に露出させることができる。従って、さらなるセンサの製造容易化を図ることができる。
【0018】
(5)上記本発明に係るセンサにおいて、前記封止基板、前記プレート基板および前記圧電性基板が、同一材料で形成されていても良い。
【0019】
この場合には、圧電性基板、封止基板及びプレート基板が同一材料で形成されているので、接合時に例えば熱圧着等、熱を加えながら接合を行ったとしても、封止基板、プレート基板及び圧電性基板の熱膨張係数が同じであるので各基板の熱膨張の違いに起因する熱残留応力が圧電性基板に影響することがない。従って、接合方法のバリエーションを増やすことができると共に、熱を加えながら接合をより強固に行ってキャビティ内の気密封止をより確実なものにすることができる。これにより、作動信頼性をさらに高めることができ、より高品質なセンサとすることができる。
【0020】
(6)上記本発明に係るセンサにおいて、前記キャビティ内が、真空封止されていても良い。
【0021】
この場合には、キャビティ内が真空状態に維持されているので、励振されたSAWのQ値の低下をさらに抑制でき、SAWの検出信号及び検出感度をより効果的に高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るセンサによれば、SAWの信号強度及び検出感度を向上することができると共に、長期に亘って高い作動信頼性を確保することができ、且つシンプルな構成で製造容易化及び低コスト化を図り易い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る第1実施形態を示す図であって、空気圧センサを利用したタイヤの空気圧を監視するシステムの構成図である。
【図2】図1に示す空気圧センサの外観斜視図である。
【図3】図1に示す空気圧センサの分解斜視図である。
【図4】図3に示す圧電性基板の平面図である。
【図5】図3に示すA−A線に沿った空気圧センサの断面図である。
【図6】図2に示す空気圧センサの作動原理を説明するための図である。
【図7】図2に示す空気圧センサの作動原理を説明するための図であって、励振されたSAWの送信バースト波と受信された反射受信波との関係を示した図である。
【図8】図2に示す空気圧センサを製造する際の一工程図であって、圧電性基板の元となる圧電性基板用ウエハと、封止基板の元となる封止基板用ウエハと、を接合する直前の状態を示す図である。
【図9】図2に示す空気圧センサを製造する際の一工程図であって、圧電性基板用ウエハにIDTや反射器等を形成した状態を示す図である。
【図10】図2に示す空気圧センサを製造する際の一工程図であって、封止基板用ウエハにキャビティ用の凹部及び貫通孔を形成した状態を示す図である。
【図11】図10に示す状態の後、接合膜及び接続膜を形成した状態を示す図である。
【図12】本発明に係る第1実施形態の変形例を示す図であって、空気圧センサの外観斜視図である。
【図13】図12に示す空気圧センサの分解斜視図である。
【図14】図13に示すB−B線に沿った空気圧センサの断面図である。
【図15】本発明に係る第1実施形態の別の変形例を示す図であって、空気圧センサの外観斜視図である。
【図16】図15に示す空気圧センサの分解斜視図である。
【図17】図16に示すC−C線に沿った空気圧センサの断面図である。
【図18】本発明に係る第2実施形態を示す図であって、空気圧センサの外観斜視図である。
【図19】図18に示す空気圧センサの分解斜視図である。
【図20】図19に示すD−D線に沿った空気圧センサの断面図である。
【図21】図18に示す空気圧センサの作動原理を説明するための図である。
【図22】本発明に係る第2実施形態の変形例を示す図である。
【図23】本発明に係る第3実施形態を示す図であって、空気圧センサの分解斜視図である。
【図24】図23に示すE−E線に沿った空気圧センサの断面図である。
【図25】図23に示す空気圧センサの作動原理を説明するための図である。
【図26】図23に示す空気圧センサの等価回路を示す図である。
【図27】本発明に係る第4実施形態を示す図であって、空気圧センサの外観斜視図である。
【図28】図27に示すF−F線に沿った空気圧センサの断面図である。
【図29】図27に示す圧電性基板の平面図である。
【図30】図27に示す空気圧センサを製造する際の一工程図であって、圧電性基板の元となる圧電性基板用ウエハと、封止基板の元となる封止基板用ウエハと、プレート基板の元となるプレート基板用ウエハと、を接合する直前の状態を示す図である。
【図31】本発明に係る第4実施形態の変形例を示す図である。
【図32】本発明に係る第4実施形態の別の変形例を示す図である。
【図33】本発明に係る第4実施形態のさらに別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係るセンサの第1実施形態について説明する。
なお、本実施形態ではセンサの一例として、力学量の1つである圧力を検出する圧力センサを例に挙げて説明する。より詳しくは、自動車のタイヤ内の空気圧を検出する空気圧センサを例に挙げて説明する。
【0025】
(空気圧センサの構成)
本実施形態の空気圧センサ(センサ)10は、図1に示すように、空気圧監視モジュール1を構成する一部品とされている。これら空気圧監視モジュール1は、各タイヤUに取り付けられており、車体A側に取り付けられた空気圧監視本体部2からの指示を受けて、タイヤU内の空気圧を検出している。
【0026】
空気圧監視本体部2は、空気圧監視モジュール1に高周波数の電気信号であるバースト信号S1を送信すると共に、空気圧監視モジュール1から送信された電気信号である検出信号S2を受信する送受信器2aと、該送受信器2aの作動を制御すると共に、受信した検出信号S2に基づいてタイヤU内の空気圧を算出する本体制御部2bと、システム電源部2cと、送受信アンテナ2dと、を備えている。
【0027】
上記本体制御部2bは、定期的或いは運転者からの入力操作等に応じて上記バースト信号S1を送るように送受信器2aを作動させて、空気圧監視モジュール1にタイヤU内の空気圧監視を行わせている。また、この本体制御部2bは、算出したタイヤU内の空気圧を予め決められた基準空気圧と比較し、基準空気圧よりもタイヤU内の空気圧が低い場合には、インターフェース部2eを介してインジケータパネルに取り付けられた表示ランプRを点灯させる機能も具備している。
【0028】
空気圧監視モジュール1は、送受信アンテナ1aと、該送受信アンテナ1aを介して前記バースト信号S1を受信すると共に前記検出信号S2を送信する送受信器1bと、上記空気圧センサ10と、該空気圧センサ10の作動を制御するモジュール制御部1cと、を備えている。
モジュール制御部1cは、送受信器1bで受信したバースト信号S1を空気圧センサ10に送り、SAW(表面弾性波)を励振させると共に、空気圧センサ10によって電気信号に変換された検出信号S2を送受信器1bから空気圧監視本体部2に送信させる。
【0029】
上記空気圧センサ10は、図2から図5に示すように、圧電性基板11と封止基板12とがそれぞれの接合膜14、15を介して接合され、両基板11、12の間に気密封止されたキャビティCが画成されたパッケージ13と、圧電性基板11の一方の面11aに形成され、上記キャビティC内に配設されたIDT16と、封止基板12に形成され、パッケージ13外部に露出すると共に引出し電極17を介してIDT16に電気的接続された2つの外部接続電極18と、を備えた表面実装型のデバイスである。
そして、この空気圧センサ10は、空気圧監視モジュール1の図示しない回路基板上に外部接続電極18を下側に向けた状態(図2参照)で表面実装されている。
【0030】
圧電性基板11は、例えば水晶や、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)や、タンタル酸リチウム(LiTaO3)や、酸化亜鉛(ZnO)等からなる平面視矩形状の基板とされている。なお、以下、単に長手方向、短手方向という場合があるが、圧電性基板11の長手方向、短手方向を指す。
圧電性基板11の一方の面11a(封止基板12に対する接合面)には、上記した接合膜14及びIDT16と、反射器19と、がそれぞれ導電性材料のパターニングによって形成されている。即ち、本実施形態の空気圧センサ10は、反射器19を利用した遅延線型のパッシブセンサとされている。
【0031】
なお、導電性材料としては、例えばクロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、金(Au)やチタン(Ti)等の金属膜であり、単層膜でも積層膜でも構わない。
【0032】
一方、圧電性基板11の他方の面(上述した一方の面11aとは反対側の面)11bには、長手方向の中央部において凹部20が形成されており、該凹部20によって圧電性基板11の厚みが他の部分よりも薄肉とされた部分が形成されている。この薄肉部分は、パッケージ13外部から作用するタイヤU内の空気圧変化に応じてダイヤフラムの如く変位する変位部21として機能している。また、凹部20の内側は、この変位部21を圧電性基板11の他方の面11b側に露出させる開放部Eとして機能している。
【0033】
上記接合膜14は、圧電性基板11の一方の面11a上において、IDT16及び反射器19の周囲を囲むように圧電性基板11の周縁に沿って枠状に形成されている。
IDT16は、圧電性基板11による圧電効果を利用して、SAWを励振及び受信するための電極であって、SAWの伝播方向である長手方向に沿って配設された第1の櫛歯電極25及び第2の櫛歯電極26を備えている。
【0034】
第1の櫛歯電極25は、圧電性基板11の長手方向一方側に配置されたマウント部25aと、マウント部25aに接続され、長手方向他方側に向かって延びたバスバー25bと、バスバー25bに接続され、短手方向に延びた複数の電極指25cと、を備えている。
同様に第2の櫛歯電極26は、圧電性基板11の長手方向他方側に配置されたマウント部26aと、マウント部26aに接続され、長手方向一方側に向かって延びたバスバー26bと、バスバー26bに接続され、短手方向に延びた複数の電極指26cと、を備えている。また、マウント部25a、マウント部26aは、圧電性基板11と封止基板12との接合部に形成されている。
【0035】
第1の櫛歯電極25及び第2の櫛歯電極26のそれぞれの電極指25c、26cは、互いに間挿し合うように配置されている。具体的には、両電極指25c、26cは、圧電性基板11の長手方向に沿って一定の間隔を開けながら交互に並ぶように配置されている。その際、両電極指25c、26cは中心間距離が間隔d(図4参照)となるように配置されている。
これにより、IDT16によって励振されるSAWの励振周波数Fは、V(圧電性基板11によって決定される伝播速度)/P(IDT16の周期2d)で規定される。
【0036】
反射器19は、圧電性基板11の変位部21を挟んで2つの電極指25c、26cと長手方向に向かい合うように、第2の櫛歯電極26のマウント部26aに対して隣接配置されている。
【0037】
封止基板12は、例えばガラスやシリコン、又は圧電性基板11と同じ圧電材等からなる基板であり、圧電性基板11に対して重ね合わせ可能なサイズの平面視矩形状に形成されている。この封止基板12の一方の面(圧電性基板11に対する接合面)12aには、上述したキャビティCを画成させるためのキャビティ用の凹部30が形成されている。
この凹部30は、第1の櫛歯電極25及び第2の櫛歯電極26のうちの各電極指25c、26c及び各バスバー25b、26bと、反射器19と、がキャビティC内に収納されるようにそのサイズが決定されている。
【0038】
さらに封止基板12の一方の面12aには、上記接合膜15と2つの接続膜31(図5参照)とがそれぞれ導電性材料のパターニングによって形成されている。一方、封止基板12の他方の面(一方の面12aとは反対側の面)12bには、上述した2つの外部接続電極18が導電性材料のパターニングによって形成されている。
【0039】
接合膜15は、封止基板12の周縁に沿って枠状に形成されており、圧電性基板11側の接合膜14に対して強固に接合されている。接続膜31は、封止基板12の一方の面12a上において、第1の櫛歯電極25及び第2の櫛歯電極26のマウント部25a、26aに対してそれぞれ向かい合う部分に形成されており、両マウント部25a、26aに対してそれぞれ強固に接合されている。これらのことにより、キャビティC内の気密が確実なものとされている。
【0040】
ところで、封止基板12には、図5に示すように、該封止基板12を厚み方向に貫通する貫通孔32が形成されている。これら貫通孔32は、接続膜31が形成される部分に開口が開くように形成されている。そして、これら貫通孔32の内周面には、導電性材料の被膜によって貫通電極33が形成されており、2つの接続膜31に対してそれぞれ導通している。
【0041】
外部接続電極18は、上記した貫通電極33にそれぞれ導通するように封止基板12の他方の面12b上に形成されている。そのため、一方の外部接続電極18は、貫通電極33及び接続膜31を介して第1の櫛歯電極25に導通しており、他方の外部接続電極18は、貫通電極33及び接続膜31を介して第2の櫛歯電極26に導通している。
なお、第2の櫛歯電極26は、他方の外部接続電極18を介して接地されている。また、上述した接続膜31及び貫通電極33は、引出し電極17として機能している。
【0042】
(空気圧センサ10の作動)
次に、上記のように構成された空気圧センサ10を利用してタイヤU内の空気圧を検出すると共に、検出したタイヤU内の空気圧が正常値であるか否かを監視する場合について説明する。
まず、エンジン始動等により車体Aに電力が供給されると、車体A側に取り付けられている空気圧監視本体部2のシステム電源部2cがONになり、本体制御部2bが作動する。すると、本体制御部2bは、図1に示すように、送受信器2aを作動させて各タイヤUに取り付けられた空気圧監視モジュール1に向けてバースト信号S1を送信させる。
【0043】
空気圧監視モジュール1のモジュール制御部1cは、送受信器1bを介してこのバースト信号S1を受信すると、該バースト信号S1を空気圧センサ10に送りSAWを励振させる。具体的には、空気圧センサ10の2つの外部接続電極18を介して、IDT16を構成する第1の櫛歯電極25の電極指25cと第2の櫛歯電極26の電極指26cとの間にバースト信号S1を印加する。
【0044】
すると、両電極指25c、26c間に電界が発生し、圧電効果によりSAWが励振される。IDT16によって励振されたこのSAWは、図6に示すように送信バースト波W1として圧電性基板11の一方の面11a上を反射器19に向かって伝播する。するとこの伝播したSAWは、反射器19によって反射された後、再度IDT16に向かって伝播し、受信反射波W2としてIDT16にて受信される。IDT16は、SAWを受信すると、該SAWを検出信号S2に電気信号変換した後、モジュール制御部1cに送る。モジュール制御部1cは、図1に示すように、この送られてきた検出信号S2を、送受信器1bを介して空気圧監視本体部2に送信させる。
【0045】
ところで、空気圧監視本体部2の本体制御部2bは、この間図7に示すように励振によって発生したSAWが送信バースト波W1として送信されてから、受信反射波W2として受信されるまでの遅延時間Tをモニタしている。
【0046】
ここで、例えば走行中等においてタイヤU内の空気圧が低下すると、図6に示すように、凹部20によって外部に露出している圧電性基板11の変位部21が圧力低下に応じて変位する。そのため、圧電性基板11の一方の面11a上を伝播するSAWの伝播長Lが変化する(図示の場合は伝播長Lが長くなる)ので、SAWの伝播特性の1つである上記した遅延時間Tが変化(図示の場合は伝播時間Tが長くなる)する。
【0047】
これにより、空気圧監視本体部2の本体制御部2bは、遅延時間Tの変化に基づいてタイヤU内の空気圧の変化量を算出し、例えば予め設定されているタイヤU内の設定空気圧と上記変化量とから現在のタイヤU内の空気圧を算出することができる。
そして、本体制御部2bは、算出した現在のタイヤU内の空気圧を基準空気圧と比較する。比較した結果、タイヤU内の現在の空気圧が基準空気圧よりも低い場合には、インターフェース部2eを介して表示ランプRを点灯させる。その結果、運転者はタイヤU内の空気圧が低下していることを速やかに視覚によって把握することができ、適切な対処を直ちに行うことができる。
【0048】
特に、本実施形態の空気圧センサ10によれば、SAWの伝播面とされている圧電性基板11の一方の面11a及びIDT16が、パッケージ13のキャビティC内に気密封止されているので、外部からの影響を受け難い構造とされている。しかも、他方の面11b側から作用した圧力変化によって圧電性基板11の変位部21が変位する構造とされているので、圧電性基板11の一方の面11a及びIDT16が従来のように押圧力等の物理的な力を直接的に受けることがない。
これらのことにより、励振されたSAWのQ値の低下を抑制することができ、一定のQ値を確保してSAWの信号強度及び検出感度を共に向上することができるうえ、長期的な作動信頼性を確保することができる。また、従来のようにパッケージ13に突出部を設ける等の複雑な構成が不要であり、構成のシンプル化を図ることができる。従って、製造容易化及び低コスト化を図り易い。
【0049】
更に、本実施形態の空気圧センサ10では、外部接続電極18が封止基板12側に形成されており、外部接続電極18を下側にして回路基板に表面実装することが可能とされている。そのため、圧電性基板11の変位部21を基板回路とは反対側の上側に向けることができる。従って、タイヤU内の空気圧変化を回路基板に邪魔されることなく、変位部21に対してよりダイレクトに作用させることができ、検出精度を高め易い。
また、圧電性基板11に凹部20を形成するだけの簡略な構成で圧電性基板11の変位部21を他方の面11b側に露出させることができるので、空気圧センサ10のシンプル化及び製造容易化を図ることができる。
【0050】
加えて、本実施形態の空気圧センサ10は、バースト信号S1を受けることで作動し、SAWを励振させるパッシブ型(受動型)のセンサであるので、該空気圧センサ10を作動させるための電源部が不要である。従って、この空気圧センサ10を具備する空気圧監視モジュール1の構成の簡略化を図り易い。
【0051】
なお、上記本実施形態では、空気圧監視モジュール1が、送受信アンテナ1a、送受信器1b、モジュール制御部1c及び空気圧センサ10を具備していたが、空気圧センサ10がパッシブ型のセンサであるので、この場合には送受信器1b及びモジュール制御部1cは必須な構成ではなく、具備していなくても構わない。
この場合であっても、空気圧監視本体部2から送られてきたバースト信号S1を送受信アンテナ1aで受信し、空気圧センサ10のIDT16に印加してSAWを励振させることができると共に、IDT16で電気信号変換された検出信号S2を送受信アンテナ1aを介して空気圧監視本体部2に送信することが可能である。
【0052】
(空気圧センサの製造)
次に、上述した空気圧センサ10の製造方法の一例について簡単に説明する。
ここでは、図8に示すように、圧電性基板用ウエハ40と封止基板用ウエハ41とを利用して、空気圧センサ10を一度に複数製造する場合を例に挙げて説明する。
【0053】
はじめに、圧電性基板用ウエハ40を、接合を行う直前の状態まで作製する工程を行う。
まず、図9に示すように、圧電性基板用ウエハ40の他方の面11bに、加熱プレス成形やエッチング等により行列方向に凹部20を複数形成する工程を行う。これにより、圧電性基板用ウエハ40には、ダイヤフラムの如く変位する変位部21が複数形成される。次いで、圧電性基板用ウエハ40の一方の面11aに導電性材料をパターニングして接合膜14を形成すると共にIDT16及び反射器19をそれぞれ複数形成する工程を行う。
【0054】
これにより、図8に示すように、製造する空気圧センサ10の数に応じて、IDT16、反射器19及び変位部21がそれぞれ複数形成された圧電性基板用ウエハ40を得ることができる。
なお、図8及び図9に示す点線Mは、後に圧電性基板用ウエハ40を切断する切断線を図示している。
【0055】
次に、上記工程と同時に或いは前後のタイミングで封止基板用ウエハ41を、接合を行う直前の状態まで作製する工程を行う。
まず、図10に示すように、封止基板用ウエハ41の一方の面12aに、加熱プレス成形やエッチング等により行列方向にキャビティ用の凹部30を複数形成すると共に、封止基板用ウエハ41を貫通する貫通孔32を複数形成する工程を行う。次いで、複数の貫通孔32の内周面に導電性材料を被膜させて貫通電極33を複数形成すると共に、封止基板用ウエハ41の一方の面12aに導電性材料をパターニングして、図11に示すように接合膜15を形成すると共に、接続膜31をそれぞれ複数形成する工程を行う。
なお、図10及び図11に示す点線Mは、後に封止基板用ウエハ41を切断する切断線を図示している。
【0056】
続いて、圧電性基板用ウエハ40と、封止基板用ウエハ41と、を互いに重ね合わせて接合する工程を行う。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら両ウエハ40、41を正しい位置にアライメントした後、図8に示すように、圧電性基板用ウエハ40の一方の面11aと、封止基板用ウエハ41の一方の面12aと、を互いに重ね合わせると同時にそれぞれの接合膜14、15を利用して接合する。
なお、この際の接合方法としては、半田接合や熱圧着接合や陽極接合等、既に知られている周知な接合方法を採用すれば良い。
【0057】
この接合によって、圧電性基板用ウエハ40と封止基板用ウエハ41とが一体的に接合されたウエハ体42を得ることができると共に、両ウエハ40、41の間に気密封止されたキャビティCが複数形成される。また、圧電性基板用ウエハ40の一方の面11aに形成されたIDT16及び反射器19が、この気密封止されたキャビティC内に収容された状態となる。
【0058】
次いで、上述した接合が終了した後、封止基板用ウエハ41の他方の面12bに導電性材料をパターニングして、貫通電極33にそれぞれ電気的に接続された外部接続電極18を複数形成する工程を行う。
そして最後に、接合されたウエハ体42を図8に示す切断線Mに沿って切断して小片化する工程を行う。その結果、図2に示す空気圧センサ10を一度に複数製造することができる。
【0059】
上述したように、上記製造方法によれば、圧電性基板用ウエハ40及び封止基板用ウエハ41に対して、例えば突出部を設ける等の複雑な形成工程を何ら行う必要がなく、効率良く空気圧センサ10を製造することが可能である。従って、生産性を高めることができると共に低コスト化を図り易い。
【0060】
ところで、上記第1実施形態では、SAWの伝播特性変化の1つである遅延時間Tの変化に基づいてタイヤU内の空気圧を検出したが、SAWの送信バースト波W1及び受信反射波W2の位相差の変化をモニタすることで空気圧を検出しても構わない。
特に、SAWの受信反射波W2に関しては、ピーク位置が明瞭に現れ難いため受信反射波W2の受信時間を正確に把握できない場合も考えられる。このような場合には、遅延時間Tの変化ではなく位相差の変化をモニタすることで、空気圧の検出をより高精度に行うことができるものと考えられるので有効である。
【0061】
また、上記第1実施形態において、キャビティC内を真空にした状態で気密封止することが好ましい。こうすることで、励振されたSAWのQ値の低下をさらに抑制することができ、SAWの検出信号S2及び検出感度をより効果的に高めることができる。
【0062】
なお、上記第1実施形態では、封止基板12を1枚構造としたが、図12から図14に示すように2枚の基板で構成しても構わない。
この場合の空気圧センサ50は、圧電性基板11の一方の面11aに、第1封止基板52と第2封止基板53とからなる封止基板12が接合されている。封止基板51は、第2封止基板53を圧電性基板11の一方の面11aに重ね合わせた状態で接合されている。また、第1封止基板52と第2封止基板53とは、それぞれの接合膜55を介して強固に接合されている。
【0063】
第2封止基板53は、第1封止基板52よりも厚みを有する基板とされており、中央部分にはキャビティ用の開口部53aが形成されている。そのため、第2封止基板53は、枠状に形成されている。これに対して、第1封止基板52は板状に形成されており、第2封止基板53の開口部53aの一方側を塞いでいる。そして、第2封止基板53の開口部53aの内側と第1封止基板52とで画成された空間が、キャビティCとして機能する。
【0064】
なお、この場合では、貫通孔32は第1封止基板52及び第2封止基板53を通して形成されている。また、第1封止基板52及び第2封止基板53には、中間接続膜56が互いの接合面にそれぞれ形成されている。これら両中間接続膜56は、強固に接合していると共に引出し電極17の一部として機能している。
【0065】
このように構成された空気圧センサ50によれば、第1封止基板52と第2封止基板53とを接合するだけで、キャビティCを容易且つ精度良く形成することができるので、キャビティ用の凹部30を形成する場合よりも製造の容易化を図ることができる。なお、それ以外については、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏効することができる。
【0066】
また、上記第1実施形態では、圧電性基板11と封止基板12との2枚の基板でパッケージ13を構成したが、図15から図17に示すように、圧電性基板11と封止基板12とプレート基板61との3枚の基板でパッケージ13を構成した空気圧センサ60としても構わない。
【0067】
この場合、プレート基板61は、圧電性基板11を封止基板12との間で挟み込むように、圧電性基板11の他方の面11b側にそれぞれの接合膜62を介して強固に接合されている。また、プレート基板61は、圧電性基板11よりも厚みを有する基板とされており、中央部分には開口部61aが形成されている。そのため、圧電性基板11の変位部21は、この開口部61aを介して圧電性基板11の他方の面11b側に露出されている。
なお、プレート基板61の開口部61aの内側は、変位部21を露出させる開放部Eとして機能している。
【0068】
このように構成された空気圧センサ60によれば、封止基板12とプレート基板61とが圧電性基板11を間に挟み込むようにして接合されているので、3枚の基板を互いに接合する際に、反り等の不正変形が圧電性基板11に生じ難い。そのため、圧電性基板11の一方の面11a上を伝播するSAWの伝播長Lを予め決められた長さに確実に設定することができると共に、凹凸を極力抑えた平坦面にすることができる。そのため、検出精度をより高め易い。
また、プレート基板61に開口部61aを形成するだけの簡略な構成で開放部Eを形成でき、圧電性基板11に凹部20を形成する場合よりも変位部21を圧電性基板11の他方の面11b側に容易に露出させ易い。従って、さらなる製造の容易化を図ることができる。なお、それ以外については、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏効することができる。
【0069】
なお、プレート基板61を利用する場合には、封止基板12と同一材料でプレート基板61を形成することが好ましい。例えば、封止基板12及びプレート基板61を共にガラス基板とすることが好ましい。
こうすることで、接合時に例えば熱圧着等、熱を加えながら接合を行ったとしても、封止基板12及びプレート基板61の熱膨張係数が同じであるので、両基板12、61の熱膨張の違いに起因する反りが圧電性基板11に影響することがない。従って、接合方法のバリエーションを増やすことができると共に、熱を加えながら接合をより強固に行ってキャビティC内の気密封止をより確実なものにすることができる。従って、作動信頼性をさらに高めることができると共に、より高品質なセンサとすることができる。
また、封止基板12、プレート基板61および圧電性基板11が、同一材料で形成されていても良い。
こうすることで、圧電性基板11、封止基板12及びプレート基板61が同一材料で形成されているので、接合時に例えば熱圧着等、熱を加えながら接合を行ったとしても、封止基板12、プレート基板61、圧電性基板11の熱膨張係数が同じであるので各基板の熱膨張の違いに起因する熱残留応力が圧電性基板に影響することがない。従って、接合方法のバリエーションを増やすことができると共に、熱を加えながら接合をより強固に行ってキャビティ内の気密封止をより確実なものにすることができる。これにより、作動信頼性をさらに高めることができ、より高品質なセンサとすることができる。
【0070】
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係るセンサの第2実施形態について説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では反射器19を利用した遅延線型のパッシブセンサとしたが、第2実施形態では4端子(4つの外部接続電極18)を具備する遅延線型のセンサとされている点である。
【0071】
本実施形態の空気圧センサ70は、図18から図20に示すように、圧電性基板11の一方の面11aに、SAWを励振させるための入力用IDT72と、一方の面11a上を伝播してきたSAWを受信するための出力用IDT73と、からなるIDT71が形成されている。
【0072】
入力用IDT72は、圧電性基板11の長手方向一方側に配置され、圧電性基板11の短手方向に並んだ第1の櫛歯電極74及び第2の櫛歯電極75を具備している。これら第1の櫛歯電極74及び第2の櫛歯電極75は、それぞれマウント部74a、75aと、マウント部74a、75aに接続されたバスバー74b、75bと、バスバー74b、75bに接続され、互いに間挿し合うように配置された複数の電極指74c、75cと、を備えている。
【0073】
出力用IDT73は、圧電性基板11の変位部21を挟んで上記入力用IDT72と長手方向に向かい合うように、圧電性基板11の長手方向他方側に配置され、圧電性基板11の短手方向に並んだ第1の櫛歯電極76及び第2の櫛歯電極77を具備している。これら第1の櫛歯電極76及び第2の櫛歯電極77は、それぞれマウント部76a、77aと、マウント部76a、77aに接続されたバスバー76b、77bと、バスバー76b、77bに接続され、互いに間挿し合うように配置された複数の電極指76c、77cと、を備えている。
【0074】
本実施形態の封止基板12は、一方の面12aに接合膜15と4つの接続膜31とがそれぞれ形成されており、他方の面12上に4つの外部接続電極18が形成されている。
接続膜31は、封止基板12の一方の面12a上において、入力用IDT72の2つのマウント部74a、75aと、出力用IDT73の2つのマウント部76a、77aと、に対してそれぞれ向かい合う部分に形成されており、各マウント部74a、75a、76a、77aに対してそれぞれ強固に接合されている。
【0075】
また、封止基板12には、4つの接続膜31が形成される部分に開口がそれぞれ開くように4つの貫通孔32が形成されており、これら貫通孔32の内周面に貫通電極33が形成されている。そして、4つの外部接続電極18は、各貫通電極33にそれぞれ導通するように封止基板12の他方の面12b上に形成されている。
なお、入力用IDT72及び出力用IDT73の第2の櫛歯電極75、77は、外部接続電極18を介して接地されている(図21参照)。
【0076】
このように構成された空気圧センサ70を作動させる場合には、図21に示すように、まず入力用IDT72を構成する第1の櫛歯電極74の電極指74cと第2の櫛歯電極75の電極指75cとの間にバースト信号S1を印加する。これにより、両電極指74c、75c間に電界を発生させることができ、圧電効果によりSAWを励振させることができる。そして、入力用IDT72によって励振されたこのSAWは、圧電性基板11の一方の面11a上を伝播した後、出力用IDT73にて受信されて検出信号S2に変換される。
【0077】
ここで、タイヤU内の空気圧が低下によって圧電性基板11の変位部21が変位すると、それによりSAWの伝播長Lが変化するのでSAWの遅延時間Tが変化する。これにより、遅延時間Tをモニタしている空気圧監視本体部2の本体制御部2bは、遅延時間Tの変化に基づいて現在のタイヤU内の空気圧を算出することができる。
【0078】
上述したように、本実施形態の空気圧センサ70であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏効することができる。
なお、本実施形態の場合であっても、遅延時間Tの変化に基づいてタイヤU内の空気圧を検出するのではなく、SAWの送信時と受信時とによる位相差の変化をモニタすることで空気圧を検出するように構成しても構わない。
【0079】
更に、本実施形態の場合において、図22に示すように、入力用IDT72及び出力用IDT73に、増幅器78を具備する発振回路79を組み合わせることで、遅延線型の発振回路方式としたセンサとすることができる。
この場合には、タイヤU内の空気圧の変化がSAWの発振周波数の変化となって出力される。そのため、この発振周波数の変化に基づいて圧力を検出できるように、空気圧監視本体部2の本体制御部2bを構成しておけば良い。特に、発振周波数の変化に基づいて空気圧を検出する場合には、高い分解能を期待できる。
【0080】
〔第3実施形態〕
次に、本発明に係るセンサの第3実施形態について説明する。なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第3実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では反射器19を利用した遅延線型のパッシブセンサとしたが、第3実施形態では共振子型のセンサとされている点である。
【0081】
本実施形態の空気圧センサ80は、図23及び図24に示すように、IDT16を構成する第1の櫛歯電極25及び第2櫛歯電極26の電極指25c、26cが、圧電性基板11の一方の面11aにおける2つのマウント部25a、26a間の全面に亘ってそれぞれ形成されている。また、図25に示すように、IDT16には反転増幅器81を具備する発振回路(LC型発振回路)82が組み合わされている。
なお、本実施形態の空気圧センサ80の等価回路は、図26に示すように水晶振動子と同じ等価回路となるものである。図中において、Coは並列容量、L1は等価直列インダクタンス、C1は等価直列容量、R1は等価直列抵抗を示す。
【0082】
このように構成された空気圧センサ80の場合には、タイヤU内の空気圧の低下によって圧電性基板11の変位部21が変位すると、第1の櫛歯電極25及び第2の櫛歯電極26の電極指25c、26cの間隔dが変化し、それによりIDT16の周期長さが変化する。そのため、SAWの伝播特性が変化し、タイヤU内の空気圧の変化がSAWの発振周波数の変化或いは発振振幅変化となって出力される。
従って、これらの変化に基づいて圧力を検出できるように、空気圧監視本体部2の本体制御部2bを構成することで、タイヤU内の空気圧を検出することが可能である。このように本実施形態の場合であっても、タイヤU内の空気圧を精度良く検出することができる。
【0083】
〔第4実施形態〕
次に、本発明に係るセンサの第4実施形態について説明する。なお、この第4実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第4実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では外部接続電極18が封止基板12側に形成されていたが、第4実施形態では圧電性基板11側に形成されている点である。それに加え、第1実施形態では、圧電性基板11と封止基板12との2枚の基板でパッケージ13を構成したが、第4実施形態では、3枚の基板でパッケージ13を構成している点が異なる。
【0084】
本実施形態の空気圧センサ90は、図27から図29に示すように、圧電性基板11と封止基板12とプレート基板91とでパッケージ13が構成されている。
プレート基板91は、圧電性基板11を封止基板12との間で挟み込むように、圧電性基板11の他方の面11b側にそれぞれの接合膜92を介して接合されている。また、プレート基板91は、圧電性基板11よりも厚みを有する基板とされており、長手方向の中央部に開口部91aが形成されている。そのためプレート基板91は、途中が分断されて、圧電性基板11の長手方向の両端部分にのみ接合された状態となっている。また、圧電性基板11の変位部21は、プレート基板91の開口部91aを介して該圧電性基板11の他方の面11b側に露出されている。従って、プレート基板91の開口部91aの内側は、変位部21を露出させる開放部Eとして機能している。
【0085】
ところで、本実施形態の圧電性基板11には、該圧電性基板11を厚み方向に貫通する貫通孔32が形成されている。これら貫通孔32は、第1の櫛歯電極25及び第2の櫛歯電極26のマウント部25a、26aが形成される部分に開口が開くように形成されている。そして、これら貫通孔32の内周面に貫通電極33が形成されており、2つのマウント部25a、26aに対してそれぞれ導通している。さらにこれら貫通電極33は、圧電性基板11とプレート基板91とを接合している上記接合膜92に対しても導通している。
【0086】
外部接続電極18は、プレート基板91の他方の面91bに形成されている。また、プレート基板91の側面には、側面電極膜93が形成されており、プレート基板91に形成された上記接合膜92と、外部接続電極18とを互いに導通させている。
そのため、一方の外部接続電極18は、側面電極膜93、接合膜92及び貫通電極33を介して第1の櫛歯電極25に導通しており、他方の外部接続電極18は、側面電極膜93、接合膜92及び貫通電極33を介して第2の櫛歯電極26に導通している。
なお、第2の櫛歯電極26は、他方の外部接続電極18を介して接地されている。また、上述した接合膜92、貫通電極33及び側面電極膜93は、引出し電極17として機能している。
【0087】
このように構成された空気圧センサ90であっても、第1実施形態と同様の動作によりタイヤU内の空気圧を検出することができると共に、同様の作用効果を奏効することができる。
但し、外部接続電極18を下側にして図示しない回路基板上に空気圧センサ90を表面実装した際、変位部21が回路基板側を向くので、第1実施形態の構成の方がより好ましい。
【0088】
なお、本実施形態の空気圧センサ90の製造方法の一例について簡単に説明する。
ここでは、図30に示すように、圧電性基板用ウエハ100と封止基板用ウエハ101とプレート基板用ウエハ102とを利用して、空気圧センサ90を一度に複数製造する場合を例に挙げて説明する。
【0089】
はじめに、圧電性基板用ウエハ100を、接合を行う直前の状態まで作製する工程を行う。
即ち、圧電性基板用ウエハ100に貫通孔32及び貫通電極33をそれぞれ複数形成した後、圧電性基板用ウエハ100の一方の面11aに接合膜14を形成すると共に、IDT16及び反射器19をそれぞれ複数形成する。また、圧電性基板用ウエハ100の他方の面11bに接合膜92を形成する。これにより、図30に示す圧電性基板用ウエハ100を得ることができる。
【0090】
次いで、上記工程と同時或いは前後のタイミングで封止基板用ウエハ101を、接合を行う直前の状態まで作製する工程を行う。即ち、封止基板用ウエハ101の一方の面12aに、加熱プレス成形やエッチング等により行列方向にキャビティ用の凹部30を複数形成すると共に、接合膜15を形成する。
【0091】
次いで、上記工程と同時或いは前後のタイミングでプレート基板用ウエハ102を、接合を行う前の状態まで作製する工程を行う。即ち、後に開口部91aとなる切欠部103aを、基板表面に平行なY方向に沿って延びるように形成すると共に、該Y方向に直交するX方向に沿って一定の間隔を開けて並列に並ぶように複数形成する。そして、プレート基板用ウエハ102の接合面に接合膜92を形成すると共に、プレート基板用ウエハ102の他方の面91bに外部接続電極18を形成し、さらに切欠部103aの側面に側面電極膜93を形成して接合膜92と外部接続電極18とを導通させておく。
【0092】
次いで、圧電性基板用ウエハ100と、封止基板用ウエハ101と、プレート基板用ウエハ102と、を互いに重ね合わせて接合する工程を行う。これにより、3枚のウエハ100、101、102が一体的に接合されたウエハ体103を得ることができる。
そして最後に、接合されたウエハ体103を図30に示す切断線Mに沿って切断して小片化する工程を行う。その結果、図27に示す空気圧センサ90を一度に複数製造することができる。
【0093】
なお、上記第4実施形態において、図31に示すように、プレート基板91に貫通孔32を形成し、該貫通孔32の内周面にさらに貫通電極33を形成しても構わない。こうすることで、プレート基板91の側面に形成されていた側面電極膜93を省くことができ、2つの貫通電極33を通じて外部接続電極18とIDT16とを互いに導通させることができる。
特に、このように構成した場合には、空気圧センサ90を表面実装した際に、側面電極膜93が形成されていない分、電気的ショートが発生する可能性を低減できるのでより好ましい。
【0094】
なお、上記第4実施形態のように圧電性基板11に貫通電極33を形成した場合であっても、反射器19を利用した遅延線型のパッシブセンサに限定されるものではない。例えば、図32に示すように、上述した第2実施形態のごとく、入力用IDT72及び出力用IDT73からなるIDT71を利用した遅延線型のセンサとしても構わないし、図33に示すように、上述した第3実施形態のごとく、第1の櫛歯電極25及び第2の櫛歯電極26のそれぞれの電極指25c、26cを広範囲に形成した共振子型のセンサとしても構わない。
【0095】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0096】
例えば、上述した各実施形態では、本発明に係るセンサを、自動車のタイヤの空気圧を検出する空気圧センサに適用した場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、例えば航空機のキャビン内の気圧を測定する気圧センサや、歪センサや荷重センサとしても構わない。
いずれにしても、気圧、圧力や応力等の各種力学量を検出するセンサとして幅広く適用することができる。特に、第1実施形態のようにパッシブ型センサとした場合には、バッテリレス無線センサに適用することが可能である。
【0097】
また、上記各実施形態では、貫通孔の内周面に導電性材料を被膜することで貫通電極を形成したが、貫通孔内に導電性ペーストを充填した後に固化させることで貫通電極を形成しても構わないし、貫通孔内に導電性の芯材を埋め込むことで貫通電極を形成しても構わない。
更に、貫通孔は、ストレート形状ではなく、例えば断面テーパ状となるように形成しても構わない。この場合には、サンドブラスト等により貫通孔を容易に形成することが可能である。
【符号の説明】
【0098】
C…キャビティ
E…開放部
10、50、60、70、80、90…空気圧センサ(センサ)
11…圧電性基板
11a…圧電性基板の一方の面
11b…圧電性基板の他方の面
12…封止基板
13…パッケージ
16、71…IDT
17…引出し電極
18…外部接続電極
20…凹部
21…変位部
33…貫通電極
61、91…プレート基板
61a、91a…プレート基板の開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電性基板と、該圧電性基板の一方の面に接合され、圧電性基板との間に気密封止されたキャビティを画成させる封止基板と、を具備するパッケージと、
前記圧電性基板の一方の面に形成され、前記キャビティ内に配設されたIDTと、
前記圧電性基板及び前記封止基板のうちの少なくとも一方に形成され、前記パッケージ外部に露出すると共に引出し電極を介して前記IDTに導通された外部接続電極と、を備え、
前記圧電性基板は、前記パッケージ外部から作用する力学量に応じて変位する変位部を有し、
前記圧電性基板には、前記変位部を該圧電性基板の他方の面側に露出させる開放部が設けられていることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサにおいて、
前記引出し電極は、前記封止基板を厚み方向に貫通すると共に前記IDTに導通された貫通電極を有し、
前記外部接続電極は、前記貫通電極に導通された状態で前記封止基板に形成されていることを特徴とするセンサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセンサにおいて、
前記圧電性基板の前記他方の面には凹部が形成され、該凹部の内側が前記開放部とされていることを特徴とするセンサ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のセンサにおいて、
前記圧電性基板を前記封止基板との間で挟み込むように、該圧電性基板の他方の面側に接合されたプレート基板を備え、
前記プレート基板は、前記封止基板と同一材料で形成され、
前記プレート基板には、前記変位部を露出させる開口部が形成され、該開口部の内側が前記開放部とされていることを特徴とするセンサ。
【請求項5】
請求項4に記載のセンサにおいて、
前記封止基板、前記プレート基板および前記圧電性基板は、同一材料で形成されていることを特徴とするセンサ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のセンサにおいて、
前記キャビティ内は、真空封止されていることを特徴とするセンサ。
【請求項1】
圧電性基板と、該圧電性基板の一方の面に接合され、圧電性基板との間に気密封止されたキャビティを画成させる封止基板と、を具備するパッケージと、
前記圧電性基板の一方の面に形成され、前記キャビティ内に配設されたIDTと、
前記圧電性基板及び前記封止基板のうちの少なくとも一方に形成され、前記パッケージ外部に露出すると共に引出し電極を介して前記IDTに導通された外部接続電極と、を備え、
前記圧電性基板は、前記パッケージ外部から作用する力学量に応じて変位する変位部を有し、
前記圧電性基板には、前記変位部を該圧電性基板の他方の面側に露出させる開放部が設けられていることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサにおいて、
前記引出し電極は、前記封止基板を厚み方向に貫通すると共に前記IDTに導通された貫通電極を有し、
前記外部接続電極は、前記貫通電極に導通された状態で前記封止基板に形成されていることを特徴とするセンサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセンサにおいて、
前記圧電性基板の前記他方の面には凹部が形成され、該凹部の内側が前記開放部とされていることを特徴とするセンサ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のセンサにおいて、
前記圧電性基板を前記封止基板との間で挟み込むように、該圧電性基板の他方の面側に接合されたプレート基板を備え、
前記プレート基板は、前記封止基板と同一材料で形成され、
前記プレート基板には、前記変位部を露出させる開口部が形成され、該開口部の内側が前記開放部とされていることを特徴とするセンサ。
【請求項5】
請求項4に記載のセンサにおいて、
前記封止基板、前記プレート基板および前記圧電性基板は、同一材料で形成されていることを特徴とするセンサ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のセンサにおいて、
前記キャビティ内は、真空封止されていることを特徴とするセンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
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【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公開番号】特開2012−189330(P2012−189330A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50671(P2011−50671)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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