説明

ゼオライトハニカム成形体及びゼオライトハニカム焼成体

【課題】乾燥収縮によるクラックの発生が有効に抑制されたゼオライトハニカム成形体を提供する。
【解決手段】ゼオライト粒子と、無機結合材と、薄片状の板状粒子からなる充填材と、を含有するゼオライト原料が、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を備えるハニカム形状に押出成形された成形体からなり、隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率が、セルの延びる方向の乾燥収縮率及びセルの延びる方向に垂直な断面の径方向の乾燥収縮率よりも大であり、且つ、厚さ方向の乾燥収縮率が、セルの延びる方向に垂直な断面の径方向の乾燥収縮率の1.2倍以上であるゼオライトハニカム成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライトハニカム成形体及びゼオライトハニカム焼成体に関する。更に詳しくは、乾燥時において、乾燥収縮によるクラックの発生が有効に抑制されたゼオライトハニカム成形体、及び機械的強度に優れたゼオライトハニカム焼成体に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライト(zeolite)は、微細で均一な径の細孔が形成された網目状の結晶構造を有する珪酸塩の一種であり、一般式:W2n・sHO(W:ナトリウム、カリウム、カルシウム等、Z:珪素、アルミニウム等、sは種々の値をとる)で示される種々の化学組成が存在するとともに、結晶構造についても細孔形状の異なる多くの種類(型)が存在することが知られている。これらのゼオライトは、各々の化学組成や結晶構造に基づいた固有の吸着能、触媒性能、固体酸特性、イオン交換能等を有しており、吸着材、触媒、触媒担体、ガス分離膜、或いはイオン交換体といった様々な用途において利用されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
【0003】
例えば、MFI型ゼオライト(「ZSM−5型ゼオライト」とも称される)は、結晶中の酸素10員環によって0.5nm程度の細孔が形成されたゼオライトであり、自動車排ガス中の窒素酸化物(NO)、炭化水素(HC)等を吸着させるための吸着材、或いはキシレン異性体からp−キシレンのみを選択的に分離するためのガス分離膜等の用途において利用されている。また、DDR(Deca−Dodecasil 3R)型ゼオライトは、結晶中の酸素8員環によって0.44×0.36nm程度の細孔が形成されたゼオライトであり、天然ガスやバイオガスから二酸化炭素のみを選択的に分離・除去し、燃料として有用なメタンの純度を向上させるためのガス分離膜等の用途において利用されている。
【0004】
また、自動車用エンジン、建設機械用エンジン、産業用定置エンジン、燃焼機器等から排出される排ガスに含有されるNO等を浄化するためや炭化水素等を吸着するために、コージェライト等からなるハニカム形状のセラミック担体(ハニカム構造体)に、イオン交換処理されたゼオライトが担持された触媒体が使用されている。
【0005】
上記コージェライト等から形成されたセラミック担体にゼオライトを担持させた場合、コージェライト等は、NO浄化、炭化水素の吸着等の作用を示さないため、コージェライト等が存在する分だけ、排ガスが通過するときの圧力損失が増大することになる。
【0006】
これに対し、ハニカム構造体自体を、ゼオライトや、金属イオンによりイオン交換処理されたゼオライトを含む成形原料を成形、焼成して、構造体を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献4〜6を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−296521号公報
【特許文献2】特許第3272446号公報
【特許文献3】特開2009−000657号公報
【特許文献4】特開2008−169104号公報
【特許文献5】特開2007−296514号公報
【特許文献6】国際公開第2009/141878号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このようなゼオライトを含む成形原料を、例えば、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を備えるハニカム形状に押出成形して得られた成形体(以下、ゼオライトハニカム成形体ともいう)は、乾燥時における乾燥収縮が大きく、クラックが発生し易いという問題があった。特に、隔壁のセルの延びる方向、及び隔壁のハニカム形状における端面の径方向の乾燥収縮量が大きく、乾燥時におけるクラックの発生が極めて顕著であった。
【0009】
また、クラックの発生を抑制するために、乾燥収縮を小さくすると、隔壁の厚さ方向に対して成形原料が圧縮されないため、焼成して得られるゼオライトハニカム焼成体の気孔率が大きくなり、このゼオライトハニカム焼成体の機械的強度が低下してしまうという問題もあった。
【0010】
即ち、上述した、セルの延びる方向や端面の径方向の乾燥収縮が大きく、乾燥時にクラックが発生してしまうことと、成形原料が圧縮されずに、隔壁の機械的強度が低下してしまうこととは、二律背反の関係にあり、両者を両立させることは極めて困難であった。
【0011】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、乾燥時において、乾燥収縮によるクラックの発生が有効に抑制されたゼオライトハニカム成形体、及び機械的強度に優れたゼオライトハニカム焼成体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記のような従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、ゼオライトハニカム成形体を押出成形するためのゼオライト原料中に、長径の長さに対して厚さ方向の長さが短い薄片状の板状粒子からなる充填材を含有させ、ゼオライトハニカム成形体の特定の方向における乾燥収縮を抑制することによって、上記課題が解決されることに想到し、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下のゼオライトハニカム成形体及びゼオライトハニカム焼成体が提供される。
【0013】
[1] ゼオライト粒子と、前記ゼオライト粒子同士を結合させる無機結合材と、その長径の長さに対して厚さ方向の長さが短い薄片状の板状粒子からなる充填材と、を含有するゼオライト原料が、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を備えるハニカム形状に押出成形された成形体からなり、前記隔壁は、前記隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率が、前記隔壁のセルの延びる方向の乾燥収縮率及び前記隔壁のハニカム形状におけるセルの延びる方向に垂直な断面の径方向の乾燥収縮率よりも大きくなるように構成されたものであり、且つ、前記隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率が、前記隔壁のハニカム形状におけるセルの延びる方向に垂直な断面の径方向の乾燥収縮率の1.2倍以上であるゼオライトハニカム成形体。
【0014】
[2] 前記充填材を構成する前記板状粒子が、その厚さ方向の長さに対する、長径の長さの比の値(長径/厚さ)が、10以上のものであるとともに、前記板状粒子の平均粒子径が20μm以上であり、且つ前記ゼオライト粒子の平均粒子径の2倍以上であり、前記板状粒子が、前記ゼオライト粒子と前記無機結合材と前記板状粒子との固形分換算の合計100体積%に対して、2.5〜15体積%含有されるとともに、前記無機結合材が、前記ゼオライトハニカム成形体を焼成した焼成体100体積%に対して、10〜50体積%に相当する量含有されてなる前記[1]に記載のゼオライトハニカム成形体。
【0015】
[3] 前記板状粒子が、タルク、マイカ、窒化ホウ素、ベーマイト、グラファイト、及びガラスフレークからなる群より選択される少なくとも一種の材料からなる粒子である前記[1]又は[2]に記載のゼオライトハニカム成形体。
【0016】
[4] 前記ゼオライト粒子の平均粒子径が、0.1〜40μmである前記[1]〜[3]のいずれかに記載のゼオライトハニカム成形体。
【0017】
[5] 前記ゼオライト粒子のうちの少なくとも一部のゼオライト粒子が、ZSM−5型ゼオライト、β型ゼオライト、Y型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、及びフェリエライト型ゼオライトからなる群から選択される少なくとも一種のゼオライトからなる粒子である前記[1]〜[4]のいずれかに記載のゼオライトハニカム成形体。
【0018】
[6] 前記ゼオライト粒子のうちの少なくとも一部のゼオライト粒子が、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、マンガン、コバルト、銀、パラジウム、インジウム、セリウム、ガリウム、チタン、及びバナジウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属のイオンによりイオン交換されたゼオライトからなる粒子である前記[1]〜[5]のいずれかに記載のゼオライトハニカム成形体。
【0019】
[7] 前記無機結合材が、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル、セリアゾル、ベーマイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、塩基性塩化アルミニウム、水硬性アルミナ、シリコン樹脂、及び水ガラスからなる群より選択される少なくとも一種を含むものである前記[1]〜[6]のいずれかに記載のゼオライトハニカム成形体。
【0020】
[8] 前記[1]〜[7]のいずれかに記載のゼオライトハニカム成形体を焼成することによって得られたゼオライトハニカム焼成体。
【0021】
[9] ゼオライト粒子と、前記ゼオライト粒子同士を結合させる無機結合材と、その長径の長さに対して厚さ方向の長さが短い薄片状の板状粒子からなる充填材と、有機バインダと、を混合して、ゼオライト原料を調製する工程と、得られた前記ゼオライト原料をハニカム形状に押出成形してゼオライト成形体を形成する工程と、を備え、前記充填材を構成する前記板状粒子として、その厚さ方向の長さに対する、長径の長さの比の値(長径/厚さ)が、10以上のものであるとともに、前記板状粒子の平均粒子径が20μm以上であり、且つ前記ゼオライト粒子の平均粒子径の2倍以上であるものを用い、前記ゼオライト原料中に、前記板状粒子が、前記ゼオライト粒子と前記無機結合材と前記板状粒子との固形分換算の合計100体積%に対して、2.5〜15体積%含有され、前記無機結合材が、前記ゼオライトハニカム成形体を焼成した焼成体100体積%に対して、10〜50体積%に相当する量含有されてなるゼオライトハニカム成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明のゼオライトハニカム成形体は、ゼオライトハニカム成形体を押出成形するためのゼオライト原料中に、長径の長さに対して厚さ方向の長さが短い薄片状の板状粒子からなる充填材が含有されているため、隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率が、隔壁のセルの延びる方向の乾燥収縮率及び隔壁のハニカム形状におけるセルの延びる方向に垂直な断面の径方向の乾燥収縮率よりも大きくなるように構成されている。更に、隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率が、隔壁のハニカム形状におけるセルの延びる方向に垂直な断面の径方向の乾燥収縮率の1.2倍以上となっている。
【0023】
上記のように、本発明のゼオライトハニカム成形体は、乾燥時における収縮量が相対的に大きな、隔壁のセルの延びる方向及び隔壁のハニカム形状におけるセルの延びる方向に垂直な断面の径方向の乾燥収縮量が小さくなっているため、乾燥時において、乾燥収縮によるクラックの発生が有効に抑制されている。一方、隔壁の厚さ方向の乾燥収縮は、上記の方向に比較して大きく、乾燥時において収縮することにより、隔壁の気孔率が低下し、成形体を焼成して得られる焼成体の機械的強度を向上させることができる。
【0024】
また、本発明のゼオライトハニカム焼成体は、上述した本発明のゼオライトハニカム成形体を焼成することによって得られた焼成体であり、隔壁のセルの延びる方向及び隔壁のハニカム形状におけるセルの延びる方向に垂直な断面の径方向の乾燥収縮によるクラックの発生が抑制され、且つ、隔壁の厚さ方向については、適度な乾燥収縮によって気孔率が低下し、機械的強度に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のゼオライトハニカム成形体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1Aの領域Aで示す部分を、部分的に拡大した拡大図である。
【図3】本発明のゼオライトハニカム焼成体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0027】
(1)ゼオライトハニカム成形体:
本発明のゼオライトハニカム成形体の一の実施形態は、図1に示すように、複数のゼオライト粒子と、ゼオライト粒子同士を結合させる無機結合材と、その長径の長さに対して厚さ方向の長さが短い薄片状の板状粒子からなる充填材と、を含有するゼオライト原料が、流体の流路となる一方の端面11から他方の端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する隔壁1を備えるハニカム形状に押出形成された成形体(ゼオライトハニカム成形体100)からなるものである。
【0028】
そして、図2に示すように、本実施形態のゼオライトハニカム成形体100の隔壁1は、隔壁1の厚さ方向Xの乾燥収縮率が、隔壁1のセル2の延びる方向Zの乾燥収縮率及び隔壁1のハニカム形状におけるセルの延びる方向に垂直な断面(以下、単に「ハニカム形状における断面」ということがある)の径方向Yの乾燥収縮率よりも大きくなるように構成されたものであり、且つ、隔壁1の厚さ方向Xの乾燥収縮率が、隔壁1のハニカム形状における断面の径方向Yの乾燥収縮率の1.2倍以上である。ここで、図1は、本発明のゼオライトハニカム成形体の一の実施形態を模式的に示す斜視図であり、図2は、図1Aの領域Aで示す部分を、部分的に拡大した拡大図である。
【0029】
このように、本実施形態のゼオライトハニカム成形体100は、ゼオライトハニカム成形体を押出成形するためのゼオライト原料中に、長径の長さに対して厚さ方向の長さが短い薄片状の板状粒子からなる充填材が含有されており、押出成形時において、薄片状の板状粒子が、押出方向(即ち、セルの延びる方向)に対して、板状粒子の表面(具体的には、長径を含む面)が平行に配列するように配向した状態で、ゼオライト粒子及び無機結合材とともに押し出され、成形体(具体的には、隔壁)を形成している。このため、本実施形態のゼオライトハニカム成形体100は、ゼオライトハニカム成形体の特定の方向における乾燥収縮を抑制することが可能となる。即ち、乾燥収縮の異方性制御を行うことができる。
【0030】
より具体的には、薄片状の板状粒子は、無機材料等によって形成された粒子であるため、板状粒子自体は、乾燥収縮しない、或いは、乾燥収縮したとしても極めて小さいものである。そして、この板状粒子は、その長径の長さに対して厚さ方向の長さが短い薄片状のものであることから、ゼオライト原料の押出成形時において、押出方向に対して、板状粒子の表面が平行に、換言すれば、隔壁1のセル2の延びる方向Z(以下、この方向を、単に「セルの延びる方向Z」ということがある)、及び隔壁1のハニカム形状における断面の径方向Y(以下、この方向を、単に「径方向Y」ということがある)に沿って、板状粒子の長辺が配列するように、配向する。
【0031】
このため、セルの延びる方向Z及び径方向Yに対して、単位長さあたりに占める板状粒子の比率が増大し、上記セルの延びる方向Z及び径方向Yにおける乾燥収縮率が小さくなる。一方、隔壁1の厚さ方向X(以下、この方向を、単に「厚さ方向X」ということがある)においては、板状粒子の厚さの薄い部分が配列するため、単位長さあたりに占める板状粒子の比率が低くなり、相対的に乾燥収縮率が大きくなる。即ち、板状粒子を除くゼオライト原料の乾燥収縮率に近くなる。
【0032】
隔壁は、セルを区画形成する格子状の壁が、セルの延びる方向Z及び径方向Yに延在したものであり、隔壁1の厚さ方向Xにおける長さに比して、隔壁1のセル2の延びる方向Zにおける長さ(即ち、セル2の延びる方向に連続する隔壁の長さ)、及び隔壁1のハニカム形状における断面の径方向Yにおける長さ(即ち、ゼオライトハニカム成形体の外周側の一の部位から他の部位に渡って連続する隔壁の長さ、例えば、上記断面の直径に相当する長さ)は極めて長いものであり、従来のゼオライトハニカム成形体においては、セルの延びる方向Z及び径方向Yにおける乾燥収縮により、クラックが顕著に発生するということが問題となっていた。
【0033】
本実施形態のゼオライトハニカム成形体においては、上述した顕著にクラックが発生する「セルの延びる方向Z及び径方向Y」に対して、乾燥収縮を抑制(異方性制御)し、クラックの発生を良好に防止することができるとともに、一方で、乾燥収縮によるクラックの発生が生じ難い「隔壁の厚さ方向X」に関しては、乾燥収縮の抑制を少なくして、隔壁の気孔率を低下させ、焼成して得られる焼成体の機械的強度を向上させることが可能となる。
【0034】
なお、本実施形態において、「隔壁のセルの延びる方向Z」と、「隔壁の厚さ方向X」と、「隔壁のハニカム形状における断面の径方向Y」とは、図2に示すように、それぞれの方向が直交する。即ち、図2においては、ゼオライトハニカム成形体100の一方の端面11において、紙面の上下方向に延在する隔壁について、紙面の左右方向を「隔壁の厚さ方向X」とし、隔壁が上下方向に延在する方向を「隔壁のハニカム形状における断面の径方向Y」とし、一方の端面11に直交する方向(ゼオライト原料を押し出す方向)を「隔壁のセルの延びる方向Z」としている。
【0035】
なお、「隔壁の厚さ方向X」と、「隔壁のハニカム形状における断面の径方向Y」とを規定する場合には、隣接するセルを区画する隔壁の厚さ方向を、「隔壁の厚さ方向X」と規定し、この「隔壁の厚さ方向X」に対して、隔壁のハニカム形状におけるセルの延びる方向に垂直な断面において直交する方向を、「隔壁のハニカム形状における断面の径方向Y」と規定することが好ましい。例えば、図2において、紙面の左右方向に延在する隔壁(即ち、上述した「上下方向に延在する隔壁」と90°で交差する隔壁)については、紙面の上下方向が「隔壁の厚さ方向X」となり、紙面の左右方向が「隔壁のハニカム形状における断面の径方向Y」となる。これにより、例えば、セルの断面形状が、四角形以外の多角形形状であっても、各方向を明確に規定することができる。
【0036】
また、本発明において、「乾燥収縮率」とは、ゼオライトハニカム成形体を乾燥した後の寸法(長さ)に対する、乾燥によって収縮した寸法(長さ)の比の値のことである。具体的には、乾燥前のゼオライトハニカム成形体の寸法を「成形体寸法A」とし、乾燥後のゼオライトハニカム成形体の寸法を「乾燥体寸法B」とした場合、乾燥収縮率は、下記式(1)で表すことができる。
乾燥収縮率={(成形体寸法A−乾燥体寸法B)/成形体寸法A}×100 ・・・ (1)
【0037】
なお、例えば、「隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率」は、ゼオライトハニカム成形体の隔壁の厚さを、光学顕微鏡等にて測定し、更に、ゼオライトハニカム成形体を乾燥した後に、再度、隔壁の厚さ(乾燥体における隔壁の厚さ)を測定し、上記(1)によって算出することができる。
【0038】
また、「隔壁のセルの延びる方向の乾燥収縮率」は、ゼオライトハニカム成形体のセルの延びる方向(即ち、押出方向)における長さをノギス等によって測定し、更に、ゼオライトハニカム成形体を乾燥した後に、乾燥体のセルの延びる方向の長さを測定し、上記(1)によって算出することができる。
【0039】
更に、「隔壁のハニカム形状における断面の径方向の乾燥収縮率」は、ゼオライトハニカム成形体の外径の長さをノギス等によって測定し、更に、ゼオライトハニカム成形体を乾燥した後に、乾燥体の外径の長さを測定し、上記(1)によって算出することができる。
【0040】
また、「板状粒子」とは、その長径の長さに対して厚さ方向の長さが短い薄片状の粒子のことを意味する。なお、「薄片状」とは、比較的平らな面が2つ以上あり、その平らな面の2つがほぼ平行であり、2次元的な広がりをもっていて、そのほぼ平行な面の間の距離(厚さ方向の長さ)が、その面の長径の長さと比較して小さい形状のことを意味する。即ち、薄片状の板状粒子には、一軸方向に長さが長い棒状の粒子(換言すれば、平らな面を有しない棒状の粒子)は、上記薄片状の板状粒子には含まれないものとする。
【0041】
また、板状粒子の「長径の長さ」とは、板状粒子において、最も径の長い部分の長さを意味する。一方、板状粒子の「厚さ方向の長さ」とは、長径の長さに直交する方向において、最も長さの短い部分の長さを意味する。なお、「板状粒子の長径の長さ」を単に「板状粒子の長径」ということがあり、また、「板状粒子の厚さ方向の長さ」を単に「板状粒子の厚さ」ということがある。
【0042】
(1−1)ゼオライト粒子:
ゼオライト粒子は、本実施形態のゼオライトハニカム成形体を焼成した際に骨材となるものである。
【0043】
本実施形態のゼオライトハニカム成形体に用いられるゼオライト粒子については特に制限はなく、従来公知のゼオライトからなる粒子を用いることができる。ゼオライトの種類等については特に制限はなく、例えば、ゼオライト粒子としては、ZSM−5型ゼオライト、β型ゼオライト、Y型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、及びフェリエライト型ゼオライトからなる群から選択される少なくとも一種のゼオライトからなる粒子を用いることができる。これらの中でも、良好な浄化性能ならびに良好な吸着性能を有することから、ZSM−5型ゼオライト、及びβ型ゼオライトが好ましい。ゼオライト粒子は、上記したゼオライトのうち、一種類のゼオライトからなる粒子であってもよいし、複数種類のゼオライトの粒子の混合物であってもよい。
【0044】
このようなゼオライト粒子の大きさについても特に制限はないが、例えば、平均粒子径が、40μm以下であることが好ましく、0.1〜40μmであることが更に好ましく、0.7〜20μmであることが特に好ましい。ゼオライト粒子の平均粒子径が40μm超であると、焼成して得られるゼオライトハニカム焼成体の強度が低下することがある。また、押出成形時に目詰まりが起こりやすくなり、成形性が悪くなることがある。なお、平均粒子径が0.1μm未満であると、耐熱性が低下することがある。
【0045】
なお、ゼオライト粒子の平均粒子径は、後述する無機結合材の体積比率の算出に用いられるSEM写真から、画像解析ソフト(例えば、MEDIA CYBERNETICS社製の「Image−Pro Plus(商品名)」)を用いて粒子径を測定し、そのゼオライト粒子の粒度分布を求めることによって得ることができる。なお、上記画像解析ソフトによる粒子径の測定においては、各粒子が円であった場合の直径を、その粒子の粒子径として測定することができる。また、各ゼオライト粒子の粒子径を測定する際には、少なくとも10視野(即ち、上記SEM写真10枚分)における平均値とする。
【0046】
また、原料段階(即ち、製造段階)で使用するゼオライト粒子の平均粒子径が測定可能な場合には、この原料段階にてゼオライト粒子の平均粒子径を測定することもできる。このような方法によってゼオライト粒子の平均粒子径を求めることにより、極めて簡便に平均粒子径を得ることができる。本実施形態におけるゼオライト粒子の「平均粒子径」とは、ゼオライト粉末を構成する固体の粒子(ゼオライト粒子)の粒子径の分布におけるメジアン径(d50)のことである。なお、平均粒子径は、JIS R1629に準拠して、レーザー回折散乱法にて測定した値である。なお、ゼオライト粒子の平均粒子径は、例えば、堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置:「LA−920(商品名)」によって測定することができる。
【0047】
また、本実施形態のゼオライトハニカム成形体は、金属イオンによりイオン交換されたゼオライト(ゼオライト粒子)により形成されたものであることが好ましい。このような金属イオンによりイオン交換されたゼオライトは、触媒機能に優れており、例えば、排ガス中の窒素酸化物(NO)の処理等を良好に行うことができる。
【0048】
具体的には、複数のゼオライト粒子のうちの少なくとも一部のゼオライト粒子が、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、マンガン、コバルト、銀、パラジウム、インジウム、セリウム、ガリウム、チタン、及びバナジウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属のイオンによりイオン交換されたゼオライトからなる粒子であることが好ましい。例えば、鉄イオンや銅イオンによりイオン交換することによって、良好なNO浄化性能となり、また、銅イオンや銀イオンによりイオン交換することによって、良好な炭化水素吸着能を発現させることができる。
【0049】
なお、特に限定されることはないが、金属イオンでのイオン交換量(M+/Alイオンモル比)は、0.3〜2.0であることが好ましく、0.7〜1.5であることが更に好ましく、0.9〜1.2であることが特に好ましい。なお、イオン交換量は、例えば、セイコーインスツル製の誘導結合プラズマ質量分析装置:「SPQ9000(商品名)」によって測定することができる。なお、上述したイオン交換量は、ゼオライト中のアルミニウムイオン(Alイオン)に対する、金属イオンの価数(M+)のモル比(「M+/Alイオン」)のことである。なお、イオン交換量が少ない(例えば、0.3未満である)と触媒性能が低くなり、一方、イオン交換量が多過ぎる(例えば、2.0超である)と、触媒性能が飽和して、イオン交換による効果が発現し難くなることがある。なお、イオン交換量としては、交換後のゼオライト粒子の質量に対する、金属イオンの質量の割合(質量%)として示すこともできる。
【0050】
(1−2)無機結合材:
無機結合材は、これまでに説明したゼオライト粒子及び薄片状の板状粒子からなる充填材を結合させるための結合材である。
【0051】
このような無機結合材としては、例えば、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル、セリアゾル、ベーマイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、塩基性塩化アルミニウム、水硬性アルミナ、シリコン樹脂、及び水ガラスからなる群より選択される少なくとも一種を含む無機結合材を好適に用いることができる。
【0052】
また、ゼオライトハニカム成形体を焼成した焼成体(即ち、ゼオライトハニカム焼成体)100体積%に対する、無機結合材の体積比率は、10〜50体積%であることが好ましく、10〜30体積%であることが更に好ましく、15〜25体積%であることが特に好ましい。無機結合材の体積比率が、10体積%未満であると、結合材が少なすぎて、ゼオライト粒子及び充填材を良好に結合させることが困難となる。一方、無機結合材の体積比率が、50体積%超であると、無機結合材が多すぎて、相対的なゼオライト粒子の割合が低下し、例えば、NO等を浄化するため浄化性能や、炭化水素等を吸着する吸着性能等のゼオライトの機能性が低下してしまう。
【0053】
なお、ゼオライトハニカム焼成体の体積(真体積)「V」は、下記式(2)によって求められる値である。
【0054】
V=V+VPZ+VB2 ・・・ (2)
V:ゼオライトハニカム焼成体の体積(真体積)
:ゼオライト粒子の体積
PZ:(焼成後の)充填材の体積(板状粒子の体積)
B2:(焼成後の)無機結合材の体積
【0055】
ゼオライト粒子の体積V、(焼成後の)充填材の体積VPZ、及び(焼成後の)無機結合材の体積VB2は、例えば、上記ゼオライトハニカム焼成体を所定の箇所にて切断し、その断面の微構造写真から算出することができる。より具体的な上記体積の算出方法としては、例えば、まず、ゼオライトハニカム焼成体を切断し、その切断を研磨する。次に、研磨した切断面を、走査型電子顕微鏡等によって撮像する。なお、断面の微構造を撮像する際には、1視野内に、ゼオライト粒子が10〜30個含まれる視野とすることが好ましい。
【0056】
得られた走査型電子顕微鏡写真(以下、「SEM写真」ということがある)を、画像解析ソフト(例えば、MEDIA CYBERNETICS社製の「Image−Pro Plus(商品名)」)を使用して、ゼオライト粒子と充填材と無機結合材とを分類し、ゼオライト粒子の粒子径或いは占有面積、充填材の占有面積、及び無機結合材の占有面積を測定する。これらの測定の際には、少なくとも10視野(即ち、上記SEM写真10枚分)における平均値とする。
【0057】
更に、測定された値から、ゼオライト粒子の体積Vと、(焼成後の)充填材の体積VPZと、(焼成後の)無機結合材の体積VB2とを算出する。このため、本明細書において、「ゼオライト粒子の体積」とは、各ゼオライト粒子の体積の合計値、即ち、ゼオライト粒子の相互の隙間(空隙)を含まない体積のことを意味する。
【0058】
また、原料段階(即ち、製造段階)で使用するゼオライト粒子の質量、充填材の質量、及び無機結合材の質量が予め判明している場合、或いは、製造段階において各原料成分の体積が測定可能な場合には、原料段階において無機結合材の体積比率を算出してもよい。このような方法によって無機結合材の体積比率を求めることにより、極めて簡便に無機結合材の体積比率を得ることができる。以下、原料段階において無機結合材の体積比率を算出する方法について説明する。
【0059】
上記式(2)中の「V:ゼオライト粒子の体積」は、下記式(3)によって求めることができる。
【0060】
=M/D ・・・ (3)
:ゼオライト粒子の体積
:ゼオライト粒子の質量
:ゼオライトの密度(1.85g/cm
【0061】
上記式(2)中の「VPZ:(焼成後の)充填材の体積(板状粒子の体積)」は、下記式(4)によって求めることができる。なお、下記式(4)中、「MPZ:焼成後の充填材の質量(焼成後の板状粒子の質量)」は、下記式(5)によって求めた値であり、下記式(4)中の「DPZ:焼成後の充填材の密度(焼成後の板状粒子の密度)」及び下記式(5)中の「m:充填材の焼成前後での質量変化率」は、予め、充填材(板状粒子)のみを用いて焼成することによって求めておいた値である。
【0062】
PZ=MPZ/DPZ ・・・ (4)
PZ:焼成後の充填材の体積(焼成後の板状粒子の体積)
PZ:焼成後の充填材の質量(焼成後の板状粒子の質量)
PZ:焼成後の充填材の密度(焼成後の板状粒子の密度)
【0063】
P2=MP1×m ・・・ (5)
P2:焼成後の充填材の質量(焼成後の板状粒子の質量)
P1:焼成前の充填材の質量(焼成前の板状粒子の質量)
:充填材の焼成前後での質量変化率
【0064】
また、上記式(2)中の「VB2:(焼成後の)無機結合材の体積」は、下記式(6)によって求めることができる。なお、下記式(6)中、「MB2:焼成後の無機結合材の質量」は、下記式(7)によって求めた値であり、下記式(6)中の「DB2:焼成後の無機結合材の密度」及び下記式(7)中の「m:無機結合材の焼成前後での質量変化率」は、予め、無機結合材のみを用いて焼成することによって求めておいた値である。
【0065】
B2=MB2/DB2 ・・・ (6)
B2:焼成後の無機結合材の体積
B2:焼成後の無機結合材の質量
B2:焼成後の無機結合材の密度
【0066】
B2=MB1×m ・・・ (7)
B2:焼成後の無機結合材の質量
B1:焼成前の無機結合材の質量
:無機結合材の焼成前後での質量変化率
【0067】
(1−3)板状粒子(充填材):
板状粒子は、ゼオライト原料に含有される充填材であり、その長径の長さに対して厚さ方向の長さが短い薄片状のものである。このような薄片状の板状粒子からなる充填材を含有させることにより、特定の方向における乾燥収縮を良好に抑制し、乾燥クラックの発生を防止することができる。
【0068】
このような板状粒子としては、タルク、マイカ、窒化ホウ素、ベーマイト、グラファイト、及びガラスフレークからなる群より選択される少なくとも一種の材料からなる粒子であることが好ましい。このような粒子を用いることによって、特定の方向における乾燥収縮を良好に抑制することができる。
【0069】
板状粒子は、上述したベーマイトやタルクのような層状の鉱物を粉砕することによって形成された薄片状の粒子であってもよいし、ガラスフレークのように、薄片状に人工的に形成された粒子であってもよい。
【0070】
このような板状粒子は、その厚さ方向の長さに対する、長径の長さの比の値(長径/厚さ)が、10以上のものであるとともに、板状粒子の平均粒子径が、20〜300μmであることが好ましい。なお、厚さ方向の長さに対する、長径の長さの比の値(以下、「板状粒子のアスペクト比」ということがある)が10未満であると、板状粒子の配向が悪くなり、乾燥収縮の異方性制御が困難になることがある。即ち、隔壁の厚さ方向Xの乾燥収縮と、隔壁のセルの延びる方向Z及び径方向Yの乾燥収縮との差が小さくなり、クラックの発生防止と、焼成体の強度向上を両立させることが困難になることがある。また、板状粒子の平均粒子径が、20μm未満であると、板状粒子が小さすぎ、押出成形時に板状粒子の配向が悪くなり、乾燥収縮の異方性制御が行われず、乾燥クラックを防止する効果が低下することがあり、300μm超であると、押出成形時に、成形用の口金に詰まることがあり、成形性が低下することがある。
【0071】
なお、板状粒子のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡にて測定することができる。具体的には、板状粒子の長径の長さ(最も径の長い部分の長さ)と、厚さ方向の長さ(長径の長さに直交する方向において、最も長さの短い部分の長さ)とを測定し、測定された「長径の長さ」を「厚さ方向の長さ」で除した値を算出して得ることができる。なお、この板状粒子のアスペクト比の算出に際しては、10個以上の板状粒子を無作為に選択し、それぞれ測定されたアスペクト比の平均値とする。
【0072】
板状粒子の平均粒子径は、板状粒子からなる粉末の粒子径分布におけるメジアン径(d50)のことである。なお、平均粒子径は、JIS R1629に準拠して、レーザー回折散乱法にて測定した値である。なお、板状粒子の平均粒子径は、例えば、堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置:「LA−920(商品名)」によって測定することができる。
【0073】
なお、板状粒子の厚さ方向の長さに対する、長径の長さの比の値は、40〜150であることが更に好ましく、60〜100であることが特に好ましい。このように構成することによって、隔壁のセルの延びる方向Z及び径方向Yの乾燥収縮を良好に抑制することができるとともに、隔壁の厚さ方向Xに関しては、乾燥収縮の抑制を少なくして、隔壁の気孔率を低下させ、焼成して得られる焼成体の機械的強度を向上させることが可能となる。
【0074】
また、板状粒子の平均粒子径は、30〜150μmであることが更に好ましく、50〜100μmであることが特に好ましい。このような平均粒子径の板状粒子を用いることによって、押出成形を良好に行うことができるとともに、乾燥時におけるクラックの発生をより良好に防止することができる。
【0075】
また、特に限定されることではないが、板状粒子は、ゼオライト粒子と無機結合材と板状粒子との固形分換算の合計100体積%に対して、2.5〜15体積%含有されていることが好ましく、3〜10体積%含有されていることが更に好ましく、4〜7体積%含有されていることが特に好ましい。板状粒子の体積比率が、2.5体積%未満であると、板状粒子が少なすぎて、乾燥収縮の異方性制御を行うことが困難になることがあり、一方、15体積%を超えると、相対的なゼオライト粒子の割合が低下し、例えば、NO等を浄化するための浄化性能や、炭化水素等を吸着する吸着性能等のゼオライトの機能性が低下してしまうことがある。
【0076】
なお、上記「固形分換算」とは、常温(20℃)で液体として存在する成分を除いた残留分を意味する。ゼオライト粒子と無機結合材と板状粒子とのそれぞれの「固形分換算の体積」は、それぞれの「固形分換算の質量」、及びそれぞれの「固形分の密度」によって算出することができる。上記「固形分換算の質量」は、例えば、無機結合材が水溶液等の溶液の場合に、溶液中に含まれる無機結合材の固形分に相当する質量である。固形分換算の質量は、大気中において、120℃の温度で24時間乾燥させた際の乾燥体(固形分)の質量とする。
【0077】
(1−4)ゼオライト原料:
ゼオライト原料(ゼオライト材料ともいう)は、本実施形態のゼオライトハニカム成形体を形成するための成形用の原料であり、これまでに説明した、ゼオライト原料と、無機結合材と、充填材としての板状粒子と、を含有するものである。
【0078】
なお、ゼオライト原料中には、水が含有されていることが好ましい。ゼオライト原料中の水の含有比は、ゼオライト粒子100質量%に対して、30〜70質量%に相当する量であることが好ましい。
【0079】
また、ゼオライト原料中には、有機バインダや分散剤等を更に含有させてもよい。有機バインダとしては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。また、分散剤としては、例えば、脂肪酸、アクリル酸、ソルビタン酸、デキストリン、ポリアルコール等を挙げることができる。
【0080】
(1−5)ゼオライトハニカム成形体の構成:
本実施形態のゼオライトハニカム成形体は、これまでに説明したゼオライト粒子と無機結合材と充填材としての板状粒子とを少なくとも含有するゼオライト原料を、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を備えるハニカム形状に押出成形して形成された成形体である。
【0081】
ゼオライト原料中の板状粒子は、押出成形の際に、押出方向(隔壁のセルの延びる方向)或いは隔壁の延在方向(即ち、隔壁のハニカム形状における断面の径方向)に対して、板状粒子の長手方向(長径の方向)が平行となるように押し出されるため、隔壁の厚さ方向Xの乾燥収縮率が、隔壁のセルの延びる方向Zの乾燥収縮率及び隔壁のハニカム形状における断面の径方向Yの乾燥収縮率よりも大きくなり、且つ、隔壁の厚さ方向Xの乾燥収縮率は、隔壁のハニカム形状における断面の径方向Yの乾燥収縮率の1.2倍以上となるように構成されている。
【0082】
このようなゼオライトハニカム成形体を焼成することによって、ハニカム形状の構造体(ゼオライトハニカム焼成体)を形成することができ、自動車用エンジン、建設機械用エンジン、産業用定置エンジン、燃焼機器等から排出される排ガスに含有されるNO等を浄化するためや炭化水素等を吸着するためのハニカム構造体を、ゼオライトによって形成することが可能となる。即ち、従来使用されていた、コージェライト等のセラミック担体を用いる必要がないため、セラミック担体を用いた場合と比較して圧力損失を極めて低いものとすることができる。
【0083】
図1に示すようなゼオライトハニカム成形体100の形状については特に制限はないが、セル2の延びる方向に直交する断面における面積が、300〜200000mmであることが好ましい。300mmより小さいと、排ガスを処理することができる面積が小さくなることがあるのに加えて、圧力損失が高くなる。200000mmより大きいと、ゼオライトハニカム焼成体の強度が低下することがある。
【0084】
また、本実施形態のゼオライトハニカム成形体100は、図1に示すように、隔壁1全体の外周を取り囲むように配設された外周壁4を備えることが好ましい。外周壁の材質は、必ずしも隔壁と同じ材質である必要はないが、外周部の材質が耐熱性や熱膨張係数等の物性の観点で大きく異なると隔壁の破損等の問題が生じる場合があるので、主として同じ材質を含むか、同等の物性を有する材料を主として含有することが好ましい。外周壁は、押出成形により、隔壁と一体的に形成されたものであっても、成形後に外周部を所望形状に加工し、外周部にコーティングするものであってもよい。即ち、外周壁は、ゼオライトハニカム成形体が焼成されたゼオライトハニカム焼成体に、後から配設されたものであってもよい。
【0085】
ゼオライトハニカム成形体における、セルの形状(即ち、セルが延びる方向に直交する断面におけるセルの形状)としては、特に制限はなく、例えば、三角形、四角形、六角形、八角形、或いはこれらの組合せを挙げることができる。特に、本実施形態のゼオライトハニカム成形体においては、四角形であることが好ましい。
【0086】
ゼオライトハニカム成形体における、隔壁の厚さは、50μm〜2mmであることが好ましく、100μm〜1mmであることが更に好ましい。50μmより薄いと、ゼオライトハニカム焼成体の強度が低下することがある。2mmより厚いと、ゼオライトハニカム焼成体にガスが流通するときの圧力損失が大きくなることがある。なお、隔壁の厚さは、乾燥により、2〜20%程度収縮する。このため、ゼオライトハニカム成形体の隔壁の厚さは、乾燥し、更に焼成した後のゼオライトハニカム焼成体に必要とされる隔壁厚さと、乾燥収縮量とを考慮して、適宜好ましい厚さを決定することができる。
【0087】
また、ゼオライトハニカム成形体のセル密度は、特に制限されないが、7.8〜155.0セル/cmであることが好ましく、31.0〜93.0セル/cmであることが更に好ましい。155.0セル/cmより大きいと、ゼオライトハニカム焼成体にガスが流通するときの圧力損失が大きくなることがある。7.8セル/cmより小さいと、排ガス浄化処理を行う面積が小さくなることがある。
【0088】
ゼオライトハニカム成形体の全体の形状は特に限定されず、例えば、円筒形状、オーバル形状等、所望の形状とすることができる。特に、ゼオライトハニカム成形体を焼成した後に、焼成体の外周を研削加工することも可能であるため、上述した以外の不定形であってもよい。また、ゼオライトハニカム成形体の大きさは、例えば、円筒形状の場合、底面の直径が20〜500mmであることが好ましく、70〜300mmであることが更に好ましい。また、ゼオライトハニカム成形体のセルの延びる方向(即ち、押出方向)の長さは、10〜500mmであることが好ましく、30〜300mmであることが更に好ましい。
【0089】
隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率は、10〜50%であることが好ましく、12〜20%であることが更に好ましく、13〜16%であることが特に好ましい。隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率が、10%未満であると、ゼオライトハニカム焼成体の機械的強度が低下することがあり、一方、乾燥収縮率の実質的な最大値は50%であり、例えば、乾燥収縮率が50%を超えるようなゼオライト原料を用いたとすると、原料に添加される水の量が極めて多くなり、押出成形時において、ゼオライト原料の保形性が悪く(換言すれば、ゼオライト原料が柔らかくなりすぎて)、ハニカム形状を保持することが困難となり、良好なゼオライトハニカム成形体を得ることができなくなることがある。
【0090】
また、隔壁のセルの延びる方向の乾燥収縮率は、10.5%以下であることが好ましく、1〜10%であることが更に好ましく、1〜8%であることが特に好ましい。隔壁のセルの延びる方向の乾燥収縮率が、10.5%を超えると、乾燥収縮量が大きく、乾燥時にクラックが発生し易くなる。なお、隔壁のセルの延びる方向の乾燥収縮率は小さい方が好ましいが、実現可能な乾燥収縮率の下限値が、上述した1%である。
【0091】
また、隔壁のハニカム形状における断面の径方向の乾燥収縮率は、10.5%以下であることが好ましく、1〜10%であることが更に好ましく、1〜8%であることが特に好ましい。隔壁のハニカム形状における断面の径方向の乾燥収縮率が、10.5%を超えると、乾燥収縮量が大きく、乾燥時にクラックが発生し易くなる。なお、隔壁のハニカム形状における断面の径方向の乾燥収縮率は小さい方が好ましいが、実現可能な乾燥収縮率の下限値が、上述した1%である。
【0092】
また、隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率は、隔壁のハニカム形状における断面の径方向の乾燥収縮率の1.2倍以上であるが、1.2〜50倍であることが好ましく、1.5〜7倍であることが更に好ましく、2〜4.5倍であることが特に好ましい。なお、隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率が、径方向の乾燥収縮率の50倍を超えると、相対的に隔壁の厚さ方向の乾燥収縮量が過大になり過ぎてしまうことがある。
【0093】
(2)ゼオライトハニカム成形体の製造方法:
次に、本発明のゼオライトハニカム成形体の製造方法について説明する。
【0094】
本実施形態のゼオライトハニカム成形体の製造方法としては、ゼオライト粒子と、無機結合材と、その長径の長さに対して厚さ方向の長さが短い薄片状の板状粒子からなる充填材と、有機バインダと、を混合して、ゼオライト原料を調製する工程(以下、「ゼオライト原料調製工程」ということがある)と、得られたゼオライト原料を押出成形してゼオライト成形体を形成する工程(以下、「押出成形工程」ということがある)と、を備えた製造方法を挙げることができる。
【0095】
(2−1)ゼオライト原料調製工程:
まず、ゼオライト粒子と、その長径の長さに対して厚さ方向の長さが短い薄片状の板状粒子からなる充填材と、ゼオライト粒子及び板状粒子からなる充填材を結合させる無機結合材と、を混合して、ゼオライト原料を調製する。この際、板状粒子として、その厚さ方向の長さに対する、長径の長さの比の値(長径/厚さ)が、10以上であるとともに、平均粒子径が20〜200μmである板状粒子を用いることが好ましい。このような板状粒子としては、本実施形態のゼオライトハニカム成形体において、板状粒子の好適例として挙げた、好ましいアスペクト比、及び好ましい平均粒子径の板状粒子を好適に用いることができる。このような板状粒子を用いることによって、乾燥収縮の異方性制御を良好に行うことができる。
【0096】
また、板状粒子は、ゼオライト粒子の平均粒子径が、40μm以下であることが好ましく、0.1〜40μmであることが更に好ましく、0.7〜20μmであることが特に好ましい。ゼオライト粒子の平均粒子径が40μm超であると、焼成して得られるゼオライトハニカム焼成体の強度が低下することや押出成形時に目詰まりを起こし良好な成形体が得られないことがある。また、板状粒子は、ゼオライト粒子と無機結合材と板状粒子との固形分換算の合計100体積%に対して、2.5〜15体積%添加することが好ましく、3〜10体積%添加することが更に好ましく、4〜7体積%添加することが特に好ましい。上記範囲とすることによって、隔壁の乾燥収縮を良好に制御することができる。
【0097】
なお、乾燥収縮の異方性は、上述した板状粒子のアスペクト比、平均粒子径、及びこの板状粒子の添加量によって制御することができ、板状粒子の形状(アスペクト比、及び平均粒子径)と添加量を調整して、所望の乾燥収縮率の隔壁(還元すれば、ゼオライトハニカム成形体)を、押出成形によって形成することができる。即ち、本実施形態のゼオライトハニカム成形体は、隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率が、隔壁のセルの延びる方向の乾燥収縮率及び隔壁のハニカム形状における断面の径方向の乾燥収縮率よりも大であり、且つ、隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率が、隔壁のハニカム形状における断面の径方向の乾燥収縮率の1.2倍以上であることが必要であるため、このような条件を満たすように、上述した板状粒子のアスペクト比、平均粒子径、及びこの板状粒子の添加量を調整することが好ましい。
【0098】
また、板状粒子による乾燥収縮の制御(異方性制御)は、使用するゼオライト粒子の平均粒子径によっても、影響を受けることが考えられる。例えば、ゼオライト粒子の平均粒子径が、板状粒子の平均粒子径に比して大きすぎる場合(例えば、板状粒子の平均粒子径に対して、1/2倍以上である場合)には、板状粒子の配向性が悪くなり、板状粒子を加えたことによる異方性制御の効果が減少し、各方向における乾燥収縮率の差が小さくなり、隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率を、隔壁のハニカム形状における断面の径方向の乾燥収縮率の1.2倍以上とすることが困難になることがある。このような場合には、焼成して得られるゼオライトハニカム焼成体の強度低下や、乾燥時にクラックが発生するといった問題が生じる。
【0099】
このようなことから、ゼオライト原料を調製する際には、ゼオライト粒子として、平均粒子径が40μm以下の粒子を用い、且つ、板状粒子としては、アスペクト比が10以上であるとともに、平均粒子径が20〜300μmである板状の粒子を用いることが特に好ましい。
【0100】
なお、ゼオライト粒子及び無機結合材については、本実施形態のゼオライトハニカム成形体の説明したゼオライト粒子及び無機結合材を好適に用いることができる。また、ゼオライト原料を調製する際には、分散媒としての水を加えることが好ましく、また、分散剤等を更に添加してもよい。
【0101】
また、ゼオライト粒子は、金属イオンによるイオン交換処理を行ったものであってもよい。このようなゼオライト粒子を用いることによって、触媒機能に優れたゼオライトハニカム焼成体を簡便に製造することができる。なお、ゼオライトをイオン交換する際には、例えば、ゼオライトハニカム成形体を焼成した後の、ゼオライトハニカム焼成体に対してイオン交換処理を行うことも可能である。
【0102】
なお、ゼオライト粒子或いはゼオライトハニカム焼成体に対して、金属イオンでイオン交換する処理を施す方法としては、以下の方法を挙げることができる。
【0103】
イオン交換する金属イオンを含有するイオン交換用溶液(金属イオン含有溶液)を調製する。例えば、銀イオンでイオン交換する場合には、硝酸銀、又は酢酸銀の水溶液を調製する。また、銅イオンでイオン交換する場合には、酢酸銅、硫酸銅、又は硝酸銅の水溶液を調製する。また、鉄イオンでイオン交換する場合には、硫酸鉄、又は酢酸鉄の水溶液を調製する。イオン交換用溶液の濃度は、0.005〜0.5(モル/リットル)が好ましい。そして、イオン交換用溶液に、ゼオライト粒子を浸漬する。浸漬時間は、イオン交換させたい金属イオンの量等によって適宜決定することができる。そして、ゼオライト粒子をイオン交換用溶液から取り出し、乾燥及び仮焼を行うことによりイオン交換されたゼオライト粒子を得ることができる。乾燥条件は、80〜150℃で、1〜10時間が好ましい。仮焼の条件は、400〜600℃で、1〜10時間が好ましい。
【0104】
ゼオライト粒子と無機結合材と板状粒子とを混合する方法については、特に制限はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、本田鐵工社製の双腕型ニーダーを用いて、乾式(即ち、水を加えずに)で10〜30分間混合し、その後、混合物に更に水を加えて、混合物の粘度を調整しながら、20〜60分間、混合及び混練する方法を挙げることができる。
【0105】
(2−2)押出成形工程:
次に、得られたゼオライト原料をハニカム形状に押出成形して、ゼオライトハニカム成形体を形成する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い金属が好ましい。また、ゼオライトハニカム成形体をハニカム形状に成形する場合には、例えば、まず、ゼオライト原料を混練して円柱状の成形体を形成し、円柱状の成形体を押出成形して、ハニカム形状のゼオライト成形体を形成することが好ましい。成形原料を混練して円柱状の成形体を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0106】
(3)ゼオライトハニカム焼成体:
次に、本発明のゼオライトハニカム焼成体の一の実施形態について具体的に説明する。本発明のゼオライトハニカム焼成体の一の実施形態は、図3に示すように、これまでに説明した本実施形態のゼオライトハニカム成形体を焼成することによって得られたゼオライトハニカム焼成体200であり、流体の流路となる一方の端面31から他方の端面32まで延びる複数のセル22を区画形成する隔壁21を備えたものである。ここで、図3は、本発明のゼオライトハニカム焼成体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0107】
本実施形態のゼオライトハニカム焼成体は、骨材となるゼオライト粒子と、充填材となる板状粒子とが、無機結合材によって結合された焼成体であり、吸着材、触媒、触媒担体、ガス分離膜、或いはイオン交換体に使用することができ、特に、自動車用エンジン、建設機械用エンジン、産業用定置エンジン、燃焼機器等から排出される排ガスに含有されるNO等を浄化するために好適に用いることができる。
【0108】
特に、本実施形態のゼオライトハニカム焼成体は、焼成前のゼオライトハニカム成形体において、乾燥収縮の異方性制御が行われているため、焼成前の乾燥工程においてクラックが発生し難く、且つ、隔壁の厚さ方向においては、適切に成形体が収縮しているため、隔壁の機械的強度も優れている。
【0109】
このような本実施形態のゼオライトハニカム焼成体は、例えば、ゼオライト粒子と板状粒子とが無機結合材によって結合された多孔質体であることが好ましい。
【0110】
なお、本実施形態のゼオライトハニカム焼成体の気孔率及び気孔径(細孔径)は、二つの観点で考える必要がある。第一の観点は、ゼオライト(ゼオライト粒子)が結晶構造体として細孔を有する物質であるために、ゼオライトの種類に特有の値であり、ゼオライトの種類が決まれば決まる細孔に関するものである。例えば、ZSM−5型ゼオライトの場合は、酸素10員環の細孔を有し、細孔径が約0.5〜0.6nmである。また、β型ゼオライトの場合は、酸素12員環の細孔を有し、細孔径が約0.5〜0.75nmである。第二の観点は、ゼオライトハニカム焼成体が、ゼオライト粒子(ゼオライトの結晶粒子)が結合材とともに一体化したものであるため、ゼオライトハニカム焼成体(多孔質体)としての気孔率、気孔径である。
【0111】
本実施形態のゼオライトハニカム焼成体においては、気孔率が20〜60%であることが好ましく、30〜50%であることが更に好ましく、30〜40%であることが特に好ましい。気孔率が低すぎると、浄化性能が低くなることがあり、一方、気孔率が高すぎると、強度が低下することがある。なお、気孔率は、水銀圧入法によって測定した気孔径3nm〜180μmの気孔の単位質量あたりの気孔容量と、ゼオライトハニカム焼成体の真密度を用いて、下記式(8)にて計算した値である。
気孔率=気孔容量/(気孔容量+1/ゼオライトハニカム焼成体の真密度)×100 ・・・ (8)
【0112】
なお、上記式(8)において、気孔容量は、Quantachrome社製の全自動多機能水銀ポロシメータ「PoreMaster60GT(商品名)」にて測定した値とした。また、ゼオライトハニカム焼成体の真密度は、ゼオライト(ゼオライト粒子)に関しては、1.85g/cmとし、また、板状粒子(充填材)に関しては、その材質に応じた値とし、更に、無機結合材に関しては、micrometrics社製の乾式自動密度計「アキュピック1330(商品名)」にて測定した値とした。
【0113】
なお、本実施形態のゼオライトハニカム焼成体の全体形状や断面における面積、セルの形状やセル密度、及び隔壁の厚さ等は、焼成前のゼオライトハニカム成形体の構成に応じて適宜決定されるものである。即ち、これまでに説明したゼオライトハニカム成形体の好適な形態に応じて、ゼオライトハニカム焼成体の好適な形態も決定される。
【0114】
本実施形態のゼオライトハニカム焼成体は、図3に示すように、隔壁31全体の外周を取り囲むように配設された外周壁34を備えることが好ましい。外周壁は、押出成形により、隔壁と一体的に形成されたものであっても、成形後に外周部を所望形状に加工し、外周部にコーティングするものであってもよい。外周壁34の厚さは、10mm以下であることが好ましい。10mmより厚いと、排ガス浄化処理を行う面積が小さくなることがある。
【0115】
(4)ゼオライトハニカム焼成体の製造方法:
次に、本発明のゼオライトハニカム焼成体の製造方法について説明する。
【0116】
本実施形態のゼオライトハニカム焼成体を製造する際には、まず、これまでに説明したゼオライトハニカム成形体の製造方法に従ってゼオライトハニカム成形体を作製する。その後、得られたゼオライトハニカム成形体を焼成することにより、本実施形態のゼオライトハニカム焼成体を製造することができる。従って、「焼成したゼオライトハニカム成形体」は、「ゼオライトハニカム焼成体」のことである。
【0117】
なお、焼成する前に、ゼオライトハニカム成形体の乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に、よりクラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。
【0118】
また、ゼオライトハニカム成形体を焼成(本焼成)する前には、そのゼオライトハニカム成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものであり、その方法は、特に限定されるものではなく、中の有機物(有機バインダ、分散剤等)を除去することができればよい。仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜500℃程度で、1〜20時間程度加熱することが好ましい。
【0119】
ゼオライトハニカム成形体を焼成する方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件は、大気雰囲気において、500〜850℃で、1〜10時間加熱することが好ましい。
【0120】
また、ゼオライトハニカム成形体のゼオライト原料に含まれるゼオライト粒子として、イオン交換処理されたゼオライト粒子を用いなかった場合には、焼成したゼオライトハニカム成形体に対して、金属イオンでイオン交換する処理を施してもよい。
【実施例】
【0121】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0122】
(実施例1)
ゼオライト粒子として、β型ゼオライトからなり、銅イオンで3質量%イオン交換された、平均粒子径が0.7μmのゼオライト粒子(以下、このゼオライト粒子を「ゼオライト粒子(1)」という)の粉末を用意した。
【0123】
また、無機結合材として、比表面積が130m/gのベーマイトと、モンモリロナイトと、を用意した。また、充填材の板状粒子として、厚さ方向の長さに対する、長径の長さの比の値(アスペクト比)が85で、平均粒子径が52μmのマイカ(以下、このマイカを「マイカ(1)」という)を用意した。
【0124】
ゼオライト粒子としての上記β型ゼオライトの粒子3500gに、無機結合材としての、上記ベーマイト1400gと、モンモリロナイト100gとを加え、更に、充填材の板状粒子としての、マイカ(1)を250g加えた。
【0125】
更に、有機バインダとして、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を210gを加え、本田鐵工社製の双腕型ニーダーを用いて乾式で10分間混合し、更に、水を加えて粘度調整しながら40分間混合及び混練し、ゼオライトの混練物(ゼオライト原料)を得た。表1に、ゼオライト粒子の物性を示し、表2に、板状部材の物性を示し、表3に、ゼオライト原料の配合処方を示す。なお、表1において、「結晶系」の欄は、ゼオライト粒子を構成するゼオライトの種類(結晶系)を意味する。表2において、「アスペクト比」の欄は、「板状粒子の厚さ方向の長さに対する、長径の長さの比の値」を意味する。
【0126】
得られたゼオライトの混練物を、本田鐵工社製の連続混練真空押出成形機を用いて、円柱状の成形体を押出し、得られた成形体を、更にプランジャ式押出成形機にて、ハニカム形状に押出成形してゼオライトハニカム成形体を作製した。なお、ゼオライトハニカム成形体は、端面の直径が40mm、隔壁の厚さが0.3mm、セル密度が46.5個/cmであった。
【0127】
また、得られたゼオライトハニカム成形体を、マイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機にて乾燥することでゼオライトハニカム乾燥体を得た。更に、得られたゼオライトハニカム乾燥体を焼成炉にて450℃で5時間脱脂し、700℃で4時間焼成することでゼオライトハニカム焼成体を得た。
【0128】
なお、ゼオライト粒子及び板状粒子の平均粒子径は、各粒子によって構成された粉末の粒子径分布におけるメジアン径(d50)であり、JIS R1629に準拠したレーザー回折散乱法にて測定した。
【0129】
また、比表面積はBET比表面積とし、micrometrics社製の流動式比表面積測定装置:「FlowSorb−2300(商品名)」を使用し、試料前処理は200℃で10分間保持として測定した。ここで、比表面積とは、単位質量当りの表面積を表し、例えば、ガスの物理吸着によりB.E.T理論を用いて、試料表面に吸着されたガスの単分子層でサンプル表面を覆うのに必要な分子数(N)を求め、この吸着分子数(N)に吸着ガスの分子断面積をかけることにより、試料の表面積を導出し、この試料の表面積を試料の質量で割ることにより求まる値をいう。
【0130】
また、板状粒子の厚さ方向の長さに対する、長径の長さの比の値(アスペクト比)は、10個以上の板状粒子の長径の長さと厚さ方向の長さと走査型電子顕微鏡にて測定し、測定された「長径の長さ」を「厚さ方向の長さ」で除した値を算出し、それらの値の平均値を算出して求めた。
【0131】
また、得られたゼオライトハニカム成形体について、下記の方法で乾燥収縮率を測定し、更に、隔壁のハニカム形状における断面の径方向の乾燥収縮率に対する、隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率の比の値を算出した。また、ゼオライトハニカム成形体を乾燥した際における、乾燥クラックの有無の評価、及びゼオライトハニカム焼成体の圧縮強度の測定を下記の方法で行った。表4に、圧縮強度、乾燥収縮率と乾燥収縮率の比の値、及び乾燥クラックの有無の結果を示す。なお、表4において、「厚さ方向の乾燥収縮率/径方向の乾燥収縮率」の欄は、「隔壁のハニカム形状における断面の径方向の乾燥収縮率に対する、隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率の比の値」を意味する。
【0132】
(乾燥収縮率)
得られたゼオライトハニカム成形体と、このゼオライトハニカム成形体を乾燥したゼオライトハニカム乾燥体とのそれぞれについて、セルを区画形成する隔壁の厚さを光学顕微鏡にて測定した。また、ゼオライトハニカム成形体とゼオライトハニカム乾燥体の外径及びセルの延びる方向の長さを、ノギスにて測定した。測定した長さより、各方向における乾燥収縮率(%)を、上述した式(1)に従い算出した。測定結果を表4に示す。
【0133】
(圧縮強度(MPa))
得られたゼオライトハニカム焼成体を、外径25mm、高さ25mmの円柱状に加工し、加工したゼオライトハニカム焼成体を、セルの延びる方向に圧縮し、破壊が生じる際の圧力(MPa)を、圧縮強度(MPa)として測定した。なお、「破壊が生じる」とは、上記のように加工したゼオライトハニカム焼成体を圧縮する圧縮試験を行った場合に、圧縮による変位に対して、急激に荷重が減少したときのことを意味する。即ち、上記圧縮試験において、横軸を圧縮による変位、縦軸を荷重とするグラフ(荷重−変位曲線)を作成した場合に、破壊が生じる前は、圧縮による変位の増加とともに、荷重が増加する。一方、破壊が生じた場合には、変位の増加に反して、荷重が減少する現状が確認される。このグラフの変曲点をもってして破壊が生じたと判断する。なお、その荷重(変曲点における荷重)から圧縮強度(MPa)を算出する際には、下記(9)によって行う。
圧縮強度=破壊荷重/5.07×0.098 ・・・ (9)
【0134】
(乾燥クラックの有無)
ゼオライトハニカム成形体を乾燥したゼオライトハニカム乾燥体について、目視による外観観察から、乾燥によるクラックの有無を判定した。クラックが確認された場合を「有」とし、クラックが確認されなかった場合を「無」とした。
【0135】
【表1】

【0136】
【表2】

【0137】
【表3】

【0138】
【表4】

【0139】
(実施例2)
表2及び表3に示すように、充填材の板状粒子として、アスペクト比が16で、平均粒子径が162μmのガラスフレーク(以下、このガラスフレークを「ガラスフレーク(1)」という)を250g用いた以外は、実施例1と同様にしてゼオライトハニカム成形体を作製し、乾燥及び焼成してゼオライトハニカム焼成体を製造した。実施例1と同様の方法で、焼成体の圧縮強度、成形体の厚さ方向の乾燥収縮率と径方向の乾燥収縮率の比の値、及び乾燥クラックの有無の測定を行った。結果を表4に示す。
【0140】
(実施例3)
表2及び表3に示すように、充填材の板状粒子として、アスペクト比が70で、平均粒子径が22μmのマイカ(以下、このマイカを「マイカ(3)」という)を250g用いた以外は、実施例1と同様にしてゼオライトハニカム成形体を作製し、乾燥及び焼成してゼオライトハニカム焼成体を製造した。実施例1と同様の方法で、焼成体の圧縮強度、成形体の厚さ方向の乾燥収縮率と径方向の乾燥収縮率の比の値、及び乾燥クラックの有無の測定を行った。結果を表4に示す。
【0141】
(実施例4)
表1及び表3に示すように、ゼオライト粒子として、ZSM−5型ゼオライトからなり、銅イオンで3質量%イオン交換された、平均粒子径が14μmのゼオライト粒子(以下、このゼオライト粒子を「ゼオライト粒子(2)」という)の粉末を3500g用いた以外は、実施例1と同様にしてゼオライトハニカム成形体を作製し、乾燥及び焼成してゼオライトハニカム焼成体を製造した。実施例1と同様の方法で、焼成体の圧縮強度、成形体の厚さ方向の乾燥収縮率と径方向の乾燥収縮率の比の値、及び乾燥クラックの有無の測定を行った。結果を表4に示す。また、「ゼオライト粒子の平均粒子径に対する板状粒子の平均粒子径の比」、「ゼオライト粒子と無機結合材と板状粒子との固形分換算の合計100体積%に対する板状粒子の体積比率(表4においては、「板状粒子の体積比率(体積%)」と記す)」、及び「ゼオライトハニカム焼成体100体積%に対する無機結合材の体積比率(体積%)」を表4に示す。
【0142】
(実施例5)
表3に示すように、充填材の板状粒子として、マイカ(1)を180g用いた以外は、実施例1と同様にしてゼオライトハニカム成形体を作製し、乾燥及び焼成してゼオライトハニカム焼成体を製造した。実施例1と同様の方法で、焼成体の圧縮強度、成形体の厚さ方向の乾燥収縮率と径方向の乾燥収縮率の比の値、及び乾燥クラックの有無の測定を行った。結果を表4に示す。
【0143】
(比較例1)
表5に示すように、充填材の板状粒子を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にしてゼオライトハニカム成形体を作製し、乾燥及び焼成してゼオライトハニカム焼成体を製造した。実施例1と同様の方法で、焼成体の圧縮強度、成形体の厚さ方向の乾燥収縮率と径方向の乾燥収縮率の比の値、及び乾燥クラックの有無の測定を行った。結果を表6に示す。
【0144】
(比較例2)
表2及び表5に示すように、充填材として、アスペクト比が3で、平均粒子径が25μmのガラスフレーク(以下、このガラスフレークを「ガラスフレーク(2)」という)を250g用いた以外は、実施例1と同様にしてゼオライトハニカム成形体を作製し、乾燥及び焼成してゼオライトハニカム焼成体を製造した。実施例1と同様の方法で、焼成体の圧縮強度、成形体の厚さ方向の乾燥収縮率と径方向の乾燥収縮率の比の値、及び乾燥クラックの有無の測定を行った。結果を表6に示す。
【0145】
(比較例3)
表2及び表5に示すように、充填材として、アスペクト比が45で、平均粒子径が5μmの微粒板状ベーマイトを250g用いた以外は、実施例1と同様にしてゼオライトハニカム成形体を作製し、乾燥及び焼成してゼオライトハニカム焼成体を製造した。実施例1と同様の方法で、焼成体の圧縮強度、成形体の厚さ方向の乾燥収縮率と径方向の乾燥収縮率の比の値、及び乾燥クラックの有無の測定を行った。結果を表6に示す。
【0146】
(比較例4)
表1及び表5に示すように、ゼオライト粒子として、ゼオライト粒子(2)を3500g用いて、表2及び表5に示すように、充填材の板状粒子として、マイカ(2)を250g用いた以外は、実施例1と同様にしてゼオライトハニカム成形体を作製し、乾燥及び焼成してゼオライトハニカム焼成体を製造した。実施例1と同様の方法で、焼成体の圧縮強度、成形体の厚さ方向の乾燥収縮率と径方向の乾燥収縮率の比の値、及び乾燥クラックの有無の測定を行った。結果を表6に示す。
【0147】
(比較例5)
表1及び表5に示すように、ゼオライト粒子として、ZSM−5型ゼオライトからなり、銅イオンで3質量%イオン交換された、平均粒子径が43μmのゼオライト粒子(以下、このゼオライト粒子を「ゼオライト粒子(3)」という)の粉末を3500g用いた以外は、実施例1と同様にしてゼオライトハニカム成形体を作製し、乾燥及び焼成してゼオライトハニカム焼成体を製造した。実施例1と同様の方法で、焼成体の圧縮強度、成形体の厚さ方向の乾燥収縮率と径方向の乾燥収縮率の比の値、及び乾燥クラックの有無の測定を行った。結果を表6に示す。
【0148】
(比較例6)
表5に示すように、充填材の板状粒子として、マイカ(1)を70g用いた以外は、実施例1と同様にしてゼオライトハニカム成形体を作製し、乾燥及び焼成してゼオライトハニカム焼成体を製造した。実施例1と同様の方法で、焼成体の圧縮強度、成形体の厚さ方向の乾燥収縮率と径方向の乾燥収縮率の比の値、及び乾燥クラックの有無の測定を行った。結果を表6に示す。
【0149】
(比較例7)
表5に示すように、無機結合材として、ベーマイトを600g用いた以外は、実施例1と同様にしてゼオライトハニカム成形体を作製し、乾燥及び焼成してゼオライトハニカム焼成体を製造した。実施例1と同様の方法で、焼成体の圧縮強度、成形体の厚さ方向の乾燥収縮率と径方向の乾燥収縮率の比の値、及び乾燥クラックの有無の測定を行った。結果を表6に示す。
【0150】
【表5】

【0151】
【表6】

【0152】
表3〜表6より、実施例1〜5のゼオライトハニカム成形体は、充填材として板状粒子が用いられ、且つ、隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率が、隔壁のセルの延びる方向の乾燥収縮率及び隔壁のハニカム形状における断面の径方向の乾燥収縮率よりも大きくなるように構成されたものであり、且つ、隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率が、隔壁のハニカム形状における断面の径方向の乾燥収縮率の1.2倍以上であった。そして、この実施例1〜6のゼオライトハニカム成形体を乾燥したゼオライトハニカム乾燥体には、乾燥クラックが確認されず、更に、焼成を行ったゼオライトハニカム焼成体においては、圧縮強度に優れる(全ての焼成体において、圧縮強度が4MPa以上の)ものであった。
【0153】
一方、比較例1、3、4及び6のゼオライトハニカム成形体は、焼成体の圧縮強度は優れたものであったが、「隔壁のハニカム形状における断面の径方向の乾燥収縮率に対する、隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率の比の値」が、1.2未満であるため、乾燥後に、乾燥クラックの発生が確認された。比較例1は、板状粒子を用いなかったため、比較例3は、板状粒子の平均粒子径が極めて小さく、板状粒子が配向しなかったため、比較例4は、板状粒子の平均粒子径が、ゼオライト粒子の粒子径の2倍未満であり、板状粒子が配向しなかったため、更に、比較例6は、板状粒子の量が極めて少なかったため、乾燥収縮の異方性制御が十分に行われなかったものと推測される。
【0154】
また、比較例2については、ガラスフレーク(2)のアスペクト比が3と極めて小さな値であるため、特定の方向の乾燥収縮率を抑制することができず、焼成体の圧縮強度が低いものであった。即ち、比較例2は、各方向における乾燥収縮率の差が小さく、「隔壁のハニカム形状における断面の径方向の乾燥収縮率に対する、隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率の比の値」も1.2未満であり、隔壁が厚さ方向に十分圧縮されず、強度が低下してしまったものと推測される。
【0155】
また、比較例7については、無機結合材としてのベーマイトの添加量が少なすぎるため、全方向で乾燥収縮率が小さく、強度が小さくなったと推測される。
【0156】
比較例5は、ゼオライト粒子の平均粒子径が大きすぎて、板状粒子による乾燥収縮の異方性制御の効果が得られ難くなり、「隔壁のハニカム形状における断面の径方向の乾燥収縮率に対する、隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率の比の値」も1.2未満となり、乾燥後にクラックの発生が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明のゼオライトハニカム成形体は、吸着材、触媒、触媒担体、ガス分離膜、或いはイオン交換体に使用することができ、特に、自動車用エンジン、建設機械用エンジン、産業用定置エンジン、燃焼機器等から排出される排ガスに含有されるNO等を浄化するためのゼオライトハニカム焼成体の製造に好適に利用することができる。また、本発明のゼオライトハニカム焼成体は、吸着材、触媒、触媒担体、ガス分離膜、或いはイオン交換体に使用することができる。
【符号の説明】
【0158】
1,21:隔壁、2,22:セル、4,24:外周壁、11,31:一方の端部、12,32:他方の端部、100:ゼオライトハニカム成形体、200:ゼオライトハニカム焼成体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト粒子と、前記ゼオライト粒子同士を結合させる無機結合材と、その長径の長さに対して厚さ方向の長さが短い薄片状の板状粒子からなる充填材と、を含有するゼオライト原料が、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を備えるハニカム形状に押出成形された成形体からなり、前記隔壁は、前記隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率が、前記隔壁のセルの延びる方向の乾燥収縮率及び前記隔壁のハニカム形状におけるセルの延びる方向に垂直な断面の径方向の乾燥収縮率よりも大きくなるように構成されたものであり、且つ、前記隔壁の厚さ方向の乾燥収縮率が、前記隔壁のハニカム形状におけるセルの延びる方向に垂直な断面の径方向の乾燥収縮率の1.2倍以上であるゼオライトハニカム成形体。
【請求項2】
前記充填材を構成する前記板状粒子が、その厚さ方向の長さに対する、長径の長さの比の値(長径/厚さ)が、10以上のものであるとともに、前記板状粒子の平均粒子径が20μm以上であり、且つ前記ゼオライト粒子の平均粒子径の2倍以上であり、
前記板状粒子が、前記ゼオライト粒子と前記無機結合材と前記板状粒子との固形分換算の合計100体積%に対して、2.5〜15体積%含有されるとともに、前記無機結合材が、前記ゼオライトハニカム成形体を焼成した焼成体100体積%に対して、10〜50体積%に相当する量含有されてなる請求項1に記載のゼオライトハニカム成形体。
【請求項3】
前記板状粒子が、タルク、マイカ、窒化ホウ素、ベーマイト、グラファイト、及びガラスフレークからなる群より選択される少なくとも一種の材料からなる粒子である請求項1又は2に記載のゼオライトハニカム成形体。
【請求項4】
前記ゼオライト粒子の平均粒子径が、0.1〜40μmである請求項1〜3のいずれか一項に記載のゼオライトハニカム成形体。
【請求項5】
前記ゼオライト粒子のうちの少なくとも一部のゼオライト粒子が、ZSM−5型ゼオライト、β型ゼオライト、Y型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、及びフェリエライト型ゼオライトからなる群から選択される少なくとも一種のゼオライトからなる粒子である請求項1〜4のいずれか一項に記載のゼオライトハニカム成形体。
【請求項6】
前記ゼオライト粒子のうちの少なくとも一部のゼオライト粒子が、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、マンガン、コバルト、銀、パラジウム、インジウム、セリウム、ガリウム、チタン、及びバナジウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属のイオンによりイオン交換されたゼオライトからなる粒子である請求項1〜5のいずれか一項に記載のゼオライトハニカム成形体。
【請求項7】
前記無機結合材が、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル、セリアゾル、ベーマイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、塩基性塩化アルミニウム、水硬性アルミナ、シリコン樹脂、及び水ガラスからなる群より選択される少なくとも一種を含むものである請求項1〜6のいずれか一項に記載のゼオライトハニカム成形体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のゼオライトハニカム成形体を焼成することによって得られたゼオライトハニカム焼成体。
【請求項9】
ゼオライト粒子と、前記ゼオライト粒子同士を結合させる無機結合材と、その長径の長さに対して厚さ方向の長さが短い薄片状の板状粒子からなる充填材と、有機バインダと、を混合して、ゼオライト原料を調製する工程と、得られた前記ゼオライト原料をハニカム形状に押出成形してゼオライト成形体を形成する工程と、を備え、
前記充填材を構成する前記板状粒子として、その厚さ方向の長さに対する、長径の長さの比の値(長径/厚さ)が、10以上のものであるとともに、前記板状粒子の平均粒子径が20μm以上であり、且つ前記ゼオライト粒子の平均粒子径の2倍以上であるものを用い、
前記ゼオライト原料中に、前記板状粒子が、前記ゼオライト粒子と前記無機結合材と前記板状粒子との固形分換算の合計100体積%に対して、2.5〜15体積%含有され、前記無機結合材が、前記ゼオライトハニカム成形体を焼成した焼成体100体積%に対して、10〜50体積%に相当する量含有されてなるゼオライトハニカム成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−201115(P2011−201115A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70106(P2010−70106)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】