説明

ソルダペースト、および接合物品

【課題】 金属合金粉末として、Biを30重量%以上含むBi−Sn系ソルダペーストにおいて、接合後に高い接合強度が得られるとともに、接合対象物がAuを含む場合においても空隙が発生しないソルダペースト、およびそのソルダペーストを用いて接合された接合物品を提供する。
【解決手段】 金属合金粉末として、Biが30重量%〜98重量%、Al、Mnのいずれか一方が0.01重量%〜0.5重量%、残部Snからなるソルダペースト、およびそのソルダペーストを用いて接合された接合物品とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ型電子部品をセラミック基板やプリント配線基板に接合するためなどに用いられるソルダペースト、およびそのソルダペーストを用いて接合された接合物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、異なる電気構造物の接合対象物間の電気的接合を行うためのはんだ合金として、Bi−Sn系合金を含むものが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、Biが25〜85重量%、Snが18〜68重量%、Znが0.1〜10重量%、Sbが0.1〜10重量%からなるはんだ合金が開示されている。また、特許文献2には、0.1〜57重量%のBiと残部Snを含むはんだ合金において、さらにCoを0.001〜5重量%含むものが開示されている。さらに、特許文献3には、Snを主成分とし、Bi22.0〜42.0重量%及びAl0.01〜0.50重量%を含有するはんだ合金が開示されている。
【特許文献1】特開昭62−252693号公報
【特許文献2】特開平8−224689号公報
【特許文献3】特開2001−347394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1、特許文献2に記載のはんだ合金によれば、このはんだ合金(金属合金粉末)とフラックスとを混合してソルダペーストとし、このソルダペーストによって異なる電気構造物(例えば、チップ型電子部品とプリント配線基板)の接合対象物どうし(例えば、チップ型電子部品に形成された外部電極とプリント配線基板に形成されたランド電極と)を接合したときに、接合部の接合強度が弱いという問題があった。
【0005】
また、特許文献3に記載のはんだ合金によれば、Alを微量添加することによって、はんだ合金の接合強度を向上させることができるとされているが、特許文献3の実施例ではSn−29重量%Biはんだ合金にAlを微量添加させた例しか開示されておらず、Biを30重量%以上含むBi−Sn系はんだ合金については効果が実証されていない。
【0006】
さらに、Biを30重量%以上含むBi−Sn系ソルダペーストの特有の問題として、このソルダペーストを異なる電気構造物の接合対象物どうしを接合するために用いるとき、これら接合対象物のいずれかがAuを含んでいると、接合後の接合部に空隙が生じてしまいシアー強度が低下するという問題があった。
【0007】
すなわち、接合対象物に含まれるAuはリフロー加熱による接合時にソルダペースト中に混入し、ソルダペースト中のSnとの間で金属間化合物を生成する。これによりソルダペーストはBiリッチな合金となる。そして、リフロー加熱後に接合部が徐冷されるときに、Bi相が粗大化し、Sn−Bi相よりも比重の大きいBi相が多く存在することとなる。これにより接合部の体積が減少して空隙が発生する。この現象はBiを30重量%以上含むBi−Sn系ソルダペースト特有の問題であって、特にBiを58重量%以上含むBi−Sn系ソルダペーストのようにBiがさらに多いソルダペーストにおいて顕著な問題となる。
【0008】
よって本発明は、Biを30重量%以上含むBi−Sn系ソルダペーストにおいて、接合後に高い接合強度が得られるとともに、接合対象物がAuを含む場合においても接合部に空隙が発生しないソルダペースト、およびそのソルダペーストを用いて接合された接合物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために本発明に係るソルダペーストは、金属合金粉末と、フラックスとを含むソルダペーストであって、前記金属合金粉末は、Biが30重量%〜98重量%、Al、Mnのいずれか一方が0.01重量%〜0.5重量%、残部Snからなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るソルダペーストは、金属合金粉末と、フラックスとを含むソルダペーストであって、前記金属合金粉末は、Biが58重量%〜98重量%、Al、Mnのいずれか一方が0.01重量%〜0.5重量%、残部Snからなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るソルダペーストは、第1の接合対象物を有する第1の電気構造物と、第2の接合対象物を有する第2の電気構造物との、前記第1の接合対象物と前記第2の接合対象物とを接合するために用いられることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るソルダペーストは、前記第1の接合対象物および前記第2の接合対象物の少なくとも一方はAuを含む場合にさらに有効である。
【0013】
また、本発明に係るソルダペーストは、前記第1の接合対象物および前記第2の接合対象物の少なくとも一方はAuが表面に露出している場合にさらに有効である。
【0014】
また、本発明に係る接合物品は、第1の接合対象物を有する第1の電気構造物と、第2の接合対象物を有する第2の電気構造物とを接合した接合物品であって、前記第1の接合対象物と、前記第2接合対象物とを請求項1ないし請求項2のいずれかに記載のソルダペーストを用いて接合した接合部を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る接合物品は、前記第1の接合対象物および前記第2の接合対象物の少なくとも一方はAuを含む場合にさらに有効である。
【0016】
また、本発明に係る接合物品は、前記第1の接合対象物および前記第2の接合対象物の少なくとも一方はAuが表面に露出している場合にさらに有効である。
【0017】
また、本発明に係る接合物品は、前記接合部には、前記第1の接合対象物および前記第2の接合対象物の少なくとも一方からAuが混入しており、混入するAuの体積比率が、前記ソルダペーストに含まれる前記金属合金粉末の体積の1.5体積%を超える場合に最も有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、Biを30重量%以上含むBi−Sn系ソルダペーストにおいて、金属合金粉末にAl、Mnのいずれか一方が0.01重量%〜0.5重量%配合されているため、高い接合強度を実現できるソルダペースト、および接合強度が高い接合部を有する接合物品を得ることができる。また、接合対象物がAuを含む場合においては、接合後の接合部に空隙が生じてしまうという問題が発生せず、また高いシアー強度を実現可能なソルダペースト、および接合部のシアー強度が高い接合物品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態について説明する。本発明のソルダペーストは、主として、第1の接合対象物を有する第1の電気構造物(例えば外部電極を有するチップ型電子部品)と、第2の接合対象物を有する第2の電気構造物(例えばランド電極を有するプリント配線基板)との第1の接合対象物と第2の接合対象物(外部電極とランド電極)どうしを接合するために用いられる。なお、一般にはんだ付けされる用途に用いられるものであれば、第1、第2の電気構造物および、第1、第2の接合対象物の選択は任意であり、上記のほかにも例えばリード付き電子部品のリード線とプリント配線基板上に設けられたランド電極などの組み合わせなどでもよい。
【0020】
本発明のソルダペーストは、金属合金粉末と、フラックスとを含むソルダペーストであって、金属合金粉末は、Biが30重量%〜98重量%、Al、Mnのいずれか一方が0.01重量%〜0.5重量%、残部Snからなるものである。
【0021】
金属合金粉末中にAl、Mnのいずれか一方が0.01重量%〜0.5重量%含まれることにより、Al、Mnがはんだ組織内に分散してはんだ組織を微細化することができ、結果として接合後の接合強度を向上させることができる。
【0022】
なお、金属合金粉末中にBiを30重量%以上含むソルダペーストとしているのは、Biが30重量%未満のSn重量比率が高いソルダペーストである場合、元の強度が高いため、AlまたはMnを配合する効果が小さいためである。また、金属合金粉末中にBiを98重量%以下含むソルダペーストとしているのは、金属合金粉末中のBi重量比率が98重量%を超えるソルダペーストである場合、はんだ組織の微細化に寄与するSn−Biラメラ相が形成されにくいか、全く形成されず、AlまたはMnを配合してもはんだ組織の微細化が困難となるためである。
【0023】
金属合金粉末中に含まれるAl、Mnのいずれか一方の量を0.01重量%〜0.5重量%の範囲としているのは、これより少ないと接合強度の向上や空隙の発生を抑制する効果が期待できず、また、これより多いとはんだ組織内へのAlまたはMnの分散効果が低下し、はんだ組織が微細化できないためである。
【0024】
本発明のソルダペーストは、第1の接合対象物および第2の接合対象物の少なくとも一方はAuを含むもの、特にAuが表面に露出しているものを接合するために用いるときにさらに有効である。Auが表面に露出している接合対象物とは、例えば、チップ型電子部品のAuからなる外部電極が表面に露出しているものや、チップ型電子部品の外部電極を覆うようにAuめっきが表面に露出するように形成されているものなどが挙げられる。
【0025】
本発明のソルダペーストによれば、Al、Mnが接合時の加熱により酸化することで生成される酸化物として、およびAuとの間で生成される金属間化合物として、細かく分散することにより、接合部のBi相の粗大化が抑制され、空隙の発生が抑制される。したがってシアー強度の高い接合部を有する接合物品が得られる。
【0026】
なお、ソルダペースト中の金属合金粉末に対するBiの重量比率が30重量%未満である場合は、Snの重量比率が高くなるため、AuとSnが化合物を形成してもSnが多く残存することとなり、Biの粗大化を抑制できる。したがって、AlまたはMnを含んでいなくても空隙比率が低くなる。また、ソルダペースト中の金属合金粉末に対するBiの重量比率が98重量%を超える場合は、Biの粗大化による体積減少の影響が少ないため、空隙比率が低くなる。
【0027】
さらに本発明は、金属合金粉末としてBiが多いもの、すなわち、Biが58重量%〜98重量%、Al、Mnのいずれか一方が0.01重量%〜0.5重量%、残部Snであるときに特に有効である。これは、本発明をBiが58重量%〜98重量%の範囲にあるBi−Sn系ソルダペーストに用いた場合において、接合強度の向上効果や、空隙比率低下効果が大きいためである。
【0028】
本発明のソルダペーストに用いられるフラックスとしては、樹脂系、有機酸系、無機酸系などの目的に応じて適宜選択して用いることができ、例えば、ロジンおよび/またはロジン誘導体と、溶剤と、活性剤と、チクソ剤とを含有するフラックスを用いることができる。溶剤としてはエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルなど、活性剤としてはジフェニルグアニジンHBr、ジエチルアミンHClなど、チクソ剤としては水素添加ヒマシ油、脂肪酸アマイドなどをそれぞれ用いることができる。
【0029】
また、上記フラックスは熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。これらの樹脂は、接合後に接合部を覆い、接合強度の確保および接合部の信頼性の確保に寄与する。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素系樹脂など、熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース系樹脂などをそれぞれ用いることができる。
【実施例】
【0030】
以下に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
<ソルダペーストの作製>
まず、Bi、Sn、Al、Mn、Co、Pd、Zn、Ni、Ptを表1に示す重量比率で配合した金属合金粉末90質量%に対して、フラックスを10質量%混合してBi−Sn系ソルダペーストを作製した。フラックスとしてはロジン、溶剤、活性剤、チクソ剤を含むロジン系フラックスを使用した。本実施例では、溶剤としてはジエチレングリコールモノフェニルエーテル、活性剤としてはジフェニルグアニジンHBr、チクソ剤としては水素添加ヒマシ油を用いた。
【0031】
<評価用サンプルの作製>
次に、Cuからなる金属板(10×10×0.2mm)に、上記表1のそれぞれのソルダペーストを印刷し、Cuからなる金属片(1.2×1.2×1.0mm)をその印刷部分にマウントした。そして予熱温度160℃、ピーク温度245℃のプロファイルでリフロー加熱し、金属板にソルダペーストによって金属片が接合されている評価用サンプルを得た。得られた評価用サンプルについて以下の接合強度に関する評価を行った。結果を表1に示す。
評価:接合強度
評価用サンプルを金属板側および金属片側の双方から引っ張り、金属片が剥離するまでの最大強度を評価した。引っ張り速度は20mm/minとした。
【0032】
【表1】

【0033】
金属合金粉末がBi58重量%と残部Snとからなり、AlまたはMnを含まない比較例3、金属合金粉末がBi58重量%と、Al0.7重量%と、残部Snとからなる比較例9、および、金属合金粉末がBi58重量%と、Mn0.7重量%と、残部Snとからなる比較例12の評価用サンプルの接合強度が、それぞれ33Nmm-2、36Nmm-2、34Nmm-2であった。これに対して、金属合金粉末がBi58重量%と、Al0.01〜0.5重量%と、残部Snとからなる実施例1〜4、金属合金粉末がBi58重量%と、Mn0.01〜0.5重量%と、残部Snとからなる実施例8〜11の評価用サンプルの接合強度は、40〜45Nmm-2であり、高い接合強度が得られた。これはAlまたはMnを0.01〜0.5重量%配合することにより、はんだ組織内へAlまたはMnが分散し、はんだ組織が微細化するためである。なお、AlまたはMnを配合する場合であっても、比較例9、比較例12のようにAlまたはMnの配合量が0.5重量%を超えると、はんだ組織内へのAlまたはMnの分散効果が低下し、はんだ組織を微細化することができず、逆に接合強度が低くなってしまう。
【0034】
また、金属合金粉末がBi30〜98重量%と残部Snとからなり、Al、Mnを含まない比較例2〜5の評価用サンプルと比較して、金属合金粉末がBi30〜98重量%と、AlまたはMnが0.3重量%と、残部Snとからなる実施例3、実施例5〜7、実施例10および実施例12〜14の評価用サンプルは、同じBi重量比率のときの接合強度が10Nmm-2以上向上することがわかる。例えば、比較例3の接合強度は33Nmm-2であるのに対し、実施例3、実施例10の接合強度はそれぞれ44Nmm-2、43Nmm-2となっている。
【0035】
一方、金属合金粉末がBi20重量%と、残部Snとからなり、Al、Mnを含まない比較例1の評価用サンプルと比較して、金属合金粉末がBi20重量%と、Al0.3重量%と、残部Snとからなる比較例7の評価用サンプルの評価用サンプルの接合強度は4Nmm-2高かった。また、金属合金粉末がBi100重量%である比較例6の評価用サンプルと比較して、金属合金粉末がBi99.7重量%と、Al0.3重量%とからなる比較例8の評価用サンプルの接合強度は1Nmm-2高かった。また、比較例1の評価用サンプルと比較して、金属合金粉末がBi20重量%と、Mn0.3重量%と、残部Snとからなる比較例10の評価用サンプルの接合強度は5Nmm-2高かった。また、比較例6の評価用サンプルと比較して、金属合金粉末がBi99.7重量%と、Mn0.3重量%とからなる比較例11の評価用サンプルの接合強度は3Nmm-2高かった。
【0036】
このように、金属合金粉末中のBi重量比率が30重量%〜98重量%の場合、AlまたはMnを0.01〜0.5重量%配合することにより、10Nmm-2以上の大きな接合強度向上効果を得られるが、金属合金粉末中のBi重量比率が30重量%未満の場合(すなわちSn重量比率が高い場合)、元の接合強度が高いため、AlまたはMnを配合させたときの接合強度向上効果が小さい。また、金属合金粉末中のBi重量比率が98重量%を超える場合は、はんだ組織の微細化に寄与するSn−Biラメラ相が形成されにくいか、全く形成されないため、AlまたはMnを配合させてもはんだ組織の微細化が困難となり、接合強度向上効果が小さい。
【0037】
また、Bi58重量%と、Co、Pd、Zn、Ni、Ptのいずれかを0.3重量%と、残部Snとからなる比較例13〜17と比較して、Bi58重量%と、AlまたはMnを0.3重量%と、残部Snとを配合した実施例3、実施例10の接合強度は約20Nmm-2高かった。AlとMnがはんだ組織を微細化させるのに対し、Co、Pd、Zn、Ni、Ptはそのような微細化効果を有さないためである。
【0038】
[実施例2]
次に、本発明のソルダペーストを、Auを含む接合対象物を接合するために用いた例について説明する。
<ソルダペーストの作製>
まず、Bi、Sn、Al、Mn、Co、Pd、Zn、Ni、Ptを表2に示す重量比率で配合した金属合金粉末90質量%に対して、フラックスを10質量%混合してBi−Sn系ソルダペーストを作製した。フラックスとしてはロジン、溶剤、活性剤、チクソ剤を含むロジン系フラックスを使用した。フラックスとしてはロジン、溶剤、活性剤、チクソ剤を含むロジン系フラックスを使用した。本実施例では、溶剤としては、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、活性剤としてはジフェニルグアニジンHBr、チクソ剤としては、水素添加ヒマシ油を用いた。
【0039】
<接合物品の作製>
本発明のソルダペーストおよび接合物品を図1に示す。なお、図1(a)は、接合前(リフロー加熱前)の接合物品10を示しており、また、図1(b)は接合後(リフロー加熱後)の接合物品11を示している。図1(a)に示すように、Al23からなる基板1を用意し、複数のランド電極2をその表面に形成した。ランド電極2は、Cuからなる下地電極21と、下地電極21を覆うように形成され、かつ、ランド電極2の表面に露出したAuめっき層22とからなる。続けて、表2に示すソルダペースト3のそれぞれをランド電極2上に印刷した。このソルダペースト3の印刷にあたっては、接合時のリフロー加熱によって接合部7に混入するAuの影響を検証するために、印刷に用いられるメタルマスクの開口径および厚みを調整してソルダペーストの印刷量を調整し、結果的に接合後に接合部7に混入するAu体積比率を調整した。
【0040】
続けて、複数のランド電極2上に1.0mm×0.5mm×0.5mmのサイズのチップコイルであるチップ型電子部品4をマウントした。チップ型電子部品4の両端面には一対の外部電極5が形成されており、この外部電極5がそれぞれランド電極2上に配置されるようにした。外部電極5は、Cuからなる下地電極51と、下地電極51を覆うように形成され、かつ外部電極5の表面に露出したAuめっき層52とからなるものである。
【0041】
続けて、予熱温度160℃、ピーク温度245℃のプロファイルで基板1をリフロー加熱し、基板1に配置されたランド電極2上にチップ型電子部品4が接合された接合部7を有する図1(b)に示す接合物品11を得た。なお、ソルダペーストが固化した接合部7には、Auめっき層22,52に含まれるAuの一部が混入している。
【0042】
上記のようにして得られた接合物品10について以下の評価を行った。その結果を表2に示す。
評価1:空隙比率
以下のように、接合部の空隙比率の評価を行った。まず、接合物品11全体を覆うようにエポキシ樹脂中に埋設し、硬化させた。そして、基板1に対して垂直方向かつ、図1(b)の方向から見たときに接合部7の断面が現れるように研磨した接合物品11を、金属顕微鏡で観察し、接合部7の断面全体の面積に対する空隙の比率を計測した。空隙比率が5%未満のものを評価「○」、5%以上のものを評価「×」とした。
【0043】
評価2:シアー強度
チップ型電子部品4をボンディングテスタで横押しし、シアー強度を測定した。横押し強度は0.05mm/sとした。強度が10Nmm-2以上のものを評価「○」、10Nmm-2未満のものを評価「×」とした。
【0044】
【表2】

【0045】
まず、ソルダペースト中の金属合金粉末の体積に対する、混入するAuの体積比率を変化させて評価した場合の空隙比率の結果を検証した。参考例1〜3は、混入するAuの体積比率が金属合金粉末の体積の1.5体積%未満であり、空隙比率は5%未満となった。一方、比較例18〜20は、混入するAuの体積比率が金属合金粉末の体積の1.5体積%を超えており、空隙比率が5%以上となった。これにより、接合部7に混入するAuの体積比率が高いほど空隙が発生しやすくなり、特に、混入するAuの体積比率が金属合金粉末の体積の1.5体積%を超えると空隙比率が5%を超えてしまうことがわかる。
【0046】
比較例19、比較例21〜25は、金属合金粉末がBi30〜98重量%と、残部Snとからなるソルダペーストを用いた例であり、AlまたはMnが配合されておらず、また混入するAuの体積比率が1.5体積%を超えるため、Bi相が粗大化し、空隙比率が5%以上となった。これに対して、実施例17、実施例19〜23は、金属合金粉末がBi30〜98重量%と、Al0.3重量%と、残部Snとからなるソルダペーストを用いているため、Al酸化物およびAlとAuとの金属間化合物が有するBi相の微細化効果により、混入するAuの体積比率が1.5体積%を超えても空隙比率が5%未満と低くなった。また、実施例26、実施例28〜32は、金属合金粉末がBi30〜98重量%と、Mn0.3重量%と、残部Snとからなるソルダペーストを用いた例であり、Mn酸化物およびMnとAuとの金属間化合物が有するBi相の微細化効果により、混入するAuの体積比率が1.5体積%を超えても空隙比率が5%未満と低くなった。
【0047】
比較例26は、金属合金粉末がBi58重量%と、Al0.7重量%と、残部Snとからなるソルダペーストを用いた例であり、配合したAlが0.7重量%と多いため、AlとAuとの金属間化合物が粗大化し、微細化効果が低減したことにより、空隙比率が5%以上と高かった。一方、実施例15〜18は、金属合金粉末がBi58重量%と、Al0.01〜0.5重量%と、残部Snとからなるソルダペーストを用いた例であり、AlとAuとの金属間化合物が微細化効果を維持するため、混入するAuの体積比率が1.5体積%を超えても空隙比率が5%未満と低かった。
【0048】
比較例27は、金属合金粉末がBi58重量%と、Mn0.7重量%と、残部Snとからなるソルダペーストを用いた例であり、配合したMnが0.7重量%と多いため、MnとAuとの金属間化合物が粗大化し、微細化効果が低減したことにより、空隙比率が5%以上と高かった。一方、実施例24〜27は、金属合金粉末がBi58重量%と、Mn0.01〜0.5重量%と、残部Snとからなるソルダペーストを用いた例であり、MnとAuとの金属間化合物が微細化効果を維持するため、混入するAuの体積比率が1.5体積%を超えても空隙比率が5%未満と低かった。
【0049】
金属合金粉末がBi58重量%と、Co、Pd、Ni、Ptのいずれかを0.3重量%と、残部Snとからなるソルダペーストを用いた例である比較例28、29、31、32は、Co、Pd、Ni、Ptが酸化物を形成しにくく、さらにAuとの間で金属間化合物を形成しないため、Bi相の微細化効果はなく空隙比率が5%以上と高かった。また、金属合金粉末がBi58重量%と、Zn0.3重量%と、残部Snとからなるソルダペーストを用いた例である比較例30は、ZnとAuとの間で金属間化合物を形成しても、この金属間化合物がはんだ組織に細かく分散せずBi相が粗大化するため、Bi相の微細化効果はなく、空隙比率が5%以上と高かった。
【0050】
以上により、本発明によれば、AlまたはMnが0.01重量%〜0.5重量%配合されていることにより接合部の空隙の発生を抑制させ得ることがわかる。また、ソルダペースト中の金属合金粉末の体積に対する、混入するAuの体積比率が1.5体積%を超える場合に、本発明が特に有効であることがわかる。
【0051】
また、本発明によれば、空隙の発生が抑制できることにより接合部のシアー強度をも向上させることができる。比較例18〜32の接合物品10のシアー強度は、空隙が多く、シアー強度が10Nmm-2未満であったのに対して、実施例15〜32の接合物品10は全てシアー強度が10Nmm-2以上であり、高いシアー強度が得られた。
【0052】
なお、本発明はBiが58〜98重量%の範囲にあるソルダペーストに適用する場合、特に効果が大きい。これは、Biが58〜98重量%の範囲にある場合、AlまたはMnを配合することによる空隙比率低下効果が大きいためである。例えば、実施例19、20、27、28と、比較例21、22とを比較することでわかるように、Biが30〜45重量%のとき、AlまたはMnを0.3重量%配合することにより、配合しない場合に比べて空隙比率は3.1%〜4.2%低下する。これに対して、実施例17、実施例21〜23、実施例26、実施例30〜32と、比較例19、比較例23〜25とを比較することでわかるように、Biが58〜98重量%のときは、AlまたはMnを0.3重量%配合することにより、配合しない場合に比べて空隙比率は4.9%〜6.2%低下しており、効果が大きいことがわかる。
【0053】
なお、比較例19、比較例21〜25の空隙比率を比較すると、Biの重量比率が58重量%より高くなると空隙比率が高くなることがわかる。これは、Biが多くなると、Bi相の粗大化が起こりやすくなるためである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の接合物品の一実施形態の正面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 基板
2 ランド電極
3 ソルダペースト
4 チップ型電子部品
5 外部電極
7 接合部
11 接合物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属合金粉末と、フラックスとを含むソルダペーストであって、
前記金属合金粉末は、Biが30重量%〜98重量%、Al、Mnのいずれか一方が0.01重量%〜0.5重量%、残部Snからなるソルダペースト。
【請求項2】
金属合金粉末と、フラックスとを含むソルダペーストであって、
前記金属合金粉末は、Biが58重量%〜98重量%、Al、Mnのいずれか一方が0.01重量%〜0.5重量%、残部Snからなるソルダペースト。
【請求項3】
第1の接合対象物を有する第1の電気構造物と、第2の接合対象物を有する第2の電気構造物との、前記第1の接合対象物と前記第2の接合対象物とを接合するために用いられる請求項1または請求項2のいずれかに記載のソルダペースト。
【請求項4】
前記第1の接合対象物および前記第2の接合対象物の少なくとも一方はAuを含む、請求項3記載のソルダペースト。
【請求項5】
前記第1の接合対象物および前記第2の接合対象物の少なくとも一方は表面にAuが露出している、請求項3記載のソルダペースト。
【請求項6】
第1の接合対象物を有する第1の電気構造物と、第2の接合対象物を有する第2の電気構造物とを接合した接合物品であって、
前記第1の接合対象物と、前記第2接合対象物とを請求項1ないし請求項2のいずれかに記載のソルダペーストを用いて接合した接合部を有することを特徴とする接合物品。
【請求項7】
前記第1の接合対象物および前記第2の接合対象物の少なくとも一方はAuを含む、請求項6記載の接合物品。
【請求項8】
前記第1の接合対象物および前記第2の接合対象物の少なくとも一方は表面にAuが露出している、請求項6記載の接合物品。
【請求項9】
前記接合部には、前記第1の接合対象物および前記第2の接合対象物の少なくとも一方からAuが混入しており、混入するAuの体積比率が、前記ソルダペーストに含まれる前記金属合金粉末の体積の1.5体積%を超える請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の接合物品。

【図1】
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【公開番号】特開2008−284583(P2008−284583A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131274(P2007−131274)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】