説明

ソレノイドバルブ

【課題】可動鉄芯の磁力を受ける容積を増大して小型でありながら吸引力を向上させるソレノイドバルブを提供。
【解決手段】固定鉄芯11の回りに設けられたソレノイドコイル12と、固定鉄芯11とソレノイドコイル12の吸引力により可動する可動鉄芯13と、可動鉄芯13により流体の流れを制御するようにされた弁部14とを備えたソレノイドバルブ10において、可動鉄芯13に形成した貫通穴13aをスプリング24の外径とピン圧入部13dの外径とを略同一内径に形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATまたはCVT等の自動車の自動変速機に用いられるソレノイドバルブに関し、さらに詳細にはソレノイドの作用により駆動するプランジャ(可動鉄芯)内部にスプリングを備え、ソレノイドによる吸引力とスプリングによるばね力でボールを介しシール部の開閉を行う三方切換油圧回路を形成するソレノイドバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
図2に示すソレノイドバルブ40において、ストッパ(固定鉄芯)41は断面凹状の空間部45を有する円筒部46と、前記空間部45の開口端47に設けられた鍔部48と、を備える。空間部45の円筒部46の底部49にはドレーン用の貫通穴50が設けられている。ストッパ41の円筒部46の外側46a及び鍔部48の円筒部外周面48aに接するようにソレノイドコイル42が嵌挿されている。ソレノイドコイル42はプラスチック製のボビン42aに巻き線42bが巻かれている。ボビン42aの上端42cが鍔部48に対向して配置され、ボビン42aの内径42dが円筒部46aの外周面46aに嵌挿されている。
【0003】
ストッパ41の下端41a及びボビン42aの内径42dに沿って移動可能にプランジャ(可動鉄芯)43が設けられている。ストッパ41とプランジャ43との間には非磁性体のスペーサ51、あるいはプランジャ43の端面又はストッパ41の下端41aに樹脂コーティングが設けられ、ストッパ41とプランジャ43とが直接接触しないようにされている。プランジャ43は凹状穴(挿入穴)43aを有する中空円筒状であり、底部に形成されたピン部固定穴43cにピン43bが圧入により固定されている。凹状穴43aにはスプリング52が設けられ、スプリング52の上部がストッパ41の下端41aにスペーサ51を介して当接し、スプリング52の弾発力によりプランジャ43とストッパ41が離隔するようにされている。さらに、ボビン42aの下部外周面に取り付けられてプランジャ43のガイド機能を有するヨーク44が設けられ、その下部に作動油等の流体の流れを閉止・開放する弁部49が取り付けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−156312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1において、底部にピン43bが固定されたプランジャ(可動鉄芯)43の凹状穴43aにスプリング52が挿入され、該スプリング52の弾発力によりストッパ(固定鉄芯)41とプランジャ43とが離隔するようになっており、スプリング52の座面をプランジャ43の底部に設けているので、ピン43bの固定側外径がスプリング52の内径よりも小さくする必要になり、ピン43bの径と該ピン43bを圧入する座面の径が異なって加工コストが高くなる。また、吸引力を増大するためのプランジャ43の容積確保が減少するので、ソレノイド40の外径を変えずに所望の吸引力を得ることができない。
さらに、スプリング52の座面を設けることによりピン43bの径を差し引いてプランジャ43の外径を拡大することが必要になるため、ソレノイドバルブ40の小型化が困難である。また、吸引力が不足する場合においては、ソレノイドコイル42の容積を大きくする必要もあるため、ソレノイドバルブ40の小型化がより困難となる。
【0006】
本発明は、係る課題を解決するためになされたもので、可動鉄芯においてスプリングを内設する穴径とピン部を挿入する穴径とを略同一の貫通穴に形成し、磁力を受ける容積を増大して小型でありながら吸引力を向上し、且つ、加工コストを抑えたソレノイドバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために請求項1記載の発明は、
固定鉄芯と、
前記固定鉄芯の回りに設けられたソレノイドコイルと、
前記固定鉄芯と前記ソレノイドコイルの吸引力により可動するピン部を有する可動鉄芯と、
前記可動鉄芯の内穴に設けられ前記固定鉄芯から該可動鉄芯が離隔するスプリングと、
前記可動鉄芯により流体の流れを制御するようにされた弁部と、
を備えたソレノイドバルブにおいて、
前記可動鉄芯には、前記スプリングの挿入穴と前記可動鉄芯のピン部固定穴とが略同一 内径の貫通穴に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、可動鉄芯にスプリングの挿入穴と可動鉄芯のピン部固定穴を略同一内径に形成したので、磁力を受ける容積が増大して小型でありながら吸引力を向上させ、且つ加工コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係るソレノイドバルブの概略構造を示す略縦断面図である。
【図2】従来のソレノイドバルブの概略構造を示す略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のソレノイドバルブにつき好適な実施の形態を挙げ添付図面を参照して説明する。なお、説明の都合上、図の上下方向にて以下に説明するが、ソレノイドバルブの取付方向は任意であるため方向性は限定されない。
図1は本発明の実施の形態に係るソレノイドバルブ10の縦断面図であり、ソレノイドコイルの非励磁状態を示す。
【0011】
図1に示すように、ストッパ(固定鉄芯)11は断面凹状の空間部15を有する円筒部16と、前記空間部15の開口端17に設けられた鍔部18と、を備える。空間部15の円筒部16の底部19にはドレーン用の貫通穴20が設けられている。ストッパ11の円筒部16の外側16a及び鍔部18の外周面18aに接するように抵抗値が5から30オーム程度とされたソレノイドコイル12が嵌挿されている。ソレノイドコイル12はプラスチック製のボビン12aに巻き線12bが巻かれ、必要に応じてモールドで覆われている。ボビン12aの上端12cがストッパ11の鍔部18に対向して配置され、ボビン12aの内径12dが円筒部16の外周面16aに嵌挿されている。ボビン12aの下端には後述するプランジャ(可動鉄芯)13の移動に対しガイドを行う断面L字状で円筒状の鉄製のヨーク21が固定されている。ボビン12aの下方から巻き線12bにつながる端子部22が半径方向に突出し外部から電圧16Vまでを許容とする電力が供給される。
【0012】
ストッパ11の下端11a及びボビン12aの内径12dに沿って移動可能にプランジャ13が設けられている。ストッパ11とプランジャ13との間には非磁性体のスペーサ23が設けられ、ストッパ11とプランジャ13とが直接接触しないようにされている。プランジャ13はスプリング24の外径と略同一内径とされた貫通穴13aを有する中空円筒状であり、該貫通穴13aの下部にピン13bのピン圧入部13dが圧入され、該ピン13bのフランジ部13cがプランジャ13の端面に係合して固定されている。なお、貫通穴13aは、スプリング24の内穴部分とピン13bの圧入部分とは精度要求が異なるため、仕上げ精度の違いによる僅かな穴径の違いは含まれる。
貫通穴13aにはスプリング24が設けられ、スプリング24の上端がストッパ11の下端11aに当接し、該スプリング24の下端がピン13bの上端面13eに当接してスプリング24の弾発力によりプランジャ13とストッパ11とが離隔するようにされている。スペーサ23にはスプリング24を遊挿するように穴(図示しない)が形成されている。
【0013】
プランジャ13及びヨーク21の下部に作動油等の流体の流れを閉止・開放する弁部14が設けられている。弁部14は上部に鍔14aを有し、鍔14a、ヨーク21、ソレノイドコイル12、ストッパ11の鍔部18がボディ25の両端部25a,25bで挟持するように加締め固定されている。
弁部14にはATF等の作動油が流通する流通穴14bが形成されている。図1に示すように、流通穴14bは上方にプランジャ13の底面に係合する大径開口部26a、下方に中径開口部26bをそれぞれ形成すると共に、これらの開口部26a及び26bを連通する小径開口部26cを形成している。そして、弁部14は小径開口部26cにはピン13bを収納している。一方、中径開口部26bには小径開口部26cを形成するシート27、後述するボール32のストロークを規制し該ボール32にて供給圧ポート30の開閉を行うシートリング28、及び弁部14に流入する作動油の異物を除去するストレーナ29(フィルタとも言う)がこの順序で密に接して収納されている。
【0014】
弁部14に嵌挿されたシートリング28には供給圧ポート30が形成され、この上方に開口する供給圧ポート側弁座31、該供給圧ポート側弁座31に離着座するボール32が設けられている。
供給圧ポート側弁座31とタンクポート側弁座33との間に連通して制御圧ポート34が設けられ、図示しない供給路に接続されている。タンクポート側弁座33は流通穴14bに連接し、タンク穴(図示しない)を経由してタンクポート37に連通し、ソレノイドバルブ10の外部に排出される。
【0015】
プランジャ13のピン13bはその先端がスプリング24の弾発力によりボール32に当接可能にされており、巻き線12bに通常8から12V最大15Vで通電することにより、ストッパ11側に吸引されボール32と接触しないようにされる。
図1に示すようにソレノイドコイル12が非励磁の場合には、ボール32はスプリング24の弾発力によりピン13bに押圧されて供給圧ポート側弁座31に着座し、供給圧ポート30と制御圧ポート34を遮断し、制御圧ポート34とタンクポート37とを連通させる。
【0016】
ソレノイドコイル12が励磁され、ピン13bがボール32と離れているときは、ボール32は供給圧ポート30を通過するATF等の作動油の圧力に押され、タンクポート側弁座33に着座し、供給圧ポート30と制御圧ポート34を連通し、制御圧ポート34とタンクポート37を遮断させる。これにより、ソレノイドコイル12のON−OFFによ
り最大5L/minの作動油が流通する流路を切り換える。
【0017】
以上説明した上記実施例は、本発明に限定されるものではなく、以下に説明する構造のソレノイドバルブであってもよい。
上記に説明したソレノイドバルブの構造は、非通電時に供給圧側が制御圧側につながらないノーマルクローズタイプであるが、弁部14の部品構成を変更し非通電時に供給圧側が制御圧側に連通するノーマルオープンタイプの場合であってもよい。
さらに、プランジャ13を20〜100Hz程度で駆動させつつソレノイドコイル12の励磁時間を変化させて制御圧を供給圧に対し任意に変化させるDUTYタイプであってもよい。
また、プランジャ13のピン13bの位置決め方法としてフランジ部13cを端面に係合しているが、フランジ部13cをなくして圧入による位置決めだけでも構わない。これによれば、ピン13bの加工コストの低減、及びプランジャ13の移動ストロークの調整を行うことができる。
【符号の説明】
【0018】
10 ソレノイドバルブ 11 ストッパ(固定鉄芯)
12 ソレノイドコイル 13 プランジャ(可動鉄芯)
13a 貫通穴 13b ピン
13c フランジ部 13d ピン圧入部
14 弁部 24 スプリング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定鉄芯と、
前記固定鉄芯の回りに設けられたソレノイドコイルと、
前記固定鉄芯と前記ソレノイドコイルの吸引力により可動するピン部を有する可動鉄芯と、
前記可動鉄芯の内穴に設けられ前記固定鉄芯から該可動鉄芯が離隔するスプリングと、
前記可動鉄芯により流体の流れを制御するようにされた弁部と、
を備えたソレノイドバルブにおいて、
前記可動鉄芯には、前記スプリングの挿入穴と前記可動鉄芯のピン部固定穴とが略同一 内径の貫通穴に形成されていることを特徴とするソレノイド。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−159117(P2012−159117A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17868(P2011−17868)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】