説明

ソレノイド駆動装置

【課題】駆動時に発生する熱を抑制することができるソレノイド駆動装置を提供する。
【解決手段】ソレノイド駆動装置100において、第1リレー20は、一つのソレノイドへの通電をオンまたはオフする。第2リレー22は、第1リレー20とは別の系統からソレノイドの通電をオンまたはオフする。制御部は、第1リレー20および第2リレー22での通電を制御する。制御部は、ソレノイドの通電を維持している間、第1リレー20および第2リレー22からソレノイドに交互に通電させ、第1リレー20および第2リレー22の通電を切り替える際、第1リレー20および第2リレー22のそれぞれの通電を所定時間ともにオンするよう制御する。第2通電監視部は、制御部は、第1リレー20からソレノイドへの通電状態を監視する第1通電監視部と、第2リレー22からソレノイドへの通電状態を監視する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイド駆動装置、特に駆動時に発生する熱を抑制するソレノイド駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキ制御は車両に搭載されたブレーキシステムの液圧アクチュエータを制御することにより行う。液圧アクチュエータは、ホイールシリンダへ流れ込むブレーキフルードの流入出を制御する電磁操作式の電磁弁を備える。この電磁弁にはソレノイドが設けられ、ソレノイドは電源部から駆動電流の供給をうけて駆動する。ソレノイドと電源部との通電はリレーのオンおよびオフにより制御される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ブレーキバイワイヤ方式のブレーキ制御装置では、制動力を制御する場合は常に電磁弁の開閉制御が行われる。その結果、電磁弁のソレノイドを制御する電源部およびリレーにおける発熱量が増大してしまう傾向がある。また、一つのソレノイドを複数の電源部およびリレーにより駆動すると、電源部およびリレー全体の発熱量が大きくなってしまう。
【0004】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、駆動時に発生する熱を抑制することができるソレノイド駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のソレノイド駆動装置は、一つのソレノイドへの通電をオンまたはオフする第1リレーと、第1リレーとは別の系統からソレノイドの通電をオンまたはオフする第2リレーと、第1リレーおよび第2リレーでの通電を制御する制御部と、を備える。制御部は、ソレノイドの通電を維持している間、第1リレーおよび第2リレーからソレノイドに交互に通電させ、第1リレーおよび第2リレーの通電を切り替える際、第1リレーおよび第2リレーのそれぞれの通電を所定時間ともにオンするよう制御し、制御部は、第1リレーからソレノイドへの通電状態を監視する第1通電監視部と、第2リレーからソレノイドへの通電状態を監視する第2通電監視部と、を有する。制御部は、第1通電監視部または第2通電監視部により第1リレーおよび第2リレーのうち一方のリレーに不具合があると検出すると、他方のリレーのみによってソレノイドに通電するよう制御する。この態様によると、駆動時に発生する熱を抑制することができることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明のソレノイド駆動装置によれば、駆動時に発生する熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係るソレノイド駆動装置とソレノイドを示す構成概念図である。
【図2】比較技術におけるソレノイドおよびリレーの通電状態を説明する図である。
【図3】(a)および(b)は実施形態に係るソレノイド駆動装置におけるソレノイドへの通電方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、実施形態に係るソレノイド駆動装置100とソレノイド40を示す構成概念図である。ソレノイド駆動装置100は、ソレノイド40を駆動し、第1電源部30および第2電源部32(これらを区別しない場合「電源部」という)と、ECU50とを備える。ECU50は、ソレノイド40に駆動電流を供給する第1リレー20および第2リレー22(これらを区別しない場合「リレー」という)と、第1リレー20および第2リレー22を制御する統合IC10とを備える。
【0009】
統合IC10は、第1リレー20および第2リレー22にソレノイド40を駆動するための制御信号を送出する。第1リレー20および第2リレー22は、統合IC10からの制御信号を受け取ると、その制御信号に応じて電源部とソレノイド40との通電をオンまたはオフする。
【0010】
統合IC10は第1通電監視部12および第2通電監視部14を有し、第1通電監視部12および第2通電監視部14により第1リレー20および第2リレー22の電流値を検出して、監視する。第1リレー20および第2リレー22にシャント抵抗を用いて電流値を検出してもよい。
【0011】
実施形態では、ソレノイド40は第1リレー20および第2リレー22を介して電源部から駆動電流の供給をうける。ソレノイド40はグランド34に接地されている。ソレノイドは、たとえば車両用の電子制御式ブレーキシステム(ECB)の液圧アクチュエータユニットに配置される電磁弁に設けられる。液圧アクチュエータユニットは、動力液圧源またはマスタシリンダユニットから供給されたブレーキフルードの液圧を電磁弁により適宜調整してディスクブレーキユニットに送出する。これにより、液圧制動による各車輪に対する制動力が調整される。液圧アクチュエータユニットには複数の電磁弁が設けられ、複数の電磁弁のそれぞれにソレノイドが設けられる。
【0012】
電磁弁は、車両に設けられる第1リレー20および第2リレー22から所定の駆動電流が供給されると、開弁または閉弁し、ブレーキフルードを流通または遮断する。たとえば、常開型の電磁弁では、ソレノイドのコイルに所定の駆動電流が供給されると、ソレノイドに連結する弁子がソレノイドとともに弁座に向かって移動し、弁子が弁座に当接すると、弁座に設けられた孔を塞ぎ、ブレーキフルードの流通を遮断する。ECU50はソレノイド40の駆動に伴い発熱する。
【0013】
ソレノイドは第1リレー20および第2リレー22から駆動電流の供給を受ける。これは、一方のリレーからレノイドに駆動電流を供給をすることができなくなったとしても、他方のリレーから駆動電流を供給できるよう、フェイルセーフの観点から設けられている。そのためリレー全体での発熱量は、一つのリレーで制御する場合と比べて増すことになる。そこで、ソレノイド駆動装置100は、ECU50の発熱を抑えるための制御を行う。
【0014】
図2は、比較技術におけるソレノイドおよびリレーの通電状態を説明する図である。図2では横軸が時間を示し、縦軸が通電のオンおよびオフを示す。ソレノイド40の通電状態は100%である。100%の通電状態とは、統合IC10から指令された通電量に対して十分な通電量が確保されている状態をいい、統合IC10の所望の通電量が供給されている状態をいう。
【0015】
比較技術では、ソレノイド40が100%の通電状態であるとき、第1リレー20および第2リレー22の両方からそれと同等の100%の通電状態で駆動電流が供給されている。
【0016】
ソレノイド40を駆動している際、何らかの理由で第1リレー20から駆動電流を供給することができなくなった場合、第2リレー22からそのまま駆動電流を供給することで、ソレノイド40を停止することなく駆動することができる。この態様によると、ソレノイドを駆動している際、一つのソレノイドを一つの電流供給経路で駆動する場合と比べて、発熱量が2倍になってしまう。そこで実施形態のソレノイド駆動装置100では、統合IC10は二つの電流供給経路の通電量を抑えるように制御する。
【0017】
図3は、実施形態に係るソレノイド駆動装置100におけるソレノイド40への通電方法を説明する図である。図3(a)は通常の場合での通電方法を示し、図3(b)では第2リレー22が通電不可となった場合での通電方法を示す。図3では横軸が時間を示し、縦軸が通電のオンおよびオフを示す。第1リレー20および第2リレー22の通電のオンおよびオフは統合IC10により制御される。
【0018】
図3(a)に示す通常時においてソレノイド40に時刻T1から駆動が開始され、統合IC10の所望の通電状態が維持されている。時刻T1において第1リレー20の通電がオフからオンとなり、第1リレー20からソレノイド40に駆動電流の供給が開始される。一方、時刻T1においても第2リレー22の通電はオフのままである。時刻T2になると、第1リレー20に加えて、第2リレー22の通電もオンとなり、第1リレー20および第2リレー22からソレノイド40に駆動電流が供給される。
【0019】
時刻T3になると、第1リレー20の通電はオフされ、第2リレー22からソレノイド40に駆動電流が供給される。時刻T4になると、第1リレー20の通電が再びオンされ、第1リレー20および第2リレー22からソレノイド40に駆動電流が供給される。
【0020】
時刻T5になると、第2リレー22の通電がオフされ、第1リレー20のみからソレノイド40に駆動電流が供給される。このようにソレノイド40の通電がオンされている間に、第1リレー20および第2リレー22の通電のオン・オフを繰り返すことで、第1リレー20および第2リレー22の通電量を減らすことができ、統合IC10での発熱量を抑えることができる。また、時刻2と時刻T3の間、および時刻T4および時刻T5の間の所定時間にリレーの切り替えが実行されており、リレーの切り替えでは第1リレー20および第2リレー22がともに所定時間だけオン状態にされている。これにより、通電オン時の立ち上がりやリレーの応答遅れを回避して、ソレノイド40を一時的に停止することなく、ソレノイド40に所望の通電状態を確実に維持することができる。
【0021】
統合IC10は、第1通電監視部12および第2通電監視部14により第1リレー20および第2リレー22からソレノイド40への通電状態を監視する。統合IC10は、第1リレー20に指令した制御情報と、第1通電監視部12により取得した第1リレー20の通電状態とを比較して、第1リレー20の通電状態に不具合があるかどうか検出する。たとえば、第1リレー20に通電のオンを示す制御信号を送出しても、第1通電監視部12により検出した電流がゼロのままであれば統合IC10は断線などの不具合があると検出する。また同様に、統合IC10は、第2リレー22に指令した制御情報と、第2通電監視部14により取得した第2リレー22の通電状態とを比較して、第2リレー22の通電状態に断線などの不具合があるかどうか検出する。これにより、第1リレー20および第2リレー22の通電状態の不具合を検出することができ、それぞれの電流供給経路からソレノイド40に通電できているかどうか監視することができる。統合IC10は、第1リレー20または第2リレー22の通電状態の不具合を検出すると、ソレノイド40への通電方法を変更する。
【0022】
図3(b)に示すように、ソレノイド40の通電状態は時刻Sから100%の状態である。第2リレー22が不具合により通電できない状態となった場合には、第1リレー20のみがソレノイド40への駆動電流の供給を行う。これによりソレノイド40の通電状態を100%の状態に維持することができる。
【0023】
具体的には、統合IC10は、第2通電監視部14により第2リレー22の通電状態に不具合があることを検出すると、リレーの切り替えを停止し、その後のソレノイド40への通電を第1リレー20のみにより実行する。つまり統合IC10は、第1通電監視部12および第2通電監視部14により第1リレー20および第2リレー22の通電状態を監視し、いずれか一方のリレーの不具合を検出すると、他方のリレーのみによりソレノイド40への通電を実行させる。これにより、一つの電流供給経路に不具合が発生してもソレノイド40への通電を維持することができる。
【0024】
実施形態におけるソレノイドはECBに配置される電磁弁に設けられる態様を説明したが、それ以外のソレノイドにもソレノイド駆動装置100を用いることは当然に可能である。
【0025】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0026】
10 統合IC、 12 第1通電監視部、 14 第2通電監視部、 20 第1リレー、 22 第2リレー、 30 第1電源部、 32 第2電源部、 34 グランド、 40 ソレノイド、 50 ECU、 100 ソレノイド駆動装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイドを駆動するための通電をオンまたはオフする第1リレーと、
前記第1リレーとは別の系統から前記ソレノイドを駆動するための通電をオンまたはオフする第2リレーと、
前記第1リレーおよび前記第2リレーのオンおよびオフを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記ソレノイドの通電を維持している間、前記第1リレーおよび前記第2リレーからの前記ソレノイドへの通電を切り替え、前記ソレノイドへの通電を切り替える間、前記第1リレーおよび前記第2リレーのそれぞれの通電をともに所定時間オン状態にするよう制御し、
前記制御部は、前記第1リレーから前記ソレノイドへの通電状態を監視する第1通電監視部と、前記第2リレーから前記ソレノイドへの通電状態を監視する第2通電監視部と、を有し、
前記制御部は、前記第1通電監視部または前記第2通電監視部により前記第1リレーおよび前記第2リレーのうち一方のリレーに不具合があると検出すると、他方のリレーによって前記ソレノイドに通電するよう制御することを特徴とするソレノイド駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−94778(P2012−94778A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242672(P2010−242672)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】