説明

タイヤの加硫方法およびそれに用いられるブラダー

【課題】有機繊維よりなるコードを配列したベルト層を1層以上積層してなるベルトとトレッドとを有する使用済みタイヤのトレッドの厚さを自動的に測定する方法およびそのための装置を提供する。
【解決手段】テラヘルツ波をタイヤの軸方向に照射する照射装置1をタイヤ半径方向に移動させながら、タイヤを透過する波の強度を、照射装置1のタイヤ半径方向位置ごとに測定し、その測定結果からトレッドの厚さを特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機繊維よりなるコードを配列したベルト層を1層以上積層してなるベルトとトレッドとを有する使用済みタイヤのトレッドの厚さを測定したあとベルトが露出するまでトレッドをバフしてタイヤを更正するに際し、トレッドの厚さを測定する方法、およびこの測定方法に用いられる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、航空機用タイヤなど、高価なタイヤにあっては、摩耗により使えなくなった使用済みタイヤに、再度ゴムを貼り付けることにより使用できる状態にする、いわゆるタイヤの更生が行われている。この場合、通常、トレッドにまだ摩耗していない残余の部分があっても、確実にトレッドを新しくすることを目的に、一旦その部分をバフして新しいトレッドゴムをベルトの半径方向外側に貼り付けて加硫することが行われている。自動的にトレッドをバフするためには、バフするトレッド厚さを予め知っておく必要があるが、使用済みタイヤのトレッド残ゴム厚さは一定でないため、その厚さをタイヤごとに測定しなければならず、従来は、トレッドにベルトに達するパイロットホールと呼ばれる確認孔を数カ所、例えば3カ所開け、その深さを測定してトレッドの厚さを特定していた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−219523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、パイロットホールを開けるための作業工数、および、パイロットホールによって傷ついたベルトのゴムを修復するための作業工数等が膨大なものとなり、生産性改善のネックとなっていた。
【0005】
もし、ベルトが、重荷重タイヤのようにスチールコードよりなるコードを配列したベルトプライでできている場合には、例えば渦電流センサを用いてベルトの深さ位置を測定することができるが、航空機用タイヤのようにベルトが有機繊維よりなるコードを配列したベルトプライでできている場合には、このようにしてベルトの深さ位置を測定することができず、これに代わる新たな測定方法が求められていた。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、有機繊維よりなるコードを配列したベルト層を1層以上積層してなるベルトとトレッドとを有する使用済みタイヤのトレッドの厚さを自動的に測定する方法およびそのための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1>は、有機繊維よりなるコードを配列したベルト層を1層以上積層してなるベルトとトレッドとを有する使用済みタイヤのトレッドの厚さを測定したあとベルトが露出するまでトレッドをバフしてタイヤを更正するに際し、トレッドの厚さを測定する方法において、
テラヘルツ波をタイヤの軸方向に照射する照射装置をタイヤ半径方向に移動させながら、タイヤを透過する波の強度を、照射装置のタイヤ半径方向位置ごとに測定し、その測定結果からトレッドの厚さを特定するトレッド厚さ測定方法である。
【0008】
<2>は、<1>において、前記タイヤを航空機用タイヤとするトレッド厚さ測定方法である。
【0009】
<3>は、<1>もしくは<2>のいずれかのトレッド厚さ測定方法に用いられるトレッド厚さ測定装置であって、
テラヘルツ波を照射する照射装置と、タイヤを透過したテラヘルツ波を検出する検出装置と、前記照射装置および検出装置を前記タイヤに対して、タイヤの半径方向に沿って相対変位させる変位装置とを具えるトレッド厚さ測定装置である。
【発明の効果】
【0010】
<1>によれば、テラヘルツ波をタイヤの軸方向に照射する照射装置をタイヤ半径方向に移動させながら、タイヤを透過する波の強度を、照射装置のタイヤ半径方向位置ごとに測定し、その測定結果からトレッドの厚さを特定するので、自動的にトレッドの厚さを測定することができる。
【0011】
<2>によれば、前記タイヤを、現在特に生産性の向上が問題となっている航空機用タイヤとするので、前記効果を大きなものとすることができる。
【0012】
<3>によれば、テラヘルツ波を照射する照射装置と、タイヤを透過したテラヘルツ波を検出する検出装置と、前記照射装置および検出装置を前記タイヤに対して、タイヤの半径方向に沿って相対変位させる変位装置とを具えるので、前記トレッド厚さ測定方法を簡易に実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る実施形態のトレッド厚さ測定装置を示す概略正面図である。
【図2】トレッド厚さ測定装置を示す概略側面図である。
【図3】タイヤを透過するテラヘルツ波を示す概略図である。
【図4】検知したテラヘルツ波の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態のトレッド厚さ測定装置を示す概略正面図であり、図2は、その概略側面図である。トレッド厚さ測定装置10は、テラヘルツ波を照射する照射装置1と、照射装置1から照射されたタイヤ11を透過したテラヘルツ波を検出する検出装置2と、照射装置1および検出装置2をタイヤ11の半径方向に相対変位させる変位装置3を具えて構成される。ここで、変位装置3は、照射装置1および検出装置2をタイヤ11に対して相対変位させればよく、図示の場合は、タイヤ11の側を固定した状態にして照射装置1および検出装置2を変位させるものを例示したが、代わりに、照射装置1および検出装置2の側を固定してタイヤを変位させるものであってもよい。
【0015】
また、トレッド厚さ測定装置10は、タイヤ11をその周方向に回転可能に支持するタイヤ回転支持台4と、タイヤを周方向に所定角度だけ回転させるタイヤ回転手段5とを具える。図示のタイヤ回転手段5は、タイヤの軸線を水平にした状態で、タイヤのビード部内周の上側を回転自在に支持する支持ローラ6により構成され、支持ローラ6を回転することによって、支持ローラ6の外径に対するタイヤの内径の比を減速比としてタイヤを回転させることができる。
【0016】
図3は、トレッドを透過するテラヘルツ波を示す概念図であり、図4は、検出装置2が検出するテラヘルツ波の強度を縦軸に、時間を横軸にとって、検出されたテラヘルツ波の強度を模式的に示すグラフであり、図2、図3を参照して、この装置を用いてトレッドの厚さを測定する方法の原理について説明する。照射装置1は、テラヘルツ波をタイヤの軸方向に沿って照射するよう配置され、検出装置2は、照射装置1からタイヤを軸方向に横断して透過してきたテラヘルツ波を検出するよう配置され、変位装置3は、これらの装置1、2を作動させた状態で、タイヤ11の半径方向外側から中心に向かって予め定められた速度vで変位させる。
【0017】
装置1、2がタイヤの半径方向外側の位置(図3のAの位置)にいる時刻からタイヤの外径に対応する位置(図3のBの位置)に到達する時刻t1までは、テラヘルツ波は空気中を通過するだけなので、強度の減衰はほとんどないが、装置1、2がタイヤの外径に対応する位置を過ぎると、テラヘルツ波はタイヤのトレッド8のゴムによって減衰し、装置1、2がベルト9の位置(図3のCの位置)に到達する時刻t2までは、一定の強度E0で推移する。装置1、2がベルト9の位置を過ぎると減衰がさらに大きくなって、検出装置2が検出する強度はさらに低下する。
【0018】
以上説明したように、トレッドの厚さ分に対応する位置に装置1、2が位置していたのは、時刻t1からt2までの間であるから、この間の時間T(=t2-t1)に既知の移動速度vを掛け合わせることによってトレッドの厚さを知ることができる。
【0019】
そして、時刻t1、t2を検知するには、トレッド部分に対応する検知強度E0、予め定められた閾値をΔE1、ΔE2として、E0+ΔE1に到達した時刻をt1とし、E0−ΔE2に到達した時刻をt2とすればよい。
【0020】
以上説明した測定原理に従って、トレッド厚さ測定装置10を用いてトレッドの厚さを測定する方法について説明する。まず、タイヤをタイヤ回転台4にセットする。そして、タイヤ11をこの状態に固定して照射装置1および検出装置2をタイヤの半径方向外側の位置から中心に向かって移動させ、図2に示したようなデータを収集し、先に述べた原理によって、このタイヤの姿勢におけるトレッドの厚さを特定する。
【0021】
次いで、タイヤを予め定められた角度だけ回転させ、例えば、タイヤの周方向に3カ所に振り分けた角度位置におけるトレッドの厚さを検知する場合には、120°回転させて、同様の操作を行うことにより、新しい周方向位置でのトレッド厚さを知ることができる。このようにして、タイヤ周方向に並んだ代表位置におけるトレッド厚さを測定することができ、しかも、代表位置を周方向に密に配列することによってより正確なトレッド厚さの周方向分布を知ることができ、この分布データに基づいて、周方向位置に応じてバフ深さを変えることにより、周方向に均一なバフ後表面を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0022】
1 照射装置
2 検知装置
3 変位装置
4 タイヤ回転台
5 タイヤ回転手段
8 トレッド
9 ベルト
10 トレッド厚さ測定装置
11 タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機繊維よりなるコードを配列したベルト層を1層以上積層してなるベルトとトレッドとを有する使用済みタイヤのトレッドの厚さを測定したあとベルトが露出するまでトレッドをバフしてタイヤを更正するに際し、トレッドの厚さを測定する方法において、
テラヘルツ波をタイヤの軸方向に照射する照射装置をタイヤ半径方向に移動させながら、タイヤを透過する波の強度を、照射装置のタイヤ半径方向位置ごとに測定し、その測定結果からトレッドの厚さを特定するトレッド厚さ測定方法。
【請求項2】
前記タイヤを航空機用タイヤとする請求項1に記載のトレッド厚さ測定方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のトレッド厚さ測定方法に用いられるトレッド厚さ測定装置であって、
テラヘルツ波を照射する照射装置と、タイヤを透過したテラヘルツ波を検出する検出装置と、前記照射装置および検出装置を前記タイヤに対して、タイヤの半径方向に沿って相対変位させる変位装置とを具えるトレッド厚さ測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−261902(P2010−261902A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114690(P2009−114690)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】