タイヤ情報監視装置
【課題】タイヤ情報監視装置において信号を送信しているタイヤの配置方位を簡便な装置で正確に特定すること。
【解決手段】情報を送信するタイヤの数と同数のアンテナであって、それぞれが、各タイヤのそれぞれの方向に他のアンテナに比べて最も高い指向性を有した複数のアンテナ1と、アンテナの数と同数の遅延回路であって、各アンテナによる受信信号を、それぞれ異なる遅延時間だけ遅延させる複数の遅延回路2と、全ての遅延回路の出力信号を時系列信号として合成する合成器3と、合成器から出力される時系列信号から、最大受信レベルの信号を選別する選別装置と、選別装置により最大受信レベルと判定された信号を出力したアンテナを特定し、そのアンテナの指向性から情報を送信したタイヤを特定するタイヤ特定装置とを有する。
【解決手段】情報を送信するタイヤの数と同数のアンテナであって、それぞれが、各タイヤのそれぞれの方向に他のアンテナに比べて最も高い指向性を有した複数のアンテナ1と、アンテナの数と同数の遅延回路であって、各アンテナによる受信信号を、それぞれ異なる遅延時間だけ遅延させる複数の遅延回路2と、全ての遅延回路の出力信号を時系列信号として合成する合成器3と、合成器から出力される時系列信号から、最大受信レベルの信号を選別する選別装置と、選別装置により最大受信レベルと判定された信号を出力したアンテナを特定し、そのアンテナの指向性から情報を送信したタイヤを特定するタイヤ特定装置とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のタイヤの空気圧や温度などのタイヤ情報を、タイヤに設置された送信器から送信して、これを車両の中央部の天井に設けられたアンテナにより受信するタイヤ情報監視装置に関する。特に、その情報を発信しているタイヤを、アンテナの切り替えをすることなく、かつ、タイヤのID情報に依存することなく、特定することができる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの空気圧を監視する装置として、各タイヤに配設された圧力センサで空気圧を検出し、検出された空気圧を、各タイヤに配置された送信器により送信して、車室内の天井に配置されたアンテで受信して、タイヤ空気圧を、常時、監視する装置が知られている。この装置において、受信したタイヤ空気圧が、どのタイヤの空気圧であるかは、受信データに含まれるタイヤに固有なIDにより、特定していた。しかしながら、タイヤの車両における配置位置を変更した場合には、配置位置とIDとの対応関係がとれず、どこに配置されたタイヤの空気圧であるかを特定することはできない。このため、タイヤの配置位置を交換する毎に、タイヤ空気圧監視装置において、タイヤの配置位置とIDとの対応表を更新する必要があった。このため、この操作は面倒であり、特に、車両の保有者自身が、自分で、タイヤの配置位置を交換する場合には、このテーブルの更新は、困難であった。
【0003】
そこで、この課題を解決するために下記特許文献1に開示の技術が知られている。この特許文献1の技術は、アンテナを指向性アンテナとして、この指向性を、タイヤの配置位置の方位に切り換えることで、受信した情報を、その指向性の方位に位置するタイヤから発信した情報として特定するものである。また、送信アンテナから、各タイヤの配置方位に指向性を向けて、データ要求信号を出力して、その信号を受信したタイヤの送信器のみが応答して、そのタイヤの空気圧データを送信する技術が開示されている。各タイヤの配置方位に指向性を向けてデータ要求信号を送信するので、受信したデータがどのタイヤから送信されたものかが特定できる。
【0004】
また、特許文献2に記載の技術は、受信アンテナにおいて、各タイヤの配置方位に指向性を切り換えて、受信した各タイヤからの送信データに含まれるタイヤのIDと、アンテナの指向性との対応関係を記憶する技術が開示されている。これによると、タイヤの配置位置が変更になっても、その対応表において、タイヤの配置方位と、タイヤIDとが、最新のものに更新されることから、以後、受信したデータに含まれるIDからタイヤ空気圧データが、どのタイヤから送信されたものであるかを特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2006/038557
【特許文献2】特開2007−320410
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1、2の方法によると、受信アンテナの指向性を変化させてデータを受信し、その指向性から、その受信データを発信したタイヤを特定しているので、タイヤの配置位置が交換されても、IDとタイヤの配置関係とが、更新されるために、タイヤ空気圧データを送信したタイヤを、特定できるという利点がある。
【0007】
しかしながら、各タイヤに配設される送信器は、回転する円周上に設けられている。例えば、送信器は、円形タイヤの圧力空気の取り入れ弁付近に設けられているので、タイヤが回転するに連れて、その送信器と、受信アンテナの距離が変化することになる。この結果、受信信号のレベルは、タイヤの回転に伴って変動することになる。
【0008】
このため、データを送信しているタイヤの方位に受信アンテナの指向性を向けて受信しても、送信器と受信アンテナの距離が最も小さい位置で受信した第1の場合の信号レベルと、その距離が最も大きい位置で受信した第2の場合の信号レベルとが、大きく異なることになる。
【0009】
一方、指向性を、データを送信しているタイヤの方位に向けていない状態で、送信データを受信した場合の信号レベルは、第1の場合の受信レベルより小さくなるが、第2の場合の受信レベルよりも大きくなる場合がある。この場合には、実際に、データを送信しているタイヤの方向とは異なる、受信レベルの大きい方のアンテナの現在の指向性の方位をデータを送信しているタイヤの方位と、誤判定することになる。
【0010】
具体的にいうと、タイヤ空気圧センサに装着される送信器は、非常に小型であることが求められるため、送信信号のレベルが小さい。しかも、送信器の装着される場所が、上述のように、限定されているため、タイヤの回転角度に対する受信信号のレベル変動は大きい。この受信信号のレベル変動幅は、いかなる周波数を用いても、10dB以上は生じるのが一般的である。すなわち、単純に指向性(主ビーム)をタイヤの配置方位に向け、その受信信号の有無、あるいは、受信信号のレベルの大小関係のみで方位を特定する場合には、指向性を向けた方位から、受信した信号のレベルと、その指向性の方位と異なる方位から受信した信号のレベルとの比(D/U比)が最低でも10dB以上必要となる。
【0011】
しかしながら、TPMSのように微弱無線電波システムで認可されている周波数(315MHz、433MHz、125MHz、2.5GHz)のうち、2.5GHz帯以外の周波数においては、小型化を維持しながら、上記特性を満足できるのは現実には困難である。また、方位を特定するために、D/U比の大きい指向性ビームを用いた場合には、その指向性を特定方位に向けることは、指向性を向けていない方位に配置された送信器からの送信データが受信できないということを意味する。すなわち、指向性と送信タイミングとの同期が必要となり、アンテナの指向性が自己の送信器に向けられるまで、データの送信ができないことを意味する。これは、間欠送信を行う無線システムにおいて、通信タイミングが特定されるということは実用上問題が大きい。逆に、D/U比を小さくして、アンテナの指向性が向けられていない方位からの受信信号も受信可能としてタイヤ空気圧を常時監視できるようにした場合には、当然に、指向性を向けられた方位からの受信信号の最大レベルと最小レベルとの間に、指向性を向けられていない方位からの受信信号のレベルが存在することになり、レベルから方位を特定する場合に誤判定が多くなる。
【0012】
また、上記の装置では、切り替え器を設けて、各アンテナを選択するためのスイッチング制御や、各アンテナからの送信制御が必要となる。
そこで、本発明の目的は、各アンテナの切り替え制御をすることなく、タイヤの回転により生じる受信信号のレベル変動があっても、情報を送信しているタイヤを精度良く、容易に、特定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明は、車両の各タイヤにおける検出された情報を、間欠的に各タイヤに設けられた送信器により送信して、この情報を車両に取り付けられたアンテナにより受信して、各タイヤの状態を監視するタイヤ情報監視装置において、情報を送信するタイヤの数と同数のアンテナであって、それぞれが、各タイヤのそれぞれの方向に他のアンテナに比べて最も高い指向性を有した複数のアンテナと、アンテナの数と同数の遅延回路であって、それぞれが各アンテナに接続され、各アンテナによる受信信号を、それぞれ異なる遅延時間だけ遅延させる複数の遅延回路と、全ての遅延回路の出力信号を時系列信号として合成する合成器と、合成器から出力される時系列信号から、最大受信レベルの信号を選別する選別装置と、選別装置により最大受信レベルと判定された信号を出力したアンテナを特定し、そのアンテナの指向性から情報を送信したタイヤを特定するタイヤ特定装置とを有し、各遅延時間は、合成器の出力する時系列信号において、各タイヤから送信される情報の一パケットが時間軸上において重ならないにように設定されていることを特徴とする。
【0014】
本発明では、情報を送信するタイヤの数と同数のアンテナが設けられている。そして、各アンテナは、全てのタイヤから送信される信号の受信が可能である。タイヤが回転することにより、アンテナで受信される信号の電力が変動しても、全てのアンテナは、全てのタイヤから送信される信号を受信することが可能に構成されている。そして、各タイヤからの情報の送信に対して、そのアンテナに対応した異なる一つのアンテナの受信信号レベルが最も高くなるように構成されている。
【0015】
本発明は、各アンテナには、それぞれの遅延回路が接続されており、各アンテナの受信信号は、それぞれの異なる遅延時間だけ遅延されて出力される。そして、遅延された各信号は、合成器により、時系列信号として、時間軸上で合成される。この結果、次段の選別装置、タイヤ特定装置は、アンテナが複数であっても、一つで済む。
【0016】
各遅延時間は、合成器の出力する時系列信号において、各タイヤから送信される情報の一パケットが時間軸上において重ならないにように設定されていることが必要である。すなわち、合成器の出力する時系列信号において、各アンテナで受信されたパケットが、区別できるように、各遅延時間は設定される必要がある。これにより、最大受信レベルを示すパケットの時刻から、そのパケットを受信したアンテナを特定することができ、そのアンテナから、そのパケットを送信したタイヤを特定することができる。
【0017】
第2の発明は、各アンテナは、受信感度の高い方向と受信感度の低い方向を有する指向性アンテナであり、受信感度の低い方向から到来するタイヤからの最小受信レベルの情報も受信可能であることを特徴とする。これにより、合成器の出力する時系列信号において、信号レベルの変化形状と、情報を送信したタイヤとの関係を一意的に決定することが可能となる。
【0018】
第3の発明は、合成器の出力する時系列信号において、最小遅延時間で出力されるパケットと、最大遅延時間で出力されるパケットとの間の時間差の最大値は、情報の間欠的送信における情報の送信されていない期間の最小値よりも小さくするように各遅延時間が設定されていることを特徴とする。任意の一つのタイヤから各アンテナへの電波の伝搬遅延時間が異なる場合には、合成器の出力する時系列信号において、最小遅延時間で出力されるパケットと、最大遅延時間で出力されるパケットとの間の時間差は、情報を送信するタイヤに依存して、変化する。したがって、合成器の出力する時系列信号において、一情報の最も遅延したパケットが、少なくとも、次のタイミングで送信される情報の最も遅延が小さいパケットとが重ならないようにするためには、最小遅延時間で出力されるパケットと、最大遅延時間で出力されるパケットとの間の時間差の最大値は、情報の間欠的送信における情報の送信されていない期間の最小値よりも小さくする必要がある。
【0019】
第4の発明は、合成器の出力する時系列信号において、合成器の出力する時系列信号において、パケットと次のパケットとの間隔の最小値は、情報の一パケットの出力期間よりも長くなるように、各遅延時間が設定されていることを特徴とする。設定する遅延時間の差を一定しても、任意の一つのタイヤから各アンテナへの電波の伝搬遅延時間が異なる場合には、合成器の出力する時系列信号のパケットとパケットとの間の間隔は、情報を送信しているタイヤに依存して変化する。したがって、合成器の出力する時系列信号において、隣接するパケットが重ならないようにするには、パケットとパケットの間隔、すなわち、パケットの先頭と次のパケットの先頭との間隔の最小値は、情報の一パケットの出力期間よりも長くなるように設定することが必要である。もちろん、各タイヤと各アンテナ間の伝搬遅延時間が無視できるか、等しい場合であっても、各遅延時間の間隔を一定にしない場合には、その遅延時間の間隔には最小値が存在するので、その最小値が、情報の一パケットの出力期間よりも長くなるように設定する必要がある。
【0020】
第5の発明は、各タイヤから各アンテナへの信号の伝搬遅延時間の差の最大値は、遅延時間の差の最小値から情報の一パケットの出力期間を引いた時間よりも、十分に小さくなるように、複数のアンテナは、近接位置に配設されていることを特徴とする。合成器の出力する遅延時間の差が最小である2つのパケットにおいて、伝搬遅延時間の差が最大となった場合においても、その2つのパケットが重ならないためには、各タイヤから各アンテナへの信号の伝搬遅延時間の差の最大値が、遅延時間の差の最小値から情報の一パケットの出力期間を引いた時間よりも、十分に小さくなければならない。
【0021】
第6の発明は、選別装置によりる最大受信レベルの選別は、合成器の出力する時系列信号において、瞬時的な受信レベルの最大値をとるパケットの選別であることを特徴とする。合成器の出力する時系列信号レベルは、パケット毎に、連続した値を示す。したがって、この時系列信号から、瞬時的な受信レベルの最大値をとるパケットを特定することができる。そして、例えば、そのパケットが現れる順番により、そのパケットを出力したアンテナを特定することができる。このアンテナから、そのパケットを送信したタイヤを特定することができる。
【0022】
また、第7の発明は、選別装置による最大受信レベルの選別は、合成器の出力する時系列信号において、情報の出力期間以下の長さの時間窓における積分値又は平均値が、最大値をとるパケットによる選別であることを特徴とする。合成器の出力する時系列信号は、パケット毎に連続したレベルを示す。したがって、このパケットの長さ以下の時間窓での信号レベルの積分値や平均値を、各パケット毎に求めることができる。そして、この値が最大となるパケットが特定される。その後、例えば、そのパケットが現れる順番により、そのパケットを出力したアンテナを特定でき、そのアンテナからそのパケットを送信したタイヤを特定することができる。合成器の出力する時系列信号において、パケットが存在しない期間では、搬送波は存在しない。したがって、パケットの先端と末端とにおいて、受信レベルが急変することから、このレベルの急変を検出することで、各パケットを検出することができる。時間窓は、これにより検出された各パケット内において設定しても、時間窓を、時間軸上において、順次移動しながらその時間窓における積分値又は平均値を出力するようにして、その値が最大となる時間窓の存在位置を決定するようにしても良い。これにより、最大値をとるパケットを特定することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、各アンテナの出力に、それぞれ異なる遅延時間の遅延回路を接続して、それらの遅延回路の出力を合成器で合成して、時系列信号として出力し、その時系列信号の信号レベルの分布特性から、情報を送信しているタイヤを特定するようにしたものである。したがって、従来のように、受信アンテナを順次切り替える装置や、その切り替えを制御する装置が必要でなく、本発明は、小型で簡便な装置を実現することができる。
【0024】
また、本発明では、タイヤが回転しており、一パケットの送信期間において、あるアンテナで受信される信号のレベルが変動しても、情報を送信しているタイヤの方位を特定することができる。各アンテナは、感度のみが異なるだけで、その受信レベルの時間変動特性と同一の時間変動特性の信号を受信することになる。したがって、合成器の出力する時系列信号において、アンテナの数に対応したパケットが存在するときに、1パケット内の信号レベルがタイヤの回転に伴って回転しても、各パケットでの信号レベルの変化特性は、レベルの大きさの倍率が異なるだけで変化特性は等しい。このことから、信号の瞬時的最大値が最大となるパケットや、1パケット以下の期間での信号レベルの積分値又は平均値が、最大値をとるパケットを特定することが可能である。このパケットの現れる順番や、このパケットが現れる相対時刻により、そのパケットを出力したアンテナを特定することができる。そして、そのアンテナからそのパケットを送信しているタイヤを特定することができる。したがって、タイヤが回転していても、方位の誤判定が防止される。また、本発明では、上記のように、パケットの信号レベルの分布特性により情報を送信しているタイヤを特定するので、情報には、特に、タイヤ固有のIDを含ませる必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の具体的な実施例にかかる実施例1の装置の配置図。
【図2】実施例の送信器の構成図。
【図3】実施例の受信器の構成図。
【図4】実施例の装置の配置関係とアンテナの指向性との関係を示した説明図。
【図5】実施例の装置の一つのアンテナの指向性を示した説明図。
【図6】タイヤの回転角度に対する受信レベルの変化を示した特性図。
【図7】アンテナの指向性の方位から到来する信号と、それとは反対方向から到来する信号のその受信アンテナにおける受信レベルの時間変化を示した特性図。
【図8】実施例の作用を説明するための各アンテナにより同時に受信される信号の受信レベルの時間変化を示した特性図。
【図9】同実施例の装置の合成器の出力する時系列信号を示した説明図。
【図10】実施例の装置をCPUの処理手順を示したフローチャート。
【図11】実施例の装置において合成器の出力する時系列信号のパケットが干渉しない条件を説明するためのタイミングチャート。
【図12】4方位に指向性を有する指向性アンテナの構成図。
【図13】同指向性アンテナの1つの要素を示した構成図。
【図14】指向性アンテナの要素に対する受電点と指向性との関係を示した説明図。
【図15】他の指向性アンテナの構成図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
本実施例のタイヤ空気圧監視システム(タイヤ情報監視装置)は、図1に示すように、各車輪にそれぞれ設けられる送信器ユニット200 と、車体本体に設けられる受信器ユニット100 と、を備えている。送信ユニットは、各タイヤ毎300-1,300-2,300-3,300-4 ( 以下、区別する必要がない場合には、300 で代表して記す。) に、送信ユニット200-1 ,200-2 ,200-3 ,200-4(以下、区別する必要がない場合には、200 で代表して記す。) が設けられている。各送信器ユニット200 は、それぞれ対応する車輪のタイヤ内部(例えば、ホイール)に固定されており、対応する車輪と共に一体的に回転する。また、受信器ユニット100 は、車体本体の天井部の中央付近に配置されている。
【0028】
各送信器ユニット200 は、図2に示すように、各種制御を行う制御回路24を備えている。制御回路24には、対応する車輪300 のタイヤ空気圧に応じた信号を出力する圧力センサ25が接続されている。センサ25の出力信号は、制御回路24に入力され、センサ25の出力に基づいて、対応する車輪300 のタイヤ空気圧を測定する。この場合、制御回路24は、その測定した空気圧を示す情報と、自己の送信器ユニット200 を他の送信器ユニット200 と識別するための固有の識別コードIDを示す情報とを含む送信信号を生成し、変調回路23に出力する。変調回路23は、信号を変調し、送信回路22に出力する。送信回路22は変調波を所定周波数(例えば、数百MHzのRF帯)の搬送波にのせて送信アンテナ21に出力し、送信アンテナ21より信号が送出される。
【0029】
図3に示すように、受信器ユニット100 は、タイヤの数に等しい数の受信アンテナ1-1 、1- 2、1- 3、1-4 ( 以下、区別する必要がない場合には、受信アンテナは、1 で代表して記す。) が設けられている。各受信アンテナ1-1 、1- 2、1- 3、1-4 には、それぞれ、遅延時間が異なるT1、T2、T3、T4の遅延回路2-1 、2- 2、2- 3、2-4(以下、区別する必要がない場合には、遅延回路は、1 で代表して記す。) が接続されている。そして、各遅延回路2-1 、2- 2、2- 3、2-4 により、それぞれ、遅延された信号は、合成器3により時間軸上で合成されて、時系列信号となる。この時系列信号は、A/D変換器4により所定周期でサンプリングされてディジタル信号に変換されて、次のCPU5によって読み取られ、コンピュータ装置によりデータ処理される。
【0030】
CPU5は、ROM7に記憶されているプログラムにしたがって、本発明の情報を送信するタイヤを特定し、そのタイヤ特定情報をRAM6に記憶する処理を行う他、RF変調された信号をディジタル復調し、タイヤの情報、固有識別コードID情報を復元し、RAM6に記憶すると共に表示部(図示せず)に表示する。
【0031】
実施例のタイヤ空気圧監視システムにおいて、各送信器ユニット200 はそれぞれ、予め定められた所定時間(例えば1分など)間隔で、圧力センサ25の出力信号を入力して、自己の車輪300 のタイヤ空気圧を測定する。そして、その測定が完了すると、その空気圧情報と自己の固有の識別コードIDを示す情報とを含む送信信号を生成し、その送信信号を所定電波の搬送波にのせて送信アンテナ21から外部へ向けて送信させる。尚、各送信器ユニット200 が空気圧を測定して送信信号を送信する時間間隔は、送信タイミングがずれていれば、送信器ユニット200 間で互いに一致するようにしても良い。しかし、送信時間間隔は、送信器ユニット200 毎に、送信信号が衝突しないように、所定の時間幅内でランダムに変化させても良い。
【0032】
一方、受信器ユニット100 は、図4、図5に示すように、各受信アンテナ1-1 、1- 2、1- 3、1-4 は、指向性が、各車輪300 の配置位置FR(前輪右側)、FL(前輪左側)、RL(後輪左側)、RR(後輪右側)の各方位に、最大利得が得られるような特性を有し、他の方位からの信号の受信に対しては、受信することは可能であるが、大きな利得が得られないような指向特性を有している。
【0033】
次に、本発明による方位識別手法について説明する。図5は、FRの方位に指向性を有する受信アンテナ1-1 の指向性パターンを示す。ここでは、FRのみを示したが、FLに指向性を有する受信アンテナ1-2 、RLに指向性を有する受信アンテナ1-3 、RRに指向性を有する受信アンテナ1-4 についても、指向性ビームの方位のみが異なり、指向性パターンはほぼ同様であるとする。
【0034】
図6は、車輪300 が回転している時の受信アンテナ1 で受信した時の受信レベルRSSIの一例を示す。また、送信器200 からの一つの情報(一つのパケット)の送信時間T をT ≒15msecとし、時速100km で走行した場合の受信レベルRSSIの時間変化特性のを一例を図7に示す。ここで実線は、信号を送信しているタイヤの配置方位に指向性を有する受信アンテナで受信された信号の受信レベルRSSIの時間変化特性を示し、破線は、信号を送信しているタイヤの配置方位と180 度異なる方位に指向性を有する受信アンテナで受信された信号の受信レベルRSSIの時間変化特性を示す。両者は、一パケットの送信時間T 内において、20dB以上のレベル変動があることが分かる。
【0035】
受信レベルの変動特性について、さらに、詳しく説明する。タイヤFRの回転中心にo−xyz座標系の原点をおき、車の進行の向きにx軸の正の向きを、タイヤFLの向きにy軸の正の向きを、高さ方向にz軸の正の向きをとる。受信器100 のアンテナ1-1 の位置の座標を(x0 ,y0 ,z0 ) とし、送信器200 のアンテナ21の位置の座標を(x,y) とし、回転半径をr 、アンテナ21とアンテナ11間の距離をL とする。また、アンテナ21の位相をθとする。θの向きは、x 軸から-z軸に向かう方向を正とし、x 軸の位相を零とする。すると、距離L は、次式で表される。
【0036】
【数1】
ただし、
【数2】
【数3】
【0037】
信号がタイヤFRから送信されている場合の受信レベルRSSIと指向性との関係は次のようになる。信号の到来方位がFRの場合の感度をa 、それと方位が180 度異なる信号の到来方位RLの場合の感度をb 、信号の到来方位がFL、RRの場合の感度を等しいと仮定してc とする。b<c<a の関係が設立する。したがって、到来方位FRでの受信レベルは、aL2に比例し、到来方位RLでの受信レベルは、bL2に比例し、到来方位FL、RRの場合の受信レベルは、cL2に比例する。したがって、タイヤFRから送信されている信号を、指向性FR、FL、RL、RRの各受信アンテナ1-1 、1- 2、1- 3、1-4 で、順次、受信すると、その受信レベルは、模式的に表現すると、図8に示すようになる。ただし、各受信アンテナの座標は(x0 ,y0 ,z0 ) で等しいとする。
【0038】
各受信アンテナ1-1 、1- 2、1- 3、1-4 の出力信号は、各遅延回路2-1 、2- 2、2- 3、2-4 により、それぞれ、異なる遅延時間T1、T2、T3、T4だけ遅延されて、合成器3により時間軸上で合成される。ただし、T1<T2<T3<T4の関係に設定するとする。したがって、合成器3の出力する時系列信号は、図9に示すようになる。各アンテナの出力する一つのパケットのレベルは、絶対値が異なるだけで、時間に対する変化特性は、等しいことが分かる。
【0039】
次に、この時系列信号は、A/D変換器4により、サンプリングされて、A/D変換されて、その後段では、ディジタル処理が行われる。この信号レベルと雑音レベルとを比較することで、パケットの存在する期間を特定することができる。これにより、4つのパケットを分離抽出することができる。次に、この各パケットにおいて、最大受信レベルを求める。そして、その最大受信レベルが最大値をとるパケットを特定する。図9の場合には、第1パケットが、最大受信レベルが最大値をとるパケットであることが分かる。第1パケットは、受信アンテナ1-1 で受信されたパケットであるので、そのパケットを送信しているタイヤは、その受信アンテナ1-1 の指向性の方位に存在するタイヤFRであると特定することができる。そして、その第1パケットのデータは、ディジタル復調された後、タイヤFRから送信された情報が得られ、その方位に存在するタイヤFRの空気圧や温度を知ることができる。このように、方位で情報を発信しているタイヤを特定することができるので、そのタイヤに固有に割り当てられたIDは、特に、必要ではない。
【0040】
4つのパケットは、送信データとしては、同一のパケットであるので、これを1群とする。この1群のパケットと、次の送信パケットに対応する4つのパケットの群との区別がつかなければ、パケットを群内の何番目のパケットかを特定することができない。これを区別できるようにするには、この一群のパケットの時間長(T4-T1-T )に比べて、送信パケットが送信されていない期間D0を十分に長くとる。このようにすれば、群内の隣接するパケット間の時間間隔D1に比べて、第1群の第4パケットと、次の第2群の第1パケットとの間の時間間隔D4を、十分に長くとることができる。この隣接するパケット間の時間を測定して、この時間間隔がしきい値(D1とD4との間の時間)よりも大きい場合には、その時間帯は、群と群との間の時間帯と判別することができる。これにより、各群を判別でき、各群が判別できれば、各パケットの現れる順番を特定することができる。
【0041】
次に、CPU5の処理手順を、図10のフローチャートに基づいて説明する。まず、ステップ100で、信号を入力して、上記の処理により、パケットの存在していない期間の時間を測定して、その時間が所定値を越える場合には、その期間は、群の境界と判別される。そして、その群の境界が検出された後に、しきい値以上のレベルの信号が検出された場合には、その信号は、第1パケットの先頭とされる。ステップ102で、パケットの先頭が検出されてから、信号レベルがしきい値より低くなったことが検出された場合には、1パケットが終了したと判断され、ステップ104に移行する。1パケットの入力が終了していない場合には、ステップ100、102が繰り返されることで、1パケットの入力が完了する。次に、ステップ104において、その1パケットの信号のうちで、最大受信レベルが求めら、その値は、第1パケットの最大受信レベルP(1)として、RAM6に記憶される。次に、ステップ106に移行して、1群に存在するパケットの数は既知(アンテナ数と同一)であるので、1群のパケットの入力が完了したか否かが判定できる。本実施例では、4つのパケットの入力が完了すれば、1群のパケットの入力が完了したと判定できる。1群のパケットの入力が完了していない場合には、ステップ108において、パケット変数を更新して、ステップ100に戻り、次のパケットの入力処理と、そのパケットの最大受信レベルが決定される。
【0042】
次に、ステップ106で、1群のパケットの入力が完了したと判定された場合には、次のステップ110において、4つの最大受信レベルP(1)、P(2)、P(3)、P(4)が得られているので、そのうちの最大値をとるパケットが決定される。例えば、最大受信レベルは、P(1)であるとすると、最大受信レベルを有するパケットは、第1パケットと決定される。次に、ステップ112において、第1パケットは、遅延時間T1で最も短いので、受信アンテナ1-1 で受信されたパケットであると判定できる。次に、ステップ114に移行して、その受信アンテナ1- 1は、タイヤFRの方位に指向性を有したアンテナであることは、既知であるので、そのパケットは、FRの方位に位置するタイヤ300-1 の送信器200-1 から送信されたパケットであると決定できる。最大受信レベルを有するパケットが、第2、第3、第4パケットの場合にも、同様に、アンテナ1-2 、1-3 、1-4 で受信されたパケットであると判定でき、その結果、そのパケットは、FL、RL、RRの方位に位置するタイヤ300-2 、300- 3、300-4 の送信器200-2 、200-3 、200-4 から送信されたパケットであると判定できる。
【0043】
次に、ステップ116において、最大受信レベルを有するパケットを、ディジタル復調して、タイヤから送信された空気圧、温度、ID(IDは必須ではない)等の情報がもとめられる。そして、次のステップ118において、その情報の表示などのデータ処理が実行されて、ステップ120において、次の新たな群として、ステップ122で、パケット変数を第1パケットに設定して、ステップ100に戻り、同様な処理が繰り返される。
【0044】
なお、ステップ104で、各パケットの最大受信レベルを求める代わりに、そのパケットの期間Tにおける受信レベルの積分値S 、又は、受信レベルの平均値S/T を求めるようにしても良い。この場合には、ステップ110では、受信レベルの積分値S 又は平均値S/T が最大となるパケットが決定されることになる。また、この積分区間、又は平均値を求める区間は、パケットの期間T 以下の期間の時間窓を設定して、その時間窓を時間軸上で移動させても良い。すなわち、移動する時間窓に対して出力される各値のうちで、最大値を、そのパケットの受信レベルの最大値としても良い。また、時間窓を設定して、移動させる場合には、パケットとパケットとの間では、出力が極端に低下するので、これによりパケットとパケットとの間や、群と群の間を検出するようにしても良い。
【0045】
本実施例において、タイヤIDを用いている場合には、このようなIDと方位との関係を規定したテーブルの更新は、任意のタイミングで行えばよい。また、本発明は、常に、走行中であっても、信号の送信される方位を検出することができるので、タイヤIDを用いなくとも、信号を送信しているタイヤの方位を決定することができる。
上記実施例において、A/D変換器4、CPU5、ROM7、RAM6は、選別装置、タイヤ特定装置を構成している。また、CPU5の処理手順の主としてステップ104、110が選別装置の処理を行う部分であり、主としてステップ112、114がタイヤ特定装置の処理を行う部部である。
【0046】
次に、各遅延時間T1〜T4の設定方法について説明する。図11に示すように、1パケットの送信期間をT とする。また、パケットAと次に送信されるパケットBとの間の信号が送信されていない期間の最小値をD0とする。時刻の原点は、パケットの先頭が送信開始される時刻とする。合成器3の出力する時系列信号において、各アンテナで受信されたパケットが、それぞれ、各遅延時間T1、T2、T3、T4だけ遅延して出力される各パケットの先頭の時刻を、それぞれ、t1、t2、t3、t4とする。t1、t2、t3、t4は、タイヤから各アンテナまでの信号の伝搬遅延時間が異なることを考慮して、一般的には、遅延時刻T1、T2、T3、T4とは異なる値となる。遅延されたパケットを、それぞれ、第1、第2、第3、第4パケットとする。第4パケットの終端の時刻はt4+Tとなる。また、次に送信されるパケットBの先頭の時刻は、T+D0である。したがって、そのパケットBを受信した時の合成器から出力される第1パケットの先頭の時刻は、T+D0+t1 となる。パケットAの第4パケットと、次のパケットBの第1パケットとが、干渉しないためには、パケットAの第4パケットの終端の時刻が、パケットBの第1パケットの先頭の時刻よりも前でなければならない。したがって、t4+T<T+D0+t1 が成立する。よって、t4-t1 <D0を満たす必要がある。すなわち、最小遅延時間で出力されるパケットと、最大遅延時間で出力されるパケットとの間の時間差t4-t1 の最大値は、情報の間欠的送信における情報の送信されていない期間D0の最小値よりも小さくする必要がある。時間差t4-t1 の最大値は、固定値の遅延時間差T4-T1 に対して、タイヤから各受信アンテナまでの信号の伝搬遅延時間差があるので、時間差t4-t1 は、遅延時間差T4-T1 に対して変化する。したがって、時間差t4-t1 の最大値を考慮する必要がある。また、情報の送信されていない期間D0は、必ずしも一定であるとは限らないので、そのうちの最小値を考慮する必要がある。
【0047】
また、次の条件も必要となる。合成器の出力する各パケットが、干渉しないように、各遅延時間は設定されている必要がある。第2パケットの先頭の時刻t2は、第1パケットの終端の時刻t1+Tよりも大きいことが必要となる。したがって、t1+T<t2が成立する。よって、T <t2-t1 となる。t2-t1 は、タイヤと受信アンテナ間の電波の伝搬遅延時間差によって変化するので、t2-t1 の最小値を考慮する必要がある。すなわち、合成器の出力する時系列信号において、パケットとパケットの間隔の最小値は、情報の一パケットの出力期間よりも長くなるように、各遅延時間を設定する必要がある。
【0048】
各タイヤから各アンテナへの信号の伝搬遅延時間の差に注目すると、合成器の出力においてパケットが干渉しないためには、下記の条件が必要となる。第1パケットと第2パケットとの間隔t2-t1 と、それに対応する遅延時間の差T2-T1 との差Δ=t2-t1-(T2-T1)を考える。この差Δは、情報を送信しているタイヤから第2パケットを出力するアンテナまでの伝搬遅延時間の、情報を送信しているタイヤから第1パケットを出力するアンテナまでの伝搬遅延時間に対する差を意味している。一方、遅延時間の差T2-T1 の期間において、パケットが存在しない期間は、T2-T1 -Tである。差Δが負値の場合には、合成器の出力でパケットが存在しない期間が、T2-T1 -Tに対して絶対値Δだけ短くなることを意味しており、絶対値Δは、この値以下でなければならない。したがって、T2-T1 -T+ Δ>0が成立する。すなわち、各タイヤから各アンテナへの信号の伝搬遅延時間の差|Δ|の最大値は、遅延時間の差(T2-T1 )の最小値から情報の一パケットの出力期間T を引いた時間(T2-T1 -T)よりも、十分に小さくなるように、複数のアンテナは、近接位置に配設されていることが必要となる。この条件は、上記第2番目の条件T <t2-t1 と同一である。
【0049】
次に、タイヤの各配置位置FR(前輪右側)、FL(前輪左側)、RL(後輪左側)、RR(後輪右側)の各方位に、指向性を有する受信アンテナについて説明する。図12は、その構成図である。線状アンテナ50は、長方形の各辺で構成され、第1線路51と第2線路52と、これらの線路の根元部に設けられた受電点53と、アンテナの先端部であって、第1線路51と第2線路52との接続点に設けられた終端抵抗54とから構成されている。第1線路51と第2線路52との間隔はL2である。線状アンテナ50に平行に設けられた線状アンテナ60は、同様に、長方形の各辺で構成され、第1線路61と第2線路62と、これらの線路の根元部に設けられた受電点63と、アンテナの先端部であって、第1線路61と第2線路62との接続点に設けられた終端抵抗64とから構成されている。第1線路61と第2線路62との間隔はL2である。この線状アンテナ50と、線状アンテナ60とは、距離L1を隔てて、平行に設けられており、受電点53から終端抵抗54の向きにとった配向ベクトルと、受電点63から終端抵抗64の向きにとった配向ベクトルは、相互に平行で、反対の向きを向いている。これらの線状アンテナ50と線状アンテナ60とで第1組のアンテナが構成されている。
【0050】
線状アンテナ70は、長方形の各辺で構成され、第1線路71と第2線路72と、これらの線路の根元部に設けられた受電点73と、アンテナの先端部であって、第1線路71と第2線路72との接続点に設けられた終端抵抗74とから構成されている。第1線路71と第2線路72との間隔はL2である。線状アンテナ70に平行に設けられた線状アンテナ80は、長方形の各辺で構成され、同様に、第1線路81と第2線路82と、これらの線路の根元部に設けられた受電点83と、アンテナの先端部であって、第1線路81と第2線路82との接続点に設けられた終端抵抗84とから構成されている。第1線路81と第2線路82との間隔はL2である。この線状アンテナ70と、線状アンテナ80とは、距離L1を隔てて、平行に設けられており、受電点73から終端抵抗74の向きにとった配向ベクトルと、受電点83から終端抵抗84の向きにとった配向ベクトルは、相互に平行で、反対の向きを向いている。これらの線状アンテナ70と線状アンテナ80とで第2組のアンテナが構成されている。
【0051】
これらの4つの線状アンテナ50、60、70、80は、高さがZ軸方向で、同一平面(XY平面)上に配置されている。また、線状アンテナ50と60から成る第1組のアンテナは、Y方向に配設されており、線状アンテナ70と80とから成る第2組のアンテナはX方向に配設されており、それらの長さ方向が、それぞれ、直交している。そして、各受電点53、63、73、83は、各遅延回路2- 1、2- 2、2- 3、2-4 を介して合成器3に接続されている。なお、各受電点は、バランを介して、同軸ケーブルに接続されている。バランの機能により、第1線路51、61、71、81と第2線路51、62、72、82は、それぞれ、電流が同一方向に流れるモードで、励振される。
【0052】
そして、これらの4つの線状アンテナ50、60、70、80は、裏面が金属板で構成された反射板91を貼り付けた厚さD の誘電体板92の上に設置されている。一つの線状アンテナ50の構成は、図13に示すものである。この反射板91により、到来電波を反射して、受信信号のレベルを向上させることができる。この実施例では、L1は、75mm、L2は、30mm、D は、10mmとした。
【0053】
この線状アンテナ50について、終端抵抗54の抵抗値とF/B 比との関係を測定した。終端抵抗54が650 Ωの場合に、F/B 比は、23dBが得られた。使用電波の周波数は、315MHzである。なお、F/B 比は、電波の到来方向が第1伝送路51を伝搬する電波の進行ベクトルV2の向きである場合の受信電力F と、電波の到来方向が進行ベクトルV2とは逆向きである場合の受信電力B との比を表す。
【0054】
次に、全ての終端抵抗を700 Ωとして、周波数を315MHzとした実施例装置において、各線状アンテナ50、60、70、80により受信する場合の指向特性を、図14に示す。
受電点から終端抵抗の向きが+Y方向の線状アンテナ50は、+Y方向の指向性を示し、受電点から終端抵抗の向きが−Y方向の線状アンテナ60は、−Y方向の指向性を示し、受電点から終端抵抗の向きが+X方向の線状アンテナ80は、+X方向の指向性を示し、受電点から終端抵抗の向きが−X方向の線状アンテナ70は、−X方向の指向性を示していることが理解される。このような指向性を有することから、+X、−X、+Y、−Yの方向から到来する電波を精度良く検出することができるので、タイヤの空気圧を検出するシステムのアンテナ装置として用いることができる。
【0055】
なお、タイヤの各配置位置FR(前輪右側)の方位を検出する受信アンテナ1-1 を、線状アンテナ60、FL(前輪左側)の方位を検出する受信アンテナ1-2 を線状アンテナ70、RL(後輪左側)の方位を検出する受信アンテナ1-3 を、線状アンテナ50、RR(後輪右側)の方位を検出する受信アンテナ1-4 を、線状アンテナ80で、それぞれ、構成することで、タイヤの配置されている4つの方位を検出することができる。
【0056】
上記実施例の受信アンテナ各線状アンテナ50、60、70、80を、は、に上記実施例では、第2線路52、62、72、82を、第1線路51、61、71、81に、それぞれ、平行に設けたが、4つの第2線路は、図15に示すように、共通の金属板(平面導体)95の鏡像で構成しても良い。この場合には、金属板95は、電波の反射板としても機能し、受信電力を放射電力を向上させることができる。
【0057】
このようにして、各線状アンテナ50、60、70、80を用いて、4方位の指向性を得ることができる。上記実施例において、L1は使用電波の波長λに対して、λ/10 以上λ以下が望ましい。また、L1は、L2の2倍以上、3倍以下が望ましい。また、D は、λ/20 以上、λ/10以下が望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、タイヤの空気圧や温度などを監視する装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
100 …受信器
200 …送信器
300 …タイヤ
1…受信アンテナ
2…遅延回路
3…合成器
21…送信アンテナ
50、60、70、80…線状アンテナ
51、61、71、81…第1線路
52、62、72、82…第2線路
53、63、73、83…受電点
54、64、74、84…終端抵抗
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のタイヤの空気圧や温度などのタイヤ情報を、タイヤに設置された送信器から送信して、これを車両の中央部の天井に設けられたアンテナにより受信するタイヤ情報監視装置に関する。特に、その情報を発信しているタイヤを、アンテナの切り替えをすることなく、かつ、タイヤのID情報に依存することなく、特定することができる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの空気圧を監視する装置として、各タイヤに配設された圧力センサで空気圧を検出し、検出された空気圧を、各タイヤに配置された送信器により送信して、車室内の天井に配置されたアンテで受信して、タイヤ空気圧を、常時、監視する装置が知られている。この装置において、受信したタイヤ空気圧が、どのタイヤの空気圧であるかは、受信データに含まれるタイヤに固有なIDにより、特定していた。しかしながら、タイヤの車両における配置位置を変更した場合には、配置位置とIDとの対応関係がとれず、どこに配置されたタイヤの空気圧であるかを特定することはできない。このため、タイヤの配置位置を交換する毎に、タイヤ空気圧監視装置において、タイヤの配置位置とIDとの対応表を更新する必要があった。このため、この操作は面倒であり、特に、車両の保有者自身が、自分で、タイヤの配置位置を交換する場合には、このテーブルの更新は、困難であった。
【0003】
そこで、この課題を解決するために下記特許文献1に開示の技術が知られている。この特許文献1の技術は、アンテナを指向性アンテナとして、この指向性を、タイヤの配置位置の方位に切り換えることで、受信した情報を、その指向性の方位に位置するタイヤから発信した情報として特定するものである。また、送信アンテナから、各タイヤの配置方位に指向性を向けて、データ要求信号を出力して、その信号を受信したタイヤの送信器のみが応答して、そのタイヤの空気圧データを送信する技術が開示されている。各タイヤの配置方位に指向性を向けてデータ要求信号を送信するので、受信したデータがどのタイヤから送信されたものかが特定できる。
【0004】
また、特許文献2に記載の技術は、受信アンテナにおいて、各タイヤの配置方位に指向性を切り換えて、受信した各タイヤからの送信データに含まれるタイヤのIDと、アンテナの指向性との対応関係を記憶する技術が開示されている。これによると、タイヤの配置位置が変更になっても、その対応表において、タイヤの配置方位と、タイヤIDとが、最新のものに更新されることから、以後、受信したデータに含まれるIDからタイヤ空気圧データが、どのタイヤから送信されたものであるかを特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2006/038557
【特許文献2】特開2007−320410
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1、2の方法によると、受信アンテナの指向性を変化させてデータを受信し、その指向性から、その受信データを発信したタイヤを特定しているので、タイヤの配置位置が交換されても、IDとタイヤの配置関係とが、更新されるために、タイヤ空気圧データを送信したタイヤを、特定できるという利点がある。
【0007】
しかしながら、各タイヤに配設される送信器は、回転する円周上に設けられている。例えば、送信器は、円形タイヤの圧力空気の取り入れ弁付近に設けられているので、タイヤが回転するに連れて、その送信器と、受信アンテナの距離が変化することになる。この結果、受信信号のレベルは、タイヤの回転に伴って変動することになる。
【0008】
このため、データを送信しているタイヤの方位に受信アンテナの指向性を向けて受信しても、送信器と受信アンテナの距離が最も小さい位置で受信した第1の場合の信号レベルと、その距離が最も大きい位置で受信した第2の場合の信号レベルとが、大きく異なることになる。
【0009】
一方、指向性を、データを送信しているタイヤの方位に向けていない状態で、送信データを受信した場合の信号レベルは、第1の場合の受信レベルより小さくなるが、第2の場合の受信レベルよりも大きくなる場合がある。この場合には、実際に、データを送信しているタイヤの方向とは異なる、受信レベルの大きい方のアンテナの現在の指向性の方位をデータを送信しているタイヤの方位と、誤判定することになる。
【0010】
具体的にいうと、タイヤ空気圧センサに装着される送信器は、非常に小型であることが求められるため、送信信号のレベルが小さい。しかも、送信器の装着される場所が、上述のように、限定されているため、タイヤの回転角度に対する受信信号のレベル変動は大きい。この受信信号のレベル変動幅は、いかなる周波数を用いても、10dB以上は生じるのが一般的である。すなわち、単純に指向性(主ビーム)をタイヤの配置方位に向け、その受信信号の有無、あるいは、受信信号のレベルの大小関係のみで方位を特定する場合には、指向性を向けた方位から、受信した信号のレベルと、その指向性の方位と異なる方位から受信した信号のレベルとの比(D/U比)が最低でも10dB以上必要となる。
【0011】
しかしながら、TPMSのように微弱無線電波システムで認可されている周波数(315MHz、433MHz、125MHz、2.5GHz)のうち、2.5GHz帯以外の周波数においては、小型化を維持しながら、上記特性を満足できるのは現実には困難である。また、方位を特定するために、D/U比の大きい指向性ビームを用いた場合には、その指向性を特定方位に向けることは、指向性を向けていない方位に配置された送信器からの送信データが受信できないということを意味する。すなわち、指向性と送信タイミングとの同期が必要となり、アンテナの指向性が自己の送信器に向けられるまで、データの送信ができないことを意味する。これは、間欠送信を行う無線システムにおいて、通信タイミングが特定されるということは実用上問題が大きい。逆に、D/U比を小さくして、アンテナの指向性が向けられていない方位からの受信信号も受信可能としてタイヤ空気圧を常時監視できるようにした場合には、当然に、指向性を向けられた方位からの受信信号の最大レベルと最小レベルとの間に、指向性を向けられていない方位からの受信信号のレベルが存在することになり、レベルから方位を特定する場合に誤判定が多くなる。
【0012】
また、上記の装置では、切り替え器を設けて、各アンテナを選択するためのスイッチング制御や、各アンテナからの送信制御が必要となる。
そこで、本発明の目的は、各アンテナの切り替え制御をすることなく、タイヤの回転により生じる受信信号のレベル変動があっても、情報を送信しているタイヤを精度良く、容易に、特定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明は、車両の各タイヤにおける検出された情報を、間欠的に各タイヤに設けられた送信器により送信して、この情報を車両に取り付けられたアンテナにより受信して、各タイヤの状態を監視するタイヤ情報監視装置において、情報を送信するタイヤの数と同数のアンテナであって、それぞれが、各タイヤのそれぞれの方向に他のアンテナに比べて最も高い指向性を有した複数のアンテナと、アンテナの数と同数の遅延回路であって、それぞれが各アンテナに接続され、各アンテナによる受信信号を、それぞれ異なる遅延時間だけ遅延させる複数の遅延回路と、全ての遅延回路の出力信号を時系列信号として合成する合成器と、合成器から出力される時系列信号から、最大受信レベルの信号を選別する選別装置と、選別装置により最大受信レベルと判定された信号を出力したアンテナを特定し、そのアンテナの指向性から情報を送信したタイヤを特定するタイヤ特定装置とを有し、各遅延時間は、合成器の出力する時系列信号において、各タイヤから送信される情報の一パケットが時間軸上において重ならないにように設定されていることを特徴とする。
【0014】
本発明では、情報を送信するタイヤの数と同数のアンテナが設けられている。そして、各アンテナは、全てのタイヤから送信される信号の受信が可能である。タイヤが回転することにより、アンテナで受信される信号の電力が変動しても、全てのアンテナは、全てのタイヤから送信される信号を受信することが可能に構成されている。そして、各タイヤからの情報の送信に対して、そのアンテナに対応した異なる一つのアンテナの受信信号レベルが最も高くなるように構成されている。
【0015】
本発明は、各アンテナには、それぞれの遅延回路が接続されており、各アンテナの受信信号は、それぞれの異なる遅延時間だけ遅延されて出力される。そして、遅延された各信号は、合成器により、時系列信号として、時間軸上で合成される。この結果、次段の選別装置、タイヤ特定装置は、アンテナが複数であっても、一つで済む。
【0016】
各遅延時間は、合成器の出力する時系列信号において、各タイヤから送信される情報の一パケットが時間軸上において重ならないにように設定されていることが必要である。すなわち、合成器の出力する時系列信号において、各アンテナで受信されたパケットが、区別できるように、各遅延時間は設定される必要がある。これにより、最大受信レベルを示すパケットの時刻から、そのパケットを受信したアンテナを特定することができ、そのアンテナから、そのパケットを送信したタイヤを特定することができる。
【0017】
第2の発明は、各アンテナは、受信感度の高い方向と受信感度の低い方向を有する指向性アンテナであり、受信感度の低い方向から到来するタイヤからの最小受信レベルの情報も受信可能であることを特徴とする。これにより、合成器の出力する時系列信号において、信号レベルの変化形状と、情報を送信したタイヤとの関係を一意的に決定することが可能となる。
【0018】
第3の発明は、合成器の出力する時系列信号において、最小遅延時間で出力されるパケットと、最大遅延時間で出力されるパケットとの間の時間差の最大値は、情報の間欠的送信における情報の送信されていない期間の最小値よりも小さくするように各遅延時間が設定されていることを特徴とする。任意の一つのタイヤから各アンテナへの電波の伝搬遅延時間が異なる場合には、合成器の出力する時系列信号において、最小遅延時間で出力されるパケットと、最大遅延時間で出力されるパケットとの間の時間差は、情報を送信するタイヤに依存して、変化する。したがって、合成器の出力する時系列信号において、一情報の最も遅延したパケットが、少なくとも、次のタイミングで送信される情報の最も遅延が小さいパケットとが重ならないようにするためには、最小遅延時間で出力されるパケットと、最大遅延時間で出力されるパケットとの間の時間差の最大値は、情報の間欠的送信における情報の送信されていない期間の最小値よりも小さくする必要がある。
【0019】
第4の発明は、合成器の出力する時系列信号において、合成器の出力する時系列信号において、パケットと次のパケットとの間隔の最小値は、情報の一パケットの出力期間よりも長くなるように、各遅延時間が設定されていることを特徴とする。設定する遅延時間の差を一定しても、任意の一つのタイヤから各アンテナへの電波の伝搬遅延時間が異なる場合には、合成器の出力する時系列信号のパケットとパケットとの間の間隔は、情報を送信しているタイヤに依存して変化する。したがって、合成器の出力する時系列信号において、隣接するパケットが重ならないようにするには、パケットとパケットの間隔、すなわち、パケットの先頭と次のパケットの先頭との間隔の最小値は、情報の一パケットの出力期間よりも長くなるように設定することが必要である。もちろん、各タイヤと各アンテナ間の伝搬遅延時間が無視できるか、等しい場合であっても、各遅延時間の間隔を一定にしない場合には、その遅延時間の間隔には最小値が存在するので、その最小値が、情報の一パケットの出力期間よりも長くなるように設定する必要がある。
【0020】
第5の発明は、各タイヤから各アンテナへの信号の伝搬遅延時間の差の最大値は、遅延時間の差の最小値から情報の一パケットの出力期間を引いた時間よりも、十分に小さくなるように、複数のアンテナは、近接位置に配設されていることを特徴とする。合成器の出力する遅延時間の差が最小である2つのパケットにおいて、伝搬遅延時間の差が最大となった場合においても、その2つのパケットが重ならないためには、各タイヤから各アンテナへの信号の伝搬遅延時間の差の最大値が、遅延時間の差の最小値から情報の一パケットの出力期間を引いた時間よりも、十分に小さくなければならない。
【0021】
第6の発明は、選別装置によりる最大受信レベルの選別は、合成器の出力する時系列信号において、瞬時的な受信レベルの最大値をとるパケットの選別であることを特徴とする。合成器の出力する時系列信号レベルは、パケット毎に、連続した値を示す。したがって、この時系列信号から、瞬時的な受信レベルの最大値をとるパケットを特定することができる。そして、例えば、そのパケットが現れる順番により、そのパケットを出力したアンテナを特定することができる。このアンテナから、そのパケットを送信したタイヤを特定することができる。
【0022】
また、第7の発明は、選別装置による最大受信レベルの選別は、合成器の出力する時系列信号において、情報の出力期間以下の長さの時間窓における積分値又は平均値が、最大値をとるパケットによる選別であることを特徴とする。合成器の出力する時系列信号は、パケット毎に連続したレベルを示す。したがって、このパケットの長さ以下の時間窓での信号レベルの積分値や平均値を、各パケット毎に求めることができる。そして、この値が最大となるパケットが特定される。その後、例えば、そのパケットが現れる順番により、そのパケットを出力したアンテナを特定でき、そのアンテナからそのパケットを送信したタイヤを特定することができる。合成器の出力する時系列信号において、パケットが存在しない期間では、搬送波は存在しない。したがって、パケットの先端と末端とにおいて、受信レベルが急変することから、このレベルの急変を検出することで、各パケットを検出することができる。時間窓は、これにより検出された各パケット内において設定しても、時間窓を、時間軸上において、順次移動しながらその時間窓における積分値又は平均値を出力するようにして、その値が最大となる時間窓の存在位置を決定するようにしても良い。これにより、最大値をとるパケットを特定することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、各アンテナの出力に、それぞれ異なる遅延時間の遅延回路を接続して、それらの遅延回路の出力を合成器で合成して、時系列信号として出力し、その時系列信号の信号レベルの分布特性から、情報を送信しているタイヤを特定するようにしたものである。したがって、従来のように、受信アンテナを順次切り替える装置や、その切り替えを制御する装置が必要でなく、本発明は、小型で簡便な装置を実現することができる。
【0024】
また、本発明では、タイヤが回転しており、一パケットの送信期間において、あるアンテナで受信される信号のレベルが変動しても、情報を送信しているタイヤの方位を特定することができる。各アンテナは、感度のみが異なるだけで、その受信レベルの時間変動特性と同一の時間変動特性の信号を受信することになる。したがって、合成器の出力する時系列信号において、アンテナの数に対応したパケットが存在するときに、1パケット内の信号レベルがタイヤの回転に伴って回転しても、各パケットでの信号レベルの変化特性は、レベルの大きさの倍率が異なるだけで変化特性は等しい。このことから、信号の瞬時的最大値が最大となるパケットや、1パケット以下の期間での信号レベルの積分値又は平均値が、最大値をとるパケットを特定することが可能である。このパケットの現れる順番や、このパケットが現れる相対時刻により、そのパケットを出力したアンテナを特定することができる。そして、そのアンテナからそのパケットを送信しているタイヤを特定することができる。したがって、タイヤが回転していても、方位の誤判定が防止される。また、本発明では、上記のように、パケットの信号レベルの分布特性により情報を送信しているタイヤを特定するので、情報には、特に、タイヤ固有のIDを含ませる必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の具体的な実施例にかかる実施例1の装置の配置図。
【図2】実施例の送信器の構成図。
【図3】実施例の受信器の構成図。
【図4】実施例の装置の配置関係とアンテナの指向性との関係を示した説明図。
【図5】実施例の装置の一つのアンテナの指向性を示した説明図。
【図6】タイヤの回転角度に対する受信レベルの変化を示した特性図。
【図7】アンテナの指向性の方位から到来する信号と、それとは反対方向から到来する信号のその受信アンテナにおける受信レベルの時間変化を示した特性図。
【図8】実施例の作用を説明するための各アンテナにより同時に受信される信号の受信レベルの時間変化を示した特性図。
【図9】同実施例の装置の合成器の出力する時系列信号を示した説明図。
【図10】実施例の装置をCPUの処理手順を示したフローチャート。
【図11】実施例の装置において合成器の出力する時系列信号のパケットが干渉しない条件を説明するためのタイミングチャート。
【図12】4方位に指向性を有する指向性アンテナの構成図。
【図13】同指向性アンテナの1つの要素を示した構成図。
【図14】指向性アンテナの要素に対する受電点と指向性との関係を示した説明図。
【図15】他の指向性アンテナの構成図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
本実施例のタイヤ空気圧監視システム(タイヤ情報監視装置)は、図1に示すように、各車輪にそれぞれ設けられる送信器ユニット200 と、車体本体に設けられる受信器ユニット100 と、を備えている。送信ユニットは、各タイヤ毎300-1,300-2,300-3,300-4 ( 以下、区別する必要がない場合には、300 で代表して記す。) に、送信ユニット200-1 ,200-2 ,200-3 ,200-4(以下、区別する必要がない場合には、200 で代表して記す。) が設けられている。各送信器ユニット200 は、それぞれ対応する車輪のタイヤ内部(例えば、ホイール)に固定されており、対応する車輪と共に一体的に回転する。また、受信器ユニット100 は、車体本体の天井部の中央付近に配置されている。
【0028】
各送信器ユニット200 は、図2に示すように、各種制御を行う制御回路24を備えている。制御回路24には、対応する車輪300 のタイヤ空気圧に応じた信号を出力する圧力センサ25が接続されている。センサ25の出力信号は、制御回路24に入力され、センサ25の出力に基づいて、対応する車輪300 のタイヤ空気圧を測定する。この場合、制御回路24は、その測定した空気圧を示す情報と、自己の送信器ユニット200 を他の送信器ユニット200 と識別するための固有の識別コードIDを示す情報とを含む送信信号を生成し、変調回路23に出力する。変調回路23は、信号を変調し、送信回路22に出力する。送信回路22は変調波を所定周波数(例えば、数百MHzのRF帯)の搬送波にのせて送信アンテナ21に出力し、送信アンテナ21より信号が送出される。
【0029】
図3に示すように、受信器ユニット100 は、タイヤの数に等しい数の受信アンテナ1-1 、1- 2、1- 3、1-4 ( 以下、区別する必要がない場合には、受信アンテナは、1 で代表して記す。) が設けられている。各受信アンテナ1-1 、1- 2、1- 3、1-4 には、それぞれ、遅延時間が異なるT1、T2、T3、T4の遅延回路2-1 、2- 2、2- 3、2-4(以下、区別する必要がない場合には、遅延回路は、1 で代表して記す。) が接続されている。そして、各遅延回路2-1 、2- 2、2- 3、2-4 により、それぞれ、遅延された信号は、合成器3により時間軸上で合成されて、時系列信号となる。この時系列信号は、A/D変換器4により所定周期でサンプリングされてディジタル信号に変換されて、次のCPU5によって読み取られ、コンピュータ装置によりデータ処理される。
【0030】
CPU5は、ROM7に記憶されているプログラムにしたがって、本発明の情報を送信するタイヤを特定し、そのタイヤ特定情報をRAM6に記憶する処理を行う他、RF変調された信号をディジタル復調し、タイヤの情報、固有識別コードID情報を復元し、RAM6に記憶すると共に表示部(図示せず)に表示する。
【0031】
実施例のタイヤ空気圧監視システムにおいて、各送信器ユニット200 はそれぞれ、予め定められた所定時間(例えば1分など)間隔で、圧力センサ25の出力信号を入力して、自己の車輪300 のタイヤ空気圧を測定する。そして、その測定が完了すると、その空気圧情報と自己の固有の識別コードIDを示す情報とを含む送信信号を生成し、その送信信号を所定電波の搬送波にのせて送信アンテナ21から外部へ向けて送信させる。尚、各送信器ユニット200 が空気圧を測定して送信信号を送信する時間間隔は、送信タイミングがずれていれば、送信器ユニット200 間で互いに一致するようにしても良い。しかし、送信時間間隔は、送信器ユニット200 毎に、送信信号が衝突しないように、所定の時間幅内でランダムに変化させても良い。
【0032】
一方、受信器ユニット100 は、図4、図5に示すように、各受信アンテナ1-1 、1- 2、1- 3、1-4 は、指向性が、各車輪300 の配置位置FR(前輪右側)、FL(前輪左側)、RL(後輪左側)、RR(後輪右側)の各方位に、最大利得が得られるような特性を有し、他の方位からの信号の受信に対しては、受信することは可能であるが、大きな利得が得られないような指向特性を有している。
【0033】
次に、本発明による方位識別手法について説明する。図5は、FRの方位に指向性を有する受信アンテナ1-1 の指向性パターンを示す。ここでは、FRのみを示したが、FLに指向性を有する受信アンテナ1-2 、RLに指向性を有する受信アンテナ1-3 、RRに指向性を有する受信アンテナ1-4 についても、指向性ビームの方位のみが異なり、指向性パターンはほぼ同様であるとする。
【0034】
図6は、車輪300 が回転している時の受信アンテナ1 で受信した時の受信レベルRSSIの一例を示す。また、送信器200 からの一つの情報(一つのパケット)の送信時間T をT ≒15msecとし、時速100km で走行した場合の受信レベルRSSIの時間変化特性のを一例を図7に示す。ここで実線は、信号を送信しているタイヤの配置方位に指向性を有する受信アンテナで受信された信号の受信レベルRSSIの時間変化特性を示し、破線は、信号を送信しているタイヤの配置方位と180 度異なる方位に指向性を有する受信アンテナで受信された信号の受信レベルRSSIの時間変化特性を示す。両者は、一パケットの送信時間T 内において、20dB以上のレベル変動があることが分かる。
【0035】
受信レベルの変動特性について、さらに、詳しく説明する。タイヤFRの回転中心にo−xyz座標系の原点をおき、車の進行の向きにx軸の正の向きを、タイヤFLの向きにy軸の正の向きを、高さ方向にz軸の正の向きをとる。受信器100 のアンテナ1-1 の位置の座標を(x0 ,y0 ,z0 ) とし、送信器200 のアンテナ21の位置の座標を(x,y) とし、回転半径をr 、アンテナ21とアンテナ11間の距離をL とする。また、アンテナ21の位相をθとする。θの向きは、x 軸から-z軸に向かう方向を正とし、x 軸の位相を零とする。すると、距離L は、次式で表される。
【0036】
【数1】
ただし、
【数2】
【数3】
【0037】
信号がタイヤFRから送信されている場合の受信レベルRSSIと指向性との関係は次のようになる。信号の到来方位がFRの場合の感度をa 、それと方位が180 度異なる信号の到来方位RLの場合の感度をb 、信号の到来方位がFL、RRの場合の感度を等しいと仮定してc とする。b<c<a の関係が設立する。したがって、到来方位FRでの受信レベルは、aL2に比例し、到来方位RLでの受信レベルは、bL2に比例し、到来方位FL、RRの場合の受信レベルは、cL2に比例する。したがって、タイヤFRから送信されている信号を、指向性FR、FL、RL、RRの各受信アンテナ1-1 、1- 2、1- 3、1-4 で、順次、受信すると、その受信レベルは、模式的に表現すると、図8に示すようになる。ただし、各受信アンテナの座標は(x0 ,y0 ,z0 ) で等しいとする。
【0038】
各受信アンテナ1-1 、1- 2、1- 3、1-4 の出力信号は、各遅延回路2-1 、2- 2、2- 3、2-4 により、それぞれ、異なる遅延時間T1、T2、T3、T4だけ遅延されて、合成器3により時間軸上で合成される。ただし、T1<T2<T3<T4の関係に設定するとする。したがって、合成器3の出力する時系列信号は、図9に示すようになる。各アンテナの出力する一つのパケットのレベルは、絶対値が異なるだけで、時間に対する変化特性は、等しいことが分かる。
【0039】
次に、この時系列信号は、A/D変換器4により、サンプリングされて、A/D変換されて、その後段では、ディジタル処理が行われる。この信号レベルと雑音レベルとを比較することで、パケットの存在する期間を特定することができる。これにより、4つのパケットを分離抽出することができる。次に、この各パケットにおいて、最大受信レベルを求める。そして、その最大受信レベルが最大値をとるパケットを特定する。図9の場合には、第1パケットが、最大受信レベルが最大値をとるパケットであることが分かる。第1パケットは、受信アンテナ1-1 で受信されたパケットであるので、そのパケットを送信しているタイヤは、その受信アンテナ1-1 の指向性の方位に存在するタイヤFRであると特定することができる。そして、その第1パケットのデータは、ディジタル復調された後、タイヤFRから送信された情報が得られ、その方位に存在するタイヤFRの空気圧や温度を知ることができる。このように、方位で情報を発信しているタイヤを特定することができるので、そのタイヤに固有に割り当てられたIDは、特に、必要ではない。
【0040】
4つのパケットは、送信データとしては、同一のパケットであるので、これを1群とする。この1群のパケットと、次の送信パケットに対応する4つのパケットの群との区別がつかなければ、パケットを群内の何番目のパケットかを特定することができない。これを区別できるようにするには、この一群のパケットの時間長(T4-T1-T )に比べて、送信パケットが送信されていない期間D0を十分に長くとる。このようにすれば、群内の隣接するパケット間の時間間隔D1に比べて、第1群の第4パケットと、次の第2群の第1パケットとの間の時間間隔D4を、十分に長くとることができる。この隣接するパケット間の時間を測定して、この時間間隔がしきい値(D1とD4との間の時間)よりも大きい場合には、その時間帯は、群と群との間の時間帯と判別することができる。これにより、各群を判別でき、各群が判別できれば、各パケットの現れる順番を特定することができる。
【0041】
次に、CPU5の処理手順を、図10のフローチャートに基づいて説明する。まず、ステップ100で、信号を入力して、上記の処理により、パケットの存在していない期間の時間を測定して、その時間が所定値を越える場合には、その期間は、群の境界と判別される。そして、その群の境界が検出された後に、しきい値以上のレベルの信号が検出された場合には、その信号は、第1パケットの先頭とされる。ステップ102で、パケットの先頭が検出されてから、信号レベルがしきい値より低くなったことが検出された場合には、1パケットが終了したと判断され、ステップ104に移行する。1パケットの入力が終了していない場合には、ステップ100、102が繰り返されることで、1パケットの入力が完了する。次に、ステップ104において、その1パケットの信号のうちで、最大受信レベルが求めら、その値は、第1パケットの最大受信レベルP(1)として、RAM6に記憶される。次に、ステップ106に移行して、1群に存在するパケットの数は既知(アンテナ数と同一)であるので、1群のパケットの入力が完了したか否かが判定できる。本実施例では、4つのパケットの入力が完了すれば、1群のパケットの入力が完了したと判定できる。1群のパケットの入力が完了していない場合には、ステップ108において、パケット変数を更新して、ステップ100に戻り、次のパケットの入力処理と、そのパケットの最大受信レベルが決定される。
【0042】
次に、ステップ106で、1群のパケットの入力が完了したと判定された場合には、次のステップ110において、4つの最大受信レベルP(1)、P(2)、P(3)、P(4)が得られているので、そのうちの最大値をとるパケットが決定される。例えば、最大受信レベルは、P(1)であるとすると、最大受信レベルを有するパケットは、第1パケットと決定される。次に、ステップ112において、第1パケットは、遅延時間T1で最も短いので、受信アンテナ1-1 で受信されたパケットであると判定できる。次に、ステップ114に移行して、その受信アンテナ1- 1は、タイヤFRの方位に指向性を有したアンテナであることは、既知であるので、そのパケットは、FRの方位に位置するタイヤ300-1 の送信器200-1 から送信されたパケットであると決定できる。最大受信レベルを有するパケットが、第2、第3、第4パケットの場合にも、同様に、アンテナ1-2 、1-3 、1-4 で受信されたパケットであると判定でき、その結果、そのパケットは、FL、RL、RRの方位に位置するタイヤ300-2 、300- 3、300-4 の送信器200-2 、200-3 、200-4 から送信されたパケットであると判定できる。
【0043】
次に、ステップ116において、最大受信レベルを有するパケットを、ディジタル復調して、タイヤから送信された空気圧、温度、ID(IDは必須ではない)等の情報がもとめられる。そして、次のステップ118において、その情報の表示などのデータ処理が実行されて、ステップ120において、次の新たな群として、ステップ122で、パケット変数を第1パケットに設定して、ステップ100に戻り、同様な処理が繰り返される。
【0044】
なお、ステップ104で、各パケットの最大受信レベルを求める代わりに、そのパケットの期間Tにおける受信レベルの積分値S 、又は、受信レベルの平均値S/T を求めるようにしても良い。この場合には、ステップ110では、受信レベルの積分値S 又は平均値S/T が最大となるパケットが決定されることになる。また、この積分区間、又は平均値を求める区間は、パケットの期間T 以下の期間の時間窓を設定して、その時間窓を時間軸上で移動させても良い。すなわち、移動する時間窓に対して出力される各値のうちで、最大値を、そのパケットの受信レベルの最大値としても良い。また、時間窓を設定して、移動させる場合には、パケットとパケットとの間では、出力が極端に低下するので、これによりパケットとパケットとの間や、群と群の間を検出するようにしても良い。
【0045】
本実施例において、タイヤIDを用いている場合には、このようなIDと方位との関係を規定したテーブルの更新は、任意のタイミングで行えばよい。また、本発明は、常に、走行中であっても、信号の送信される方位を検出することができるので、タイヤIDを用いなくとも、信号を送信しているタイヤの方位を決定することができる。
上記実施例において、A/D変換器4、CPU5、ROM7、RAM6は、選別装置、タイヤ特定装置を構成している。また、CPU5の処理手順の主としてステップ104、110が選別装置の処理を行う部分であり、主としてステップ112、114がタイヤ特定装置の処理を行う部部である。
【0046】
次に、各遅延時間T1〜T4の設定方法について説明する。図11に示すように、1パケットの送信期間をT とする。また、パケットAと次に送信されるパケットBとの間の信号が送信されていない期間の最小値をD0とする。時刻の原点は、パケットの先頭が送信開始される時刻とする。合成器3の出力する時系列信号において、各アンテナで受信されたパケットが、それぞれ、各遅延時間T1、T2、T3、T4だけ遅延して出力される各パケットの先頭の時刻を、それぞれ、t1、t2、t3、t4とする。t1、t2、t3、t4は、タイヤから各アンテナまでの信号の伝搬遅延時間が異なることを考慮して、一般的には、遅延時刻T1、T2、T3、T4とは異なる値となる。遅延されたパケットを、それぞれ、第1、第2、第3、第4パケットとする。第4パケットの終端の時刻はt4+Tとなる。また、次に送信されるパケットBの先頭の時刻は、T+D0である。したがって、そのパケットBを受信した時の合成器から出力される第1パケットの先頭の時刻は、T+D0+t1 となる。パケットAの第4パケットと、次のパケットBの第1パケットとが、干渉しないためには、パケットAの第4パケットの終端の時刻が、パケットBの第1パケットの先頭の時刻よりも前でなければならない。したがって、t4+T<T+D0+t1 が成立する。よって、t4-t1 <D0を満たす必要がある。すなわち、最小遅延時間で出力されるパケットと、最大遅延時間で出力されるパケットとの間の時間差t4-t1 の最大値は、情報の間欠的送信における情報の送信されていない期間D0の最小値よりも小さくする必要がある。時間差t4-t1 の最大値は、固定値の遅延時間差T4-T1 に対して、タイヤから各受信アンテナまでの信号の伝搬遅延時間差があるので、時間差t4-t1 は、遅延時間差T4-T1 に対して変化する。したがって、時間差t4-t1 の最大値を考慮する必要がある。また、情報の送信されていない期間D0は、必ずしも一定であるとは限らないので、そのうちの最小値を考慮する必要がある。
【0047】
また、次の条件も必要となる。合成器の出力する各パケットが、干渉しないように、各遅延時間は設定されている必要がある。第2パケットの先頭の時刻t2は、第1パケットの終端の時刻t1+Tよりも大きいことが必要となる。したがって、t1+T<t2が成立する。よって、T <t2-t1 となる。t2-t1 は、タイヤと受信アンテナ間の電波の伝搬遅延時間差によって変化するので、t2-t1 の最小値を考慮する必要がある。すなわち、合成器の出力する時系列信号において、パケットとパケットの間隔の最小値は、情報の一パケットの出力期間よりも長くなるように、各遅延時間を設定する必要がある。
【0048】
各タイヤから各アンテナへの信号の伝搬遅延時間の差に注目すると、合成器の出力においてパケットが干渉しないためには、下記の条件が必要となる。第1パケットと第2パケットとの間隔t2-t1 と、それに対応する遅延時間の差T2-T1 との差Δ=t2-t1-(T2-T1)を考える。この差Δは、情報を送信しているタイヤから第2パケットを出力するアンテナまでの伝搬遅延時間の、情報を送信しているタイヤから第1パケットを出力するアンテナまでの伝搬遅延時間に対する差を意味している。一方、遅延時間の差T2-T1 の期間において、パケットが存在しない期間は、T2-T1 -Tである。差Δが負値の場合には、合成器の出力でパケットが存在しない期間が、T2-T1 -Tに対して絶対値Δだけ短くなることを意味しており、絶対値Δは、この値以下でなければならない。したがって、T2-T1 -T+ Δ>0が成立する。すなわち、各タイヤから各アンテナへの信号の伝搬遅延時間の差|Δ|の最大値は、遅延時間の差(T2-T1 )の最小値から情報の一パケットの出力期間T を引いた時間(T2-T1 -T)よりも、十分に小さくなるように、複数のアンテナは、近接位置に配設されていることが必要となる。この条件は、上記第2番目の条件T <t2-t1 と同一である。
【0049】
次に、タイヤの各配置位置FR(前輪右側)、FL(前輪左側)、RL(後輪左側)、RR(後輪右側)の各方位に、指向性を有する受信アンテナについて説明する。図12は、その構成図である。線状アンテナ50は、長方形の各辺で構成され、第1線路51と第2線路52と、これらの線路の根元部に設けられた受電点53と、アンテナの先端部であって、第1線路51と第2線路52との接続点に設けられた終端抵抗54とから構成されている。第1線路51と第2線路52との間隔はL2である。線状アンテナ50に平行に設けられた線状アンテナ60は、同様に、長方形の各辺で構成され、第1線路61と第2線路62と、これらの線路の根元部に設けられた受電点63と、アンテナの先端部であって、第1線路61と第2線路62との接続点に設けられた終端抵抗64とから構成されている。第1線路61と第2線路62との間隔はL2である。この線状アンテナ50と、線状アンテナ60とは、距離L1を隔てて、平行に設けられており、受電点53から終端抵抗54の向きにとった配向ベクトルと、受電点63から終端抵抗64の向きにとった配向ベクトルは、相互に平行で、反対の向きを向いている。これらの線状アンテナ50と線状アンテナ60とで第1組のアンテナが構成されている。
【0050】
線状アンテナ70は、長方形の各辺で構成され、第1線路71と第2線路72と、これらの線路の根元部に設けられた受電点73と、アンテナの先端部であって、第1線路71と第2線路72との接続点に設けられた終端抵抗74とから構成されている。第1線路71と第2線路72との間隔はL2である。線状アンテナ70に平行に設けられた線状アンテナ80は、長方形の各辺で構成され、同様に、第1線路81と第2線路82と、これらの線路の根元部に設けられた受電点83と、アンテナの先端部であって、第1線路81と第2線路82との接続点に設けられた終端抵抗84とから構成されている。第1線路81と第2線路82との間隔はL2である。この線状アンテナ70と、線状アンテナ80とは、距離L1を隔てて、平行に設けられており、受電点73から終端抵抗74の向きにとった配向ベクトルと、受電点83から終端抵抗84の向きにとった配向ベクトルは、相互に平行で、反対の向きを向いている。これらの線状アンテナ70と線状アンテナ80とで第2組のアンテナが構成されている。
【0051】
これらの4つの線状アンテナ50、60、70、80は、高さがZ軸方向で、同一平面(XY平面)上に配置されている。また、線状アンテナ50と60から成る第1組のアンテナは、Y方向に配設されており、線状アンテナ70と80とから成る第2組のアンテナはX方向に配設されており、それらの長さ方向が、それぞれ、直交している。そして、各受電点53、63、73、83は、各遅延回路2- 1、2- 2、2- 3、2-4 を介して合成器3に接続されている。なお、各受電点は、バランを介して、同軸ケーブルに接続されている。バランの機能により、第1線路51、61、71、81と第2線路51、62、72、82は、それぞれ、電流が同一方向に流れるモードで、励振される。
【0052】
そして、これらの4つの線状アンテナ50、60、70、80は、裏面が金属板で構成された反射板91を貼り付けた厚さD の誘電体板92の上に設置されている。一つの線状アンテナ50の構成は、図13に示すものである。この反射板91により、到来電波を反射して、受信信号のレベルを向上させることができる。この実施例では、L1は、75mm、L2は、30mm、D は、10mmとした。
【0053】
この線状アンテナ50について、終端抵抗54の抵抗値とF/B 比との関係を測定した。終端抵抗54が650 Ωの場合に、F/B 比は、23dBが得られた。使用電波の周波数は、315MHzである。なお、F/B 比は、電波の到来方向が第1伝送路51を伝搬する電波の進行ベクトルV2の向きである場合の受信電力F と、電波の到来方向が進行ベクトルV2とは逆向きである場合の受信電力B との比を表す。
【0054】
次に、全ての終端抵抗を700 Ωとして、周波数を315MHzとした実施例装置において、各線状アンテナ50、60、70、80により受信する場合の指向特性を、図14に示す。
受電点から終端抵抗の向きが+Y方向の線状アンテナ50は、+Y方向の指向性を示し、受電点から終端抵抗の向きが−Y方向の線状アンテナ60は、−Y方向の指向性を示し、受電点から終端抵抗の向きが+X方向の線状アンテナ80は、+X方向の指向性を示し、受電点から終端抵抗の向きが−X方向の線状アンテナ70は、−X方向の指向性を示していることが理解される。このような指向性を有することから、+X、−X、+Y、−Yの方向から到来する電波を精度良く検出することができるので、タイヤの空気圧を検出するシステムのアンテナ装置として用いることができる。
【0055】
なお、タイヤの各配置位置FR(前輪右側)の方位を検出する受信アンテナ1-1 を、線状アンテナ60、FL(前輪左側)の方位を検出する受信アンテナ1-2 を線状アンテナ70、RL(後輪左側)の方位を検出する受信アンテナ1-3 を、線状アンテナ50、RR(後輪右側)の方位を検出する受信アンテナ1-4 を、線状アンテナ80で、それぞれ、構成することで、タイヤの配置されている4つの方位を検出することができる。
【0056】
上記実施例の受信アンテナ各線状アンテナ50、60、70、80を、は、に上記実施例では、第2線路52、62、72、82を、第1線路51、61、71、81に、それぞれ、平行に設けたが、4つの第2線路は、図15に示すように、共通の金属板(平面導体)95の鏡像で構成しても良い。この場合には、金属板95は、電波の反射板としても機能し、受信電力を放射電力を向上させることができる。
【0057】
このようにして、各線状アンテナ50、60、70、80を用いて、4方位の指向性を得ることができる。上記実施例において、L1は使用電波の波長λに対して、λ/10 以上λ以下が望ましい。また、L1は、L2の2倍以上、3倍以下が望ましい。また、D は、λ/20 以上、λ/10以下が望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、タイヤの空気圧や温度などを監視する装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
100 …受信器
200 …送信器
300 …タイヤ
1…受信アンテナ
2…遅延回路
3…合成器
21…送信アンテナ
50、60、70、80…線状アンテナ
51、61、71、81…第1線路
52、62、72、82…第2線路
53、63、73、83…受電点
54、64、74、84…終端抵抗
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の各タイヤにおける検出された情報を、間欠的に各タイヤに設けられた送信器により送信して、この情報を車両に取り付けられたアンテナにより受信して、各タイヤの状態を監視するタイヤ情報監視装置において、
前記情報を送信するタイヤの数と同数のアンテナであって、それぞれが、前記各タイヤのそれぞれの方向に他のアンテナに比べて最も高い指向性を有した複数のアンテナと、
前記アンテナの数と同数の遅延回路であって、それぞれが前記各アンテナに接続され、前記各アンテナによる受信信号を、それぞれ異なる遅延時間だけ遅延させる複数の遅延回路と、
全ての前記遅延回路の出力信号を時系列信号として合成する合成器と、
前記合成器から出力される時系列信号から、最大受信レベルの信号を選別する選別装置と、
前記選別装置により最大受信レベルと判定された信号を出力したアンテナを特定し、そのアンテナの指向性から前記情報を送信したタイヤを特定するタイヤ特定装置と
を有し、
前記各遅延時間は、前記合成器の出力する時系列信号において、前記各タイヤから送信される前記情報の一パケットが時間軸上において重ならないにように設定されている
ことを特徴とするタイヤ情報監視装置。
【請求項2】
前記各アンテナは、受信感度の高い方向と受信感度の低い方向を有する指向性アンテナであり、受信感度の低い方向から到来するタイヤからの最小受信レベルの情報も受信可能であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ情報監視装置。
【請求項3】
前記合成器の出力する時系列信号において、最小遅延時間で出力されるパケットと、最大遅延時間で出力されるパケットとの間の時間差の最大値は、前記情報の間欠的送信における情報の送信されていない期間の最小値よりも小さくするように前記各遅延時間が設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタイヤ情報監視装置。
【請求項4】
前記合成器の出力する時系列信号において、パケットと次のパケットとの間隔の最小値は、前記情報の一パケットの出力期間よりも長くなるように、前記各遅延時間が設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のタイヤ情報監視装置。
【請求項5】
各タイヤから各アンテナへの信号の伝搬遅延時間の差の最大値は、前記遅延時間の差の最小値から前記情報の一パケットの出力期間を引いた時間よりも、十分に小さくなるように、前記複数のアンテナは、近接位置に配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のタイヤ情報監視装置。
【請求項6】
前記選別装置によりる最大受信レベルの選別は、前記合成器の出力する時系列信号において、瞬時的な受信レベルの最大値をとるパケットの選別であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のタイヤ情報監視装置。
【請求項7】
前記選別装置による最大受信レベルの選別は、前記合成器の出力する時系列信号において、前記情報の出力期間以下の長さの時間窓における積分値又は平均値が、最大値をとるパケットによる選別であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のタイヤ情報監視装置。
【請求項1】
車両の各タイヤにおける検出された情報を、間欠的に各タイヤに設けられた送信器により送信して、この情報を車両に取り付けられたアンテナにより受信して、各タイヤの状態を監視するタイヤ情報監視装置において、
前記情報を送信するタイヤの数と同数のアンテナであって、それぞれが、前記各タイヤのそれぞれの方向に他のアンテナに比べて最も高い指向性を有した複数のアンテナと、
前記アンテナの数と同数の遅延回路であって、それぞれが前記各アンテナに接続され、前記各アンテナによる受信信号を、それぞれ異なる遅延時間だけ遅延させる複数の遅延回路と、
全ての前記遅延回路の出力信号を時系列信号として合成する合成器と、
前記合成器から出力される時系列信号から、最大受信レベルの信号を選別する選別装置と、
前記選別装置により最大受信レベルと判定された信号を出力したアンテナを特定し、そのアンテナの指向性から前記情報を送信したタイヤを特定するタイヤ特定装置と
を有し、
前記各遅延時間は、前記合成器の出力する時系列信号において、前記各タイヤから送信される前記情報の一パケットが時間軸上において重ならないにように設定されている
ことを特徴とするタイヤ情報監視装置。
【請求項2】
前記各アンテナは、受信感度の高い方向と受信感度の低い方向を有する指向性アンテナであり、受信感度の低い方向から到来するタイヤからの最小受信レベルの情報も受信可能であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ情報監視装置。
【請求項3】
前記合成器の出力する時系列信号において、最小遅延時間で出力されるパケットと、最大遅延時間で出力されるパケットとの間の時間差の最大値は、前記情報の間欠的送信における情報の送信されていない期間の最小値よりも小さくするように前記各遅延時間が設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタイヤ情報監視装置。
【請求項4】
前記合成器の出力する時系列信号において、パケットと次のパケットとの間隔の最小値は、前記情報の一パケットの出力期間よりも長くなるように、前記各遅延時間が設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のタイヤ情報監視装置。
【請求項5】
各タイヤから各アンテナへの信号の伝搬遅延時間の差の最大値は、前記遅延時間の差の最小値から前記情報の一パケットの出力期間を引いた時間よりも、十分に小さくなるように、前記複数のアンテナは、近接位置に配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のタイヤ情報監視装置。
【請求項6】
前記選別装置によりる最大受信レベルの選別は、前記合成器の出力する時系列信号において、瞬時的な受信レベルの最大値をとるパケットの選別であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のタイヤ情報監視装置。
【請求項7】
前記選別装置による最大受信レベルの選別は、前記合成器の出力する時系列信号において、前記情報の出力期間以下の長さの時間窓における積分値又は平均値が、最大値をとるパケットによる選別であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のタイヤ情報監視装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−70400(P2011−70400A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220874(P2009−220874)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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