説明

タイヤ成型装置及びタイヤ成型方法

【課題】生タイヤの成型時に、カーカスプライの癖付け部をビードコアに均一かつ確実に巻き付け、癖付け部の巻き付け不良の発生を抑制する。
【解決手段】ビードコア92をカーカスプライ93の癖付け部93K内に配置し、ビードコア支持手段30によりビードコア92を半径方向内側から支持する。その状態で、タイヤ構成部材97の端部を折り返す折返手段を作動させ、折返フィンガー60を揺動させて、その先端の折返ローラ61をローラ受け31Bに沿って拡開させる。この折返手段の折り返し動作を停止手段により中間停止させ、そこまでの折返ローラ61の移動により、タイヤ構成部材97の端部側を癖付け部93Kと共にビードコア92側に変位させ、癖付け部93Kをビードコア92に巻き付く方向に変位させてビードコア92に確実に巻き付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーカスプライの側端部をビードコア周りに巻き付けて生タイヤ(グリーンタイヤ)を成型するタイヤ成型装置及びタイヤ成型方法に関し、特に、側端部にビードコアに巻き付く向きの癖付け部を有するカーカスプライを成型ドラムの外面側に配置し、この癖付け部の内側にビードコアを配置して生タイヤを成型するタイヤ成型装置及びタイヤ成型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、一般に、一対のビード部に配置されたビードコアと、その間に渡ってトロイダル状に延びる1層以上のカーカスプライとを備えており、カーカスプライのタイヤ半径方向内側の両側端部がそれぞれ、ビードコア周りにタイヤ内側から外側に折り返される等して係止され、ビード部に固定及び保持されている。このような空気入りタイヤ、例えばラジアル構造のトラックやバス用の重荷重用タイヤ等のビード部構造として、従来、カーカスプライの側端部をビードコアの外表面に沿って巻き付けた、いわゆるビードワインド構造が広く知られている(特許文献1参照)。
【0003】
図9は、この従来の空気入りタイヤの構造を模式的に示すタイヤ幅方向の半断面図であり、タイヤ赤道面を挟んだ一方側(図では右側)を示している。
この空気入りタイヤ90は、図示のように、ビード部91に配置された断面略六角形状のビードコア92と、その間に渡ってトロイダル状に延びるカーカスプライ93と、ビードコア92周りのカーカスプライ93をタイヤ半径方向内側から覆う補強層94と、カーカスプライ93の外周側(図では上側)に配置された複数層(図では3層の)ベルト95及びトレッドゴム96等を備えている。
【0004】
また、この空気入りタイヤ90では、カーカスプライ93の側端部(ここではタイヤ半径方向内側部)が、ビードコア92の周りにタイヤ幅方向内側から外側(図では左側から右側)に折り返されて、ビードコア92の外面に沿ってタイヤ半径方向外側までの各面を覆い、ビードコア92の略全体を包み込むように巻き付けられている。更に、この空気入りタイヤ90では、このようにビードコア92に巻き付けるカーカスプライ93の側端部を、予め塑性変形させて局部的に折り曲げ、そのビードコア92の角部に対向する複数箇所(図では3箇所)に、先端に向かって順に折曲部K1、K2、K3を形成している。これにより、カーカスプライ93の側端部に、ビードコア92の断面形状に応じた癖付けを施して、ビードコア92に巻き付く向きの癖付け部93Kを形成し、そのビードコア92の外面に沿った巻き付けの精度を高めている。
【0005】
ここで、このような空気入りタイヤ90の生タイヤを成型するタイヤ成型工程では、外面側にインナーライナやサイドウォール部材、及びカーカスプライ93等の各タイヤ構成部材が配置されるタイヤ成型用の成型ドラム等を備えたタイヤ成型装置が広く使用されている。このタイヤ成型装置では、生タイヤは、回転する成型ドラムの外面側に各タイヤ構成部材を順次巻き付け、その両端部側に略環状のビードコア92を配置した後、タイヤ構成部材の端部をビードコア92周りに折り返す等して成型されるのが一般的である。
【0006】
従って、このタイヤ成型装置には、上記した成型ドラムに加えて、ビードコア92を支持する手段や、タイヤ構成部材を折り返す折返手段等が必要であり、そのための装置として、従来、ビードコア92を半径方向内側から固定して支持するビードコア支持手段や、成型ドラムの周方向に複数配置された揺動(拡縮変位)可能な複数の折返フィンガー及び、その先端部に回転可能に支持された折返ローラ等からなる折返手段等を備えた各種のタイヤ成型装置が知られている(特許文献2、特許文献3参照)。
【0007】
ところが、これら従来のタイヤ成型装置では、生タイヤの成型に、上記した癖付け部93Kを有さないカーカスプライが使用されることが多く、カーカスプライは、他のタイヤ構成部材と共に折り返されて、例えばビードフィラが取り付けられたビードコア92の周りにタイヤ半径方向外側に向かって巻き上げられる。そのため、癖付け部93Kを有するカーカスプライ93を使用して生タイヤを成型する場合には、これらタイヤ成型装置による通常の生タイヤの成型工程に加えて、癖付け部93Kの内側の所定位置にビードコア92を配置し、その外面に癖付け部93Kを巻き付ける巻付工程が別途必要となる。
【0008】
この巻付工程では、従来、ビードコア配置装置(ビードセッター)のビードコア92を保持して移動させるビードホルダーにより、カーカスプライ93の癖付け部93K(図9参照)を強制的に広げて、その内側にビードコア92を配置することが広く行われている(特許文献4参照)。
【0009】
図10は、この巻付工程を説明するためのタイヤ成型装置の要部模式図であり、タイヤ成型装置が備える成型ドラムの軸線を含むドラム軸方向断面図である。
この従来のタイヤ成型装置100では、図示のように、成型ドラム(図示せず)の外面側にタイヤ構成部材97及びカーカスプライ93を順に巻き付けて配置した後、ビードコア92を保持したビードホルダー101を、カーカスプライ93の癖付け部93Kに向かって、ドラム軸方向内側から外側(図では左側から右側)に移動させる。
【0010】
この移動により、ビードホルダー101を癖付け部93Kに当接させてドラム軸方向外側に押圧し、その各折曲部K1、K2、K3等を押圧方向に弾性変形させて、癖付け部93を癖付けされた形状(図の点線で示す形状)から強制的に押し広げて変形(図の実線で示す形状)させる。このようにして、ビードコア92を、ビードコア支持手段(ビードロック手段)のビードロックセグメント(ビードロック部材)102に対向する所定位置に配置し、その状態で、ビードロックセグメント102を半径方向外側(図では上側)に移動させて拡径させる。これにより、ビードロックセグメント102の外周面に形成された断面凹状のビード支持部(凹溝)102A内に、タイヤ構成部材97及びカーカスプライ93を挟んでビードコア92を収容して固定・支持する。その後、ビードホルダー101によるビードコア92の保持を解除して、ビードホルダー101を癖付け部93Kから外して離間させ、癖付けされたカーカスプライ93の復元力により、癖付け部93Kを変形前の元の形状に復元させてビードコア92へ巻き付ける。
【0011】
しかしながら、このように癖付け部93Kのビードコア92への巻き付けを行うと、押し広げられた癖付け部93Kの一部が半径方向内側に配置されたインナーライナやサイドウォール部材等のタイヤ構成部材97に密着し、癖付け部93Kの復元が不充分になることがある。即ち、癖付け部93Kは、ビードホルダー101により押し広げられることで、タイヤ構成部材97側の一部、例えば半径方向内側の折曲部K1、K2間の部分等が、タイヤ構成部材97側に変位して接近する。その状態で、ビードロックセグメント102を拡径させると、タイヤ構成部材97がビードコア92側に変位して、癖付け部93Kとタイヤ構成部材97の互いに接近した部分同士が接触して密着し、ビードホルダー101を外しても密着した状態に維持されることがある。
【0012】
図11は、特許文献に記載されたものではないが、このような密着が生じたカーカスプライ93の癖付け部93Kの例を示す模式図であり、癖付け部93K付近を拡大して示す部分断面図である。
【0013】
なお、図11では、上記と同様のビードロックセグメント31により、そのビード支持部31A内にビードコア92を収容して支持した状態を示している。また、ここでは、タイヤ構成部材97を折り返すための、上記した先端部に折返ローラ61を備えた折返フィンガー60等からなる折返手段の一部も示しており、折返ローラ61が、ビードロックセグメント31のドラム軸方向外側面のローラ受け31B内に配置されている。
【0014】
図示の例では、癖付け部93Kの折曲部K1、K2間付近の半径方向内側面(内周面)が、対向するタイヤ構成部材97の半径方向外側面(外周面)に接触して密着部Mが形成され、それらが互いに密着して癖付け部93Kが開いた状態になっている。その結果、このような密着が生じた場合には、ビードホルダーを癖付け部93Kから離間させても、その復元が妨げられて不充分となり、癖付け部93Kが元の形状まで復元せずに、ビードコア92への巻き付けも不充分になる。
【0015】
このように、カーカスプライ93の癖付け部93Kを、その復元力のみでビードコア92に均一かつ安定して巻き付けるのは難しく、従って、従来のタイヤ成型装置では、この巻き付けを確実に行い、癖付け部93Kのビードコア92に対する巻き付け精度を効果的に向上させるのは難しい。これに伴い、癖付け部93Kに巻き付け不良が発生する恐れも高くなるとともに、製品タイヤのビード部を中心に、タイヤの品質に影響が生じる恐れもある。
【0016】
【特許文献1】特開2001−315509号公報
【特許文献2】特開2001−293793号公報
【特許文献3】特開2005−246823号公報
【特許文献4】特開2001−252991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、生タイヤの成型時に、カーカスプライの側端部に形成した癖付け部を、ビードコアに均一かつ確実に安定して巻き付けられるようにし、癖付け部の巻き付け不良の発生を抑制して、タイヤの品質を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1の発明は、カーカスプライを含むタイヤ構成部材が外面側に配置される成型ドラムを備え、前記カーカスプライは側端部にビードコアに巻き付く向きの癖付け部を有し、前記成型ドラムに配置した前記カーカスプライの癖付け部の内側に前記ビードコアを配置して生タイヤを成型するタイヤ成型装置であって、前記癖付け部の内側に配置されたビードコアを、前記タイヤ構成部材を挟んで半径方向内側から支持するビードコア支持手段と、該ビードコア支持手段と前記ビードコアとの間に挟まれた前記タイヤ構成部材の端部側を前記癖付け部と共に前記ビードコア側に変位させ、前記癖付け部を前記ビードコアに巻き付く方向に変位させて該ビードコアに巻き付ける変位手段と、を備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載されたタイヤ成型装置において、前記タイヤ構成部材の端部を前記ビードコア支持手段により支持されたビードコア周りに該ビードコア側から変位させて折り返す折返手段を備え、前記変位手段が、前記折返手段、及び該折返手段の前記折り返し動作を中間停止させる停止手段により構成され、前記タイヤ構成部材の端部側を、前記折返手段により前記ビードコア周りに変位させて前記癖付け部と共に前記ビードコア側に変位させ、該変位を前記停止手段により停止させることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載されたタイヤ成型装置において、前記折返手段は、前記成型ドラムの周方向に複数配置され、前記タイヤ構成部材の端部に接触して折り返す折返部材と、該折返部材が先端部に設けられ、前記ビードコア支持手段のドラム軸方向外側の基端部を支点に揺動して拡開及び縮閉可能な複数の折返フィンガーと、該折返フィンガーを揺動させる揺動手段とを有し、前記折返フィンガーを拡開させつつ前記折返部材を前記タイヤ構成部材の端部に沿って前記ビードコア側から接触移動させて該タイヤ構成部材の端部を前記ビードコア周りに折り返し、前記停止手段が、前記折返フィンガーの揺動を停止させて前記折返手段の折り返し動作を停止させる揺動停止手段であることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3に記載されたタイヤ成型装置において、前記揺動手段は、前記複数の折返フィンガーの前記基端部を揺動可能に支持するフィンガー支持部材と、該フィンガー支持部材をドラム軸方向に移動させて前記折返フィンガーの基端部を移動させるフィンガー移動手段とを有し、前記折返フィンガーの基端部を前記ビードコア支持手段に接近及び離間させて前記折返フィンガーを揺動させ、前記停止手段は、前記フィンガー移動手段により移動する前記フィンガー支持部材に当接して該フィンガー支持部材の移動を停止させる停止位置と非停止位置との間で移動可能な当接部材を有し、該当接部材を当接させて前記フィンガー支持部材の移動及び前記折返フィンガーの揺動を停止させることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項4に記載されたタイヤ成型装置において、前記当接部材が、前記フィンガー支持部材の前記成型ドラムの軸線に対して対称な位置に当接するように、前記成型ドラムの軸線を挟んで少なくとも一対配置されていることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項4又は5に記載されたタイヤ成型装置において、前記当接部材が、前記フィンガー支持部材のドラム軸方向内側への移動を規制する第1の当接部材、及び/又は、前記フィンガー支持部材のドラム軸方向外側への移動を規制する第2の当接部材からなることを特徴とする。
請求項7の発明は、カーカスプライを含むタイヤ構成部材を成型ドラムの外面側に配置し、前記カーカスプライの側端部に形成されたビードコアに巻き付く向きの癖付け部の内側に前記ビードコアを配置して生タイヤを成型するタイヤ成型方法であって、前記癖付け部の内側に配置されたビードコアを、前記タイヤ構成部材を挟んで半径方向内側から支持する工程と、該支持されたビードコアの半径方向内側に挟まれた前記タイヤ構成部材の端部側を前記癖付け部と共に前記ビードコア側に変位させ、前記癖付け部を前記ビードコアに巻き付く方向に変位させて該ビードコアに巻き付ける工程と、を有することを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項7に記載されたタイヤ成型方法において、前記巻き付ける工程は、前記タイヤ構成部材の端部を前記支持されたビードコア周りに該ビードコア側から変位させて折り返す折り返し動作を中間停止させる工程を有し、前記タイヤ構成部材の端部側を前記ビードコア周りに変位させて前記癖付け部と共に前記ビードコア側に変位させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、生タイヤの成型時に、カーカスプライの側端部に形成した癖付け部を、ビードコアに均一かつ確実に安定して巻き付けることができ、癖付け部の巻き付け不良の発生を抑制して、タイヤの品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態のタイヤ成型装置は、従来のタイヤ成型装置(例えば特許文献2、3に記載されたもの)と同様に、カーカスプライを含むタイヤ構成部材(例えばカーカスプライの半径方向内側に配置されるインナーライナやサイドウォール部材等)が外面側に巻き付けられる等して配置されるタイヤ成型用の成型ドラムや、タイヤ構成部材の折返手段等を備えている。
【0021】
また、このタイヤ成型装置は、例えばトラック及びバス用ラジアルタイヤ(TBR)や他の重荷重用タイヤ等、生タイヤの成型に、側端部にビードコアに巻き付く向きの癖付け部を有するカーカスプライを使用するタイヤを成型するものである。即ち、このタイヤ成型装置で使用するカーカスプライの側端部(幅方向の端部である側部)のそれぞれには、配置するビードコアに対応して、湾曲変形させた湾曲部や、複数箇所で折り曲げ変形(塑性変形)させた折曲部(図10、図11参照)が、予め、又は成型ドラム上への配置後に形成される等して、ビードコアの断面形状に応じた癖付けが施されている。
【0022】
従って、本実施形態のタイヤ成型装置は、例えば上記したタイヤ成型装置100(図10参照)と同様にして、成型ドラムの外面側に配置したカーカスプライの癖付け部の内側にビードコアを配置し、この癖付け部をビードコアの外面に沿って巻き付ける等して生タイヤを成型する。しかしながら、このタイヤ成型装置では、カーカスプライの癖付け部が、上記したように半径方向内側のタイヤ構成部材に密着(図11参照)等した場合であっても、そのビードコアへの巻き付けを確実に行うための手段を備えている点で、前記従来のものと相違している。
【0023】
なお、本実施形態では、上記した空気入りタイヤ90(図9参照)と同様の、断面略六角形状のビードコア92や、その角部に対応する3箇所に折曲部K1、K2、K3が設けられて癖付け部93Kが形成された少なくとも1層のカーカスプライ93等を備えたタイヤを成型する場合を例に採り説明するが、他の断面形状のビードコア及び、その断面形状に応じた癖付けが施されたカーカスプライを備えたタイヤも同様に成型できる。
【0024】
図1は、本実施形態のタイヤ成型装置の要部を模式的に示す断面図であり、タイヤ成型装置1が備える成型ドラム2の軸線を含む断面の上半分を示している。また、図2は、図1に示す成型ドラム2の軸方向の中心面(以下、中心面CLという)を挟んだ一方側を拡大して示す部分断面図である。ただし、図1では、成型ドラム2の外面側にタイヤ構成部材97及びカーカスプライ93を巻き付けて配置した後、図示しないビードセッター(図10参照)により、上記と同様にカーカスプライ93の癖付け部93Kの内側に、ビードコア92を配置した状態を示している。一方、図2では、ビードコア92を半径方向内側から支持し、カーカスプライ93を含むタイヤ構成部材97を膨出変形させる等してシェーピングしている状態を示している。
【0025】
このタイヤ成型装置1の成型ドラム2は、中心面CLを挟んで、略対称に構成され、かつ装置各部が略対称に駆動又は作動等するようになっており、図1に示すように、中心軸10と、中心軸10の外周面を摺動可能な一対のスライダ20と、スライダ20の外周側に設けられたビードコア支持手段30と、を備えている。また、成型ドラム2には、中心軸10の外周側に、タイヤ構成部材97を折り返すための一対の折返手段50が、各スライダ20のドラム軸方向(成型ドラム2の軸線方向)外側端部のそれぞれに連結されて一体に移動可能に、かつスライダ20のドラム軸方向外側から、その半径方向外側(外周面側)まで配置されている。
【0026】
中心軸10は、軸線周りに回転可能な略円筒状(中空状)をなし、タイヤ成型装置1が備える駆動装置(図示せず)に連結されて、それにより軸線周りに回転駆動される。また、中心軸10の中空部には、略ロッド状のネジ軸11が同芯状に、かつ両端部側に配置されたベアリング等の軸受け部材12を介して回転可能に設けられている。このネジ軸11は、成型ドラム2の中心面CLを挟んで、互いにリードが逆向きな逆ネジである雄ネジ部11Aが、それぞれ外周面の所定範囲に略対称に形成され、中心軸10とは独立に、ネジ軸回転駆動手段(図示せず)により軸線周りの両方向に回転駆動される。
【0027】
加えて、中心軸10には、これらネジ軸11の各雄ネジ部11Aに対応する範囲に、それぞれドラム軸方向に延びるスリット10Aが内外を貫通して長孔状に、かつ周方向に略等間隔で複数形成されている。これら各雄ネジ部11Aには、それぞれに噛み合い螺合するナットである雌ネジ部材13が、中心面CLを挟んで略対称な位置に、中心軸10内の中空部を移動可能(図1、図2参照)に取り付けられている。また、雌ネジ部材13の外周側には、各スリット10Aを貫通して、その長手方向に沿って移動可能に形成された複数の連結部材14が、それぞれ放射状に固定されている。この連結部材14は、各雌ネジ部材13と上記した一対のスライダ20とを連結するための例えばブロック状や板状等の部材であり、半径方向外側の先端部が、それぞれスライダ20のドラム軸方向内側の半径方向内側面(内周面)に取り付けられている。
【0028】
一対のスライダ20は、それぞれ中心軸10の外径に応じた内径の略円筒状に形成されたスリーブであり、中心軸10の中心面CLを挟んだ両側に、その外周面に摺動可能に装着されて略同芯状に支持され、中心軸10上を摺動してドラム軸方向の内外方向に移動する。このスライダ20は、ネジ軸11が駆動されて回転すると、逆ネジである各雄ネジ部11Aのネジ作用により各雌ネジ部材13が互いに逆方向に移動し、この移動に応じて、互いにドラム軸方向の逆方向に等距離だけ移動(摺動)して、中心面CLを挟んで略対称に同期して接近(図2参照)及び離間(図1参照)する。これにより、スライダ20は、その外周側に搭載された一対のビードコア支持手段30及び、ドラム軸方向外側端等に連結された一対の折返手段50を、それぞれ互いにドラム軸方向に接近離間変位させる。
【0029】
ビードコア支持手段30は、上記したカーカスプライ93の癖付け部93Kの内側に配置されたビードコア92を、その内周側のタイヤ構成部材97等を挟んで半径方向内側から支持するためのビードロック手段である。ここでは、ビードコア支持手段30は、ビードロックセグメント31を拡径変位させて、一対のビードコア92のそれぞれに、タイヤ構成部材97等を挟んで半径方向内側(内周側)から当接(図2参照)させ、各ビードコア92等を内側から固定して支持する。また、各ビードコア支持手段30はそれぞれ、スライダ20のドラム軸方向内側端部の外周面に取り付けられた収容支持体32と、その内側に収容配置されて各ビードロックセグメント31を変位させる複数の変位部材33と、それらのドラム軸方向外側に設けられたスライダ20の外周面を摺動可能な摺動体34と、摺動体34と変位部材33とを連結するリンク(連結部材)35等、を備えている。
【0030】
複数のビードロックセグメント31は、周方向に互いに隣接して全体として略リング状(環状)をなすセグメントであり、ビードコア92の内周側に接触する外側位置(図2参照)と、接触しない内側位置(図1参照)との間で、半径方向に同期して拡縮変位可能に構成されている。また、各ビードロックセグメント31には、上記した従来のビードロックセグメント(図10、図11参照)と同様に、半径方向外側の外周面に、ビードコア92の内周側の一部を収容可能なビード支持部31A(図2参照)が、湾曲した断面凹状(凹溝状)に形成されている。一方、そのドラム軸方向外側の側面には、後述する折返手段50の折返ローラ61が載置されるローラ受け31Bが、ドラム軸方向外側に向かって突出して、かつ折返ローラ61の半径に応じた曲率等で断面湾曲形状に形成されている。
【0031】
収容支持体32は、ドラム軸方向の内側と外側に、所定の距離を隔てて互いに略平行に配置された内側壁32A及び外側壁32Bを有し、それらの間に複数の変位部材33を摺接可能に収容して支持する。これら内側壁32A及び外側壁32Bは、それぞれスライダ20の外周面側の基端部から半径方向外側に向かって突出し、スライダ20の周方向に沿って延びる断面略板状(略環状)に形成されており、ここでは、内側壁32Aが外側壁32Bよりも厚くなっている。また、この外側壁32Bは、ビードロックセグメント31の前記ローラ受け31Bが、その突出端を跨いで配置可能なように、その分だけ内側壁32Aよりも低く形成されるとともに、周方向の複数箇所に、リンク35が挿入されるスリット(貫通孔)が形成されている。収容支持体32は、これら内側壁32Aと外側壁32B等により区画して、それらの間に半径方向外側に開放した断面略矩形状で周方向に延びる収容部32C(略環状空間)を形成し、その内側に複数の変位部材33を、それぞれ半径方向に移動(摺動)可能に収容支持して移動を案内する。
【0032】
複数の変位部材33は、それぞれの半径方向外側の外周面に各ビードロックセグメント31が取り付けられた、例えば略セクター状(扇状)の部材であり、収容支持体32の収容部32C内を摺動して半径方向の内外方向に略放射状に移動し、ビードロックセグメント31を拡縮変位させる。
【0033】
これら各変位部材33に連結されたリンク35、及び摺動体34は、変位部材33を移動させるための移動手段であり、複数のリンク35は、それぞれ外側壁32Bの前記スリットを通って、一端部が各変位部材33に、他端部が摺動体34のドラム軸方向内側端部にそれぞれ回動可能に連結され、摺動体34から変位部材33に向かって半径方向外側に傾斜して配置されている。一方、摺動体34は、略円筒状をなし、スライダ20の外周面に摺動可能に装着されて、スライダ20の外周面に沿って、その収容支持体32よりもドラム軸方向外側部分を略同芯状に摺動し、ドラム軸方向の内外方向に移動して変位部材33に接近及び離間する。
【0034】
ここで、本実施形態では、スライダ20と、上記した折返手段50のスライダ20の外周側に配置された部分との間をシリンダ室40とし、加圧流体(ここでは空気等の加圧気体)を使用して、ピストン・シリンダ機構と同様の、摺動体34を摺動(移動)させるための駆動手段を構成している。具体的には、この成型ドラム2では、スライダ20と、その半径方向外側に位置する折返手段50の略円筒状の内筒壁53とにより、それらの間に略円筒状の空間を区画する。この空間のドラム軸方向外側端部を、折返手段50のスライダ20と連結された略環状のベース部材51により、ドラム軸方向内側を、内筒壁53の内周面から半径方向内側に突出する略環状の固定壁41により、それぞれ区画して略円筒状(環状)のシリンダ室40を形成している。
【0035】
このシリンダ室40の固定壁41は、内筒壁53から摺動体34まで延びてその外周面と摺動可能に当接(摺接)し、摺動体34は、この固定壁41の内周面に摺接しつつドラム軸方向に移動してシリンダ室40内から進退する。また、摺動体34のシリンダ室40内に位置する端部側には、内筒壁53の内周面と摺動可能な略環状の摺動壁42が外周面に設けられており、シリンダ室40は、この摺動壁42により仕切られて、ドラム軸方向外側の第1圧力室40Aと、内側の第2圧力室40Bとに区画される。
【0036】
ビードコア支持手段30は、このシリンダ室40の内部に収納した摺動壁42をピストンとして機能させ、図示しない各給排気孔を通して、加圧気体供給源から供給される所定圧力の加圧気体を第1圧力室40A内に供給すると同時に、第2圧力室40B内の気体を排気して、摺動壁42をドラム軸方向内側に移動(摺動)させる。また、逆に、第2圧力室40B内に加圧気体を供給すると同時に、第1圧力室40A内の気体を排気し、摺動壁42をドラム軸方向外側に移動させる。このように、ビードコア支持手段30は、摺動壁42にドラム軸方向の力を作用させ、摺動壁42を摺動体34と一体にドラム軸方向に移動させる。
【0037】
この移動により、ビードコア支持手段30は、摺動体34を摺動させて変位手段33に接近させ、この移動距離に応じて、複数のリンク35を介して、各変位手段33を収容支持体32により案内させて半径方向外側(図2参照)に移動させる。また、摺動体34を変位手段33から離間させて、各変位手段33を半径方向内側(図1参照)に移動させる。ビードコア支持手段30は、このように変位手段33を半径方向に移動させて、複数のビードロックセグメント31を、同期して拡縮変位させ、カーカスプライ93を含むタイヤ構成部材97等を挟んで、ビードコア92の内周側に当接して固定及び支持する拡径位置(当接位置)(図2参照)と、当接しない縮径位置(離間位置)(図1参照)との間で変位させる。
【0038】
以上に加えて、この成型ドラム2は、各ビードコア支持手段30のビードロックセグメント31を半径方向外側から覆うように配置された一対のシール部材36を備えている。各シール部材36は、複数の並列させたコードをゴムで被覆したゴム被覆コードからなり、一端が収容支持体32の内側壁32A外端部に気密状態で固定されている。また、シール部材36は、この固定された基端部から、ドラム軸方向内側に延びて外側に折返し、ビードロックセグメント31の半径方向外側まで、その外周面の全体を覆って配置されている。更に、そのビードロックセグメント31に重なる範囲及び、その近傍の外周面には、例えばシリコンを含む離型剤の塗布や粗面加工を施す等して、ゴムに対する密着防止処理がなされている。
【0039】
このシール部材36は、ビードロックセグメント31によりビードコア92を支持したときに、ビードロックセグメント31とタイヤ構成部材97との間に挟み込まれてその範囲を封止し、タイヤ構成部材97と成型ドラム2との間をシールする。タイヤ成型装置1は、このシール部材36によりタイヤ構成部材97の内部を気密状態に維持し、加圧気体供給源(図示せず)から供給される所定圧力の加圧気体をタイヤ構成部材97の内側に供給し、それらを膨出変形させてシェーピングする。
【0040】
即ち、このタイヤ成型装置1では、各ビードコア支持手段30(図1参照)を作動させてビードロックセグメント31を拡径させ、カーカスプライ93の癖付け部93Kの内側に配置された各ビードコア92を内周側から支持する。これにより、ビードコア92を、カーカスプライ93や、その下層(内層)側のタイヤ構成部材97、及びシール部材36を挟んで、ビードロックセグメント31のビード支持部31A(図2参照)内に収容し、ビードコア92を半径方向内側から係脱可能に係止して固定する。その状態で、ネジ軸11を回転させて一対のスライダ20をドラム軸方向内側に移動させて一対のビードコア92を互いに接近させ、これに連動して、シール部材36によりシールされたタイヤ構成部材97の内側に加圧気体を供給し、タイヤ構成部材97及びカーカスプライ93等のビードコア92間の部分を略トロイダル状に膨出変形(図2参照)させる。
【0041】
また、本実施形態では、この膨出させたタイヤ構成部材97の端部(本発明では、タイヤ構成部材97のビードコア92よりもドラム軸方向外側に配置された部分のことをいう)を、それぞれ一対の折返手段50の外周側まで配置しており、この端部を折返手段50により、それぞれビードコア50周りに折り返すようになっている。
【0042】
図3は、図2に示すタイヤ成型装置1の折返手段50付近を拡大して示す部分断面図であり、折返手段50を、タイヤ構成部材97の端部を折り返す前の状態(図2参照)から作動させて、その折り返し途中の状態を示している。
折返手段50は、図示のように、上記したベース部材51を挟んで、ドラム軸方向内側に延びるスライダ20の外周面側(図2参照)に設けられたシリンダ部52、及びドラム軸方向外側に延びるスライダ20の外側に設けられたガイド部材58と、後述する揺動手段により基端部60Aを支点に同期して揺動する複数の折返フィンガー60と、その先端部に設けられた折返部材61等を備えている。
【0043】
シリンダ部52には、上記した内筒壁53と、内筒壁53の半径方向外側に同芯状に設けられた略円筒状の外筒壁54と、それらのドラム軸方向の両端部同士を連結する略環状の内外の端壁55、56とにより区画されて、上記したシリンダ室40と同様の略円筒状のシリンダ室57が形成されている。このシリンダ室57の内側には、内筒壁53の外周面及び外筒壁54の内周面と摺動可能な略環状の摺動壁62が収容されており、シリンダ室57は、この摺動壁62により仕切られてドラム軸方向外側の第1圧力室57Aと、内側の第2圧力室57Bとに区画される。
【0044】
折返手段50は、この摺動壁62をピストンとして機能させ、図示しない加圧気体供給源から供給される所定圧力の加圧気体を、一方の端壁56側の給排気孔52Aから第1圧力室57A内に供給すると同時に、第2圧力室57B内の気体を、他方の端壁55側の給排気孔52Bから排気して、摺動壁62をドラム軸方向内側に移動(摺動)させる。また、逆に、第2圧力室57B内に加圧気体を供給すると同時に、第1圧力室57A内の気体を排気し、摺動壁62をドラム軸方向外側に移動させる。この摺動壁62には、周方向に沿って所定間隔(例えば略等間隔)で、複数のピストンロッド63が、端壁56を貫通してドラム軸方向外側に向かってシリンダ室57の外側まで延びるように固定されており、ピストンロッド63は、摺動壁62と一体にドラム軸方向に移動して、シリンダ部52からガイド部材58の外周面側を進退する。
【0045】
ガイド部材58は、略円筒状をなし、ベース部材51の内筒壁53よりも半径方向内側位置から、ドラム軸方向外側に向かって設けられ、成型ドラム2(図1参照)と略同芯状に、かつ中心軸10の外周面と所定の距離を隔てて配置されている。また、このガイド部材58の外周面には、複数の折返フィンガー60の基端部60Aを支持するフィンガー支持部材(支点部材)64が、ドラム軸方向の内外方向に移動可能に配置されている。
【0046】
折返フィンガー60は、それぞれ側面視略L字状のロッド状をなし、基端部(支持部)60Aが、フィンガー支持部材64に支持されてビードコア支持手段30(図1参照)のドラム軸方向外側に配置されている。また、折返フィンガー60は、この基端部60Aから屈曲して略ドラム軸方向の内側方向に向かって延び、成型ドラム2の周方向に所定間隔(例えば略等間隔)で複数並設されて、全体として折返手段50を半径方向外側から覆うように略環状に配置されている。この折返フィンガー60は、上記した基端部60Aを支点(中心)に所定の縮閉位置と拡開位置との間で揺動し、成型ドラム2の軸線を含む面内(図では紙面と平行な面内)で、同期して拡開及び縮閉可能に構成されており、ビードコア支持手段30側の揺動端(先端部)に設けられた折返部材61を拡縮変位させる。
【0047】
折返部材61は、上記したタイヤ構成部材97の端部に接触してビードコア92周りに変位させて折り返す接触変位部材である。ここでは、折返部材61として、折返フィンガー60の先端に取り付けられて回転自在に支持された折返ローラ61を使用し、この成型ドラム2の周方向に複数配置された折返ローラ61を転動させて、タイヤ構成部材97の折り返しを行う。具体的には、折返ローラ61は、後述する折返フィンガー60(基端部60A)のドラム軸方向内側への移動に伴い、ビードロックセグメント31のローラ受け31B内に配置された折り返し前の待機位置(図2参照)から、成型中の生タイヤの側面等(図3参照)に沿って転動する。これにより、折返ローラ61は、タイヤ構成部材97を折り返す方向(ここでは半径方向の略外側方向)に移動して、折返フィンガー60を揺動させて拡開させつつ、タイヤ構成部材97の端部に沿って、ビードコア92側から外側(端部側)に向かって移動して、タイヤ構成部材97の端部をビードコア92周りに外側に向かって順に折り返す。
【0048】
フィンガー支持部材64は、ガイド部材58と摺動可能に係合する略環状に形成され、その外周面に装着配置されるとともに、複数の折返フィンガー60の各基端部60Aを、例えば回転軸や軸受け部材を介する等して揺動(回動)可能に支持している。また、フィンガー支持部材64は、ドラム軸方向内側面に、複数のピストンロッド63の先端が取り付けられ、上記したピストンロッド63の進退に伴いドラム軸方向の両方向に移動する。その際、フィンガー支持部材64は、ガイド部材58の外周側を摺動して移動が案内され、複数の折返フィンガー60の基端部60Aを、成型ドラム2の軸線と略同芯状に移動させてビードコア支持手段30に向かって接近及び離間させ、これに応じて折返フィンガー60を上記したように揺動させる。
【0049】
従って、この折返手段50では、シリンダ部52や摺動壁62、及びピストンロッド63等からなるピストン・シリンダ機構により、フィンガー支持部材64及び折返フィンガー60(基端部60A)を移動させるフィンガー移動手段68を構成するとともに、このフィンガー移動手段68及びフィンガー支持部材64等により、折返フィンガー60を揺動させる揺動手段69が構成されている。
【0050】
また、折返手段50は、以上の他に、複数の折返フィンガー60を囲うように、その半径方向外側に取り付けられた付勢手段(ここでは略環状のエラストマバンド65)を複数(ここでは3つ)備えている。これらエラストマバンド65は、複数の折返フィンガー60を束ねて、常に半径方向内側である縮閉方向に付勢するものであり、折返ローラ61を、折り返し中のタイヤ構成部材97に押し付けて内側部材に向かって押圧するとともに、折返フィンガー60を、縮閉時に縮閉方向に揺動させる。加えて、折返手段50は、ガイド部材58のドラム軸方向外側端部に取り付けられた、半径方向外側に向かって突出する略環状のストッパーリング59を備え、これにより、フィンガー支持部材64の移動を停止させて、ドラム軸方向外側への移動限を規定している。即ち、フィンガー支持部材64は、タイヤ構成部材97の折り返し時まで、このストッパーリング59側の移動限に位置し、折り返し時には、フィンガー移動手段68により、折返フィンガー60と共にドラム軸方向内側に向かって移動して、折返フィンガー60を揺動(拡開)させる。
【0051】
このように構成される折返手段50は、タイヤ構成部材97の端部を折り返すときには、前記揺動手段69により折返フィンガー60を揺動させて縮閉位置(図2参照)から拡開させる。この拡開(図3参照)に応じて、折返部材(折返ローラ)61を、ビードコア支持手段30(ビードロックセグメント31)間の膨出させたタイヤ構成部材97の端部に沿って、その側面側(図では、ビードコア92の外周側に癖付け部93Kを挟んで配置したビードフィラ98の側面)に押圧しながら、ビードコア92側から接触させつつ移動させる。折返手段50は、このようにタイヤ構成部材97の端部に対して折り返し動作を実行し、ビードコア支持手段30により支持されたビードコア92周りに、そのドラム軸方向外側(ここでは、折返ローラ61及び折返フィンガー60の半径方向外側)に位置するタイヤ構成部材97の端部を、ビードコア92側から幅方向の外側(側部側)に向かって順に変位及び変形させて折り返す。このように、折返フィンガー60を拡開させつつ折返ローラ61を次第に拡開させ、折返が終了した段階で、以上の拡開と逆の経路を辿りながら、折返フィンガー60等を待機位置に戻す。
【0052】
以上に加えて、このタイヤ成型装置1は、上記したビードコア92に対するカーカスプライ93の癖付け部93Kの巻き付け不良(図11参照)を防止するため、癖付け部93Kをビードコア92に確実に巻き付けるための構成(巻付手段)を備えている。これにより、ビードコア支持手段30でビードコア92を支持(図1参照)した後、タイヤ構成部材97を折返手段50で折り返す(図3参照)までの間に、癖付け部93Kをビードコア92の外周面に巻き付けるようになっている。
【0053】
本実施形態では、この巻き付けを、折返手段50及び、その上記した折り返し動作(図3参照)を、所定位置で中間停止させるための停止手段70(ここでは、ストッパーリング59に設けられている)等により行い、ビードコア92をビードコア支持手段30により支持した段階で、かつタイヤ構成部材97の膨出変形等を行う前(図1参照)に、癖付け部93Kの巻き付けを実行する。
【0054】
図4は、このカーカスプライ93の癖付け部93Kの巻き付けについて説明するための模式図であり、図1に示す成型ドラム2から折返フィンガー60の先端側付近を抜き出した部分拡大断面図である。
なお、図4Aは、図11に示す上記した癖付け部93Kと同様に、癖付け部93Kの一部(ここでは半径方向内側部分)がタイヤ構成部材97に密着し、癖付け部93Kの元の形状(ビードコア92への巻付形状)への復元が妨げられた状態を示している。また、これら各図では、シール部材36は省略している。
【0055】
このタイヤ成型装置1では、図示のように、折返手段50を作動させて、折返ローラ61を、ローラ受け31B内の待機位置(図4A参照)から、ビードロックセグメント31の側面に沿って移動(図4B参照)させ、折返フィンガー60を拡開させて前記折り返し動作と同様の動作(ここでは、折り返し動作という)を実行させる。この折り返し動作を、停止手段70(図4では図示せず)により、折返ローラ61がビードロックセグメント31と接触した状態にあり、ビードコア92に近い比較的動作初期の段階で中間停止(図4B参照)させる。
【0056】
この停止位置まで移動する折返ローラ61で、ビードコア支持手段30とビードコア92との間に挟まれたタイヤ構成部材97の端部側(ドラム軸方向外側部分)を、癖付け部93Kと共に半径方向外側に移動させ、それらのビードコア92に隣接する部分をビードコア92の外面側に向かって変位させる。これにより、癖付け部93Kの内面をビードコア92の外面に接近させ、癖付け部93Kをビードコア92に巻き付く方向(癖付け形状を復元する方向)に変位させて、その少なくとも一部をビードコア92の外面に接触させて、癖付け部93Kをビードコア92に巻き付ける。このように、このタイヤ成型装置1では、折返手段50と停止手段70等により、癖付け部93Kを巻き付け変位させる変位手段(巻付手段)を構成しており、タイヤ構成部材97の端部側を、折返手段50により、ビードコア92周りに癖付け部93Kの復元(巻き付け)に必要な量だけ変位させる。この変位で、タイヤ構成部材97の端部側を癖付け部93Kと共にビードコア92側に変位させ、この変位を停止手段70により停止させることで、上記した巻き付けを行う。
【0057】
以下、この巻き付け時の変位を停止させる停止手段70について説明するが、本実施形態のタイヤ成型装置1(図3参照)では、上記した揺動手段69による折返フィンガー60の揺動を停止させて折返手段50の折り返し動作を停止させ、折返ローラ61及び癖付け部93K等の各変位を停止させる。具体的には、停止手段70は、例えば揺動する折返フィンガー60の所定位置に半径方向外側から当接する部材や、フィンガー移動手段68により移動するフィンガー支持部材64の移動を停止させる手段等により構成される揺動停止手段であり、ここでは、フィンガー支持部材64に当接して、その移動を停止させる当接部材71、72等により構成している。即ち、この停止手段70では、フィンガー支持部材64を機械的に停止させることで、折返手段50の折り返し動作を中間停止(図4参照)させており、以下では、フィンガー支持部材64や、ストッパーリング59に設けられた停止手段70を中心に、それらを抜き出して、フィンガー支持部材64の停止動作等について説明する。
【0058】
図5、図6は、図3のX領域付近を拡大した停止手段70等を抜き出して示す模式図であり、停止手段70の概略構成を示している。また、停止手段70は、互いに長さの異なる第1及び第2の当接部材71、72を、それぞれストッパーリング59の周方向の異なる複数箇所に備えており、図5に、より長い第1の当接部材71の部分を、図6に、より短い第2の当接部材72の部分を、それぞれ示す。
【0059】
停止手段70は、図5に示すように、上記した第1の当接部材71の配置箇所のそれぞれに、ストッパーリング59のドラム軸方向外側面(図では右側面)に、ドラム軸方向外側に向かって固定された支持ブロック73等を備えている。第1の当接部材71は、略長フック状をなし、そのドラム軸方向外側の基端部に設けられた支持軸71Aが支持ブロック73に回動自在に支持され、そこからストッパーリング59の先端部を跨いで略ドラム軸方向内側(図では左側)に向かって延びるように配置されている。この第1の当接部材71は、折返フィンガー60と同様に、支持軸71Aを支点に縮閉位置(図5A参照)と拡開位置(図5B参照)との間で回動(揺動)し、そのドラム軸方向内側に位置する先端部(揺動端部)71Bが、フィンガー支持部材64に当接する当接位置と、当接しない離間位置との間で変位(移動)可能になっている。ここでは、第1の当接部材71の先端部71Bは、略半径方向内側に突出する突形状に形成され、前記当接位置(図5A参照)において、この突出部でフィンガー支持部材64と当接して、主に、そのドラム軸方向外側面(図では右側面)でフィンガー支持部材64のドラム軸方向内側の側面部に当接する。
【0060】
加えて、第1の当接部材71は、基端部の支持軸71Aよりも半径方向内側部分(図では下側部分)が、同方向に向かって突出し、かつストッパーリング59側が傾斜面をなす突部(以下、基端部突部71Cという)に形成されている。また、この基端部突部71Cには、バネやゴム等の弾性部材74(ここでは引張りバネ)の一端部と、第1の当接部材71を駆動(揺動)させる駆動手段(ここではピストン・シリンダ機構75)が、それぞれ異なる位置に取り付けられている。
【0061】
弾性部材74は、ドラム軸方向外側の他端部が、支持ブロック73に固定された支柱(支持ポスト)76に取り付けられて支持され、前記一端側に取り付けられた基端部突部71Cに対して、常に支柱76側への力を付与する。この力により、弾性部材74は、支持軸71Aを支点に、第1の当接部材71に縮閉方向(図5A参照)の力を作用させ、第1の当接部材71を同方向に付勢して縮閉させる。
【0062】
一方、ピストン・シリンダ機構75は、そのピストンロッド75Pの先端が基端部突部71Cに、シリンダ75Sのドラム軸方向外側の端部が支持ブロック73に、それぞれ回転自在に取り付け及び支持されている。このピストン・シリンダ機構75は、主に第1の当接部材71の拡開時(図5B参照)に作動して、基端部突部71Cに、上記した弾性部材74による付勢力と逆方向(ここではストッパーリング59が位置する方向)の力を作用させ、第1の当接部材71を前記付勢力に抗して、その支持軸71Aを支点に回動させて拡開させる。
【0063】
以上説明した第1の当接部材71に対し、図6に示すように、第2の当接部材72も、基端部に設けられた支持軸72Aが支持ブロック73に回動自在に支持されて、支持軸72Aを支点に、縮閉位置(図6A参照)と拡開位置(図6B参照)との間で回動(揺動)する等、ほぼ同様に構成されている。即ち、第2の当接部材72にも、上記と同様に、基端部突部72Cに、弾性部材74及びピストン・シリンダ機構75が、それぞれ取り付けられており、弾性部材74により縮閉方向(図6A参照)に付勢されるとともに、ピストン・シリンダ機構75により駆動されて拡開(図6B参照)する。
【0064】
ただし、第2の当接部材72は、第1の当接部材71と異なり、それよりも長さが短い略短フック状に形成され、ドラム軸方向外側の基端部からストッパーリング59の先端部を跨いで、略ドラム軸方向内側(図では左側)に向かって延び、先端部72Bが、ストッパーリング59のドラム軸方向内側面に近い位置に配置される。また、第2の当接部材72は、略半径方向内側に突出する先端部72Bが、フィンガー支持部材64に当接する当接位置と、当接しない離間位置との間で変位可能になっており、前記当接位置(図6A参照)において、主に、そのドラム軸方向内側面(図では左側面)でフィンガー支持部材64のドラム軸方向外側の側面部に当接する。
【0065】
図7は、これら第1及び第2の当接部材71、72の配置態様を示す模式図であり、各当接部材71、72とストッパーリング59等を抜き出してドラム軸方向外側(図5、図6の右側)から見た状態を示している。
この停止手段70では、図示のように、各当接部材71、72を、フィンガー支持部材64(図では点線で示す)の成型ドラム2の軸線に対して対称な位置に当接するように、成型ドラム2の軸線を挟んで少なくとも各一対(ここでは一対)配置している。また、ここでは、第1及び第2の当接部材71、72を、略環状のストッパーリング59の周方向に沿って交互に略等間隔(略等角度位置であり、ここでは略90°間隔)で、それぞれ2つずつ対面位置に配置している。
【0066】
停止手段70は、このように配置された当接部材71、72を、上記したフィンガー移動手段68により移動するフィンガー支持部材64の少なくとも移動方向側の一部(例えば側面部等)に当接して、その移動を停止させる停止位置と、フィンガー支持部材64の少なくとも移動方向側に当接しない非停止位置との間で移動させる。この当接位置に移動させた当接部材71、72をフィンガー支持部材64に当接させ、その移動を、ストッパーリング59側の移動初期位置(待機位置)に比較的近い所定位置で停止させ、折返フィンガー60の揺動を停止(図4B参照)させる。
【0067】
具体的には、本実施形態では、第1及び第2の当接部材71、72により、それぞれフィンガー支持部材64のドラム軸方向内側及び外側への移動を規制する。即ち、上記したように、第1の当接部材71(図5参照)は、先端部71Bが、フィンガー支持部材64の少なくともドラム軸方向内側に当接する内側当接部材であり、そのドラム軸方向内側への移動を停止させて同方向への移動を規制する。また、第2の当接部材72(図6参照)は、先端部72Bが、フィンガー支持部材64の少なくともドラム軸方向外側に当接する外側当接部材であり、そのドラム軸方向外側への移動を停止させて同方向への移動を規制する。
【0068】
従って、このタイヤ成型装置1では、停止手段70の各当接部材71、72により、フィンガー支持部材64のドラム軸方向の両方向への移動を解除可能に停止させて、折返フィンガー60の拡開及び縮閉の両変位を規制して停止可能であり、これらを組み合わせる等して、折返手段50の動作(タイヤ構成部材97の端部の折り返し動作)を停止させて、その状態を維持する。
【0069】
その際、第1の当接部材71は、フィンガー支持部材64を引っ掛けるようにしてドラム軸方向内側への移動を停止させるフックとして機能し、第2の当接部材72は、フィンガー支持部材64を押し止めてドラム軸方向外側への移動を停止させるストッパーとして機能する。また、これら第1及び第2の当接部材71、72は、そのフィンガー支持部材64との各当接位置(停止位置)の間隔が、ドラム軸方向に沿って、フィンガー支持部材64の幅(ドラム軸方向厚さ)よりも広くなっており、両当接部材71、72が共に前記当接位置(図5A、図6A参照)にあっても、フィンガー支持部材64は、ドラム軸方向の所定範囲(各当接位置間)を移動可能になっている。
【0070】
次に、このフィンガー支持部材64の停止動作を中心に、タイヤ成型装置1による生タイヤの成型手順や動作等について説明する。
なお、以下の各手順等は、例えば、各種のデータ処理や解析、演算等を行うマイクロプロセッサ(MPU)や各種プログラムを格納したROM、処理のための一時的なデータの保存等を行うRAM等の記憶手段等を備えたマイクロコンピュータや、外部機器との接続のためのインターフェース等からなる制御装置(図示せず)により制御されて、所定のプログラムや予め設定された条件等に基づいて、成型ドラム2や各駆動手段等を含むタイヤ成型装置1の各部を所定のタイミングで作動させる等、連動して作動させて実行される。その際、タイヤ成型装置1は、中心面CLを挟んで、対応する装置各部を略対称に作動させて各成型手順等を実行する。
【0071】
このタイヤ成型装置1(図1参照)で生タイヤを成型するときには、まず、上記したように、カーカスプライ93を含むタイヤ構成部材97を成型ドラム2の外面側に配置する。次に、カーカスプライ93の側端部のそれぞれに形成されたビードコア92に巻き付く向きの各癖付け部93Kを、例えばビードセッター(図10参照)により押し広げて弾性変形させる等しつつ、その内側にビードコア92を配置する。続いて、この癖付け部93Kの内側に配置されたビードコア92を、カーカスプライ93及び、その下層側のタイヤ構成部材97を挟んで半径方向内側(内周側)から、ビードコア支持手段30(ビードロックセグメント31)により固定して支持(図4A参照)した後、癖付け部93Kをビードコア92の外面に巻き付ける巻付工程を実行する。
【0072】
この巻付工程では、まず、タイヤ構成部材97の端部を変位させて折り返す折返手段50を作動させ、フィンガー支持部材64を、ストッパーリング59側の待機位置(図1参照)からビードコア支持手段30側に向かって移動させる。これにより、折返フィンガー60を縮閉位置から拡開位置に向かって揺動させつつ、折返ローラ61を、タイヤ構成部材97の端部を折り返す方向に、かつ端部に沿って移動(図4B参照)させ、タイヤ構成部材97の端部側を、前記支持されたビードコア92周りに、ビードコア92側から外側に向かって順に変位させる。この変位で、ビードコア92の半径方向内側に挟まれたタイヤ構成部材97の端部側を、癖付け部93Kと共にビードコア92側に変位させ、癖付け部93Kをビードコア92に巻き付く方向に変位させてビードコア92に巻き付ける。
【0073】
続いて、移動するフィンガー支持部材64を、停止手段70により移動途中の所定位置で停止させて、折返手段50の前記折り返し動作を中間停止させ、折返ローラ61をビードロックセグメント31近傍の所定の巻付位置で停止させて折返手段50をその状態に維持する。
【0074】
図8は、この停止手段70による停止動作を示す模式図であり、図5、図6から、当接部材71、72、フィンガー支持部材64、及びストッパーリング59を抜き出して停止手順を順に示している。
本実施形態の停止手段70は、図示のように、予め定められた所定の手順に基づいて、複数の各当接部材71、72(図7参照)を、それぞれ連動して作動させて中間停止動作を実行する。
【0075】
その際、まず、ビードコア92をビードコア支持手段30により支持した直後であり、フィンガー支持部材64がドラム軸方向外側の移動限(ストッパーリング59側の待機位置又は非動作位置)に位置する段階(図1参照)では、全てのピストン・シリンダ機構75(図5、図6参照)を作動させずに、各当接部材71、72に対して、それぞれ弾性部材74により縮閉方向の力を作用させる。これにより、第1の当接部材71(図8A1参照)を縮閉位置に配置し、フィンガー支持部材64を跨いで、その先端部71Bを、フィンガー支持部材64のドラム軸方向内側(図では左側)に位置させる。一方、第2の当接部材72(図8A2参照)は、その先端部72Bが、フィンガー支持部材64のドラム軸方向外側面(図では右側面)と外周面(図では上面)との間に形成された傾斜面64Aに当接し、拡開位置近傍に配置される。
【0076】
この状態で、フィンガー支持部材64をドラム軸方向内側に移動(図8Aの矢印)させると、フィンガー支持部材64が、第1の当接部材71の先端部71Bに当接(図8B1参照)してその移動が停止する。即ち、第1の当接部材71は、フィンガー支持部材64の移動ストロークを制御して、その中間停止位置からドラム軸方向内側への移動を規制するためのものであり、タイヤ成型装置1は、この第1の当接部材71により、折返フィンガー60の揺動や折返ローラ61の移動等を停止させて、折返手段50の動作を中間停止させる。その際、第2の当接部材72(図8B2参照)は、先端部72Bがフィンガー支持部材64の傾斜面64Aから離れて、縮閉位置まで揺動して移動(変位)する。
【0077】
次に、タイヤ成型装置1は、例えばタイマーによりカウントして予め定められた所定時間が経過した後等、所定のタイミングでフィンガー支持部材64をドラム軸方向外側に移動(図8Bの矢印)させ、フィンガー支持部材64を第2の当接部材72の先端部72Bに当接(図8C2参照)させる。このようにフィンガー支持部材64を第2の当接部材72に押し付けて移動を停止させ、その中間停止位置からドラム軸方向外側への移動を規制して、折返ローラ61の位置を上記した巻付位置に維持する等、前記折り返し動作の中間停止動作を安定させて折返手段50を停止状態に維持する。
【0078】
このとき、第2の当接部材72には、フィンガー支持部材64の側面で押圧されてドラム軸方向外側の力が加わるため、拡開する方向の力が作用しても、第2の当接部材72の拡開は防止される。また、第1の当接部材71(図8C1参照)は、その先端部71Bがフィンガー支持部材64から離れて拡開可能となるが、これを縮閉位置に維持することで、例えば折返手段50に供給される加圧気体の圧力が変動する等して、フィンガー支持部材64がドラム軸方向内側に移動した場合であっても、これと当接してドラム軸方向内側への移動を規制し、それ以上の移動を止めることができる。その結果、フィンガー支持部材64のドラム軸方向の移動を各当接部材71、72の当接位置間に留めて、そのドラム軸方向位置を、所定の中間停止範囲内に規制することができ、上記した中間停止動作を安定して維持することができる。
【0079】
タイヤ成型装置1は、このように折返ローラ61を巻付位置(中間停止位置)(図4B参照)まで移動させて、癖付け部93Kをビードコア92に巻き付けた後、停止手段70により、折返ローラ61の移動及び、それ以上のタイヤ構成部材97の変位を停止させる。また、タイヤ成型装置1は、停止手段70により、折返ローラ61の位置等を維持した状態で、以後の従来と同様の生タイヤの成型工程を行う。
【0080】
具体的には、まず、タイヤ構成部材97及びカーカスプライ93等をトロイダル状に膨出変形(シェーピング)(図2参照)させたり、或いは、ビードコア92の外周側に癖付け部93Kを挟んでビードフィラ98(図3参照)を配置する等、タイヤ構成部材97の端部を折り返すまでの工程を行う。次に(又は、それまでに)、停止手段70のピストン・シリンダ機構75により、第1の当接部材71を揺動させて拡開位置(図5B参照)に移動させ、フィンガー支持部材64をドラム軸方向内側に向かって移動(図3参照)させて、タイヤ構成部材97をビードコア92周りに折り返す。その後、成型ドラム2上で、又は、他のドラムに載せ換える等して、この成型途中の生タイヤの外側にベルトやトレッド部材等を配置し、他のタイヤ構成部材を組み合わせる等して所定形状の生タイヤを成型し、加硫成型して製品タイヤを製造する。
【0081】
なお、第2の当接部材72は、フィンガー支持部材64のドラム軸方向内側への移動により、その側面による押圧が解除されて拡開可能となる。タイヤ成型装置1は、タイヤ構成部材97の端部の折り返し後に、フィンガー支持部材64が上記したストッパーリング59側の待機位置に復帰するまでに、その移動を妨げないよう、第2の当接部材72を揺動させて拡開位置(図6B参照)に配置する。一方、第1の当接部材71は、先端部71Bのドラム軸方向内側縁部に形成した略半径方向内側向きの傾斜面71D(図8参照)が移動するフィンガー支持部材64に摺接し、その移動に伴い拡開方向の力を受けて揺動するため、フィンガー支持部材64の移動を妨げることなく、その待機位置への復帰により上記した縮閉位置に配置(図8A参照)される。
【0082】
以上説明したように、本実施形態では、カーカスプライ93の癖付け部93Kを、その内側のタイヤ構成部材97の端部側と共にビードコア92側に変位させるため、癖付け部93Kをビードコア92に巻き付く方向に変位させて、ビードコア92に確実に巻き付けることができる。これに伴い、上記したようにタイヤ構成部材97と癖付け部93Kの一部との間に密着(図11参照)が生じた場合であっても、癖付け部93Kを元の癖付け形状まで強制的に復元させて、ビードコア92に巻き付けることができる。その結果、従来は、カーカスプライ93の癖付け部93Kを、その復元力のみでビードコア92に均一かつ安定して巻き付けるのは困難であったが、この問題を解消して、癖付け部93Kの巻き付けを均一かつ安定して行うことができる。同時に、癖付け部93Kのビードコア92に対する巻き付け精度も効果的に高めることができ、巻き付け不良の発生を抑制して、製品タイヤのビード部を中心にタイヤの品質を向上させることもできる。
【0083】
従って、本実施形態によれば、生タイヤの成型時に、カーカスプライ93の側端部に形成した癖付け部93Kを、ビードコア92に均一かつ確実に安定して巻き付けることができ、癖付け部93Kの巻き付け不良の発生を抑制して、タイヤの品質を向上させることができる。
【0084】
また、このタイヤ成型装置1では、癖付け部93Kをビードコア92側に変位させる変位手段を、タイヤ構成部材97の折返手段50と、その折り返し動作を中間停止させる停止手段70により構成したため、従来の成型ドラムの構成を大きく変更することなく発明を実施することができる。更に、癖付け部93Kのビードコア92への巻き付けを、一連の折り返し動作を中間停止させることで行えるため、複雑な装置や構成を必要とせず、成型ドラム2の構造が複雑になり、或いは装置の製作コストが上昇するのを抑制することもできる。これと同時に、生タイヤの成型工程の複雑化や、成型に要する時間が長くなるのを抑制できるため、生タイヤの生産性の低下を抑制することもできる。加えて、この停止手段70では、移動(揺動)可能な当接部材71、72を、移動するフィンガー支持部材64に当接させて、その移動及び折返フィンガー60の揺動等を機械的に停止させるため、前記折り返し動作の中間停止を確実に行うことができる。
【0085】
ここで、本実施形態のフィンガー支持部材64は、略環状に形成されており、例えば各当接部材71、72を、それぞれフィンガー支持部材64の1箇所に当接させる等、周方向の偏った位置に当接させた場合には、フィンガー支持部材64が、それを移動させる力で傾いて傾斜や偏芯等が生じることがある。その結果、複数の折返フィンガー60の均等な拡開が妨げられて、タイヤ構成部材97の折り返しが周方向で不均一になる等し、タイヤに不良が発生する恐れがある。従って、当接部材71、72は、本実施形態のように、フィンガー支持部材64の対称な位置(図7参照)に当接するように、成型ドラム2の軸線を挟んで少なくとも一対配置するのが望ましく、このようにすることで、フィンガー支持部材64の上記した傾斜や偏芯等を効果的に防止することができる。
【0086】
また、このタイヤ成型装置1では、当接部材71、72を当接させてフィンガー支持部材64を停止させたが、例えば折返手段50(図3参照)が備えるシリンダ部52内の両圧力室57A、57Bに供給する加圧気体を停止して、それらの内側を略同一圧力に維持し、折返ローラ61の移動を停止させる等、当接部材71、72以外の手段によりフィンガー支持部材64の移動等を停止させてもよい。しかしながら、この停止手段70のように、当接部材71、72を当接させてフィンガー支持部材64を停止等させる場合には、その中間停止動作を安定して確実に行うことができるため、より望ましい。
【0087】
ただし、本実施形態と異なり、第1及び第2の当接部材71、72の両方を、フィンガー支持部材64に当接させずに、それらのいずれかを当接させてフィンガー支持部材64の移動を停止させるようにしてもよい。この場合には、例えば、第1の当接部材71を当接させてフィンガー支持部材64を停止(図8B1参照)させ、タイヤ構成部材97の折り返し時には、フィンガー支持部材64を第1の当接部材71から一旦離間させて、第1の当接部材71を拡開(図5B参照)させ、フィンガー支持部材64をドラム軸方向内側に移動させる。又は、フィンガー支持部材64をドラム軸方向内側に移動させてから所定のタイミングで逆方向に移動させ、第2の当接部材72に当接させて、その移動を停止させ、タイヤ構成部材97の折り返し時には、その位置から、フィンガー支持部材64を再びドラム軸方向内側に移動させる。
【0088】
なお、本実施形態では、癖付け部93Kをビードコア92に巻き付けてからタイヤ構成部材97やカーカスプライ93の膨出等を行ったが、これらを膨出変形させた後、ビードフィラ98等の他の部材を配置してタイヤ構成部材97の端部を折り返す前に、上記と同様にして、癖付け部93Kの巻付工程を行うようにしてもよい。
【0089】
また、停止手段70(図5、図6参照)の弾性部材74とピストン・シリンダ機構75の機能を逆にして、当接部材71、72を、弾性部材74により拡開方向に付勢し、かつピストン・シリンダ機構75により縮閉方向の力を作用させて、当接部材71、72を、上記と同様に拡縮方向に揺動させてもよい。更に、停止手段70は、当接部材を半径方向に移動させて、フィンガー支持部材64の移動方向側に当接させる等、揺動する当接部材71、72以外のものにより、中間停止動作を行うようにしてもよい。
【0090】
加えて、本実施形態では、シール部材36を備えた成型ドラム2(図1参照)を例に採り説明したが、本発明は、一対のビードコア支持手段30間に膨張可能なブラダや、同位置に剛性のコア体等を備えたもの等、癖付け部93Kを有するカーカスプライ93を使用して生タイヤを成型する他の構造の成型ドラムを備えたタイヤ成型装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本実施形態のタイヤ成型装置の要部を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す成型ドラムの軸方向の中心面を挟んだ一方側を拡大して示す部分断面図である。
【図3】図2に示す一方の折返手段付近を拡大して示す部分断面図である。
【図4】カーカスプライの癖付け部のビードコアへの巻き付けについて説明するための模式図である。
【図5】図3のX領域付近を拡大した停止手段等を抜き出して示す模式図である。
【図6】図3のX領域付近を拡大した停止手段等を抜き出して示す模式図である。
【図7】本実施形態の停止手段における第1及び第2の当接部材の配置態様を示す模式図である。
【図8】本実施形態の停止手段の停止動作を示す模式図である。
【図9】従来の空気入りタイヤの構造を模式的に示すタイヤ幅方向の半断面図である。
【図10】従来のカーカスプライの癖付け部をビードコアに巻き付ける工程を説明するためのタイヤ成型装置の要部模式図である。
【図11】密着が生じたカーカスプライの癖付け部の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0092】
1・・・タイヤ成型装置、2・・・成型ドラム、10・・・中心軸、10A・・・スリット、11・・・ネジ軸、11A・・・雄ネジ部、12・・・軸受け部材、13・・・雌ネジ部材、14・・・連結部材、20・・・スライダ、30・・・ビードコア支持手段、31・・・ビードロックセグメント、31A・・・ビード支持部、31B・・・ローラ受け、32・・・収容支持体、32A・・・内側壁、32B・・・外側壁、32C・・・収容部、33・・・変位部材、34・・・摺動体、35・・・リンク、36・・・シール部材、40・・・シリンダ室、40A・・・第1圧力室、40B・・・第2圧力室、41・・・固定壁、42・・・摺動壁、50・・・折返手段、51・・・ベース部材、52・・・シリンダ部、52A・・・給排気孔、52B・・・給排気孔、53・・・内筒壁、54・・・外筒壁、55・・・端壁、56・・・端壁、57・・・シリンダ室、57A・・・第1圧力室、57B・・・第2圧力室、58・・・ガイド部材、59・・・ストッパーリング、60・・・折返フィンガー、60A・・・基端部、61・・・折返部材(折返ローラ)、62・・・摺動壁、63・・・ピストンロッド、64・・・フィンガー支持部材、64A・・・傾斜面、65・・・エラストマバンド、68・・・フィンガー移動手段、69・・・揺動手段、70・・・停止手段、71・・・第1の当接部材、71A・・・支持軸、71B・・・先端部、71C・・・基端部突部、71D・・・傾斜面、72・・・第2の当接部材、72A・・・支持軸、72B・・・先端部、72C・・・基端部突部、73・・・支持ブロック、74・・・弾性部材、75・・・ピストン・シリンダ機構、75P・・・ピストンロッド、75S・・・シリンダ、76・・・支柱、92・・・ビードコア、93・・・カーカスプライ、93K・・・癖付け部、K1、K2、K3・・・折曲部、97・・・タイヤ構成部材、98・・・ビードフィラ、CL・・・中心面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカスプライを含むタイヤ構成部材が外面側に配置される成型ドラムを備え、前記カーカスプライは側端部にビードコアに巻き付く向きの癖付け部を有し、前記成型ドラムに配置した前記カーカスプライの癖付け部の内側に前記ビードコアを配置して生タイヤを成型するタイヤ成型装置であって、
前記癖付け部の内側に配置されたビードコアを、前記タイヤ構成部材を挟んで半径方向内側から支持するビードコア支持手段と、
該ビードコア支持手段と前記ビードコアとの間に挟まれた前記タイヤ構成部材の端部側を前記癖付け部と共に前記ビードコア側に変位させ、前記癖付け部を前記ビードコアに巻き付く方向に変位させて該ビードコアに巻き付ける変位手段と、
を備えたことを特徴とするタイヤ成型装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたタイヤ成型装置において、
前記タイヤ構成部材の端部を前記ビードコア支持手段により支持されたビードコア周りに該ビードコア側から変位させて折り返す折返手段を備え、
前記変位手段が、前記折返手段、及び該折返手段の前記折り返し動作を中間停止させる停止手段により構成され、前記タイヤ構成部材の端部側を、前記折返手段により前記ビードコア周りに変位させて前記癖付け部と共に前記ビードコア側に変位させ、該変位を前記停止手段により停止させることを特徴とするタイヤ成型装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたタイヤ成型装置において、
前記折返手段は、前記成型ドラムの周方向に複数配置され、前記タイヤ構成部材の端部に接触して折り返す折返部材と、該折返部材が先端部に設けられ、前記ビードコア支持手段のドラム軸方向外側の基端部を支点に揺動して拡開及び縮閉可能な複数の折返フィンガーと、該折返フィンガーを揺動させる揺動手段とを有し、前記折返フィンガーを拡開させつつ前記折返部材を前記タイヤ構成部材の端部に沿って前記ビードコア側から接触移動させて該タイヤ構成部材の端部を前記ビードコア周りに折り返し、
前記停止手段が、前記折返フィンガーの揺動を停止させて前記折返手段の折り返し動作を停止させる揺動停止手段であることを特徴とするタイヤ成型装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたタイヤ成型装置において、
前記揺動手段は、前記複数の折返フィンガーの前記基端部を揺動可能に支持するフィンガー支持部材と、該フィンガー支持部材をドラム軸方向に移動させて前記折返フィンガーの基端部を移動させるフィンガー移動手段とを有し、前記折返フィンガーの基端部を前記ビードコア支持手段に接近及び離間させて前記折返フィンガーを揺動させ、
前記停止手段は、前記フィンガー移動手段により移動する前記フィンガー支持部材に当接して該フィンガー支持部材の移動を停止させる停止位置と非停止位置との間で移動可能な当接部材を有し、該当接部材を当接させて前記フィンガー支持部材の移動及び前記折返フィンガーの揺動を停止させることを特徴とするタイヤ成型装置。
【請求項5】
請求項4に記載されたタイヤ成型装置において、
前記当接部材が、前記フィンガー支持部材の前記成型ドラムの軸線に対して対称な位置に当接するように、前記成型ドラムの軸線を挟んで少なくとも一対配置されていることを特徴とするタイヤ成型装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載されたタイヤ成型装置において、
前記当接部材が、前記フィンガー支持部材のドラム軸方向内側への移動を規制する第1の当接部材、及び/又は、前記フィンガー支持部材のドラム軸方向外側への移動を規制する第2の当接部材からなることを特徴とするタイヤ成型装置。
【請求項7】
カーカスプライを含むタイヤ構成部材を成型ドラムの外面側に配置し、前記カーカスプライの側端部に形成されたビードコアに巻き付く向きの癖付け部の内側に前記ビードコアを配置して生タイヤを成型するタイヤ成型方法であって、
前記癖付け部の内側に配置されたビードコアを、前記タイヤ構成部材を挟んで半径方向内側から支持する工程と、
該支持されたビードコアの半径方向内側に挟まれた前記タイヤ構成部材の端部側を前記癖付け部と共に前記ビードコア側に変位させ、前記癖付け部を前記ビードコアに巻き付く方向に変位させて該ビードコアに巻き付ける工程と、
を有することを特徴とするタイヤ成型方法。
【請求項8】
請求項7に記載されたタイヤ成型方法において、
前記巻き付ける工程は、前記タイヤ構成部材の端部を前記支持されたビードコア周りに該ビードコア側から変位させて折り返す折り返し動作を中間停止させる工程を有し、前記タイヤ構成部材の端部側を前記ビードコア周りに変位させて前記癖付け部と共に前記ビードコア側に変位させることを特徴とするタイヤ成型方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−307865(P2008−307865A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160635(P2007−160635)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】