説明

タイヤ用水系白色離型剤

【課題】 タイヤ製造時に周囲を黒く汚染せず、良好な平滑性および離型性を有し、加硫成型後に透明となり適度な光沢を付与するタイヤ用水系白色離型剤を提供することである。
【解決手段】 タイヤ用水系白色離型剤は、二酸化ケイ素を構成成分に含む無機成分と、ゴムと、ワックスと、水とを含有する。そして、無機成分、ゴムおよびワックスの合計量に対して、無機成分の重量割合が5〜45重量%、ゴムの重量割合が10〜85重量%、ワックスの重量割合が10〜85重量%であるとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用水系白色離型剤に関する。より詳しくは、タイヤ加硫成型時にタイヤと金型との間に塗布されるタイヤ外面に用いられる水系白色離型剤に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造工程において、未加硫生タイヤの加硫成型は、通常、ブラダーと呼ばれるゴム製袋を生タイヤ内側で熱水または蒸気を用いて膨張させ、金型へ未加硫生タイヤを圧入成型することによって行われる。ブラダー膨張時には、生タイヤが金型に接触していく際の金型生タイヤ外面間の平滑性や、金型と生タイヤ外面のサイドウォール(側面)・トレッド(踏面)との間に残されている空気の導出が必要とされる(空気透過性)。さらに加硫成型後には、金型からのタイヤの離型性が必要とされる。
通常、この工程を円滑に行うために生タイヤの側面にあらかじめ離型剤(タイヤ外面用離型剤)が塗布され、この離型剤には前述の平滑性、空気透過性、離型性が要求される。その離型剤としては、従来から有機溶剤にカーボンブラック粉末を分散させたものが用いられている。
【0003】
上記で、有機溶剤は作業者の健康を害するだけでなく、環境汚染、防災上の観点からも使用を避けるのが好ましい。そのため、以前からタイヤ外面用離型剤の水系化が望まれているが、実用化されているものは少ない。また、カーボンブラック粉末は、平滑性、空気透過性、離型性に優れる。しかしながら、カーボンブラック粉末を用いた場合には、加硫成型後のタイヤ表面に光沢を付与せず艶消し状となりタイヤ製品の美観を損ねたり、タイヤ周辺を黒色で汚染しタイヤに付着した商品管理上必要な識別用バーコードの読み取りを妨げるという問題がある。
特許文献1では、水に珪藻土を含む無機粉体、カーボンブラック等の黒色染料を分散させた組成物を離型剤として使用することが示されている。この例では有機溶剤の悪影響を除去することはできるが、カーボンブラック粉末による艶消しおよび汚染の問題を解決できない。また、珪藻土が生タイヤのゴム張り合わせ部分に入り込み、その結果、加硫成型後にタイヤ製品表面に亀裂(自己接着疎外)を生じ、これがタイヤの安全性を損なうおそれがあるという、新たな問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−177639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような従来の問題点に鑑み、タイヤ製造時に周囲を黒く汚染せず、良好な平滑性および離型性を有し、加硫成型後に透明となり適度な光沢を付与するタイヤ用水系白色離型剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、シリカ、ゴムおよびワックスを配合した水系分散体をタイヤの離型剤として用いると、上記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明のタイヤ用水系白色離型剤は、二酸化ケイ素を構成成分に含む無機成分と、ゴムと、ワックスと、水とを含有する組成物である。
【0007】
ここで、以下に示す(1)〜(4)の少なくとも1つを満足すると好ましい。
(1)前記無機成分、ゴムおよびワックスの合計量に対して、前記無機成分の重量割合が5〜45重量%、前記ゴムの重量割合が10〜85重量%、前記ワックスの重量割合が10〜85重量%である。
(2)前記無機成分が、平均粒子径(二次粒子径)5〜30μmの合成非晶質シリカである。
(3)前記ゴムが天然ゴムである。
(4)前記ワックスがマイクロクリスタリンワックスである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタイヤ用水系白色離型剤を用いた場合、タイヤ製造時に周囲を黒く汚染しないし、良好な平滑性および離型性や、加硫成型後に透明となり適度な光沢等を付与することができる。具体的には、たとえば、タイヤ用水系白色離型剤が加硫成型後に透明になることによって、タイヤに付着した商品管理上必要な識別用バーコードが容易に読み取れるようになる。また、適度な光沢は、タイヤの美観を高める。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のタイヤ用水系白色離型剤は、タイヤの外面に適用できる水系白色離型剤である。
まず、本発明のタイヤ用水系白色離型剤に配合される各成分について説明し、タイヤ用水系白色離型剤について詳述する。
【0010】
〔無機成分〕
無機成分は、二酸化ケイ素を構成成分に含み、主に、タイヤの製造時に周囲を黒く汚染することなく、平滑性および空気透過性を付与するために用いられる成分である。
無機成分としては、たとえば、合成非晶質シリカ、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム等の合成無機成分;カオリン、マイカ(マスコバイト、セリサイト)、タルク、クレー、クロライト、ベントナイト、珪藻土等の天然無機成分等を挙げることができる。これらの無機成分は、1種または2種以上を併用してもよい。無機成分のうちでも、合成無機成分は人体に対する有害性が低いと考えられるため好ましく、製造コストを低減したい場合に、天然無機成分(たとえば、マイカやタルク等)を併用するとよい。
【0011】
合成無機成分としては、合成非晶質シリカが好ましい。合成非晶質シリカは、空気透過性に優れており、生タイヤが金型に正常に接触できなかったことによる不良品を削減することができる。また、タイヤゴムと十分混和性であり加硫の間にタイヤに浸透する。
合成非晶質シリカとしては、たとえば、ケイ酸ナトリウムと硫酸とを反応させ、濾過・水洗・乾燥工程を経る湿式法という化学的な製造方法で得られる非晶質性のシリカ等が挙げられる。合成非晶質シリカの市販品としては、たとえば、CARPLEX #67、CARPLEX #80(EVONIK INDUSTRIES社製)、Nipsil VN3(東ソーシリカ社製)等を挙げることができる。
【0012】
合成非晶質シリカは、通常、平均粒子径が数nm〜数十nmの一次粒子群が互いに部分的に化学結合し、数μm〜数十μmの二次粒子を形成している。合成非晶質シリカの二次粒子の平均粒子径(平均二次粒子径)については、特に限定はないが、レーザー回折による測定結果において、5〜30μmが好ましく、10〜20μmがさらに好ましい。二次粒子径が小さすぎる場合は平滑性が得られない場合が多い。一方、二次粒子径が大きすぎる場合は、スプレー塗布時にスプレーガンの詰まりや、均一な離型剤膜が得られず充分な離型性が得られないことがある。
合成非晶質シリカ以外の無機成分の平均二次粒子径については、特に限定はないが、1〜30μmが好ましく、15〜25μmがさらに好ましい。
【0013】
〔ゴム〕
ゴムはタイヤの自己接着阻害を防止し、また、加硫成型後タイヤ表面に被膜を形成して光沢度を向上させる主要な成分である。タイヤの自己接着とは、タイヤ製造時の加硫工程において、重ね合わせた複数の未加硫ゴムシートを自己の粘着性によってのみ接着している状態から、それらが加熱加圧されることにより、一体と認められるほど強力に接着している状態に変化することである。自己接着が不十分であるとタイヤの強度が悪化し安全性を脅かすおそれがある。
ゴムとして、たとえば、天然ゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム等を挙げることができる。これらのゴムは、1種または2種以上を併用してもよい。ゴムとしては、加硫後のゴムシート間の接着性が良いという理由から、天然ゴムが好ましい。
本発明では、ゴムとして、ゴムの微粒子を水中に分散させたゴムラテックスを用いるのが好ましい。
【0014】
〔ワックス〕
ワックスは、ブラダーが拡張工程時には、固体粒子として金型および生タイヤの間に存在し、残された空気を逃がす働きをする成分である。また、ワックスは、加硫成型前には、固体粒子として平滑性を高め、加硫成型時には一旦溶融した後、固化して透明被膜を形成することによってタイヤ表面に適度な光沢を与える成分でもある。
ワックスは、常温で固体または半固体の有機物であり、本発明では、たとえば、50℃から160℃付近の温度範囲で溶融し、融点より10℃高い温度での溶融粘度が10Pa・s以下であり、溶融時においても化学的に安定なものの総称を意味する。
【0015】
本発明で用いるワックスは、生タイヤと金型間に滑りを与えることが求められるため、比較的高温においても溶融しないことが望まれる。
ワックスの融点については、特に限定はないが、70〜130℃が好ましく、80〜120℃がさらに好ましい。ワックスの融点が70℃よりも低いと、金型に接触した瞬間に溶けてしまい、平滑性が低下することがある。一方、ワックスの融点が130℃よりも高いと、固体のままタイヤ表面に残り美観を損なうことがある。
【0016】
ワックスは、天然ワックス、合成ワックス、配合ワックス等の種類に大別される。
天然ワックスとしては、たとえば、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ろう等の植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトラタム等の石油ワックス等が挙げられる。
【0017】
合成ワックスとしては、たとえば、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素;モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等の変性ワックス;硬化ひまし油、硬化ひまし油誘導体等の水素化ワックス;ラウリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の酸アミド;ステアリン酸メチル、ステアリン酸ステアリル等のエステル類;ビスヘプタデシルケトン等のケトン類等が挙げられる。
本発明では、様々なワックスを選択することができるが、石油ワックスが好ましく、特にマイクロクリスタリンワックスが好ましい。
【0018】
〔タイヤ用水系白色離型剤〕
タイヤ用水系白色離型剤は、上記で説明した無機成分、ゴムおよびワックスとともに、水を含有する組成物である。
タイヤ用水系白色離型剤に含まれるこれらの成分の配合割合については、特に限定はない。
【0019】
無機成分の重量割合は、無機成分、ゴムおよびワックスの合計量に対して、好ましくは5〜45重量%、さらに好ましくは15〜35重量%である。無機成分が5重量%よりも少ない場合は、平滑性が悪化することがある。一方、無機成分が45重量%よりも多い場合は、光沢度を低下させ、成型したタイヤ表面の美観を損なうことがある。
ゴムの重量割合は、無機成分、ゴムおよびワックスの合計量に対して、好ましくは10〜85重量%、さらに好ましくは30〜50重量%である。ゴムが10重量%よりも少ない場合は、接着阻害によるタイヤ表面における亀裂の発生や光沢の低下を生じることがある。一方、ゴムが85重量%よりも多い場合は、加硫成型後の金型からの離型性が悪化することがある。
【0020】
ワックスの重量割合は、無機成分、ゴムおよびワックスの合計量に対して、好ましくは10〜85重量%、さらに好ましくは20〜40重量%である。ワックスが10重量%よりも少ない場合は、平滑性および光沢度の低下が生じることがある。一方、ワックスが85重量%よりも多い場合は、空気透過性が低下することがある。
水の重量割合について、特に限定はないが、タイヤ用水系白色離型剤全体に対して、好ましくは80〜95重量%、さらに好ましくは87.5〜92.5重量%である。
【0021】
本発明のタイヤ用水系白色離型剤は、上記で説明した成分以外に必要に応じて、界面活性剤、水溶性高分子、消泡剤、防腐剤等の添加剤を含有していても良い。
界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、1種または2種以上を含んでいてもよい。
【0022】
非イオン界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレン硬化ひまし油;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグリセリンエーテル;ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル;アルキルポリグルコシド;ショ糖脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンアルキルアミン;オキシエチレンーオキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
陰イオン界面活性剤としては、たとえば、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、オレイン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩;ステアロイルメチルタウリンNa、ラウロイルメチルタウリンNa、ミリストイルメチルタウリンNa、パルミトイルメチルタウリンNa等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウムモノナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N−アシルグルタミン酸塩等が挙げられる。
【0023】
陽イオン界面活性剤としては、たとえば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジアルキルジメチルアンモニウム塩;トリアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩が挙げられる。
両性界面活性剤としては、たとえば、2−ウンデシル−N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N−ラウリルグリシン、N−ラウリルβ−アラニン、N−ステアリルβ−アラニン等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0024】
水溶性高分子としては、たとえばグルコマンナン、ガラクトマンナン等のマンナン類;アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸類;タラカントガム、アラビアガム、グアーガム等の天然ガム類;、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロースエーテル;ゼラチン、カゼイン、コラーゲン等の蛋白類;ポリエチレングリコール;ポリエチレンオキシド;ポリプロピレンオキシド;水溶性ウレタン樹脂;水溶性メラミン樹脂;水溶性エポキシ樹脂;水溶性ブタジエン樹脂;水溶性フェノール樹脂;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリアクリルアミド;ポリアクリル酸等が挙げられる。
消泡剤としては、たとえば、ポリメチルシロキサン、ポリエーテル変性シリコー等のシリコーン系消泡剤;ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油等の油脂系消泡剤;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、コハク酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコールジ−t−アミルフェノキシエタノール、3−ヘプタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール系消泡剤;ジ−t−アミルフェノキシエタノール3−ヘプチルセロソルブノニルセロソルブ3−ヘプチルカルビトール等のエーテル系消泡剤;トリブチルオスフェート、トリス(ブトキシエチル)フオスフェート等のリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミン等のアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミン等のアミド系消泡剤;ラウリル硫酸エステルナトリウム等の硫酸エステル系消泡剤;鉱物油等が挙げられる。
【0025】
防腐剤としては、たとえば、チアゾール、2−メルカプトチアゾール等のチアゾール類;メチレンビスチオシアネート、アンモニウムチオシアネート等のチオシアネート類;o−ベンゾイックスルフィミド、フェニルマーキュリック−o−ベンゾイックスルフィミド等のスルフィミド類;メチルジメチルチオカルバメート、エチルジエチルジチオカルバメート等のアルキルジアルキルチオカルバメート類;テトラメチルチラウムスルフィド、テトラエチルチラウムスルフィド等のチラウムスルフィド類;テトラメチルチラウムジスルフィド、テトラエチルチラウムジスルフィド等のチラウムジスルフィド類;フェリックジエチルジチオカルバメート、リードジメチルジチオカルバメート等のジチオカルバメート類;o−トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルフォンアニリド等のスルファミド類;1−アミノナフチル−4−スルホン酸、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸等のアミノスルホン酸類;ペンタクロロフェノール、o−フェニルフェノール等のフェノール類およびこれらのアルカリ金属塩類;テトラクロロ−p−ベンゾキノン、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン等の塩化キノン類;ジニトロカプリルフェニルクロトネート、ジニトロ−o−クレゾール等のニトロ基含有化合物類;1,3,5−トリヒドロキシエチルヘキサハイドロ−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリエチルヘキサハイドロ−1,3,5−トリアジン等のトリアジン類;フェニルマーキュリックフタレート、o−ヒドロキシフェニルマーキュリッククロライド等の有機水銀化合物;p−アミノアゾベンゼン、ジフェニルアミン等のアミン類;シンナムアニリド等のアミド類;1,3−ジヨード−2−プロパノール等のヨウ素含有化合物等が挙げられる。
本発明のタイヤ用水系白色離型剤の製造方法については、無機成分、ゴム、ワックスおよび水を混合する工程を含むものであれば、混合順序や使用する混合設備等について特に限定はない。タイヤ用水系白色離型剤は、たとえば、高速せん断撹拌機に無機成分、ワックスおよび水を混合分散し、その後にゴムをゴムラテックスとして添加混合して製造することができる。
【0026】
このようにして得られたタイヤ用水系白色離型剤は、タイヤの外面に使用すると好ましい。
タイヤ用水系白色離型剤を外面離型剤として使用する場合は、たとえば、エアガン、エアレスガン等のスプレー装置や刷け等を用いて、主に未加硫のゴムで構成された生タイヤの外面に対して、特にタイヤの製品名を示すロゴ等が多く含まれるサイドウォールに該当する外面部分に対して、タイヤ用水系白色離型剤を塗布して使用される。この場合の乾燥後重量は、たとえば、1〜20g/m程度に調整される。
【実施例】
【0027】
以下に、本発明を実施例および比較例を示して具体的に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例および比較例における各物性の評価は、以下のようにして行った。
【0028】
〔平滑性の評価〕
平滑性の評価は、離型剤をタイヤの外面に使用した場合を想定した評価である。
離型剤を未加硫ゴムシート(4cm×7cm×0.2cm)に、乾燥後重量が10g/mとなるように塗布する。次いで、その未加硫ゴムシートに金属片を重ね合わせ、垂直荷重200gをかけて水平に引っ張り(引張速度:100mm/min)、その際の引っ張り荷重(N)を測定する。評価の基準は次の通りである。
◎:引張り荷重が5N未満
○:引張り荷重が5N以上10N未満
△:引張り荷重が10N以上
【0029】
〔光沢度の評価〕
上記平滑性の評価と同様にして、離型剤が塗布された未加硫ゴムシートを準備し、その未加硫ゴムシートに同じ大きさのアルミ板を重ね合わせ、卓上型テストプレス機にセットする。温度180℃および圧力30kg/cmで20分間加圧し、加硫する。加硫済みのゴムシートを引き剥がし、光沢度計を用いて光沢度を測定する。評価の基準は次の通りである。
◎:光沢度が30以上
○:光沢度が20以上30未満
△:光沢度が10以上20未満
×:光沢度が10未満
【0030】
〔離型性の評価〕
上記平滑性の評価と同様にして、離型剤が塗布された未加硫ゴムシートを準備し、その未加硫ゴムシートに同じ大きさのアルミ板を重ね合わせ、卓上型テストプレス機にセットし、温度180℃および圧力30kg/cmで20分間加圧し加硫する。加硫後、引っ付いたゴムシートおよびアルミ板を水平に保持し、そこからゴムシートを90℃方向に100mm/分の速度で引っ張って引き剥がし、その際の剥離荷重を測定する。評価の基準は次の通りである。
◎:剥離荷重が1N未満
○:剥離荷重が1N以上5N未満
△:剥離荷重が5N以上10N未満
×:剥離荷重が10N以上または剥離不可
【0031】
〔黒色汚染の評価〕
上記光沢度の評価と同様の方法で加硫したゴムシートを準備した。次いで、1Nの荷重で押し付けながらガーゼ(5cm平方)でゴムシートを水平に10回擦る。なお、1回の擦り幅は5cmに調整する。その後のガーゼ表面の状態を目視で観察して、評価する。評価の基準は次の通りである。
◎:黒汚れ無し
○:ゴムシートと接触したガーゼの面積(以下、ガーゼ面積)の5パーセント未満が黒くなる。
△:ガーゼ面積の5パーセント以上25パーセント未満が黒くなる。
×:ガーゼ面積の25パーセント以上が黒くなる。
【0032】
(実施例1)
水80.2gに対して、濃度40%のマイクロクリスタリンワックスの水性エマルション7.5g(マイクロクリスタリンワックス:3g)、濃度70%のアニオン界面活性剤組成物1.5g(アニオン界面活性剤:1.05g)、平均粒子径11.5μmの無機成分(合成非晶質シリカ1)2g、セルロースエーテル系水溶性高分子0.6g、イソチアゾリン系防腐剤0.1gおよび濃度35%のシリコーン系消泡剤組成物0.1g(シリコーン系消泡剤:0.035g)を、混合容器に順次混合した。次いで、高速せん断撹拌機を使用して反応容器の内容物を均一になるまで攪拌した。その後、混合容器に濃度50%の天然ゴムラテックス8g(天然ゴム:4g)をさらに添加し、再び攪拌して均一な離型剤を得た。得られた離型剤の物性を評価し、その結果を表1に示す。
上記で、成分として、成分そのものではなくて、それを含む組成物を用いた場合(たとえば、マイクロクリスタリンワックスそのものではなくて、マイクロクリスタリンワックスを含む組成物である水性エマルションを用いた場合)は、成分そのもののg数を表1に示した。また、水については、上記に示す80.2gと、成分を含む組成物を用いた場合に組成物に含まれる水との合計量を表1に示した。
【0033】
(実施例2〜5および比較例1〜4)
実施例1で用いた各成分および配合量を表1および2に示すものに変更する以外は、実施例1と同様にして混合攪拌を行い、離型剤をそれぞれ得た。得られた離型剤の物性をそれぞれ評価し、その結果を表1および2に示す。
表1および2に示す成分の詳細な内容を表3にまとめた。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
表1に示す通り、実施例1〜5では、黒色汚染は無く、加硫成型後のゴム表面に適度な光沢を付与し美観的に優位であった。そして、実施例1〜5の離型剤では、タイヤの外面に使用できることが分かる。
一方で表2に示す通り、比較例1では、ゴムシート周辺を黒く汚染し、加硫成型後のゴム表面に光沢を付与しなかった。比較例2では、無機成分が含まれないことから平滑性および離型性が低下した。比較例3では、ゴムが含まれず、加硫成型後の被膜が失われ無機粉体がゴムシート表面に現れた。そのため光沢度が低下し、美観的に劣った。比較例4では、ワックスが含まれず、平滑性が低下した。また、加硫成型後の透明被膜が失われ光沢度がやや低下した。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のタイヤ用水系白色離型剤は、タイヤ製造時に用いられ、タイヤの外面のに適用することができる。その際、周囲を黒く汚染しないし、良好な平滑性および離型性や、加硫成型後に透明となり適度な光沢等を付与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化ケイ素を構成成分に含む無機成分と、ゴムと、ワックスと、水とを含有する、タイヤ用水系白色離型剤。
【請求項2】
前記無機成分、ゴムおよびワックスの合計量に対して、前記無機成分の重量割合が5〜45重量%、前記ゴムの重量割合が10〜85重量%、前記ワックスの重量割合が10〜85重量%である、請求項1に記載のタイヤ用水系白色離型剤。
【請求項3】
前記無機成分が、平均粒子径(二次粒子径)5〜30μmの合成非晶質シリカである、請求項1または2に記載のタイヤ用水系白色離型剤。
【請求項4】
前記ゴムが天然ゴムである、請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用水系白色離型剤。
【請求項5】
前記ワックスがマイクロクリスタリンワックスである、請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用水系白色離型剤。

【公開番号】特開2012−148558(P2012−148558A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−281291(P2011−281291)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【出願人】(000188951)松本油脂製薬株式会社 (137)
【Fターム(参考)】