説明

タイヤ監視装置

【課題】 応答要求信号の送信回数を少なくして処理速度の向上を図ったタイヤ監視装置を提供する。
【解決手段】 前後左右の各タイヤ(20〜23)の間に各々配置された複数のLFアンテナ(24〜27)を個別または組み合わせて各タイヤに装着されたセンサ部(28〜31)に対し応答を要求する応答要求信号を送信する送信手段(37)、応答要求信号を送信する際に用いるLFアンテナを選択する選択手段(40)、応答要求信号に対応してセンサ部から返される応答信号を受信し、その応答信号に基づいてセンサ部の位置を特定する特定手段(40)を備え、選択手段は1回目の送信時にLFアンテナの一つである第1アンテナ(24)を選択し、2回目の送信時にその第1アンテナとそれに隣接する第2アンテナ(27)とを選択し、3回目の送信時にその第2アンテナとそれに隣接する第3アンテナ(25)とを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電波を用いて、タイヤの空気圧等の情報を監視するタイヤ監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車等車両やトレーラ又は航空機などのタイヤは、空気や窒素等の気体が規定の圧力で充填されているが、この充填気体は、タイヤの走行熱等によって体積が変化し、或いは、空気漏れ等によって徐々に減少する。したがって、良好な走行安定性を維持し、また、破裂(バースト)といった最悪の状況を回避するためにも、日常の点検、たとえば、空気圧ゲージ等を用いた点検は欠かせない。
【0003】
しかしながら、日常の点検は停車中にしか行うことができないし、そもそも日常の点検それ自体も、多くの場合、行われていないので、停車中はもちろん、走行中においてもタイヤの情報(空気圧等)を常にモニタすることができる技術が要望されている。
【0004】
このような技術としては、たとえば、下記の特許文献1に記載された「タイヤ圧モニタリングシステム及びパンク自動修理装置」が知られている。以下、この技術のことを「従来技術」ということにする。
【0005】
図11は、従来技術の概念図である。この図において、自動車等車両(以下、単に車両という。)1は、上空から俯瞰した状態で描かれており、その前後左右は、図示のとおり、図面の上を「前」、同下を「後」、同左を「左」、同右を「右」としている。
【0006】
車両1は、たとえば、四つのタイヤ2〜5を備えた四輪自動車である。すなわち、この車両1は、左前方タイヤ2と、右前方タイヤ3と、左後方タイヤ4と、右後方タイヤ5とを備えている。以下、それらのタイヤの“位置”がポイントになる場合は、「左前」、「右前」、「左後」、「右後」を付して呼称することとし、それ以外の場合は、単に「タイヤ」と称することにする。
【0007】
従来技術のタイヤ監視装置は、車両1の各タイヤ2〜5の近く(たとえば、タイヤハウス内)に設置された四つのLFアンテナ6〜9と、各タイヤ2〜5に共通の一つのUHFアンテナ10と、制御部11と、表示部12とを備えると共に、各タイヤ2〜5にそれぞれ装着されたセンサ部13〜16とを備える。
【0008】
なお、LFアンテナ6〜9の“LF”は、低周波帯(たとえば、数百KHz帯)の無線信号を意味する略語であり、同様に、UHFアンテナ10の“UHF”は、高周波帯(たとえば、数百MHz帯)の無線信号を意味する略語である。
【0009】
ここで、各タイヤ2〜5と同様に、四つのLFアンテナ6〜9や、各タイヤ2〜5にそれぞれ装着されたセンサ部13〜16についても、それらのLFアンテナやセンサ部の“位置”がポイントになる場合は、「左前」、「右前」、「左後」、「右後」を付して呼称することとし、それ以外の場合は、単に「LFアンテナ」及び「センサ部」と称することにする。
【0010】
このように構成された従来技術のタイヤ監視装置は、以下のように動作する。すなわち、各タイヤ2〜5にそれぞれ装着されたセンサ部13〜16は、通常はスタンバイ状態(LFアンテナからの応答要求信号の待ち受け状態;スリープモードともいう)にあり、近くのLFアンテナからの応答要求信号を受信すると、それに応答して、装着されたタイヤの情報(一般的に空気圧の情報やセンサ部自身のID番号)をUHF信号で返送するようになっている。
【0011】
なお、センサ部13〜16は応答要求信号を受信すると、スタンバイ状態から通常動作状態に移行し、その後は周期的に所定の信号を返送するシステムもある。
【0012】
制御部11は、所定の順番で各々のLFアンテナ6〜9から時分割的に応答要求信号を送信する制御を行うと共に、UHFアンテナ10で受信した、それらの応答要求信号に対する各センサ部13〜16からの応答信号を取り込んで各タイヤ2〜5の情報を再生し、たとえば、規定の空気圧になっているか否かを判定して、その判定結果を表示部12に出力し、車両1の乗員に通知するといった制御を行う。上記以外に「応答要求信号」とは、センサ部に対して“IDコード”などを送信することを要求する信号やスリープモードに移行することを命令する信号などを意味する。つまりセンサ部13〜16に対して所定の処理を起させる信号である。
【0013】
したがって、この従来技術によれば、特定のタイヤ、たとえば、左前方タイヤ2の空気圧が規定よりも低くなっている場合には、左前LFアンテナ6からの応答要求信号に対して、この左前方タイヤ2のセンサ部13から送信された応答信号に含まれている情報により、当該タイヤ(左前方タイヤ2)の空気圧不足を制御部11で判定し、その結果を表示部12を介して乗員に通知することができるから、たとえ走行中であっても、直ちに所要の対策を講じさせることができ、走行安定性と安全性の確保を図ることができる。
【0014】
ところで、上記従来技術の動作は、四つのタイヤ2〜5と、四つのLFアンテナ6〜9とを一対一のペアにして「応答要求」と「応答」を行うという前提の元で成立するものである。つまり、上記従来技術の動作を得るためには、左前LFアンテナ6の応答要求に対して左前方タイヤ2のセンサ部13のみが応答し、また、右前LFアンテナ7の応答要求に対して右前方タイヤ3のセンサ部14のみが応答し、また、左後LFアンテナ8の応答要求に対して左後方タイヤ4のセンサ部15のみが応答し、また、右後LFアンテナ9の応答要求に対して右後方タイヤ5のセンサ部16のみが応答するようになっていなければならない。
【0015】
そのためには、ペアを組むLFアンテナとタイヤをできるだけ接近させる必要があるが、センサ部のタイヤへの装着位置は、たとえば、ホイール外周の所定位置であり、或いは、タイヤ内壁の所定位置であり、いずれの位置もタイヤの半径方向に偏っているので、タイヤの回転に伴いLFアンテナとの間の距離が近づいたり遠ざかったりするから、LFアンテナとの間の最大の離隔距離を考慮して、LFアンテナの利得や送信電力等を調節し、通信範囲を適切に調整しなければならない。
【0016】
しかしながら、タイヤ監視装置を組み込む車両1は一つの種類(一つの車両型式)だけではなく、たとえば、ボディの形状も違えば、タイヤサイズも、タイヤハウスの形も違い、さらに、タイヤ間の距離(前後左右の距離)も違うので、それらの違いに対応させて、いちいちLFアンテナの利得や通信範囲及び送信電力等を調節しなければならず、それには、当然ながら多大な労力と時間を要するものであった。
【0017】
たとえば、今、右前LFアンテナ7の応答要求に対して右前方タイヤ3のセンサ部14のみが応答するように調節することを考える。具体的には、図11において、右前LFアンテナ7の応答要求信号17に対して、右前方タイヤ3のセンサ部14のみが応答信号18を返すように調節する場合を考える。この場合の調節目的は、右前方タイヤ3のセンサ部14のみが応答信号18を返すようにすることにあり、要するに、他のタイヤ2、4、5に装着されたセンサ部13、15、16が応答しないようにすることにある。しかしながら、車両ボディのような金属が存在すると、このボディ表面に沿って磁界が伝わるために、たとえば、所望外である左前方タイヤ6に装着されたセンサ部13にも、応答要求信号17が伝わってしまうことがある(符号17a参照)。
【0018】
このような場合、右前方タイヤ3のセンサ部のみが応答信号18を返すように、言い換えれば、左前方タイヤ2のセンサ部が応答信号19を返さないように、右前LFアンテナ7の利得や送信電力等を調節することになる。さて、かかる調節を行うに際して、右前方タイヤ3の回転によって変化する右前LFアンテナ7とセンサ部との距離、製品の性能のばらつき、車体の金属体を考慮しなければならないが、上記の従来技術にあっては、左前方タイヤ2のセンサ部に応答要求信号(符号17a参照)が届かないようにするように調整することは難しかった。
【0019】
このため、従来技術では、試行錯誤的な手法でしかLFアンテナの調節を行うことができず、それだけ余計な手間と時間を要するという問題点がある。
【0020】
そこで、本件出願人は、先に、所望のセンサ一つだけが応答するように調整することなく、応答信号を返すタイヤの位置を特定できるタイヤ監視装置を提案している(出願番号:特願2008-010022/出願日:平成20年1月21日)。
【0021】
この提案技術の要旨は、左前方タイヤと右前方タイヤのほぼ中間に位置する前方LFアンテナと、左後方タイヤと右後方タイヤのほぼ中間に位置する後方LFアンテナと、左前方タイヤと左後方タイヤのほぼ中間に位置する左方LFアンテナと、右前方タイヤと右後方タイヤのほぼ中間に位置する右方LFアンテナとを備え、これら四つのLFアンテナを順次に駆動して応答要求信号を送信しつつ、各タイヤに装着されたセンサ部からの応答信号を受信し、その応答信号の組み合わせに基づいて、いずれのタイヤからの応答であるかを判別するというものであり、これによれば、面倒な調整を行うことなく、応答信号を返すタイヤの位置を容易に特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2006−281977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、前記の提案技術にあっては、四つのLFアンテナから順次に応答要求信号を送信するため、タイヤ位置の特定に、少なくとも4回の送信動作が必要となり、処理速度の点で改善すべき余地がある。
【0024】
そこで、本発明は、応答要求信号の送信回数を少なくして処理速度の向上を図ったタイヤ監視装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
請求項1記載の発明は、左前方タイヤと右前方タイヤの中間、右前方タイヤと右後方タイヤの中間、左後方タイヤと右後方タイヤの中間、及び、左後方タイヤと左前方タイヤの中間の各四つの位置のうちの少なくとも三つの位置に各々配置された複数のLFアンテナと、前記複数のLFアンテナを個別または組み合わせて、前記各タイヤに装着されたセンサ部に対し応答を要求する応答要求信号を送信する送信手段と、前記応答要求信号を送信する際に用いる前記LFアンテナを選択する選択手段と、前記応答要求信号に対応して前記センサ部から返される応答信号を受信し、その応答信号に基づいて前記センサ部の位置を特定する特定手段とを備え、前記選択手段は、1回目の送信時に前記LFアンテナの一つである第1アンテナを選択し、2回目の送信時にその第1アンテナとそれに隣接する第2アンテナとを選択し、3回目の送信時にその第2アンテナとそれに隣接する第3アンテナとを選択することを特徴とするタイヤ監視装置である。
請求項2記載の発明は、前記特定手段は、1回目送信から3回目送信の全ての応答要求信号に応答があった場合は、第1アンテナの通信範囲と第2アンテナの通信範囲に存在するタイヤに装着されたセンサ部からの応答であると判定し、1回目送信と2回目送信の応答要求信号に応答があった場合は、第1アンテナの通信範囲のうち第2アンテナの通信範囲を除く範囲に存在するタイヤに装着されたセンサ部からの応答であると判定し、2回目送信と3回目送信の応答要求信号に応答があった場合は、第2アンテナの通信範囲と第3アンテナの通信範囲に存在するタイヤに装着されたセンサ部からの応答であると判定し、3回目送信の応答要求信号のみに応答があった場合は、第3アンテナの通信範囲のうち第2アンテナの通信範囲を除く範囲に存在するタイヤに装着されたセンサ部からの応答であると判定することを特徴とする請求項1記載のタイヤ監視装置である。
請求項3記載の発明は、左前方タイヤと右前方タイヤの中間、右前方タイヤと右後方タイヤの中間、左後方タイヤと右後方タイヤの中間、及び、左後方タイヤと左前方タイヤの中間の各四つの位置に各々配置された複数のLFアンテナと、前記複数のLFアンテナを個別または組み合わせて、前記各タイヤに装着されたセンサ部に対し応答を要求する応答要求信号を送信する送信手段と、前記応答要求信号を送信する際に用いる前記LFアンテナを選択する選択手段と、前記応答要求信号に対応して前記センサ部から返される応答信号を受信し、その応答信号に基づいて前記センサ部の位置を特定する特定手段とを備え、前記選択手段は、1回目の送信時に前記LFアンテナの一つである第1アンテナを選択し、2回目の送信時にその第1アンテナとそれに隣接する第2アンテナとを選択し、3回目の送信時にその第2アンテナに隣接する第3アンテナとその第3アンテナに隣接する第4アンテナとを選択することを特徴とするタイヤ監視装置である。
請求項4記載の発明は、前記特定手段は、1回目送信の応答要求信号に応答せずに2回目送信の応答要求信号に応答があった場合は、右後方タイヤに装着されたセンサ部からの応答であると判定し、1回目送信から3回目送信の全ての応答要求信号に応答があった場合は、第1アンテナの通信範囲と第4アンテナの通信範囲とに存在するタイヤに装着されたセンサ部からの応答であると判定し、1回目送信と2回目送信の応答要求信号に応答して3回目送信の応答要求信号に応答が無かった場合は、第1アンテナの通信範囲と第2アンテナの通信範囲とに存在するタイヤに装着されたセンサ部からの応答であると判定し、3回目送信の応答要求信号のみに応答があった場合は、第3アンテナの通信範囲と第4アンテナの通信範囲とに存在するタイヤに装着されたセンサ部からの応答であると判定することを特徴とする請求項3記載のタイヤ監視装置である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、応答要求信号を3回送信するだけで、その応答要求信号と応答との組み合わせから、応答信号を返すセンサ部(タイヤ)の位置を把握することができ、効率的な調節を可能とすることができる。したがって、応答要求信号の送信回数を少なくして処理速度の向上を図ったタイヤ監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態におけるLFアンテナの概念配置図である。
【図2】LFアンテナ24〜27の水平方向の通信範囲を示す簡易的な模式図である。
【図3】本実施形態のタイヤ監視装置の概念構成図である。
【図4】記憶部42に保持されるUHF受信データテーブルの概念図である。
【図5】第1の制御態様におけるLFアンテナとセンサ部の応答要求/応答の関係を示す図である。
【図6】第1の制御態様における制御プログラムの概略的なフローを示す図(1/2)である。
【図7】第1の制御態様における制御プログラムの概略的なフローを示す図(2/2)である。
【図8】第2の制御態様におけるLFアンテナとセンサ部の応答要求/応答の関係を示す図である。
【図9】第2の制御態様における制御プログラムの概略的なフローを示す図(1/2)である。
【図10】第2の制御態様における制御プログラムの概略的なフローを示す図(2/2)である。
【図11】従来技術の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、自動車等車両に適用するタイヤ監視装置を例にして説明するが、これに限定されない。要は、路面等に接して回転するタイヤを有するものであればよく、たとえば、自走手段を持たない牽引車(荷物搬送用やキャンピング用のトレーラ等)などであってもよい。
【0029】
図1は、本実施形態におけるLFアンテナの概念配置図である。この図において、本実施形態の適用車両は、特にそれに限定されないが、四つの走行用タイヤを備えた四輪自動車であり、当該車両を上空から俯瞰した状態において、図面の「左上」と、同「右上」と、同「左下」と、同「右下」に、それぞれ一つずつのタイヤを配置している。以下、左上のタイヤを「左前方タイヤ20」といい、右上のタイヤを「右前方タイヤ21」といい、左下のタイヤを「左後方タイヤ22」といい、右下のタイヤを「右後方タイヤ23」ということにする。
【0030】
ここで、タイヤの前後距離を“A”で表し、タイヤの左右距離を“B”で表すことにする。すなわち、Aは、左前方タイヤ20の中心P20から左後方タイヤ22の中心P22までの距離、及び、右前方タイヤ21の中心P21から右後方タイヤ23の中心P23までの距離であり、また、Bは、左前方タイヤ20の中心P20から右前方タイヤ21の中心P21までの距離、及び、左後方タイヤ22の中心P22から右後方タイヤ23の中心P23までの距離である。
【0031】
本実施形態では、車両前方側の左右タイヤ(左前方タイヤ20と右前方タイヤ21)のほぼ中間点(PF)と、車両後方側の左右タイヤ(左後方タイヤ22と右後方タイヤ23)のほぼ中間点(PB)と、車両左方側の前後タイヤ(左前方タイヤ20と左後方タイヤ22)のほぼ中間点(PL)と、車両右方側の前後タイヤ(右前方タイヤ21と右後方タイヤ23)のほぼ中間点(PR)とのそれぞれに一つずつLFアンテナ24〜27を配置している。
【0032】
ただし、図示の例では、四つの位置(PF、PB、PL及びPR)の各々に合計四つのLFアンテナ24〜27を配置しているが、これら四つのLFアンテナ24〜27の全てを必要とするのは、本実施形態の一つの制御態様(後述の第2の制御態様)であり、本実施形態の他の制御態様(後述の第1の制御態様)においては、そのうちの三つだけを必要とする。つまり、後述の第1の制御態様では、四つのLFアンテナ24〜27のうちの一つを省くことができるが、以下では、最大数のLFアンテナを必要とする後述の第2の制御態様に合わせて説明することにする。
【0033】
以下、PFに配置したLFアンテナを「前方LFアンテナ24」、PBに配置したLFアンテナを「後方LFアンテナ25」、PLに配置したLFアンテナを「左方LFアンテナ26」、PRに配置したLFアンテナを「右方LFアンテナ27」ということにする。
【0034】
さて、PFは、車両前方側の左右タイヤのほぼ中間点であるから、そのPFから左前方タイヤ20までの距離と右前方タイヤ21までの距離は共に等しい「B/2」で与えられ、また、PBも、車両後方側の左右タイヤのほぼ中間点であるから、そのPBから左後方タイヤ22までの距離と右後方タイヤ23までの距離も共に等しい「B/2」で与えられる。
【0035】
同様に、PLは、車両左方側の前後タイヤのほぼ中間点であるから、そのPLから左前方タイヤ20までの距離と左後方タイヤ22までの距離は共に等しい「A/2」で与えられ、また、PRも、車両右方側の前後タイヤのほぼ中間点であるから、そのPRから右前方タイヤ21までの距離と右後方タイヤ23までの距離も共に等しい「A/2」で与えられる。
【0036】
四つのタイヤ20〜23には、それぞれセンサ部28〜31が装着されており、これらのセンサ部28〜31は、冒頭の従来技術でも説明したように、通常はスタンバイ状態(LFアンテナからの応答要求信号の待ち受け状態)にあり、LFアンテナからの応答要求信号を受信すると、それに応答して、装着されたタイヤの情報(一般的に空気圧の情報等)をUHF信号で返送するものである。以下、これら四つのセンサ部28〜31を、装着されたタイヤの位置に合わせて、左前センサ部28、右前センサ部29、左後センサ部30、及び、右後センサ部31と称することにする。
【0037】
図2は、LFアンテナ24〜27の水平方向の通信範囲を示す簡易的な模式図である。なお、この図では、それぞれのLFアンテナ24〜27の通信範囲32〜35を無指向性パターン(略円形パターン)として描いているが、これは説明上の便宜である。実際には、アンテナの構造や周囲の障害物(車体等)などの影響により、図示以外の若干複雑な形状を持つ通信範囲を描くことはもちろんである。
【0038】
ここで、図示の通信範囲32〜35は、それぞれのLFアンテナ24〜27から送信された応答要求信号が、各タイヤ20〜23のセンサ部28〜31に正常に受信される限界距離をプロットしたものである。つまり、一般的にアンテナから送信された電波の強さは、そのアンテナからの距離が遠くなるほど指数関数的に減少し、ある距離(限界距離)を超えると正常に受信されなくなる。図示の通信範囲32〜35は、その限界距離を示している。
【0039】
さて、この図から読み取るべき重要な点は、「一つのLFアンテナの通信範囲に二つのセンサ部が入っている」ことにある。具体的には、前方LFアンテナ24の通信範囲32に左前センサ部28と右前センサ部29が入り、また、後方LFアンテナ25の通信範囲33に左後センサ部30と右後センサ部31が入り、また、左方LFアンテナ26の通信範囲34に左前センサ部28と左後センサ部30が入り、また、右方LFアンテナ27の通信範囲35に右前センサ部29と右後センサ部31が入っていることにある。
【0040】
このような考え方(一つのLFアンテナの通信範囲に二つのセンサ部が入っている)に従って四つのLFアンテナ24〜27を配置すると、後で詳しく説明するように、それぞれのLFアンテナからの応答要求信号に応答するセンサ部の位置を判定できるようになる。
【0041】
図3は、本実施形態のタイヤ監視装置の概念構成図である。なお、図示の構成は、センサ部の位置特定と、その判定結果を表示する仕組みを抜粋して示すものである。
【0042】
この図において、本実施形態のタイヤ監視装置36は、先に説明した四つのLFアンテナ24〜27と、四つのタイヤ20〜23にそれぞれ装着された四つのセンサ部28〜31と、四つのLFアンテナ24〜27を個別にまたは所定の組み合わせで時分割的に駆動しながらLF帯の応答要求信号を順次に送信するLF送信部37と、この応答要求信号に応じてセンサ部28〜31から返されるUHF帯の応答信号をUHFアンテナ38経由で受信すると共に、その応答信号に含まれるID番号や空気圧等の情報を再生するUHF受信部39と、LF送信部37の送信シーケンスを制御すると共に、UHF受信部39で再生された情報を取り込み、センサ部の位置の判定および各タイヤの異常有無などを判定する制御部40と、その判定結果を表示する表示部41と、後述の「UHF受信データテーブル」を書き換え可能に記憶保持する記憶部42とを備える。このようにセンサ部の位置を判定する位置特定手段は、制御部40が兼用してもよいし、独立にしてもよい。また、制御部40はハードウェアで構成してもよいし、マイクロコンピュータで構成してソフトウェアで動作するものでもよい。さらに、記憶部42はマイクロコンピュータのメモリを利用してもよい。
【0043】
各センサ部28〜31は、ランダムな時間を発生させるための機能を有しており、応答要求信号を受信すると、ランダムな遅延時間の後に応答信号を送信するように設計されている。これは、複数のセンサ部の同時応答(応答信号の同時送信)を避けるための対策である。また、各センサ部28〜31には固有のID番号が割り当てられており、各センサ部28〜31からの応答信号には、そのID番号に基づいた識別情報が含まれている。
【0044】
ここで、表示部41は、たとえば、タイヤ位置を示す「右前表示灯43」、「左前表示灯44」、「右後表示灯45」及び「左後表示灯46」、並びに、判定結果不定を示す「エラー表示灯47」を備えていてもよい。たとえば、「右前表示灯43」が点灯した場合には、右前方タイヤに異常が発生したことを意味する。
【0045】
図4は、記憶部42に保持されるUHF受信データテーブルの概念図である。この図において、UHF受信データテーブル48は、送信回数i(i=1,2,3)が格納された送信回数フィールド48aと、その送信回数フィールド48aに関連付けされたデータ格納部48bとを有しており、データ格納部48bは、さらにM1〜M4の四つのサブデータ格納部を有している。
【0046】
次に、本実施形態における制御態様について説明する。
<第1の制御態様>
図5は、第1の制御態様におけるLFアンテナとセンサ部の応答要求/応答の関係を示す図である。第1の制御態様では、(a)に示すように、1回目で前方LFアンテナ24を駆動し、2回目で前方LFアンテナ24と右方LFアンテナ27を駆動し、3回目で右方LFアンテナ27と後方LFアンテナ25を駆動する。つまり、(b)に示すように、1回目は前方LFアンテナ24だけを「単独」に駆動するが、2回目は前方LFアンテナ24と右方LFアンテナ27を「組み合わせ」て駆動し、3回目は右方LFアンテナ27と後方LFアンテナ25を「組み合わせ」て駆動する点がポイントである。したがって、この第1の制御態様においては、左方LFアンテナ26を使用しないので、構成から省いても差し支えない。
【0047】
この第1の制御態様におけるLFアンテナとセンサ部の応答要求/応答の関係は、具体的には、1回目で前方LFアンテナ24から応答要求信号を送信すると、その前方LFアンテナ24の通信範囲32内に位置する二つのセンサ部(左前センサ部28及び右前センサ部29)から応答が返され、また、2回目で前方LFアンテナ24と右方LFアンテナ27から応答要求信号を送信すると、それらの前方LFアンテナ24と右方LFアンテナ27の各通信範囲32、35内に位置する三つのセンサ部(左前センサ部28、右前センサ部29及び右後センサ部31)から応答が返され、また、3回目で右方LFアンテナ27と後方LFアンテナ25から応答要求信号を送信すると、それらの右方LFアンテナ27と後方LFアンテナ25の各通信範囲35、33内に位置する三つのセンサ部(右前センサ部29、右後センサ部31及び左後センサ部30)から応答が返される、というものである。図5(a)の○記号は応答ありを示し、×記号は応答なしを示す。
【0048】
第1の制御態様では、この応答要求/応答の組み合わせに基づいて、以下の条件に従い、それぞれのセンサ部の位置を特定する。
(1)右前センサ部29の位置特定:
前方LFアンテナ24からの応答要求信号 →応答あり(○)
前方/右方LFアンテナ24、27からの応答要求信号→応答あり(○)
右方/後方LFアンテナ27、25からの応答要求信号→応答あり(○)
(2)左前センサ部28の位置特定:
前方LFアンテナ24からの応答要求信号 →応答あり(○)
前方/右方LFアンテナ24、27からの応答要求信号→応答あり(○)
右方/後方LFアンテナ27、25からの応答要求信号→応答なし(×)
(3)右後センサ部31の位置特定:
前方LFアンテナ24からの応答要求信号 →応答なし(×)
前方/右方LFアンテナ24、27からの応答要求信号→応答あり(○)
右方/後方LFアンテナ27、25からの応答要求信号→応答あり(○)
(4)左後センサ部30の位置特定:
前方LFアンテナ24からの応答要求信号 →応答なし(×)
前方/右方LFアンテナ24、27からの応答要求信号→応答なし(×)
右方/後方LFアンテナ27、25からの応答要求信号→応答あり(○)
【0049】
この特定条件は、次の考え方に基づくものである。すなわち、右前センサ部29は、前方LFアンテナ24の通信範囲32と右方LFアンテナ27の通信範囲35だけに入っているので、右前センサ部29は、これら二つのLFアンテナ(前方LFアンテナ24と右方LFアンテナ27)からの応答要求信号のみに応答する。つまり、前方LFアンテナ24と右方LFアンテナ27からの応答要求信号に対する各々の応答に共通したID番号が存在している場合には、そのID番号を有したセンサ部が右前センサ部29であると特定できる。また、左前センサ部28は、前方LFアンテナ24の通信範囲32と左方LFアンテナ26の通信範囲34だけに入っているので、左前センサ部28は、これら二つのLFアンテナ(前方LFアンテナ24と左方LFアンテナ26)からの応答要求信号のみに応答する。また、右後センサ部31は、右方LFアンテナ27の通信範囲35と後方LFアンテナ25の通信範囲33だけに入っているので、右後センサ部31は、これら二つのLFアンテナ(右方LFアンテナ27と後方LFアンテナ25)からの応答要求信号のみに応答する。また、左後センサ部30は、左方LFアンテナ26の通信範囲34と後方LFアンテナ25の通信範囲33だけに入っているので、左後センサ部30は、これら二つのLFアンテナ(左方LFアンテナ26と後方LFアンテナ25)からの応答要求信号のみに応答する。
【0050】
したがって、この第1の制御態様によれば、
(1)1回目〜3回目の全ての応答要求信号に応答した場合は、右前センサ部29からの応答(右前方タイヤ21に装着されたセンサ部29からの応答)であると判定することができ、
(2)1回目と2回目の応答要求信号に応答した場合は、左前センサ部28からの応答(左前方タイヤ20に装着されたセンサ部28からの応答)であると判定することができ、
(3)2回目と3回目の応答要求信号に応答した場合は、右後センサ部31からの応答(右後方タイヤ23に装着されたセンサ部31からの応答)であると判定することができ、
(4)3回目の応答要求信号のみに応答した場合は、左後センサ部30からの応答(左後方タイヤ22に装着されたセンサ部30からの応答)であると判定することができる。
【0051】
図6及び図7は、第1の制御態様の制御プログラムの概略的なフローを示す図であり、この制御プログラムは、制御部40において所定の周期ごとに繰り返し実行される。この制御プログラムを開始すると、まず、UHF受信データテーブル48のデータ格納部48bの内容をクリアして初期化する(ステップS1)。
【0052】
次に、1回目の送信動作、つまり、前方LFアンテナ24から応答要求信号を送信する(ステップS2)。そして、センサ部からの応答信号の受信の有無を判定(ステップS3)して、受信ありであれば、UHF受信部39で再生した応答信号の情報をUHF受信データテーブル48の「i=1」のデータ格納部48bの「M1、M2」に格納する(ステップS4)。
【0053】
次に、2回目の送信動作、つまり、前方LFアンテナ24及び右方LFアンテナ27から応答要求信号を送信する(ステップS5)。そして、センサ部からの応答信号の受信の有無を判定(ステップS6)して、受信ありであれば、UHF受信部39で再生した応答信号の情報をUHF受信データテーブル48の「i=2」のデータ格納部48bの「M1、M2、M3」に格納する(ステップS7)。
【0054】
次に、3回目の送信動作、つまり、右方LFアンテナ27及び後方LFアンテナ25から応答要求信号を送信する(ステップS8)。そして、センサ部からの応答信号の受信の有無を判定(ステップS9)して、受信ありであれば、UHF受信部39で再生した応答信号の情報をUHF受信データテーブル48の「i=3」のデータ格納部48bの「M1、M3、M4」に格納する(ステップS10)。
【0055】
このように、四つのLFアンテナ4〜27の個別または組み合わせ巡回送信と応答信号の有無判定、及び、UHF受信データテーブル48への情報格納を完了すると、次に、UHF受信データテーブル48の格納内容を読み出し(ステップS11)、データ格納部48bに所定のデータが格納されているか否かを判定し(ステップS12、ステップS14、ステップS16、ステップS18)、その判定結果に基づいて、センサ部の位置を特定する(ステップS13、ステップS15、ステップS17、ステップS19)。
【0056】
すなわち、ステップS12では、UHF受信データテーブル48の「i=1、2、3」のデータ格納部48bの「M1」に情報が格納されている場合であって、それらの情報に共通するID番号が存在していれば、そのID番号を有するセンサ部が右前方タイヤ21に装着されたセンサ部(右前センサ部29)であると判断し、ステップS14では、UHF受信データテーブル48の「i=1、2」のデータ格納部48bの「M2」に情報が格納されている場合であって、それらの情報に共通するID番号からステップS12で右前センサ部29のID番号を除いたID番号が存在していれば、そのID番号を有するセンサ部が左前方タイヤ20に装着されたセンサ部(左前センサ部28)であると判断し、ステップS16では、UHF受信データテーブル48の「i=2、3」のデータ格納部48bの「M3」に情報が格納されている場合であって、それらの情報に共通するID番号から先のステップで既に判断したID番号を除いたID番号が存在していれば、そのID番号を有するセンサ部が右後方タイヤ23に装着されたセンサ部(右後センサ部31)であると判断し、ステップS18では、UHF受信データテーブル48の「i=3」のデータ格納部48bの「M4」に情報が格納されている場合であって、その情報に共通するID番号から先のステップで既に判断したID番号を除いたID番号が存在していれば、そのID番号を有するセンサ部が左後方タイヤ22に装着されたセンサ部(左後センサ部30)であると判断する。
【0057】
なお、上記では、各UHF受信データテーブル48に共通して現れるID番号に基づいて、タイヤ位置を判定したが、たとえば空気圧のデータが共通して現れるかに基づいてタイヤの位置を判定してもよい。つまり、たとえば、「i=1、2、3」のデータ格納部48bの「M1」に共通の空気圧データが現れた場合には、その空気圧データは右前センサ部29からの空気圧データであると判定してもよい。データ格納部に現れる共通の情報に基づいて、タイヤ位置を判定することができる。
【0058】
あるいは、ステップS12、ステップS14、ステップS16、ステップS18のいずれの条件にも合致しなかった場合は、たとえば、雑音等によるエラーであると判断する(ステップS20)。
【0059】
そして、最後に、以上のセンサ部の位置特定結果、若しくは、エラー判定結果に従い、表示部41の適切な表示灯を選択的に駆動し(ステップS21)、今周期の制御プログラムの実行を終了する。
【0060】
以上説明したとおり、第1の制御態様によれば、LFアンテナ24〜27の設置位置を、前後左右に隣り合うタイヤのほぼ中間位置とすると共に、LFアンテナ24〜27を個別にまたは組み合わせて3度(1回目〜3回目)駆動することにより順次に応答要求信号を送信しながら応答信号を取り込んでUHF受信データテーブル48に格納し、そのUHF受信データテーブル48に格納された情報(応答信号から再生されたID番号や空気圧等の情報)に基づいて、センサ部28〜31の位置を特定することができる。
【0061】
したがって、第1の制御態様においては、所望の一つのセンサ部だけが応答するようにLFアンテナの通信範囲を調整しなくても、どのタイヤのセンサ部が応答しているかを判断することができるので、LFアンテナの調整を容易に行うことができるようになり、その結果、調整に要する手間と時間を大幅に軽減できるという格別の効果が得られる上、応答要求信号の送信回数を冒頭の「提案技術」に比べて1回少ない3回とすることができるので、それだけ処理速度を向上してセンサ位置の特定をスピードアップすることができるという特有の効果が得られる。
【0062】
なお、第1の制御態様では、1回目に前方LFアンテナ24から応答要求信号を送信し、2回目に前方LFアンテナ24と右方LFアンテナ27から応答要求信号を送信し、3回目に右方LFアンテナ27と後方LFアンテナ25から応答要求信号を送信しているが、これに限定されない。1回目は、前後左右に配置された四つのLFアンテナ24〜27のうちの任意の一つのアンテナ(便宜的に第1アンテナという)を用いて応答要求信号を送信し、2回目は、その第1アンテナとそれに隣接する他の一つのアンテナ(便宜的に第2アンテナという)とを用いて応答要求信号を送信し、3回目は、その第2アンテナとそれに隣接する他の一つのアンテナ(便宜的に第3アンテナという)とを用いて応答要求信号を送信すればよい。第1の制御態様の前記の説明の場合、第1アンテナは前方LFアンテナ24であり、第2アンテナは右方LFアンテナ27であり、第3アンテナは後方LFアンテナ25である。
【0063】
したがって、このような関係(第1アンテナ→前方LFアンテナ24、第2アンテナ→右方LFアンテナ27、第3アンテナ→後方LFアンテナ25)の場合、前後左右に配置された四つのLFアンテナ24〜27のうちの残りの一つ、つまり、左方LFアンテナ26は使用されないから、構成から省くことができ、システムコストを削減できるという効果が得られる。
【0064】
なお、第1〜第3アンテナの具体的選択は前記の例示に限定されない。1回目は、前後左右に配置された四つのLFアンテナ24〜27のうちの「第1アンテナ」を用いて応答要求信号を送信し、2回目は、その「第1アンテナ」とそれに隣接する「第2アンテナ」とを用いて応答要求信号を送信し、3回目は、その「第2アンテナ」とそれに隣接する「第3アンテナ」とを用いて応答要求信号を送信すればよく、たとえば、「第1アンテナ→右方LFアンテナ27、第2アンテナ→後方LFアンテナ25、第3アンテナ→左方LFアンテナ26」としてもよいし、あるいは、「第1アンテナ→後方LFアンテナ25、第2アンテナ→左方LFアンテナ26、第3アンテナ→前方LFアンテナ24」としてもよい。このようにしても、不使用のLFアンテナを構成から省くことができ、システムコストを削減できる。
【0065】
<第2の制御態様>
図8は、第2の制御態様におけるLFアンテナとセンサ部の応答要求/応答の関係を示す図である。この第2の制御態様では、(a)に示すように、1回目で前方LFアンテナ24を駆動し、2回目で前方LFアンテナ24と右方LFアンテナ27を駆動し、3回目で左方LFアンテナ26と後方LFアンテナ25を駆動する。つまり、(b)に示すように、1回目は前方LFアンテナ24だけを「単独」に駆動するが、2回目は前方LFアンテナ24と右方LFアンテナ27を「組み合わせ」て駆動し、3回目は左方LFアンテナ26と後方LFアンテナ25を「組み合わせ」て駆動する点がポイントである。
【0066】
この第2の制御態様におけるLFアンテナとセンサ部の応答要求/応答の関係は、具体的には、1回目で前方LFアンテナ24から応答要求信号を送信すると、その前方LFアンテナ24の通信範囲32内に位置する二つのセンサ部(左前センサ部28及び右前センサ部29)から応答が返され、また、2回目で前方LFアンテナ24と右方LFアンテナ27から応答要求信号を送信すると、それらの前方LFアンテナ24と右方LFアンテナ27の各通信範囲32、35内に位置する三つのセンサ部(左前センサ部28、右前センサ部29及び右後センサ部31)から応答が返され、また、3回目で左方LFアンテナ26と後方LFアンテナ25から応答要求信号を送信すると、それらの左方LFアンテナ26と後方LFアンテナ25の各通信範囲34、33内に位置する三つのセンサ部(左前センサ部28、左後センサ部30及び右後センサ部31)から応答が返される、というものである。図8(a)の○記号は応答ありを示し、×記号は応答なしを示す。
【0067】
第2の制御態様では、この応答要求/応答の組み合わせに基づいて、以下の条件に従い、それぞれのセンサ部の位置を特定する。
(1)右前センサ部29の位置特定:
前方LFアンテナ24からの応答要求信号 →応答あり(○)
前方/右方LFアンテナ24、27からの応答要求信号→応答あり(○)
左方/後方LFアンテナ26、25からの応答要求信号→応答なし(×)
(2)左前センサ部28の位置特定:
前方LFアンテナ24からの応答要求信号 →応答あり(○)
前方/右方LFアンテナ24、27からの応答要求信号→応答あり(○)
左方/後方LFアンテナ26、25からの応答要求信号→応答あり(○)
(3)右後センサ部31の位置特定:
前方LFアンテナ24からの応答要求信号 →応答なし(×)
前方/右方LFアンテナ24、27からの応答要求信号→応答あり(○)
左方/後方LFアンテナ26、25からの応答要求信号→応答あり(○)
(4)左後センサ部30の位置特定:
前方LFアンテナ24からの応答要求信号 →応答なし(×)
前方/右方LFアンテナ24、27からの応答要求信号→応答なし(×)
左方/後方LFアンテナ26、25からの応答要求信号→応答あり(○)
【0068】
この特定条件の考え方も前記の第1の制御態様と同様である。すなわち、右前センサ部29は、前方LFアンテナ24の通信範囲32と右方LFアンテナ27の通信範囲35だけに入っているので、右前センサ部29は、これら二つのLFアンテナ(前方LFアンテナ24と右方LFアンテナ27)からの応答要求信号のみに応答する。つまり、前方LFアンテナ24と右方LFアンテナ27からの応答要求信号に対する各々の応答に共通したID番号が存在している場合には、そのID番号を有したセンサ部が右前センサ部29であると特定できる。また、左前センサ部28は、前方LFアンテナ24の通信範囲32と左方LFアンテナ26の通信範囲34だけに入っているので、左前センサ部28は、これら二つのLFアンテナ(前方LFアンテナ24と左方LFアンテナ26)からの応答要求信号のみに応答する。また、右後センサ部31は、右方LFアンテナ27の通信範囲35と後方LFアンテナ25の通信範囲33だけに入っているので、右後センサ部31は、これら二つのLFアンテナ(右方LFアンテナ27と後方LFアンテナ25)からの応答要求信号のみに応答する。また、左後センサ部30は、左方LFアンテナ26の通信範囲34と後方LFアンテナ25の通信範囲33だけに入っているので、左後センサ部30は、これら二つのLFアンテナ(左方LFアンテナ26と後方LFアンテナ25)からの応答要求信号のみに応答する。
【0069】
したがって、この第2の制御態様によれば、
(1)1回目と2回目の応答要求信号に応答した場合は、右前センサ部29あるいは左前センサ部20からの応答(右前方タイヤ21に装着されたセンサ部29からの応答)であると判定することができ、下記(2)の結果を参照することによって右前センサ部29であると特定できる。
(2)1回目〜3回目の全ての応答要求信号に応答した場合は、左前センサ部28からの応答(左前方タイヤ20に装着されたセンサ部28からの応答)であると判定することができ、
(3)2回目と3回目の応答要求信号に応答した場合は、右後センサ部31あるいは左前センサ部28からの応答(右後方タイヤ23に装着されたセンサ部31からの応答)であると判定することができ、上記(2)の結果を参照することによって右後センサ部31であると特定できる。
(4)3回目の応答要求信号のみに応答した場合は、左後センサ部30からの応答(左後方タイヤ22に装着されたセンサ部30からの応答)であると判定することができる。
【0070】
図9及び図10は、第2の制御態様の制御プログラムの概略的なフローを示す図であり、この制御プログラムは、制御部40において所定の周期ごとに繰り返し実行される。この制御プログラムを開始すると、まず、UHF受信データテーブル48のデータ格納部48bの内容をクリアして初期化する(ステップS1)。
【0071】
次に、1回目の送信動作、つまり、前方LFアンテナ24から応答要求信号を送信する(ステップS2)。そして、センサ部からの応答信号の受信の有無を判定(ステップS3)して、受信ありであれば、UHF受信部39で再生した応答信号の情報をUHF受信データテーブル48の「i=1」のデータ格納部48bの「M1、M2」に格納する(ステップS4)。
【0072】
次に、2回目の送信動作、つまり、前方LFアンテナ24及び右方LFアンテナ27から応答要求信号を送信する(ステップS5)。そして、センサ部からの応答信号の受信の有無を判定(ステップS6)して、受信ありであれば、UHF受信部39で再生した応答信号の情報をUHF受信データテーブル48の「i=2」のデータ格納部48bの「M1、M2、M3」に格納する(ステップS7)。
【0073】
次に、3回目の送信動作、つまり、左方LFアンテナ26及び後方LFアンテナ25から応答要求信号を送信する(ステップS8)。そして、センサ部からの応答信号の受信の有無を判定(ステップS9)して、受信ありであれば、UHF受信部39で再生した応答信号の情報をUHF受信データテーブル48の「i=3」のデータ格納部48bの「M2、M3、M4」に格納する(ステップS10)。
【0074】
このように、四つのLFアンテナ4〜27の個別または組み合わせ巡回送信と応答信号の有無判定、及び、UHF受信データテーブル48への情報格納を完了すると、次に、UHF受信データテーブル48の格納内容を読み出し(ステップS11)、データ格納部48bに所定のデータが格納されているか否かを判定し(ステップS12、ステップS14、ステップS16、ステップS18)、その判定結果に基づいて、センサ部の位置を特定する(ステップS13、ステップS15、ステップS17、ステップS19)。
【0075】
すなわち、ステップS12では、UHF受信データテーブル48の「i=1、2」のデータ格納部48bの「M1」に情報が格納されている場合であって、それらの情報に共通するID番号が存在していれば、そのID番号を有するセンサ部が右前方タイヤ21に装着されたセンサ部(右前センサ部29)あるいは左前方タイヤ20に装着されたセンサ部(左前センサ部28)であると判断し、ステップS14では、UHF受信データテーブル48の「i=1、2、3」のデータ格納部48bの「M2」に情報が格納されている場合であって、それらの情報に共通するID番号が存在していれば、そのID番号を有するセンサ部が左前方タイヤ20に装着されたセンサ部(左前センサ部28)であると判断し、先のステップ12での共通したID番号から左前センサ部28であるとしたID番号以外を右前センサ部29のID番号であると判断する。ステップS16では、UHF受信データテーブル48の「i=2、3」のデータ格納部48bの「M3」に情報が格納されている場合であって、それらの情報に共通するID番号が存在していれば、そのID番号を有するセンサ部が右後方タイヤ23に装着されたセンサ部(右後センサ部31)であると判断し、ステップS18では、UHF受信データテーブル48の「i=3」のデータ格納部48bの「M4」に情報が格納されている場合であって、UHF受信データテーブル48の「i=3」のデータ格納部48bの「M3」の情報と共通しないID番号が存在していれば、そのID番号を有するセンサ部が左後方タイヤ22に装着されたセンサ部(左後センサ部30)であると判断する。
【0076】
なお、上記では、各UHF受信データテーブル48に共通して現れるID番号に基づいて、タイヤ位置を判定したが、たとえば空気圧のデータが共通して現れるかに基づいてタイヤの位置を判定してもよい。つまり、たとえば、「i=1、2」のデータ格納部48bの「M1」に共通の空気圧データが現れた場合には、その空気圧データは右前センサ部29からの空気圧データであると判定してもよい。データ格納部に現れる共通の情報に基づいて、タイヤ位置を判定することができる。
【0077】
あるいは、ステップS12、ステップS14、ステップS16、ステップS18のいずれの条件にも合致しなかった場合は、たとえば、雑音等によるエラーであると判断する(ステップS20)。
【0078】
そして、最後に、以上のセンサ部の位置特定結果、若しくは、エラー判定結果に従い、表示部41の適切な表示灯を選択的に駆動し(ステップS21)、今周期の制御プログラムの実行を終了する。
【0079】
以上説明したとおり、この第2の制御態様においても、LFアンテナ24〜27の設置位置を、前後左右に隣り合うタイヤのほぼ中間位置とすると共に、LFアンテナ24〜27を個別にまたは組み合わせて3度(1回目〜3回目)駆動することにより順次に応答要求信号を送信しながら応答信号を取り込んでUHF受信データテーブル48に格納し、そのUHF受信データテーブル48に格納された情報(応答信号から再生されたID番号や空気圧等の情報)に基づいて、センサ部28〜31の位置を特定することができる。
【0080】
したがって、この第2の制御態様においても、所望の一つのセンサ部だけが応答するようにLFアンテナの通信範囲を調整しなくても、どのタイヤのセンサ部が応答しているかを判断することができるので、LFアンテナの調整を容易に行うことができるようになり、その結果、調整に要する手間と時間を大幅に軽減できるという格別の効果が得られる上、応答要求信号の送信回数を冒頭の「提案技術」に比べて1回少ない3回とすることができるので、それだけ処理速度を向上してセンサ位置の特定をスピードアップすることができるという特有の効果が得られる。
【0081】
なお、この第2の制御態様では、1回目に前方LFアンテナ24から応答要求信号を送信し、2回目に前方LFアンテナ24と右方LFアンテナ27から応答要求信号を送信し、3回目に左方LFアンテナ26と後方LFアンテナ25から応答要求信号を送信しているが、これに限定されない。1回目は、前後左右に配置された四つのLFアンテナ24〜27のうちの任意の一つのアンテナ(便宜的に第1アンテナという)を用いて応答要求信号を送信し、2回目は、その第1アンテナとそれに隣接する他の一つのアンテナ(便宜的に第2アンテナという)とを用いて応答要求信号を送信し、3回目は、その第2アンテナに隣接する他の一つのアンテナ(便宜的に第3アンテナという)と、その第3アンテナに隣接する他の一つのアンテナ(便宜的に第4アンテナという)とを用いて応答要求信号を送信すればよい。
【0082】
前記の説明において、第1アンテナは前方LFアンテナ24であり、第2アンテナは右方LFアンテナ27であり、第3アンテナは後方LFアンテナ25であり、第4アンテナは左方LFアンテナ26であるが、これに限らず、たとえば、「第1アンテナ→右方LFアンテナ27、第2アンテナ→後方LFアンテナ25、第3アンテナ→左方LFアンテナ26、第4アンテナ→前方LFアンテナ24」としてもよい。または、「第1アンテナ→後方LFアンテナ25、第2アンテナ→左方LFアンテナ26、第3アンテナ→前方LFアンテナ24、第4アンテナ→右方LFアンテナ27」としたり、「第1アンテナ→左方LFアンテナ26、第2アンテナ→前方LFアンテナ24、第3アンテナ→右方LFアンテナ27、第4アンテナ→後方LFアンテナ25」としたりしてもよい。あるいは、これらの指定はいずれも時計回り方向であるが、その逆の反時計回り方向の指定であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
20 左前方タイヤ
21 右前方タイヤ
22 左後方タイヤ
23 右後方タイヤ
24 前方LFアンテナ(LFアンテナ、第1アンテナ)
25 後方LFアンテナ(LFアンテナ、第3アンテナ)
26 左方LFアンテナ(LFアンテナ、第4アンテナ)
27 右方LFアンテナ(LFアンテナ、第2アンテナ)
28 左前センサ部(センサ部)
29 右前センサ部(センサ部)
30 左後センサ部(センサ部)
31 右後センサ部(センサ部)
36 タイヤ監視装置
37 LF送信部(送信手段)
40 制御部(選択手段、特定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左前方タイヤと右前方タイヤの中間、右前方タイヤと右後方タイヤの中間、左後方タイヤと右後方タイヤの中間、及び、左後方タイヤと左前方タイヤの中間の各四つの位置のうちの少なくとも三つの位置に各々配置された複数のLFアンテナと、
前記複数のLFアンテナを個別または組み合わせて、前記各タイヤに装着されたセンサ部に対し応答を要求する応答要求信号を送信する送信手段と、
前記応答要求信号を送信する際に用いる前記LFアンテナを選択する選択手段と、
前記応答要求信号に対応して前記センサ部から返される応答信号を受信し、その応答信号に基づいて前記センサ部の位置を特定する特定手段とを備え、
前記選択手段は、1回目の送信時に前記LFアンテナの一つである第1アンテナを選択し、2回目の送信時にその第1アンテナとそれに隣接する第2アンテナとを選択し、3回目の送信時にその第2アンテナとそれに隣接する第3アンテナとを選択することを特徴とするタイヤ監視装置。
【請求項2】
前記特定手段は、
1回目送信から3回目送信の全ての応答要求信号に応答があった場合は、第1アンテナの通信範囲と第2アンテナの通信範囲に存在するタイヤに装着されたセンサ部からの応答であると判定し、
1回目送信と2回目送信の応答要求信号に応答があった場合は、第1アンテナの通信範囲のうち第2アンテナの通信範囲を除く範囲に存在するタイヤに装着されたセンサ部からの応答であると判定し、
2回目送信と3回目送信の応答要求信号に応答があった場合は、第2アンテナの通信範囲と第3アンテナの通信範囲に存在するタイヤに装着されたセンサ部からの応答であると判定し、
3回目送信の応答要求信号のみに応答があった場合は、第3アンテナの通信範囲のうち第2アンテナの通信範囲を除く範囲に存在するタイヤに装着されたセンサ部からの応答であると判定する
ことを特徴とする請求項1記載のタイヤ監視装置。
【請求項3】
左前方タイヤと右前方タイヤの中間、右前方タイヤと右後方タイヤの中間、左後方タイヤと右後方タイヤの中間、及び、左後方タイヤと左前方タイヤの中間の各四つの位置に各々配置された複数のLFアンテナと、
前記複数のLFアンテナを個別または組み合わせて、前記各タイヤに装着されたセンサ部に対し応答を要求する応答要求信号を送信する送信手段と、
前記応答要求信号を送信する際に用いる前記LFアンテナを選択する選択手段と、
前記応答要求信号に対応して前記センサ部から返される応答信号を受信し、その応答信号に基づいて前記センサ部の位置を特定する特定手段とを備え、
前記選択手段は、1回目の送信時に前記LFアンテナの一つである第1アンテナを選択し、2回目の送信時にその第1アンテナとそれに隣接する第2アンテナとを選択し、3回目の送信時にその第2アンテナに隣接する第3アンテナとその第3アンテナに隣接する第4アンテナとを選択することを特徴とするタイヤ監視装置。
【請求項4】
前記特定手段は、
1回目送信の応答要求信号に応答せずに2回目送信の応答要求信号に応答があった場合は、右後方タイヤに装着されたセンサ部からの応答であると判定し、
1回目送信から3回目送信の全ての応答要求信号に応答があった場合は、第1アンテナの通信範囲と第4アンテナの通信範囲とに存在するタイヤに装着されたセンサ部からの応答であると判定し、
1回目送信と2回目送信の応答要求信号に応答して3回目送信の応答要求信号に応答が無かった場合は、第1アンテナの通信範囲と第2アンテナの通信範囲とに存在するタイヤに装着されたセンサ部からの応答であると判定し、
3回目送信の応答要求信号のみに応答があった場合は、第3アンテナの通信範囲と第4アンテナの通信範囲とに存在するタイヤに装着されたセンサ部からの応答であると判定する
ことを特徴とする請求項3記載のタイヤ監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−218408(P2010−218408A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66535(P2009−66535)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】