説明

タウリン変性オルガノポリシロキサンおよびその製造方法

【課題】 酸やアルカリの存在下でも加水分解性の乏しい連結基でタウリン残基を結合した新規なタウリン変性オルガノポリシロキサン、およびこのような新規なタウリン変性オルガノポリシロキサンを効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】 オルガノポリシロキサン中のケイ素原子にタウリン残基を少なくとも1個結合するタウリン変性オルガノポリシロキサン、および(A)タウリン、分子中の窒素原子結合水素原子1個を炭素数1〜40の一価炭化水素基で置換したタウリン誘導体、またはこれらの塩と、(B)エポキシ基含有オルガノポリシロキサンとを反応させることを特徴とする、オルガノポリシロキサン中のケイ素原子にタウリン残基を少なくとも1個結合するタウリン変性オルガノポリシロキサンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なタウリン変性オルガノポリシロキサン、およびその効率的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノポリシロキサン中のケイ素原子にタウリン残基を結合するタウリン変性オルガノポリシロキサンとしては、末端にハロゲン化アルキルアシロキシ基を有するポリエーテル鎖を有するオルガノポリシロキサンとタウリン、分子中の窒素原子結合水素原子1個を炭素数1〜40の一価炭化水素基で置換したタウリン誘導体、またはこれらの塩との反応により得られる、エステル結合含有ポリエーテル基でタウリン残基を結合するタウリン変性オルガノポリシロキサン(米国特許第5280099号明細書参照)、カルボキシル基を有するオルガノポリシロキサンとタウリン、分子中の窒素原子結合水素原子1個を炭素数1〜40の一価炭化水素基で置換したタウリン誘導体、またはこれらの塩との反応により得られる、アミド結合でタウリン残基を結合するタウリン変性オルガノポリシロキサン(米国特許第5286830号明細書参照)が知られているが、これらのタウリン変性オルガノポリシロキサンは、タウリン残基をエステル結合やアミド結合で結合しているので、酸やアルカリにより加水分解して、タウリンが分離してしまう恐れがあった。
【特許文献1】米国特許第5280099号明細書
【特許文献2】米国特許第5286830号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、酸やアルカリの存在下でも加水分解性の乏しい連結基でタウリン残基を結合した新規なタウリン変性オルガノポリシロキサン、およびこのような新規なタウリン変性オルガノポリシロキサンを効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のタウリン変性オルガノポリシロキサンは、オルガノポリシロキサン中のケイ素原子に、一般式:
(−X−)aN(R1)(2-a)−CH2CH2−SO3
{式中、Xは一般式:
−R2−CH2CH(OH)−CH2
(式中、R2はアルキレン基、アルキレンオキシ基、またはポリアルキレンオキシ基である。)
で示される基、一般式:
−R2−CH2CH(CH2OH)−
(式中、R2は前記と同じである。)
で示される基、一般式:
【化1】

(式中、R3はアルキレン基である。)
で示される基、または一般式:
【化2】

(式中、R3は前記と同じである。)
で示される基であり、R1は水素原子または炭素数1〜40の一価炭化水素基であり、Mは水素原子、Na、K、Li、またはNH4であり、aは1または2である。}
で示されるタウリン残基を少なくとも1個結合することを特徴とする。
【0005】
本発明のタウリン変性オルガノポリシロキサンの製造方法は、(A)タウリン、分子中の窒素原子結合水素原子1個を炭素数1〜40の一価炭化水素基で置換したタウリン誘導体、またはこれらの塩と、(B)エポキシ基含有オルガノポリシロキサンとを反応させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のタウリン変性オルガノポリシロキサンは、酸やアルカリの存在下でも加水分解性の乏しい連結基でタウリン残基を結合した新規な化合物であり、また、本発明の製造方法は、このような新規な変性オルガノポリシロキサンを効率良く製造することができるという特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のタウリン変性オルガノポリシロキサンは、オルガノポリシロキサン中のケイ素原子に、一般式:
(−X−)aN(R1)(2-a)−CH2CH2−SO3
で示されるタウリン残基を少なくとも1個結合することを特徴とする。式中のXは一般式:
−R2−CH2CH(OH)−CH2
で示される基、一般式:
−R2−CH2CH(CH2OH)−
で示される基、一般式:
【化3】

で示される基、または一般式:
【化4】

で示される基である。式中のR2はアルキレン基、アルキレンオキシ基、またはポリアルキレンオキシ基であり、このアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が例示され、このアルキレンオキシ基としては、メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基が例示され、このポリアルキレンオキシ基としては、プロピレンオキシポリ(エチレンオキシ)基、プロピレンオキシポリ(エチレンオキシ)ポリ(プロピレンオキシ)基が例示される。また、式中のR3はアルキレン基であり、前記R2と同様のアルキレン基が例示される。また、式中のR1は水素原子または炭素数1〜40の一価炭化水素基であり、R1の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オレイル基等のアルケニル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示される。また、式中のMは水素原子、Na、K、Li、またはNH4である。また、式中のaは1または2である。なお、式中のaが1である場合、本発明のタウリン変性オルガノポリシロキサンは、一分子中のケイ素原子に、上記のタウリン残基を結合したオルガノポリシロキサンであり、式中のaが2である場合、本発明のタウリン変性オルガノポリシロキサンは、一分子中のケイ素原子と他のケイ素原子に、上記のタウリン残基を結合したオルガノポリシロキサン、あるいはオルガノポリシロキサン中のケイ素原子と他のオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に、上記のタウリン残基を結合した架橋構造を有するオルガノポリシロキサンである。
【0008】
このようなタウリン変性オルガノポリシロキサンは、例えば、平均式:
bSiO(4-b)/2
で示すことができる。式中、Rは置換もしくは非置換の一価炭化水素基、一般式:
(−X−)aN(R1)(2-a)−CH2CH2−SO3
で示されるタウリン残基、一般式:
【化5】

で示されるエポキシ含有基、または一般式:
【化6】

で示されるエポキシ含有基であり、一分子中の少なくとも1個のRは前記タウリン残基である。Rの一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オレイル基等のアルケニル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示される。また、Rのタウリン残基において、式中のX、R1、M、およびaは前記と同様である。また、式中のbは1.5〜2.1の数である。また、Rのエポキシ含有基において、式中のR2はアルキレン基、アルキレンオキシ基、またはポリアルキレンオキシ基であり、前記と同様の基が例示され、また、式中のR3はアルキレン基であり、前記と同様の基が例示される。
【0009】
このようなタウリン変性オルガノポリシロキサンの製造方法は特に限定されないが、(A)タウリン、分子中の窒素原子結合水素原子1個を炭素数1〜40の一価炭化水素基で置換したタウリン誘導体、またはこれらの塩と、(B)エポキシ基含有オルガノポリシロキサンとを反応させることが好ましい。
【0010】
(A)成分のタウリン、分子中の窒素原子結合水素原子1個を炭素数1〜40の一価炭化水素基で置換したタウリン誘導体、またはこれらの塩は、一般式:
NHa(R1)(2-a)−CH2CH2−SO3
で示される。上式中のR1は水素原子または炭素数1〜40の一価炭化水素基であり、R1の一価炭化水素基としては前記と同様の基が例示される。また、上式中のMは水素原子、Na、K、Li、またはNH4である。また、上式中のaは1または2である。このような(A)成分として、具体的には、タウリン、タウリンナトリウム、N−メチルタウリン、N−メチルタウリンナトリウムが例示される。
【0011】
(B)成分のエポキシ基含有オルガノポリシロキサンは、一分子中のケイ素原子に少なくとも1個のエポキシ基を結合しているものであれば特に限定されない。このエポキシ基の結合位置は限定されず、例えば、分子鎖末端および/または分子鎖側鎖が挙げられる。このようなオルガノシロキサンの分子構造は特に限定されず、例えば、直鎖状、環状、分岐状、一部分岐を有する直鎖状が挙げられ、好ましくは直鎖状である。このようなエポキシ基含有オルガノポリシロキサンは、例えば、平均式:
R'bSiO(4-b)/2
で示される。式中のR'は置換もしくは非置換の一価炭化水素基、一般式:
【化7】

で示されるエポキシ含有基、または一般式:
【化8】

で示されるエポキシ含有基であり、一分子中の少なくとも1個のR'は前記いずれかのエポキシ含有基である。式中のR2はアルキレン基、アルキレンオキシ基、またはポリアルキレンオキシ基であり、前記と同様の基が例示される。また、式中のR3はアルキレン基であり、前記と同様の基が例示される。また、式中のbは1.5〜2.1の数である。
【0012】
このようなエポキシ基含有オルガノポリシロキサンは、例えば、ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサンとアルケニル基含有エポキシ化合物とを白金触媒存在下で付加反応させることにより調製することができる。
【0013】
本発明のタウリン変性オルガノポリシロキサンの製造方法では、上記(A)成分中の窒素原子結合水素原子が(B)成分中のエポキシ基と反応し、窒素−炭素結合とヒドロキシル基を生成する。この反応は、通常、(A)成分を水溶液、あるいはメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール水溶液として、これに(B)成分を滴下もしくは混合し、液中で両成分を接触させることによって行われる。反応に際して、反応系内をpH8〜12、特には、pH9〜11に保つことが好ましく、そのために水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのアルカリ性物質を必要に応じて反応液中に滴下もしくは混合する。反応時、反応系内のpHを前記の範囲に維持するのは、(A)成分中の窒素原子結合水素原子が(B)成分のエポキシ基と反応するためには、pH8以下では反応速度が遅くなるからであり、またpH12以上では(B)成分中のシロキサン結合が加水分解を起こすからである。反応は、常温でも進行するが温度を高くすることによって速くなる。しかし、pHが高い状態で温度が高くなると、(B)成分中のシロキサン結合の加水分解が促進されるため、高くとも80℃以下にすることが好ましい。(B)成分は、通常、液体または固体であり、そのまま用いても良いが、水、メタノール、エタノール、プロパノール、エチルエーテル、アセトン、ジオキサン、テトラヒロドフラン、アセトニトリルなどの溶液、あるいはこれらの混合溶液を用いることが好ましい。この反応の進行は、13C−NMR分析でタウリン誘導体のアミノ基とエポキシ基の反応によって生成する変性基と残存エポキシ基を測定することによって確認することができる。
【0014】
また、(A)成分と(B)成分の反応を乳化分散液中で行う方法も例示される。(A)成分と(B)成分の乳化分散液中での反応は、通常、(A)成分の水溶液に(B)成分の乳化分散液を滴下もしくは混合し、乳化分散液中で両成分を接触させることによって行われる。本方法で用いる(B)成分の乳化分散液は、通常、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いて調製される。これらの界面活性剤は、(A)成分と(B)成分の反応を阻害しないものであれば特に限定されず、また、単独あるいは複数組み合わせて使用することができる。
【0015】
このアニオン系界面活性剤としては、例えば、N−アシル−サルコシン塩類、N−アシルグルタミン酸及びその塩類、アルカンスルホン酸及びその塩類、αオレフィンスルホン酸及びその塩類、アルキル硫酸及びその塩類、高級脂肪酸エステルのスルホン酸及びその塩類、ジアルキルスルホコハク酸及びその塩類、アシルメチルタウリン及びその塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸及びその塩類、脂肪酸塩類、アルキルポリエーテルカルボン酸及びその塩類、アルキルリン酸及びその塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びその塩類、アルキルアリルスルホン酸及びその塩類、アシル化加水分解コラーゲンペプチド塩類が挙げられる。
【0016】
また、このカチオン界面活性剤としては、例えば、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化オアルキルジヒドロキシエチルメチルアンモニウム、塩化γ−グルコンアミドプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジ(ポリオキシエチレン)アルキルメチルアンモニウム、塩化ステアロイルコラミノホルミルメチルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化アルキルジメチルエチルアンモニウム、塩化トリ(ポリオキシエチレン)アルキルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジエチルメチルアンモニウム、塩化ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウム、塩化ラウロイルコラミノホルミルメチルピリジニウム、臭化アルキルイソキノリニウム液、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルトリメチルアンモニウムサッカリンが挙げられる。
【0017】
また、このノニオン系界面活性剤としては、例えば、エチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル類、グリコール脂肪酸エステル類、トリメチロールプロパン脂肪酸エステル類、ペンタエリスリット脂肪酸エステル類、グルコシド誘導体類、グリセリンアルキルエーテル脂肪酸エステル類、トリメチロールプロパンオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸アミド類、アルキロールアミド類、アルキルアミンオキシド類、ラノリンおよびその誘導体類、ヒマシ油誘導体類、硬化ヒマシ油誘導体類、ステロールおよびその誘導体類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド類、ポリオキシエチレンアルキロールアミド類、ポリオキシエチレンジエタノールアミン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレントリメチロールプロパン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン多価アルコールエーテル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン基含有オルガノポリシロキサン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基含有オルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0018】
また、この両性界面活性剤としては、例えば、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、塩酸アルキルジアミノエチルエチルグリシン液、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ビス(ステアリル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリン)クロル酢酸錯体、アルキル−N−カルボキシメトキシエチル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムジナトリウムヒドロキシド、ヤシ油アルキル−N−カルボキシメトキシエチル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムジナトリウムラウリル硫酸、アルキルベタイン、ラウリルアミノプロピオン酸トリエタノールアミン、β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリル−N−カルボキシメトキシエチル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムジナトリウムドデカノイルサルコシン、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン液が挙げられる。
【0019】
(B)成分の乳化分散液を調製する方法は特に限定されず、例えば、(B)成分と界面活性剤および水を均一混合し、高せん断をかけて乳化する方法が例示される。また、その際、(B)成分の乳化分散液の平均粒子径は特に限定されない。
【0020】
(A)成分と(B)成分の乳化分散液中での反応に際して、反応系内のpHを8〜12、特に9〜11に保つことが好ましく、そのために水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのアルカリ性物質を必要に応じて反応液中に滴下もしくは混合することが行われる。反応時、反応系内のpHを前記の範囲に維持するのは、(A)成分中のアミノ基が(B)成分中のエポキシ基と反応するためには、pH8以上のアルカリ性であることが望ましく、またpH12以上では(B)成分中のシロキサン結合が加水分解を起こすからである。反応は、常温でも進行し、加熱することにより反応を促進することができるが、pHが高い状態で温度が高くなると、(B)成分中のシロキサン結合の加水分解が促進したり、乳化分散液が不安定になるため、90℃以下に加熱することが好ましい。この反応の進行は、13C−NMR分析でタウリン誘導体のアミノ基とエポキシ基の反応によって生成する変性基と残存エポキシ基を測定することによって確認することができる。
【0021】
本発明の製造方法では、(A)成分と(B)成分を反応させた後、必要に応じてろ過を行い、未反応成分を分離した後、必要により有機溶媒等の低沸点物を加熱減圧下で留去することにより目的のタウリン変性オルガノポリシロキサンを精製することができる。
【実施例】
【0022】
本発明のタウリン変性オルガノポリシロキサンおよびその製造方法を実施例により詳細に説明する。
【0023】
[参考例1]
平均式:
(CH3)1.980.04SiO0.99
で示される、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体と、式:
【化9】

で示されるポリオキシエチレンモノアリルモノグリシジルエーテルとをそれらのヒドロシリル基と不飽和基との当量比が1:1.2になるような原料比で秤量し、更に白金と1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンとの錯体(白金金属が反応原料の合計重量に対して4ppmになる量)を加えて反応温度80℃で5時間攪拌した。得られたこのポリマーはNMRおよびIRの結果、平均式:
(CH3)1.98(Ep)0.04SiO0.99
で示され、式中、Epは、式:
【化10】

で示されるエポキシ含有基であるエポキシ基含有オルガノポリシロキサンであることが判明した。
【0024】
[参考例2]
平均式:
(CH3)1.980.04SiO0.99
で示される、分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサンと、式:
【化11】

で示されるポリオキシエチレンモノアリルモノグリシジルエーテルとをそれらのヒドロシリル基と不飽和基との当量比が1:1.2になるような原料比で秤量し、更に白金と1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンとの錯体(白金金属が反応原料の合計重量に対して4ppmになる量)を秤量して反応温度80℃で5時間攪拌した。得られたこのポリマーはNMRおよびIRの結果、平均式:
(CH3)1.98(Ep)0.04SiO0.99
で示され、式中、Epは、式:
【化12】

で示されるエポキシ含有基であるエポキシ基含有オルガノポリシロキサンであることが判明した。
【0025】
[参考例3]
平均式:
(CH3)2.070.07SiO0.93
で示される、分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、他の分子鎖片末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサンと、式:
【化13】

で示されるポリオキシエチレンモノアリルモノグリシジルエーテルとをそれらのヒドロシリル基と不飽和基との当量比が1:1.2になるような原料比で秤量し、更に白金と1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンとの錯体(白金金属が反応原料の合計重量に対して4ppmになる量)を秤量して反応温度80℃で5時間攪拌した。得られたこのポリマーはNMRおよびIRの結果、平均式:
(CH3)2.07(Ep)0.07SiO0.93
で示され、式中、Epは、式:
【化14】

で示されるエポキシ含有基であるエポキシ基含有オルガノポリシロキサンであることが判明した。
【0026】
[参考例4]
平均式:
(CH3)1.870.15SiO0.99
で示される分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体92.3gと、式:
CH2=CHCH2O(C24O)22(C36O)22CH3
で示されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノアリルモノメチルエーテル197.0gと、式
【化15】

で示されるアリルグリシジルエーテル18.5gを秤量し、更に白金と1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンとの錯体(白金金属が反応原料の合計重量に対して4ppmになる量)を秤量して反応温度80℃で5時間攪拌した。得られたポリマーはNMRおよびIRの結果、平均式:
(CH3)1.87(EO)0.07(Ep)0.08SiO0.99
で示され、式中、EOは、式:
−C36O(C24O)22(C36O)22CH3
で示されるポリオキシアルキレン残基であり、Epは、式:
【化16】

で示されるエポキシ含有基であるエポキシ基含有オルガノポリシロキサンであることが判明した。
【0027】
[実施例1]
参考例1で調製したエポキシ基含有オルガノポリシロキサン25.0g、式:
CH3−NH−CH2CH2−SO3Na
で示されるN−メチルタウリンナトリウム1.76g(エポキシ基とアミノ基との当量比1:1)、エタノール18.2g、イオン交換水5.0gを、コンデンサー、窒素導入口および攪拌機を備えたセパラブルフラスコに計り取り、これを混合した。この時、混合液はpH9.5であった。この混合液を80℃に加熱昇温し、2時間反応を行った。冷却後、得られた混合液のエタノールおよび水を室温下で揮発させたところ、粘着性のあるグリース状のポリマーを得た。このポリマーの13C−NMR分析を行ったところ、エポキシ基のピークは消失し、42.9、49.0、53.6、60.7、67.6ppmにエポキシ基とタウリン中のアミノ基との反応に由来するピークが生成していたことから、このポリマーは、平均式:
(CH3)1.98(Tu)0.04SiO0.99
で示され、式中、Tuは、式:
【化17】

で示されるタウリン残基、または式:
【化18】

で示されるタウリン残基であるタウリン変性ポリオルガノシロキサンであることを確認した。
【0028】
[実施例2]
参考例2で調製したエポキシ基含有オルガノポリシロキサン25.0g、式:
NH2−CH2CH2−SO3
で示されるタウリン1.22g(エポキシ基とアミノ基との当量比が1:1)、20%水酸化ナトリウム水溶液1.94g、エタノール18.4g、およびイオン交換水3.5gをコンデンサー、窒素導入口および攪拌機を備えたセパラブルフラスコに計り取り、混合した。この混合液はpH10.0であった。混合液を攪拌しながら80℃に加熱昇温して2時間保持した。冷却後、得られた混合液のエタノールおよび水を室温下で揮発させたところ、粘着性のある生ゴム状ポリマーを得た。このポリマーについて13C−NMR分析を行ったところ、残存エポキシ基に由来するピークはなく、45.3、51.0、52.2、52.7、67.6ppm等にエポキシ基とタウリン中のアミノ基との反応に由来するピークが生成していたことから、このポリマーは、平均式:
(CH3)1.98(Tu)0.04SiO0.99
で示され、式中のTuは、式:
【化19】

で示されるタウリン残基、または式:
【化20】

で示されるタウリン残基であり、さらに、式:
【化21】

で示されるタウリン残基、式:
【化22】

で示されるタウリン残基、または式:
【化23】

で示されるタウリン残基によって、一分子中のケイ素原子と他のケイ素原子、あるいは、オルガノポリシロキサン中のケイ素原子と他のオルガノポリシロキサン中のケイ素原子とを部分架橋したタウリン変性ポリオルガノシロキサンであることを確認した。
【0029】
[実施例3]
参考例3で調製したエポキシ基含有オルガノポリシロキサン25.0g、式:
NH2−CH2CH2−SO3Na
で示されるタウリンナトリウム2.52g、エタノール17.5g、イオン交換水5.04gを、コンデンサー、窒素導入口および攪拌機を備えたセパラブルフラスコに計り取り、混合した。この混合液はpH10.0であった。混合液を攪拌しながら80℃に加熱昇温して2時間保持した。冷却後、得られた混合液のエタノールおよび水を室温下で揮発させたところ、粘着性を有する高粘度ポリマーを得た。このポリマーについて13C−NMR分析を行ったところ、残存エポキシ基に由来するピークはなく、45.4、52.0、52.4、67.4ppm等にエポキシ基とタウリン中のアミノ基との反応に由来するピークが生成していたことから、このポリマーは、平均式:
(CH3)2.07(Tu)0.07SiO0.93
で示され、式中、式中のTuは、式:
【化24】

で示されるタウリン残基、または式:
【化25】

で示されるタウリン残基であり、さらに、式:
【化26】

で示されるタウリン残基、式:
【化27】

で示されるタウリン残基、または式:
【化28】

で示されるタウリン残基によって、オルガノポリシロキサン中のケイ素原子と他のオルガノポリシロキサン中のケイ素原子とを部分架橋したタウリン変性ポリオルガノシロキサンであることを確認した。
【0030】
[実施例4]
参考例1で調製したエポキシ基含有オルガノポリシロキサン30.0g、ポリオキシエチレン(5モル)アルキル(C12〜14)エーテル3.5g、ポリオキシエチレン(9モル)アルキル(C12〜14)エーテル3.5g、N−ラウロイルメチルタウリンナトリウム0.9gおよびイオン交換水32.1gを、ガラス製ビーカーに計り取り、これをプロペラ式攪拌機で混合し均一なエマルジョンを得た。このエマルジョンを、コンデンサー、窒素導入口および攪拌機を備えたセパラブルフラスコに移し、ここに、式:
NH2−CH2CH2−SO3
で示されるタウリン1.64g(エポキシ基とアミノ基との当量比が1:1)と20%−水酸化ナトリウム水溶液2.63gとイオン交換水25.7gとの混合液を添加した。この混合液はpH9.5であった。エマルジョンを50℃に加熱昇温し2時間攪拌した。冷却後、得られたエマルジョン10gにヘキサン20gとメタノール20gを加え、ポリマーが抽出した。溶媒層を廃棄した後、ポリマー層を室温にて乾燥したところ、粘着性のある高粘度ポリマーを得た。このポリマーについて13C−NMR分析を行ったところ、58.3ppmにエポキシ基とタウリン中のアミノ基との反応に由来するピークが生成していることから、このポリマーは、平均式:
(CH3)1.98(Y)0.04SiO0.99
で示され、式中、Yは、式:
【化29】

で示されるタウリン残基または式:
【化30】

で示されるタウリン残基、および式:
【化31】

で示される未反応のエポキシ含有基、さらには、式:
【化32】

で示されるタウリン残基、式:
【化33】

で示されるタウリン残基、または式:
【化34】

で示されるタウリン残基によって、一分子中のケイ素原子と他のケイ素原子、あるいは、オルガノポリシロキサン中のケイ素原子と他のオルガノポリシロキサン中のケイ素原子とを部分架橋したタウリン変性ポリオルガノシロキサンであることを確認した。また、43.9ppmと50.8ppmの残存エポキシ基のピークより、エポキシ変性オルガノポリシロキサン中のエポキシ基とタウリン中のアミノ基との反応率を算出したところ、46%であった。
【0031】
[実施例5]
参考例4で調製したエポキシ基含有オルガノポリシロキサン47.4gと、式:
CH3−NH−CH2CH2−SO3Na
で示されるN−メチルタウリンナトリウム2.6gと、エタノール40.0gと、イオン交換水7.4gを、コンデンサー、窒素導入口および攪拌機を備えたセパラブルフラスコに計り取り、均一に混合した。この時、混合液はpH10.0であった。この混合液を攪拌しながら80℃に加熱昇温して4時間保持した。冷却後、得られた混合液のエタノールおよび水を室温下で揮発させたところ、粘着性のあるグリース状のポリマーを得た。このポリマーについて13C−NMR分析を行ったところ、残存エポキシ基に由来するピークはなく、45.4、52.0、52.4、67.4ppm等にエポキシ基とタウリン中のアミノ基との反応に由来するピークが生成していたことから、このポリマーは、平均式:
(CH3)1.87(EO)0.07(Tu)0.08SiO0.99
で示され、式中、EOは、式:
−C36O(C24O)22(C36O)22CH3
で示されるポリオキシアルキレン残基であり、Tuは、式:
【化35】

で示されるタウリン残基、または式:
【化36】

で示されるタウリン残基であるタウリン変性オルガノポリシロキサンであることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のタウリン変性オルガノポリシロキサンは、オルガノポリシロキサンの優れた特性とタウリンの優れた特性を十分発揮するものであることから、化粧料、塗料などの添加剤、各種コーティング剤、有機樹脂成型用離型剤、有機樹脂改質剤、潤滑剤、柔軟剤などとして有用であり、毛髪、皮膚、爪、金属、有機樹脂、無機樹脂、ガラス、セラミックス、フィラー、建材、繊維、紙などの基材への適用が例示される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノポリシロキサン中のケイ素原子に、一般式:
(−X−)aN(R1)(2-a)−CH2CH2−SO3
{式中、Xは一般式:
−R2−CH2CH(OH)−CH2
(式中、R2はアルキレン基、アルキレンオキシ基、またはポリアルキレンオキシ基である。)
で示される基、一般式:
−R2−CH2CH(CH2OH)−
(式中、R2は前記と同じである。)
で示される基、一般式:
【化1】

(式中、R3はアルキレン基である。)
で示される基、または一般式:
【化2】

(式中、R3は前記と同じである。)
で示される基であり、R1は水素原子または炭素数1〜40の一価炭化水素基であり、Mは水素原子、Na、K、Li、またはNH4であり、aは1または2である。}
で示されるタウリン残基を少なくとも1個結合するタウリン変性オルガノポリシロキサン。
【請求項2】
タウリン変性オルガノポリシロキサンが、平均式:
bSiO(4-b)/2
[式中、Rは置換もしくは非置換の一価炭化水素基、一般式:
(−X−)aN(R1)(2-a)−CH2CH2−SO3
{式中、Xは一般式:
−R2−CH2CH(OH)−CH2
(式中、R2はアルキレン基、アルキレンオキシ基、またはポリアルキレンオキシ基である。)
で示される基、一般式:
−R2−CH2CH(CH2OH)−
(式中、R2は前記と同じである。)
で示される基、一般式:
【化3】

(式中、R3はアルキレン基である。)
で示される基、または一般式:
【化4】

(式中、R3は前記と同じである。)
で示される基であり、R1は水素原子または炭素数1〜40の一価炭化水素基であり、Mは水素原子、Na、K、Li、またはNH4であり、aは1または2である。}
で示されるタウリン残基、一般式:
【化5】

(式中、R2は前記と同じである。)
で示されるエポキシ含有基、または一般式:
【化6】

(式中、R3は前記と同じである。)
で示されるエポキシ含有基であり、オルガノポリシロキサン中の少なくとも1個のRは前記タウリン残基であり、bは1.5〜2.1の数である。]
で示されることを特徴とする、請求項1記載のタウリン変性オルガノポリシロキサン。
【請求項3】
(A)タウリン、分子中の窒素原子結合水素原子1個を炭素数1〜40の一価炭化水素基で置換したタウリン誘導体、またはこれらの塩と、(B)エポキシ基含有オルガノポリシロキサンとを反応させることを特徴とする、オルガノポリシロキサン中のケイ素原子にタウリン残基を少なくとも1個結合するタウリン変性オルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項4】
(A)成分が、一般式:
NHa(R1)(2-a)−CH2CH2−SO3
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜40の一価炭化水素基であり、Mは水素原子、Na、K、Li、またはNH4であり、aは1または2である。)
で示されるタウリン、分子中の窒素原子結合水素原子1個を炭素数1〜40の一価炭化水素基で置換したタウリン誘導体、またはこれらの塩であることを特徴とする、請求項3記載のタウリン変性オルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項5】
(B)成分が、平均式:
R'bSiO(4-b)/2
{式中、R'は、置換もしくは非置換の一価炭化水素基または一般式:
【化7】

(式中、R2はアルキレン基、アルキレンオキシ基、またはポリアルキレンオキシ基である。)
で示されるエポキシ含有基、または一般式:
【化8】

(式中、R3はアルキレン基である。)
で示されるエポキシ含有基であり、一分子中の少なくとも1個のR'は前記いずれかのエポキシ含有基であり、bは1.5〜2.1の数である。}
で示されるエポキシ基含有オルガノポリシロキサンであることを特徴とする、請求項3記載のタウリン変性オルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項6】
水中またはアルコール水溶液中で反応させることを特徴とする、請求項3記載のタウリン変性オルガノポリシロキサンの製造方法。


【公開番号】特開2006−16554(P2006−16554A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197472(P2004−197472)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】